説明

回転電機

【課題】構成の一部に電気的な異常が生じても駆動の継続が可能な小型の回転電機を提供する。
【解決手段】ステータ15は、ケース20に収容されている。回転軸16は、ケース20に回転可能に支持されている。ロータ17は、ステータ15に対し相対回転可能となるよう回転軸16に一体に設けられている。第1巻線31および第2巻線32は、ロータ17に設けられ、それぞれ電気的に分離している。整流子4は、電気的に分離した第1巻線31および第2巻線32のそれぞれに1対1の関係で電気的に接続される第1整流子片群41および第2整流子片群42を有し、ロータ17に対し回転軸16の軸方向の一方側に設けられている。第1ブラシ群を構成する第1ブラシ51、52、および、第2ブラシ群を構成する第2ブラシ61、62は、整流子4が回転するとき第1整流子片群41および第2整流子片群42のそれぞれに1対1の関係で摺接可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関し、特にブラシ付きの直流式回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通常の巻線、整流子、ブラシを第1の系統とし、当該第1の系統とは電気的に分離した別の巻線、整流子、ブラシを第2の系統として備えた回転電機が知られている。例えば特許文献1に記載された回転電機は、2つの系統を備えることで冗長系を構成し、2つの系統のうちの一方に電気的な異常が生じた場合、他方の系統に通電することで回転電機の駆動を継続する。
特許文献1の回転電機では、第1の系統の巻線および第2の系統の巻線のそれぞれに1対1の関係で電気的に接続する2つの整流子を、ロータに対し回転軸の軸方向の両側に分離して設け、それぞれの整流子にブラシを摺接させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−15844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の回転電機では、ロータの軸方向の両側に整流子およびブラシを配置する構成のため、整流子およびブラシを配置するためのスペースが回転軸の軸方向の2箇所(ロータの両側)に必要となる。そのため、回転電機の軸方向の体格が増大し、搭載性が悪化するという問題がある。また、この回転電機では、少なくとも2つの整流子を必要とするため、部材コストおよび組付コスト等の製造コストが増大するという問題がある。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、構成の一部に電気的な異常が生じても駆動の継続が可能な小型の回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、ケースとステータと回転軸とロータと複数の巻線と整流子と複数のブラシ群とを備えている。ステータは、ケースに収容されている。ここで、ステータは、ケースに対し回転不能に設けられている。回転軸は、ケースに回転可能に支持されている。ロータは、ステータに対し相対回転可能となるよう回転軸に一体に設けられている。複数の巻線は、ロータに設けられ、それぞれ電気的に分離している。整流子は、電気的に分離した複数の巻線のそれぞれに1対1の関係で電気的に接続される複数の整流子片群を有し、ロータに対し回転軸の軸方向の一方側に設けられている。複数のブラシ群は、ケースに収容され、整流子が回転するとき複数の整流子片群のそれぞれに1対1の関係で摺接可能である。
上述のように、本発明では、1つの巻線、1つの整流子片群および1つのブラシ群の組で1つの系統を構成している。そして、これらの組を複数備えることで冗長系を構成している。これにより、1つの系統に異常が生じても、他の系統によって代替機能を果たすことができる。そのため、例えば1つの系統の巻線等に断線等の電気的な異常が生じても、他の系統に通電することにより回転電機の駆動を継続することができる。
【0007】
本発明では、整流子は、ロータに対し回転軸の軸方向の一方側のみに設けられている。すなわち、整流子およびブラシ群を配置するために必要なスペースは、回転軸の軸方向の1箇所(ロータの片側)のみである。これにより、整流子およびブラシの組がロータに対し回転軸の軸方向の両側に設けられる従来の回転電機と比べ、回転電機の軸方向の体格を小さくすることができる。したがって、回転電機の搭載性を損なうことなく、駆動に関する信頼性を向上することができる。
また、整流子を回転軸の軸方向の1箇所に設ける構成のため、複数の巻線のそれぞれに接続する複数の整流子片群を1つの整流子に設けることができる。この場合、整流子に関する部材点数を低減でき、部材コストおよび組付コスト等の製造コストを低減することができる。
【0008】
請求項2、3、4に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成をより具体的に例示するものである。
請求項2に記載の発明では、整流子は、中実円筒状に形成されている。複数のブラシ群は、整流子の外壁に露出する整流子片群に摺接可能な第1ブラシ群、および、整流子の軸方向の端面に露出する整流子片群に摺接可能な第2ブラシ群からなる。すなわち、第1ブラシ群は、回転軸の軸に対し垂直な方向から整流子に当接する。また、第2ブラシ群は、回転軸の軸方向から整流子に当接する。この構成では、複数の整流子片群を1つの整流子に設けることで、整流子に関する部材点数を低減することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、整流子は、中空円筒状に形成されている。複数のブラシ群は、整流子の外壁に露出する整流子片群に摺接可能な第1ブラシ群、および、整流子の内壁に露出する整流子片群に摺接可能な第2ブラシ群からなる。すなわち、第1ブラシ群および第2ブラシ群は、回転軸の軸に対し垂直な方向から整流子に当接する。この構成では、複数の整流子片群を1つの整流子に設けることで、整流子に関する部材点数を低減することができる。また、本発明では、請求項2に記載の発明と比べ、第2ブラシ群が整流子の内側に配置される分、回転電機の軸方向の体格をさらに小さくすることができる。
【0010】
