説明

回転電機

【課題】 冷却性能が向上した回転電機の提供を達成する。
【解決手段】 図1には円形状のステータ5と、ステータ5の外周側に溝を設けた溝部5bが示されている。溝部5bには、溝部5bにはめ込まれ、コイル3を収納するコイル収納部2と、コイル収納部1を設置する基台となるコイルベース4から構成されるコイル部が示されている。また、ステータ5の中心部に設けられた支持軸6と、支持軸6から軸受8を介して回転自在に取り付けられた回転体7と、回転体7の外周側に設けられ、コイル部1の両側に位置する永久磁石を取り付ける磁石取付部7bと、を有する回転電機が示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、回転電機は様々な回転を利用する機器に使用されている。車両を駆動するためのモータから、回転を直線運動に利用した小型モータなど広い分野で適用されている。それらの回転電機において、現在の主流は、誘導電動機である。安価で堅牢なため、広く普及している。一方、小型・高効率化を狙って、最近では永久磁石を利用したものが開発され、一部の製品で適用されている。更なる小型・軽量化を狙うには、回転電機の体積の半分以上を占める鉄心を削減することが必要になる。そこで、最近の開発では鉄心レスモータの開発も進められている。
【0003】
図16は、従来の実施形態に係る回転電機の断面図である。コイル3の装着されたコイル固定具が複数個で略円形を成し、略円形で構成されたコイルベース4に接着固定されている。コイルベース4は略円形の取付ベース101にコイルベース取付ボルト100で固定されている。取付ベース101の中央部には円筒形の支持軸6が設けられ、その一部に軸受8を有している。軸受8を介して円形の回転体7が設けられ、その外周部付近にはコイル3とある一定のギャップをもって略円形に永久磁石9が回転体7に設けられている。このような構成により、回転体7が回転し、電気エネルギーを回転エネルギーに変換している。この構成は一例であり、鉄心レスモータには様々な形態がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−320109号公報
【特許文献2】特開2004−350427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の回転電機では、次のような解決すべき課題が存在する。コイルから発生する熱は主に熱伝導により取付ベースへと伝導し、取付ベースの表面から大気へと自然対流により放熱される。したがって、コイルから取付ベースへの熱抵抗を小さくすることが重要である。一方、従来のコイル取付ベースには絶縁性を持たせるために樹脂材料が使われる。樹脂材料は非常に熱抵抗が大きいため、コイルで発生した熱を効率よく熱伝導させることができない。また、コイルベースと取付ベースとの間はボルト固定など接着ではなく、締め付けることで固定されている。このような取付方法の場合、ボルト近傍ではある程度の接触があり、熱が伝導するが、ボルトから離れた箇所では、一見接触しているように見えていても、実際には空気層が存在し、熱抵抗が大きく、コイルの熱を取付ベースへ伝えにくい。
【0006】
この発明は、上記の課題を解決させるためになされたもので、その目的は、コイルで発生した熱を効率よく冷却できる冷却構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記を解決するために、本発明の第1の実施形態の回転電機は、円形状のステータと、ステータの外周側に溝を設けた溝部と、溝部にはめ込まれ、コイルと前記コイルを収納するコイル収納部とコイル収納部を設置する基台となるコイルベースから構成されるコイル部と、ステータの中心部に設けられた支持軸と、支持軸から軸受けを介して回転自在に取り付けられた回転体と、回転体の外周側に設けられ、コイル部の両側に位置する永久磁石を取り付ける永久磁石取付部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に基づく回転電機の断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に基づくコイル取付具の斜視図。
【図3】本発明の第1の実施形態に基づくコイル部の斜視図。
【図4】本発明の第1の実施形態に基づくステータの組立て説明図。
