回転電機の固定子及びその製造方法
【課題】セグメント型コイルにおいて、コイルエンドの高さを低減し得るようにした回転電機の固定子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】固定子10は、互いに平行な一対の直線部23gと、一対の直線部23gの一端を互いに接続するターン部23dと、一対の直線部23gの他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する所定数のセグメント導体23と、一対の直線部23gを収容する複数のスロット25が形成された固定子コア22と、を備えている。セグメント導体23の所定の開放端部の先端部同士が接続されてセグメント型コイルが形成されている。開放端部は、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行するように折り曲げられた接合側斜行部23eと、接合側斜行部23eの先端から軸方向に延出する接合端部23fとを有する。接合側斜行部23eは、加圧加工により直線部23gよりも硬度が高められている。
【解決手段】固定子10は、互いに平行な一対の直線部23gと、一対の直線部23gの一端を互いに接続するターン部23dと、一対の直線部23gの他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する所定数のセグメント導体23と、一対の直線部23gを収容する複数のスロット25が形成された固定子コア22と、を備えている。セグメント導体23の所定の開放端部の先端部同士が接続されてセグメント型コイルが形成されている。開放端部は、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行するように折り曲げられた接合側斜行部23eと、接合側斜行部23eの先端から軸方向に延出する接合端部23fとを有する。接合側斜行部23eは、加圧加工により直線部23gよりも硬度が高められている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両に搭載される回転電機の固定子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セグメント型コイルが巻装されている固定子を搭載した回転電機として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この固定子は、周方向に複数のスロットを有する円環状の固定子コアと、スロットに挿入配置された複数の導体セグメントの所定の開放端同士が接続されて固定子コアに巻装された固定子コイルとを備えている。
【0003】
固定子コイルを形成するセグメント導体は、互いに平行な一対の直線部と、一対の直線部の一端を互いに接続するターン部とを有して略U字状に成形されている。このセグメント導体は、一対の直線部が所定のスロットピッチ離れた2個のスロットに軸方向一端側から挿入される。そして、スロットから軸方向他端側に延出した開放端部が、周方向に所定角度で斜めに斜行するように曲げられ、所定の開放端部の先端部同士が溶接等で接続されることによって直列に接続されてなるセグメント型コイルが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3438570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動機及び発電機として車両に使用される回転電機においては、高出力の要請に伴って大型化する傾向にある。特に、上記のセグメント型コイルの場合には、スロットから軸方向外部に延出したセグメント導体の開放端部が、周方向に斜めに斜行するように曲げられた後、開放端部の先端部同士が溶接等で接続される構造であるため、固定子コアの軸方向端面から外方へ突出した部分(コイルエンド)の突出高さが大きくなる。その結果、固定子コイルの体格が軸方向に大型化し易い。
【0006】
また、セグメント導体の開放端部が、周方向に斜めに斜行するように曲げられることにより形成される斜行部は、スロットピッチが長かったり、磁極数が少なかったりすると、湾曲状に撓んだ状態になってしまい、コイルエンドの突出高さ増大の原因になることが分かった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、セグメント型コイルにおいて、コイルエンドの高さを低減し得るようにした回転電機の固定子及びその製造方法を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、断面形状が概略矩形の導体線材が成形されてなり、互いに平行な一対の直線部と、一対の該直線部の一端を互いに接続するターン部と、一対の前記直線部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する所定数のセグメント導体と、一対の前記直線部を収容する複数のスロットが形成された固定子コアと、を備え、前記セグメント導体の所定の前記開放端部の先端部同士が接続されてセグメント型コイルが形成されている回転電機の固定子において、前記開放端部は、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行するように折り曲げられた斜行部と、該斜行部の先端から軸方向に延出する接合端部とを有し、前記斜行部は、前記直線部よりも硬度が高められていることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、セグメント導体の斜行部は、直線部よりも硬度が高められている。そのため、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行するように開放端部を折り曲げることにより形成される斜行部は、容易に変形し難くいことから、直線に近い形状を維持する。よって、斜行部におけるコイル間の隙間を小さくすることができるため、コイル同士の接触面積が増えることで、斜行部先端の高さ、即ち、コイルエンドの高さを低減することができる。
【0010】
本発明において、斜行部は、セグメント導体の開放端部のうち、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行する部分である。本発明では、セグメント導体の直線部と斜行部との間に形成される屈曲部は、斜行部に含まれない。また、開放端部の先端と斜行部との間に屈曲部が形成されている場合には、その屈曲部も斜行部に含まれない。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記斜行部は、加圧加工が施されることにより硬度が高められていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、加圧加工により、斜行部の硬度を簡単且つ容易に高めることができる。加工手段としては、例えば、パンチやローラ等の面で押圧するようにした加圧加工装置を用いることができる。この場合、加圧面に、例えばしぼ模様等の微小な凹凸を有するものを用いることが好ましい。このようにすれば、加工荷重を小さくすることができるので、セグメント導体の表面に被覆された絶縁被膜の損傷を抑制することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記斜行部は、前記加圧加工が施される前と後とで断面積が変化していないことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、斜行部の断面積が減少しないので、斜行部の電気抵抗が大きくならないようにすることができる。なお、斜行部の断面積が減少しないように加圧加工を行うには、断面形状が概略矩形の斜行部が両側から加圧された時に、斜行部の肉が断面に沿う方向へ逃げ得るようにすればよい。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記加圧加工は、前記斜行部の側面の4面を規制した状態で施されることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、斜行部に加圧力を伝え易いので、斜行部の硬度を確実に高めることができる。この場合、斜行部への加圧は、背向する2面を押圧するようにしても、4面全部を押圧するようにしてもよい。なお、加圧時に斜行部の肉を矩形断面形状の4箇所の角部に逃がすようにすることで、断面積が減少しないようにすることが可能である。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記加圧加工は、前記固定子コアの径方向において背向する前記斜行部の2面を加圧することにより施されることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、斜行部の断面積の減少を回避しつつ斜行部の硬度を良好に高めることができる。また、斜行部の断面形状を任意の形状に変更することができる。例えば、斜行部の断面形状が正方形である場合に、斜行部の背向する2を加圧することによって、長方形に変更することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、前記斜行部は、前記直線部よりも径方向の幅が小さくされていることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、コイルエンドの径方向幅及び外径を小さくすることができ、固定子や回転電機の小型化が可能となる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、前記斜行部は、全体に加圧加工が施されることにより硬度が高められていることを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、斜行部全体の硬度を均一に高めることができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、断面形状が概略矩形の導体線材が成形されてなり、互いに平行な一対の直線部と、一対の該直線部の一端を互いに接続するターン部と、一対の前記直線部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する所定数のセグメント導体と、一対の前記直線部を収容する複数のスロットが形成された固定子コアと、を備え、所定の前記セグメント導体の前記開放端部の先端部同士が接続されることによりセグメント型コイルが形成されている回転電機の固定子の製造方法において、前記固定子コアの所定の前記スロットに前記セグメント導体を挿入配置するセグメント導体配置工程と、前記セグメント導体の前記スロットから軸方向の外部に延出した前記開放端部を前記固定子コアの周方向に折り曲げて、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行する斜行部を形成する斜行部形成工程と、所定の前記開放端部の端末部同士を溶接して接続する溶接工程と、溶接で接続された接続部に絶縁処理を施す絶縁処理工程と、を有し、前記斜行部形成工程を行う前に、前記斜行部の形成予定部位の硬度を高める加圧加工工程を行うことを特徴とする。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、斜行部形成工程を行う前に、斜行部の形成予定部位の硬度を高める加圧加工工程を行うことで、斜行部形成工程を行う際に、開放端部を折り曲げることにより形成される斜行部を、直線に近い形状に維持させることができる。これにより、斜行部におけるコイル間の隙間を小さくすることができるため、コイル同士の接触面積が増えることで、斜行部先端の高さ、即ち、コイルエンドの高さを低減することができる。また、開放端部を折り曲げて斜行部を形成する際には、セグメント導体の直線部と傾斜部の形成予定部位との境界部に硬度差があるため、開放端部の折り曲げを容易に行うことができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、前記加圧加工工程は、前記セグメント導体配置工程を行う前に行われることを特徴とする。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、単独のセグメント導体に対して加圧加工を行うことができるので、加工が容易になる。
