回転電機
【課題】固定子を効率よく冷却し、かつ磁気特性の高い回転電機を得る。
【解決手段】回転子3を囲むように配設されコイル5が巻回された固定子4と、固定子4が焼き嵌めにより固定される筒状のリング部材6と、リング部材6の外周側にリング部材6とギャップ8を介して配置されるフレーム7とを備えている。ギャップ8の寸法は温度変化による固定子4とリング部材6との熱膨張により可変であり、固定子4とリング部材6との熱膨張時にリング部材6の外周面がフレーム7に接触して冷却される。
間を設けている。
【解決手段】回転子3を囲むように配設されコイル5が巻回された固定子4と、固定子4が焼き嵌めにより固定される筒状のリング部材6と、リング部材6の外周側にリング部材6とギャップ8を介して配置されるフレーム7とを備えている。ギャップ8の寸法は温度変化による固定子4とリング部材6との熱膨張により可変であり、固定子4とリング部材6との熱膨張時にリング部材6の外周面がフレーム7に接触して冷却される。
間を設けている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転電機の構造に関し、固定子を効率的に冷却し、かつ磁気特性の高い回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の交流モータは、ステータコイルが巻回された複数の独立したステータ片をリング状に配列して構成されたステータと、ステータが開口部に圧入固定されるステータ保持リングとを備え、ステータ保持リングとモータハウジングがネジ止め固定されている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来の回転電動機は、円筒状のアルミ製のハウジングと、ハウジングの円筒内周面に固定配置された円筒状の鉄製スリーブと、鉄製スリーブの円筒内周面に密着するように固定配置された、磁性体からなる複数のステータ片を周方向に連続して配置してなる環状のステータを備え、鉄製スリーブはハウジングに対して焼き嵌めにより固定されている(例えば、特許文献2参照)。
また、従来の外被冷却形回転電機は、ステータフレームに冷却媒体通路を形成しており、ステータフレームの内径部はステータコアを保持する(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−025187号公報
【特許文献2】特開2003−284269号公報
【特許文献3】特開平06−269143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の交流モータは、ステータ保持リングとモータハウジングがネジ止め固定されており、ステータ保持リングの外周面とモータハウジングとの間には厚い空気層が介在している。このため、交流モータの駆動により温度が上昇したステータ、ステータ保持リングの放熱がされにくく、冷却が十分になされないという問題があった。
また、上記従来の回転電動機は、鉄製スリーブがハウジングに対して焼き嵌めにより固定されており、鉄製スリーブの外周面とハウジングの内周面が密着している。このため、回転電動機の駆動時の温度上昇により鉄製スリーブが熱膨張し、ハウジングと鉄製スリーブ間に圧縮の面圧が増加する。このため、鉄製スリーブの内周面に密着するように配置されたステータに圧縮応力が生じ、ステータの鉄損が増大して磁気特性が低下するという問題があった。
また、上記従来の外被冷却形回転電機は、ステータフレームに冷却媒体通路を形成している。このため、回転電機の駆動時には、ステータは温度上昇により熱膨張するのに対し、ステータフレームは冷却媒体により冷却されるため、ステータフレームとステータ間の面圧の増加が顕著であり、ステータの鉄損の増大による磁気特性の低下という問題があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、固定子を効率よく冷却し、かつ磁気特性の高い回転電機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る回転電機は、回転軸を有し回転自在に配置される回転子と、上記回転子を囲むように配設されコイルが巻回された固定子と、上記固定子の外周側に上記固定子とギャップを介して配置されるフレームとを備えている。上記ギャップ寸法は温度変化による上記固定子の熱膨張により可変であり、上記固定子の熱膨張時に上記固定子の外周面が上記フレームに接触して冷却される。