請求項4に記載の発明では、巻線は、2つ設けられている。整流子片群は、2つの巻線のそれぞれに1対1の関係で接続するよう2つ設けられている。整流子は、2つの整流子片群の一方を有する第1整流子、および、2つの整流子片群の他方を有する第2整流子からなる。本発明では、第1整流子および第2整流子は、回転軸の軸方向に並ぶようにして設けられている。このように、本発明では、整流子が第1整流子と第2整流子とに分離して設けられているため請求項2および3に記載の発明と比べ整流子に関する部材点数は増大するものの、第1整流子および第2整流子を配置するために必要なスペースは回転軸の軸方向の1箇所(ロータの片側)のみのため、回転電機の軸方向の体格の増大を抑えることができる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明の構成をさらに具体的に例示するものである。請求項5に記載の発明では、第1整流子は、第2整流子よりもロータ側に設けられている。そして、第1整流子は、第2整流子の整流子片群と巻線とを電気的に接続する導線が通る導線通路を有している。これにより、第2整流子の整流子片群と巻線とを接続する導線の取り回しを容易にすることができるとともに、当該導線とブラシ群とが接触するのを防ぐことができる。
【0012】
請求項6に記載の発明では、複数のブラシ群は、ケースの内壁に当接するよう設けられることでケースによって支持されている。そのため、ブラシを支持するための支持部材を別途設ける必要がない。よって、部材点数および部材コストを低減することができる。
【0013】
請求項7に記載の発明は、軸が回転軸の軸と略一致するよう第2ブラシ群の内側に設けられ、整流子の内壁に露出する整流子片群に第2ブラシ群を押し付け可能な円形、半円形または渦巻き状のばねをさらに備えている。これにより、例えば第2ブラシ群を支持するとともに整流子片群に押し付けるための支持部を、別部材としてケースの内壁に設けたり、ケースの内壁に形成したりする必要がない。よって、回転電機の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態による回転電機を示す図であって、(A)は全体を示す断面図、(B)は整流子近傍を示す断面図。
【図2】本発明の第2実施形態による回転電機を示す図であって、(A)は全体を示す断面図、(B)は整流子近傍を示す断面図。
【図3】本発明の第3実施形態による回転電機を示す断面図。
【図4】本発明の第1参考例による回転電機を示す断面図。
【図5】本発明の第2参考例による回転電機を示す断面図。
【図6】(A)は本発明の他の実施形態による回転電機の整流子およびブラシ群を回転軸の軸方向から見た図、(B)は本発明のさらに別の他の実施形態による回転電機の整流子およびブラシ群を回転軸の軸方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の部材または部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
【0016】
本発明の第1実施形態による回転電機およびその一部を図1に示す。回転電機1は、直流の電流を供給されることにより駆動するDCモータである。回転電機1は、例えば車両に搭載され、車両の運転者による操舵を補助する電動パワーステアリング装置のモータとして用いられる。
【0017】
回転電機1は、ケース20、ステータ15、回転軸16、ロータ17、巻線3、整流子4、および、第1ブラシ51、52、および、第2ブラシ61、62等を備えている。
ケース20は、例えば金属により形成されている。ケース20は、筒部21、当該筒部21の両端を塞ぐ板部22、23を有している。板部22、23には、それぞれの中央に板部22、23を板厚方向に貫く穴部24、25が形成されている。
【0018】
ステータ15は、略円筒状に形成され、外壁がケース20の筒部21の内壁に嵌合固定されるよう筒部21の板部22側に設けられている。これにより、ステータ15は、ケース20に対し回転不能である。ステータ15の内壁には、周方向に交互に異なる磁極が形成されている。
【0019】
回転軸16は、例えば金属により棒状に形成されている。回転軸16は、一方の端部が板部22の穴部24に軸受けされ、他方の端部が板部23の穴部25に軸受けされている。これにより、回転軸16は、ケース20によって回転可能に支持されている。
ロータ17は、例えば積層鉄心により略円筒状に形成されている。ロータ17は、ステータ15の内側においてステータ15に対し相対回転可能となるよう回転軸16に一体に設けられている。つまり、ロータ17は、回転軸16を経由してケース20によって回転可能に支持されている。ロータ17は、回転軸16と同軸に設けられている。
【0020】
本実施形態では、巻線3は、第1巻線31および第2巻線32からなる。第1巻線31および第2巻線32は、それぞれロータ17に巻回されている。第1巻線31と第2巻線32とは、電気的に分離されている。なお、図1(A)は、第1巻線31および第2巻線32の実際の巻回しの状態を示すものではなく、便宜上概念的に第1巻線31および第2巻線32の配置について示すものである。
【0021】
整流子4は、本体40、第1整流子片群41および第2整流子片群42等を有している。本体40は、例えば樹脂により軸方向に短い中実円筒状、すなわち略円板状に形成されている。本体40は、ロータ17に対し回転軸16の軸方向の一方側に設けられている。本体40は、回転軸16のロータ17から板部23側へ所定の距離離れた箇所に、回転軸16と同軸に固定されている。よって、本体40は、回転軸16およびロータ17とともに回転する。
【0022】
第1整流子片群41は、例えば銅の合金等により形成された複数の金属片411からなる。また、第2整流子片群42は、例えば銅の合金等により形成された複数の金属片421からなる。金属片411および金属片421は、インサート成形により本体40に設けられている。第1整流子片群41を構成する複数の金属片411は、それぞれ、略長方形の板状に形成され、一方の面が本体40の外壁に露出するよう本体40の周方向に所定の間隔をあけて設けられている。第2整流子片群42を構成する複数の金属片421は、それぞれ、略L字状に形成され、一端側が本体40の板部23側の端面に露出するよう、他端側が本体40のロータ17側に露出するよう本体40の周方向に所定の間隔をあけて設けられている。
【0023】
図1(A)に示すように、第1整流子片群41を構成する1つの金属片411と第1巻線31の一端とは、導線11によって電気的に接続されている。また、第1整流子片群41を構成する別の金属片411と第1巻線31の他端とは、導線12によって電気的に接続されている。本体40の周方向に複数設けられる金属片411には、導線11と導線12とが交互に接続されている。本体40の軸を挟んで対向配置される、すなわち、本体40の軸に垂直に交わる仮想直線上に位置する2つの金属片411には、それぞれ導線11、導線12が接続されている。図1(A)では、図が煩雑になることを避けるため、前記2つの金属片411に接続する導線11、導線12以外の導線11、導線12については、図示を省略している。