【0027】
請求項10に記載の発明は、前記加圧加工工程は、前記セグメント導体配置工程を行った後に行われることを特徴とする。
【0028】
請求項10に記載の発明によれば、固定子コアのスロットに配置された複数のセグメント導体を一括で加工することができるので、時間効率や生産性の向上を図ることができる。
【0029】
請求項11に記載の発明は、前記加圧加工工程は、加圧加工が施される前と後とで前記斜行部の断面積が変化しないように行われることを特徴とする。
【0030】
請求項11に記載の発明によれば、斜行部の断面積が減少しないので、斜行部の電気抵抗が大きくならないようにすることができる。なお、斜行部の断面積が減少しないように加圧加工を行うには、断面形状が概略矩形の斜行部が両側から加圧された時に、斜行部の肉が断面に沿う方向へ逃げ得るようにすればよい。
【0031】
請求項12に記載の発明は、前記加圧加工工程は、前記斜行部の側面の4面を規制した状態で行われることを特徴とする。
【0032】
請求項12に記載の発明によれば、斜行部に加圧力を伝え易いので、斜行部の硬度を確実に高めることができる。この場合、斜行部への加圧は、背向する2面を押圧するようにしても、4面全部を押圧するようにしてもよい。なお、加圧時に斜行部の肉を矩形断面形状の4箇所の角部に逃がすようにすることで、断面積が減少しないようにすることが可能である。
【0033】
請求項13に記載の発明は、前記加圧加工工程は、前記固定子コアの径方向両側で背向する2面を加圧して行われることを特徴とする。
【0034】
請求項13に記載の発明によれば、斜行部の断面積の減少を回避しつつ斜行部の硬度を良好に高めることができる。また、斜行部の断面形状を任意の形状に変更することができる。例えば、斜行部の断面形状が正方形である場合に、斜行部の背向する2を加圧することによって、長方形に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態に係る車両用交流発電機の軸方向断面図である。
【図2】実施形態に係る固定子の全体斜視図である。
【図3】実施形態に係る固定子の部分的な側面図である。
【図4】実施形態に係る固定子の部分的な断面図である。
【図5】実施形態に係るセグメント導体の模式的斜視図である。
【図6】実施形態において固定子コアのスロットにセグメント導体を挿入する状態を示す説明図である。
【図7】実施形態において接合側エンド部の外端層に位置するセグメント導体の配置状態を示す説明図である。
【図8】実施形態に係る固定子の接合側エンド部の一部を示す斜視図である。
【図9】実施形態においてセグメント導体が収容される固定子コアのスロットを説明するための固定子の部分断面図である。
【図10】実施形態に係る固定子の製造方法の各工程を示すブロック図である。
【図11】実施形態に係る固定子の製造方法の加圧加工工程の説明図である。
【図12】実施形態に係る固定子の製造方法の加圧加工工程の説明図である。
【図13】実施形態に係る固定子の製造方法の加圧加工工程の説明図であって、(a)は加圧前の状態を示し、(b)は加圧後の状態を示す。
【図14】他の実施形態において固定子コアのスロットにセグメント導体を挿入する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る回転電機の固定子を車両用交流発電機の固定子に適用した実施形態を図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0037】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る車両用交流発電機の軸方向断面図である。図2は、実施形態1に係る固定子の全体斜視図である。実施形態1に係る車両用交流発電機1は、固定子コイルが複数の略U字状のセグメント導体により構成されたセグメント型コイルであり、図1に示すように、電機子として働く固定子2と、界磁として働く回転子3と、固定子2及び回転子3を収容し、締結ボルト4cによって連結、固定されたフロントハウジング4a及びリアハウジング4bと、交流電力を直流電力に変換する整流器5等を含んで構成されている。
【0038】
固定子2は、図2に示すように、固定子コア22と、複数のセグメント導体23により構成された固定子コイル21と、固定子コア22及び固定子コイル21間を電気絶縁するインシュレータ24とを備えている。この固定子2は、フロントハウジング4a及びリアハウジング4b間で挟持されることにより固定されており、回転子3の外周側に所定の隙間を介して配置されている。固定子2の詳細な構造については後述する。
【0039】
回転子3は、フロントハウジング4a及びリアハウジング4bに回転可能に支持されたシャフト33と一体になって回転するもので、ランデル型ポールコア32と、界磁コイル31とを備えている。なお、シャフト33の前端部には、自動車に搭載された走行用のエンジン(図示せず)に図示しないベルト等を介して連結されたプーリ20が固定されている。
【0040】
ランデル型ポールコア32はフロント側及びリア側の一組のポールコア32a、32bを組み合わせて構成されている。各ポールコア32a、32bは、それぞれが6個の爪状磁極部32cを有し、絶縁処理された銅線を円筒状かつ同心状に巻回して構成された界磁コイル31を前後両側から挟み込むようにシャフト33に嵌挿されている。本実施形態では、ポールコア32a、32bは、各8個の磁極を持ち、即ち、16極の回転子3を形成している。
【0041】
フロントハウジング4aの軸方向端面(前端面)及びリアハウジング4bの軸方向端面(後端面)には、吸入孔42a、42bがそれぞれ設けられている。そして、フロント側の吸入孔42aから吸い込んだ冷却風を軸方向及び径方向に吐き出すための斜流ファン35がフロント側のポールコア32aの前端面に溶接等により固着されている。同様に、リア側の吸入孔42bから吸い込んだ冷却風を径方向に吐き出すための遠心ファン36がリア側のポールコア32bの後端面に溶接等により固着されている。また、フロントハウジング4a及びリアハウジング4bには、固定子コア22の軸方向両端から突出した固定子コイル21のコイルエンドに対向した部分に冷却風の吐出孔41がそれぞれ設けられている。
【0042】
シャフト33の後端部近傍には、界磁コイル31の両端に電気的に接続されたスリップリング37、38が形成されており、これらのスリップリング37、38を介してブラシ装置7から界磁コイル31に対して給電が行われるようになっている。
【0043】
上述した構成を有する車両用交流発電機1は、ベルト等を介してプーリ20にエンジンからの回転力が伝えられると、回転子3がシャフト33と共に所定方向に回転する。この状態で、スリップリング37、38を介してブラシ装置7から回転子3の界磁コイル31に励磁電圧を印加することにより、ポールコア32a、32bのそれぞれの爪状磁極部32cが励磁されて、回転子3の回転周方向に沿って交互にNS磁極が形成される。これにより、固定子コイル21に三相交流電圧を発生させることができ、整流器5の出力端子から所定の直流電流を取り出すことができる。
【0044】
次に、固定子2の詳細について説明する。図3は、実施形態1に係る固定子の部分的な側面図である。図4は、実施形態1に係る固定子の部分的な断面図である。図5は、実施形態1に係るセグメント導体の模式的斜視図である。図6は、実施形態1において固定子コアのスロットにセグメント導体を挿入する状態を示す説明図である。図7は、実施形態1において接合側エンド部の外端層に位置するセグメント導体の配置状態を示す説明図である。図8は、実施形態1に係る固定子の接合側エンド部の一部を示す斜視図である。図9は、実施形態1においてセグメント導体が収容される固定子コアのスロットを説明するための固定子の部分断面図である。
【0045】
なお、以下の説明において、軸方向とは、固定子コア22の軸方向を意味し、径方向とは、固定子コア22の径方向を意味し、周方向とは、固定子コア22の周方向を意味するものとする。
【0046】
固定子コア22には、多相の固定子コイル21を収容できるように、断面略矩形状の複数のスロット25が形成されている。本実施形態では、回転子3の磁極数16に対応して、2組の3相の固定子コイル21を収容するように、96個のスロット25が周方向に等間隔に配置されている。
【0047】
固定子コア22のスロット25に装備された固定子コイル21は、接合端部23f同士が互いに接合された複数の略U字状のセグメント導体23により構成されている。なお、セグメント導体23の外周には図示しない絶縁被膜が被覆されている。セグメント導体23は、図6に示すように、一対の直線部23g、23gとそれぞれの直線部23g、23gの一端部同士を連結するターン部23hとからなるU字形状のものが採用されている。このU字形状のセグメント導体23は、一対の直線部23g、23gが所定のスロットピッチ離れた2個のスロット25内に軸方向に挿入された後、スロット25から軸方向の外部に延出する直線部23g、23gの開放端部が、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行するように折り曲げられている。
【0048】
これにより、各セグメント導体23は、図5に示すように、スロット25内に挿入、配置され軸方向に沿って直線状に延びる一対のスロット挿入部23a、23aと、各スロット挿入部23a、23aの一端同士を連結するように一体に設けられてスロット25の軸方向一端側(車両用交流発電機1のリア側で図1の右側。以下、同様)から突出するターン側エンド部23b(ターン部23h)と、各スロット挿入部23a、23aの他端に一体に設けられてスロット25の軸方向他端側(車両用交流発電機1のフロント側で図1の左側。以下、同様)から突出する一対の接合側エンド部23c、23cとから構成されている。
