説明

回転電機

【課題】油脂がブレーキ制動面に付着すること安定して防止し、ブレーキの能力低下を抑制すると共に、機器としての安全性を向上することが可能な回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機は、少なくとも一端部が軸受部46により回転自在に支持される枢軸38、40と、枢軸に取り付けられた回転体31と、回転体の軸受部側の端部に固定され枢軸と同軸的に位置する環状のブレーキディスク60と、を備えている。ブレーキディスクの外周部は回転体よりも外周側に位置し制動面60aを構成し、ブレーキディスクの内周部は回転体の内周よりも内側に突出する堰70を構成している。ブレーキディスクは、堰の回転体側の側面に形成され円周方向に延びる環状の油溜め溝74と、回転体よりも大きな径の位置で回転体との接合側に設けられる環状の凸部68と、を有し、ブレーキディスクの内周面は、回転体側に向かって大径となるテーパ面を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、油潤滑を行う軸受部を備えた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、巻上機に用いられるアウターロータ型の回転電機は、枢軸と、枢軸に固定され永久磁石等からなる固定子と、軸受を介して枢軸に回転自在に支持され、固定子の外周側に設けられた回転子と、を備えている。回転子は、枢軸と同軸的に位置した円筒状の回転子枠と、回転子枠の両端部を閉塞した端板とを有している。一方端板の中心部には軸受箱が形成され、この軸受箱に軸受の外輪が嵌合されている。軸受の内輪は枢軸に嵌合されている。また、他方の端板には、片持ちの枢軸が固定され、この枢軸は、回転子の外側に配置された軸受台によって回転自在に支持されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
片持ちの枢軸には軸受が嵌着され、その軸受の外輪を軸受台に内装することにより、枢軸と軸受を嵌着し、回転可能に支持している。軸受の両端となる位置に、機内蓋、機外蓋が設けられ、それぞれ軸受台の軸受箱を構成している。機内蓋における枢軸の貫通部にはシール7が配置され、軸受の油脂の流出防止を行っている。シールは、一般的にはオイルシールやフエルトなどで製作される。
【0004】
回転子枠は、綱(ロープ)が巻き付けられる綱車として機能し、この綱車の軸受側の端板には、ブレーキディスクが取付けられている。ブレーキディスクを挟持するブレーキは、軸受台に設けられた座に取付けられている。
【0005】
綱車、ブレーキディスクおよび枢軸により構成される回転体は、軸受に支承され、回転可能となっている。ブレーキディスクをブレーキに内装されたパッドで挟むことにより、回転体を制動(停止)することができる。パッドで挟む範囲をブレーキディスクの制動面と称する。
【0006】
上記構成の巻上機において、潤滑用の油脂を使用する箇所は、綱車にかけられる綱(ロープ)と軸受の2点がある。綱車の綱から発生する油脂、また、軸受から発生する油脂は、種々の経路を通ってブレーキディスクの制動面に至る場合がある。このようなブレーキディスク制動面への油脂の到達を防止するため、流出経路に、油脂が溜まる溝や凸部、あるいは、堰を設けることが考えられる。軽微な垂れや油滴程度であれば、堰等によりディスク制動面へ油脂が流出する可能性は低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−19322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、軸受への過給油に代表される異常な使用や無点検による経年的な油脂の溜まりなど、極めて異常な油量が発生した場合は、油脂が堰、凸部等を乗り上げる場合がある。乗り上げた油は、ディスク内周に溜まり、ディスクの回転によって溜まった箇所が上部に位置した状態で、ディスクが停止し、あるいは、極低速で回転した場合は、反綱車側のディスク制動面へ流出する可能性がある。
【0009】
軸受部からブレーキディスク制動面への油脂流出を抑制する対策として、例えば、軸受室のシール部にフェエルトとオイルシールの併用をする場合も想定される。しかし、この構成の場合、シール部の寸法が増大し、結果的には、軸受箱全体の大形化になる。
【0010】
ディスク制動面に油脂が付着すると、ブレーキパッドとの摩擦係数が低下し、結果としてブレーキの制動力が低下する。このような摩擦係数の低下分を考慮して、摩擦係数を低く設定すると、必要なブレーキトルクを得るために、押付力または、制動半径を大きく設定する必要がある。押付力を大きく設定するとブレーキの容量が拡大し、それに伴い大形化の必要がある。制動半径を大きく設定するとディスクの外径が大きくなり、巻上機全体の大形化になる。
【0011】
ディスク制動面へ油脂が付着することを防止するために、機器の運用上は、保守管理が重要となる。油脂発生部位から制動面までの間に、防油対策が少なければ、油脂が制動面へ到達してしまう時間が短くなり、保守管理の間隔を短縮する必要がある。
【0012】
軸受箱のシール部をフエルトの多重化やオイルシールの設置およびラビリンス化することにより、油脂流出経路のパス延長が可能となるが、いずれの対策においても寸法的な面、コスト的な問題、その他の弊害が発生する場合がある。
【0013】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、軸受部等から流出する油脂がブレーキ制動面に付着すること安定して防止することができ、ブレーキの能力低下を抑制すると共に、機器としての安全性を向上することが可能な回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明の態様に係る回転電機は、少なくとも一端部が軸受部により回転自在に支持される枢軸と、前記枢軸に取り付けられた回転体と、前記回転体の前記軸受部側の端部に固定され前記枢軸と同軸的に位置する環状のブレーキディスクと、を備え、
前記ブレーキディスクは、前記回転体の外径よりも大きな外径および前記回転体の内径よりも小さい内径を有し、前記ブレーキディスクの外周部は前記回転体よりも外周側に位置し制動面を構成し、前記ブレーキディスクの内周部は前記回転体の内周よりも内側に突出する堰を構成し、
前記ブレーキディスクは、前記堰の前記回転体側の側面に形成され円周方向に延びる環状の油溜め溝と、前記回転体よりも大きな径の位置で前記回転体との接合側に設けられる環状の凸部と、を有し、前記ブレーキディスクの内周面は、前記回転体側に向かって大径となるテーパ面を構成している。
【発明の効果】
【0015】
