回転電機の固定子
【課題】固定子巻線の冷却効果を高め得るようにした回転電機の固定子を提供する。
【解決手段】固定子20は、周方向に複数のスロット31を有する円環状の固定子コア30と、固定子コア30のスロット31に巻装された複数の導体線50からなる固定子巻線40と、を備えている。導体線50は、互いに平行に直状に延び長手方向に並列した複数のスロット収容部51と、隣り合うスロット収容部51同士をスロット収容部51の一端側と他端側とで交互に接続する複数のターン部52とを有する。固定子巻線40は、固定子コア30の軸方向両端面から軸方向外方へそれぞれ突出した複数のターン部52が固定子コア30の径方向に積層されてなる第1及び第2コイルエンド部47、48を有する。第1及び第2コイルエンド部47、48のターン部52は、第1及び第2コイルエンド部47、48の内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さh1が高くされている。
【解決手段】固定子20は、周方向に複数のスロット31を有する円環状の固定子コア30と、固定子コア30のスロット31に巻装された複数の導体線50からなる固定子巻線40と、を備えている。導体線50は、互いに平行に直状に延び長手方向に並列した複数のスロット収容部51と、隣り合うスロット収容部51同士をスロット収容部51の一端側と他端側とで交互に接続する複数のターン部52とを有する。固定子巻線40は、固定子コア30の軸方向両端面から軸方向外方へそれぞれ突出した複数のターン部52が固定子コア30の径方向に積層されてなる第1及び第2コイルエンド部47、48を有する。第1及び第2コイルエンド部47、48のターン部52は、第1及び第2コイルエンド部47、48の内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さh1が高くされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両において電動機や発電機として使用される回転電機の固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機の固定子として、周方向に複数のスロットを有する円環状の固定子コアと、周方向に異なるスロットに収容されたスロット収容部とスロットの外部でスロット収容部同士を接続しているターン部とを有する複数の導体線を固定子コアに巻装してなる固定子巻線と、を備えたものが一般に知られている。
【0003】
この固定子の固定子巻線は、複数のスロット収容部と複数のターン部を有する波形の連続導体線を用いて形成する場合と、一対の直状部と両直状部の一端同士を接続するターン部とを有する略U字形状に成形された複数のセグメント導体を用いて、それらセグメント導体の所定の開放端部同士を固定子コアの軸方向一方側で接続することにより形成する場合とがある。なお、特許文献1には、固定子巻線の形成に用いられる略U字形状のセグメント導体の成形方法が開示されている。
【0004】
これらの固定子巻線は、固定子コアの軸方向両側に、固定子コアの軸方向端面から軸方向外方へそれぞれ突出した複数の導体線(ターン部、接続開放端部)が固定子コアの径方向に積層されてなるコイルエンド部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−264964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような回転電機では、固定子巻線に流れる電流により固定子巻線の温度が高くなると、電気抵抗値が大きくなり性能が低下するため、固定子巻線のコイルエンド部に外周側から供給される冷却液や冷却エアー等の冷却媒体で固定子巻線や固定子コアを冷却するようにしている。この場合、供給された冷却媒体は、固定子巻線や固定子コアの表面を流通することによってそれらを冷却する。
【0007】
しかし、上記従来の固定子巻線は、コイルエンド部の軸方向高さが均等であるため、外周側から冷却媒体を供給して冷却した場合に、コイルエンド部の外周側は冷却することができるものの、コイルエンド部の内周側を十分に冷却することができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、固定子巻線の冷却効果を高め得るようにした回転電機の固定子を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、周方向に複数のスロットを有する円環状の固定子コアと、該固定子コアの前記スロットに巻装された複数の導体線からなる固定子巻線と、を備えた回転電機の固定子において、前記固定子巻線は、前記固定子コアの軸方向両端面から軸方向外方へそれぞれ突出した複数の前記導体線が前記固定子コアの径方向に積層されてなるコイルエンド部を有し、該コイルエンド部の隣接する二つの前記導体線のうち外周側に位置する前記導体線は、内周側に位置する前記導体線に対して軸方向高さが同等に又は高くされ、且つ、前記コイルエンド部の最外周側に位置する前記導体線は、少なくとも最内周側に位置する前記導体線よりも軸方向高さが高くされていることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、コイルエンド部の径方向に積層された複数の導体線のうち、隣接する外周側の導体線よりも軸方向高さが低くされている導体線は、隣接する外周側の導体線よりも軸方向内方へ一部が突出し、その突出した部分は外周側から見た場合に露出した状態になる。これにより、外気(冷却媒体)との接触面積が増加するため、コイルエンド部に供給される冷却液や冷却エアー等の冷却媒体による固定子巻線の冷却効果を十分に高めることができる。
【0011】
また、コイルエンド部の最外周側に位置する導体線の軸方向高さが最も高くされていることから、コイルエンド部の外周側から冷却媒体が供給される場合に、コイルエンド部の内部へ冷却媒体が進入し易くなるため、これによっても、固定子巻線の冷却効果を十分に高めることができる。
【0012】
本発明において、コイルエンド部の径方向に積層されている導体線が3層以上の場合には、コイルエンド部の内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さが高くなるようにして、それら全ての導体線の軸方向高さが異なるようにされているのが好ましい。このようにすれば、最外周側に位置する導体線以外の全ての導体線の、外気(冷却媒体)との接触面積を増加させることができるので、コイルエンド部の径方向に積層された導体線を径方向において均一的に冷却することが可能となり、且つ冷却効果を最大限高めることが可能となる。
【0013】
なお、固定子巻線の冷却効果を高めるためには、コイルエンド部の最外周側に位置する導体線と最内周側に位置する導体線との軸方向高さの差を、より大きくした方が有効となるが、軸方向高さの差を大きくする程、固定子巻線の大型化に繋がるため、それらのバランスを考慮して各導体線の軸方向高さを設定するようにすればよい。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記コイルエンド部の前記導体線は、前記固定子コアの軸方向端面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部を有し、前記コイルエンド部の隣接する二つの前記傾斜部のうち外周側に位置する前記傾斜部は、内周側に位置する前記傾斜部に対して傾斜角度が同等に又は大きくされ、且つ、前記コイルエンド部の最外周側に位置する前記傾斜部は、少なくとも最内周側に位置する前記傾斜部よりも傾斜角度が大きくされていることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、コイルエンド部の径方向に積層された複数の傾斜部のうち、隣接する外周側の傾斜部よりも傾斜角度が小さくされている傾斜部は、隣接する外周側の傾斜部よりも軸方向内方へ一部が突出し、その突出した部分は外周側から見た場合に露出した状態になる。これにより、外気(冷却媒体)との接触面積が増加するため、コイルエンド部に供給される冷却媒体による固定子巻線の冷却効果をより十分に高めることができる。
【0016】
また、コイルエンド部の最外周側に位置する傾斜部の傾斜角度が最も大きくされていることから、コイルエンド部の外周側から冷却媒体が供給される場合に、コイルエンド部の内部へ冷却媒体が進入し易くなるため、これによっても、固定子巻線の冷却効果をより十分に高めることができる。
【0017】
本発明において、コイルエンド部の径方向に積層されている傾斜部が3層以上の場合には、傾斜部の傾斜角度がコイルエンド部の内周側から外周側に向かって徐々に大きくなるようにして、それら全ての傾斜部の傾斜角度が異なるようにされているのが好ましい。このようにすれば、最外周側に位置する傾斜部以外の全ての傾斜部の、外気(冷却媒体)との接触面積を増加させることができるので、コイルエンド部の径方向に積層された傾斜部を径方向において均一的に冷却することが可能となり、且つ冷却効果を最大限高めることが可能となる。なお、各傾斜部の傾斜角度は、本発明の場合にも、固定子巻線の冷却効果と固定子巻線の大型化とのバランスを考慮して適宜設定するようにすればよい。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記傾斜部は、前記固定子コアの軸方向端面に沿って延びる複数の段部を有する階段形状に形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、傾斜部が階段形状に形成されていることにより、傾斜部の外気との接触面積が更に増加するので、固定子巻線の冷却効果を更に高めることができる。また、傾斜部が階段形状に形成されていることによって、固定子コアの軸方向端面から突出しているコイルエンド部の軸方向高さを低くすると共に、径方向幅を小さくすることができるので、固定子巻線を小型化することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記導体線は、周方向に異なる前記スロットに収容されるスロット収容部と、前記スロットの外部で前記スロット収容部同士を接続しているターン部とを有するとともに、該ターン部は、周方向の中央部に前記固定子コアの軸方向端面に沿って延びる頭頂段部を有し、前記コイルエンド部の隣接する二つの前記頭頂段部のうち外周側に位置する前記頭頂段部は、内周側に位置する前記頭頂段部に対して延伸方向長さが同等に又は長くされ、且つ、前記コイルエンド部の最外周側に位置する前記頭頂段部は、少なくとも最内周側に位置する前記頭頂段部よりも延伸方向長さが長くされていることを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、コイルエンド部の径方向に積層された複数の頭頂段部のうち、隣接する外周側の頭頂段部よりも延伸方向長さが短くされている頭頂段部のターン部は、外気(冷却媒体)との接触面積が増加する。そのため、コイルエンド部に供給される冷却媒体による固定子巻線の冷却効果を更に高めることができる。
【0022】
また、コイルエンド部の最外周側に位置する頭頂段部の延伸方向長さが最も長くされていることから、コイルエンド部の外周側から冷却媒体が供給される場合に、コイルエンド部の内部へ冷却媒体が進入し易くなるため、これによっても、固定子巻線の冷却効果を更に高めることができる。
【0023】
本発明において、コイルエンド部の径方向に積層されている頭頂段部が3層以上の場合には、頭頂段部の延伸方向長さがコイルエンド部の内周側から外周側に向かって徐々に長くなるようにして、それら全ての頭頂段部の延伸方向長さが異なるようにされているのが好ましい。このようにすれば、最外周側に位置する頭頂段部以外の全ての頭頂段部の、外気(冷却媒体)との接触面積を増加させることができるので、コイルエンド部の径方向に積層された頭頂段部を径方向において均一的に冷却することが可能となり、且つ冷却効果を最大限高めることが可能となる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、前記コイルエンド部の隣接する二つの前記導体線のうち内周側に位置する前記導体線は、外周側に位置する前記導体線に対して軸方向外方へ突出しておらず、且つ、前記コイルエンド部の最内周側に位置する前記導体線は、少なくとも最外周側に位置する前記導体線に対して軸方向内方へ突出していることを特徴とする。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、コイルエンド部の径方向に積層された複数の導体線のうち、隣接する外周側の導体線よりも軸方向内方へ一部が突出している導体線は、その突出している部分が外周側から見た場合に露出しており、その露出した部分だけ外気(冷却媒体)との接触面積が増加する。そのため、コイルエンド部に供給される冷却媒体による固定子巻線の冷却効果を十分に高めることができる。
【0026】
また、コイルエンド部の最外周側に位置する導体線が軸方向外方へ最も突出していることから、コイルエンド部の外周側から冷却媒体が供給される場合に、コイルエンド部の内部へ冷却媒体が進入し易くなるため、これによっても、固定子巻線の冷却効果を十分に高めることができる。
【0027】
本発明において、コイルエンド部の径方向に積層されている導体線が3層以上の場合には、それら全ての導体線が、隣接する外周側の導体線よりも軸方向内方へ一部が突出しているようにされているのが好ましい。このようにすれば、最外周側に位置する導体線以外の全ての導体線の、外気(冷却媒体)との接触面積を増加させることができるので、コイルエンド部の径方向に積層された導体線を径方向において均一的に冷却することが可能となり、且つ冷却効果を最大限高めることが可能となる。なお、隣接する外周側の導体線に対する内周側の導体線の軸方向内方への突出量は、本発明の場合にも、固定子巻線の冷却効果と固定子巻線の大型化とのバランスを考慮して適宜設定するようにすればよい。
【0028】
請求項6に記載の発明は、前記コイルエンド部の前記導体線は、前記コイルエンド部の内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さが高くされていることを特徴とする。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、コイルエンド部の最外周側に位置する導体線以外の全ての導体線に対して、外気(冷却媒体)との接触面積を増加させることが可能となるので、固定子巻線の冷却効果を効率よく且つ均一的に高めることが可能となる。
【0030】
請求項7に記載の発明は、前記固定子巻線は、互いに平行に直状に延び長手方向に並列した複数のスロット収容部と、隣り合う該スロット収容部同士を該スロット収容部の一端側と他端側とで交互に接続する複数のターン部とを有する連続導体線により構成され、前記固定子コアの軸方向両側に、それぞれ複数の前記ターン部が前記固定子コアの径方向に積層されてなる第1コイルエンド部及び第2コイルエンド部を有し、前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の隣接する二つの前記ターン部のうち外周側に位置する前記ターン部は、内周側に位置する前記ターン部に対して軸方向高さが同等に又は高くされ、且つ、前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の最外周側に位置する前記ターン部は、最内周側に位置する前記ターン部よりも軸方向高さが高くされていることを特徴とする。
【0031】
請求項7に記載の発明によれば、固定子巻線は、複数のスロット収容部と複数のターン部とを有する連続導体線により構成されており、固定子コアの軸方向両側に、それぞれ複数のターン部が径方向に積層されてなる第1コイルエンド部及び第2コイルエンド部を有する。そして、第1及び第2コイルエンド部の最外周側に位置するターン部は、最内周側に位置するターン部よりも軸方向高さが高くされている。よって、このタイプの固定子巻線を有する固定子においても、第1及び第2コイルエンド部の複数のターン部のうち、隣接する外周側のターン部よりも軸方向高さが低くされているターン部は、外気(冷却媒体)との接触面積が増加する。そのため、第1及び第2コイルエンド部に供給される冷却媒体による固定子巻線の冷却効果を十分に高めることができる。
