説明

回転電機制御システム

【課題】回転電機制御システムにおいて、複数の回転電機の少なくとも1つにトルク変動が生じたときに、蓄電装置の入出力電力の変動を抑制することである。
【解決手段】回転電機制御システム10は、駆動用回転電機(MG2)12、発電用回転電機(MG1)14、MG2とMG1に共通の電源部16、MG2用の制御ブロック18、MG1用の制御ブロック19、MG2制御装置60、MG1制御装置62を含んで構成される。MG1制御装置62は、MG2のトルク変動を抑制するための変動抑制トルクのトルク位相を演算する変動抑制トルク位相演算部70と、変動抑制トルクのトルク振幅を演算する変動抑制トルク振幅演算部72と、演算された変動抑制トルクをMG1のトルク指令値に重畳し、これを変動抑制トルク指令値として演算する変動抑制トルク指令演算部74を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機制御システムに係り、特に、複数の回転電機に接続される電源部に含まれるリアクトルと平滑コンデンサによる共振回路の共振周波数領域に対応する回転電機の共振回転数領域において、複数の回転電機の中の少なくとも1つの回転電機に生じたトルク変動を抑制する回転電機制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機に接続される電源部にはリアクトルやコンデンサ等を含むことがあるので、LCR共振回路を構成することがある。一方で、回転電機に周期的なトルク変動があると、このトルク変動の周期がLCR共振回路の共振周波数帯と重なることでトルク変動が拡大し、蓄電装置の入出力電力の変動が大きくなる。蓄電装置の入出力電力の変動が大きくなると、回転電機を駆動するインバータ回路のシステム電圧が変動し、回転電機の制御性が低下する。
【0003】
例えば、特許文献1には、ハイブリッド車に搭載される昇降圧コンバータの制御装置として、昇降圧コンバータやコンデンサ等で構成されるLCR回路の共振周波数帯に対応するモータの共振回転数帯とモータの回転数を比較することが述べられている。ここでは、共振回転数帯より大きな回転数N1未満のときに制限電圧をV1とし、回転数N1以上N2未満のときにインバータの入力最大電圧までリニアに制限電圧を増大させ、回転数N2以上でインバータの入力最大電圧を制限電圧とすることが開示されている。
【0004】
本発明に関連する技術として、特許文献2には、電動車両において、インバータのいずれかのスイッチング素子が常時オフとなるオープン故障すると相電流が変動することでインバータ入力電圧が変動し、その変動に応じて蓄電装置の入出力電力が変動することを指摘している。ここでは、蓄電装置の入出力電力の変動と逆位相のパワー変動を他の交流電動機によって発生させることを開示している。
【0005】
特許文献3には、ハイブリッド車両の制御装置として内燃機関のトルク変動を抑制するために設けられる制振装置を用いて、例えば内燃機関の一部の気筒を休止する休筒運転状態で生じる振動を打ち消すように設定することが開示されている。これによって内燃機関とモータからなるパワープラントのエネルギ効率を向上させることが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−213404号公報
【特許文献2】特開2010−268574号公報
【特許文献3】特開2007−313970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、回転電機の電流センサにオフセット誤差が生じているときに、回転電機の周期的なトルク変動が生じる。このような場合に、LCR回路の共振周波数帯に対応する共振回転数帯に回転電機の回転数が入ると、上記のようにトルク変動が拡大し、蓄電装置の入出力電力の変動が拡大する。
【0008】
これを防ぐために、特許文献1のように、共振回転数帯に対してインバータ回路の入力電圧を制限することが考えられる。ここで、インバータ回路の入力電圧は、蓄電装置の電圧を電圧変換器で昇圧して生成されるが、蓄電装置の電圧の状態や、電圧変換器の昇圧上限値が存在すること等から、電圧変換器の昇圧比等を変更することが困難なことがある。仮に、昇圧比の変更が可能としても、その結果として、回転電機のトルク不足、電圧変換器における変換効率の低下等が生じ得る。このように、回転電機の動作状態によっては、共振回転数帯を避けるような昇圧比の設定ができないことがある。
【0009】
また、特許文献2,3の技術を用いて、蓄電装置の入出力電力の変動と逆位相のパワー変動を他の交流電動機によって発生させることも考えられるが、これらの文献には、蓄電装置の入出力電力の変動と逆位相のパワー変動をどのように生成するかが具体的に開示されていない。また、単に、蓄電装置の入出力電力の変動と逆位相のパワー変動を他の交流電動機によって発生させるだけでは、その回転電機に指令される本来のパワー出力が達成できなくなる。
【0010】