上記構成によれば、軸受部等から流出する油脂がブレーキ制動面に付着すること安定して防止することができ、ブレーキの能力低下を抑制すると共に、機器としての安全性を向上することが可能な回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る巻上機を一部破断して示す側面図、図1(b)は、図1(a)の線A−A方向から見たブレーキディスクを示す正面図。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る巻上機の回転子枠とブレーキディスクとの接合部およびブレーキディスクを示す断面図。
【図3】図3は、第2の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図4】図4は、第3の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図5】図5は、第4の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図6】図6は、第5の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図7】図7は、第6の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図8】図8は、第7の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図9】図9は、第8の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図10】図10は、第9の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図11】図11は、第10の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図12】図12は、第11の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図13】図13は、第12の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図14】図14は、第13の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図15】図15は、第14の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図16】図16は、第15の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図17】図17は、第16の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図18】図18は、第17の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図19】図19は、第18の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図20】図20は、第19の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図21】図21は、第20の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図22】図22は、第21の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図23】図23は、第22の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図24】図24は、第23の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図25】図25は、第24の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図26】図26は、第25の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図27】図27は、第26の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図28】図28は、第27の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図29】図29は、第28の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図30】図30は、第29の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図31】図31(a)は、第30の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図、図31(b)は、ブレーキディスクの一部を示す側面図。
【図32】図32(a)は、第31の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図、図32(b)は、ブレーキディスクの一部を示す側面図。
【図33】図33は、第32の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図34】図34は、第33の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図35】図35は、第34の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図36】図36は、第35の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図37】図37は、第36の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図38】図38は、第37の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【図39】図39は、第38の実施形態に係る巻上機の要部を示す図2に対応の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施形態に係る回転電機について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1(a)は、第1の実施形態に係るエレベータ用の巻上機を一部破断して示す側面図、図1(b)は、図1(a)のA方向から見たブレーキディスクの側面図、図3は、ブレーキディスクの一部を拡大して示す断面図である。
【0018】
図1に示すように、巻上機30は、例えば、アウターロータ型回転電機として構成されている。巻上機30は、回転体を構成する綱車31を備えている。綱車31は、円筒状の回転子枠32と、回転子枠の両端に固定され回転子枠の両端を閉塞するそれぞれほぼ円盤状の第1端壁34および第2端壁36とを有している。回転子枠32の外周面には、ロープを巻き付けるための複数の係合溝33が同芯状に形成されている。