【0032】
また、第1及び第2コイルエンド部の最外周側に位置するターン部の軸方向高さが最も高くされていることから、第1及び第2コイルエンド部の外周側から冷却媒体が供給される場合に、第1及び第2コイルエンド部の内部へ冷却媒体が進入し易くなるため、これによっても、固定子巻線の冷却効果を十分に高めることができる。
【0033】
請求項8に記載の発明は、前記固定子巻線は、一対の直状部と両該直状部の一端同士を接続するターン部と前記直状部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する複数のセグメント導体を所定の状態に接続することにより前記固定子コアに巻装され、前記固定子コアの軸方向一端側で複数の前記ターン部が前記固定子コアの径方向に積層されてなる第1コイルエンド部と、前記固定子コアの軸方向他端側で所定の前記開放端部同士が接続された複数の接続開放端部が前記固定子コアの径方向に積層されてなる第2コイルエンド部とを有し、前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の隣接する二つの前記ターン部又は前記接続開放端部のうち外周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部は、内周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部に対して軸方向高さが同等に又は高くされ、且つ、前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の最外周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部は、少なくとも最内周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部よりも軸方向高さが高くされていることを特徴とする。
【0034】
請求項8に記載の発明によれば、固定子巻線は、一対の直状部と両直状部の一端同士を接続するターン部と直状部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する複数のセグメント導体を、所定の状態に接続することにより固定子コアに巻装されており、固定子コアの軸方向一端側で複数のターン部が固定子コアの径方向に積層されてなる第1コイルエンド部と、固定子コアの軸方向他端側で所定の開放端部同士が接続された複数の接続開放端部が固定子コアの径方向に積層されてなる第2コイルエンド部とを有する。そして、第1及び第2コイルエンド部の最外周側に位置するターン部又は接続開放端部は、少なくとも最内周側に位置するターン部又は接続開放端部よりも軸方向高さが高くされている。
【0035】
よって、このタイプの固定子巻線を有する固定子においても、第1及び第2コイルエンド部の複数のターン部又は接続開放端部のうち、隣接する外周側のターン部又は接続開放端部よりも軸方向高さが低くされているターン部又は接続開放端部は、外気(冷却媒体)との接触面積が増加する。そのため、第1及び第2コイルエンド部に供給される冷却媒体による固定子巻線の冷却効果を十分に高めることができる。
【0036】
請求項9に記載の発明は、前記コイルエンド部は、前記固定子コアの外周側から冷却媒体が供給されることを特徴とする。
【0037】
請求項9に記載の発明によれば、コイルエンド部は、最外周側に位置する導体線が、少なくとも最内周側に位置する導体線よりも軸方向高さが高くされていることから、固定子コアの外周側から供給される冷却媒体がコイルエンド部の内部へ容易に進入する。これにより、冷却媒体による冷却効果をより確実に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態1に係る固定子が搭載された回転電機の構成を模式的に示す軸方向断面図である。
【図2】実施形態1に係る固定子の図であって、(a)はその固定子の平面図であり、(b)はその固定子を側方から見た正面図である。
【図3】実施形態1に係る固定子コアの平面図である。
【図4】実施形態1に係る分割コアの平面図である。
【図5】実施形態1に係る固定子巻線の斜視図である。
【図6】実施形態1に係る固定子巻線を構成する導体線の断面図である。
【図7】実施形態1に係る導体線の全体形状を示す正面図である。
【図8】実施形態1に係る導体線のターン部の形状を示す斜視図である。
【図9】実施形態1に係る固定子巻線の第1及び第2コイルエンド部において径方向に積層配置されたターン部の径方向から見た状態を模式的に示す模式図である。
【図10】実施形態1に係る固定子巻線の第1コイルエンド部において径方向に積層配置されたターン部を外周側から見た正面図である。
【図11】実施形態2に係る固定子のセグメント導体挿入側から見た斜視図である。
【図12】実施形態2に係る固定子のセグメント導体溶接側から見た斜視図である。
【図13】実施形態2において固定子コアのスロットにセグメント導体を挿入する状態を示す説明図である。
【図14】実施形態2に係る固定子巻線の第1及び第2コイルエンド部において径方向に積層配置されたターン部の径方向から見た状態を模式的に示す模式図である。
【図15】実施形態2に係る固定子巻線の第1コイルエンド部において径方向に積層配置されたターン部を外周側から見た正面図である。
【図16】実施形態2に係る固定子巻線の第2コイルエンド部において径方向に積層配置された接続斜行部を外周側から見た正面図である。
【図17】他の実施形態に係る固定子巻線の第1コイルエンド部において径方向に積層配置されたターン部を径方向から見た状態を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の回転電機の固定子を具体化した実施形態について図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0040】
〔実施形態1〕
本実施形態の固定子は、車両用発電機として用いられる回転電機に搭載されるものである。図1は、本実施形態の固定子が搭載された回転電機の構成を模式的に示す軸方向断面図である。本実施形態に係る回転電機1は、図1に示すように、略有底筒状の一対のハウジング部材10a,10bが開口部同士で接合されてなるハウジング10と、ハウジング10に軸受け11,12を介して回転自在に支承される回転軸13に固定された回転子14と、ハウジング10内の回転子14を包囲する位置でハウジング10に固定された固定子20と、を備えている。
【0041】
また、この回転電機1には、固定子20の固定子巻線40に冷却用の冷却媒体を供給する一対の管路15、16を備えた冷媒供給手段が設けられている。管路15、16は、ハウジング10の内部と外部を連通するようにして、ハウジング部材10a、10bにそれぞれ貫通した状態で取り付けられている。各管路15、16の先端部には、冷却媒体を吐出する吐出口15a、16aが設けられている。吐出口15a、16aは、ハウジング10内に収容された固定子20の固定子巻線40の第1及び第2コイルエンド部47、48の鉛直上方に開口している。
【0042】
なお、この回転電機1には、吐出口15a、16aから吐出した冷却媒体を回収し冷媒供給手段に戻して循環させる回収手段(図示せず)や、加熱された冷却媒体を冷却する冷却器(図示せず)等が、循環経路の途中に設けられている。また、冷却媒体として、本実施形態ではATFを用いているが、従来の回転電機において使用される冷却媒体を用いてもよい。
【0043】
回転子14は、固定子20の内周側と向き合う外周側に、周方向に所定距離を隔てて配置された複数の永久磁石を有し、これら永久磁石により周方向に極性が交互に異なる複数の磁極が形成されている。回転子14の磁極の数は、回転電機の仕様により異なるため限定されるものではない。本実施形態では、8極(N極:4、S極:4)の回転子が用いられている。
【0044】
次に、固定子20について図2〜図10を参照して説明する。固定子20は、図2に示すように、周方向に複数に分割された分割コア32を組み付けてなる円環状の固定子コア30と、固定子コア30に巻装された複数の導体線50からなる三相の固定子巻線40とを備えている。なお、固定子コア30と固定子巻線40との間には、絶縁紙を配してもよい。
【0045】
固定子コア30は、図3及び図4に示すように、周方向に分割された複数(本実施形態では24個)の分割コア32により円環状に形成され、その内周側に周方向に配列された複数のスロット31を有する。この固定子コア30は、外周側に位置する円環状のバックコア部33と、バックコア部33から径方向内方へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース34とからなる。これにより、隣り合うティース34の周方向に対向する側面34a同士の間には、固定子コア30の内周側に開口し径方向に延びるスロット31が形成されている。隣り合うティース34の周方向に対向する側面34a、即ち、1つのスロット31を区画する一対の側面34aは、互いに平行な平行面となっている。これにより、各スロット31は、一定の周方向幅寸法で径方向に延びている。なお、ティース34の突出先端部の側面34aには、周方向に突出する鍔部は設けられていない。
【0046】
スロット31は、本実施形態では固定子巻線40が2倍スロットの分布巻きであるため、回転子の磁極数(8)に対し、固定子巻線40の一相あたり2個の割合で形成されている。つまり、8×3×2=48個のスロット31が形成されている。この場合、48個のスロット31は、スロット31と同数(48個)のティース34により形成されている。
【0047】
なお、固定子コア30を構成する分割コア32は、プレス打ち抜き加工により所定形状に形成された複数の電磁鋼板を固定子コア30の軸方向に積層して形成されている。また、固定子コア30は、円環状に組み付けられた分割コア32の外周に外筒37が嵌合されることにより円環状に固定(保形)されている(図2(a)参照)。
【0048】
固定子巻線40は、図5に示すように、所定の波形形状に成形した所定数(本実施形態では12本)の導体線50を所定の状態に積み重ねて帯状の導体線集積体を形成し、その導体線集積体を渦巻き状に巻き付けることにより円筒状に形成されている。
【0049】
固定子巻線40を構成する導体線50は、図6に示すように、矩形断面の銅製の導体58と、内層59a及び外層59bを有し導体58の外周を被覆する絶縁皮膜59とからなる絶縁被覆平角線が採用されている。内層59a及び外層59bを合わせた絶縁皮膜59の厚みは、100μm〜200μmの範囲に設定されている。このように、内層59a及び外層59bからなる絶縁皮膜59の厚みが厚いので、導体線50同士を絶縁するために導体線50同士の間に絶縁紙等を挟み込んで絶縁する必要がない。
【0050】
また、外層59bはナイロン等の絶縁材で形成され、内層59aは外層59bよりもガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂またはポリアミドイミド等の絶縁材で形成されている。これにより、回転電機1に発生する熱により外層59bは内層59aよりも早く結晶化するため、外層59bの表面硬度が高くなり、導体線50に傷が付き難くなる。
【0051】
この導体線50は、図7に示すように、互いに平行に直状に延び長手方向に並列した複数のスロット収容部51と、隣り合うスロット収容部51同士をスロット収容部51の一端側と他端側とで交互に接続する複数のターン部52とを有する連続線よりなり、1本の長さは約3mである。これにより、固定子巻線40は、図5に示すように、軸方向中央部で複数のスロット収容部51が固定子コア30の径方向に積層されてなるスロット収容部積層部46と、軸方向両側で固定子コア30の軸方向両端面から軸方向外方へそれぞれ突出する複数のターン部52が固定子コア30の径方向に積層(本実施形態では8層)されてなる第1及び第2コイルエンド部47、48とを有する。
【0052】
図8に示すように、導体線50のターン部52の延伸方向の略中央部には、固定子コア30の軸方向の端面30aに沿って延びる頭頂段部53が設けられており、頭頂段部53の両側には、固定子コア30の端面30aに対して所定の角度で傾斜した階段形状の傾斜部が設けられている。頭頂段部53には、固定子コア30の端面30aに沿ってクランク形状に形成されたねじりを伴わないクランク部54が形成されている。このクランク部54のクランク形状によるずれ量は、導体線50の略幅分である。これにより、径方向に隣接している導体線50のターン部52同士を密に巻回することができる。その結果、第1及び第2コイルエンド部47、48の径方向の幅が小さくなるので、固定子巻線40が径方向外側に張り出すことを防止する。
【0053】
また、スロット31から固定子コア30の外に突出するターン部52の突出箇所には、導体線50がまたがって設置されているスロット31同士に向けて固定子コア30の軸方向両側の端面30aに沿って段部56が形成されている。これにより、スロット31から突出している導体線50のターン部52の突出箇所の間隔、言い換えればターン部52が形成する三角形状部分の底辺の長さは、導体線50がまたがって設置されているスロット31同士の間隔よりも狭くなっている。その結果、第1及び第2コイルエンド47、48の高さH1が低くなる。
【0054】
また、固定子コア30の端面30aに沿った段部56の長さをd1、周方向に隣接するスロット31同士の間隔をd2とすると、d1≦d2になっている。これにより、ターン部52の段部56が周方向に隣り合うスロット31から突出するターン部52と干渉することを防止できる。これにより、周方向に隣接するスロット31から突出するターン部52同士が互いに干渉することを避けるために、第1及び第2コイルエンド部47、48の高さH1が高くなったり、あるいは第1及び第2コイルエンド部47、48の径方向の幅が大きくなったりすることを防止できる。その結果、第1及び第2コイルエンド部47、48の高さH1が低くなる。さらに、第1及び第2コイルエンド部47、48の径方向の幅が小さくなるので、固定子巻線40が径方向外側に張り出すことを防止する。
【0055】
さらに、導体線50には、ターン部52の略中央部のクランク部54と、ターン部52の突出箇所に形成した段部56との間に、それぞれ2個の段部57が形成されている。つまり、固定子コア30の一方の端面30a側の導体線50のターン部52には、頭頂段部53を含む合計7個の段部が形成されている。これにより、段部を形成しない三角形状のターン部の高さに比べ、ターン部52の高さh1が低くなる。段部56、57は、頭頂段部53と同様に、固定子コア30の端面30aと平行に形成されている。したがって、導体線50のターン部52は、頭頂段部53の両側に位置する傾斜部55が階段形状に形成されている。
【0056】
本実施形態の固定子巻線40は、図9及び図10に示すように、複数のターン部52a〜52hが径方向に積層されてなる第1及び第2コイルエンド部47、48において、隣接する二つのターン部52のうち外周側に位置するターン部52は、内周側に位置するターン部52に対して軸方向高さh1が高くされている。この軸方向高さh1の関係は、第1及び第2コイルエンド部47、48の全てのターン部52に適用されていることから、最外周側に位置するターン部52aの軸方向高さh1が最も高くされ、最内周側に位置するターン部52hの軸方向高さh1が最も低くされている。また、第1及び第2コイルエンド部47、48のターン部52は、第1及び第2コイルエンド部47、48の内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さh1が高くされ、それら全てのターン部52a〜52hの軸方向高さh1が異なるようにされている。
【0057】