【0024】
また、第2整流子片群42を構成する1つの金属片421と第2巻線32の一端とは、導線13によって電気的に接続されている。また、第2整流子片群42を構成する別の金属片421と第2巻線32の他端とは、導線14によって電気的に接続されている。本体40の周方向に複数設けられる金属片421には、導線13と導線14とが交互に接続されている。本体40の軸を挟んで対向配置される、すなわち、本体40の軸に垂直に交わる仮想直線上に位置する2つの金属片421には、それぞれ導線13、導線14が接続されている。図1(A)では、図が煩雑になることを避けるため、前記2つの金属片421に接続する導線13、導線14以外の導線13、導線14については、図示を省略している。
このように、第1整流子片群41および第2整流子片群42は、第1巻線31および第2巻線32のそれぞれに1対1の関係で電気的に接続されている。
【0025】
第1ブラシ51と第1ブラシ52とは、特許請求の範囲における「第1ブラシ群」を構成している。また、第2ブラシ61と第2ブラシ62とは、特許請求の範囲における「第2ブラシ群」を構成している。
本実施形態では、第1ブラシ群を構成する第1ブラシ51と第1ブラシ52とは、本体40の軸を挟んで対向配置されるよう、すなわち、本体40の軸に垂直に交わる仮想直線上に位置するよう設けられている。第1ブラシ51、52は、それぞれブラシ片53、ブラシホルダ54、付勢部材55および電力線56等を有している。ブラシ片53は、例えばカーボンや金属を混合した金属カーボン、あるいは、潤滑性をもつ金属等により形成されている。ブラシホルダ54は、例えば樹脂により略直方体状に形成されている。ブラシホルダ54は、所定の面からブラシ片53の一部が露出するようにしてブラシ片53を保持している。ここで、ブラシホルダ54は、整流子4の本体40の外壁に露出する第1整流子片群41にブラシ片53が当接可能なよう設けられている。
【0026】
付勢部材55は、例えばコイルばねであり、一端がブラシホルダ54のブラシ片53が露出する面とは反対側の面に当接および固定され、他端がケース20の筒部21の内壁に当接および固定されるようにして設けられている。これにより、第1ブラシ51、52は、ケース20によって支持されている。また、付勢部材55は、ブラシホルダ54を本体40の外壁に対し押し付けるようにして付勢している。そのため、ブラシ片53と第1整流子片群41とは、所定の圧力で当接することとなる。
【0027】
電力線56は、一端がブラシ片53に電気的に接続するよう設けられている。電力線56の他端は、図示しない電子制御ユニット(以下、「ECU」という。)に電気的に接続される。ECUは、演算装置としてのCPU、記憶装置としてのROM、RAM、および、その他制御回路等を有する小型のコンピュータである。ECUは、各種センサからの情報に基づき、車両に搭載された種々の装置類および機器類の作動を制御する。
【0028】
第2ブラシ群を構成する第2ブラシ61、62は、それぞれブラシ片63、ブラシホルダ64、付勢部材65および電力線66等を有している。ブラシ片63は、例えばカーボンや金属を混合した金属カーボン、あるいは、潤滑性をもつ金属等により形成されている。ブラシホルダ64は、例えば樹脂により略直方体状に形成されている。ブラシホルダ64は、所定の面からブラシ片63の一部が露出するようにしてブラシ片63を保持している。ここで、ブラシホルダ64は、整流子4の本体40の板部23側の端面に露出する第2整流子片群42にブラシ片63が当接可能なよう設けられている。
【0029】
付勢部材65は、例えばコイルばねであり、一端がブラシホルダ64のブラシ片63が露出する面とは反対側の面に当接および固定され、他端がケース20の板部23に当接および固定されるようにして設けられている。これにより、第2ブラシ61、62は、ケース20によって支持されている。また、付勢部材65は、ブラシホルダ64を本体40の板部23側の端面に対し押し付けるようにして付勢している。そのため、ブラシ片63と第2整流子片群42とは、所定の圧力で当接することとなる。
電力線66は、一端がブラシ片63に電気的に接続するよう設けられている。電力線66の他端は、ECUに電気的に接続される。
このように、第1ブラシ51、52からなる第1ブラシ群、および、第2ブラシ61、62からなる第2ブラシ群は、第1整流子片群41および第2整流子片群42のそれぞれに1対1の関係で当接可能である。
【0030】
ECUは、電力線56および電力線66を経由して回転電機1に供給する電力を制御する。これにより、ECUは、回転電機1の作動を制御可能である。
次に、本実施形態による回転電機1の作動について説明する。
ECUが、第1ブラシ51の電力線56に電力を供給すると、ブラシ片53、第1整流子片群41の金属片411、導線11、第1巻線31、導線12、第1整流子片群41の金属片411、第1ブラシ52のブラシ片53、および、電力線56に電流が流れる。これにより、ロータ17の周方向には、異なる極の磁極が交互に生じることとなる。その結果、ロータ17の磁極とステータ15の磁石の磁極との間で斥力および引力が生じ、ロータ17が所定方向に所定角度回転する。
【0031】
ロータ17とともに整流子4が回転すると、第1ブラシ51、52のブラシ片53は、直前に当接していた金属片411の隣の金属片411に当接することとなる。これにより、ロータ17に生じる磁極の極が反転し、ロータ17の磁極とステータ15の磁石の磁極との間で斥力および引力が生じ、ロータ17が所定方向に所定角度さらに回転する。
【0032】
第1ブラシ51の電力線56に電力を供給するのと同時に、第2ブラシ61の電力線66に電力を供給すると、ブラシ片63、第2整流子片群42の金属片421、導線13、第2巻線32、導線14、第2整流子片群42の金属片421、第2ブラシ62のブラシ片63、および、電力線66に電流が流れる。これにより、ロータ17の周方向には、異なる極の磁極が交互に生じることとなる。その結果、ロータ17の磁極とステータ15の磁石の磁極との間で斥力および引力が生じ、ロータ17が所定方向に所定角度回転する。
【0033】
ロータ17とともに整流子4が回転すると、第2ブラシ61、62のブラシ片63は、直前に当接していた金属片421の隣の金属片421に当接することとなる。これにより、ロータ17に生じる磁極の極が反転し、ロータ17の磁極とステータ15の磁石の磁極との間で斥力および引力が生じ、ロータ17が所定方向に所定角度さらに回転する。