本発明の目的は、複数の回転電機の少なくとも1つにトルク変動が生じたときでも、回転電機の動作状態にかかわらず、蓄電装置の入出力電力の変動を抑制できる回転電機制御システムを提供することである。また、他の目的は、複数の回転電機の少なくとも1つにトルク変動が生じたときでも、回転電機の動作状態にかかわらず、蓄電装置の入出力電力の変動を抑制しながら、回転電機に指令される本来のトルクの出力を確保できる回転電機制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る回転電機制御システムは、複数の回転電機と、複数の回転電機に接続される電源部であって、蓄電装置と、各回転電機に接続される駆動回路と、蓄電装置と各駆動回路との間に設けられリアクトルと平滑コンデンサとを含む電圧変換装置とを含む電源部と、電圧変換器に関するリアクトルと平滑コンデンサを含む共振回路の共振周波数領域に対応する回転電機の共振回転数領域において、複数の回転電機の中の少なくとも1つの回転電機に生じたトルク変動による蓄電装置の入出力電力の変動を抑制するために、変動抑制に用いる他の少なくとも1つの回転電機に与える変動抑制トルクを推定演算する推定演算部と、推定演算された変動抑制トルクを変動抑制に用いる回転電機のトルク指令値に重畳し、これを変動抑制トルク指令値として演算する変動抑制トルク指令演算部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る回転電機制御システムにおいて、推定演算部は、トルク変動が生じた回転電機について、回転数と、トルク変動の位相とに基づいて変動抑制トルクのトルク位相を演算する変動抑制トルク位相演算部と、トルク変動が生じた回転電機について、電圧変換器に対する出力電圧指令値と実際の出力電圧値との偏差をゼロにするフィードバック演算によって、変動抑制トルクのトルク振幅を演算する変動抑制トルク振幅演算部と、を含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る回転電機制御システムにおいて、推定演算部は、トルク変動が生じた回転電機について、回転数と、トルク変動の位相とに基づいて変動抑制トルクのトルク位相を演算する変動抑制トルク位相演算部と、トルク変動が生じた回転電機のパワーの平均値と実際のパワーの変動ピーク値との偏差をゼロにするフィードバック演算によって、変動抑制トルクのトルク振幅を演算する変動抑制トルク振幅演算部と、を含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る回転電機制御システムにおいて、変動抑制トルク位相演算部は、トルク変動が生じた回転電機のd軸電流値とq軸電流値との間の電流進角に基づいて、トルク変動の位相を求めることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成により、回転電機制御システムは、回転電機の共振回転数領域において、複数の回転電機の中の少なくとも1つの回転電機にトルク変動が生じたときに、蓄電装置の入出力電力の変動抑制に用いる他の少なくとも1つの回転電機に与える変動抑制トルクを推定演算する。そして、推定演算された変動抑制トルクを変動抑制に用いる回転電機のトルク指令値に重畳して、これを変動抑制トルク指令値とする。このように、演算された変動抑制トルクは、回転電機の動作状態に依存せずに、変動抑制に用いる回転電機のトルク指令値に重畳されて変動抑制トルク指令値となる。これによって、回転電機の動作状態にかかわらず、蓄電装置の入出力電力の変動抑制ができる。
【0016】
また、変動抑制に用いる回転電機の変動抑制トルク指令値は、本来のトルク指令値に変動抑制トルクが重畳されたものである。ここで、変動抑制トルクは、トルク変動が生じた回転電機のトルク変動の抑制に用いられ、トルク変動と変動抑制トルクとがお互いに打ち消し合う。したがって変動抑制に用いる回転電機には、本来のトルク指令値が残り、指令された本来のパワー出力を確保できる。
【0017】
また、回転電機制御システムにおいて、トルク変動が生じた回転電機について、回転数と、トルク変動の位相とに基づいて変動抑制トルクのトルク位相が演算され、電圧変換器に対する出力電圧指令値と実際の出力電圧値との偏差をゼロにするフィードバック演算によって、変動抑制トルクのトルク振幅が演算される。このように、トルク変動が生じた回転電機の動作状態に基づいて、変動抑制トルクの位相と振幅が演算されるので、これらの演算結果から推定される変動抑制トルクによって、生じたトルク変動を効果的に抑制できる。
【0018】
また、回転電機制御システムにおいて、トルク変動が生じた回転電機のパワーの平均値と実際のパワーの変動ピーク値との偏差をゼロにするフィードバック演算によって、変動抑制トルクのトルク振幅を演算することもできる。実際のパワーの変動ピーク値とパワーの平均値との間の偏差は、電圧変換器の実際の出力電圧値と出力電圧指令値との偏差と同様に、共振回転数帯において拡大されたものであるので、その偏差をゼロとする制御量としてのトルク振幅を、変動抑制トルクのトルク振幅とできる。
【0019】
