説明

回転角検出装置

【課題】磁気検出素子の破壊を招くことなくICパッケージを安定して固定可能な回転角検出装置を提供する。
【解決手段】カバー部材4を構成する部位のうち、スロットルボディ14に固定されるフランジ部42と、ICパッケージ2を支持する支持部50とは、樹脂により一体に形成されている。これにより、カバー部材4をスロットルボディ14に取り付けたとき、スロットル弁11の弁軸12に対する支持部50の位置が安定する。ICパッケージ2は、形成後の支持部50に圧入されることにより封止体30の外壁の一部に所定の圧力が作用した状態で、支持部50に支持されている。この構成により、支持部50および弁軸12に対するICパッケージ2の位置が安定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象の回転角を検出する回転角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気検出素子を含むICパッケージを樹脂製のカバー部材でモールドした回転角検出装置が知られている(例えば特許文献1参照)。カバー部材は、検出対象を回転可能に支持する支持体に取り付けられる。この回転角検出装置では、カバー部材とICパッケージとを一体に形成(樹脂モールド成形)することにより、磁気検出素子の位置を安定させ、検出対象の回転角の検出精度の向上を図っている。しかしながら、ICパッケージとカバー部材の樹脂との線膨張差により、ICパッケージが熱応力を受けると、磁気検出素子の出力の温度特性が悪化するおそれがある。また、ICパッケージをカバー部材でモールドするとき(製造時)、ICパッケージおよび磁気検出素子には成形ストレスが作用する。そのため、製造後に磁気検出素子の破壊有無を検査する必要がある。これにより、検査コストが増大する。
【0003】
一方、特許文献2に記載の回転角検出装置では、ICパッケージを弾性体で覆うとともに、当該ICパッケージおよび弾性体を樹脂製のカバー部材でモールドしている。そのため、上述の問題に加え、ICパッケージを弾性体で覆うことに関し材料費および加工費が増大するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−4114号公報
【特許文献2】特開平7−181192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁気検出素子の破壊を招くことなくICパッケージを安定して固定可能な回転角検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、検出対象の回転角度を検出する回転角検出装置であって、ICパッケージと、カバー部材と、を備える。ICパッケージは、磁気検出素子、封止体、および、複数のリードを有する。磁気検出素子は、検出対象に取り付けられた磁気発生手段が回転することにより生じる磁界の変化に応じた信号を出力する。封止体は、磁気検出素子を覆うようにして設けられている。リードは、磁気検出素子に接続するとともに封止体から突出するよう設けられている。カバー部材は、固定部および支持部を有している。固定部は、検出対象を回転可能に支持する支持体に固定される部位である。支持部は、磁気検出素子が前記信号を出力可能なようICパッケージを支持する部位である。カバー部材は、固定部が支持体に固定されることによって支持体に取り付けられる部材である。
【0007】
本発明では、固定部および支持部は、樹脂により一体に形成されている。これにより、カバー部材を支持体に取り付けたとき、検出対象に対する支持部の位置が安定する。また、ICパッケージは、形成後の支持部に圧入されることにより封止体の外壁の一部に所定の圧力が作用した状態で、支持部に支持されている。この構成により、支持部および検出対象に対するICパッケージの位置が安定する。
【0008】
上述のように、本発明では、ICパッケージは、形成後の支持部に圧入されることにより支持部に支持される構成である。そのため、「ICパッケージを樹脂製のカバー部材でモールドする場合に生じる成形ストレス」がICパッケージおよび磁気検出素子に作用するといった事態を回避することができる。よって、本発明による回転角検出装置は、製造後の磁気検出素子の破壊の有無を検査する工程を省くことができる。これにより、検査コストを低減することができる。
【0009】
また、ICパッケージは、そのすべてが樹脂(支持部)により覆われる構成ではない。そのため、線膨張差による磁気検出素子への熱応力の影響を低減することができる。これにより、磁気検出素子の温度特性を安定させることができる。