【0049】
ターン側エンド部23bは、その先端に湾曲変形により形成された略V字状のターン部23dを有している。一方、各接合側エンド部23cは、屈曲変形により形成されて固定子コア22の軸方向端面に対して所定の角度をもって斜めに斜行する接合側斜行部23eと、この接合側斜行部23eの先端に一体に形成され、屈曲変形により形成された接合端部23fとを有している。
【0050】
接合側斜行部23eは、加圧加工が施されることにより直線部23g、23gよりも硬度が高められている。そのため、図7に示すように、容易に変形し難くいことから、直線に近い形状を維持している。これにより、接合側斜行部23eにおけるコイル間の隙間を小さくすることができるため、コイル同士の接触面積が増えることで、接合側斜行部23e先端の高さ、即ち、コイルエンドの高さhを低減することができる(図3参照)。
【0051】
固定子コア22の各スロット25には、それぞれ偶数本(本実施形態では4本)の電気導体(各セグメント導体23のスロット挿入部23a)が収容されている。また、一のスロット25内の4本の電気導体は、図4に示すように、径方向に沿って内側から内端層、内中層、外中層、外端層の順で一列に配列されている。なお、一のスロット25内の4本の電気導体は同相の固定子コイル21を形成している。
【0052】
各スロット25内に収容されたこれらの電気導体が所定のパターンで接続されることにより、固定子コイル21が形成される。なお、本実施形態では、スロット25内の電気導体は、軸方向一端側のターン側エンド部23bにおいては、ターン部23dを経由することにより、また、軸方向他端側の接合側エンド部23cにおいては、接合端部23f同士をアーク溶接によって接合することにより、電気的に接続されている。即ち、固定子コア22の軸方向一端側には、スロット25から突出した多数のターン部23dによって第1コイルエンド群が形成され、固定子コア22の軸方向他端側には、スロット25から突出した多数の接合側エンド部23cによって第2コイルエンド群が形成されている(図8参照)。
【0053】
各スロット25内の1本の電気導体は、所定の磁極ピッチ離れた他のスロット25内の1本の他の電気導体と対をなしている。
【0054】
例えば、図9に示すように、一のスロット25内の内端層の電気導体231aは、固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット25内の外端層の電気導体231bと対をなしている。同様に、一のスロット25内の内中層の電気導体232aは固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外中層の電気導体232bと対をなしている。そして、固定子コア22の軸方向一端側のターン側エンド部23bにおいて、これらの対をなす電気導体、すなわち内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとはターン部23d(231c)を経由することにより接続され、また、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとはターン部23d(232c)を経由することにより接続されている。
【0055】
したがって、固定子コア22の軸方向一端側においては、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとを接続するターン部23d(232c)を、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとを接続するターン部23d(231c)が囲むこととなる。このように、固定子コア22の軸方向一端側においては、対をなす電気導体同士の接続部としてのターン部23d(232c)が、同じスロット25内に収容された他の対をなす電気導体同士の接続部としてのターン部23d(231c)により囲まれる。そして、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとを接続するターン部23d(232c)により中層コイルエンドが形成され、また、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとを接続するターン部23d(231c)により端層コイルエンドが形成される。
【0056】
一方、一のスロット25内の内中層の電気導体232aは、固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の内端層の電気導体231a’とも対をなしている。同様に、一のスロット25内の外端層の電気導体231b’は、固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外中層の電気導体232bとも対をなしている。そして、固定子コア22の軸方向他端側の接合側エンド部23bにおいて、これらの対をなす電気導体、すなわち内中層の電気導体232aと内端層の電気導体231a’とは接合端部23f同士(232dと231d’)の接合により接続され、また、外端層の電気導体231b’と外中層の電気導体232bとは接合端部23f同士(231e’と232e)の接合により接続されている。
【0057】
したがって、固定子コア22の軸方向他端側においては、内中層の電気導体232a及び内端層の電気導体231a’を接続する内側接合部(接合端部232d及び231d’により構成されるもの)と、外端層の電気導体231b’及び外中層の電気導体232bを接合する外側接合部(接合端部231e’及び232eにより構成されるもの)とが、径方向及び周方向に互いにずれた状態で配置されている。そして、内中層の電気導体232a及び内端層の電気導体231a’を接続する内側接合部(接合端部232d及び231d’により構成されるもの)と、外端層の電気導体231b’及び外中層の電気導体232bを接合する外側接合部(接合端部231e’及び232eにより構成されるもの)とにより、異なる同心円上に配置された2つの隣接層コイルエンドが形成される。なお、外側接合部及び内側接合部には、これらの接合部の互いの絶縁と保持のために、絶縁材によるコーティングがなされている。
【0058】
さらに、図4に示すように、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとが、一連の導電体をほぼU字状に成形してなる大セグメント231(図6参照)により提供される。そして、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとが一連の導電体を略U字状に成形してなる小セグメント232(図6参照)により提供される。なお、基本となる略U字状のセグメント導体23は、大セグメント231及び小セグメント232によって構成される。
【0059】
以上の構成を、全てのスロット25の基本となるセグメント導体23について繰り返す。 なお、固定子コイル21の各相について、基本となるセグメント導体23により、固定子コア22の周りを2周する巻線(コイル)が形成される。しかし、固定子コイル21の各相について、出力用引き出し線及び中性点用引き出し線を一体に有するセグメント、並びに1周目と2周目とを接続するターン部を有するセグメントは、基本となるセグメント導体23とは異なる異形セグメントで構成される。これら異形セグメントを用いて、固定子コイル21の各相の巻線端が星型結線により結線される。
【0060】
次に、固定子2の製造方法について図10〜図13を参照しつつ説明する。本実施形態の固定子2の製造方法は、図10に示すように、加圧加工工程101と、セグメント導体配置工程102と、斜行部形成工程103と、溶接工程104と、絶縁処理工程105とを順に行う。
【0061】
最初の加圧加工工程101では、断面形状が略矩形のセグメント導体23の開放端部側にある接合側斜行部23eの形成予定部位に加圧加工を施して、その部位の硬度を高める処理を行う。図11は、接合側斜行部23eの形成予定部位を示す図である。この場合、接合側斜行部23eの形成予定部位は、加工前のセグメント導体23の直線部23gの先端部において、位置保持予定部位と曲げ予定部位との間に位置している。なお、接合側斜行部23eの形成予定部位は、その両側にある曲げ予定部位23p及び23qの間にあり、それら曲げ予定部位23p及び23qは、接合側斜行部23eの形成予定部位に含まれない。
【0062】
そして、図12に示すように、接合側斜行部23eの形成予定部位の全体を、ダイス51とパンチ53で上下両側から挟むようにセットする。本実施形態では、図13(a)に示すように、ダイス51とパンチ53の加圧面は、固定子コア22の径方向において背向する面となるセグメント導体23の2面と対向している。この状態で、ダイス51とパンチ53で、接合側斜行部23eの形成予定部位を上下両側から押圧する。これにより、接合側斜行部23eの形成予定部位の硬度が直線部23gの硬度よりも高められる。
【0063】
なお、加圧加工終了後には、図13(b)に示すように、接合側斜行部23eの形成予定部位の断面形状が偏平状の矩形に変化しており、接合側斜行部23eの形成予定部位の径方向幅は、直線部の径方向幅よりも小さくなっている。しかし、接合側斜行部23eの形成予定部位の断面積は、接合側斜行部23eの形成予定部位の2面に加圧するようにしているため、加圧加工が施される前と後とで変化していない。
【0064】
次のセグメント導体配置工程102では、固定子コア22の所定のスロット25に、所定のセグメント導体23を軸方向に挿入して配置する(図6参照)。このとき、U字形状のセグメント導体23は、一対の直線部23g、23gが所定の磁極ピッチ離れた所定の2つのスロット25に、挿入後方側にあるターン部23hの両端部が固定子コア22の端面に近接する位置まで挿入する。これにより、各直線部23g、23gの挿入先端側の開放端部は、スロット25から軸方向の外部に所定長さ延出した状態になる。
【0065】
次の斜行部形成工程103では、セグメント導体23のスロット25から軸方向外部に延出した開放端部の端末部を保持して、その開放端部を周方向に屈曲変形させる。これにより、固定子コア22の軸方向端面に対して所定角度をもって斜めに斜行する接合側斜行部23eと、この接合側斜行部23eの先端に一体に形成され、屈曲変形により形成された接合端部23fとを形成する(図5及び図7参照)。なお、接合端部23fは、スロット挿入部23aと平行に軸方向に延びるように形成される。
【0066】
このようにして、スロット25に挿入配置された全てのセグメント導体23の開放端部に対して、接合側斜行部23e及び接合端部23fを形成する加工を施し、斜行部形成工程103を終了する。なお、開放端部の屈曲加工時には、スプリングバックが発生し易いことから、斜行部形成工程103終了時においては、セグメント導体23の開放端部の端末部(接合端部23f)の軸方向位置が不揃いになり易い。そのため、溶接工程104を行う前に、必要に応じて位置揃え工程を行うようにしてもよい。
【0067】