また、回転電機制御システムにおいて、トルク変動が生じた回転電機のd軸電流値とq軸電流値との間の電流進角に基づいて、トルク変動の位相を求める。トルクTは、d軸電流値id、q軸電流値iq、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq、誘起電圧係数Ψ、極数Pを用いて、T=P{Ψiq+(Ld−Lq)idq}で求められる。ここで、idとiqが互いに180°位相がずれた正弦波の変動が生じているとすると、トルクTは、Asin(ωθ+α)の式で表される。このαがトルク変動の位相である。このトルク変動の位相であるαは、idとiqの間の位相角である電流進角βと、関連があることが知られている。したがって、予め、回転電機について、トルク変動の位相αと電流進角βとの関係を実験等で求めておけば、その結果を用いることで、電流進角βからトルク変動の位相αを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る実施の形態における回転電機制御システムの構成図である。
【図2】共振回転数帯において、バッテリ電流の変動とシステム電圧の変動が拡大されている様子を示す図である。
【図3】図2のA部の拡大図である。
【図4】d軸電流とq軸電流に周期的変動が生じた様子を示す図である。
【図5】図4に基づいて生じるトルク変動について、変動トルクの位相と、変動トルクの振幅を示す図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、変動トルクの位相と、d軸電流値とq軸電流値の間の電流進角との関係を示す図である。
【図7】本発明に係る実施の形態において、変動抑制トルク指令値を求める手順を示す図である。
【図8】本発明に係る実施の形態において、変動抑制トルク指令値を求める別の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、回転電機として、車両に搭載されるモータ・ジェネレータを説明するが、車両搭載用以外の用途に用いられる回転電機であってもよい。また、以下では、2台の回転電機を有する回転電機制御システムを説明するが、回転電機の台数は複数であればよく、3台以上であってもよい。
【0022】
また、以下では、トルク変動が生じた回転電機を駆動用回転電機(MG2)とし、変動抑制に用いる回転電機を発電用回転電機(MG1)とするが、これは説明のための例示であり、これとは逆の関係としてもよい。また、以下では、回転電機の駆動回路としてインバータ回路を述べるが、これは説明のための例示であって、他の形式の駆動回路であっても構わない。また、以下では、回転電機の制御モードとして、PWM(Pulse Wide Modulation)モードのときについて説明するが、他の制御モード、例えば、過変調制御モード、矩形波制御モードであってもよい。その場合には、PWM制御モード用として説明する制御ブロックの内容がそれぞれの制御モード用のものに変更される。
【0023】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0024】
図1は、回転電機制御システム10の構成を説明する図である。この回転電機制御システム10は、ハイブリッド車両に搭載される2台の回転電機の動作を制御するシステムである。図1では、2つの回転電機を区別して、駆動用回転電機(MG2)12と発電用回転電機(MG1)と示されている。
【0025】
回転電機制御システム10は、駆動用回転電機(MG2)12、発電用回転電機(MG1)14の他に、駆動用回転電機(MG2)12と発電用回転電機(MG1)14に共通の電源部16と、駆動用回転電機(MG2)用の電流フィードバックの制御ブロック18と、発電用回転電機(MG1)用の電流フィードバックの制御ブロック19と、MG2制御装置60と、MG1制御装置62を含んで構成される。
【0026】
駆動用回転電機(MG2)12は、車両に搭載されるモータ・ジェネレータ(M/G)であって、電源部16の側から電力が供給されるときは、車両の駆動用モータとして機能し、車両の制動時には、発電機として機能する3相同期型回転電機である。回転電機はモータと発電機の機能を併せ持つが、ここで、MG2を駆動用としているのは、主たる目的が車両の駆動用であることによる。
【0027】
発電用回転電機(MG1)14は、MG2と同様に、車両に搭載されるモータ・ジェネレータ(MG)であって、ハイブリッド車両において図示されていないエンジンに接続され、エンジンの駆動力によって回転し、発電を行う機能を有する3相同期回転電機である。回転電機はモータと発電機の機能を併せ持つので、車両の駆動源として駆動用回転電機(MG2)12による駆動力が不足のときは、これをアシストする電動機として発電用回転電機(MG1)を用いることができる。このような用いられ方もあるが、主たる目的は、発電用であるので、ここではMG1を発電用としている。
【0028】
電源部16は、後述する制御ブロック18,19にそれぞれ含まれるインバータ回路32と接続される電源回路である。電源部16は、蓄電装置40と、蓄電装置40の側の平滑コンデンサ42と、リアクトル44と、2つのスイッチング素子46,48と、インバータ回路32の側の平滑コンデンサ50を含んで構成される。
【0029】