【0010】
また、前記所定の圧力を、ICパッケージを保持可能な圧力以上、かつ、磁気検出素子の破壊を招く程度の圧力より小さな圧力に設定すれば、支持部によりICパッケージを支持しても磁気検出素子の破壊を招くことはない。ここで、「磁気検出素子の破壊」とは、例えば磁気検出素子が信号出力不能な状態、あるいは、正常範囲外の信号を出力するような状態に陥ること等を意味する。
【0011】
このように、本発明では、磁気検出素子の破壊を招くことなくICパッケージを安定してカバー部材に固定可能である。カバー部材に対してICパッケージを安定して固定可能なため、検出対象に対する磁気検出素子の位置も安定する。これにより、検出対象が回転するときの磁界の変化に応じて磁気検出素子が出力する信号が安定する。その結果、検出対象の回転角の検出精度を高めることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、支持部は、封止体の外壁のうち磁気検出素子の感磁面に対応する部分を避けた箇所を挟むようにしてICパッケージを支持している。この構成により、ICパッケージを支持部に圧入固定するとき、磁気検出素子の感磁面に応力が作用するのを防ぐことができる。そのため、ICパッケージ固定後の検査を簡易なものとすることができる。また、支持部による熱応力が磁気検出素子の感磁面に作用するのを回避可能なため、磁気検出素子の温度特性の悪化を防ぐことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、封止体は、略直方体状に形成され、上面、当該上面の反対側の面であってリードが突出する下面、上面と下面との間の面である前面、当該前面の反対側の面である背面、および、前面と背面との間の面である2つの側面を有している。磁気検出素子は、封止体の中心部に位置するよう、かつ、感磁面が前記前面に対し略平行となるよう設けられている。そして、ICパッケージは、封止体の前面および背面のうち下面および側面のいずれにも近い隅部に所定の圧力が作用した状態で、支持部に支持されている。つまり、支持部は、封止体の外壁のうち磁気検出素子の感磁面に対応する部分を避けた箇所(隅部)を挟むようにしてICパッケージを支持している。この構成により、ICパッケージを支持部に圧入固定するとき、磁気検出素子の感磁面に応力が作用するのを防ぐことができる。そのため、ICパッケージ固定後の検査を簡易なものとすることができる。また、支持部による熱応力が磁気検出素子の感磁面に作用するのを回避可能なため、磁気検出素子の温度特性の悪化を防ぐことができる。
【0014】
また、支持部は、封止体の前面および背面のうちリードの突出部近傍を挟むようにしてICパッケージを支持する構成のため、前面および背面に垂直な方向のICパッケージの位置ずれを抑制することができる。これにより、振動によるICパッケージの振れを抑えることができるため、ICパッケージのリードが破壊あるいは破断されるのを防ぐことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明では、封止体は、略直方体状に形成され、上面、当該上面の反対側の面であってリードが突出する下面、上面と下面との間の面である前面、当該前面の反対側の面である背面、および、前面と背面との間の面である2つの側面を有している。磁気検出素子は、封止体の中心部に位置するよう、かつ、感磁面が前記前面に対し略平行となるよう設けられている。そして、ICパッケージは、2つの側面に所定の圧力が作用した状態で、支持部に支持されている。つまり、支持部は、封止体の外壁のうち磁気検出素子の感磁面に対応する部分を避けた箇所(側面)を挟むようにしてICパッケージを支持している。この構成により、ICパッケージを支持部に圧入固定するとき、磁気検出素子の感磁面に応力が作用するのを防ぐことができる。そのため、ICパッケージ固定後の検査を簡易なものとすることができる。また、支持部による熱応力が磁気検出素子の感磁面に作用するのを回避可能なため、磁気検出素子の温度特性の悪化を防ぐことができる。
【0016】
また、支持部は、封止体の両側面を挟むようにしてICパッケージを支持する構成のため、側面に垂直な方向のICパッケージの位置ずれを抑制することができる。これにより、振動によるICパッケージの振れを抑えることができるため、ICパッケージのリードが破壊あるいは破断されるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による回転角検出装置の要部を示す図であって、検出対象を支持する支持体に回転角検出装置が取り付けられた状態を示す断面図。