換言すれば、第1及び第2コイルエンド部47、48の隣接する二つのターン部52のうち内周側に位置するターン部52は、外周側に位置するターン部52に対して軸方向高さh1が低くされていることによって、軸方向内方へ所定量ずつ位置ずれして突出した状態になっている。即ち、図10に示すように、第1及び第2コイルエンド部47、48を径方向外方から見た場合、最外周側に位置するターン部52a以外のターン部52b〜52hは、隣接する外周側のターン部52に対して軸方向内方へ位置ずれして突出し、その突出した部分が露出している。これにより、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置するターン部52a以外のターン部52b〜52hは、その露出した部分だけ外気(冷却媒体)との接触面積が増加するようにされている。
【0058】
また、ターン部52の頭頂段部53は、第1及び第2コイルエンド部47、48の内周側から外周側に向かって徐々に延伸方向長さL1が長くなるようにされている(図10参照)。よって、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置する頭頂段部53aの延伸方向長さL1が最も長くされ、最内周側に位置する頭頂段部53hの延伸方向長さL1が最も短くされている。
【0059】
さらに、ターン部52の階段形状に形成された傾斜部55は、固定子コア30の端面30aに対する傾斜角度α1が、第1及び第2コイルエンド部47、48の内周側から外周側に向かって徐々に大きくなるようにされている(図10参照)。よって、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置する傾斜部55aの傾斜角度α1が最も大きくされ、最内周側に位置する傾斜部55hの傾斜角度α1が最も小さくされている。
【0060】
即ち、本実施形態の第1及び第2コイルエンド部47、48は、上記のように構成されていることによって、冷媒供給手段の管路15、16から第1及び第2コイルエンド部47、48の外周側に供給される冷却媒体が、第1及び第2コイルエンド部47、48の内周側へ進入し易くされ、且つ内周側へ進入した冷却媒体が、全てのターン部52に対してより広範囲の表面に接触可能となるようにされている。これにより、第1及び第2コイルエンド部47、48に供給される冷却媒体による固定子巻線40の冷却効果が十分に高められている。
【0061】
なお、この固定子巻線40と固定子コア30との組付けは、円筒状に成形された固定子巻線40の外周側から各分割コア32のティース部34を挿入して、全ての分割コア32を固定子巻線40に沿って円環状に配置した後、分割コア32の外周に円筒状の外筒37を嵌合することにより行われる。これにより、固定子巻線40は、図2に示すように、各導体線50の所定のスロット収容部51が固定子コア30の所定のスロット31内に収容された状態に組み付けられる。この場合、各導体線50のスロット収容部51は、所定のスロット数(本実施形態では3相×2個(倍スロット)=6個)ごとのスロット31に収容されている。また、導体線50の隣り合うスロット収容部51同士を接続しているターン部52は、固定子コア30の両端面30aからそれぞれ突出し、その突出している多数のターン部52により、固定子巻線40の軸方向両端部に第1及び第2コイルエンド部47、48が形成される。
【0062】
以上のように構成された本実施形態の固定子20を備えた回転電機1は、運転が開始されると、冷媒供給手段により管路15、16の吐出口15a、16aから冷却用の冷却媒体が吐出される。吐出口15a、16aから吐出した冷却媒体は、第1及び第2コイルエンド部47、48の外周側に供給される。そして、供給された冷却媒体は、第1及び第2コイルエンド部47、48の外周側から内部に進入し、各ターン部52の内側表面及び固定子コア30の端面30aに沿って外周側から内周側へと流動して、第1及び第2コイルエンド部47、48を冷却する。
【0063】
このとき、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置するターン部52aの軸方向高さh1が最も高くされていることから、第1及び第2コイルエンド部47、48の外周側に供給された冷却媒体は、第1及び第2コイルエンド部47、48の内部へ容易に進入して、各ターン部52の表面に沿って外周側から内周側へと円滑に流動する。
【0064】
また、第1及び第2コイルエンド部47、48のターン部52の軸方向高さh1が、内周側から外周側に向かって徐々に高くされ、最外周側に位置するターン部52a以外のターン部52の冷却媒体(外気)との接触面積が増加されていることから、第1及び第2コイルエンド部47、48の内部に容易に進入した冷却媒体が、各ターン部52の内側表面に沿って外周側から内周側へと円滑に流動することにより、第1及び第2コイルエンド部47、48を効率よく効果的に冷却する。
【0065】
なお、第1及び第2コイルエンド部47、48及び固定子コア30を冷却した冷却媒体は、回収手段により回収されて冷媒供給手段に戻された後、再度吐出口15a、16aから吐出されるようにして循環させて使用される。
【0066】
以上のように構成された本実施形態の回転電機1の固定子20によれば、第1及び第2コイルエンド部47、48の隣接する二つのターン部52のうち、外周側に位置するターン部52の軸方向高さh1が内周側に位置するターン部52よりも高くされ、内周側に位置するターン部52は、外周側に位置するターン部52に対して軸方向内方へ突出して露出するようにされている。これにより、第1及び第2コイルエンド部47、48の径方向に積層されたターン部52の、冷却媒体(外気)との接触面積が増加するため、第1及び第2コイルエンド部47、48に供給される冷却媒体による冷却効果を十分に高めることができる。
【0067】
特に、本実施形態では、第1及び第2コイルエンド部47、48のターン部52の軸方向高さh1が、内周側から外周側に向かって徐々に高くされていることにより、最外周側に位置するターン部52a以外の全てのターン部52が、隣接する外周側のターン部52に対して軸方向内方へ突出して露出するようにされている。そのため、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置するターン部52a以外の全てのターン部52の、冷却媒体(外気)との接触面積が増加しているので、第1及び第2コイルエンド部47、48(固定子巻線40)の冷却効果を効率よく且つ均一的に高めることができる。
【0068】
また、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置するターン部52aの軸方向高さh1が最も高くされていることから、第1及び第2コイルエンド部47、48の外周側から供給される冷却媒体が、第1及び第2コイルエンド部47、48の内部へ進入し易くなるため、これによっても、第1及び第2コイルエンド部47、48(固定子巻線40)の冷却効果を十分に高めることができる。
【0069】
そして、本実施形態では、第1及び第2コイルエンド部47、48のターン部52は、それぞれ頭頂段部53の両側に傾斜部55を有し、第1及び第2コイルエンド部47、48の隣接する二つの傾斜部55のうち、外周側に位置する傾斜部55の傾斜角度α1が内周側に位置する傾斜部55の傾斜角度α1よりも大きくされている。即ち、内周側に位置する傾斜部55は、外周側に位置する傾斜部55に対して軸方向内方へ突出して露出するようにされている。そのため、第1及び第2コイルエンド部47、48に供給される冷却媒体による固定子巻線40の冷却効果をより十分に高めることができる。
【0070】
特に、本実施形態では、傾斜部55の傾斜角度α1が、第1及び第2コイルエンド部47、48の内周側から外周側に向かって徐々に大きくされていることにより、最外周側に位置する傾斜部55以外の全ての傾斜部55が、隣接する外周側の傾斜部55に対して軸方向内方へ突出して露出するようにされている。そのため、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置する傾斜部55以外の全ての傾斜部55の、冷却媒体(外気)との接触面積が増加しているので、第1及び第2コイルエンド部47、48(固定子巻線40)の冷却効果を効率よく且つ均一的に高めることができる。
【0071】
また、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置する傾斜部55の傾斜角度α1が最も大きくされていることから、第1及び第2コイルエンド部47、48の外周側から供給される冷却媒体が、第1及び第2コイルエンド部47、48の内部へ進入し易くなるため、これによっても、第1及び第2コイルエンド部47、48(固定子巻線40)の冷却効果を十分に高めることができる。
【0072】
また、傾斜部55が階段形状に形成されていることから、傾斜部55の外気との接触面積が更に増加するので、第1及び第2コイルエンド部47、48(固定子巻線40)の冷却効果を更に高めることができる。また、傾斜部55が階段形状に形成されていることによって、固定子コア30の端面30aから突出している第1及び第2コイルエンド部47、48の軸方向高さH1を低くすると共に、径方向幅を小さくすることができるので、固定子巻線40を小型化することができる。
【0073】
そして、本実施形態における導体線50のターン部52は、延伸方向の中央部に頭頂段部53を有し、第1及び第2コイルエンド部47、48の隣接する二つの頭頂段部53のうち、外周側に位置する頭頂段部53の延伸方向長さL1が内周側に位置する頭頂段部53の延伸方向長さL1よりも大きくされている。そのため、第1及び第2コイルエンド部47、48の径方向に積層された複数の頭頂段部53のうち、隣接する外周側の頭頂段部53よりも延伸方向長さL1が短くされている頭頂段部53のターン部52は、傾斜部55の外気(冷却媒体)との接触面積が増加する。そのため、第1及び第2コイルエンド部47、48に供給される冷却媒体による固定子巻線40の冷却効果を更に高めることができる。
【0074】
なお、本実施形態の固定子巻線40は、複数のスロット収容部と複数のターン部とを有する連続導体線が用いられ、第1及び第2コイルエンド部47、48の両方が固定子コア30の径方向に積層された複数のターン部52により構成されているタイプのものであるが、このタイプの固定子巻線40において、第1及び第2コイルエンド部47、48に供給される冷却媒体による冷却効果をより十分に発揮させることができる。
【0075】
〔実施形態2〕
図11は、実施形態2に係る固定子のセグメント導体挿入側から見た斜視図である。図12は、実施形態2に係る固定子のセグメント導体溶接側から見た斜視図である。図13は、実施形態2において固定子コアのスロットにセグメント導体を挿入する状態を示す説明図である。
【0076】
本実施形態の固定子120は、実施形態1と同様に車両用発電機として用いられる回転電機1に搭載されるものであるが、図11〜図13に示すように、固定子巻線140として、略U字形状の複数のセグメント導体150を所定の状態に接続して固定子コア130に巻装されているセグメント型のものが採用されている点で、実施形態1と異なる。
【0077】
本実施形態の固定子120は、円環状の固定子コア130と、一対の直状部と両該直状部の一端同士を接続するターン部と前記直状部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する複数のセグメント導体を所定の状態に接続することにより固定子コア130に巻装された固定子巻線140と、を備えている。
【0078】
固定子コア130は、円環状の複数の電磁鋼板を固定子コア30の軸方向に積層して形成された一体型のものである。固定子コア130は、円環状のバックコア部133と、バックコア部133から径方向内方へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース部134とからなり、隣り合うティース部134の間にスロット131が形成されている。
【0079】
固定子コア130のスロット131に巻装された固定子巻線140は、端末同士が互いに接合された複数の略U字形状のセグメント導体150により構成されている。このセグメント導体150の両端部を除く大部分の外周には、図示しない絶縁被膜が被覆されている。セグメント導体150は、図13に示すように、互いに平行な一対の直状部151、151と、一対の直状部151、151の一端を互いに連結するターン部152とからなるU字形状のものが採用されている。ターン部152の中央部には、固定子コア130の端面130aに沿って延びる頭頂段部153が設けられており、頭頂段部153の両側には、固定子コア130の端面130aに対して所定の角度で傾斜した傾斜部155が設けられている。なお、図13には、同一相の隣接する2個のスロット131、131に挿入配置される2個で一組のセグメント導体150A、150Bが示されている。また、符号124は、固定子コア130及び固定子巻線140間を電気絶縁するインシュレータである。
【0080】
U字形状のセグメント導体150は、一対の直状部151、151が固定子コア130の所定の1磁極ピッチ離れた2個のスロット131、131内に軸方向一端側から挿入される。このようにして、全スロット131に対して所定数のセグメント導体150の直状部151が挿入配置される。本実施形態の場合には、各スロット131内において合計10本の直状部151が径方向1列(10層)に積層配置される。
【0081】
その後、スロット131から軸方向他端側へ突出した一対の直状部151、151の開放端部が、互いに周方向反対側へ所定の角度をもって斜めに斜行するように折り曲げられて、略半磁極ピッチ分の長さの斜行部154(図16参照)が形成される。そして、固定子コア30の軸方向他端側において、セグメント導体150の所定の斜行部154の端末同士が溶接により接合されて所定のパターンで電気的に接続される。即ち、所定の二つの斜行部154の端末同士が接続されてなる接続斜行部156が形成される。これにより、所定のセグメント導体150が直列に接続されることにより、固定子コア30のスロット31に沿って周方向に渦巻き状に巻回された3本の相巻線(U相、V相、W相)を有する固定子巻線140が形成される。
【0082】
なお、固定子巻線140の各相について、基本となるU字形状のセグメント導体150により、固定子コア130の周りを10周する巻線(コイル)が形成される。しかし、固定子巻線140の各相について、出力用引き出し線及び中性点用引き出し線を一体に有するセグメント、並びに1周目と2周目とを接続するターン部を有するセグメントは、基本となるセグメント導体150とは異なる異形セグメントで構成される。これら異形セグメントを用いて、固定子巻線140の各相の巻線端が星型結線により結線される。
【0083】
このように形成された固定子巻線140の軸方向一端側には、図14及び図15に示すように、固定子コア130の一端面から突出したセグメント導体150の複数のターン部152が固定子コア130の径方向に積層されてなる第1コイルエンド部147が形成されている。この第1コイルエンド部147において、隣接する二つのターン部152のうち外周側に位置するターン部152は、内周側に位置するターン部152に対して軸方向高さh2が高くされている。この軸方向高さh2の関係は、第1コイルエンド部147の全てのターン部152に適用されていることから、最外周側に位置するターン部152aの軸方向高さh2が最も高くされ、最内周側に位置するターン部152jの軸方向高さh2が最も低くされている。また、第1コイルエンド部147のターン部152は、第1コイルエンド部147の内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さh2が高くされ、それら全てのターン部152の軸方向高さh2が異なるようにされている。
【0084】