【0034】
このように、第1ブラシ51、52のブラシ片53が周方向の別の金属片411に連続的に当接(摺接)し、かつ、第2ブラシ61、62のブラシ片63が周方向の別の金属片421に連続的に当接(摺接)することによって、ロータ17に生じる磁極が反転を繰り返すことにより、ロータ17および回転軸16が回転し続ける。これにより、回転軸16からトルクが出力される。当該トルクは、電動パワーステアリング装置の駆動源として用いられる。なお、本実施形態では、回転電機1の通常駆動時、第1巻線31と第2巻線32とに、それぞれ同程度の割合の電力を供給する。
【0035】
本実施形態では、第1巻線31、導線11、12、第1整流子片群41、第1ブラシ51、52により、第1の系統を構成している。また、第2巻線32、導線13、14、第2整流子片群42、第2ブラシ61、62により、第1の系統とは電気的に分離した別の系統である第2の系統を構成している。第1の系統と第2の系統とは、電力の供給系統が異なる。例えば、ECUは、系統毎に電力変換部を有し、当該電力変換部でバッテリからの電力を回転電機1駆動用の電力に変換し第1巻線31および第2巻線32に供給する。そのため、第1系統の第1巻線31、導線11、12、第1整流子片群41、第1ブラシ51、52、電力変換部のいずれかに断線あるいは接触不良等の電気的な異常が生じても、第2系統に通電することにより回転電機1の駆動を継続することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態では、1つの巻線(第1巻線31または第2巻線)、1つの整流子片群(第1整流子片群41または第2整流子片群42)および1つのブラシ群(「第1ブラシ51、52」または「第2ブラシ61、62」)の組で1つの系統を構成している。そして、これらの組を2つ備えることで冗長系を構成している。これにより、1つの系統に異常が生じても、他の系統によって代替機能を果たすことができる。そのため、例えば1つの系統の巻線等に断線等の電気的な異常が生じても、他の系統に通電することにより回転電機1の駆動を継続することができる。
【0037】
また、本実施形態では、整流子4は、ロータ17に対し回転軸16の軸方向の一方側のみに設けられている。すなわち、整流子4およびブラシ5を配置するために必要なスペースは、回転軸16の軸方向の1箇所(ロータ17の片側)のみである。これにより、整流子およびブラシの組がロータに対し回転軸の軸方向の両側に設けられる従来の回転電機と比べ、回転電機1の軸方向の体格を小さくすることができる。したがって、回転電機1の車両への搭載性を損なうことなく、駆動に関する信頼性を向上することができる。
【0038】
また、整流子4を回転軸16の軸方向の1箇所に設ける構成のため、第1巻線31および第2巻線32のそれぞれに接続する第1整流子片群41および第2整流子片群42を1つの整流子4に設けることができる。そのため、整流子に関する部材点数を低減でき、部材コストおよび組付コスト等の製造コストを低減することができる。
【0039】
また、本実施形態では、整流子4の本体40は、中実円筒状に形成されている。第1ブラシ群を構成する第1ブラシ51、52は、整流子4の本体40の外壁に露出する第1整流子片群41に摺接可能である。また、第2ブラシ群を構成する第2ブラシ61、62は、整流子4の本体40の軸方向の端面に露出する第2整流子片群42に摺接可能である。すなわち、第1ブラシ群を構成する第1ブラシ51、52は、回転軸16の軸に対し垂直な方向から整流子4の本体40に当接する。また、第2ブラシ群を構成する第2ブラシ61、62は、回転軸16の軸方向から整流子4の本体40に当接する。この構成では、複数の整流子片群(第1整流子片群41および第2整流子片群42)を1つの整流子4に設けることで、整流子に関する部材点数を低減することができる。
【0040】
また、本実施形態では、第1ブラシ51、52、第2ブラシ61、62は、ケース20の内壁に当接するよう設けられることでケース20によって支持されている。そのため、ブラシ5を支持するための支持部材を別途設ける必要がない。よって、部材点数および部材コストを低減することができる。
【0041】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による回転電機について、図2に基づき説明する。第2実施形態は、整流子の本体および整流子片群の構成、ならびに、第2ブラシの配置等が第1実施形態と異なる。
【0042】
第2実施形態では、整流子7は、本体70、第1整流子片群71および第2整流子片群72等を有している。本体70は、本実施形態では、例えば樹脂により軸方向に短い有底筒状に形成されている。本体70は、筒部73、および、当該筒部73のロータ17側の端部を塞ぐ底部74を有している。本体70は、ロータ17に対し回転軸16の軸方向の一方側に設けられている。本体70は、回転軸16のロータ17から板部23側へ所定の距離離れた箇所に、底部74が回転軸16と同軸に固定されている。よって、本体70は、回転軸16およびロータ17とともに回転する。
【0043】
第1整流子片群71は、例えば銅の合金等により形成された複数の金属片711からなる。また、第2整流子片群72は、例えば銅の合金等により形成された複数の金属片721からなる。金属片711および金属片721は、インサート成形により本体70に設けられている。第1整流子片群71を構成する複数の金属片711は、それぞれ、略長方形の板状に形成され、一方の面が本体70の筒部73の外壁に露出するよう本体70の周方向に所定の間隔をあけて設けられている。第2整流子片群72を構成する複数の金属片721は、それぞれ、略長方形の板状に形成され、一端側の一方の面が本体70の筒部73の内壁に露出するよう、他端側が本体70の底部74のロータ17側に露出するよう本体70の周方向に所定の間隔をあけて設けられている。
【0044】
図2(A)に示すように、第1整流子片群71を構成する1つの金属片711と第1巻線31の一端とは、導線11によって電気的に接続されている。また、第1整流子片群71を構成する別の金属片721と第1巻線31の他端とは、導線12によって電気的に接続されている。本体70の周方向に複数設けられる金属片711には、導線11と導線12とが交互に接続されている。本体70の軸を挟んで対向配置される、すなわち、本体70の軸に垂直に交わる仮想直線上に位置する2つの金属片711には、それぞれ導線11、導線12が接続されている。図2(A)では、図が煩雑になることを避けるため、前記2つの金属片711に接続する導線11、導線12以外の導線11、導線12については、図示を省略している。