【図2】(A)は本発明の一実施形態による回転角検出装置の一部を切り欠いた正面図、(B)は(A)の支持部近傍を拡大した図、(C)は(B)のうち支持部のみ示した図、(D)は本発明の一実施形態による回転角検出装置のICパッケージの模式的斜視図。
【図3】(A)は図2(A)を矢印IIIA方向から見た図、(B)は(A)の支持部近傍を拡大した図。
【図4】本発明の他の実施形態による回転角検出装置の支持部近傍を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
本発明の一実施形態による回転角検出装置を図1〜3に示す。
【0019】
本実施形態の回転角検出装置1は、車両に搭載されたスロットル弁11の開度を算出するのに用いられる。回転角検出装置1は、検出対象としてのスロットル弁11の弁軸12の回転角を検出する。
【0020】
まず、スロットル弁11について説明する。図1に示すように、スロットル弁11は、略円板状に形成され、吸気通路13内に設けられる。弁軸12は、スロットル弁11の中心を板面方向に貫くようにして、スロットル弁11と一体に形成されている。弁軸12のスロットル弁11の両側の部分は、吸気通路13を形成するスロットルボディ14に軸受けされている。ここで、スロットルボディ14は、特許請求の範囲における「支持体」に対応する。また、吸気通路13は、図1の紙面に対し垂直な方向に延びて形成されている。また、弁軸12は、吸気の流れ方向に略垂直となるよう設けられている。さらに、弁軸12の両端部は、スロットルボディ14から突出している。
【0021】
弁軸12がスロットルボディ14に軸受けされることにより、スロットル弁11は、吸気通路13において弁軸12とともに回転可能である。つまり、スロットルボディ14は、検出対象であるスロットル弁11を回転可能に支持している。これにより、スロットル弁11は、回転することで吸気通路13を開閉可能である。
【0022】
弁軸12の一方の端部には、モータ15が取り付けられている。モータ15は、図示しない電子制御装置(以下、「ECU」という)に制御されることにより弁軸12を回転駆動する。ECUは、モータ15の回転を制御することによりスロットル弁11の開度を制御し、図示しない内燃機関へ供給する吸気の量を調節する。
【0023】
弁軸12の他方の端部には、ホルダ16が取り付けられている。ホルダ16は、筒部161および当該筒部161の一方の端部を塞ぐ底部162を有している。すなわち、ホルダ16は有底筒状に形成されている。ホルダ16は、底部162の中心が弁軸12に固定されることにより、弁軸12に取り付けられている。ホルダ16の筒部161の内壁には、マグネット17が貼り付けられている。マグネット17は、例えばボンド磁石であり、N極およびS極の極性が筒部161の周方向に交互になるよう設けられている。そのため、弁軸12が回転すると、筒部161の内側において磁界が変化する。
【0024】
次に、回転角検出装置1について説明する。図1に示すように、回転角検出装置1は、弁軸12のホルダ16側の端部を覆うようにして、スロットルボディ14に取り付けられる。回転角検出装置1は、ICパッケージ2およびカバー部材4を有している。
【0025】
ICパッケージ2は、磁気検出素子21、封止体30および複数のリード22を有している。磁気検出素子21は、例えばホール素子やMR素子等の磁気センサである。磁気検出素子21は、周囲の磁界の変化に応じた信号を出力可能である。
【0026】
封止体30は、樹脂により形成され、磁気検出素子21の全体を覆うようにして設けられている。封止体30は、外部からの衝撃、熱または湿気等から磁気検出素子21を保護する役割を果たす。
【0027】
複数のリード22は、金属により形成され、磁気検出素子21に接続している。リード22は、磁気検出素子21に接続する端部以外の部分が封止体30から突出(露出)している。本実施形態では、リード22は、1つのICパッケージ2につき3本設けられている。
【0028】
カバー部材4は、図2(A)および図3(A)に示すように、有底の浅い箱状に形成されている。カバー部材4は、樹脂により形成されている。カバー部材4は、開口部41から外側へ環状に延びるフランジ部42を有している(図1、図2(A)および図3(A)参照)。フランジ部42には、複数の穴421が形成されている(図3(A)参照)。