次の溶接工程104では、まず、接合端部23fに対してアース電極を装着し、それら接合端部23fをアース電極で位置固定する。その後、溶接電極を下降させて、接続すべき接合端部23fと所定距離を隔てて対向するように溶接電極をセットする。次いで、接続すべき接合端部23fのそれぞれに対して、溶接電極からアークを放射させてアーク溶接を行う。これにより、放射されたアークにより接合端部23fに溶融部が形成され、接続すべき接合端部23fが溶融部で接合される。その後、アース電極及び溶接電極を退避させて、溶接工程104を終了する。
【0068】
次の絶縁処理工程105では、溶接工程104で溶接により接合された接合端部23f及びその周辺の導体露出部の絶縁処理を行う。本実施形態では、導体露出部及びその近傍の絶縁被膜の表面に粉体樹脂を塗布し、塗布した粉体樹脂を熱で溶融固化させる。これにより、導体露出部及びその近傍の絶縁被膜の表面が溶融固化した粉体樹脂で被覆されることにより、電気的に絶縁される。
【0069】
絶縁処理工程105終了後、必要に応じて適宜処理を施し、固定子2を完成させる。
【0070】
以上のように、本実施形態の固定子2によれば、セグメント導体23の接合側斜行部23eは、直線部23gよりも硬度が高められている。そのため、開放端部を折り曲げることにより接合側斜行部23eが形成された際には、容易に変形し難くいことから、直線に近い形状を維持する。よって、接合側斜行部23eにおけるコイル間の隙間を小さくすることができるため、コイル同士の接触面積が増えることで、接合側斜行部23e先端の高さ、即ち、コイルエンドの高さhを低減することができる。
【0071】
また、本実施形態では、接合側斜行部23eは、ダイス51パンチ53による加圧加工が施されることにより硬度が高められているので、接合側斜行部23eの硬度を簡単且つ容易に高めることができる。
【0072】
さらに、本実施形態では、接合側斜行部23eは、加圧加工が施される前と後とで断面積が変化しないようにされているので、接合側斜行部23eの電気抵抗が大きくならないようにすることができる。
【0073】
また、本実施形態では、加圧加工は、固定子コア22の径方向において背向する接合側斜行部23eの2面を加圧することにより施されるので、接合側斜行部23eの断面積の減少を回避しつつ、接合側斜行部23eの硬度を良好に高めることができる。また、接合側斜行部23eの断面形状を任意の形状に変更することができる。
【0074】
また、本実施形態では、接合側斜行部23eは、直線部23gよりも径方向の幅が小さくされているので、コイルエンドの径方向幅及び外径を小さくすることができ、固定子2や車両用交流発電機1の小型化が可能となる。
【0075】
さらに、本実施形態では、接合側斜行部23eは、全体に加圧加工が施されることにより硬度が高められているので、接合側斜行部23e全体の硬度を均一に高めることができる。
【0076】
そして、本実施形態の固定子2の製造方法によれば、接合側斜行部23eの形成予定部位の硬度を高める加圧加工工程を有するため、コイルエンドの高さhを低減することができる固定子2を簡単に製造することができる。
【0077】
また、本実施形態では、加圧加工工程101を、セグメント導体配置工程102を行う前に行うようにしているので、単独のセグメント導体23に対して加圧加工を行うことができるので、加工が容易になる。
【0078】
〔他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0079】
例えば、上記の実施形態では、加圧加工工程101において、加圧加工を、固定子コア22の径方向において背向する接合側斜行部23eの2面を加圧して行うようにしていたが、接合側斜行部23eの側面の4面を規制した状態で、加圧加工を施すようにしてもよい。このようにすれば、接合側斜行部23eに加圧力を伝え易いので、接合側斜行部23eの硬度を確実に高めることができる。
【0080】
また、上記の実施形態では、加圧加工工程101は、セグメント導体配置工程102を行う前に行うようにしていたが、セグメント導体配置工程102を行った後に加圧加工工程101を行うようにしもよい。このようにすれば、固定子コア22のスロット25に配置された複数のセグメント導体23を一括で加工することができるので、時間効率や生産性の向上を図ることができる。
【0081】
また、上記の実施形態では、固定子巻線21を構成するセグメント導体23は、図6に示すように、基本となる略U字状のセグメント導体23として、大セグメント231と小セグメント232とを組み合わせたものが採用されているが、例えば図14に示すように、同一形状の2個のセグメント導体23A、23Bを組み合わせるようにしてもよい。
【0082】
この場合、2個のセグメント導体23A、23Bは、それらの一対の脚部23g、23gが、同一のスロット25ではなく、隣接した2個のスロット25A、25Bに別々に挿入される。即ち、図14の右側にある2個のセグメント導体23A、23Bにおいて、一方のセグメント導体23Aは、一方の脚部23gが一のスロット25Aの外端層に挿入され、他方の脚部23gが固定子コア22の反時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の外中層に挿入される。
【0083】
そして、他方のセグメント導体23Bは、一方の脚部23gがスロット25Aと隣接したスロット25Bの外端層に挿入され、他方の脚部23gが固定子コア22の反時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の外中層に挿入される。即ち、2個のセグメント導体23A、23Bは、周方向に1スロットピッチずれた状態に配置される。
【0084】
これにより、セグメント導体23Aのターン部23hとセグメント導体23Bのターン部23hは、軸方向外方へ最も突出している中央部で交差しなくなるので、固定子コア22の一端面から突出しているターン部23hの突出高さを低くすることができる。
【0085】
なお、本実施形態の場合にも、上記のようにして、各スロット25に、それぞれ偶数本(本実施形態では4本)の脚部23gが挿入され、一のスロット25内に4本の脚部23gが径方向に沿って一列に配列される。そして、それらセグメント導体23A、23Bの、スロット25から外部へ延出した脚部23g、23gの開放端部は、上記の実施形態の場合と同様に、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行する所定形状(S字形状)の接合側斜行部23eを形成しつつ折り曲げられた後、所定のセグメント導体23の開放端部の端末部同士が溶接により接続されることによって固定子巻線21が形成される。
【0086】
なお、上記の実施形態は、本発明に係る回転電機の固定子を車両用交流発電機1の固定子2に適用した例を説明したが、本発明は、車両に搭載される回転電機として、発電機、あるいは電動機、さらには両者を選択的に使用しうる回転電機の固定子にも利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1…車両用交流発電機(回転電機)、 2…固定子、 3…回転子、 4…ハウジング、 5…整流器、 21…固定子コイル、 22…固定子コア、 23、23A、23B…セグメント導体、 231…大セグメント、 232…小セグメント、23a…スロット挿入部、 23b…ターン側エンド部、 23b”…第1開放端部、 23c…接合側エンド部、 23c”…第2開放端部、 23d…ターン部、 23e…接合側斜行部(斜行部)、 23f…接合端部、 24…インシュレータ、 25、25A、25B…スロット、 51…ダイス、 53…パンチ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両に搭載される回転電機の固定子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セグメント型コイルが巻装されている固定子を搭載した回転電機として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この固定子は、周方向に複数のスロットを有する円環状の固定子コアと、スロットに挿入配置された複数の導体セグメントの所定の開放端同士が接続されて固定子コアに巻装された固定子コイルとを備えている。
【0003】
固定子コイルを形成するセグメント導体は、互いに平行な一対の直線部と、一対の直線部の一端を互いに接続するターン部とを有して略U字状に成形されている。このセグメント導体は、一対の直線部が所定のスロットピッチ離れた2個のスロットに軸方向一端側から挿入される。そして、スロットから軸方向他端側に延出した開放端部が、周方向に所定角度で斜めに斜行するように曲げられ、所定の開放端部の先端部同士が溶接等で接続されることによって直列に接続されてなるセグメント型コイルが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3438570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動機及び発電機として車両に使用される回転電機においては、高出力の要請に伴って大型化する傾向にある。特に、上記のセグメント型コイルの場合には、スロットから軸方向外部に延出したセグメント導体の開放端部が、周方向に斜めに斜行するように曲げられた後、開放端部の先端部同士が溶接等で接続される構造であるため、固定子コアの軸方向端面から外方へ突出した部分(コイルエンド)の突出高さが大きくなる。その結果、固定子コイルの体格が軸方向に大型化し易い。
【0006】
また、セグメント導体の開放端部が、周方向に斜めに斜行するように曲げられることにより形成される斜行部は、スロットピッチが長かったり、磁極数が少なかったりすると、湾曲状に撓んだ状態になってしまい、コイルエンドの突出高さ増大の原因になることが分かった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、セグメント型コイルにおいて、コイルエンドの高さを低減し得るようにした回転電機の固定子及びその製造方法を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、断面形状が概略矩形の導体線材が成形されてなり、互いに平行な一対の直線部と、一対の該直線部の一端を互いに接続するターン部と、一対の前記直線部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する所定数のセグメント導体と、一対の前記直線部を収容する複数のスロットが形成された固定子コアと、を備え、前記セグメント導体の所定の前記開放端部の先端部同士が接続されてセグメント型コイルが形成されている回転電機の固定子において、前記開放端部は、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行するように折り曲げられた斜行部と、該斜行部の先端から軸方向に延出する接合端部とを有し、前記斜行部は、前記直線部よりも硬度が高められていることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、セグメント導体の斜行部は、直線部よりも硬度が高められている。そのため、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行するように開放端部を折り曲げることにより形成される斜行部は、容易に変形し難くいことから、直線に近い形状を維持する。よって、斜行部におけるコイル間の隙間を小さくすることができるため、コイル同士の接触面積が増えることで、斜行部先端の高さ、即ち、コイルエンドの高さを低減することができる。