【0019】
巻上機30は、片持ちの第1枢軸38および片持ちの第2枢軸40を有している。第1枢軸38の外端部は、ベース41上に立設された支持台42に固定され、これにより、第1枢軸38はほぼ水平に支持されている。第1枢軸38は、前記第1端壁34を貫通し、回転子枠32内に同軸的に延びている。綱車31の第1端壁34は、軸受44により第1枢軸38に回転自在に支持されている。
【0020】
第2枢軸40は、第2端壁36の中心部に固定され、あるいは、第2端壁36と一体に成形され、第2端壁から外方に突出している。第2枢軸40は、第1枢軸38および回転子枠32と同軸的に延びている。第2枢軸40には軸受46が嵌着され、この軸受の外輪は軸受台48に内装されている。軸受台48は、ベース41上に立設されている。これにより、第2枢軸40は、軸受46を介して軸受台48に回転自在に支持している。
【0021】
軸受46の両端となる位置に、環状の機内蓋47aおよび円盤状の機外蓋47bがそれぞれ設けられ、軸受台48の軸受箱を構成している。軸受46には、例えば、グリース等の潤滑剤が保持されている。機内蓋47aにおける第2枢軸40の貫通部にはシール53が装着され、軸受46の油脂の流出防止を行っている。シール53は、一般的にはオイルシールやフエルトなどで製作される。
これより、回転体として機能する綱車31および第2枢軸40は、軸受44、46、支持台42および軸受台48により回転自在に支持され、ほぼ水平に保持されている。
【0022】
回転子枠32内において、第1枢軸38には、固定子50が取り付けられている。固定子50は、第1枢軸38の外周に固定された円筒状の固定子鉄心51と、固定子鉄心に巻装された固定子コイル52とを有している。固定子鉄心51は、磁性材、例えば、珪素鋼板からなる環状の金属板を多数枚積層して構成されている。固定子鉄心51の外周部には、それぞれ軸方向に延びた複数のスロットが形成され、これらのスロットに固定子コイル52が埋め込まれている。固定子コイル52のコイルエンドは固定子鉄心51の両端面から軸方向に張り出している。
【0023】
回転子枠32の内周面に環状の永久磁石54が固定され、固定子鉄心51の外側に所定の隙間を置いて対向している。固定子50の固定子コイル52に通電することにより、永久磁石54が誘導され、回転子としての綱車31および永久磁石54が第1および第2枢軸38、40の周りで回転される。
【0024】
綱車31の軸受46側の端、あるいは、第2端壁36には、環状のブレーキディスク60が取付けられている。ブレーキディスク60は、例えば、ねじ止めにより回転子枠32の一端に固定されている。ブレーキディスク60は綱車31と同軸的に位置し、綱車31と一体的に回転する。ブレーキディスク60は、回転子枠32の外径よりも大きな外径、および回転子枠32の外径よりも小さい内径に形成されている。ブレーキディスク60の外周部分は、回転子枠32から径方向外方に突出し、この外周部の両面は、制動面60aを構成している。
【0025】
ブレーキディスク60の制動面60aにそれぞれ対向するブレーキパッド63およびこれらのブレーキパッドを押圧する押圧機構65が設けられている。ブレーキパッド63および押圧機構65は、支持ブラケット67により、例えば、軸受台48に支持されている。ブレーキパッド63によりブレーキディスク60を両面側から挟むことにより、回転体を制動(停止)することができる。
【0026】
図1および図2に示すように、回転子枠32のブレーキディスク60側の端部において、ロープが捲回される係合溝33とブレーキディスク60との間には、油捕獲用の溝62が形成され、全周に亘って延びている。また、この溝62とブレーキディスク60との間には、環状の凸部64が全周に亘って形成されている。回転子枠32の上記端部の内周面には、円周方向に沿って複数の凸部66が設けられている。
【0027】
一方、ブレーキディスク60の回転子枠32と接合側の側面において、回転子枠32の外周よりも大径の位置には、環状の凸部68が突設されブレーキディスクと同軸的に位置している。ブレーキディスク60の内径は、回転子枠32の内周寸法よりも小さく形成され、このブレーキディスク60の内周縁部は、回転子枠32の内周縁から中心方向に突出し、環状の堰70を構成している。ブレーキディスク60の内周面、すなわち、堰70の天井面は、回転子枠32側に向かって大径となるテーパ面71を構成している。更に、堰70において、回転子枠32との接合側のディスク側面に、環状の油溜め溝74が形成され、ブレーキディスク60と同軸的に全周に亘って延びている。
【0028】
上記のように構成された巻上機30によれば、運転時、固定子50の固定子コイル52に通電することにより、永久磁石54が誘導され、綱車31が第1および第2枢軸38、40の周りで回転する。綱車31が回転することにより、この綱車31に捲回された図示しないロープが巻上られる。
【0029】
巻上機30の運転中において、軸受箱内は発熱などにより温度上昇する。そのため、潤滑剤が温度上昇することにより、潤滑剤から油分が流出し、軸受内に進行し、軸受内ころの潤滑が行われる。流出した油分は、回転体の遠心力により、第2端壁36、回転子枠32の内面に沿って外周側に流れる。また、綱車31のロープから発生する油脂の一部は、ブレーキディスク60側に流れる。
【0030】
このような油脂のブレーキディスク制動面60aへの付着は、以下のようにして防止される。
綱車31のロープから発生しブレーキディスク60側に流れる油脂は、溝62および凸部64により通過が防止される。万一、油量が異常に増大し、溝62および凸部64を越えて流出した場合、この油脂は、回転子枠32とブレーキディスク60との接合部を介してブレーキディスク側面に流れる。
【0031】
一方、軸受46の潤滑油から発生し、シール53を貫通し、第2枢軸40、第2端壁36、回転子枠32の内周面を伝わる油脂は、回転子枠32とブレーキディスク60との接合面を通過してブレーキディスク60の側面に流れる場合がある。
これら2つの経路から流出した油脂は、ブレーキディスク15の側面に形成された凸部68により、制動面60aへの流出が防止される。
【0032】
ブレーキディスク60の反綱車側の制動面60aへの油脂付着は、以下のように防止できる。
軸受46の潤滑油から発生し、シール53を貫通し、第2枢軸40、第2端壁36、回転子枠32の内周面を伝わる油脂は、ブレーキディスク60の堰70内の油溜め溝74に溜まり、堰70によって堰止められる。回転体の回転によって発生する遠心力により、綱車31の内周にある油脂は、凸部66間に集まる傾向にある。凸部66は、油脂を油溜め溝74へ導くガイドにもなる。回転体の低速回転または、停止した時、凸66によりブレーキディスク60の油溜め溝74へ油脂を誘導することができ、結果的に、油溜め溝74の収油効果を強化することができる。
【0033】