【0029】
カバー部材4の底部43には、支持部50が形成されている。支持部50は、底部43から、底部43の壁面に垂直な方向へ延びるようにして形成されている。
このように、本実施形態では、カバー部材4は、フランジ部42、底部43および支持部50のすべてが樹脂で一体に形成されることにより構成されている。ICパッケージ2は、形成後の支持部50の先端部(底部43とは反対側の端部)に圧入されることにより封止体30の外壁の一部に所定の圧力が作用した状態で、支持部50に支持されている(図1、図2(A)、(B)、図3(A)、(B)参照)。本実施形態では、ICパッケージ2は、2つ設けられている(図3(A)、(B)参照)。
【0030】
図3(A)、(B)に示すように、ICパッケージ2のリード22は、封止体30とは反対側の端部が、底部43に設けられた基板44に半田付けされている。図2(A)および図3(A)に示すように、カバー部材4の底部43とフランジ部42との間には、コネクタ部45が形成されている。コネクタ部45の内側には、複数の端子451が設けられている。当該複数の端子451とICパッケージ2の複数のリード22とは、基板44に設けられた図示しないプリント配線により接続されている。コネクタ部45には、図示しないワイヤーハーネスが接続される。当該ワイヤーハーネスの導線は、端子451と、ECUおよび図示しない電源と、を接続する。これにより、磁気検出素子21とECUおよび電源とは、リード22、基板44のプリント配線、端子451およびワイヤーハーネスの導線を介して接続される。なお、本実施形態では、1つのICパッケージ2が有する3本のリード22は、それぞれ、ECU、電源の正側、電源の負側に接続される。
【0031】
フランジ部42は、穴421にねじ46等の締結部材を通すことによりスロットルボディ14に締付固定される(図1参照)。これにより、カバー部材4は、スロットルボディ14に取り付けられる。ここで、フランジ部42は、特許請求の範囲における「固定部」に対応する。
【0032】
図1に示すように、カバー部材4は、弁軸12のホルダ16側の端部を覆うようにして、スロットルボディ14に取り付けられる。このとき、支持部50の先端部は、弁軸12に対向するとともにホルダ16の筒部161の内側に位置した状態となる。
【0033】
上述の構成により、カバー部材4がスロットルボディ14に取り付けられた状態では、ICパッケージ2は、ホルダ16の筒部161(マグネット17)の内側に位置する。この状態で、モータ15により弁軸12が回転駆動され、スロットル弁11とともにホルダ16が回転すると、ICパッケージ2の周囲の磁界が変化する。このとき、ICパッケージ2の磁気検出素子21は、周囲の磁界の変化に応じた信号を出力する。つまり、磁気検出素子21は、ホルダ16に取り付けられたマグネット17が回転することにより生じる磁界の変化に応じた信号を出力する。この信号の経時的な変化は、弁軸12の回転角の経時的な変化に対応する。
【0034】
磁気検出素子21から出力される信号は、上述のワイヤーハーネスを経由してECUに伝達される。ECUは、伝達された信号に基づき弁軸12の回転角を検出する。これにより、ECUはスロットル弁11の開度を算出可能である。なお、本実施形態では、2つのICパッケージ2が設けられているため、例えば一方のICパッケージ2が故障しても、他方のICパッケージ2により、弁軸12の回転角の検出を継続可能である。
このように、カバー部材4の支持部50は、磁気検出素子21が前記信号を出力可能なよう、2つのICパッケージ2を支持する。
【0035】
次に、支持部50によるICパッケージ2の支持の仕方について、より詳細に説明する。
本実施形態では、ICパッケージ2の封止体30は、図2(D)に示すように、略直方体状に形成されている。そのため、封止体30は、上面31、当該上面31の反対側の面である下面32、上面31と下面32との間の面である前面33、当該前面33の反対側の面である背面34、および、前面33と背面34との間の面である側面35および側面36を有している。磁気検出素子21は、封止体30の中心部に位置するよう、かつ、感磁面211が前面33に対し略平行となるよう設けられている。複数のリード22は、磁気検出素子21に接続する端部以外の部分が下面32から突出(露出)している。
【0036】