【発明の効果】
【0006】
この発明に係る回転電機は、回転軸を有し回転自在に配置される回転子と、上記回転子を囲むように配設されコイルが巻回された固定子と、上記固定子の外周側に上記固定子とギャップを介して配置されるフレームとを備え、上記ギャップ寸法は温度変化による上記固定子の熱膨張により可変であり、上記固定子の熱膨張時に上記固定子の外周面が上記フレームに接触して冷却される。このため、回転電機の駆動時の温度変化による固定子の熱膨張時に固定子を効率よく冷却でき、かつ、固定子とフレーム間の面圧の増加を抑制して固定子の鉄損の増大を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の実施の形態1における回転電機の構成を示す断面図である。
【図2】図1の部分Aを拡大して示す部分拡大図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるリング部材の構成を示す斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるフレームの構成を示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態1におけるフレームと固定子との温度変化に対する直径変化量を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1におけるフレームと固定子との温度差と、締め代増加量との関係を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1における組み立て時のギャップ寸法とフレームに生じる円周応力との関係を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1におけるフレームとリング部材の支持構造の別例を模式的に示す斜視図である。
【図9】この発明の実施の形態2におけるリング部材の構成を示す斜視図である。
【図10】この発明の実施の形態3におけるリング部材の構成を示す斜視図である。
【図11】この発明の実施の形態4におけるリング部材の構成を示す斜視図である。
【図12】この発明の実施の形態4における回転電機の構成を模式的に示す部分断面図である。
【図13】この発明の実施の形態5における回転電機の構成を模式的に示す部分断面図である。
【図14】この発明の実施の形態5における変形例の回転電機の構成を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における回転電機の構成を示す断面図である。
図1に示すように、回転電機1は、回転軸2に取り付けられた回転子3と、回転子3の外周を囲むように配置される環状の固定子4を備えている。固定子4は材質を鉄とし、コイル5が巻回された複数の固定子片を環状に配列して構成された分割構造の固定子である。分割構造の固定子4は、外周側に固定子4の材質と同じ材質である鉄で形成された筒状で薄肉のリング部材6を備えており、リング部材6に対し固定子4が焼き嵌めされてリング部材6と固定子4とが同軸固定されている。リング部材6の外周側には円筒状に形成されたアルミ製のフレーム7が配置されている。フレーム7の内径はリング部材6の外径よりも大きい寸法に設定されてフレーム7にリング部材6が隙間嵌めされており、フレーム7の内周面とリング部材6の外周面との間には微少なギャップ8(図2参照)が設けられている。フレーム7の内部には冷却媒体を流すための流路71が設けられ、回転電機1の駆動によりコイル5で発生する熱は、固定子4、リング部材6、フレーム7を介して、流路71内を流通する冷却媒体により冷却される。
【0009】
図2〜図4を参照し、固定子4、リング部材6、フレーム7の構成を詳細に説明する。図2は、図1の点線で囲んだ部分Aを拡大して示す拡大図、図3はリング部材6の構成を示す斜視図、図4はフレーム7の構成を示す斜視図である。