万一、更なる異常な油量増大により、油脂が堰70および油溜め溝74を乗り超えた場合、ブレーキディスク60の内周のテーパ面71により、油脂は綱車31側へ回収され、制動面60aへの垂れ落ち防止される。
【0034】
以上のように構成された巻上機30によれば、ブレーキディスク制動面への油脂付着の防止策を強化することにより、油脂によるブレーキの制動力低下を防止することができる。このことは、パッド63の摩擦係数を十分に発揮することができることを意味し、パッド63の押付力、あるいは、ブレーキディスク60の制動半径を最小限必要な値とすることができ、安全性および性能の向上および特性、品質の安定化を実現できる。これにより、ブレーキの容量縮小やそれに伴うブレーキの小形化および巻上機の小形軽量化が実現できる。
【0035】
油脂発生部位からディスク制動面までの間に、複数の防油対策が講じられているため、制動面へ油脂が付着しないだけでなく、万一の異常時においても、油脂が制動面まで到達してしまう時間が極めて長くなり、保守管理の間隔を延長することができる。軸受の油脂防止対策に伴うシール53の構成も簡素化でき、軸受箱を小形化することができる。このことは、部品製造のリードタイム短縮や加工精度緩和も実現でき、生産性の向上、製造コストの削減も可能となる。
【0036】
シール53の簡素化により、オイルシールを使用する必要がなくなると、巻上機の保守性についても大幅な改善が可能となり、巻上機の長寿命化にも有益である。シール部の摩擦損失なども軽減することから、摺動部並びに周辺部位の温度上昇抑制や駆動部の容量縮小による小形軽量化が図れる。従って、性能、特性の向上だけでなく、安全性を強化しつつ、油脂を機外へ放出する可能性が低く、環境改善も実現することができる。
【0037】
以上により、簡単な構造によりディスク制動面への油脂の流出を防止し、周辺機器や周囲環境の汚染を抑制でき、また、製造コスト、製作リードタイムの低減および信頼性の向上を図ることのできる回転電機が得られる。また、構造の簡素化ができることから、回転電機の小形化、省スペース化および保守、点検などのメンテナンス費用の縮小も可能である。粉塵などの周囲環境からの影響も受けにくく、長寿命な回転電機を提供することができる。
【0038】
次に、この発明に係る第2ないし第38の実施形態に係る巻上機において、ブレーキディスク周りの構成を中心に説明する。第2ないし第38の実施形態では、前述した第1の実施形態と異なる部分のみを詳細に説明する。他の構成は、第1の実施形態と同一であり、その詳細な説明は省略する。
【0039】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
ブレーキディスク60に設けた油溜め溝74内に、フエルト76が設けられている。
【0040】
この構成によれば、第1の実施形態と同様の作用、効果が得られつつ、異常な油量の場合、フエルト76で油脂を吸収することができることから更なる防油性が図れる。また、フエルト76を交換することにより、経年的な品質の安定化が図れ、保守性を向上することができる。
【0041】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
第1の実施形態と同様に、ブレーキディスク60の堰70に油溜め溝74が形成されている。本実施形態において、油溜め溝74の位置は、回転子枠32の内周面と重なっている。
この構成によれば、第1の実施形態と同様の作用、効果が得られつつ、油溜め溝74での油脂の確保を強化することができる。また、ブレーキディスク60の内径を大きくし、ブレーキディスクの軽量化や内周部の空間拡大を図ることができる。空間拡大により、軸受台の形状の自由度が広がり、巻上機をより小形化することが可能となる。
【0042】
(第4の実施形態)
図5は、第4の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態によれば、上述した第3の実施形態の巻上機の油溜め溝74内にフエルト76が設けられている。
【0043】
この構成によれば、第1および第3の実施形態と同様の作用、効果が得られつつ、異常な油量の場合、フエルト76で油脂を吸収することができ、更なる防油性が図れる。また、フエルト76を交換することにより、経年的な品質の安定化と保守性も向上することができる。
【0044】
(第5の実施形態)
図6は、第5の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
第1の実施形態と同様に、ブレーキディスク60の堰70に油溜め溝74が形成されている。本実施形態において、油溜め溝74は、その開口側から底側に向かうにつれ、幅が広くなるように構成されている。この構成によれば、第1の実施形態と同様の作用、効果が得られつつ、油溜め溝74での油脂の確保をより強化し、更なる防油効果が得られる。
【0045】
(第6の実施形態)
図7は、第6の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態によれば、上述した第5の実施形態の巻上機の油溜め溝74内にフエルト76が設けられている。この構成によれば、第1および第5の実施形態と同様の作用、効果が得られつつ、異常な油量の場合、フエルト76で油脂を吸収することができ、更なる防油性が図れる。また、フエルト76を交換することにより、経年的な品質の安定化と保守性も向上することができる。
【0046】
(第7の実施形態)
図8は、第7の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
第1の実施形態と同様に、ブレーキディスク60の堰70に油溜め溝74が形成されている。本実施形態において、ブレーキディスク60の内周側端面60cは、油溜め溝74よりも外周部分が回転子枠32側に出っ張るように構成されている。この構成によれば、第1の実施形態と同様の作用、効果が得られつつ、油溜め溝74での油脂の確保をより強化し、更なる防油効果が得られる。
【0047】
(第8の実施形態)
図9は、第8の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態によれば、上述した第7の実施形態の巻上機の油溜め溝74内にフエルト76が設けられている。この構成によれば、第1および第7の実施形態と同様の作用、効果が得られつつ、異常な油量の場合、フエルト76で油脂を吸収することができ、更なる防油性が図れる。また、フエルト76を交換することにより、経年的な品質の安定化と保守性も向上することができる。
【0048】
(第9の実施形態)
図10は、第9の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
