説明

回転部材間の導通機構

【課題】 クレーンのウインチ作動時においては、ドラムシャフトとウインチドラムとの間に介装されるベアリングが回転するが、その回転中にドラムシャフトとウインチドラムとの間の電気抵抗が大きくなって、電気的に導通しにくくなるのを回避する。
【解決手段】 クレーンのウインチ5のドラムシャフト6とウインチドラム8との間に介装されるベアリング7の外輪と内輪とを電気的に導通させる導通部材23をベアリング7の外側面に設けて、ドラムシャフト6とウインチドラム8との間を強制的に導通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部材間の導通機構、特に回転部材間に介装するベアリングの外輪と内輪とを電気的に導通させる導通部材を用いた導通機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明に関し、トラック等の車両に架装搭載される車載型クレーンのクレーン部を例にとって説明する。
例えば、図1に示すように、伸縮するクレーンブーム2の先端側にある先端ブーム22の先端部には、その先端部から巻上下用ワイヤロープ10を介して吊下したフック9の巻過ぎを検知する巻過スイッチ14が設けられている。この巻過スイッチ14は、クレーン作業時には接点が閉じた状態であり、巻過状態になると巻過スイッチ14が作動して接点が開となる通常閉の接点で構成されている。
【0003】
図5に示すように、この巻過スイッチ14の一方の端子は、コードリール16、スリップリング17、リレー18を介してクレーンを搭載するトラック等の車両に設けられるバッテリー19のプラス側に接続され、他方の端子は先端ブーム22にアースされている。リレー18は通常閉の接点を介してバッテリー19のプラス側と警報ブザー20の一方の端子に接続され、警報ブザー20の他方の端子はクレーンのベースにアースされている。バッテリー19のマイナス側はクレーンを搭載するトラック等の車両のシャーシにボディアースされている。なお、シャーシとクレーンのベースとは導通している。
【0004】
第1図に示すように、巻過スイッチ14のアースラインは、伸縮するクレーンブーム2、コラム1、旋回装置27、ベース、トラック等の車両のシャーシを介してバッテリー19のマイナス側に導通される第1の経路(以下、「ブーム間アース経路」という)と、先端ブーム22に軸着したワイヤソケット13、巻上下用ワイヤロープ10、ウインチドラム8、ベアリング7、ドラムシャフト6、コラム1、ベース、トラック等のシャーシを介してバッテリー19のマイナス側に導通される第2の経路(以下、「巻上下用ワイヤロープアース経路」という)の2つの経路を有している。
【0005】
図5において、巻過警報の作動は、クレーン作業時には巻過スイッチ14は非作動であり、その接点は閉である為、リレー18の接点は開となっており、従って警報ブザー20は鳴らないが、巻過スイッチ14が作動すると、その接点が開となり、これによりリレー18の接点が閉となり警報ブザー20が鳴り、巻過状態を知らせる。
【0006】
第1のブーム間アース経路では、巻過スイッチ14のアースは伸縮するクレーンブーム2を介してバッテリー19のマイナス側に導通しているが、クレーンブーム2が2段以上の伸縮ブームでは、ブームの伸縮状態によっては各ブーム間の接触が不安定になる場合がある。各ブーム間の接触が不安定になると、アースの導通が不安定となり、フック9が巻過状態でなくても巻過警報を発するなどの誤作動を生じる。
【0007】
各ブーム間の接触が不安定になる原因として、通常、隣接するブーム間の内側にある先端ブーム22の基端外側側面に、外側にある基端ブーム21との導通をはかるための金属製の側面摺動板221を取付けているが、クレーンブーム2の伸縮時の振動や荷重のかかり具合によっては、この金属製の側面摺動板221が隣接する基端ブーム21と断続的に非接触となりブーム間の導通が不安定となる為である。なお、内側の先端ブーム22の基端上部外側に上面摺動板222を、外側の基端ブーム21の先端下部内側に下面摺動板211を、それぞれ取付けているが、これはクレーンブーム2が伸縮する際の各ブーム間の摺動抵抗を減らすための樹脂製の摺動板であり、導通はない(図2参照)。
【0008】
この第1のブーム間アース経路の問題を解決したものとして、特許文献1がある。これは各ブーム間を強制的に金属接触させて各ブーム間の導通をはかるものである。しかしながらこの方式は、ブーム段数毎に金属製の導通部材が必要となる為、部品点数が増え、コスト高となり、またブーム製作上その取扱いが面倒である。
【0009】
また、第2の巻上下用ワイヤロープアース経路においては、ウインチ作動時において、ウインチドラム8とドラムシャフト6との間に介装されるベアリング7が回転するが、回転中はウインチドラム8とドラムシャフト6との間の電気抵抗が大きくなってそれらの間が導通しにくくなり、ブーム先端側に設けた巻過スイッチ14のアース経路としては今一つ信頼性に欠けていた。
【特許文献1】特開2004−250204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、この第2の巻上下用ワイヤロープアース経路の問題点が、ウインチドラム8の回転部分に使用するベアリング7の回転により生じることによるため、このベアリングの回転接触部分を強制的に導通させて上記課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、これがため、回転部材間に介装するベアリングの外側面に、このベアリングの外輪と内輪とを電気的に導通させる導通部材をベアリングと共に介装して回転部材間を強制的に導通するよう構成した回転部材間の導通機構を、前述した巻上下用ワイヤロープアース経路における回転部材間である、ウインチのドラムシャフトとウインチドラムとの間に適用して、上記課題を解決している。
【発明の効果】
【0012】