上述の通り、固定子4は外周側にリング部材6を備え、固定子4は薄肉のリング部材6に焼き嵌めされて固定され、リング部材6の内周面と固定子4の外周面は密着している。なお、リング部材6は薄肉であるため熱容量が小さく、例えば誘導加熱などによって加熱することができ、加熱効率が高い。このため固定子4のリング部材6への焼き嵌めは、短時間で容易に行え、焼き嵌めをするための大型設備も不要である。焼き嵌めにより固定される固定子4とリング部材6は、共に材質を鉄としているため、熱膨張係数が一致する。このため、回転電機1の駆動時の温度変化に対し、固定子4とリング部材6とは同じように膨張、収縮し、固定子4とリング部材6との接合面に緩みが生じるようなことはない。なお、本実施の形態1ではリング部材6の材質は固定子4の材質と同じ鉄としているが、熱膨張係数が実質的に一致する材質とすればよく、これにより回転電機1の駆動時の温度変化に対する固定子4、リング部材6の膨張収縮により、両者の接合面に緩みが生じることを防止できる。また、本実施の形態1ではリング部材6と固定子4は焼き嵌めにより行われているが、圧入等の方法で行ってもよい。
【0010】
リング部材6は、外周面から径方向外側に突出する支持部としてのフック部61を備え、フック部61は、軸方向に3個、径方向に4個、整列して配置されている。フック部61は、リング部材6の一部に切り込みを入れ、切り込み部分を径方向外側に屈曲させた、切起こしにより形成されている。詳細には、フック部61は、四角形の4辺のうち軸方向上側の辺を除く3辺に設けられた切り込み部分を起こして形成されている。このようにして設けられたフック部61はバネ性を有している。リング部材6は、例えば、薄肉の鉄板にフック部61を形成した後、鉄板を円筒曲げし、溶接部62を溶接することで形成することができる。なお、フック部61の配置位置や個数は上記例に限られず、必要に応じて適宜設定すればよい。また、フック部の形状も、必要に応じて変更すればよく、上述のように、鉄板にフック部61を形成した後に円筒曲げをしてリング部材6を形成する方法であれば、リング部材6に複雑な形状のフック部を容易に設けることができる。
【0011】
フレーム7の内周面には、リング部材6のフック部61と対応する位置に凹部72が設けられている。フレーム7にリング部材6が挿入されることでフック部61が凹部72に嵌まり係止され、リング部材6とフレーム7との軸方向および径方向の位置決めが同時に行われる。フック部61のバネ性により、フック部61の端部が凹部72を径方向に押圧し、リング部材6がフレーム7に均一なギャップ8を介した状態で支持される。また、フック部61のバネ性により、リング部材6やフレーム7の寸法のばらつきを吸収し、リング部材6とフレーム7の軸芯を容易に一致させることができる。回転電機1の駆動時には振動を吸収し騒音を低減することができる。
【0012】
上述の通り、回転電機1を構成する固定子4や、リング部材6、フレーム7等の各部材の組み付け時には、フレーム7とリング部材6とがギャップ8を介して支持されているが、回転電機1の駆動時には、温度変化による固定子4やリング部材6やフレーム7の熱膨張によりギャップ8の寸法は変化するものである。ギャップ8の寸法は、固定子4等の各部材の温度が放熱が必要とされる温度範囲に達した時、リング部材6の外周面がフレーム7の内周面に密着しリング部材6の冷却が可能となるような寸法に設定されている。ギャップ8の寸法の設定について以下で検討する。
【0013】
ここでは、ギャップ8の寸法を、仮に、回転電機1の組み付け時にリング部材6外周面とフレーム7の内周面とが接触している場合、すなわちギャップ寸法0で支持されていると想定した場合の、温度変化によるリング部材6とフレーム7との締め代増加量に基づいて考える。ここで、リング部材6とフレーム7との締め代とは、リング部材6の外径とフレーム7の内径との差を指す。リング部材6とフレーム7とがギャップ寸法0で支持されている時に締め代0であり、温度変化によりリング部材6とフレーム7が熱膨張することで締め代が増加する。以下の検討例でこの締め代の増加量を求める。
検討例として、固定子4の寸法が内径Φ173mm、外径Φ200mm、フレーム7の寸法が内径Φ204mm、外径Φ216mm、リング部材6が厚み2mmとした回転電機1を採用し、締め代増加量を求める。なお、フレーム7の材料であるアルミの線膨張率は2.1×10−5し、リング部材6や固定子4の材料である鉄の線膨張率は1.3×10−5とする。また、回転電機1の組み付け時の温度を20℃とし、回転電機1の駆動時におけるフレーム7の想定温度を−30℃から40℃までとする。
図5は、フレーム7と固定子4との温度変化に対する直径変化量を示す図である。なお、固定子4とリング部材6とは同じ材料である鉄により形成され、かつ焼き嵌めにより一体に固定されているため、固定子4の温度とリング部材6の温度は同じになるものとし、固定子4の直径変化量はリング部材6の厚みも含む直径変化量とする。回転電機1の組み付け時の温度である20℃を基準とし、温度20℃でフレーム7、固定子4ともに直径変化量が0である。例えばフレーム7が40℃、固定子4が100℃の場合の両者の直径変化量の差Aは約0.12mm、フレーム7が−30℃、固定子4が30℃の場合の両者の直径変化量の差Bは約0.24mmとなる。