ブレーキディスク60の堰70に油溜め溝74が形成されている。本実施形態において、ブレーキディスク60の内周側端面60cは、油溜め溝74よりも外周部分が回転子枠32側に出っ張るように構成されている。油溜め溝74の開口部内周は、この油溜め溝の他の部分の内周よりも大きく形成されている。これにより、油溜め溝74の開口に径方向外方に突出する凸状を構成している。この構成によれば、第1の実施形態と同様の作用、効果が得られつつ、油溜め溝74での油脂の確保をより強化し、更なる防油効果が得られる。
【0049】
(第10の実施形態)
図11は、第10の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態によれば、上述した第9の実施形態の巻上機の油溜め溝74内にフエルト76が設けられている。この構成によれば、第1および第9の実施形態と同様の作用、効果が得られつつ、異常な油量の場合、フエルト76で油脂を吸収することができ、更なる防油性が図れる。また、フエルト76を交換することにより、経年的な品質の安定化と保守性も向上することができる。
【0050】
(第11の実施形態)
図12は、第11の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
ブレーキディスク60の堰70に油溜め溝74が形成されている。ブレーキディスク60の内周面には、全周に亘って溝80が形成されている。更に、ブレーキディスク60の内周部において、それぞれ一端が溝80に連通し、他端がブレーキディスク60の回転子枠32側の内面に開口する複数の油回収溝81が形成され、円周方向に互いに離間して設けられている。
【0051】
この構成によれば、第1実施形態と同様の作用・効果が得られつつ、異常な油量の場合、ブレーキディスク60の内周へ進行した油を溝80で堰き止めることができる。この溝80で堰き止めた油脂は、油回収溝81により、回転子枠32側へ戻すことができ、反綱車側の制動面60aへの防油対策を強化することができる。
【0052】
(第12の実施形態)
図13は、第12の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態によれば、上述した第11の実施形態の巻上機の溝80内にフエルト76が設けられている。この構成によれば、第1および第11の実施形態と同様の作用、効果が得られつつ、異常な油量の場合、フエルト76で油脂を吸収することができ、更なる防油性が図れる。また、フエルト76を交換することにより、経年的な品質の安定化と保守性も向上することができる。
【0053】
(第13の実施形態)
図14は、第13の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
ブレーキディスク60の堰70に油溜め溝74が形成されている。ブレーキディスク60の内周面上において、回転子枠32の反対の側面側には、全周に亘って凸部82が形成されている。この構成によれば、第1実施形態と同様の作用・効果が得られつつ、異常な油量の場合、ブレーキディスク60の内周へ進行した油を凸部82で堰き止めることができる。
【0054】
(第14の実施形態)
図15は、第14の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
ブレーキディスク60の堰70に油溜め溝がなく、代わりに、ブレーキディスク60の内周面に円筒84が嵌合されている。円筒84は、例えば冷やし嵌めや圧入などでブレーキディスク60に嵌合されている。円筒84の一端部は、ブレーキディスク60の内周縁から回転子枠32側に突出し、他端部には、環状の遮蔽板85が一体に形成されている。遮蔽板85は、円筒84から径方向内方および外方に突出している。
【0055】
この構成によれば、第1の実施形態のディスク側面の油溜め溝を有さない場合でも、円筒84を装着することにより、第1の実施形態と同様の作用、効果が得られ、防油対策の強化を図ることできる。また、巻上機の据え付け後の防油対策強化やブレーキディスク60の標準化を図ることが可能となる。
【0056】
(第15の実施形態)
図16は、第15の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
ブレーキディスク60の堰70に油溜め溝がなく、代わりに、ブレーキディスク60の内周面に円筒84が嵌合されている。円筒84は、例えば冷やし嵌めや圧入などでブレーキディスク60に嵌合されている。円筒84の一端部は、ブレーキディスク60の内周縁から回転子枠32側に突出し、更に、外周側に折り曲げられ固定部84aを形成している。円筒84の他端部には、環状の遮蔽板85が一体に形成されている。遮蔽板85は、円筒84から径方向内方および外方に突出している。円筒84の固定部84aとブレーキディスク60の内周縁との間にフエルト76が固定されている。
【0057】
この構成によれば、第1および第14の実施形態と同様の作用、効果が得られ、防油対策の強化を図ることできる。また、巻上機の据え付け後の防油対策強化やブレーキディスク60の標準化を図ることが可能となる。更に異常な油量の場合、フエルト76で油脂を吸収することができることから更なる防油性が図れる。フエルト76を交換することにより、経年的な品質の安定化と保守性を向上することができるだけでなく、フエルト76の固定力を強化することもできる。
【0058】
(第16の実施形態)
図17は、第16の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
ブレーキディスク60の堰70に油溜め溝がなく、代わりに、ブレーキディスク60の内周面に円筒84が嵌合されている。円筒84は、例えば冷やし嵌めや圧入などでブレーキディスク60に嵌合されている。円筒84の一端部は、ブレーキディスク60の内周縁から回転子枠32側に突出し、他端部には、環状の遮蔽板85が一体に形成されている。遮蔽板85は、円筒84から径方向内方および外方に突出している。円筒84をブレーキディスク60に嵌着後、円筒84の一端部に複数設けられた固定部84aをブレーキディスク60側に折り曲げることにより、円筒84をブレーキディスクに固定している。
【0059】
この構成によれば、第1の実施形態のディスク側面の油溜め溝を有さない場合でも、円筒84を装着することにより、第1の実施形態と同様の作用、効果が得られ、防油対策の強化を図ることできる。また、巻上機の据え付け後の防油対策強化やブレーキディスク60の標準化を図ることが可能となる。
【0060】
(第17の実施形態)
図18は、第17の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
第17の実施形態によれば、第16の実施形態において、ブレーキディスク60の内周縁を面取りして形成した空間に、フエルト76を配置している。この構成によると、第16の実施形態と同様の作用・効果が得られ、更に、ブレーキディスク60と円筒84との間の接触部の防油対策を強化することができる。また、円筒84を取り外し、フエルト76も簡易的に交換することができる。
【0061】
(第18の実施形態)