リアクトル44と2つのスイッチング素子46,48を含む部分は、電圧変換器と呼ばれることが多いが、ここでは、LCR共振回路を考えるので、特に、インバータ回路32の側の平滑コンデンサ50を含んで、電圧変換器43と呼ぶことにする。このように分けると、電源部16の中で、蓄電装置40と蓄電装置40の側の平滑コンデンサ42を除いた部分が電圧変換器43となる。電圧変換器43には、L成分を有するリアクトル44、寄生的なR成分を有するスイッチング素子46,48、C成分を有するインバータ回路32の側の平滑コンデンサ50を含み、これらは、寄生的なLCR共振回路を構成する。
【0030】
蓄電装置40は、充放電可能な高電圧用2次電池である。具体的には、約200Vから約300Vの端子電圧を有するリチウムイオン組電池である。組電池は、単電池または電池セルと呼ばれる端子電圧が1Vから数Vの電池を複数個組み合わせて、上記の所定の端子電圧を得るようにしたものである。
【0031】
電圧変換器43は、蓄電装置40とインバータ回路32の間に配置され、リアクトル44とスイッチング素子46,48を含んで構成される。電圧変換器43は、蓄電装置40の端子間電圧とインバータ回路32の直流電圧との間の電圧変換を行う機能を有する。電圧変換機能としては、蓄電装置40側の電圧をリアクトル44のエネルギ蓄積作用を利用して昇圧しインバータ回路32側に供給する昇圧機能と、インバータ回路32側からの電力を蓄電装置40側に降圧して充電電力として供給する降圧機能とを有する。
【0032】
ここでは電圧変換器43の一部とした平滑コンデンサ50は、蓄電装置40の側の平滑コンデンサ42と同様に、電圧、電流を平滑化する機能を有する。平滑コンデンサ50の両端子は、それぞれ、インバータ回路32の負極側母線と正極側母線に接続される。したがって、平滑コンデンサ50の両端子間電圧は、インバータ回路32の負極側母線と正極側母線との間の電圧となる。この電圧は、電圧変換器43が昇圧機能を有するときでいえば、電圧変換器43の出力電圧で、インバータ回路32の入力電圧である。なお、インバータ回路32の負極側母線と正極側母線との間の電圧は、システム電圧と呼ばれることがある。図1では、平滑コンデンサ50の両端子間電圧値がVHとして示されている。VHは、上記のように、インバータ回路32のシステム電圧値でもあるが、電圧変換器43における実際の出力電圧値である。
【0033】
駆動用回転電機(MG2)12用の電流フィードバックの制御ブロック18と、発電用回転電機(MG1)14用の電流フィードバックの制御ブロック19は、内部構成が同じである。そこで、駆動用回転電機(MG2)12用の電流フィードバックの制御ブロック18に代表させて、その内容を説明する。
【0034】
なお、回転電機をインバータ回路32によって駆動する場合に、その制御方法として、PWM制御モードと、過変調制御モードと、矩形波制御モードとを使い分けることが行われている。すなわち、回転電機の高出力化と小型化とを両立させるためには、1パルススイッチングを用いる矩形波制御モードが必要であり、低速領域で優れた特性を有するPWM制御モードと、中速領域で用いられる過変調制御モードとの間のモード切替を行いながら、最適に回転電機の動作が制御される。PWM制御モードと過変調制御モードは、電流フィードバック制御であるが、以下では、PWM制御モードにおける電流フィードバック制御について説明する。
【0035】
制御ブロック18は、インバータ回路32を介して回転電機12の動作について電流フィードバックを用いて制御する回路で、図1では、その内容が制御ブロック図で示されている。
【0036】
図1で、トルク指令値T*と回転角速度指令値ω*は、駆動用回転電機(MG2)12の動作目標指令値20である。これらの指令値は、図示されていない車両のアクセル、ブレーキ等からユーザの要求トルクと要求車速を推定して算出される。
【0037】
電流指令生成部22は、駆動用回転電機(MG2)12の実際の回転角速度ωと回転角速度指令値ω*とを比較し、予め作成したテーブル等を用いて、トルク指令値T*をd軸電流指令値Id*とq軸電流指令値Iq*の組として算出する機能を有する。
【0038】
減算器部24は、d軸電流指令値Id*から実際のd軸電流値Idを減算してd軸電流偏差ΔIdを算出する機能を有する減算器と、q軸電流指令値Iq*から実際のq軸電流値Iqを減算してq軸電流偏差ΔIqを算出する機能を有する減算器を含んで構成される。
【0039】
駆動用回転電機(MG2)12における実際のd軸電流値idと実際のq軸電流値iqは、3相−2相座標変換部34の機能によって、駆動用回転電機(MG2)12のロータの電気角と、駆動用回転電機(MG2)12の各相電流値IU,IV,IWとに基づいて算出される。ロータの電気角は、レゾルバ52によって検出される。各相電流値IU,IV,IWは、インバータ回路32の各相アームと駆動用回転電機(MG2)12の各相コイルとを接続する電力線を流れる電流を検出することで得られる。駆動用回転電機(MG2)12の各相コイルの各一方側端子が中立点で相互に接続される方式のときは、符号を含めた各相電流の和は0となるので、2つの相電流を検出することで十分である。図1では、U相電流値IUとV相電流値IVの2つを検出することが示されている。残るW相電流値IWは、IW=−(IU+IV)で求められる。