【0014】
上述の通り、組み付け時にリング部材6とフレーム7とがギャップ寸法0で支持されていると想定した場合、図5で説明したフレーム7と固定子4との直径変化量の差が、温度変化時のリング部材6とフレーム7との締め代増加量となる。図6に、フレーム7が−30℃の場合(図中上側実線)と40℃の場合(図中下側実線)における、フレーム7と固定子4との温度差と、締め代増加量との関係を示す。例えば、図6中のC点は、フレーム7が40℃、固定子4が100℃の時、締め代増加量が約0.12mmであることを示している。また、図6中D点はフレーム7が−30℃、固定子4が30℃の時、締め代増加量が約0.24mmであることを示している。
ここで、回転電機1の内部部品の耐熱性等を考慮し、放熱が必要と想定される範囲をフレーム7と固定子4の温度差が60℃以上とし、上限は温度差100℃とする。その範囲を図6中斜線で示す。斜線で示す範囲内で、締め代増加量が最小となるのは、図6中のC点であり、上述の通り、フレーム7が40℃、固定子4が100℃、締め代増加量は約0.12mmである。
この検討例の検討結果から、本実施の形態1において、放熱が必要とされる温度範囲において、フレーム7の内周面にリング部材6の外周面が密着するようなギャップ8の寸法を最大値は0.12mmと設定することができる。すなわち、ギャップ8の寸法を0.12mm以下とすれば、放熱が必要と想定される全範囲でリング部材6の外周面が冷却媒体用の流路71を備えたフレーム7に接触して、固定子4およびリング部材6の冷却が効果的に行われる。
【0015】
一方、図6において、放熱が必要と想定される斜線の範囲内で、締め代増加量が最大となるのは、図6中E点である。E点はフレーム7が−30℃、固定子4が70℃の時であり、締め代増加量は約0.34mmである。締め代増加量が最大となるということは、この時にフレーム7とリング部材6との間の面圧が最も増大するということである。
そこで、図7で、フレーム7が−30℃、固定子4が70℃の場合における、組み立て時のギャップ寸法とフレーム7に生じる円周応力との関係を実線で示す。図6のG点において締め代増加量が約0.34mmであったことから、組み立て時のギャップ寸法が0.34mmであればフレーム7に生じる円周応力は0であり、仮に組み立て時のギャップ寸法が0の場合には、ほぼ100MPaの円周応力がフレーム7に生じる。
フレーム7が例えばADC材(アルミニウムダイカスト材)であるとすると、円周応力に対する耐力は180MPaである。安全率2以上で使用する場合、つまりフレーム7にかかる円周応力を90MPa(図7中点線Fで示す)以下とする場合、組み立て時のギャップ寸法を0.03mm以上にすれば良い。
ここで、ギャップ寸法を0.03mmと設定し、フレーム7が−30℃、固定子4が70℃の時に、固定子4の外周面に生じる圧縮応力を計算すると約75MPaである。なお、この圧縮応力は、固定子4をリング部材6に焼き嵌めすることにより生じる面圧と、温度上昇時の各部材の熱膨張によりフレーム7から受ける面圧とによるものである。
比較例として、仮に、内径Φ173mm、外径Φ200mmの固定子を、内径200mm、外径216mmのフレームに直接焼き嵌めしている回転電機の場合、フレームが−30℃、固定子が70℃の時のフレームに生じる円周応力は約175MPa(図7中一点鎖線Gで示す)であり、本実施の形態1の構成でギャップ寸法を0.03mmとした場合のフレーム7にかかる円周応力の値は、比較例に比べて非常に小さいことがわかる。そしてこの比較例の場合における固定子外周面に生じる圧縮応力を計算すると約107MPaであり、固定子外周面の圧縮応力の値も、本実施の形態1の構成でギャップ寸法を0.03mmとした場合の方が、比較例の場合よりも低いことがわかる。なお、比較例の場合の圧縮応力は、固定子をフレームに焼き嵌めすることにより生じる面圧と、温度上昇時の各部材の熱膨張によりフレームから受ける面圧とによるものである。
このように、ギャップ8の寸法を0.03mm以上とすることで、温度上昇時でも、フレーム7に過剰な円周応力を生じさせることがなく、固定子4外周面の圧縮応力の増加を抑制できる。
【0016】