【0045】
また、第2整流子片群72を構成する1つの金属片721と第2巻線32の一端とは、導線13によって電気的に接続されている。また、第2整流子片群72を構成する別の金属片721と第2巻線32の他端とは、導線14によって電気的に接続されている。本体70の周方向に複数設けられる金属片721には、導線13と導線14とが交互に接続されている。本体70の軸を挟んで対向配置される、すなわち、本体70の軸に垂直に交わる仮想直線上に位置する2つの金属片721には、それぞれ導線13、導線14が接続されている。図2(A)では、図が煩雑になることを避けるため、前記2つの金属片721に接続する導線13、導線14以外の導線13、導線14については、図示を省略している。
このように、第1整流子片群71および第2整流子片群72は、第1巻線31および第2巻線32のそれぞれに1対1の関係で電気的に接続されている。
【0046】
本実施形態では、第1ブラシ群を構成する第1ブラシ51、52は、整流子7の本体70の軸を挟んで対向配置されるよう、すなわち、本体70の軸に垂直に交わる仮想直線上に位置するよう設けられている。また、第1ブラシ51、52のブラシホルダ54は、整流子7の本体70の外壁に露出する第1整流子片群71にブラシ片53が当接可能なよう設けられている。また、付勢部材55は、ブラシホルダ54を本体70の外壁に対し押し付けるようにして付勢している。
【0047】
本実施形態では、図2(B)に示すように、ケース20の板部23には、内壁から整流子7の本体70の底部74に向かって延びる支持部26、27が形成されている。支持部26、27の先端部は、筒部73の内側の底部74近傍に位置している。支持部26と支持部27とは、間に回転軸16が位置するよう形成されている。支持部26、27は、第1ブラシ51と本体70の軸と第1ブラシ52とを結ぶ仮想直線上に位置するよう形成されている。
【0048】
第2ブラシ群を構成する第2ブラシ61、62は、本実施形態では、付勢部材65を有していない。第2ブラシ61、62それぞれのブラシホルダ64のブラシ片63が露出する面とは反対側の面は、支持部26、27に固定されている。すなわち、支持部26、27は、第2ブラシ61、62を保持している。よって、第2ブラシ61、62は、第1ブラシ51と本体70の軸と第1ブラシ52とを結ぶ仮想直線上に位置するよう設けられている。ここで、第2ブラシ61、62のブラシ片63は、整流子7の本体70の筒部73の内壁に露出する第2整流子片群72に当接可能である。
【0049】
このように、第2ブラシ61、62は、第1ブラシ51、52と回転軸16の軸に対し垂直な方向に並ぶよう設けられ、回転軸16の軸に対し垂直な方向から整流子7に当接するよう設けられている。なお、支持部26、27は、筒部73側に撓むことにより、第2ブラシ61、62を整流子7の本体70の筒部73の内壁に対し押し付けるようにして付勢している。また、第1ブラシ51、52からなる第1ブラシ群、および、第2ブラシ61、62からなる第2ブラシ群は、第1整流子片群71および第2整流子片群72のそれぞれに1対1の関係で当接可能である。
本実施形態による回転電機の作動については、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態では、整流子7の本体70は、中空円筒状に形成されている。第1ブラシ群を構成する第1ブラシ51、52は、整流子7の本体70の筒部73の外壁に露出する第1整流子片群71に摺接可能である。第2ブラシ群を構成する第2ブラシ61、62は、整流子7の本体70の筒部73の内壁に露出する第2整流子片群72に摺接可能である。すなわち、第1ブラシ群を構成する第1ブラシ51、52、および、第2ブラシ群を構成する第2ブラシ61、62は、回転軸16の軸に対し垂直な方向から整流子7の本体70に当接する。この構成では、複数の整流子片群(第1整流子片群71および第2整流子片群72)を1つの整流子7に設けることで、整流子に関する部材点数を低減することができる。また、第2実施形態では、第1実施形態と比べ、第2ブラシ群を構成する第2ブラシ61、62が整流子7(本体70の筒部73)の内側に配置される分、回転電機の軸方向の体格をさらに小さくすることができる。
【0051】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による回転電機について、図3に基づき説明する。第3実施形態は、整流子の構成等が第1実施形態と異なる。
【0052】
第3実施形態では、整流子8は、第1整流子81および第2整流子82からなる。
第1整流子81は、本体83および第1整流子片群84を有している。本体83は、例えば樹脂により略円板状に形成されている。本体83は、ロータ17に対し回転軸16の軸方向の一方側に設けられている。本体83は、回転軸16のロータ17から板部23側へ所定の距離離れた箇所に、回転軸16と同軸に固定されている。よって、本体83は、回転軸16およびロータ17とともに回転する。
【0053】
第1整流子片群84は、例えば銅の合金等により形成された複数の金属片841からなる。金属片841は、インサート成形により本体83に設けられている。第1整流子片群84を構成する複数の金属片841は、それぞれ、略長方形の板状に形成され、一方の面が本体83の外壁に露出するよう本体83の周方向に所定の間隔をあけて設けられている。また、第1整流子81には、本体83の各金属片841間に、径内方向へ切り欠かれるようにして切欠部85が形成されている。このように、第1整流子81は、本体83に切欠部85が形成されている点以外は、従来の一般的な整流子と同様の構成である。
【0054】
第2整流子82は、本体86および第2整流子片群87を有している。本体86は、例えば樹脂により略円板状に形成されている。本体86は、ロータ17に対し回転軸16の軸方向の一方側に設けられている。本体86は、回転軸16の本体83からロータ17とは反対側へ所定の距離離れた箇所に、回転軸16と同軸に固定されている。よって、本体86は、回転軸16およびロータ17とともに回転する。このように、第2整流子82の本体86は、第1整流子81に対しロータ17とは反対側に設けられている。
【0055】
第2整流子片群87は、例えば銅の合金等により形成された複数の金属片871からなる。金属片871は、インサート成形により本体86に設けられている。第2整流子片群87を構成する複数の金属片871は、それぞれ、略長方形の板状に形成され、一方の面が本体86の外壁に露出するよう本体86の周方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。このように、第2整流子82は、従来の一般的な整流子と同様の構成である。