【0040】
PI制御部26は、d軸電流偏差ΔIdとq軸電流偏差ΔIqについて、所定のゲインの下で比例積分制御を行ってこれらに対応する制御偏差を求め、その制御偏差に応じたd軸電圧指令値Vd*とq軸電圧指令値Vq*を算出する機能を有する。減算器部24と、PI制御部26によって、PWM制御モードにおける電流フィードバックが行われる。
【0041】
PI制御部26によって出力されるd軸電圧指令値Vd*とq軸電圧指令値Vq*は、2相−3相座標変換部28に入力される。2相−3相座標変換部28は、3相−2相座標変換部34と逆変換の関係にあるもので、ロータの電気角と、d軸電圧指令値Vd*とq軸電圧指令値Vq*に基づいて、U相電圧VU、V相電圧VV、W相電圧VWを算出する機能を有する。
【0042】
PWM制御部30は、2相−3相座標変換部28から出力された各相電圧を搬送波(キャリア)と比較して、パルス幅変調(PWM)された各相駆動信号として出力する機能を有する。出力された各相駆動信号は、インバータ回路32に出力される。
【0043】
インバータ回路32は、駆動用回転電機(MG2)12の駆動回路であり、駆動用回転電機(MG2)12に接続されるスイッチング回路である。具体的には、正極側母線と負極側母線との間に、2つのスイッチング素子を直列接続し、各スイッチング素子にそれぞれダイオードを逆接続した各相アームを3相分含んで備えて構成される。インバータ回路32は、交流電力と直流電力との間の電力変換を行う機能を有する。すなわち、インバータ回路32は、駆動用回転電機(MG2)12が通常の動作で電動機として機能するときは、蓄電装置40側からの直流電力を交流3相駆動電力に変換し、駆動用回転電機(MG2)12に交流駆動電力として供給する直交変換機能を有する。車両が制動時等で、駆動用回転電機(MG2)12が発電機として機能するときは、発電機として機能する駆動用回転電機(MG2)12からの交流3相回生電力を直流電力に変換し、蓄電装置40側に充電電流として供給する交直変換機能を有する。
【0044】
インバータ回路32は、各相駆動信号に応じて、スイッチング素子をオンオフし、駆動用回転電機(MG2)12の各相コイルに流す電流を制御して、駆動用回転電機(MG2)12を回転駆動する。インバータ回路32の各相アームと駆動用回転電機(MG2)12の各相コイルとを接続する電力線を流れる電流は、上記のように、3相−2相座標変換部34を介して、減算器部24にフィードバックされる。このようにして、PWM制御モ
ードの電流フィードバックが行われる。
【0045】
MG2制御装置60は、駆動用回転電機(MG2)12と電源部16と制御ブロック18の各要素の動作を全体として制御する機能を有する制御回路である。制御ブロック18の中で、インバータ回路32を除く部分は、MG2制御装置60とまとめて1つの制御部あるいは制御ブロックとすることができる。上記で述べた制御ブロック18とMG2制御装置60の各機能は、ソフトウェアを実行することで実現することができる。勿論、各機能の一部をハードウェアで実現するものとしてもよい。
【0046】
以上で、駆動用回転電機(MG2)12を駆動するときの要素である電源部16、制御ブロック18、MG2制御装置60を説明した。これらによって、駆動用回転電機(MG2)12は、トルク指令値T*、回転角速度指令値ω*を満たすように駆動制御が行われる。ここで、駆動用回転電機(MG2)12に関する要素のみにおける駆動制御について、図2、図3を用いて説明する。
【0047】
図2は、横軸にMG2回転数Nをとり、縦軸に蓄電装置40の入出力電流値、すなわちバッテリ電流値IBと、電圧変換器43の出力電圧値VHとを取り、MG2回転数Nを上げていったときのIBとVHの変化を見た図である。駆動用回転電機(MG2)12には、電流センサのオフセット等に起因するトルク変動があるので、その変動はIBの変動と、VHの変動として現れる。ところで、電圧変換器43は、寄生的にLCR共振回路として働くので、その共振周波数帯に対応する共振回転数帯にMG2回転数Nが入りこむと、IBの変動と、VHの変動が、共振現象によって拡大される。
【0048】
図2では、この共振回転数帯がAで示される。図3は、この共振回転数帯Aにおける拡大図である。図3に示されるように、共振回転数帯Aにおいて、IBの変動が拡大され、VHの変動が拡大される様子が示される。バッテリ電流値IBの変動が拡大すると、蓄電装置40の入出力電力が変動し、電圧変換器43の出力電圧値VHの変動、すなわちインバータ回路32のシステム電圧の変動が拡大すると、インバータ回路32からの駆動信号が変動し、駆動用回転電機(MG2)12の制御が不安定になる。
【0049】
このように、共振回転数帯において、駆動用回転電機(MG2)12にトルク変動の拡大が生じると、蓄電装置40の入出力電力の変動が拡大する。これが本発明によって解決を図りたい課題である。
【0050】
図1に戻り、そのために、発電用回転電機(MG1)14の動作を制御し、駆動用回転電機(MG2)12に現れた周期的に変動するトルクを変動トルク68とよぶことにして、変動トルク68を打ち消すように、逆位相の変動抑制トルク69を発生させる。