【0010】
本発明において、斜行部は、セグメント導体の開放端部のうち、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行する部分である。本発明では、セグメント導体の直線部と斜行部との間に形成される屈曲部は、斜行部に含まれない。また、開放端部の先端と斜行部との間に屈曲部が形成されている場合には、その屈曲部も斜行部に含まれない。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記斜行部は、加圧加工が施されることにより硬度が高められていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、加圧加工により、斜行部の硬度を簡単且つ容易に高めることができる。加工手段としては、例えば、パンチやローラ等の面で押圧するようにした加圧加工装置を用いることができる。この場合、加圧面に、例えばしぼ模様等の微小な凹凸を有するものを用いることが好ましい。このようにすれば、加工荷重を小さくすることができるので、セグメント導体の表面に被覆された絶縁被膜の損傷を抑制することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記斜行部は、前記加圧加工が施される前と後とで断面積が変化していないことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、斜行部の断面積が減少しないので、斜行部の電気抵抗が大きくならないようにすることができる。なお、斜行部の断面積が減少しないように加圧加工を行うには、断面形状が概略矩形の斜行部が両側から加圧された時に、斜行部の肉が断面に沿う方向へ逃げ得るようにすればよい。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記加圧加工は、前記斜行部の側面の4面を規制した状態で施されることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、斜行部に加圧力を伝え易いので、斜行部の硬度を確実に高めることができる。この場合、斜行部への加圧は、背向する2面を押圧するようにしても、4面全部を押圧するようにしてもよい。なお、加圧時に斜行部の肉を矩形断面形状の4箇所の角部に逃がすようにすることで、断面積が減少しないようにすることが可能である。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記加圧加工は、前記固定子コアの径方向において背向する前記斜行部の2面を加圧することにより施されることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、斜行部の断面積の減少を回避しつつ斜行部の硬度を良好に高めることができる。また、斜行部の断面形状を任意の形状に変更することができる。例えば、斜行部の断面形状が正方形である場合に、斜行部の背向する2を加圧することによって、長方形に変更することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、前記斜行部は、前記直線部よりも径方向の幅が小さくされていることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、コイルエンドの径方向幅及び外径を小さくすることができ、固定子や回転電機の小型化が可能となる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、前記斜行部は、全体に加圧加工が施されることにより硬度が高められていることを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、斜行部全体の硬度を均一に高めることができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、断面形状が概略矩形の導体線材が成形されてなり、互いに平行な一対の直線部と、一対の該直線部の一端を互いに接続するターン部と、一対の前記直線部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する所定数のセグメント導体と、一対の前記直線部を収容する複数のスロットが形成された固定子コアと、を備え、所定の前記セグメント導体の前記開放端部の先端部同士が接続されることによりセグメント型コイルが形成されている回転電機の固定子の製造方法において、前記固定子コアの所定の前記スロットに前記セグメント導体を挿入配置するセグメント導体配置工程と、前記セグメント導体の前記スロットから軸方向の外部に延出した前記開放端部を前記固定子コアの周方向に折り曲げて、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行する斜行部を形成する斜行部形成工程と、所定の前記開放端部の端末部同士を溶接して接続する溶接工程と、溶接で接続された接続部に絶縁処理を施す絶縁処理工程と、を有し、前記斜行部形成工程を行う前に、前記斜行部の形成予定部位の硬度を高める加圧加工工程を行うことを特徴とする。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、斜行部形成工程を行う前に、斜行部の形成予定部位の硬度を高める加圧加工工程を行うことで、斜行部形成工程を行う際に、開放端部を折り曲げることにより形成される斜行部を、直線に近い形状に維持させることができる。これにより、斜行部におけるコイル間の隙間を小さくすることができるため、コイル同士の接触面積が増えることで、斜行部先端の高さ、即ち、コイルエンドの高さを低減することができる。また、開放端部を折り曲げて斜行部を形成する際には、セグメント導体の直線部と傾斜部の形成予定部位との境界部に硬度差があるため、開放端部の折り曲げを容易に行うことができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、前記加圧加工工程は、前記セグメント導体配置工程を行う前に行われることを特徴とする。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、単独のセグメント導体に対して加圧加工を行うことができるので、加工が容易になる。
【0027】
請求項10に記載の発明は、前記加圧加工工程は、前記セグメント導体配置工程を行った後に行われることを特徴とする。
【0028】
請求項10に記載の発明によれば、固定子コアのスロットに配置された複数のセグメント導体を一括で加工することができるので、時間効率や生産性の向上を図ることができる。
【0029】
請求項11に記載の発明は、前記加圧加工工程は、加圧加工が施される前と後とで前記斜行部の断面積が変化しないように行われることを特徴とする。
【0030】
請求項11に記載の発明によれば、斜行部の断面積が減少しないので、斜行部の電気抵抗が大きくならないようにすることができる。なお、斜行部の断面積が減少しないように加圧加工を行うには、断面形状が概略矩形の斜行部が両側から加圧された時に、斜行部の肉が断面に沿う方向へ逃げ得るようにすればよい。
【0031】
請求項12に記載の発明は、前記加圧加工工程は、前記斜行部の側面の4面を規制した状態で行われることを特徴とする。
【0032】
請求項12に記載の発明によれば、斜行部に加圧力を伝え易いので、斜行部の硬度を確実に高めることができる。この場合、斜行部への加圧は、背向する2面を押圧するようにしても、4面全部を押圧するようにしてもよい。なお、加圧時に斜行部の肉を矩形断面形状の4箇所の角部に逃がすようにすることで、断面積が減少しないようにすることが可能である。
【0033】
請求項13に記載の発明は、前記加圧加工工程は、前記固定子コアの径方向両側で背向する2面を加圧して行われることを特徴とする。
【0034】
請求項13に記載の発明によれば、斜行部の断面積の減少を回避しつつ斜行部の硬度を良好に高めることができる。また、斜行部の断面形状を任意の形状に変更することができる。例えば、斜行部の断面形状が正方形である場合に、斜行部の背向する2を加圧することによって、長方形に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態に係る車両用交流発電機の軸方向断面図である。
【図2】実施形態に係る固定子の全体斜視図である。
【図3】実施形態に係る固定子の部分的な側面図である。
【図4】実施形態に係る固定子の部分的な断面図である。
【図5】実施形態に係るセグメント導体の模式的斜視図である。
【図6】実施形態において固定子コアのスロットにセグメント導体を挿入する状態を示す説明図である。
【図7】実施形態において接合側エンド部の外端層に位置するセグメント導体の配置状態を示す説明図である。
【図8】実施形態に係る固定子の接合側エンド部の一部を示す斜視図である。
【図9】実施形態においてセグメント導体が収容される固定子コアのスロットを説明するための固定子の部分断面図である。
【図10】実施形態に係る固定子の製造方法の各工程を示すブロック図である。
【図11】実施形態に係る固定子の製造方法の加圧加工工程の説明図である。
【図12】実施形態に係る固定子の製造方法の加圧加工工程の説明図である。
【図13】実施形態に係る固定子の製造方法の加圧加工工程の説明図であって、(a)は加圧前の状態を示し、(b)は加圧後の状態を示す。
【図14】他の実施形態において固定子コアのスロットにセグメント導体を挿入する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る回転電機の固定子を車両用交流発電機の固定子に適用した実施形態を図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0037】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る車両用交流発電機の軸方向断面図である。図2は、実施形態1に係る固定子の全体斜視図である。実施形態1に係る車両用交流発電機1は、固定子コイルが複数の略U字状のセグメント導体により構成されたセグメント型コイルであり、図1に示すように、電機子として働く固定子2と、界磁として働く回転子3と、固定子2及び回転子3を収容し、締結ボルト4cによって連結、固定されたフロントハウジング4a及びリアハウジング4bと、交流電力を直流電力に変換する整流器5等を含んで構成されている。
【0038】