1.クレーンのウインチ5におけるドラムシャフト6とウインチドラム8との間の導通を確実に行うことができるので、 ブーム先端部に取付けられた巻過スイッチ14のアースは、巻上下用ワイヤロープ10を介してクレーンのベース側に確実に導通され、安定したアースの導通を確保でき、巻過警報の誤作動をなくすことができる。
2.ベアリング7を取付ける際、そのベアリング外側面に1枚の導通部材を添えるだけで、ブーム段数に関係なく、安価に確実に導通を確保できる。
3.従来のクレーンにも、特別な加工を必要とせず、容易に追加できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明を適用するクレーンの概略を示すもので、クレーンベース(図示略)に対して旋回装置27を介して旋回自在としたコラム1の先端部にクレーンブーム2がブーム起伏シリンダ3により起伏自在に設けられている。クレーンブーム2は、基端ブーム21と、この基端ブーム21内に摺動自在に嵌挿した先端ブーム22とより構成され、先端ブーム22がブーム伸縮シリンダ4により基端ブーム21に対して伸縮自在に構成されている。
【0014】
図3に示すように、コラム1にはウインチ5、ドラムシャフト6が設けられ、ドラムシャフト6にはベアリング7を介してウインチドラム8が回動自在に支承され、ウインチドラム8には後述するフック9の巻上巻下を行う巻上下用ワイヤロープ10が巻かれている。ウインチ5の回転によりウインチドラム8が回転し、このウインチドラム8から巻上下用ワイヤロープ10が繰出し繰込まれる。
【0015】
ウインチドラム8に巻かれた巻上下用ワイヤロープ10の他端は、クレーンブーム2の先端側に導かれ、先端ブーム22の先端部のブームトップ11に設けたブーム先端滑車12を介してフック9を吊下し、ブームトップ11に軸着したワイヤソケット13に止着されている。
従って、ウインチ5の巻上操作を行えばウインチドラム8が巻上下用ワイヤロープ10を繰込んでフック9が巻上げられ、ウインチ5の巻下操作を行えばウインチドラム8が巻上下用ワイヤロープ10を繰出してフック9が巻下げられる。
【0016】
ブームトップ11には巻過スイッチ14が取付けられており、この巻過スイッチ14は、この巻過スイッチ14から吊下した巻過ウエイト15がフック9の上昇によりこのフック9と当接すると、作動するようになっている。
【0017】
本発明の巻過警報回路を図5に示す。
巻過スイッチ14は、通常閉の接点であり、巻過状態で開となるよう構成されている。この巻過スイッチ14の一方の端子は、ブームトップ11に設けたコードリール16、クレーンのベースとコラム1との間に設けたスリップリング17、リレー18を介してバッテリー19のプラス側に接続され、他方の端子はブームトップ11にアースされている。
【0018】
リレー18は、通常閉の接点を介してバッテリー19のプラス側と警報ブザー20の一方側の端子に接続され、警報ブザー20の他方側の端子はクレーンのベースにアースされている。バッテリー19のマイナス側はクレーンを搭載するトラック等のシャーシにボディアースされている。なお、シャーシとベースとは導通している。
【0019】
巻過スイッチ14のブームトップ11へのアースは、ブームトップ11に軸着したワイヤソケット13、巻上下用ワイヤロープ10、ウインチドラム8、ベアリング7、ドラムシャフト6、コラム1、旋回装置27、ベース、シャーシ、バッテリー19のマイナス側に連通している。
なお、このアース経路でベアリング7のベアリング外輪7bとベアリング内輪7aとの導通は、ベアリング外輪7bとベアリング内輪7aとの間にあるベアリングボール7c等の転動部材ではなく、ベアリング7の外側面に設ける導通部材23により強制的に導通させる。即ち、この導通部材23は、図4に示すように、ベアリング外輪7bの外側面に当接するリング部24と、このリング部24から内側に延出した延出部25の先端に設けた先端部26をベアリング内輪7aの外側面に当接させて、外輪と内輪との電気的な導通を行わせるものである。
この導通部材23は、厚さを薄く構成できるので、ベアリング7をドラムシャフト6とウインチドラム8との間に介装する際に、そのベアリング7と共に圧入すれば簡単に介装することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】伸縮式2段ブームを有するクレーンの、コラムより上部を示す概略図である。
【図2】図1のA―A断面拡大図である。
【図3】図1のB―B断面拡大図である。
【図4】図3のC矢視拡大図である。
【図5】巻過警報の電気回路の概略図である。
【符号の説明】
【0021】
1 コラム
2 クレーンブーム
3 ブーム起伏シリンダ
4 ブーム伸縮シリンダ
5 ウインチ
6 ドラムシャフト
7 ベアリング
7a ベアリング内輪
7b ベアリング外輪
7c ベアリングボール
8 ウインチドラム
9 フック
10 巻上下用ワイヤロープ
11 ブームトップ
12 ブーム先端滑車
13 ワイヤソケット
14 巻過スイッチ
15 巻過ウエイト
16 コードリール
17 スリップリング
18 リレー
19 バッテリー
20 警報ブザー
21 基端ブーム
211 下面摺動板
22 先端ブーム
221 側面摺動板
222 上面摺動板
23 導通部材
24 リング部
25 延出部
26 先端部
27 旋回装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材間に介装するベアリングの外側面に、このベアリングの外輪と内輪とを電気的に導通させる導通部材をベアリングと共に介装して回転部材間を強制的に導通するよう構成したことを特徴とする回転部材間の導通機構。
【請求項2】
回転部材間が、クレーンのウインチのドラムシャフトとウインチドラムとの間である請求項1記載の回転部材間の導通機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−24135(P2007−24135A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205378(P2005−205378)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】