【図5】本発明の図1のステータのA矢視図。
【図6】本発明の第1の実施形態に基づく第1コイル部の斜視図。
【図7】本発明の第1の実施形態に基づく第2コイル部の斜視図。
【図8】本発明の第2の実施形態に基づく回転電機の第1断面図。
【図9】本発明の第2の実施形態に基づく回転電機の第2断面図
【図10】本発明の第3の実施形態に基づく回転電機の断面図。
【図11】本発明の第3の実施形態に基づく第3コイル部の斜視図。
【図12】本発明の第3の実施形態に基づく第4コイル部の斜視図。
【図13】本発明の第3の実施形態に基づくステータの変形例図。
【図14】本発明の第3の実施形態に基づくコイル部の変形例図。
【図15】本発明の第3の実施形態に基づく回転電機の変形例図。
【図16】従来発明に基づく回転電機の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図を参照して説明する。
【0011】
(構成)
以下、本実施形態の構成について説明する。図1は、コイル部1、コイル取付具2、コイル3、コイルベース4、ステータ5、取付ベース5a、溝部5b、支持軸6、回転体7、軸受け8、永久磁石9で構成される本実施形態の回転電機の全体図である。図2は、図1のコイル取付具2の拡大図である。図3は、図2のコイル取付具2にコイル3を巻きつけた拡大図である。図4は、図3のコイルを巻きつけたコイル取付具2をステータ5に取りつける取付方法の説明図である。図5は、図4の方法で図3のコイルを巻きつけたコイル取付具2を設置し、上から見た図である。
【0012】
図2、3に示すように、コイル取付具2はコイル取付板2aとコイル取付板2bの中央部間が別部材であるコイル取付連結部2cで連結されている形状を有し、コイルを収納するコイル収納部としての役割を果たしている。コイル取付連結部2cにはコイル3が巻かれる。コイル3が巻かれたコイル取付具2は、コイルベース4の上に設置され、接着剤等で固定されることでコイル部1が構成される。
【0013】
図4に示すように、コイル部1は円形板のステータ5の一面である取付ベース5a側に設けられた円形状の溝部5bに、グリースを重鎮し、その上からコイルベース4をは挿入、固定されることで設置される。図5に示すように、ステータ5の溝部5bに複数のコイル部1が埋め込まれ、円形を形成している。図1で示すように、このようなステータ5の中心部に支持軸6が固定されており、その支持軸6から軸受8を介して回転自在に支持されているのが、円形状の回転体7である。回転体7の外周部かつステータ5側の面には、ステータ5に取り付けられたコイル部1を挟むように永久磁石をとり付ける磁石取付部7a及び磁石取付部7bを有している。
【0014】
(作用)
以下、本実施形態の作用について説明する。コイル3に電流を流すとコイル3周辺に磁界が発生する。また回転体7側の永久磁石でも磁界が発生している。コイル側の磁界と回転体7側の磁界によって回転磁界が生じる。その回転磁界によって回転体7は回転を開始する。コイル3には電流を流すため熱が発生する。コイル1で発生したコイル熱は、コイル取付具2を介して、コイルベース4へ熱伝導する。その後、コイル熱はコイルベース8とステータ5の溝部5bが接触している3つの面の接触部を通過し、ステータ5へ伝導し、ステータ5から大気への自然対流により放熱される。また、コイル熱がステータ5から他部材内を拡散し、他部材からの自然対流により放熱される。このようにしてコイル1で発生した熱が放熱される。
【0015】
(効果)
上記の作用のように、取付ベース7とコイルベース8が多くの接触面を有することで熱伝導率が向上し、コイル1の温度上昇を抑制することが可能となる。そのため、回転電機の冷却性能が向上する。冷却性能を向上させることで、より高い電流をコイル1に流すことができ、回転電機の出力も増加する。
また、コイルベース4を溝部5bに挿入し軸方向長さを減らすことがで、小型化が可能となる。
【0016】
さらに、取付ベース7とコイルベース8間にグリースなどの熱伝導性の高い材料を充填することにより、上記効果をいっそう増すことが可能となる。
【0017】