固定子2は、図2に示すように、固定子コア22と、複数のセグメント導体23により構成された固定子コイル21と、固定子コア22及び固定子コイル21間を電気絶縁するインシュレータ24とを備えている。この固定子2は、フロントハウジング4a及びリアハウジング4b間で挟持されることにより固定されており、回転子3の外周側に所定の隙間を介して配置されている。固定子2の詳細な構造については後述する。
【0039】
回転子3は、フロントハウジング4a及びリアハウジング4bに回転可能に支持されたシャフト33と一体になって回転するもので、ランデル型ポールコア32と、界磁コイル31とを備えている。なお、シャフト33の前端部には、自動車に搭載された走行用のエンジン(図示せず)に図示しないベルト等を介して連結されたプーリ20が固定されている。
【0040】
ランデル型ポールコア32はフロント側及びリア側の一組のポールコア32a、32bを組み合わせて構成されている。各ポールコア32a、32bは、それぞれが6個の爪状磁極部32cを有し、絶縁処理された銅線を円筒状かつ同心状に巻回して構成された界磁コイル31を前後両側から挟み込むようにシャフト33に嵌挿されている。本実施形態では、ポールコア32a、32bは、各8個の磁極を持ち、即ち、16極の回転子3を形成している。
【0041】
フロントハウジング4aの軸方向端面(前端面)及びリアハウジング4bの軸方向端面(後端面)には、吸入孔42a、42bがそれぞれ設けられている。そして、フロント側の吸入孔42aから吸い込んだ冷却風を軸方向及び径方向に吐き出すための斜流ファン35がフロント側のポールコア32aの前端面に溶接等により固着されている。同様に、リア側の吸入孔42bから吸い込んだ冷却風を径方向に吐き出すための遠心ファン36がリア側のポールコア32bの後端面に溶接等により固着されている。また、フロントハウジング4a及びリアハウジング4bには、固定子コア22の軸方向両端から突出した固定子コイル21のコイルエンドに対向した部分に冷却風の吐出孔41がそれぞれ設けられている。
【0042】
シャフト33の後端部近傍には、界磁コイル31の両端に電気的に接続されたスリップリング37、38が形成されており、これらのスリップリング37、38を介してブラシ装置7から界磁コイル31に対して給電が行われるようになっている。
【0043】
上述した構成を有する車両用交流発電機1は、ベルト等を介してプーリ20にエンジンからの回転力が伝えられると、回転子3がシャフト33と共に所定方向に回転する。この状態で、スリップリング37、38を介してブラシ装置7から回転子3の界磁コイル31に励磁電圧を印加することにより、ポールコア32a、32bのそれぞれの爪状磁極部32cが励磁されて、回転子3の回転周方向に沿って交互にNS磁極が形成される。これにより、固定子コイル21に三相交流電圧を発生させることができ、整流器5の出力端子から所定の直流電流を取り出すことができる。
【0044】
次に、固定子2の詳細について説明する。図3は、実施形態1に係る固定子の部分的な側面図である。図4は、実施形態1に係る固定子の部分的な断面図である。図5は、実施形態1に係るセグメント導体の模式的斜視図である。図6は、実施形態1において固定子コアのスロットにセグメント導体を挿入する状態を示す説明図である。図7は、実施形態1において接合側エンド部の外端層に位置するセグメント導体の配置状態を示す説明図である。図8は、実施形態1に係る固定子の接合側エンド部の一部を示す斜視図である。図9は、実施形態1においてセグメント導体が収容される固定子コアのスロットを説明するための固定子の部分断面図である。
【0045】
なお、以下の説明において、軸方向とは、固定子コア22の軸方向を意味し、径方向とは、固定子コア22の径方向を意味し、周方向とは、固定子コア22の周方向を意味するものとする。
【0046】
固定子コア22には、多相の固定子コイル21を収容できるように、断面略矩形状の複数のスロット25が形成されている。本実施形態では、回転子3の磁極数16に対応して、2組の3相の固定子コイル21を収容するように、96個のスロット25が周方向に等間隔に配置されている。
【0047】
固定子コア22のスロット25に装備された固定子コイル21は、接合端部23f同士が互いに接合された複数の略U字状のセグメント導体23により構成されている。なお、セグメント導体23の外周には図示しない絶縁被膜が被覆されている。セグメント導体23は、図6に示すように、一対の直線部23g、23gとそれぞれの直線部23g、23gの一端部同士を連結するターン部23hとからなるU字形状のものが採用されている。このU字形状のセグメント導体23は、一対の直線部23g、23gが所定のスロットピッチ離れた2個のスロット25内に軸方向に挿入された後、スロット25から軸方向の外部に延出する直線部23g、23gの開放端部が、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行するように折り曲げられている。
【0048】
これにより、各セグメント導体23は、図5に示すように、スロット25内に挿入、配置され軸方向に沿って直線状に延びる一対のスロット挿入部23a、23aと、各スロット挿入部23a、23aの一端同士を連結するように一体に設けられてスロット25の軸方向一端側(車両用交流発電機1のリア側で図1の右側。以下、同様)から突出するターン側エンド部23b(ターン部23h)と、各スロット挿入部23a、23aの他端に一体に設けられてスロット25の軸方向他端側(車両用交流発電機1のフロント側で図1の左側。以下、同様)から突出する一対の接合側エンド部23c、23cとから構成されている。
【0049】
ターン側エンド部23bは、その先端に湾曲変形により形成された略V字状のターン部23dを有している。一方、各接合側エンド部23cは、屈曲変形により形成されて固定子コア22の軸方向端面に対して所定の角度をもって斜めに斜行する接合側斜行部23eと、この接合側斜行部23eの先端に一体に形成され、屈曲変形により形成された接合端部23fとを有している。
【0050】
接合側斜行部23eは、加圧加工が施されることにより直線部23g、23gよりも硬度が高められている。そのため、図7に示すように、容易に変形し難くいことから、直線に近い形状を維持している。これにより、接合側斜行部23eにおけるコイル間の隙間を小さくすることができるため、コイル同士の接触面積が増えることで、接合側斜行部23e先端の高さ、即ち、コイルエンドの高さhを低減することができる(図3参照)。
【0051】
固定子コア22の各スロット25には、それぞれ偶数本(本実施形態では4本)の電気導体(各セグメント導体23のスロット挿入部23a)が収容されている。また、一のスロット25内の4本の電気導体は、図4に示すように、径方向に沿って内側から内端層、内中層、外中層、外端層の順で一列に配列されている。なお、一のスロット25内の4本の電気導体は同相の固定子コイル21を形成している。
【0052】
各スロット25内に収容されたこれらの電気導体が所定のパターンで接続されることにより、固定子コイル21が形成される。なお、本実施形態では、スロット25内の電気導体は、軸方向一端側のターン側エンド部23bにおいては、ターン部23dを経由することにより、また、軸方向他端側の接合側エンド部23cにおいては、接合端部23f同士をアーク溶接によって接合することにより、電気的に接続されている。即ち、固定子コア22の軸方向一端側には、スロット25から突出した多数のターン部23dによって第1コイルエンド群が形成され、固定子コア22の軸方向他端側には、スロット25から突出した多数の接合側エンド部23cによって第2コイルエンド群が形成されている(図8参照)。
【0053】
各スロット25内の1本の電気導体は、所定の磁極ピッチ離れた他のスロット25内の1本の他の電気導体と対をなしている。
【0054】
例えば、図9に示すように、一のスロット25内の内端層の電気導体231aは、固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット25内の外端層の電気導体231bと対をなしている。同様に、一のスロット25内の内中層の電気導体232aは固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外中層の電気導体232bと対をなしている。そして、固定子コア22の軸方向一端側のターン側エンド部23bにおいて、これらの対をなす電気導体、すなわち内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとはターン部23d(231c)を経由することにより接続され、また、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとはターン部23d(232c)を経由することにより接続されている。
【0055】
したがって、固定子コア22の軸方向一端側においては、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとを接続するターン部23d(232c)を、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとを接続するターン部23d(231c)が囲むこととなる。このように、固定子コア22の軸方向一端側においては、対をなす電気導体同士の接続部としてのターン部23d(232c)が、同じスロット25内に収容された他の対をなす電気導体同士の接続部としてのターン部23d(231c)により囲まれる。そして、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとを接続するターン部23d(232c)により中層コイルエンドが形成され、また、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとを接続するターン部23d(231c)により端層コイルエンドが形成される。
【0056】
一方、一のスロット25内の内中層の電気導体232aは、固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の内端層の電気導体231a’とも対をなしている。同様に、一のスロット25内の外端層の電気導体231b’は、固定子コア22の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット25内の外中層の電気導体232bとも対をなしている。そして、固定子コア22の軸方向他端側の接合側エンド部23bにおいて、これらの対をなす電気導体、すなわち内中層の電気導体232aと内端層の電気導体231a’とは接合端部23f同士(232dと231d’)の接合により接続され、また、外端層の電気導体231b’と外中層の電気導体232bとは接合端部23f同士(231e’と232e)の接合により接続されている。
【0057】