本実施形態では、支持部50は、第1支持部51および第2支持部52からなる(図2(C)参照)。第1支持部51は、前面支持部511、背面支持部512および側面支持部513を有している。第2支持部52は、前面支持部521、背面支持部522および側面支持部523を有している(図2(B)および(C)、図3(B)参照)。
【0037】
図3(B)に示すように、2つのICパッケージ2は、一方のICパッケージ2の背面34と他方のICパッケージ2の前面33とが当接することで互いの封止体30が重なった状態で、支持部50の先端部(底部43とは反対側の端部)に圧入されている。
【0038】
このとき、第1支持部51の前面支持部511は、一方のICパッケージ2の前面33のうち下面32および側面35のいずれにも近い隅部331に当接している(図2(B)および(D)、図3(B)参照)。また、第1支持部51の背面支持部512は、他方のICパッケージ2の背面34のうち下面32および側面35のいずれにも近い隅部341に当接している(図2(D)、図3(B)参照)。
【0039】
また、第2支持部52の前面支持部521は、一方のICパッケージ2の前面33のうち下面32および側面36のいずれにも近い隅部332に当接している(図2(B)および(D)、図3(B)参照)。また、第2支持部52の背面支持部522は、他方のICパッケージ2の背面34のうち下面32および側面36のいずれにも近い隅部342に当接している(図2(D)、図3(B)参照)。
【0040】
ここで、第1支持部51の前面支持部511と背面支持部512との距離、および、第2支持部52の前面支持部521と背面支持部522との距離は、2つのICパッケージ2を重ねたときの厚み(一方のICパッケージ2の前面33と他方のICパッケージ2の背面34との距離)よりもやや小さくなるよう設定されている。そのため、2つのICパッケージ2は、前面支持部511および前面支持部521と背面支持部512および背面支持部522とに挟まれるようにして、隅部331、341、332、342に所定の圧力が作用した状態で、支持部50に支持される。なお、前面支持部511と背面支持部512との距離は、前記所定の圧力が、2つのICパッケージ2を保持可能な圧力以上、かつ、磁気検出素子21の破壊を招く程度の圧力より小さな圧力となるよう、設定される。
【0041】
また、第1支持部51の側面支持部513は、2つのICパッケージ2の側面35に当接している(図2(B)および(D)、図3(B)参照)。
また、第2支持部52の側面支持部523は、2つのICパッケージ2の側面36に当接している(図2(B)および(D)、図3(B)参照)。
【0042】
ここで、第1支持部51の側面支持部513と第2支持部52の側面支持部523との距離は、ICパッケージ2の幅(側面35と側面36との距離)よりもやや小さくなるよう設定されている。そのため、2つのICパッケージ2は、側面支持部513と側面支持部523とに挟まれるようにして、側面35および側面36に所定の圧力が作用した状態で、支持部50に支持される。なお、側面35と側面36との距離は、前記所定の圧力が、2つのICパッケージ2を保持可能な圧力以上、かつ、磁気検出素子21の破壊を招く程度の圧力より小さな圧力となるよう、設定される。
【0043】
なお、封止体30の外壁のうち、隅部331、341、332、342、側面35および側面36は、磁気検出素子21の感磁面211に対応する部分P(図2(D)に網掛けで示す部分)とは異なる部分である。つまり、支持部50は、封止体30の外壁のうち磁気検出素子21の感磁面211に対応する部分Pを避けた箇所を挟むようにしてICパッケージ2を支持している。
【0044】
また、本実施形態では、図2(B)および図3(B)に示すように、第1支持部51の前面支持部511、背面支持部512および側面支持部513、ならびに、第2支持部52の前面支持部521、背面支持部522および側面支持部523は、底部43とは反対側の端部の角部が面取りされている。これにより、ICパッケージ2を支持部50に、底部43とは反対側から挿入するようにして圧入するとき、容易に挿入することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、カバー部材4を構成する部位のうち、スロットルボディ14に固定されるフランジ部42(「固定部」)と、ICパッケージ2を支持する支持部50とは、樹脂により一体に形成されている。これにより、カバー部材4をスロットルボディ14に取り付けたとき、スロットル弁11の弁軸12に対する支持部50の位置が安定する。また、ICパッケージ2は、形成後の支持部50に圧入されることにより封止体30の外壁の一部に所定の圧力が作用した状態で、支持部50に支持されている。この構成により、支持部50および弁軸12に対するICパッケージ2の位置が安定する。