また、従来ではステータ5の取付ベース5aにコイル部1を固定するためには、事前に複数のコイル部1を円形の枠にはめ込み、その形状を固定し、取り外してから再度取付ベースに取り付ける、という作業工程が必要であった。本実施形態では、ステータ5の溝部5bにコイル部1を直接取り付け、固定する可能であるため、コイル部1を固定するための固定枠や、コイルを固定枠の形状を維持させるための絶縁剤等を使用する必要がなくなる。そのため、製造方法が簡易化し、さらに、絶縁材の使用がなくなることで、ステータ5とコイル部1間の熱抵抗を小さくすることができる。
【0018】
またコイル取付具2の変形例として、図6にL字形のコイル取付具10、図7にT字形のコイル取付具11を示す。図6のコイル取付具10は、図2で示したコイルベース4がコイル取付具2と一体化し、コイルベース4とコイル取付具2の端部に接続する板を設け、コイル取付連結部2cを取り除いた形状を有し、コイル3を収納するコイル収納部としての役割を果たしている。このように構成することで、コイル3を単体で円形状に巻き、そのコイル3をコイル取付具10にはめ込むことでコイル部1aを構成することが可能である。また、図7のコイル取付具11は、図2で示したコイル取付板2a及びコイル取付連結部2cで構成されている。このように構成することで、コイル3を単体で円形状に巻き、そのコイル3をコイル取付具11にはめ込むことでコイル取付具11を構成することが可能である。また、コイル3を収納するコイル収納部としての役割を果たしている。そのため、コイル取付具10および11では、コイル3をコイル取付連結部2cに巻き上げる必要がないため、作業工程が容易になる。
【0019】
(第2の実施形態)
本発明に基づく第2の実施形態について図を参照し、詳細に説明する。図8は、本発明の第2の実施形態に基づく回転電機の第1断面図である。図9は、本発明にの第2の実施形態に基づく回転電機の第2断面図である。尚、図1乃至7と同一の構成をとるものについては、同符号を付して説明を省略する。
【0020】
本実施形態は、第1の実施形態とは異なり、ステータ5の溝部5bが圧着部12及び圧着部13を有している。その点について詳細に説明する。
【0021】
図8に示すように、溝部5bに圧着部20施される。圧着部20は、溝部5bに設置する前に、円形状を形成したコイル部1を温め、コイル部1の金属が拡張した状態で溝部5bに設置する。設置後、コイル部1を冷やし、コイル部1の金属が収縮させることで、コイル部1内周側と溝部5bが接する面の接触圧力が非常に高くなる。接触圧力が高い面である圧着部20は熱伝統率も高くなり、コイル部1に発生した熱を効率良く冷却することが可能である。
【0022】
また、コイル部1をステータ5に設置する際に、図9に示すようなコイル部1の内周側の側面に傾斜を設け、溝部5bの内周側の側面に、コイル部1の内周側に設けた傾斜と対応する傾斜を設けることで、コイル部1とステータ5の接続部である圧着部13に対して焼きばめを実施することにより、より高い接触圧力がかかるようになる。熱伝導率が高まるため、コイル部1で発生した熱をより効率的放熱することが可能である。
【0023】
(第3の実施形態)
本発明に基づく第3の実施形態について図を参照し、詳細に説明する。図10は、本発明の第3の実施形態に基づく回転電機の断面図である。図11は、本発明の第3の実施形態に基づく第1コイル部の斜視図である。図12は、本発明の第3の実施形態に基づく第2コイル部の斜視図である。尚、図1乃至9と同一の構成をとるものについては、同符号を付して説明を省略する。
【0024】
本実施形態は、第1の実施形態とはコイル部1のコイルベース4が削除された形状が異なっている。その点について詳細に説明する。
【0025】
(構成)
コイル部30はコイル取付具2にコイル3を巻きつけて構成されている。図10に示すように、コイル部30はグリース等を重鎮した溝部5bに設置される。
【0026】
(作用)
以下、本実施形態の作用について説明する。回転磁界を発生させるため、コイル3に電流を流す。コイル3に電流を流すとコイル3から熱が発生する。コイル3で発生したコイル熱は、コイル1からステータ5へと伝導する。その後、コイル熱は、ステータ5から他部材へと熱伝導を繰り返し、大気へと放熱するか、ステータ5から大気へと放熱する。このような自然対流によりコイル1で発生した熱は放熱される。
【0027】
(効果)
上記のようにコイル部30と溝部5bを接触させることで、熱伝伝導率を向上させる。
【0028】
熱伝導率が向上することで、回転電機の冷却性能が向上する。
【0029】