【0056】
本実施形態では、回転軸16には、ロータ9が回転軸16と同軸に固定されている。ロータ9は、第1実施形態のロータ17と同様、例えば積層鉄心により略円筒状に形成されている。ロータ9には、従来と同様の一般的な方法で第1巻線31および第2巻線32が巻回されている。
【0057】
図3に示すように、第1整流子片群84を構成する1つの金属片841と第1巻線31の一端とは、導線11によって電気的に接続されている。また、第1整流子片群84を構成する別の金属片841と第1巻線31の他端とは、導線12によって電気的に接続されている。本体83の周方向に複数設けられる金属片841には、導線11と導線12とが交互に接続されている。本体83の軸を挟んで対向配置される、すなわち、本体83の軸に垂直に交わる仮想直線上に位置する2つの金属片841には、それぞれ導線11、導線12が接続されている。図3では、図が煩雑になることを避けるため、第1整流子片群84に接続する導線11、導線12のうち一部(各1本)のみ図示している。
【0058】
また、第2整流子片群87を構成する1つの金属片871と第2巻線32の一端とは、導線13によって電気的に接続されている。また、第2整流子片群87を構成する別の金属片871と第2巻線32の他端とは、導線14によって電気的に接続されている。本体86の周方向に複数設けられる金属片871には、導線13と導線14とが交互に接続されている。本体40の軸を挟んで対向配置される、すなわち、本体86の軸に垂直に交わる仮想直線上に位置する2つの金属片871には、それぞれ導線13、導線14が接続されている。図3では、図が煩雑になることを避けるため、第2整流子片群87に接続する導線13、導線14のうち一部(各1本)のみ図示している。
このように、第1整流子片群84および第2整流子片群87は、第1巻線31および第2巻線32のそれぞれに1対1の関係で電気的に接続されている。
図3に示すように、第1整流子81の本体83に形成された切欠部85には、導線13、14が通されている。ここで、切欠部85は、特許請求の範囲における「導線通路」に対応している。
【0059】
本実施形態では、第1ブラシ群を構成する第1ブラシ51、52は、第1整流子81の本体83の軸を挟んで対向配置されるよう、すなわち、本体83の軸に垂直に交わる仮想直線上に位置するよう設けられている。また、第1ブラシ51、52のブラシホルダ54は、本体83の外壁に露出する第1整流子片群84にブラシ片53が当接可能なよう設けられている。また、付勢部材55は、ブラシホルダ54を本体83の外壁に対し押し付けるようにして付勢している。
【0060】
第2ブラシ群を構成する第2ブラシ61、62は、第2整流子82の本体86の軸を挟んで対向配置されるよう、すなわち、本体86の軸に垂直に交わる仮想直線上に位置するよう設けられている。また、第2ブラシ61、62のブラシホルダ64は、本体86の外壁に露出する第2整流子片群87にブラシ片63が当接可能なよう設けられている。また、付勢部材65は、ブラシホルダ64を本体86の外壁に対し押し付けるようにして付勢している。
【0061】
このように、第1ブラシ51、52からなる第1ブラシ群、および、第2ブラシ61、62からなる第2ブラシ群は、第1整流子片群84および第2整流子片群87のそれぞれに1対1の関係で当接可能である。
本実施形態による回転電機の作動については、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0062】
以上説明したように、本実施形態では、第1整流子片群84および第2整流子片群87は、第1巻線31および第2巻線32のそれぞれに1対1の関係で接続するよう設けられている。整流子は、2つの整流子片群の一方を有する第1整流子、および、2つの整流子片群の他方を有する第2整流子からなる。本発明では、第1整流子および第2整流子は、回転軸の軸方向に並ぶようにして設けられている。整流子8は、第1整流子片群84を有する第1整流子81、および、第2整流子片群87を有する第2整流子82からなる。本実施形態では、第1整流子81および第2整流子82は、回転軸16の軸方向に並ぶようにして設けられている。このように、本実施形態では、整流子8が第1整流子81と第2整流子82とに分離して設けられているため第1実施形態および第2実施形態と比べ整流子に関する部材点数は増大するものの、第1整流子81および第2整流子82を配置するために必要なスペースは回転軸16の軸方向の1箇所(ロータ9の片側)のみのため、回転電機の軸方向の体格の増大を抑えることができる。
【0063】
また、本実施形態では、第1整流子81は、第2整流子82よりもロータ9側に設けられている。そして、第1整流子81は、第2整流子82の第2整流子片群87と第2巻線32とを電気的に接続する導線13、14が通る切欠部85を有している。これにより、導線13、14の取り回しを容易にすることができるとともに、導線13、14と第1ブラシ51、52とが接触するのを防ぐことができる。
【0064】
また、本実施形態では、従来の一般的な整流子に対し比較的小さな変更を加えたもの(切欠部85を形成した第1整流子81)を用いることで実現可能である。よって、従来の回転電機の構成部品を流用できるため、回転電機の製造に関する新たな設備投資を抑えることができる。したがって、冗長系を有する小型の回転電機を製造するにあたり、製造コストを低減することができる。
【0065】
(第1参考例)
本発明の第1参考例による回転電機について、図4に基づき説明する。第1参考例は、ロータおよび整流子の構成および配置等が第3実施形態と異なる。
【0066】
第1参考例では、ロータ110は、第1ロータ111および第2ロータ112からなる。第1ロータ111および第2ロータ112のそれぞれは、第3実施形態のロータ9と同様の構成であるものの、軸方向の長さがロータ9と比べて短く形成されている。第1ロータ111および第2ロータ112は、回転軸16の中央に、所定の間隔をおいて並ぶようにして設けられている。第1ロータ111および第2ロータ112は、回転軸16と同軸に固定されている。第1参考例では、ステータ15は、第1ロータ111および第2ロータ112の径外側に位置するようケース20の筒部21の内壁に固定されている。
【0067】
第1ロータ111には、従来と同様の一般的な方法で第1巻線31が巻回されている。また、第2ロータ112には、従来と同様の一般的な方法で第2巻線32が巻回されている。