図19は、第18の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
ブレーキディスク60の堰70に油溜め溝がなく、代わりに、ブレーキディスク60の内周部の反綱車側に、環状の遮蔽板85が設けられている。遮蔽板85は、ブレーキディスク60の内周面から径方向内方へ突出している。ブレーキディスク60の遮蔽板85との接合面に環状の溝86が形成されている。
【0062】
この構成によれば、第1の実施形態のディスク側面の油溜め溝を有さない場合でも、遮蔽板85を装着することにより、第1の実施形態と同様の作用、効果が得られ、防油対策の強化を図ることできる。溝86を設けることにより、ブレーキディスク60と遮蔽板85との間で油溜め効果を追加することができ、防油対策の強化を図ることできる。
【0063】
(第19の実施形態)
図20は、第19の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
第19の実施形態によれば、第18の実施形態において、溝86内にフエルト76を配置している。この構成によれば、第1および第19の実施形態と同様の作用・効果が得られるとともに、フエルト76で油脂を吸収することができることから更なる防油性が図れる。また、遮蔽板85を取り外し、フエルト76も簡易的に交換することができる。
【0064】
(第20の実施形態)
図21は、第20の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
第20の実施形態によれば、第19の実施形態において、ブレーキディスク60に、溝86とブレーキディスク60の回転子側の側面とに通じる油回収穴88が設けられている。この構成によれば、第19実施形態と同様の作用・効果が得られるとともに、防油対策を強化することができる。
【0065】
(第21実施形態)
図22は、第21の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
ブレーキディスク60の内径は、回転子枠32の内径とほぼ等しく形成され、ブレーキディスク60の内周面に円筒84が嵌合されている。円筒84は、例えば冷やし嵌めや圧入などでブレーキディスク60に嵌合されている。円筒84の回転子枠32側の端部は、径方向内方に折り曲げられた後、更に、回転子枠側に折り曲げられ、ほぼクランク形状の凸部89を形成している。
【0066】
この構成によれば、ブレーキディスク60の堰を省略した場合でも、凸部89を有する円筒84を設けることにより、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。また、油溜め溝などを有していない巻上機に対しても、円筒84を後で装着することにより、防油対策の強化ができ、据え付け後の防油対策強化やブレーキディスク60の標準化が可能となる。
【0067】
(第22の実施形態)
図23は、第21の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
第22の実施形態によれば、第21の実施形態において、円筒84の凸部89と回転子枠32の内周面との間にフエルト76を配置している。この構成によれば、第1および第22の実施形態と同様の作用・効果が得られるとともに、フエルト76で油脂を吸収することができることから更なる防油性が図れる。また、フエルト76を交換することにより、経年的な品質の安定化と保守性を向上することができるだけでなく、フエルト76の固定力を強化することもできる。
【0068】
(第23の実施形態)
図24は、第23の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
ブレーキディスク60の内径は、回転子枠32の内径とほぼ等しく形成され、ブレーキディスク60の内周面に円筒84が嵌合されている。円筒84は、例えば冷やし嵌めや圧入などでブレーキディスク60に嵌合されている。円筒84の端部は、反綱車側の制動面60aを越えて軸方向に突出する凸部90を構成している。
【0069】
この構成によれば、ブレーキディスク60の堰を省略した場合でも、第1実施形態と同様の作用・効果が得られるだけでなく、ブレーキディスク60の内周方向から飛散してきた油脂を円筒84の凸部90によりせき止め、制動面に付着することを防止できる。また、油溜め溝などを有していない巻上機に対しても、円筒84を後で装着することにより、防油対策の強化ができ、据え付け後の防油対策強化やブレーキディスク60の標準化が可能となる。
【0070】
(第24の実施形態)
図25は、第24の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
ブレーキディスク60の内径は、回転子枠32の内径とほぼ等しく形成され、ブレーキディスク60の内周面に円筒84が嵌合されている。円筒84は、例えば冷やし嵌めや圧入などでブレーキディスク60に嵌合されている。円筒84の端部は、反綱車側の制動面60aを越えて軸方向に突出する凸部90を構成している。ブレーキディスク60の内周面、ここでは、円筒84との接合面、には、環状の溝が形成され、この溝にフエルト76が配置されている。
【0071】
この構成によれば、第1および第23の実施形態と同様の作用、効果が得られ、また、フエルト76で油脂を吸収することができることから更なる防油性が図れる。フエルト76を交換することにより、経年的な品質の安定化と保守性を向上することができるだけでなく、フエルトの固定力を強化することもできる。
【0072】
(第25の実施形態)
図26は、第25の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
ブレーキディスク60の内径は、回転子枠32の内径とほぼ等しく形成され、また、回転子枠32とブレーキディスク60との間の接合面に環状の遮蔽板92が設けられている。遮蔽板92の内周側の端部は、回転子枠32およびブレーキディスク60の内周から中心方向へ突出し、更に、回転子枠側に折り曲げられ、凸部92aを構成している。
【0073】
この構成によれば、ブレーキディスク60の堰を省略した場合でも、第1実施形態と同様の作用・効果が得られるだけでなく、遮蔽板92を追加することにより、防油対策の強化ができる。油溜め溝などを有していない巻上機に対しても、遮蔽板92を後で装着することにより、防油対策の強化ができ、据え付け後の防油対策強化やブレーキディスク60の標準化が可能となる。
【0074】
(第26の実施形態)
図27は、第26の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
第26の実施形態によれば、第25の実施形態において、遮蔽板92の凸部92aと回転子枠32の内周面との間にフエルト76を配置している。この構成によれば、第1および第25の実施形態と同様の作用・効果が得られるとともに、フエルト76で油脂を吸収することができることから更なる防油性が図れる。また、フエルト76を交換することにより、経年的な品質の安定化と保守性を向上することができるだけでなく、フエルト76の固定力を強化することもできる。