したがって、固定子コア22の軸方向他端側においては、内中層の電気導体232a及び内端層の電気導体231a’を接続する内側接合部(接合端部232d及び231d’により構成されるもの)と、外端層の電気導体231b’及び外中層の電気導体232bを接合する外側接合部(接合端部231e’及び232eにより構成されるもの)とが、径方向及び周方向に互いにずれた状態で配置されている。そして、内中層の電気導体232a及び内端層の電気導体231a’を接続する内側接合部(接合端部232d及び231d’により構成されるもの)と、外端層の電気導体231b’及び外中層の電気導体232bを接合する外側接合部(接合端部231e’及び232eにより構成されるもの)とにより、異なる同心円上に配置された2つの隣接層コイルエンドが形成される。なお、外側接合部及び内側接合部には、これらの接合部の互いの絶縁と保持のために、絶縁材によるコーティングがなされている。
【0058】
さらに、図4に示すように、内端層の電気導体231aと外端層の電気導体231bとが、一連の導電体をほぼU字状に成形してなる大セグメント231(図6参照)により提供される。そして、内中層の電気導体232aと外中層の電気導体232bとが一連の導電体を略U字状に成形してなる小セグメント232(図6参照)により提供される。なお、基本となる略U字状のセグメント導体23は、大セグメント231及び小セグメント232によって構成される。
【0059】
以上の構成を、全てのスロット25の基本となるセグメント導体23について繰り返す。 なお、固定子コイル21の各相について、基本となるセグメント導体23により、固定子コア22の周りを2周する巻線(コイル)が形成される。しかし、固定子コイル21の各相について、出力用引き出し線及び中性点用引き出し線を一体に有するセグメント、並びに1周目と2周目とを接続するターン部を有するセグメントは、基本となるセグメント導体23とは異なる異形セグメントで構成される。これら異形セグメントを用いて、固定子コイル21の各相の巻線端が星型結線により結線される。
【0060】
次に、固定子2の製造方法について図10〜図13を参照しつつ説明する。本実施形態の固定子2の製造方法は、図10に示すように、加圧加工工程101と、セグメント導体配置工程102と、斜行部形成工程103と、溶接工程104と、絶縁処理工程105とを順に行う。
【0061】
最初の加圧加工工程101では、断面形状が略矩形のセグメント導体23の開放端部側にある接合側斜行部23eの形成予定部位に加圧加工を施して、その部位の硬度を高める処理を行う。図11は、接合側斜行部23eの形成予定部位を示す図である。この場合、接合側斜行部23eの形成予定部位は、加工前のセグメント導体23の直線部23gの先端部において、位置保持予定部位と曲げ予定部位との間に位置している。なお、接合側斜行部23eの形成予定部位は、その両側にある曲げ予定部位23p及び23qの間にあり、それら曲げ予定部位23p及び23qは、接合側斜行部23eの形成予定部位に含まれない。
【0062】
そして、図12に示すように、接合側斜行部23eの形成予定部位の全体を、ダイス51とパンチ53で上下両側から挟むようにセットする。本実施形態では、図13(a)に示すように、ダイス51とパンチ53の加圧面は、固定子コア22の径方向において背向する面となるセグメント導体23の2面と対向している。この状態で、ダイス51とパンチ53で、接合側斜行部23eの形成予定部位を上下両側から押圧する。これにより、接合側斜行部23eの形成予定部位の硬度が直線部23gの硬度よりも高められる。
【0063】
なお、加圧加工終了後には、図13(b)に示すように、接合側斜行部23eの形成予定部位の断面形状が偏平状の矩形に変化しており、接合側斜行部23eの形成予定部位の径方向幅は、直線部の径方向幅よりも小さくなっている。しかし、接合側斜行部23eの形成予定部位の断面積は、接合側斜行部23eの形成予定部位の2面に加圧するようにしているため、加圧加工が施される前と後とで変化していない。
【0064】
次のセグメント導体配置工程102では、固定子コア22の所定のスロット25に、所定のセグメント導体23を軸方向に挿入して配置する(図6参照)。このとき、U字形状のセグメント導体23は、一対の直線部23g、23gが所定の磁極ピッチ離れた所定の2つのスロット25に、挿入後方側にあるターン部23hの両端部が固定子コア22の端面に近接する位置まで挿入する。これにより、各直線部23g、23gの挿入先端側の開放端部は、スロット25から軸方向の外部に所定長さ延出した状態になる。
【0065】
次の斜行部形成工程103では、セグメント導体23のスロット25から軸方向外部に延出した開放端部の端末部を保持して、その開放端部を周方向に屈曲変形させる。これにより、固定子コア22の軸方向端面に対して所定角度をもって斜めに斜行する接合側斜行部23eと、この接合側斜行部23eの先端に一体に形成され、屈曲変形により形成された接合端部23fとを形成する(図5及び図7参照)。なお、接合端部23fは、スロット挿入部23aと平行に軸方向に延びるように形成される。
【0066】
このようにして、スロット25に挿入配置された全てのセグメント導体23の開放端部に対して、接合側斜行部23e及び接合端部23fを形成する加工を施し、斜行部形成工程103を終了する。なお、開放端部の屈曲加工時には、スプリングバックが発生し易いことから、斜行部形成工程103終了時においては、セグメント導体23の開放端部の端末部(接合端部23f)の軸方向位置が不揃いになり易い。そのため、溶接工程104を行う前に、必要に応じて位置揃え工程を行うようにしてもよい。
【0067】
次の溶接工程104では、まず、接合端部23fに対してアース電極を装着し、それら接合端部23fをアース電極で位置固定する。その後、溶接電極を下降させて、接続すべき接合端部23fと所定距離を隔てて対向するように溶接電極をセットする。次いで、接続すべき接合端部23fのそれぞれに対して、溶接電極からアークを放射させてアーク溶接を行う。これにより、放射されたアークにより接合端部23fに溶融部が形成され、接続すべき接合端部23fが溶融部で接合される。その後、アース電極及び溶接電極を退避させて、溶接工程104を終了する。
【0068】
次の絶縁処理工程105では、溶接工程104で溶接により接合された接合端部23f及びその周辺の導体露出部の絶縁処理を行う。本実施形態では、導体露出部及びその近傍の絶縁被膜の表面に粉体樹脂を塗布し、塗布した粉体樹脂を熱で溶融固化させる。これにより、導体露出部及びその近傍の絶縁被膜の表面が溶融固化した粉体樹脂で被覆されることにより、電気的に絶縁される。
【0069】
絶縁処理工程105終了後、必要に応じて適宜処理を施し、固定子2を完成させる。
【0070】
以上のように、本実施形態の固定子2によれば、セグメント導体23の接合側斜行部23eは、直線部23gよりも硬度が高められている。そのため、開放端部を折り曲げることにより接合側斜行部23eが形成された際には、容易に変形し難くいことから、直線に近い形状を維持する。よって、接合側斜行部23eにおけるコイル間の隙間を小さくすることができるため、コイル同士の接触面積が増えることで、接合側斜行部23e先端の高さ、即ち、コイルエンドの高さhを低減することができる。
【0071】
また、本実施形態では、接合側斜行部23eは、ダイス51パンチ53による加圧加工が施されることにより硬度が高められているので、接合側斜行部23eの硬度を簡単且つ容易に高めることができる。
【0072】
さらに、本実施形態では、接合側斜行部23eは、加圧加工が施される前と後とで断面積が変化しないようにされているので、接合側斜行部23eの電気抵抗が大きくならないようにすることができる。
【0073】
また、本実施形態では、加圧加工は、固定子コア22の径方向において背向する接合側斜行部23eの2面を加圧することにより施されるので、接合側斜行部23eの断面積の減少を回避しつつ、接合側斜行部23eの硬度を良好に高めることができる。また、接合側斜行部23eの断面形状を任意の形状に変更することができる。
【0074】
また、本実施形態では、接合側斜行部23eは、直線部23gよりも径方向の幅が小さくされているので、コイルエンドの径方向幅及び外径を小さくすることができ、固定子2や車両用交流発電機1の小型化が可能となる。
【0075】
さらに、本実施形態では、接合側斜行部23eは、全体に加圧加工が施されることにより硬度が高められているので、接合側斜行部23e全体の硬度を均一に高めることができる。
【0076】
そして、本実施形態の固定子2の製造方法によれば、接合側斜行部23eの形成予定部位の硬度を高める加圧加工工程を有するため、コイルエンドの高さhを低減することができる固定子2を簡単に製造することができる。
【0077】
また、本実施形態では、加圧加工工程101を、セグメント導体配置工程102を行う前に行うようにしているので、単独のセグメント導体23に対して加圧加工を行うことができるので、加工が容易になる。
【0078】
〔他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0079】
例えば、上記の実施形態では、加圧加工工程101において、加圧加工を、固定子コア22の径方向において背向する接合側斜行部23eの2面を加圧して行うようにしていたが、接合側斜行部23eの側面の4面を規制した状態で、加圧加工を施すようにしてもよい。このようにすれば、接合側斜行部23eに加圧力を伝え易いので、接合側斜行部23eの硬度を確実に高めることができる。
【0080】
また、上記の実施形態では、加圧加工工程101は、セグメント導体配置工程102を行う前に行うようにしていたが、セグメント導体配置工程102を行った後に加圧加工工程101を行うようにしもよい。このようにすれば、固定子コア22のスロット25に配置された複数のセグメント導体23を一括で加工することができるので、時間効率や生産性の向上を図ることができる。
【0081】
また、上記の実施形態では、固定子巻線21を構成するセグメント導体23は、図6に示すように、基本となる略U字状のセグメント導体23として、大セグメント231と小セグメント232とを組み合わせたものが採用されているが、例えば図14に示すように、同一形状の2個のセグメント導体23A、23Bを組み合わせるようにしてもよい。
【0082】
この場合、2個のセグメント導体23A、23Bは、それらの一対の脚部23g、23gが、同一のスロット25ではなく、隣接した2個のスロット25A、25Bに別々に挿入される。即ち、図14の右側にある2個のセグメント導体23A、23Bにおいて、一方のセグメント導体23Aは、一方の脚部23gが一のスロット25Aの外端層に挿入され、他方の脚部23gが固定子コア22の反時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の外中層に挿入される。
【0083】
そして、他方のセグメント導体23Bは、一方の脚部23gがスロット25Aと隣接したスロット25Bの外端層に挿入され、他方の脚部23gが固定子コア22の反時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の外中層に挿入される。即ち、2個のセグメント導体23A、23Bは、周方向に1スロットピッチずれた状態に配置される。
【0084】