換言すれば、第1コイルエンド部147の隣接する二つのターン部152のうち内周側に位置するターン部152は、外周側に位置するターン部152に対して軸方向高さh2が低くされていることによって、軸方向内方へ所定量ずつ位置ずれして一部が突出した状態になっている。即ち、図15に示すように、第1コイルエンド部147を径方向外方から見た場合、最外周側に位置するターン部152a以外のターン部152b〜152jは、隣接する外周側のターン部152に対して軸方向内方へ位置ずれして一部が突出し、その突出した部分が露出している。これにより、第1コイルエンド部147の最外周側に位置するターン部152a以外のターン部152b〜152jは、その露出した部分だけ外気(冷却媒体)との接触面積が増加するようにされている。
【0085】
また、ターン部152の頭頂段部153は、第1コイルエンド部147の内周側から外周側に向かって徐々に延伸方向長さL2が長くなるようにされている(図15参照)。よって、第1コイルエンド部147の最外周側に位置する頭頂段部153aの延伸方向長さL2が最も長くされ、最内周側に位置する頭頂段部153jの延伸方向長さL2が最も短くされている。
【0086】
さらに、ターン部152の傾斜部155は、固定子コア30の端面130aに対する傾斜角度α2が、第1コイルエンド部147の内周側から外周側に向かって徐々に大きくなるようにされている(図15参照)。よって、第1コイルエンド部147の最外周側に位置するターン部152aの傾斜角度α2が最も大きくされ、最内周側に位置するターン部152jの傾斜角度α2が最も小さくされている。
【0087】
一方、固定子巻線140の軸方向他端側には、固定子コア130の他端面から突出したセグメント導体150の複数の接続斜行部156が固定子コア130の径方向に積層されてなる第2コイルエンド部148が形成されている。この第2コイルエンド部148において、隣接する二つの接続斜行部156のうち外周側に位置する接続斜行部156は、内周側に位置する接続斜行部156に対して軸方向高さ(固定子コアの端面130aから端末接合部157までの高さ)h3が高くされている。この軸方向高さh3の関係は、第2コイルエンド部148の全ての接続斜行部156に適用されていることから、最外周側に位置する接続斜行部156aの軸方向高さh3が最も高くされ、最内周側に位置する接続斜行部156jの軸方向高さh3が最も低くされている。また、第2コイルエンド部148の接続斜行部156は、第2コイルエンド部148の内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さh3が高くされ、それら全ての接続斜行部156の軸方向高さh3が異なるようにされている。
【0088】
換言すれば、第2コイルエンド部148の隣接する二つの接続斜行部156のうち内周側に位置する接続斜行部156は、外周側に位置する接続斜行部156に対して軸方向高さh3が低くされていることによって、軸方向内方へ所定量ずつ位置ずれして一部が突出した状態になっている。即ち、図16に示すように、第2コイルエンド部148を径方向外方から見た場合、最外周側に位置する接続斜行部156a以外の接続斜行部156b〜156jは、隣接する外周側の接続斜行部156に対して軸方向内方へ位置ずれして一部が突出し、その突出した部分が露出している。これにより、第2コイルエンド部148の最外周側に位置する接続斜行部156a以外の接続斜行部156b〜156jは、その露出した部分だけ外気(冷却媒体)との接触面積が増加するようにされている。
【0089】
また、セグメント導体150の斜行部154は、固定子コア130の端面130aに対する傾斜角度α3が、第2コイルエンド部148の内周側から外周側に向かって徐々に大きくなるようにされている(図16参照)。よって、第2コイルエンド部148の最外周側に位置する斜行部154aの傾斜角度α3が最も大きくされ、最内周側に位置する斜行部154jの傾斜角度α3が最も小さくされている。
【0090】
即ち、本実施形態の第1及び第2コイルエンド部147、148は、上記のように構成されていることによって、冷媒供給手段の管路15、16から第1及び第2コイルエンド部147、148の外周側に供給される冷却媒体が、第1及び第2コイルエンド部147、148の内周側へ進入し易くされ、且つ内周側へ進入した冷却媒体が、全てのターン部152及び接続斜行部156に対してより広範囲の表面に接触可能となるようにされている。これにより、第1及び第2コイルエンド部147、148に供給される冷却媒体による固定子巻線140の冷却効果が十分に高められている。
【0091】
以上のように構成された本実施形態の固定子120の場合にも、回転電機1の運転が開始されると、実施形態1の場合と同様に、冷媒供給手段により管路15、16の吐出口15a、16aから第1及び第2コイルエンド部147、148の外周側に冷却媒体が供給される。これにより、供給された冷却媒体は、第1及び第2コイルエンド部147、148の外周側から内部に進入し、各ターン部152及び各接続斜行部156の内側表面及び固定子コア130の端面130aに沿って外周側から内周側へと流動して、第1及び第2コイルエンド部147、148を冷却する。
【0092】
このとき、本実施形態の固定子120の場合にも、実施形態1の場合と同様に、第1コイルエンド部147の隣接する二つのターン部152のうち、外周側に位置するターン部152の軸方向高さh2が内周側に位置するターン部152よりも高くされ、内周側に位置するターン部152は、外周側に位置するターン部152に対して軸方向内方へ突出して露出するようにされているので、第1コイルエンド部147に供給される冷却媒体による冷却効果を十分に高めることができる。
【0093】
また、第2コイルエンド部148においても同様に、隣接する二つの接続斜行部156のうち、外周側に位置する接続斜行部156の軸方向高さh3が内周側に位置する接続斜行部156よりも高くされ、内周側に位置する接続斜行部156は、外周側に位置する接続斜行部156に対して軸方向内方へ一部が突出して露出するようにされているので、第2コイルエンド部148に供給される冷却媒体による冷却効果を十分に高めることができる。
【0094】
さらに、本実施形態の固定子120の場合にも、第1及び第2コイルエンド部147、148のターン部152又は接続斜行部156の軸方向高さh2、h3が、内周側から外周側に向かって徐々に高くされていることにより、最外周側に位置するターン部152a又は接続斜行部156a以外の全てのターン部152又は接続斜行部156が、隣接する外周側のターン部152又は接続斜行部156に対して軸方向内方へ一部が突出して露出するようにされているため、第1及び第2コイルエンド部147、148(固定子巻線140)の冷却効果を効率よく且つ均一的に高めることができる。
【0095】
また、本実施形態では、第1及び第2コイルエンド部147、148のターン部152又は接続斜行部156は、それぞれ中央部の両側に傾斜部155又は斜行部154を有し、第1及び第2コイルエンド部147、148の隣接する二つの傾斜部155又は斜行部154のうち、外周側に位置する傾斜部155又は斜行部154の傾斜角度α2、α3が内周側に位置する傾斜部155又は斜行部154の傾斜角度α2、α3よりも大きくされている。即ち、内周側に位置する傾斜部155又は斜行部154は、外周側に位置する傾斜部155又は斜行部154に対して軸方向内方へ一部が突出して露出するようにされている。そのため、第1及び第2コイルエンド部147、148に供給される冷却媒体による固定子巻線140の冷却効果をより十分に高めることができる。
【0096】
また、本実施形態におけるセグメント導体150のターン部152は、延伸方向の中央部に頭頂段部153を有し、第1コイルエンド部147の隣接する二つの頭頂段部153のうち、外周側に位置する頭頂段部153の延伸方向長さL2が内周側に位置する頭頂段部153の延伸方向長さL2よりも大きくされている。そのため、第1コイルエンド部147の径方向に積層された複数の頭頂段部153のうち、隣接する外周側の頭頂段部153よりも延伸方向長さL2が短くされている頭頂段部153のターン部152は、傾斜部155の外気(冷却媒体)との接触面積が増加する。そのため、第1コイルエンド部147に供給される冷却媒体による固定子巻線140の冷却効果を更に高めることができる。
【0097】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は、上記の実施形態1、2に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0098】
例えば、実施形態1では、第1及び第2コイルエンド部47、48のターン部52は、内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さh1が高くなるようにされて、全てのターン部52の軸方向高さh1が異なるようにされていたが、図17に示す第1コイルエンド部47Aのように、径方向に積層された8個のターン部52a〜52hの軸方向高さh1が内周側から外周側に向かって2個ずつ段階的に高くなるようにすることができる。
【0099】
また、図17に示す第1コイルエンド部47Aにおいては、軸方向高さh1が同じにされるターン部52の個数は2個とされているが、0個から任意の複数個の範囲で内周側から外周側に向かって変則的に変化させるようにしてもよい。但し、第1コイルエンド部47Aの最外周側に位置するターン部52aは、少なくとも最内周側に位置するターン部52hよりも軸方向高さh1が高くされていることが条件となる。よって、図17に示す第1コイルエンド部47Aの場合、軸方向高さh1が同じにされるターン部52の個数は、最大で7個となる。
【0100】
なお、上記のような第1及び第2コイルエンド部47、48におけるターン部52の軸方向高さh1の変化のさせ方は、実施形態2の第1及び第2コイルエンド部147、148におけるターン部152や接続斜行部156の軸方向高さh2、h3についても、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1…回転電機、 10…ハウジング、 11,12…軸受け、 13…回転軸、 14…回転子、 20…固定子、 30…固定子コア、 31…スロット、 32…分割コア、 33…バックコア部、 34…ティース、 37…外筒、 40…固定子巻線、 46…スロット収容部積層部、 47、47A、147…第1コイルエンド部、 48、148…第2コイルエンド部、 50…導体線、 51…スロット収容部、 52、152…ターン部(導体線)、 53、153…頭頂段部、 55、155…傾斜部、 56、57…段部、 58…導体、 59…絶縁皮膜、 150…セグメント導体、 154…斜行部(開放端部)、 156…接続斜行部(接続開放端部、導体線)、 157…端末接合部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両において電動機や発電機として使用される回転電機の固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機の固定子として、周方向に複数のスロットを有する円環状の固定子コアと、周方向に異なるスロットに収容されたスロット収容部とスロットの外部でスロット収容部同士を接続しているターン部とを有する複数の導体線を固定子コアに巻装してなる固定子巻線と、を備えたものが一般に知られている。
【0003】
この固定子の固定子巻線は、複数のスロット収容部と複数のターン部を有する波形の連続導体線を用いて形成する場合と、一対の直状部と両直状部の一端同士を接続するターン部とを有する略U字形状に成形された複数のセグメント導体を用いて、それらセグメント導体の所定の開放端部同士を固定子コアの軸方向一方側で接続することにより形成する場合とがある。なお、特許文献1には、固定子巻線の形成に用いられる略U字形状のセグメント導体の成形方法が開示されている。
【0004】
これらの固定子巻線は、固定子コアの軸方向両側に、固定子コアの軸方向端面から軸方向外方へそれぞれ突出した複数の導体線(ターン部、接続開放端部)が固定子コアの径方向に積層されてなるコイルエンド部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−264964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような回転電機では、固定子巻線に流れる電流により固定子巻線の温度が高くなると、電気抵抗値が大きくなり性能が低下するため、固定子巻線のコイルエンド部に外周側から供給される冷却液や冷却エアー等の冷却媒体で固定子巻線や固定子コアを冷却するようにしている。この場合、供給された冷却媒体は、固定子巻線や固定子コアの表面を流通することによってそれらを冷却する。
【0007】
しかし、上記従来の固定子巻線は、コイルエンド部の軸方向高さが均等であるため、外周側から冷却媒体を供給して冷却した場合に、コイルエンド部の外周側は冷却することができるものの、コイルエンド部の内周側を十分に冷却することができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、固定子巻線の冷却効果を高め得るようにした回転電機の固定子を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、周方向に複数のスロットを有する円環状の固定子コアと、該固定子コアの前記スロットに巻装された複数の導体線からなる固定子巻線と、を備えた回転電機の固定子において、前記固定子巻線は、前記固定子コアの軸方向両端面から軸方向外方へそれぞれ突出した複数の前記導体線が前記固定子コアの径方向に積層されてなるコイルエンド部を有し、該コイルエンド部の隣接する二つの前記導体線のうち外周側に位置する前記導体線は、内周側に位置する前記導体線に対して軸方向高さが同等に又は高くされ、且つ、前記コイルエンド部の最外周側に位置する前記導体線は、少なくとも最内周側に位置する前記導体線よりも軸方向高さが高くされていることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、コイルエンド部の径方向に積層された複数の導体線のうち、隣接する外周側の導体線よりも軸方向高さが低くされている導体線は、隣接する外周側の導体線よりも軸方向内方へ一部が突出し、その突出した部分は外周側から見た場合に露出した状態になる。これにより、外気(冷却媒体)との接触面積が増加するため、コイルエンド部に供給される冷却液や冷却エアー等の冷却媒体による固定子巻線の冷却効果を十分に高めることができる。
【0011】
また、コイルエンド部の最外周側に位置する導体線の軸方向高さが最も高くされていることから、コイルエンド部の外周側から冷却媒体が供給される場合に、コイルエンド部の内部へ冷却媒体が進入し易くなるため、これによっても、固定子巻線の冷却効果を十分に高めることができる。
【0012】
本発明において、コイルエンド部の径方向に積層されている導体線が3層以上の場合には、コイルエンド部の内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さが高くなるようにして、それら全ての導体線の軸方向高さが異なるようにされているのが好ましい。このようにすれば、最外周側に位置する導体線以外の全ての導体線の、外気(冷却媒体)との接触面積を増加させることができるので、コイルエンド部の径方向に積層された導体線を径方向において均一的に冷却することが可能となり、且つ冷却効果を最大限高めることが可能となる。
【0013】