第1参考例では、第1整流子81は、回転軸16の第1ロータ111から板部22側へ所定の距離離れた箇所に設けられている。また、第1整流子81は、第3実施形態とは異なり、切欠部85を有していない。
第2整流子82は、回転軸16の第2ロータ112から板部23側へ所定の距離離れた箇所に設けられている。
【0068】
図4に示すように、第1整流子片群84を構成する1つの金属片841と第1巻線31の一端とは、導線11によって電気的に接続されている。また、第1整流子片群84を構成する別の金属片841と第1巻線31の他端とは、導線12によって電気的に接続されている。本体83の周方向に複数設けられる第1整流子片群84には、導線11と導線12とが交互に接続されている。本体83の軸を挟んで対向配置される、すなわち、本体83の軸に垂直に交わる仮想直線上に位置する2つの金属片841には、それぞれ導線11、導線12が接続されている。図4では、図が煩雑になることを避けるため、第1整流子片群84に接続する導線11、導線12のうち一部(各1本)のみ図示している。
【0069】
また、第2整流子片群87を構成する1つの金属片871と第2巻線32の一端とは、導線13によって電気的に接続されている。また、第2整流子片群87を構成する別の金属片871と第2巻線32の他端とは、導線14によって電気的に接続されている。本体86の周方向に複数設けられる金属片871には、導線13と導線14とが交互に接続されている。本体40の軸を挟んで対向配置される、すなわち、本体86の軸に垂直に交わる仮想直線上に位置する2つの金属片871には、それぞれ導線13、導線14が接続されている。図4では、図が煩雑になることを避けるため、第2整流子片群87に接続する導線13、導線14のうち一部(各1本)のみ図示している。
【0070】
第1ブラシ群を構成する第1ブラシ51、52は、第3実施形態と同様、第1整流子81の本体83の軸を挟んで対向配置されるよう、すなわち、本体83の軸に垂直に交わる仮想直線上に位置するよう設けられている。また、第1ブラシ51、52のブラシホルダ54は、本体83の外壁に露出する第1整流子片群84にブラシ片53が当接可能なよう設けられている。また、付勢部材55は、ブラシホルダ54を本体83の外壁に対し押し付けるようにして付勢している。
【0071】
また、第2ブラシ群を構成する第2ブラシ61、62は、第3実施形態と同様、第2整流子82の本体86の軸を挟んで対向配置されるよう、すなわち、本体86の軸に垂直に交わる仮想直線上に位置するよう設けられている。また、第2ブラシ61、62のブラシホルダ64は、本体86の外壁に露出する第2整流子片群87にブラシ片63が当接可能なよう設けられている。また、付勢部材65は、ブラシホルダ64を本体86の外壁に対し押し付けるようにして付勢している。
第1参考例による回転電機の作動については、第3実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0072】
以上説明したように、第1参考例では、ロータ110が第1ロータ111と第2ロータ112とに分離して設けられるため第3実施形態と比べロータに関する部材点数が増大し、ロータ110の両側に第1整流子81および第2整流子82が配置されるため回転電機の軸方向の体格が増大するものの、従来の一般的な整流子およびロータを2組用いることで実現可能である。よって、従来の回転電機の構成部品を流用できるため、回転電機の製造に関する新たな設備投資をさらに抑えることができる。
【0073】
(第2参考例)
本発明の第2参考例による回転電機について、図5に基づき説明する。第2参考例は、ロータおよび整流子の配置、ならびに、ステータの構成等が第1参考例と異なる。
【0074】
第2参考例では、第1整流子81および第2整流子82は、回転軸16の中央に、所定の間隔をおいて並ぶようにして設けられている。
第1ロータ111は、回転軸16の第1整流子81から板部22側へ所定の距離離れた箇所に設けられている。第2ロータ112は、回転軸16の第2整流子82から板部23側へ所定の距離離れた箇所に設けられている。
【0075】
第2参考例では、ステータ120は、第1ステータ121および第2ステータ122からなる。第1ステータ121および第2ステータ122のそれぞれは、第1参考例のステータ15と同様の構成であるものの、軸方向の長さがステータ15と比べて短く形成されている。第1ステータ121は、第1ロータ111の径外側に位置するようケース20の筒部21の内壁に固定されている。第2ステータ122は、第2ロータ112の径外側に位置するようケース20の筒部21の内壁に固定されている。
上述した点(構成)以外の構成は、第1参考例と同様である。
第2参考例による回転電機の作動については、第1参考例と同様のため、説明を省略する。
【0076】
以上説明したように、第2参考例では、第1参考例と異なり、第1整流子81と第2整流子82とが回転軸16上に並ぶようにして設けられている。そのため、第1ブラシ51、52と第2ブラシ61、62とを近づけて配置することができる。これにより、第1ブラシ51、52の電力線56と第2ブラシ61、62の電力線66とを近接して設けることができる。その結果、電力線56および電力線66をまとめることができ、例えば電力線56および電力線66を保持するコネクタの形成箇所を少なくすることができる。よって、第1参考例と比べ、回転電機の製造コストをより低減することができる。
【0077】
(他の実施形態)
上述の第2実施形態では、整流子7(筒部73)の内壁に露出する整流子片群(第2整流子片群72)に第2ブラシ群(第2ブラシ61、62)を押し付け可能な支持部26、27を、ケース20の内壁に形成する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、図6(A)に示すように、支持部26、27をケース20の内壁に形成する代わりに、軸が回転軸16の軸と略一致するよう第2ブラシ群(第2ブラシ61、62)の内側に設けられ、整流子7の内壁に露出する第2整流子片群72に第2ブラシ群(第2ブラシ61、62)を押し付け可能な半円形のばね91を備える構成としてもよい。すなわち、この構成では、第2ブラシ61、62の整流子7(筒部73)の内壁への付勢は、図6(A)の如く、例えば板材を半円形に形成した板ばね(ばね91)を用い、厚さ方向を径方向として配置したばね91の半円状の端部を内径側から第2ブラシ61、62に押し当て、当該ばね91の半円からの戻り反力により行うものであってもよい。なお、ばね91は、半円形に限らず、円形であってもよい。
【0078】