以上の検討結果から、本実施の形態1の構成において、ギャップ寸法を0.03mm以上0.12mm以下とすることで、放熱が必要と想定される全範囲でリング部材6の外周面がフレーム7の内周面に接触して効果的に冷却を行うことができるとともに、固定子4やリング部材6、フレーム7の熱膨張による固定子4外周面の圧縮応力の増加を抑制することができる。本検討例において、例えばギャップ寸法を0.03mmと設定する場合は、上記厚さ2mmのリング部材6の外周面を0.03mm研磨加工することにより、リング部材6とフレーム7との間に0.03mmのギャップ8を設けることができる。
なお、上記検討では、ギャップ寸法を設定するための条件として、例えば回転電機1の駆動時におけるフレーム7の想定温度を−30℃から40℃としたり、放熱が必要と想定される範囲をフレーム7と固定子4の温度差が60℃以上100℃以下と設定したが、これらの条件は、回転電機1の動作環境や使用目的により適宜変更すればよい。
【0017】
ここで、リング部材6の最適な厚みについて説明する。
本実施の形態1の構成は、固定子4がリング部材6に焼き嵌めされるため、固定子4の外周面には焼き嵌めによる面圧がかかり、リング部材6の厚みが大きくなるほど、固定子4の焼き嵌めによる面圧が増大する。上記検討例において、ギャップ8の寸法が0.03mm、フレーム7が−30℃、固定子4が70℃の時の固定子4外周面に生じる圧縮応力は約75MPaであったが、この圧縮応力は、固定子4をリング部材6に焼き嵌めすることによる面圧と、温度上昇時の各部材の熱膨張によりフレーム7から受ける面圧とによるものである。このため、焼き嵌めによる面圧が増大すると、固定子4外周面の圧縮応力も増大する。そこで、ギャップ寸法0.03mm、フレーム7が−30℃、固定子4が70℃の条件で、リング部材6の厚みを徐々に増大させ、固定子4の圧縮応力を求めたところ、固定子4の外径Φ200mmに対してリング部材6の厚みを5mm、すなわちリング部材6の厚みを固定子4の外径の2.5%とした場合、固定子4の外周面に生じる圧縮応力が比較例の場合とほぼ同じ値となった。これにより、リング部材6の最適な厚みは固定子4の外径の2.5%以下である。
【0018】
以上のように、本実施の形態1では、リング部材6とフレーム7とがギャップ8を介して配置され、温度変化によるリング部材6の熱膨張によりギャップ8の寸法は可変であり、この寸法変化によりリング部材6の外周面がフレーム7に接触して冷却される構成である。
このため、放熱が必要な時には、固定子4、リング部材6の冷却を効率的に行うことができ、加えて、固定子4やリング部材6やフレーム7の熱膨張による固定子4の外周面の圧縮応力の増加を抑制して固定子4の鉄損の増加を防止し、回転電機1の磁気特性の向上を図ることができる。また、フレーム7に過剰な円周応力を生じさせないため、回転電機1の耐久性も向上する。また、リング部材6の外周面とフレーム7が接触することにより、回転電機1の駆動時におけるリング部材6の回り止めの効果も得ることができる。
また、リング部材6とフレーム7とは、焼き嵌めや圧入で固定されるのではなく、ギャップ8を介した隙間嵌めで支持されるので、従来必要であった、焼き嵌めや圧入のための大型の設備が不要でとなり、設備の環境負荷を低減することができる。
【0019】
また、リング部材6のフレーム7への支持を、リング部材6に設けられたバネ構造のフック部61とフレーム7に設けられた凹部72により行うため、簡単な構成でリング部材6をフレーム7に均一なギャップ8を介して支持することができる。また、リング部材6とフレーム7との軸方向および径方向の位置決めも容易である。また、回転電機1の駆動時におけるフレーム7に対するリング部材6の回り止めも確実に行える。
さらに、フック部61がバネ構造を有することにより、リング部材6やフレーム7の加工精度による寸法のばらつきを吸収し、リング部材6とフレーム7の軸芯を容易に一致させることができる。回転電機1の駆動時には振動を吸収し騒音を低減することもできる。
【0020】
なお、本実施の形態1ではフレーム7に凹部72を設けてリング部材6のフック部61を凹部72に嵌めて係止する構成としたが、フレーム7に凹部72を設けないで、リング部材6のフック部61のバネ反力のみによってリング部材6をフレーム7に支持する構造としてもよい。また、リング部材6のフレーム7への支持構造は、フック部61によるものに限られず、リング部材の外周面が熱膨張によりフレームに接触するようなギャップを介してリング部材とフレームとを支持することができる支持構造であればどのようなものでもよい。例えば、図8に示すように、リング部材6Aの外周面上端から径方向外側に突出する支持部としてのフランジ部61Aを設け、このようなリング部材6Aをフレーム7Aに挿入し、フランジ部61Aをフレーム7Aにネジ止めしたり、接着することにより、リング部材6Aをフレーム7Aにギャップ8Aを介して支持する構造としてもよい。