なお、固定子巻線の冷却効果を高めるためには、コイルエンド部の最外周側に位置する導体線と最内周側に位置する導体線との軸方向高さの差を、より大きくした方が有効となるが、軸方向高さの差を大きくする程、固定子巻線の大型化に繋がるため、それらのバランスを考慮して各導体線の軸方向高さを設定するようにすればよい。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記コイルエンド部の前記導体線は、前記固定子コアの軸方向端面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部を有し、前記コイルエンド部の隣接する二つの前記傾斜部のうち外周側に位置する前記傾斜部は、内周側に位置する前記傾斜部に対して傾斜角度が同等に又は大きくされ、且つ、前記コイルエンド部の最外周側に位置する前記傾斜部は、少なくとも最内周側に位置する前記傾斜部よりも傾斜角度が大きくされていることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、コイルエンド部の径方向に積層された複数の傾斜部のうち、隣接する外周側の傾斜部よりも傾斜角度が小さくされている傾斜部は、隣接する外周側の傾斜部よりも軸方向内方へ一部が突出し、その突出した部分は外周側から見た場合に露出した状態になる。これにより、外気(冷却媒体)との接触面積が増加するため、コイルエンド部に供給される冷却媒体による固定子巻線の冷却効果をより十分に高めることができる。
【0016】
また、コイルエンド部の最外周側に位置する傾斜部の傾斜角度が最も大きくされていることから、コイルエンド部の外周側から冷却媒体が供給される場合に、コイルエンド部の内部へ冷却媒体が進入し易くなるため、これによっても、固定子巻線の冷却効果をより十分に高めることができる。
【0017】
本発明において、コイルエンド部の径方向に積層されている傾斜部が3層以上の場合には、傾斜部の傾斜角度がコイルエンド部の内周側から外周側に向かって徐々に大きくなるようにして、それら全ての傾斜部の傾斜角度が異なるようにされているのが好ましい。このようにすれば、最外周側に位置する傾斜部以外の全ての傾斜部の、外気(冷却媒体)との接触面積を増加させることができるので、コイルエンド部の径方向に積層された傾斜部を径方向において均一的に冷却することが可能となり、且つ冷却効果を最大限高めることが可能となる。なお、各傾斜部の傾斜角度は、本発明の場合にも、固定子巻線の冷却効果と固定子巻線の大型化とのバランスを考慮して適宜設定するようにすればよい。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記傾斜部は、前記固定子コアの軸方向端面に沿って延びる複数の段部を有する階段形状に形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、傾斜部が階段形状に形成されていることにより、傾斜部の外気との接触面積が更に増加するので、固定子巻線の冷却効果を更に高めることができる。また、傾斜部が階段形状に形成されていることによって、固定子コアの軸方向端面から突出しているコイルエンド部の軸方向高さを低くすると共に、径方向幅を小さくすることができるので、固定子巻線を小型化することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記導体線は、周方向に異なる前記スロットに収容されるスロット収容部と、前記スロットの外部で前記スロット収容部同士を接続しているターン部とを有するとともに、該ターン部は、周方向の中央部に前記固定子コアの軸方向端面に沿って延びる頭頂段部を有し、前記コイルエンド部の隣接する二つの前記頭頂段部のうち外周側に位置する前記頭頂段部は、内周側に位置する前記頭頂段部に対して延伸方向長さが同等に又は長くされ、且つ、前記コイルエンド部の最外周側に位置する前記頭頂段部は、少なくとも最内周側に位置する前記頭頂段部よりも延伸方向長さが長くされていることを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、コイルエンド部の径方向に積層された複数の頭頂段部のうち、隣接する外周側の頭頂段部よりも延伸方向長さが短くされている頭頂段部のターン部は、外気(冷却媒体)との接触面積が増加する。そのため、コイルエンド部に供給される冷却媒体による固定子巻線の冷却効果を更に高めることができる。
【0022】
また、コイルエンド部の最外周側に位置する頭頂段部の延伸方向長さが最も長くされていることから、コイルエンド部の外周側から冷却媒体が供給される場合に、コイルエンド部の内部へ冷却媒体が進入し易くなるため、これによっても、固定子巻線の冷却効果を更に高めることができる。
【0023】
本発明において、コイルエンド部の径方向に積層されている頭頂段部が3層以上の場合には、頭頂段部の延伸方向長さがコイルエンド部の内周側から外周側に向かって徐々に長くなるようにして、それら全ての頭頂段部の延伸方向長さが異なるようにされているのが好ましい。このようにすれば、最外周側に位置する頭頂段部以外の全ての頭頂段部の、外気(冷却媒体)との接触面積を増加させることができるので、コイルエンド部の径方向に積層された頭頂段部を径方向において均一的に冷却することが可能となり、且つ冷却効果を最大限高めることが可能となる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、前記コイルエンド部の隣接する二つの前記導体線のうち内周側に位置する前記導体線は、外周側に位置する前記導体線に対して軸方向外方へ突出しておらず、且つ、前記コイルエンド部の最内周側に位置する前記導体線は、少なくとも最外周側に位置する前記導体線に対して軸方向内方へ突出していることを特徴とする。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、コイルエンド部の径方向に積層された複数の導体線のうち、隣接する外周側の導体線よりも軸方向内方へ一部が突出している導体線は、その突出している部分が外周側から見た場合に露出しており、その露出した部分だけ外気(冷却媒体)との接触面積が増加する。そのため、コイルエンド部に供給される冷却媒体による固定子巻線の冷却効果を十分に高めることができる。
【0026】
また、コイルエンド部の最外周側に位置する導体線が軸方向外方へ最も突出していることから、コイルエンド部の外周側から冷却媒体が供給される場合に、コイルエンド部の内部へ冷却媒体が進入し易くなるため、これによっても、固定子巻線の冷却効果を十分に高めることができる。
【0027】
本発明において、コイルエンド部の径方向に積層されている導体線が3層以上の場合には、それら全ての導体線が、隣接する外周側の導体線よりも軸方向内方へ一部が突出しているようにされているのが好ましい。このようにすれば、最外周側に位置する導体線以外の全ての導体線の、外気(冷却媒体)との接触面積を増加させることができるので、コイルエンド部の径方向に積層された導体線を径方向において均一的に冷却することが可能となり、且つ冷却効果を最大限高めることが可能となる。なお、隣接する外周側の導体線に対する内周側の導体線の軸方向内方への突出量は、本発明の場合にも、固定子巻線の冷却効果と固定子巻線の大型化とのバランスを考慮して適宜設定するようにすればよい。
【0028】
請求項6に記載の発明は、前記コイルエンド部の前記導体線は、前記コイルエンド部の内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さが高くされていることを特徴とする。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、コイルエンド部の最外周側に位置する導体線以外の全ての導体線に対して、外気(冷却媒体)との接触面積を増加させることが可能となるので、固定子巻線の冷却効果を効率よく且つ均一的に高めることが可能となる。
【0030】
請求項7に記載の発明は、前記固定子巻線は、互いに平行に直状に延び長手方向に並列した複数のスロット収容部と、隣り合う該スロット収容部同士を該スロット収容部の一端側と他端側とで交互に接続する複数のターン部とを有する連続導体線により構成され、前記固定子コアの軸方向両側に、それぞれ複数の前記ターン部が前記固定子コアの径方向に積層されてなる第1コイルエンド部及び第2コイルエンド部を有し、前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の隣接する二つの前記ターン部のうち外周側に位置する前記ターン部は、内周側に位置する前記ターン部に対して軸方向高さが同等に又は高くされ、且つ、前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の最外周側に位置する前記ターン部は、最内周側に位置する前記ターン部よりも軸方向高さが高くされていることを特徴とする。
【0031】
請求項7に記載の発明によれば、固定子巻線は、複数のスロット収容部と複数のターン部とを有する連続導体線により構成されており、固定子コアの軸方向両側に、それぞれ複数のターン部が径方向に積層されてなる第1コイルエンド部及び第2コイルエンド部を有する。そして、第1及び第2コイルエンド部の最外周側に位置するターン部は、最内周側に位置するターン部よりも軸方向高さが高くされている。よって、このタイプの固定子巻線を有する固定子においても、第1及び第2コイルエンド部の複数のターン部のうち、隣接する外周側のターン部よりも軸方向高さが低くされているターン部は、外気(冷却媒体)との接触面積が増加する。そのため、第1及び第2コイルエンド部に供給される冷却媒体による固定子巻線の冷却効果を十分に高めることができる。
【0032】
また、第1及び第2コイルエンド部の最外周側に位置するターン部の軸方向高さが最も高くされていることから、第1及び第2コイルエンド部の外周側から冷却媒体が供給される場合に、第1及び第2コイルエンド部の内部へ冷却媒体が進入し易くなるため、これによっても、固定子巻線の冷却効果を十分に高めることができる。
【0033】
請求項8に記載の発明は、前記固定子巻線は、一対の直状部と両該直状部の一端同士を接続するターン部と前記直状部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する複数のセグメント導体を所定の状態に接続することにより前記固定子コアに巻装され、前記固定子コアの軸方向一端側で複数の前記ターン部が前記固定子コアの径方向に積層されてなる第1コイルエンド部と、前記固定子コアの軸方向他端側で所定の前記開放端部同士が接続された複数の接続開放端部が前記固定子コアの径方向に積層されてなる第2コイルエンド部とを有し、前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の隣接する二つの前記ターン部又は前記接続開放端部のうち外周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部は、内周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部に対して軸方向高さが同等に又は高くされ、且つ、前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の最外周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部は、少なくとも最内周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部よりも軸方向高さが高くされていることを特徴とする。
【0034】
請求項8に記載の発明によれば、固定子巻線は、一対の直状部と両直状部の一端同士を接続するターン部と直状部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する複数のセグメント導体を、所定の状態に接続することにより固定子コアに巻装されており、固定子コアの軸方向一端側で複数のターン部が固定子コアの径方向に積層されてなる第1コイルエンド部と、固定子コアの軸方向他端側で所定の開放端部同士が接続された複数の接続開放端部が固定子コアの径方向に積層されてなる第2コイルエンド部とを有する。そして、第1及び第2コイルエンド部の最外周側に位置するターン部又は接続開放端部は、少なくとも最内周側に位置するターン部又は接続開放端部よりも軸方向高さが高くされている。
【0035】
よって、このタイプの固定子巻線を有する固定子においても、第1及び第2コイルエンド部の複数のターン部又は接続開放端部のうち、隣接する外周側のターン部又は接続開放端部よりも軸方向高さが低くされているターン部又は接続開放端部は、外気(冷却媒体)との接触面積が増加する。そのため、第1及び第2コイルエンド部に供給される冷却媒体による固定子巻線の冷却効果を十分に高めることができる。
【0036】
請求項9に記載の発明は、前記コイルエンド部は、前記固定子コアの外周側から冷却媒体が供給されることを特徴とする。
【0037】
請求項9に記載の発明によれば、コイルエンド部は、最外周側に位置する導体線が、少なくとも最内周側に位置する導体線よりも軸方向高さが高くされていることから、固定子コアの外周側から供給される冷却媒体がコイルエンド部の内部へ容易に進入する。これにより、冷却媒体による冷却効果をより確実に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態1に係る固定子が搭載された回転電機の構成を模式的に示す軸方向断面図である。
【図2】実施形態1に係る固定子の図であって、(a)はその固定子の平面図であり、(b)はその固定子を側方から見た正面図である。
【図3】実施形態1に係る固定子コアの平面図である。
【図4】実施形態1に係る分割コアの平面図である。
【図5】実施形態1に係る固定子巻線の斜視図である。
【図6】実施形態1に係る固定子巻線を構成する導体線の断面図である。
【図7】実施形態1に係る導体線の全体形状を示す正面図である。
【図8】実施形態1に係る導体線のターン部の形状を示す斜視図である。
【図9】実施形態1に係る固定子巻線の第1及び第2コイルエンド部において径方向に積層配置されたターン部の径方向から見た状態を模式的に示す模式図である。
【図10】実施形態1に係る固定子巻線の第1コイルエンド部において径方向に積層配置されたターン部を外周側から見た正面図である。
【図11】実施形態2に係る固定子のセグメント導体挿入側から見た斜視図である。
【図12】実施形態2に係る固定子のセグメント導体溶接側から見た斜視図である。
【図13】実施形態2において固定子コアのスロットにセグメント導体を挿入する状態を示す説明図である。
【図14】実施形態2に係る固定子巻線の第1及び第2コイルエンド部において径方向に積層配置されたターン部の径方向から見た状態を模式的に示す模式図である。
【図15】実施形態2に係る固定子巻線の第1コイルエンド部において径方向に積層配置されたターン部を外周側から見た正面図である。
【図16】実施形態2に係る固定子巻線の第2コイルエンド部において径方向に積層配置された接続斜行部を外周側から見た正面図である。
【図17】他の実施形態に係る固定子巻線の第1コイルエンド部において径方向に積層配置されたターン部を径方向から見た状態を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の回転電機の固定子を具体化した実施形態について図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0040】
〔実施形態1〕
本実施形態の固定子は、車両用発電機として用いられる回転電機に搭載されるものである。図1は、本実施形態の固定子が搭載された回転電機の構成を模式的に示す軸方向断面図である。本実施形態に係る回転電機1は、図1に示すように、略有底筒状の一対のハウジング部材10a,10bが開口部同士で接合されてなるハウジング10と、ハウジング10に軸受け11,12を介して回転自在に支承される回転軸13に固定された回転子14と、ハウジング10内の回転子14を包囲する位置でハウジング10に固定された固定子20と、を備えている。
【0041】
また、この回転電機1には、固定子20の固定子巻線40に冷却用の冷却媒体を供給する一対の管路15、16を備えた冷媒供給手段が設けられている。管路15、16は、ハウジング10の内部と外部を連通するようにして、ハウジング部材10a、10bにそれぞれ貫通した状態で取り付けられている。各管路15、16の先端部には、冷却媒体を吐出する吐出口15a、16aが設けられている。吐出口15a、16aは、ハウジング10内に収容された固定子20の固定子巻線40の第1及び第2コイルエンド部47、48の鉛直上方に開口している。