【0046】
上述のように、本実施形態では、ICパッケージ2は、形成後の支持部50に圧入されることにより支持部50に支持される構成である。そのため、「ICパッケージ2を樹脂製のカバー部材4でモールドする場合に生じる成形ストレス」がICパッケージ2および磁気検出素子21に作用するといった事態を回避することができる。よって、本実施形態による回転角検出装置1は、製造後の磁気検出素子21の破壊の有無を検査する工程を省くことができる。これにより、検査コストを低減することができる。
【0047】
また、ICパッケージ2は、そのすべてが樹脂(支持部50)により覆われる構成ではない。そのため、線膨張差による磁気検出素子21への熱応力の影響を低減することができる。これにより、磁気検出素子21の温度特性を安定させることができる。
【0048】
また、前記所定の圧力は、ICパッケージ2を保持可能な圧力以上、かつ、磁気検出素子21の破壊を招く程度の圧力より小さな圧力に設定されている。そのため、支持部50によりICパッケージ2を支持しても磁気検出素子21の破壊を招くことはない。
【0049】
このように、本実施形態では、磁気検出素子21の破壊を招くことなくICパッケージ2を安定してカバー部材4に固定可能である。カバー部材4に対してICパッケージ2を安定して固定可能なため、スロットル弁11の弁軸12に対する磁気検出素子21の位置も安定する。これにより、弁軸12が回転するときの磁界の変化に応じて磁気検出素子21が出力する信号が安定する。その結果、弁軸12の回転角の検出精度を高めることができる。
【0050】
また、本実施形態では、封止体30は、略直方体状に形成され、上面31、当該上面31の反対側の面であってリード22が突出する下面32、上面31と下面32との間の面である前面33、当該前面33の反対側の面である背面34、および、前面33と背面34との間の面である2つの側面(側面35、36)を有している。磁気検出素子21は、封止体30の中心部に位置するよう、かつ、感磁面211が前面33に対し略平行となるよう設けられている。そして、ICパッケージ2は、封止体30の前面33および背面34のうち、下面32および側面35のいずれにも近い隅部(隅部331、341)、ならびに、下面32および側面36のいずれにも近い隅部(隅部332、342)に所定の圧力が作用した状態、かつ、2つの側面(側面35、36)に所定の圧力が作用した状態で、支持部50に支持されている。
【0051】
つまり、支持部50は、封止体30の外壁のうち磁気検出素子21の感磁面211に対応する部分Pを避けた箇所(隅部331、341、332、342、側面35、36)を挟むようにしてICパッケージ2を支持している。この構成により、ICパッケージ2を支持部50に圧入固定するとき、磁気検出素子21の感磁面211に応力が作用するのを防ぐことができる。そのため、ICパッケージ2を固定した後の検査を簡易なものとすることができる。また、支持部50による熱応力が磁気検出素子21の感磁面211に作用するのを回避可能なため、磁気検出素子21の温度特性の悪化を防ぐことができる。
【0052】
また、支持部50は、封止体30の前面33および背面34のうちリード22の突出部近傍を挟むようにしてICパッケージ2を支持する構成のため、前面33および背面34に垂直な方向のICパッケージ2の位置ずれを抑制することができる。さらに、支持部50は、封止体30の両側面(側面35、36)を挟むようにしてICパッケージ2を支持する構成のため、側面に垂直な方向のICパッケージ2の位置ずれについても抑制することができる。これにより、振動によるICパッケージ2の振れを抑えることができるため、ICパッケージ2のリード22が破壊あるいは破断されるのを防ぐことができる。
【0053】
(他の実施形態)
本発明による他の実施形態では、図4に示すように、封止体30は、前面33と側面35との間の角部、および、前面33と側面36との間の角部が面取りされていてもよい。この実施形態では、前面支持部511および前面支持部521は、封止体30の面取りされた部分に当接している。
【0054】
上述の実施形態では、2つのICパッケージを重ねた状態でカバー部材の支持部に圧入する例を示した。これに対し、本発明による他の実施形態では、ICパッケージは、1つのみ支持部に圧入されて設けられる構成としてもよい。
【0055】