【0051】
発電用回転電機(MG1)14のための制御ブロック19の内容は、駆動用回転電機(MG2)12のための制御ブロック18と同じであるが、MG1制御装置62は、MG2制御装置60と異なる機能を有する。すなわち、MG1制御装置62は、MG2制御装置60と同様に、発電用回転電機(MG1)14と制御ブロック19の各要素の動作を全体として制御する機能を有するが、さらに、駆動用回転電機(MG2)12の変動トルク68と逆位相の変動抑制トルク69を推定演算し、これを元々のトルク指令値T1*に重畳させ、これを変動抑制トルク指令値T*として、回転角速度指令値ω*と共に、動作目標指令値20とする。
【0052】
MG1制御装置62は、そのために、変動抑制トルク69の推定演算部として、トルク変動が生じた駆動用回転電機(MG2)12についての回転数Nと、トルク変動の位相αとに基づいて、変動抑制トルクのトルク位相(ωθ+α)を演算する変動抑制トルク位相演算部70と、トルク変動が生じた駆動用回転電機(MG2)12について、電圧変換器43に対する出力電圧指令値VH*と実際の出力電圧値VHとの偏差をゼロにするフィードバック演算によって、変動抑制トルクのトルク振幅を演算する変動抑制トルク振幅演算部72とを含む。また、推定演算された変動抑制トルクを変動抑制に用いる発電用回転電機(MG1)14のトルク指令値T1*に重畳し、これを変動抑制トルク指令値T*として演算する変動抑制トルク指令演算部74を含んで構成される。かかる機能は、ソフトウェアを実行することで実現することができる。勿論、各機能の一部をハードウェアで実現するものとしてもよい。
【0053】
MG1制御装置62の各機能は、駆動用回転電機(MG2)12のd軸電流値id、q軸電流値iq、レゾルバ角θ、回転数N、電源部16の出力電圧指令値VH*、実際の出力電圧値VH、元々のトルク指令値T1*に基づく演算処理によって実現される。ここで、d軸電流値id、q軸電流値iqは、3相−2相座標変換部34の出力を取得して用いられ、レゾルバ角θは、レゾルバ52の出力を取得して用いられ、回転数Nは、θ−N変換部54によってレゾルバ角θが回転数Nに変換された結果を取得して用いられ、実際の出力電圧値VHは、平滑コンデンサ50の両端子間電圧値を取得して用いられる。
【0054】
MG1制御装置62に接続される記憶装置64は、MG1制御装置62に用いられるプログラム等を格納する機能を有するが、ここでは特に、駆動用回転電機(MG2)12におけるトルク変動の位相αと電流進角βとの関係を示す関係ファイル66を記憶する機能を有する。
【0055】
図4から図6は、関係ファイル66についての説明図である。図4は、駆動用回転電機(MG2)12について、電流センサのオフセットが生じているときに、d軸電流値idがd軸電流指令値id*から周期的変動を生じ、q軸電流値iqがq軸電流指令値iq*から周期的変動を生じる様子を示す図である。図4の横軸は、レゾルバ角θで、縦軸は電流値である。ここでは、d軸電流指令値id*とq軸電流指令値iq*はレゾルバ角θに関係なく一定値としてある。電流センサは、図1におけるIU,IV検出用のセンサである。idとiqは互いに180°位相がずれるので、図4では、iqをレゾルバ角θに対する余弦関数、idをレゾルバ角θに対する正弦関数として示してある。
【0056】
図5は、このようなid,iqの周期的変動があるときの駆動用回転電機(MG2)12のトルクの変動を示す図である。図5の横軸はレゾルバ角θで、縦軸はトルクである。トルクTは、d軸電流値id、q軸電流値iq、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq、誘起電圧係数Ψ、極数Pを用いて、T=P{Ψiq+(Ld−Lq)idq}で求められる。ここで、図4で説明したように、idとiqは互いに180°位相がずれた正弦波の変動であるとすると、トルクTは、T=TAMPsin(ωθ+α)の式で表される。このαが、トルク変動が生じたときの駆動用回転電機(MG2)12のトルク変動の位相で、TAMPがトルク変動の振幅である。
【0057】
このトルク変動の位相であるαは、idとiqの間の位相角である電流進角βと、関連があることが知られている。したがって、予め、回転電機について、トルク変動の位相αと電流進角βとの関係を実験等で求めておけば、その結果を用いることで、電流進角βからトルク変動の位相αを容易に得ることができる。図6は、駆動用回転電機(MG2)12について、実験的に求めたトルク変動の位相αと、電流進角βとの関係を示す関係ファイル66である。
【0058】
図1の記憶装置64には、図6に示されるトルク変動の位相αと電流進角βとの関係を示す関係ファイル66が記憶される。トルク変動の位相αと電流進角βとの間の関係は、図6のようなマップの他に、ルックアップテーブル、関係式等の形式で記憶するものとしてよい。
【0059】