【0042】
なお、この回転電機1には、吐出口15a、16aから吐出した冷却媒体を回収し冷媒供給手段に戻して循環させる回収手段(図示せず)や、加熱された冷却媒体を冷却する冷却器(図示せず)等が、循環経路の途中に設けられている。また、冷却媒体として、本実施形態ではATFを用いているが、従来の回転電機において使用される冷却媒体を用いてもよい。
【0043】
回転子14は、固定子20の内周側と向き合う外周側に、周方向に所定距離を隔てて配置された複数の永久磁石を有し、これら永久磁石により周方向に極性が交互に異なる複数の磁極が形成されている。回転子14の磁極の数は、回転電機の仕様により異なるため限定されるものではない。本実施形態では、8極(N極:4、S極:4)の回転子が用いられている。
【0044】
次に、固定子20について図2〜図10を参照して説明する。固定子20は、図2に示すように、周方向に複数に分割された分割コア32を組み付けてなる円環状の固定子コア30と、固定子コア30に巻装された複数の導体線50からなる三相の固定子巻線40とを備えている。なお、固定子コア30と固定子巻線40との間には、絶縁紙を配してもよい。
【0045】
固定子コア30は、図3及び図4に示すように、周方向に分割された複数(本実施形態では24個)の分割コア32により円環状に形成され、その内周側に周方向に配列された複数のスロット31を有する。この固定子コア30は、外周側に位置する円環状のバックコア部33と、バックコア部33から径方向内方へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース34とからなる。これにより、隣り合うティース34の周方向に対向する側面34a同士の間には、固定子コア30の内周側に開口し径方向に延びるスロット31が形成されている。隣り合うティース34の周方向に対向する側面34a、即ち、1つのスロット31を区画する一対の側面34aは、互いに平行な平行面となっている。これにより、各スロット31は、一定の周方向幅寸法で径方向に延びている。なお、ティース34の突出先端部の側面34aには、周方向に突出する鍔部は設けられていない。
【0046】
スロット31は、本実施形態では固定子巻線40が2倍スロットの分布巻きであるため、回転子の磁極数(8)に対し、固定子巻線40の一相あたり2個の割合で形成されている。つまり、8×3×2=48個のスロット31が形成されている。この場合、48個のスロット31は、スロット31と同数(48個)のティース34により形成されている。
【0047】
なお、固定子コア30を構成する分割コア32は、プレス打ち抜き加工により所定形状に形成された複数の電磁鋼板を固定子コア30の軸方向に積層して形成されている。また、固定子コア30は、円環状に組み付けられた分割コア32の外周に外筒37が嵌合されることにより円環状に固定(保形)されている(図2(a)参照)。
【0048】
固定子巻線40は、図5に示すように、所定の波形形状に成形した所定数(本実施形態では12本)の導体線50を所定の状態に積み重ねて帯状の導体線集積体を形成し、その導体線集積体を渦巻き状に巻き付けることにより円筒状に形成されている。
【0049】
固定子巻線40を構成する導体線50は、図6に示すように、矩形断面の銅製の導体58と、内層59a及び外層59bを有し導体58の外周を被覆する絶縁皮膜59とからなる絶縁被覆平角線が採用されている。内層59a及び外層59bを合わせた絶縁皮膜59の厚みは、100μm〜200μmの範囲に設定されている。このように、内層59a及び外層59bからなる絶縁皮膜59の厚みが厚いので、導体線50同士を絶縁するために導体線50同士の間に絶縁紙等を挟み込んで絶縁する必要がない。
【0050】
また、外層59bはナイロン等の絶縁材で形成され、内層59aは外層59bよりもガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂またはポリアミドイミド等の絶縁材で形成されている。これにより、回転電機1に発生する熱により外層59bは内層59aよりも早く結晶化するため、外層59bの表面硬度が高くなり、導体線50に傷が付き難くなる。
【0051】
この導体線50は、図7に示すように、互いに平行に直状に延び長手方向に並列した複数のスロット収容部51と、隣り合うスロット収容部51同士をスロット収容部51の一端側と他端側とで交互に接続する複数のターン部52とを有する連続線よりなり、1本の長さは約3mである。これにより、固定子巻線40は、図5に示すように、軸方向中央部で複数のスロット収容部51が固定子コア30の径方向に積層されてなるスロット収容部積層部46と、軸方向両側で固定子コア30の軸方向両端面から軸方向外方へそれぞれ突出する複数のターン部52が固定子コア30の径方向に積層(本実施形態では8層)されてなる第1及び第2コイルエンド部47、48とを有する。
【0052】
図8に示すように、導体線50のターン部52の延伸方向の略中央部には、固定子コア30の軸方向の端面30aに沿って延びる頭頂段部53が設けられており、頭頂段部53の両側には、固定子コア30の端面30aに対して所定の角度で傾斜した階段形状の傾斜部が設けられている。頭頂段部53には、固定子コア30の端面30aに沿ってクランク形状に形成されたねじりを伴わないクランク部54が形成されている。このクランク部54のクランク形状によるずれ量は、導体線50の略幅分である。これにより、径方向に隣接している導体線50のターン部52同士を密に巻回することができる。その結果、第1及び第2コイルエンド部47、48の径方向の幅が小さくなるので、固定子巻線40が径方向外側に張り出すことを防止する。
【0053】
また、スロット31から固定子コア30の外に突出するターン部52の突出箇所には、導体線50がまたがって設置されているスロット31同士に向けて固定子コア30の軸方向両側の端面30aに沿って段部56が形成されている。これにより、スロット31から突出している導体線50のターン部52の突出箇所の間隔、言い換えればターン部52が形成する三角形状部分の底辺の長さは、導体線50がまたがって設置されているスロット31同士の間隔よりも狭くなっている。その結果、第1及び第2コイルエンド47、48の高さH1が低くなる。
【0054】
また、固定子コア30の端面30aに沿った段部56の長さをd1、周方向に隣接するスロット31同士の間隔をd2とすると、d1≦d2になっている。これにより、ターン部52の段部56が周方向に隣り合うスロット31から突出するターン部52と干渉することを防止できる。これにより、周方向に隣接するスロット31から突出するターン部52同士が互いに干渉することを避けるために、第1及び第2コイルエンド部47、48の高さH1が高くなったり、あるいは第1及び第2コイルエンド部47、48の径方向の幅が大きくなったりすることを防止できる。その結果、第1及び第2コイルエンド部47、48の高さH1が低くなる。さらに、第1及び第2コイルエンド部47、48の径方向の幅が小さくなるので、固定子巻線40が径方向外側に張り出すことを防止する。
【0055】
さらに、導体線50には、ターン部52の略中央部のクランク部54と、ターン部52の突出箇所に形成した段部56との間に、それぞれ2個の段部57が形成されている。つまり、固定子コア30の一方の端面30a側の導体線50のターン部52には、頭頂段部53を含む合計7個の段部が形成されている。これにより、段部を形成しない三角形状のターン部の高さに比べ、ターン部52の高さh1が低くなる。段部56、57は、頭頂段部53と同様に、固定子コア30の端面30aと平行に形成されている。したがって、導体線50のターン部52は、頭頂段部53の両側に位置する傾斜部55が階段形状に形成されている。
【0056】
本実施形態の固定子巻線40は、図9及び図10に示すように、複数のターン部52a〜52hが径方向に積層されてなる第1及び第2コイルエンド部47、48において、隣接する二つのターン部52のうち外周側に位置するターン部52は、内周側に位置するターン部52に対して軸方向高さh1が高くされている。この軸方向高さh1の関係は、第1及び第2コイルエンド部47、48の全てのターン部52に適用されていることから、最外周側に位置するターン部52aの軸方向高さh1が最も高くされ、最内周側に位置するターン部52hの軸方向高さh1が最も低くされている。また、第1及び第2コイルエンド部47、48のターン部52は、第1及び第2コイルエンド部47、48の内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さh1が高くされ、それら全てのターン部52a〜52hの軸方向高さh1が異なるようにされている。
【0057】
換言すれば、第1及び第2コイルエンド部47、48の隣接する二つのターン部52のうち内周側に位置するターン部52は、外周側に位置するターン部52に対して軸方向高さh1が低くされていることによって、軸方向内方へ所定量ずつ位置ずれして突出した状態になっている。即ち、図10に示すように、第1及び第2コイルエンド部47、48を径方向外方から見た場合、最外周側に位置するターン部52a以外のターン部52b〜52hは、隣接する外周側のターン部52に対して軸方向内方へ位置ずれして突出し、その突出した部分が露出している。これにより、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置するターン部52a以外のターン部52b〜52hは、その露出した部分だけ外気(冷却媒体)との接触面積が増加するようにされている。
【0058】
また、ターン部52の頭頂段部53は、第1及び第2コイルエンド部47、48の内周側から外周側に向かって徐々に延伸方向長さL1が長くなるようにされている(図10参照)。よって、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置する頭頂段部53aの延伸方向長さL1が最も長くされ、最内周側に位置する頭頂段部53hの延伸方向長さL1が最も短くされている。
【0059】
さらに、ターン部52の階段形状に形成された傾斜部55は、固定子コア30の端面30aに対する傾斜角度α1が、第1及び第2コイルエンド部47、48の内周側から外周側に向かって徐々に大きくなるようにされている(図10参照)。よって、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置する傾斜部55aの傾斜角度α1が最も大きくされ、最内周側に位置する傾斜部55hの傾斜角度α1が最も小さくされている。
【0060】
即ち、本実施形態の第1及び第2コイルエンド部47、48は、上記のように構成されていることによって、冷媒供給手段の管路15、16から第1及び第2コイルエンド部47、48の外周側に供給される冷却媒体が、第1及び第2コイルエンド部47、48の内周側へ進入し易くされ、且つ内周側へ進入した冷却媒体が、全てのターン部52に対してより広範囲の表面に接触可能となるようにされている。これにより、第1及び第2コイルエンド部47、48に供給される冷却媒体による固定子巻線40の冷却効果が十分に高められている。
【0061】
なお、この固定子巻線40と固定子コア30との組付けは、円筒状に成形された固定子巻線40の外周側から各分割コア32のティース部34を挿入して、全ての分割コア32を固定子巻線40に沿って円環状に配置した後、分割コア32の外周に円筒状の外筒37を嵌合することにより行われる。これにより、固定子巻線40は、図2に示すように、各導体線50の所定のスロット収容部51が固定子コア30の所定のスロット31内に収容された状態に組み付けられる。この場合、各導体線50のスロット収容部51は、所定のスロット数(本実施形態では3相×2個(倍スロット)=6個)ごとのスロット31に収容されている。また、導体線50の隣り合うスロット収容部51同士を接続しているターン部52は、固定子コア30の両端面30aからそれぞれ突出し、その突出している多数のターン部52により、固定子巻線40の軸方向両端部に第1及び第2コイルエンド部47、48が形成される。
【0062】
以上のように構成された本実施形態の固定子20を備えた回転電機1は、運転が開始されると、冷媒供給手段により管路15、16の吐出口15a、16aから冷却用の冷却媒体が吐出される。吐出口15a、16aから吐出した冷却媒体は、第1及び第2コイルエンド部47、48の外周側に供給される。そして、供給された冷却媒体は、第1及び第2コイルエンド部47、48の外周側から内部に進入し、各ターン部52の内側表面及び固定子コア30の端面30aに沿って外周側から内周側へと流動して、第1及び第2コイルエンド部47、48を冷却する。
【0063】
このとき、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置するターン部52aの軸方向高さh1が最も高くされていることから、第1及び第2コイルエンド部47、48の外周側に供給された冷却媒体は、第1及び第2コイルエンド部47、48の内部へ容易に進入して、各ターン部52の表面に沿って外周側から内周側へと円滑に流動する。
【0064】
また、第1及び第2コイルエンド部47、48のターン部52の軸方向高さh1が、内周側から外周側に向かって徐々に高くされ、最外周側に位置するターン部52a以外のターン部52の冷却媒体(外気)との接触面積が増加されていることから、第1及び第2コイルエンド部47、48の内部に容易に進入した冷却媒体が、各ターン部52の内側表面に沿って外周側から内周側へと円滑に流動することにより、第1及び第2コイルエンド部47、48を効率よく効果的に冷却する。
【0065】
なお、第1及び第2コイルエンド部47、48及び固定子コア30を冷却した冷却媒体は、回収手段により回収されて冷媒供給手段に戻された後、再度吐出口15a、16aから吐出されるようにして循環させて使用される。
【0066】
以上のように構成された本実施形態の回転電機1の固定子20によれば、第1及び第2コイルエンド部47、48の隣接する二つのターン部52のうち、外周側に位置するターン部52の軸方向高さh1が内周側に位置するターン部52よりも高くされ、内周側に位置するターン部52は、外周側に位置するターン部52に対して軸方向内方へ突出して露出するようにされている。これにより、第1及び第2コイルエンド部47、48の径方向に積層されたターン部52の、冷却媒体(外気)との接触面積が増加するため、第1及び第2コイルエンド部47、48に供給される冷却媒体による冷却効果を十分に高めることができる。
【0067】
特に、本実施形態では、第1及び第2コイルエンド部47、48のターン部52の軸方向高さh1が、内周側から外周側に向かって徐々に高くされていることにより、最外周側に位置するターン部52a以外の全てのターン部52が、隣接する外周側のターン部52に対して軸方向内方へ突出して露出するようにされている。そのため、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置するターン部52a以外の全てのターン部52の、冷却媒体(外気)との接触面積が増加しているので、第1及び第2コイルエンド部47、48(固定子巻線40)の冷却効果を効率よく且つ均一的に高めることができる。
【0068】
また、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置するターン部52aの軸方向高さh1が最も高くされていることから、第1及び第2コイルエンド部47、48の外周側から供給される冷却媒体が、第1及び第2コイルエンド部47、48の内部へ進入し易くなるため、これによっても、第1及び第2コイルエンド部47、48(固定子巻線40)の冷却効果を十分に高めることができる。
【0069】