また、本発明による他の実施形態では、封止体の外壁に、ICパッケージを保持可能な圧力以上、かつ、磁気検出素子の破壊を招く程度の圧力より小さな圧力が作用するのであれば、支持部は、封止体の外壁のうち磁気検出素子の感磁面に対応する部分を含む箇所に当接して、ICパッケージを支持する構成でもよい。また、支持部は、「前面支持部および背面支持部」または「側面支持部」のいずれか一方のみ有する構成としてもよい。
【0056】
上述の実施形態では、支持部が第1支持部および第2支持部からなる構成例を示した。これに対し、本発明による他の実施形態では、支持部は、単に1つの柱状に形成され、その先端部にICパッケージが圧入される構成としてもよい。また、ICパッケージの封止体の形状は、直方体に限らず、どのような形状に形成されていてもよい。
【0057】
本発明による回転角検出装置は、スロットル弁の弁軸以外に、例えばアクセルペダルやクランクシャフト等の回転軸の回転角を検出するのにも用いることができる。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 ・・・・回転角検出装置
12 ・・・弁軸(検出対象)
14 ・・・スロットルボディ(支持体)
17 ・・・マグネット(磁気発生手段)
2 ・・・・ICパッケージ
21 ・・・磁気検出素子
22 ・・・リード
30 ・・・封止体
4 ・・・・カバー部材
42 ・・・フランジ部(固定部)
50 ・・・支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の回転角度を検出する回転角検出装置であって、
前記検出対象に取り付けられた磁気発生手段が回転することにより生じる磁界の変化に応じた信号を出力する磁気検出素子、当該磁気検出素子を覆う封止体、および、前記磁気検出素子に接続するとともに前記封止体から突出するよう設けられる複数のリードを有するICパッケージと、
前記検出対象を回転可能に支持する支持体に固定される固定部、および、前記磁気検出素子が前記信号を出力可能なよう前記ICパッケージを支持する支持部を有し、前記固定部が前記支持体に固定されることによって前記支持体に取り付けられるカバー部材と、を備え、
前記固定部および前記支持部は、樹脂により一体に形成され、
前記ICパッケージは、形成後の前記支持部に圧入されることにより前記封止体の外壁の一部に所定の圧力が作用した状態で、前記支持部に支持されていることを特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記封止体の外壁のうち前記磁気検出素子の感磁面に対応する部分を避けた箇所を挟むようにして前記ICパッケージを支持していることを特徴とする請求項1に記載の回転角検出装置。
【請求項3】
前記封止体は、略直方体状に形成され、上面、当該上面の反対側の面であって前記リードが突出する下面、前記上面と前記下面との間の面である前面、当該前面の反対側の面である背面、および、前記前面と前記背面との間の面である2つの側面を有し、
前記磁気検出素子は、前記封止体の中心部に位置するよう、かつ、感磁面が前記前面に対し略平行となるよう設けられ、
前記ICパッケージは、前記前面および前記背面のうち前記下面および前記側面のいずれにも近い隅部に所定の圧力が作用した状態で、前記支持部に支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転角検出装置。
【請求項4】
前記封止体は、略直方体状に形成され、上面、当該上面の反対側の面であって前記リードが突出する下面、前記上面と前記下面との間の面である前面、当該前面の反対側の面である背面、および、前記前面と前記背面との間の面である2つの側面を有し、
前記磁気検出素子は、前記封止体の中心部に位置するよう、かつ、感磁面が前記前面に対し略平行となるよう設けられ、
前記ICパッケージは、前記2つの側面に所定の圧力が作用した状態で、前記支持部に支持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転角検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−63202(P2012−63202A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206654(P2010−206654)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】