また図11と図12はコイル部30の変形例である。図11に示すコイル部30のコイル取付具31はコの字の形状を有し、コイル3を収納するコイル収納部としての役割を果たしている。また図12に示すコイル部30のコイル取付具32は4面で囲まれ、中空を有する煙突形の形状を有し、コイル3を収納するコイル収納部としての役割を果たしている。
【0030】
このように構成することで、コイル3を単体で円形状に巻き、そのコイル3をコイル取付具10にはめ込むことでコイル部1aを構成することが可能である。そのため、作業工程が容易になる。
【0031】
また図13は、コイル取付具2がステータ5と一体化したステータ一体型コイル取付部33の構成を示している。このような構成にすることでコイル部1を溝部5bに挿入、固定する必要がなく、単体で巻かれたコイル3を一体化したコイル取付具2内に設置する。そのため作業工程が簡易化される。
【0032】
また、図14は、巻かれたコイル3の間に絶縁材料のコイル取付具34を配置し、取付ベース5a上に設置する構成を示している。このような構成にすることで、取付ベース5a上にコイル3及びコイル取付具34から成るコイル部30dを設置することが容易になる。
【0033】
また、図15は、回転体7の外側の面に複数の放熱フィン35を取り付けた構成を示している。このような構成にすることで、回転電機内でコイル熱を含み温まった空気が外部への放熱されるのを促進する。そのため回転電機全体の冷却性能が向上する。
【符号の説明】
【0034】
1 コイル部
1a コイル部
1b コイル部
2 コイル取付具
3 コイル
4 コイルベース
5 ステータ
5a 溝部
6 支持軸
7 回転体
7a 磁石取付部
7b 磁石取付部
8 軸受
9 永久磁石
10 コイル取付具
11 コイル取付具
20 圧着部
21 圧着部
30 コイル部
30a コイル部
30b コイル部
31 コイル取付具
32 コイル取付具
33 ステータ一体型コイル取付部
34 コイル取付具
35 放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形状のステータと、
前記ステータの外周側に溝を設けた溝部と、
前記溝部にはめ込まれ、コイルと前記コイルを収納するコイル収納部と前記コイル収納部を設置する基台となるコイルベースから構成されるコイル部と、
前記ステータの中心部に設けられた支持軸と、
前記支持軸から軸受けを介して回転自在に取り付けられた回転体と、
前記回転体の外周側に設けられ、前記コイル部の両側に位置する永久磁石を取り付ける磁石取付部と、
を有する回転電機。
【請求項2】
前記コイル収納部は、直方体の筒が中空間を有しており、前記中空間にコイルを挿入できる請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
前記コイル収納部は、直方体の筒の形状を有しており、前記直方体の一面が切り欠いた中空間にコイルを挿入することができる請求項1記載の回転電機。
【請求項4】
前記コイル収納部は、直方体の形状を有しており、前記直方体の接する二つの面を切り欠いた中空間にコイルを挿入することができる請求項1記載の回転電機。
【請求項5】
前記コイル収納部は、直方体の広い面の中央に突起部が設けられ、前記突起部はコイルが巻かれることを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項6】
前記コイル収納部は、コイルと前記コイルを巻きつけるコイル取付具と前記コイルを設置するコイルベースから構成される請求項1記載の回転電機。
【請求項7】
前記コイル収納部は、コイルと前記コイルを巻きつけるコイル取付具から構成される請求項1記載の回転電機。
【請求項8】
前記コイル収納部は、前記コイル収納部の内周側が傾斜しており、溝部の内周側が前記傾斜を持ったコイルベースと同等の傾斜を有している請求項1から5のいずれか1項に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−10466(P2012−10466A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143168(P2010−143168)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】