そして、本実施形態では、第1及び第2コイルエンド部47、48のターン部52は、それぞれ頭頂段部53の両側に傾斜部55を有し、第1及び第2コイルエンド部47、48の隣接する二つの傾斜部55のうち、外周側に位置する傾斜部55の傾斜角度α1が内周側に位置する傾斜部55の傾斜角度α1よりも大きくされている。即ち、内周側に位置する傾斜部55は、外周側に位置する傾斜部55に対して軸方向内方へ突出して露出するようにされている。そのため、第1及び第2コイルエンド部47、48に供給される冷却媒体による固定子巻線40の冷却効果をより十分に高めることができる。
【0070】
特に、本実施形態では、傾斜部55の傾斜角度α1が、第1及び第2コイルエンド部47、48の内周側から外周側に向かって徐々に大きくされていることにより、最外周側に位置する傾斜部55以外の全ての傾斜部55が、隣接する外周側の傾斜部55に対して軸方向内方へ突出して露出するようにされている。そのため、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置する傾斜部55以外の全ての傾斜部55の、冷却媒体(外気)との接触面積が増加しているので、第1及び第2コイルエンド部47、48(固定子巻線40)の冷却効果を効率よく且つ均一的に高めることができる。
【0071】
また、第1及び第2コイルエンド部47、48の最外周側に位置する傾斜部55の傾斜角度α1が最も大きくされていることから、第1及び第2コイルエンド部47、48の外周側から供給される冷却媒体が、第1及び第2コイルエンド部47、48の内部へ進入し易くなるため、これによっても、第1及び第2コイルエンド部47、48(固定子巻線40)の冷却効果を十分に高めることができる。
【0072】
また、傾斜部55が階段形状に形成されていることから、傾斜部55の外気との接触面積が更に増加するので、第1及び第2コイルエンド部47、48(固定子巻線40)の冷却効果を更に高めることができる。また、傾斜部55が階段形状に形成されていることによって、固定子コア30の端面30aから突出している第1及び第2コイルエンド部47、48の軸方向高さH1を低くすると共に、径方向幅を小さくすることができるので、固定子巻線40を小型化することができる。
【0073】
そして、本実施形態における導体線50のターン部52は、延伸方向の中央部に頭頂段部53を有し、第1及び第2コイルエンド部47、48の隣接する二つの頭頂段部53のうち、外周側に位置する頭頂段部53の延伸方向長さL1が内周側に位置する頭頂段部53の延伸方向長さL1よりも大きくされている。そのため、第1及び第2コイルエンド部47、48の径方向に積層された複数の頭頂段部53のうち、隣接する外周側の頭頂段部53よりも延伸方向長さL1が短くされている頭頂段部53のターン部52は、傾斜部55の外気(冷却媒体)との接触面積が増加する。そのため、第1及び第2コイルエンド部47、48に供給される冷却媒体による固定子巻線40の冷却効果を更に高めることができる。
【0074】
なお、本実施形態の固定子巻線40は、複数のスロット収容部と複数のターン部とを有する連続導体線が用いられ、第1及び第2コイルエンド部47、48の両方が固定子コア30の径方向に積層された複数のターン部52により構成されているタイプのものであるが、このタイプの固定子巻線40において、第1及び第2コイルエンド部47、48に供給される冷却媒体による冷却効果をより十分に発揮させることができる。
【0075】
〔実施形態2〕
図11は、実施形態2に係る固定子のセグメント導体挿入側から見た斜視図である。図12は、実施形態2に係る固定子のセグメント導体溶接側から見た斜視図である。図13は、実施形態2において固定子コアのスロットにセグメント導体を挿入する状態を示す説明図である。
【0076】
本実施形態の固定子120は、実施形態1と同様に車両用発電機として用いられる回転電機1に搭載されるものであるが、図11〜図13に示すように、固定子巻線140として、略U字形状の複数のセグメント導体150を所定の状態に接続して固定子コア130に巻装されているセグメント型のものが採用されている点で、実施形態1と異なる。
【0077】
本実施形態の固定子120は、円環状の固定子コア130と、一対の直状部と両該直状部の一端同士を接続するターン部と前記直状部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する複数のセグメント導体を所定の状態に接続することにより固定子コア130に巻装された固定子巻線140と、を備えている。
【0078】
固定子コア130は、円環状の複数の電磁鋼板を固定子コア30の軸方向に積層して形成された一体型のものである。固定子コア130は、円環状のバックコア部133と、バックコア部133から径方向内方へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース部134とからなり、隣り合うティース部134の間にスロット131が形成されている。
【0079】
固定子コア130のスロット131に巻装された固定子巻線140は、端末同士が互いに接合された複数の略U字形状のセグメント導体150により構成されている。このセグメント導体150の両端部を除く大部分の外周には、図示しない絶縁被膜が被覆されている。セグメント導体150は、図13に示すように、互いに平行な一対の直状部151、151と、一対の直状部151、151の一端を互いに連結するターン部152とからなるU字形状のものが採用されている。ターン部152の中央部には、固定子コア130の端面130aに沿って延びる頭頂段部153が設けられており、頭頂段部153の両側には、固定子コア130の端面130aに対して所定の角度で傾斜した傾斜部155が設けられている。なお、図13には、同一相の隣接する2個のスロット131、131に挿入配置される2個で一組のセグメント導体150A、150Bが示されている。また、符号124は、固定子コア130及び固定子巻線140間を電気絶縁するインシュレータである。
【0080】
U字形状のセグメント導体150は、一対の直状部151、151が固定子コア130の所定の1磁極ピッチ離れた2個のスロット131、131内に軸方向一端側から挿入される。このようにして、全スロット131に対して所定数のセグメント導体150の直状部151が挿入配置される。本実施形態の場合には、各スロット131内において合計10本の直状部151が径方向1列(10層)に積層配置される。
【0081】
その後、スロット131から軸方向他端側へ突出した一対の直状部151、151の開放端部が、互いに周方向反対側へ所定の角度をもって斜めに斜行するように折り曲げられて、略半磁極ピッチ分の長さの斜行部154(図16参照)が形成される。そして、固定子コア30の軸方向他端側において、セグメント導体150の所定の斜行部154の端末同士が溶接により接合されて所定のパターンで電気的に接続される。即ち、所定の二つの斜行部154の端末同士が接続されてなる接続斜行部156が形成される。これにより、所定のセグメント導体150が直列に接続されることにより、固定子コア30のスロット31に沿って周方向に渦巻き状に巻回された3本の相巻線(U相、V相、W相)を有する固定子巻線140が形成される。
【0082】
なお、固定子巻線140の各相について、基本となるU字形状のセグメント導体150により、固定子コア130の周りを10周する巻線(コイル)が形成される。しかし、固定子巻線140の各相について、出力用引き出し線及び中性点用引き出し線を一体に有するセグメント、並びに1周目と2周目とを接続するターン部を有するセグメントは、基本となるセグメント導体150とは異なる異形セグメントで構成される。これら異形セグメントを用いて、固定子巻線140の各相の巻線端が星型結線により結線される。
【0083】
このように形成された固定子巻線140の軸方向一端側には、図14及び図15に示すように、固定子コア130の一端面から突出したセグメント導体150の複数のターン部152が固定子コア130の径方向に積層されてなる第1コイルエンド部147が形成されている。この第1コイルエンド部147において、隣接する二つのターン部152のうち外周側に位置するターン部152は、内周側に位置するターン部152に対して軸方向高さh2が高くされている。この軸方向高さh2の関係は、第1コイルエンド部147の全てのターン部152に適用されていることから、最外周側に位置するターン部152aの軸方向高さh2が最も高くされ、最内周側に位置するターン部152jの軸方向高さh2が最も低くされている。また、第1コイルエンド部147のターン部152は、第1コイルエンド部147の内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さh2が高くされ、それら全てのターン部152の軸方向高さh2が異なるようにされている。
【0084】
換言すれば、第1コイルエンド部147の隣接する二つのターン部152のうち内周側に位置するターン部152は、外周側に位置するターン部152に対して軸方向高さh2が低くされていることによって、軸方向内方へ所定量ずつ位置ずれして一部が突出した状態になっている。即ち、図15に示すように、第1コイルエンド部147を径方向外方から見た場合、最外周側に位置するターン部152a以外のターン部152b〜152jは、隣接する外周側のターン部152に対して軸方向内方へ位置ずれして一部が突出し、その突出した部分が露出している。これにより、第1コイルエンド部147の最外周側に位置するターン部152a以外のターン部152b〜152jは、その露出した部分だけ外気(冷却媒体)との接触面積が増加するようにされている。
【0085】
また、ターン部152の頭頂段部153は、第1コイルエンド部147の内周側から外周側に向かって徐々に延伸方向長さL2が長くなるようにされている(図15参照)。よって、第1コイルエンド部147の最外周側に位置する頭頂段部153aの延伸方向長さL2が最も長くされ、最内周側に位置する頭頂段部153jの延伸方向長さL2が最も短くされている。
【0086】
さらに、ターン部152の傾斜部155は、固定子コア30の端面130aに対する傾斜角度α2が、第1コイルエンド部147の内周側から外周側に向かって徐々に大きくなるようにされている(図15参照)。よって、第1コイルエンド部147の最外周側に位置するターン部152aの傾斜角度α2が最も大きくされ、最内周側に位置するターン部152jの傾斜角度α2が最も小さくされている。
【0087】
一方、固定子巻線140の軸方向他端側には、固定子コア130の他端面から突出したセグメント導体150の複数の接続斜行部156が固定子コア130の径方向に積層されてなる第2コイルエンド部148が形成されている。この第2コイルエンド部148において、隣接する二つの接続斜行部156のうち外周側に位置する接続斜行部156は、内周側に位置する接続斜行部156に対して軸方向高さ(固定子コアの端面130aから端末接合部157までの高さ)h3が高くされている。この軸方向高さh3の関係は、第2コイルエンド部148の全ての接続斜行部156に適用されていることから、最外周側に位置する接続斜行部156aの軸方向高さh3が最も高くされ、最内周側に位置する接続斜行部156jの軸方向高さh3が最も低くされている。また、第2コイルエンド部148の接続斜行部156は、第2コイルエンド部148の内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さh3が高くされ、それら全ての接続斜行部156の軸方向高さh3が異なるようにされている。
【0088】
換言すれば、第2コイルエンド部148の隣接する二つの接続斜行部156のうち内周側に位置する接続斜行部156は、外周側に位置する接続斜行部156に対して軸方向高さh3が低くされていることによって、軸方向内方へ所定量ずつ位置ずれして一部が突出した状態になっている。即ち、図16に示すように、第2コイルエンド部148を径方向外方から見た場合、最外周側に位置する接続斜行部156a以外の接続斜行部156b〜156jは、隣接する外周側の接続斜行部156に対して軸方向内方へ位置ずれして一部が突出し、その突出した部分が露出している。これにより、第2コイルエンド部148の最外周側に位置する接続斜行部156a以外の接続斜行部156b〜156jは、その露出した部分だけ外気(冷却媒体)との接触面積が増加するようにされている。
【0089】
また、セグメント導体150の斜行部154は、固定子コア130の端面130aに対する傾斜角度α3が、第2コイルエンド部148の内周側から外周側に向かって徐々に大きくなるようにされている(図16参照)。よって、第2コイルエンド部148の最外周側に位置する斜行部154aの傾斜角度α3が最も大きくされ、最内周側に位置する斜行部154jの傾斜角度α3が最も小さくされている。
【0090】
即ち、本実施形態の第1及び第2コイルエンド部147、148は、上記のように構成されていることによって、冷媒供給手段の管路15、16から第1及び第2コイルエンド部147、148の外周側に供給される冷却媒体が、第1及び第2コイルエンド部147、148の内周側へ進入し易くされ、且つ内周側へ進入した冷却媒体が、全てのターン部152及び接続斜行部156に対してより広範囲の表面に接触可能となるようにされている。これにより、第1及び第2コイルエンド部147、148に供給される冷却媒体による固定子巻線140の冷却効果が十分に高められている。
【0091】
以上のように構成された本実施形態の固定子120の場合にも、回転電機1の運転が開始されると、実施形態1の場合と同様に、冷媒供給手段により管路15、16の吐出口15a、16aから第1及び第2コイルエンド部147、148の外周側に冷却媒体が供給される。これにより、供給された冷却媒体は、第1及び第2コイルエンド部147、148の外周側から内部に進入し、各ターン部152及び各接続斜行部156の内側表面及び固定子コア130の端面130aに沿って外周側から内周側へと流動して、第1及び第2コイルエンド部147、148を冷却する。
【0092】
このとき、本実施形態の固定子120の場合にも、実施形態1の場合と同様に、第1コイルエンド部147の隣接する二つのターン部152のうち、外周側に位置するターン部152の軸方向高さh2が内周側に位置するターン部152よりも高くされ、内周側に位置するターン部152は、外周側に位置するターン部152に対して軸方向内方へ突出して露出するようにされているので、第1コイルエンド部147に供給される冷却媒体による冷却効果を十分に高めることができる。
【0093】
また、第2コイルエンド部148においても同様に、隣接する二つの接続斜行部156のうち、外周側に位置する接続斜行部156の軸方向高さh3が内周側に位置する接続斜行部156よりも高くされ、内周側に位置する接続斜行部156は、外周側に位置する接続斜行部156に対して軸方向内方へ一部が突出して露出するようにされているので、第2コイルエンド部148に供給される冷却媒体による冷却効果を十分に高めることができる。
【0094】
さらに、本実施形態の固定子120の場合にも、第1及び第2コイルエンド部147、148のターン部152又は接続斜行部156の軸方向高さh2、h3が、内周側から外周側に向かって徐々に高くされていることにより、最外周側に位置するターン部152a又は接続斜行部156a以外の全てのターン部152又は接続斜行部156が、隣接する外周側のターン部152又は接続斜行部156に対して軸方向内方へ一部が突出して露出するようにされているため、第1及び第2コイルエンド部147、148(固定子巻線140)の冷却効果を効率よく且つ均一的に高めることができる。
【0095】
また、本実施形態では、第1及び第2コイルエンド部147、148のターン部152又は接続斜行部156は、それぞれ中央部の両側に傾斜部155又は斜行部154を有し、第1及び第2コイルエンド部147、148の隣接する二つの傾斜部155又は斜行部154のうち、外周側に位置する傾斜部155又は斜行部154の傾斜角度α2、α3が内周側に位置する傾斜部155又は斜行部154の傾斜角度α2、α3よりも大きくされている。即ち、内周側に位置する傾斜部155又は斜行部154は、外周側に位置する傾斜部155又は斜行部154に対して軸方向内方へ一部が突出して露出するようにされている。そのため、第1及び第2コイルエンド部147、148に供給される冷却媒体による固定子巻線140の冷却効果をより十分に高めることができる。