あるいは、図6(B)に示すように、支持部26、27をケース20の内壁に形成する代わりに、軸が回転軸16の軸と略一致するよう第2ブラシ群(第2ブラシ61、62)の内側に設けられ、整流子7の内壁に露出する第2整流子片群72に第2ブラシ群(第2ブラシ61、62)を押し付け可能な渦巻き状のばね92を備える構成としてもよい。すなわち、この構成では、第2ブラシ61、62の整流子7(筒部73)の内壁への付勢は、図6(B)の如く、例えば板材を渦巻き状(ぜんまい状)に巻いた板ばね(ばね92)を用い、厚さ方向を径方向として配置したばね92のぜんまい状の中央対向部を内径側から第2ブラシ61、62に押し当て、当該ばね91のぜんまい状からの拡径戻り反力により行うものであってもよい。
図6(A)および(B)に示す構成では、第2実施形態で示した支持部26、27をケース20の内壁に形成する必要がない。よって、回転電機の製造コストを低減することができる。なお、ばね91、および、ばね92は、軸が回転軸16の軸に対し傾くようにして設けられていてもよい。あるいは、ばね91、および、ばね92は、軸が回転軸16の軸に対し略平行で、かつ、互いに交わらない状態で設けられていてもよい。
【0079】
上述の実施形態では、電気的に分離した2つの巻線、2つの整流子片群、2つのブラシ群によって2つの系統を構成する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、整流子およびブラシ群がロータに対し回転軸の軸方向の一方側に設けられるのであれば、電気的に分離した3つ以上の巻線、3つ以上の整流子片群、3つ以上のブラシ群を備えることで3つ以上の系統を構成することとしてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、ステータの周方向に複数設けられる磁石の数はいくつであってもよい。また、巻線に電力が供給されることでロータの周方向に複数生じる磁極の数はいくつであってもよい。
【0080】
上述の実施形態では、インナロータ型のブラシ付きモータに本発明の技術(整流子およびブラシ群をロータに対し回転軸の軸方向の一方側に設けること)を適用する例を示した。これに対し、他の実施形態では、ステータの径方向外側に筒状のロータが配置されるアウタロータ型のブラシ付きモータに本発明の技術を適用してもよい。
【0081】
本発明は、電動パワーステアリング装置用のモータに限らず、電動ポンプ式油圧パワーステアリング装置用のモータ、ならびに、ステアバイワイヤ(SBW)システムおよび可変ギアレシオ(VGR)ステアリングシステム等その他の車両用操舵装置に用いられるモータに適用してもよい。また、車両用操舵装置用に限らず、他の用途のモータに本発明を適用することもできる。
このように、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 ・・・・・・・回転電機
20 ・・・・・・ケース
15 ・・・・・・ステータ
16 ・・・・・・回転軸
9、17 ・・・・ロータ
3 ・・・・・・・巻線
31 ・・・・・・第1巻線(巻線)
32 ・・・・・・第2巻線(巻線)
4、7、8 ・・・整流子
41、71、84 ・・・第1整流子片群(整流子片群)
42、72、87 ・・・第2整流子片群(整流子片群)
51、52 ・・・第1ブラシ(第1ブラシ群)
61、62 ・・・第2ブラシ(第2ブラシ群)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに収容されるステータと、
前記ケースに回転可能に支持される回転軸と、
前記ステータに対し相対回転可能となるよう前記回転軸に一体に設けられるロータと、
前記ロータに設けられ、それぞれ電気的に分離した複数の巻線と、
前記複数の巻線のそれぞれに1対1の関係で電気的に接続される複数の整流子片群を有し、前記ロータに対し前記回転軸の軸方向の一方側に設けられる整流子と、
前記ケースに収容され、前記整流子が回転するとき前記複数の整流子片群のそれぞれに1対1の関係で摺接可能な複数のブラシ群と、
を備えることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記整流子は、中実円筒状に形成され、
前記複数のブラシ群は、前記整流子の外壁に露出する前記整流子片群に摺接可能な第1ブラシ群、および、前記整流子の軸方向の端面に露出する前記整流子片群に摺接可能な第2ブラシ群からなることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記整流子は、中空円筒状に形成され、
前記複数のブラシ群は、前記整流子の外壁に露出する前記整流子片群に摺接可能な第1ブラシ群、および、前記整流子の内壁に露出する前記整流子片群に摺接可能な第2ブラシ群からなることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
前記巻線は、2つ設けられ、
前記整流子片群は、2つの前記巻線のそれぞれに1対1の関係で接続するよう2つ設けられ、
前記整流子は、2つの前記整流子片群の一方を有する第1整流子、および、2つの前記整流子片群の他方を有する第2整流子からなり、
前記第1整流子および前記第2整流子は、前記回転軸の軸方向に並ぶようにして設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項5】
前記第1整流子は、前記第2整流子よりも前記ロータ側に設けられ、前記第2整流子の前記整流子片群と前記巻線とを電気的に接続する導線が通る導線通路を有していることを特徴とする請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記複数のブラシ群は、前記ケースの内壁に当接するよう設けられることで前記ケースによって支持されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項7】
軸が前記回転軸の軸と略一致するよう前記第2ブラシ群の内側に設けられ、前記整流子の内壁に露出する前記整流子片群に前記第2ブラシ群を押し付け可能な円形、半円形または渦巻き状のばねをさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−62902(P2013−62902A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198137(P2011−198137)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】