【0075】
(第27の実施形態)
図28は、第27の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、ブレーキディスク60の堰70に油溜め溝74が形成されている。回転子枠32とブレーキディスク60との接合面に環状の溝93が形成され、この溝にフエルト76が配置されている。
【0076】
この構成によれば、第1の実施形態と同様の作用、効果が得られつつ、ブレーキディスク60と回転子枠32の接合部の防油対策が強化され、回転子枠側のディスク制動面60aへの油脂流出をより確実に防止ができる。
【0077】
(第28の実施形態)
図29は、第28の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、ブレーキディスク60の堰70に油溜め溝74が形成されている。回転子枠32とブレーキディスク60との接合面に環状の溝93が形成され、この溝にOリング94が配置されている。
【0078】
この構成によれば、第1の実施形態と同様の作用、効果が得られつつ、ブレーキディスク60と回転子枠32の接合部の防油対策が強化され、回転子枠側のディスク制動面60aへの油脂流出をより確実に防止ができる。
【0079】
(第29の実施形態)
図30は、第29の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、ブレーキディスク60の堰70に油溜め溝74が形成されている。回転子枠32外周とブレーキディスク60との接合部において、回転子枠およびブレーキディスクのそれぞれに溝95a、95bを形成し、その空間に、フエルト76を配置している。
【0080】
この構成によれば、第1の実施形態と同様の作用、効果が得られつつ、ブレーキディスク60と回転子枠32の接合部の防油対策が強化され、回転子枠側のディスク制動面60aへの油脂流出をより確実に防止ができる。フエルト76を交換することにより、経年的な品質の安定化と保守性を向上することができる
(第30の実施形態)
図31は、第30の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態によれば、ブレーキディスク60の堰70の回転子枠側の側面には、油溜め溝に代えて、複数の有底穴96が形成されている。これらの有底穴96は、回転子枠32の内周面に形成された複数の凸部66と同一の角度位置で、凸部66よりも僅かに内周側に設けられている。また、各有底穴96内にフエルト76が配置されている。
【0081】
巻上機30の運転により、綱車31が回転すると、軸受46から流出した油脂は、回転体の第2端壁の内面、回転子枠32の内面を伝わった後、凸部66に集まり、更に、フエルト76に吸収される。この構成によれば、ブレーキディスク60に油溜め溝を形成しない場合でも、第1の実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0082】
(第31の実施形態)
図32は、第31の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態によれば、ブレーキディスク60の堰70には、油溜め溝に代えて、複数の貫通孔97が形成されている。これらの貫通孔97は、回転子枠32の内周面に形成された複数の凸部66と同一の角度位置で、凸部66よりも僅かに内周側に設けられている。また、各貫通孔97の回転子枠32と反対側の端部には、ねじ部が形成されている。各貫通孔97の回転子枠32側の開口にはフエルト76が配置され、貫通孔の他端側のねじ部にねじ98がねじ込まれ、閉じられている。
この構成によれば、第30の実施形態と同様の作用、効果が得られ、また、外部からのフエルト76の交換が容易になり、保守性の向上ができる。
【0083】
(第32の実施形態)
図33は、第32の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態によれば、ブレーキディスク60の堰70の反綱車側の側面に油溜め溝74が形成されている。堰70の反綱車側の側面は、油溜め溝74よりも内周の部分が他の部分よりも凹んで形成されている。また、油溜め溝74と綱車31の内周に通じるように、複数の油回収孔99が堰70に貫通形成されている。
この構成によれば、堰70を越えてブレーキディスク60の反綱車側に伝わり、垂れ落ちた油脂を油溜め溝74で堰き止め、油回収孔99を通して綱車31内周へ回収することができる。
【0084】
(第33の実施形態)
図34は、第33の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
第33の実施形態によれば、上述した第32の実施形態において、油溜め溝74内にフエルト76を配置している。この構成によれば、第33の実施形態と同様の作用、効果が得られ、更に、フエルト76で油脂を吸収することにより、更なる防油性が図れる。また、フエルト76を交換することにより、経年的な品質の安定化と保守性を向上することができるだけでなく、フエルトの固定力を強化することもできる。
【0085】
(第34の実施形態)
図35は、第34の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態によれば、ブレーキディスク60の堰70の反綱車側の側面に環状の凸部100を設け、この凸部により油溜め溝74を形成している。油溜め溝74と綱車31の内周に通じるように、複数の油回収孔99が堰70に貫通形成されている。
この構成によれば、堰70を越えてブレーキディスク60の反綱車側に伝わり、垂れ落ちた油脂を油溜め溝74で堰き止め、油回収孔99を通して綱車31内周へ回収することができる。
【0086】
(第35の実施形態)
図36は、第35の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
第35の実施形態によれば、上述した第34の実施形態において、油溜め溝74内にフエルト76を配置している。この構成によれば、第34の実施形態と同様の作用、効果が得られ、更に、フエルト76で油脂を吸収することにより、更なる防油性が図れる。また、フエルト76を交換することにより、経年的な品質の安定化と保守性を向上することができるだけでなく、フエルトの固定力を強化することもできる。
【0087】
(第36の実施形態)
図37は、第36の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態によれば、ブレーキディスク60の回転子枠32側の側面に設けられた凸部68の内周側に重ねてフエルト76が設けられている。この構成によれば、第1実施形態と同様の作用、効果が得られるとともに、フエルト76で油脂を吸収することができることから更なる防油性が図れる。また、フエルト76を交換することにより、経年的な品質の安定化と保守性を向上することができる。