【0096】
また、本実施形態におけるセグメント導体150のターン部152は、延伸方向の中央部に頭頂段部153を有し、第1コイルエンド部147の隣接する二つの頭頂段部153のうち、外周側に位置する頭頂段部153の延伸方向長さL2が内周側に位置する頭頂段部153の延伸方向長さL2よりも大きくされている。そのため、第1コイルエンド部147の径方向に積層された複数の頭頂段部153のうち、隣接する外周側の頭頂段部153よりも延伸方向長さL2が短くされている頭頂段部153のターン部152は、傾斜部155の外気(冷却媒体)との接触面積が増加する。そのため、第1コイルエンド部147に供給される冷却媒体による固定子巻線140の冷却効果を更に高めることができる。
【0097】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は、上記の実施形態1、2に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0098】
例えば、実施形態1では、第1及び第2コイルエンド部47、48のターン部52は、内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さh1が高くなるようにされて、全てのターン部52の軸方向高さh1が異なるようにされていたが、図17に示す第1コイルエンド部47Aのように、径方向に積層された8個のターン部52a〜52hの軸方向高さh1が内周側から外周側に向かって2個ずつ段階的に高くなるようにすることができる。
【0099】
また、図17に示す第1コイルエンド部47Aにおいては、軸方向高さh1が同じにされるターン部52の個数は2個とされているが、0個から任意の複数個の範囲で内周側から外周側に向かって変則的に変化させるようにしてもよい。但し、第1コイルエンド部47Aの最外周側に位置するターン部52aは、少なくとも最内周側に位置するターン部52hよりも軸方向高さh1が高くされていることが条件となる。よって、図17に示す第1コイルエンド部47Aの場合、軸方向高さh1が同じにされるターン部52の個数は、最大で7個となる。
【0100】
なお、上記のような第1及び第2コイルエンド部47、48におけるターン部52の軸方向高さh1の変化のさせ方は、実施形態2の第1及び第2コイルエンド部147、148におけるターン部152や接続斜行部156の軸方向高さh2、h3についても、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1…回転電機、 10…ハウジング、 11,12…軸受け、 13…回転軸、 14…回転子、 20…固定子、 30…固定子コア、 31…スロット、 32…分割コア、 33…バックコア部、 34…ティース、 37…外筒、 40…固定子巻線、 46…スロット収容部積層部、 47、47A、147…第1コイルエンド部、 48、148…第2コイルエンド部、 50…導体線、 51…スロット収容部、 52、152…ターン部(導体線)、 53、153…頭頂段部、 55、155…傾斜部、 56、57…段部、 58…導体、 59…絶縁皮膜、 150…セグメント導体、 154…斜行部(開放端部)、 156…接続斜行部(接続開放端部、導体線)、 157…端末接合部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に複数のスロットを有する円環状の固定子コアと、該固定子コアの前記スロットに巻装された複数の導体線からなる固定子巻線と、を備えた回転電機の固定子において、
前記固定子巻線は、前記固定子コアの軸方向両端面から軸方向外方へそれぞれ突出した複数の前記導体線が前記固定子コアの径方向に積層されてなるコイルエンド部を有し、
該コイルエンド部の隣接する二つの前記導体線のうち外周側に位置する前記導体線は、内周側に位置する前記導体線に対して軸方向高さが同等に又は高くされ、且つ、前記コイルエンド部の最外周側に位置する前記導体線は、少なくとも最内周側に位置する前記導体線よりも軸方向高さが高くされていることを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項2】
前記コイルエンド部の前記導体線は、前記固定子コアの軸方向端面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部を有し、
前記コイルエンド部の隣接する二つの前記傾斜部のうち外周側に位置する前記傾斜部は、内周側に位置する前記傾斜部に対して傾斜角度が同等に又は大きくされ、且つ、前記コイルエンド部の最外周側に位置する前記傾斜部は、少なくとも最内周側に位置する前記傾斜部よりも傾斜角度が大きくされていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子。
【請求項3】
前記傾斜部は、前記固定子コアの軸方向端面に沿って延びる複数の段部を有する階段形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の回転電機の固定子。
【請求項4】
前記導体線は、周方向に異なる前記スロットに収容されるスロット収容部と、前記スロットの外部で前記スロット収容部同士を接続しているターン部とを有するとともに、
該ターン部は、周方向の中央部に前記固定子コアの軸方向端面に沿って延びる頭頂段部を有し、
前記コイルエンド部の隣接する二つの前記頭頂段部のうち外周側に位置する前記頭頂段部は、内周側に位置する前記頭頂段部に対して延伸方向長さが同等に又は長くされ、且つ、前記コイルエンド部の最外周側に位置する前記頭頂段部は、少なくとも最内周側に位置する前記頭頂段部よりも延伸方向長さが長くされていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項5】
前記コイルエンド部の隣接する二つの前記導体線のうち内周側に位置する前記導体線は、外周側に位置する前記導体線に対して軸方向外方へ突出しておらず、且つ、前記コイルエンド部の最内周側に位置する前記導体線は、少なくとも最外周側に位置する前記導体線に対して軸方向内方へ突出していることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項6】
前記コイルエンド部の前記導体線は、前記コイルエンド部の内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さが高くされていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項7】
前記固定子巻線は、互いに平行に直状に延び長手方向に並列した複数のスロット収容部と、隣り合う該スロット収容部同士を該スロット収容部の一端側と他端側とで交互に接続する複数のターン部とを有する連続導体線により構成され、
前記固定子コアの軸方向両側に、それぞれ複数の前記ターン部が前記固定子コアの径方向に積層されてなる第1コイルエンド部及び第2コイルエンド部を有し、
前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の隣接する二つの前記ターン部のうち外周側に位置する前記ターン部は、内周側に位置する前記ターン部に対して軸方向高さが同等に又は高くされ、且つ、前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の最外周側に位置する前記ターン部は、最内周側に位置する前記ターン部よりも軸方向高さが高くされていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項8】
前記固定子巻線は、一対の直状部と両該直状部の一端同士を接続するターン部と前記直状部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する複数のセグメント導体を所定の状態に接続することにより前記固定子コアに巻装され、
前記固定子コアの軸方向一端側で複数の前記ターン部が前記固定子コアの径方向に積層されてなる第1コイルエンド部と、前記固定子コアの軸方向他端側で所定の前記開放端部同士が接続された複数の接続開放端部が前記固定子コアの径方向に積層されてなる第2コイルエンド部とを有し、
前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の隣接する二つの前記ターン部又は前記接続開放端部のうち外周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部は、内周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部に対して軸方向高さが同等に又は高くされ、且つ、前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の最外周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部は、少なくとも最内周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部よりも軸方向高さが高くされていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項9】
前記コイルエンド部は、前記固定子コアの外周側から冷却媒体が供給されることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項1】
周方向に複数のスロットを有する円環状の固定子コアと、該固定子コアの前記スロットに巻装された複数の導体線からなる固定子巻線と、を備えた回転電機の固定子において、
前記固定子巻線は、前記固定子コアの軸方向両端面から軸方向外方へそれぞれ突出した複数の前記導体線が前記固定子コアの径方向に積層されてなるコイルエンド部を有し、
該コイルエンド部の隣接する二つの前記導体線のうち外周側に位置する前記導体線は、内周側に位置する前記導体線に対して軸方向高さが同等に又は高くされ、且つ、前記コイルエンド部の最外周側に位置する前記導体線は、少なくとも最内周側に位置する前記導体線よりも軸方向高さが高くされていることを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項2】
前記コイルエンド部の前記導体線は、前記固定子コアの軸方向端面に対して所定の角度で傾斜した傾斜部を有し、
前記コイルエンド部の隣接する二つの前記傾斜部のうち外周側に位置する前記傾斜部は、内周側に位置する前記傾斜部に対して傾斜角度が同等に又は大きくされ、且つ、前記コイルエンド部の最外周側に位置する前記傾斜部は、少なくとも最内周側に位置する前記傾斜部よりも傾斜角度が大きくされていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子。
【請求項3】
前記傾斜部は、前記固定子コアの軸方向端面に沿って延びる複数の段部を有する階段形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の回転電機の固定子。
【請求項4】
前記導体線は、周方向に異なる前記スロットに収容されるスロット収容部と、前記スロットの外部で前記スロット収容部同士を接続しているターン部とを有するとともに、
該ターン部は、周方向の中央部に前記固定子コアの軸方向端面に沿って延びる頭頂段部を有し、
前記コイルエンド部の隣接する二つの前記頭頂段部のうち外周側に位置する前記頭頂段部は、内周側に位置する前記頭頂段部に対して延伸方向長さが同等に又は長くされ、且つ、前記コイルエンド部の最外周側に位置する前記頭頂段部は、少なくとも最内周側に位置する前記頭頂段部よりも延伸方向長さが長くされていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項5】
前記コイルエンド部の隣接する二つの前記導体線のうち内周側に位置する前記導体線は、外周側に位置する前記導体線に対して軸方向外方へ突出しておらず、且つ、前記コイルエンド部の最内周側に位置する前記導体線は、少なくとも最外周側に位置する前記導体線に対して軸方向内方へ突出していることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項6】
前記コイルエンド部の前記導体線は、前記コイルエンド部の内周側から外周側に向かって徐々に軸方向高さが高くされていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項7】
前記固定子巻線は、互いに平行に直状に延び長手方向に並列した複数のスロット収容部と、隣り合う該スロット収容部同士を該スロット収容部の一端側と他端側とで交互に接続する複数のターン部とを有する連続導体線により構成され、
前記固定子コアの軸方向両側に、それぞれ複数の前記ターン部が前記固定子コアの径方向に積層されてなる第1コイルエンド部及び第2コイルエンド部を有し、
前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の隣接する二つの前記ターン部のうち外周側に位置する前記ターン部は、内周側に位置する前記ターン部に対して軸方向高さが同等に又は高くされ、且つ、前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の最外周側に位置する前記ターン部は、最内周側に位置する前記ターン部よりも軸方向高さが高くされていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項8】
前記固定子巻線は、一対の直状部と両該直状部の一端同士を接続するターン部と前記直状部の他端を屈曲させてなる一対の開放端部とを有する複数のセグメント導体を所定の状態に接続することにより前記固定子コアに巻装され、
前記固定子コアの軸方向一端側で複数の前記ターン部が前記固定子コアの径方向に積層されてなる第1コイルエンド部と、前記固定子コアの軸方向他端側で所定の前記開放端部同士が接続された複数の接続開放端部が前記固定子コアの径方向に積層されてなる第2コイルエンド部とを有し、
前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の隣接する二つの前記ターン部又は前記接続開放端部のうち外周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部は、内周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部に対して軸方向高さが同等に又は高くされ、且つ、前記第1コイルエンド部及び前記第2コイルエンド部の最外周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部は、少なくとも最内周側に位置する前記ターン部又は前記接続開放端部よりも軸方向高さが高くされていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項9】
前記コイルエンド部は、前記固定子コアの外周側から冷却媒体が供給されることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の回転電機の固定子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−222922(P2012−222922A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85124(P2011−85124)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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