これにより、セグメント導体23Aのターン部23hとセグメント導体23Bのターン部23hは、軸方向外方へ最も突出している中央部で交差しなくなるので、固定子コア22の一端面から突出しているターン部23hの突出高さを低くすることができる。
【0085】
なお、本実施形態の場合にも、上記のようにして、各スロット25に、それぞれ偶数本(本実施形態では4本)の脚部23gが挿入され、一のスロット25内に4本の脚部23gが径方向に沿って一列に配列される。そして、それらセグメント導体23A、23Bの、スロット25から外部へ延出した脚部23g、23gの開放端部は、上記の実施形態の場合と同様に、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行する所定形状(S字形状)の接合側斜行部23eを形成しつつ折り曲げられた後、所定のセグメント導体23の開放端部の端末部同士が溶接により接続されることによって固定子巻線21が形成される。
【0086】
なお、上記の実施形態は、本発明に係る回転電機の固定子を車両用交流発電機1の固定子2に適用した例を説明したが、本発明は、車両に搭載される回転電機として、発電機、あるいは電動機、さらには両者を選択的に使用しうる回転電機の固定子にも利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1…車両用交流発電機(回転電機)、 2…固定子、 3…回転子、 4…ハウジング、 5…整流器、 21…固定子コイル、 22…固定子コア、 23、23A、23B…セグメント導体、 231…大セグメント、 232…小セグメント、23a…スロット挿入部、 23b…ターン側エンド部、 23b”…第1開放端部、 23c…接合側エンド部、 23c”…第2開放端部、 23d…ターン部、 23e…接合側斜行部(斜行部)、 23f…接合端部、 24…インシュレータ、 25、25A、25B…スロット、 51…ダイス、 53…パンチ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状が概略矩形の導体線材が成形されてなり、互いに平行な一対の直線部と、一対の該直線部の一端を互いに接続するターン部と、一対の前記直線部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する所定数のセグメント導体と、
一対の前記直線部を収容する複数のスロットが形成された固定子コアと、を備え、
前記セグメント導体の所定の前記開放端部の先端部同士が接続されてセグメント型コイルが形成されている回転電機の固定子において、
前記開放端部は、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行するように折り曲げられた斜行部と、該斜行部の先端から軸方向に延出する接合端部とを有し、
前記斜行部は、前記直線部よりも硬度が高められていることを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項2】
前記斜行部は、加圧加工が施されることにより硬度が高められていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子。
【請求項3】
前記斜行部は、前記加圧加工が施される前と後とで断面積が変化していないことを特徴とする請求項2に記載の回転電機の固定子。
【請求項4】
前記加圧加工は、前記斜行部の側面の4面を規制した状態で施されることを特徴とする請求項2又は3に記載の回転電機の固定子。
【請求項5】
前記加圧加工は、前記固定子コアの径方向において背向する前記斜行部の2面を加圧することにより施されることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項6】
前記斜行部は、前記直線部よりも径方向の幅が小さくされていることを特徴とする請求項5に記載の回転電機の固定子。
【請求項7】
前記斜行部は、全体に加圧加工が施されることにより硬度が高められていることを特徴とする請求項2〜6の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項8】
断面形状が概略矩形の導体線材が成形されてなり、互いに平行な一対の直線部と、一対の該直線部の一端を互いに接続するターン部と、一対の前記直線部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する所定数のセグメント導体と、一対の前記直線部を収容する複数のスロットが形成された固定子コアと、を備え、所定の前記セグメント導体の前記開放端部の先端部同士が接続されることによりセグメント型コイルが形成されている回転電機の固定子の製造方法において、
前記固定子コアの所定の前記スロットに前記セグメント導体を挿入配置するセグメント導体配置工程と、
前記セグメント導体の前記スロットから軸方向の外部に延出した前記開放端部を前記固定子コアの周方向に折り曲げて、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行する斜行部を形成する斜行部形成工程と、
所定の前記開放端部の端末部同士を溶接して接続する溶接工程と、
溶接で接続された接続部に絶縁処理を施す絶縁処理工程と、を有し、
前記斜行部形成工程を行う前に、前記斜行部の形成予定部位の硬度を高める加圧加工工程を行うことを特徴とする回転電機の固定子の製造方法。
【請求項9】
前記加圧加工工程は、前記セグメント導体配置工程を行う前に行われることを特徴とする請求項8に記載の回転電機の固定子の製造方法。
【請求項10】
前記加圧加工工程は、前記セグメント導体配置工程を行った後に行われることを特徴とする請求項8に記載の回転電機の固定子の製造方法。
【請求項11】
前記加圧加工工程は、加圧加工が施される前と後とで前記斜行部の断面積が変化しないように行われることを特徴とする請求項8〜10の何れか一項に記載の回転電機の固定子の製造方法。
【請求項12】
前記加圧加工工程は、前記斜行部の側面の4面を規制した状態で行われることを特徴とする請求項8〜11の何れか一項に記載の回転電機の固定子の製造方法。
【請求項13】
前記加圧加工工程は、前記固定子コアの径方向両側で背向する2面を加圧して行われることを特徴とする請求項8〜11の何れか一項に記載の回転電機の固定子の製造方法。
【請求項1】
断面形状が概略矩形の導体線材が成形されてなり、互いに平行な一対の直線部と、一対の該直線部の一端を互いに接続するターン部と、一対の前記直線部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する所定数のセグメント導体と、
一対の前記直線部を収容する複数のスロットが形成された固定子コアと、を備え、
前記セグメント導体の所定の前記開放端部の先端部同士が接続されてセグメント型コイルが形成されている回転電機の固定子において、
前記開放端部は、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行するように折り曲げられた斜行部と、該斜行部の先端から軸方向に延出する接合端部とを有し、
前記斜行部は、前記直線部よりも硬度が高められていることを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項2】
前記斜行部は、加圧加工が施されることにより硬度が高められていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子。
【請求項3】
前記斜行部は、前記加圧加工が施される前と後とで断面積が変化していないことを特徴とする請求項2に記載の回転電機の固定子。
【請求項4】
前記加圧加工は、前記斜行部の側面の4面を規制した状態で施されることを特徴とする請求項2又は3に記載の回転電機の固定子。
【請求項5】
前記加圧加工は、前記固定子コアの径方向において背向する前記斜行部の2面を加圧することにより施されることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項6】
前記斜行部は、前記直線部よりも径方向の幅が小さくされていることを特徴とする請求項5に記載の回転電機の固定子。
【請求項7】
前記斜行部は、全体に加圧加工が施されることにより硬度が高められていることを特徴とする請求項2〜6の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項8】
断面形状が概略矩形の導体線材が成形されてなり、互いに平行な一対の直線部と、一対の該直線部の一端を互いに接続するターン部と、一対の前記直線部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する所定数のセグメント導体と、一対の前記直線部を収容する複数のスロットが形成された固定子コアと、を備え、所定の前記セグメント導体の前記開放端部の先端部同士が接続されることによりセグメント型コイルが形成されている回転電機の固定子の製造方法において、
前記固定子コアの所定の前記スロットに前記セグメント導体を挿入配置するセグメント導体配置工程と、
前記セグメント導体の前記スロットから軸方向の外部に延出した前記開放端部を前記固定子コアの周方向に折り曲げて、周方向に所定の角度をもって斜めに斜行する斜行部を形成する斜行部形成工程と、
所定の前記開放端部の端末部同士を溶接して接続する溶接工程と、
溶接で接続された接続部に絶縁処理を施す絶縁処理工程と、を有し、
前記斜行部形成工程を行う前に、前記斜行部の形成予定部位の硬度を高める加圧加工工程を行うことを特徴とする回転電機の固定子の製造方法。
【請求項9】
前記加圧加工工程は、前記セグメント導体配置工程を行う前に行われることを特徴とする請求項8に記載の回転電機の固定子の製造方法。
【請求項10】
前記加圧加工工程は、前記セグメント導体配置工程を行った後に行われることを特徴とする請求項8に記載の回転電機の固定子の製造方法。
【請求項11】
前記加圧加工工程は、加圧加工が施される前と後とで前記斜行部の断面積が変化しないように行われることを特徴とする請求項8〜10の何れか一項に記載の回転電機の固定子の製造方法。
【請求項12】
前記加圧加工工程は、前記斜行部の側面の4面を規制した状態で行われることを特徴とする請求項8〜11の何れか一項に記載の回転電機の固定子の製造方法。
【請求項13】
前記加圧加工工程は、前記固定子コアの径方向両側で背向する2面を加圧して行われることを特徴とする請求項8〜11の何れか一項に記載の回転電機の固定子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−143068(P2012−143068A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293628(P2010−293628)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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