【0088】
(第37の実施形態)
図38は、第37の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態によれば、ブレーキディスク60の回転子枠32と反対側の側面において、制動面60aの内周側の位置に環状の凸部102が設けられている。この構成によれば、1実施形態と同様の作用、効果が得られ、更に、に対し、反綱車側の制動面60aに対して更なる防油性が図れる。
【0089】
(第38の実施形態)
図39は、第38の実施形態に係る巻上機の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態によれば、ブレーキディスク60と堰70とが別体で構成されている。この構成とすると、第1実施形態と同様の作用、効果を得られると共に、ブレーキディスク60の共用化による標準化ができる。
【0090】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0091】
前述した第14の実施形態から第24の実施形態において、円筒および遮蔽板は、例えば2つ割りなどの複数の分割式として構成し、例えば、ボルトなどでブレーキディスクに固定しても良い。このことにより、巻上機の組立状態で防油対策用の円筒や遮蔽板を取り付けられる。また、前述した第25および第26の実施形態における遮蔽板は、例えば2つ割りなどの複数の分割式として構成しても良い。この場合、巻上機の組立状態に対し、ディスクのみ分解することで防油対策用の遮蔽板を取り付けられる。
【0092】
前述した実施形態において、巻上機の綱車とブレーキディスクとを一体的に成形してもよい。この場合、剛性の向上を図ることができる。また、ブレーキディスクは、回転子枠に限らず、巻線機の他の構成要素に取付けてもよい。回転電機は、アウターロータ型に限らず、インナーロータ型としてもよい。
前述した種々の実施形態に係る回転電機の用途は巻上機に限らず、車両モータなどに代表される車載用の回転電機や、その他の一般産業用モータに適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
30…巻上機、31…綱車、32…回転子枠、34…第1端壁、36…第2端壁、
38…第1枢軸、40…第2枢軸、44、46…軸受、48…軸受台、
50…固定子、60…ブレーキディスク、60a…制動面、64…凸部、
68…凸部、70…堰、71…テーパ面、74…油溜め溝、76…フエルト、
84…円筒、85…遮蔽板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端部が軸受部により回転自在に支持される枢軸と、
前記枢軸に取り付けられた回転体と、
前記回転体の前記軸受部側の端部に固定され前記枢軸と同軸的に位置する環状のブレーキディスクと、を備え、
前記ブレーキディスクは、前記回転体の外径よりも大きな外径および前記回転体の内径よりも小さい内径を有し、前記ブレーキディスクの外周部は前記回転体よりも外周側に位置し制動面を構成し、前記ブレーキディスクの内周部は前記回転体の内周よりも内側に突出する堰を構成し、
前記ブレーキディスクは、前記堰の前記回転体側の側面に形成され円周方向に延びる環状の油溜め溝と、前記回転体よりも大きな径の位置で前記回転体との接合側に設けられる環状の凸部と、を有し、前記ブレーキディスクの内周面は、前記回転体側に向かって大径となるテーパ面を構成している回転電機。
【請求項2】
前記回転体は、その内周面に形成され前記ブレーキディスクまで延びる複数の凸部を有し、前記凸部は円周方向に沿って互いに離間している請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記油溜め溝は、前記回転体の内周面と重なる位置に設けられている請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
前記ブレーキディスクの内周面に形成された環状の溝を備えている請求項1に記載の回転電機。
【請求項5】
前記油溜め溝内にフエルトが設けられている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項6】
少なくとも一端部が軸受部により回転自在に支持される枢軸と、
前記枢軸に取り付けられた回転体と、
前記回転体の前記軸受部側の端部に固定され前記枢軸と同軸的に位置する環状のブレーキディスクと、を備え、
前記ブレーキディスクは、前記回転体の外径よりも大きな外径および前記回転体の内径よりも小さい内径を有し、前記ブレーキディスクの外周部は前記回転体よりも外周側に位置し制動面を構成し、前記ブレーキディスクの内周部は前記回転体の内周よりも内側に突出する堰を構成し、前記ブレーキディスクは、前記回転体よりも大きな径の位置で前記回転体との接合側に設けられる環状の凸部と、を有し、
前記ブレーキディスクの内周面に円筒が嵌合され、前記円筒の前記回転体側の端部は前記ブレーキディスクの内周から前記回転体側に突出している回転電機。
【請求項7】
前記円筒の前記回転体と反対側の端に固定され、前記ブレーキディスクの内周側に突出した環状の遮蔽板を備えている請求項6に記載の回転電機。
【請求項8】
少なくとも一端部が軸受部により回転自在に支持される枢軸と、
前記枢軸に取り付けられた回転体と、
前記回転体の前記軸受部側の端部に固定され前記枢軸と同軸的に位置する環状のブレーキディスクと、を備え、
前記ブレーキディスクは、前記回転体の外径よりも大きな外径および前記回転体の内径よりも小さい内径を有し、前記ブレーキディスクの外周部は前記回転体よりも外周側に位置し制動面を構成し、前記ブレーキディスクの内周部は前記回転体の内周よりも内側に突出する堰を構成し、
前記ブレーキディスクは、前記堰の前記回転体側と反対側の側面に形成され円周方向に延びる環状の油溜め溝と、前記回転体よりも大きな径の位置で前記回転体との接合側に設けられる環状の凸部と、を有し、前記ブレーキディスクの内周面は、前記回転体側に向かって大径となるテーパ面を構成している回転電機。
【請求項9】
前記ブレーキディスクは、前記油溜め溝から前記堰の回転体側の側面まで延びる油回収孔を有している請求項8に記載の回転電機。
【請求項10】
前記油溜め溝内にフエルトが設けられている請求項8又は9に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2010−249269(P2010−249269A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100940(P2009−100940)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】