図7は、駆動用回転電機(MG2)12に生じた変動トルクを打ち消すように、発電用回転電機(MG1)14に変動抑制トルクを発生させて、蓄電装置40の入出力電力の変動を抑制する手順を示す図である。駆動用回転電機(MG2)12に生じた変動トルクを打ち消すようにするには、図5で説明した変動トルクT=TAMP(ωθ+α)と逆位相で振幅が同じの変動抑制トルクを、発電用回転電機(MG1)14において余分に発生させればよい。
【0060】
そこで、最初に、駆動用回転電機(MG2)12の回転数Nが、発振回転数帯Aにあるか否かを判断する。発振回転数帯Aは、図2、図3で説明したように、電圧変換器43のLCR共振回路の発振周波数帯に対応する回転数帯であるので、予めわかっている。駆動用回転電機(MG2)12の回転数Nは、レゾルバ52の検出値をθ−N変換部54において回転数Nに変換した値として取得することができる。
【0061】
取得した実際の回転数Nと、共振回転数帯Aの回転数範囲とを比較することで、回転数Nが発振回転数帯Aにあるか否かを判断できる。この判断が肯定されると、MG1制御装置62において、以下の手順が実行される。
【0062】
まず、MG2のdq軸電流値を取得する(S10)。具体的には、3相−2相座標変換部34から出力されるd軸電流値idとq軸電流値iqを取得する。そして、d軸電流値idとq軸電流値iqに基づいて、電流進角βを計算する。電流進角βは、dq座標系における合成電流Iとq軸電流との間の角度である。電流進角βが計算されると、記憶装置64に記憶されている関係ファイル66を検索し、電流進角βに対応するトルク変動の位相αを読み出す。この手順がMG2変動位相補正マップ参照(S12)である。
【0063】
トルク変動の位相αが取得されると、次に、現在のMG2回転数Nを取得し(S14)、現在のMG2レゾルバ角θを取得する(S16)。これらは、レゾルバ52、θ―N変換部54の出力値を取得することで実行できる。そして、これらから、トルク位相である(ωθ+α)を計算する。
【0064】
(ωθ+α)は、MG2の変動トルクのトルク位相であるので、この逆位相が変動抑制トルクのトルク位相として用いられる。具体的には、(ωθ+α)の値をそのままにして、MG2の変動トルクが正弦関数であれば、MG1の変動抑制トルクには余弦関数を用いるようにすればよい。この手順がMG2変動抑制トルク位相演算(S18)である。ここまでの手順は、MG1制御装置62の変動抑制トルク位相演算部70の機能によって実行される。
【0065】
次に、電圧変換器43に対する出力電圧指令値VH*を取得する(S20)。また、電圧変換器43における実際の出力電圧値VHを取得する(S22)。前者は、MG2制御装置60または図1では図示されていない電源部制御装置から取得でき、後者は、平滑コンデンサ50の両端子間電圧の検出値から取得できる。
【0066】
そして、VHとVH*との間の偏差を求め、PI演算によってこの偏差をゼロにするような制御量として、トルク振幅TAMPが求められる。すなわち、出力電圧指令値VHに対し、実際の出力電圧値VHがフィードバックされて、その偏差を補償するようなトルク振幅TAMPを求める演算処理が実行される。この手順がMG2変動抑制トルク振幅演算(S26)である。この手順は、MG1制御装置62の変動抑制トルク振幅演算部72の機能によって実行される。
【0067】
このようにして、変動抑制トルクについてのトルク位相(ωθ+α)とトルク振幅TAMPが求まると、トルク振幅TAMPについて(ωθ+α)の関数としての変動抑制トルクを演算する(S28)。図7では、MG2の変動トルクをTAMPsin(ωθ+α)として、MG1の変動抑制トルクをTAMPcos(ωθ+α)と示した。MG2に現われる変動トルクが正弦波関数形でないときは、その関数形の逆位相となるトルクをMG1の変動抑制トルクとする。逆位相とは、レゾルバ角θについて180°位相が異なることである。
【0068】
変動抑制トルクが演算されると、MG1に元々与えられているトルク指令値T1*を取得し(S30)、この元々のトルク指令値T1*に変動抑制トルクTAMPcos(ωθ+α)の成分を重畳させて、変動抑制トルク成分を含むトルク指令値T*が演算される(S34)。すなわち、MG1のトルク指令値T*は、T*=T1*+TAMPcos(ωθ+α)に修正されて、図1の制御ブロック19における動作目標指令値20のT*とされる。
【0069】
上記では、MG2変動抑制トルク振幅の演算について、電圧変換器43の出力電圧値VHを出力電圧指令値VH*にフィードバックさせて行うものとして説明した。これ以外でも、MG2変動抑制トルク振幅の演算は、LCR共振によって変動する要素のフィードバックに基づいてもよい。図8は、MG2パワーの変動ピーク値(S42)を、MG2パワー平均値(S40)にフィードバックし、これらの間の偏差をゼロにする制御量として、トルク振幅を求める方法が示されている。MG2パワーの値は、図1におけるIU,IV等の取得と、これに対応するMG2のコイル間電圧の取得によって、電流と電圧の積に基づくパワー算出として得ることができる。MG2パワー平均値は、駆動用回転電機(MG2)の回転数Nが共振回転数帯A以外にあるときのパワー平均値とすることができる。
【0070】
このように、複数の回転電機の中の少なくとも1つの回転電機に生じた周期的変動を有する変動トルクに対して、他の少なくとも1つの回転電機を変動抑制に用いて、変動トルクと逆位相の変動抑制トルクを元々のトルク指令に重畳させる制御を行う。これによって、蓄電装置の入出力電力の変動が抑制される。また、電圧変換器の出力電圧値の変動が抑制される。また、回転電機の駆動回路の入力電圧値の変動が抑制される。これによって、車両からの要求トルクを満足しながら、蓄電装置の入出力電力を一定にできる。また、従来技術のように、電圧変換器の出力電圧制限を特に行う必要もなく、昇圧ゲインを抑制することもないので、例えば、出力電圧のサージを抑制できる。
【0071】
なお、上記では、PWM制御モードにおける共振回転数帯について説明したが、共振回転数帯の回転数領域が過変調制御モードあるいは矩形波制御モードとなることがある。過変調制御モードおよび矩形波制御モードは、PWM制御モードに比較して制御応答性が低いので、これらの制御モードで共振回転数帯に回転数Nが入ると、従来技術では、制御応答性を上げるためにPWM制御モードに移すことが考えられる。上記構成によれば、共振回転数帯に回転数Nが入っても、変動トルクが抑制されるので、PWM制御モードへ移す必要性が少なくなる。したがって、過変調制御モードおよび矩形波制御モードの適用範囲を適切に確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る回転電機制御システムは、車両搭載回転電機の制御に利用できる。
【符号の説明】
【0073】
10 回転電機制御システム、12 駆動用回転電機(MG2)、14 発電用回転電機(MG1)、16 電源部、18,19 制御ブロック、20 動作目標指令値、22 電流指令生成部、24 減算器部、26 PI制御部、28 2相−3相座標変換部、30 PWM制御部、32 インバータ回路、34 3相−2相座標変換部、40 蓄電装置、42,50 平滑コンデンサ、43 電圧変換器、44 リアクトル、46,48 スイッチング素子、52 レゾルバ、54 θ−N変換部、60 MG2制御装置、62 MG1制御装置、64 記憶装置、66 関係ファイル、68 変動トルク、69 変動抑制トルク、70 変動抑制トルク位相演算部、72 変動抑制トルク振幅演算部、74 変動抑制トルク指令演算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転電機と、
複数の回転電機に接続される電源部であって、蓄電装置と、各回転電機に接続される駆動回路と、蓄電装置と各駆動回路との間に設けられリアクトルと平滑コンデンサとを含む電圧変換装置とを含む電源部と、
電圧変換器に関するリアクトルと平滑コンデンサを含む共振回路の共振周波数領域に対応する回転電機の共振回転数領域において、複数の回転電機の中の少なくとも1つの回転電機に生じたトルク変動による蓄電装置の入出力電力の変動を抑制するために、変動抑制に用いる他の少なくとも1つの回転電機に与える変動抑制トルクを推定演算する推定演算部と、
推定演算された変動抑制トルクを変動抑制に用いる回転電機のトルク指令値に重畳し、これを変動抑制トルク指令値として演算する変動抑制トルク指令演算部と、
を備えることを特徴とする回転電機制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機制御システムにおいて、
推定演算部は、
トルク変動が生じた回転電機について、回転数と、トルク変動の位相とに基づいて変動抑制トルクのトルク位相を演算する変動抑制トルク位相演算部と、
トルク変動が生じた回転電機について、電圧変換器に対する出力電圧指令値と実際の出力電圧値との偏差をゼロにするフィードバック演算によって、変動抑制トルクのトルク振幅を演算する変動抑制トルク振幅演算部と、
を含むことを特徴とする回転電機制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機制御システムにおいて、
推定演算部は、
トルク変動が生じた回転電機について、回転数と、トルク変動の位相とに基づいて変動抑制トルクのトルク位相を演算する変動抑制トルク位相演算部と、
トルク変動が生じた回転電機のパワーの平均値と実際のパワーの変動ピーク値との偏差をゼロにするフィードバック演算によって、変動抑制トルクのトルク振幅を演算する変動抑制トルク振幅演算部と、
を含むことを特徴とする回転電機制御システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の回転電機制御システムにおいて、
変動抑制トルク位相演算部は、
トルク変動が生じた回転電機のd軸電流値とq軸電流値との間の電流進角に基づいて、トルク変動の位相を求めることを特徴とする回転電機制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−51829(P2013−51829A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188645(P2011−188645)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】