【0021】
また、本実施の形態1のように、フレーム7に凹部72を設けてリング部材6のフック部61を凹部72に嵌めて係止する構成とした場合、リング部材6の押圧力により凹部72に対し局所的に応力が生じることが考えられる。このため、フレーム7の内周側に鉄を鋳込むなどすることで、フレーム7の強度を高くして、応力によりフレーム7に永久歪が生じることを防止することができる。
【0022】
また、本実施の形態1では、フレーム7の内部に冷却媒体を流すための流路71が設けられているが、流路を設ける場所はこれに限られるものではない。例えば、冷却媒体用の流路がフレームの外周面に設けられる構成であってもよく、フレームの近傍に流路を設けることでフレームを冷却することができればよい。また、フレームに冷却媒体用の流路が設けられていれば、非常に効率よく固定子やリング部材を冷却することができるが、フレームに冷却媒体用の流路が設けられていない場合であってもよく、フレームは外気と接触しているため、フレームとリング部材が接触することで、固定子やリング部材の冷却を行うことができる。
【0023】
また、本実施の形態1では、固定子4は分割構造としたが、必ずしも分割構造の固定子を使用する必要はない。例えば分割構造でない一体型の環状鉄心から形成される固定子をリング部材に焼き嵌め後、リング部材とフレームとを微少なギャップを介して支持する構成としても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
なお、仮に、分割構造ではない一体型の環状鉄心から形成される固定子を使用する場合には、リング部材を設けない構成とすることもできる。リング部材を設けずに固定子を直接フレームにギャップを介して支持する構造とし、温度変化時に固定子が膨張して固定子の外周面がフレームと接触するようにすれば、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0024】
実施の形態2.
図9は、この発明の実施の形態2における回転電機1Bのリング部材6Bの構成を示す斜視図である。リング部材6Bは上記実施の形態1のリング部材6の構成に加えてさらに支持部としての第2フック部63を備えている。第2フック部63は、フック部61に比べて切起こす向きが90度回転しており、本実施の形態2では、第2フック部63はリング部材6Bの軸方向上端に設けられている。リング部材6Bを支持するフレーム7Bには、第2フック部63に対応する位置に、第2フック部63を係止するための第2凹部が設けられている。それ以外の構成については上記実施の形態1と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0025】
以上のように、本実施の形態2では、切起こし方向の異なる2種類のフック部61と第2フック部63が、フレーム7Bの凹部72と第2凹部にそれぞれ嵌り係止されるため、上記実施の形態1の効果に加え、さらに回転電機1Bの駆動時におけるフレーム7Bに対するリング部材6Bの回り止めを強固に行うことができる。
【0026】
実施の形態3.
図10は、この発明の実施の形態3における回転電機1Cのリング部材6Cの構成を示す斜視図である。本実施の形態3では、リング部材6Cをトレランスリングで形成している。トレランスリングはリング全体がバネ性を有する構造であり、ここではリング部材6Cの外周面に軸方向に伸びる複数の突起部64が設けられたトレランスリングを採用している。フレーム7Cは、上記実施の形態1のリング部材6のような凹部72は有しておらず、単純な薄肉筒状である。複数の突起部64はリング部材6Cをフレーム7Cに支持する支持部としての役割をなし、支持部としての突起部64がフレーム7Cの内周面と接して、リング部材6Cがフレーム7Cにギャップを介して支持される。それ以外の構成については上記実施の形態1と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
以上のように、本実施の形態3では、リング部材6Cをトレランスリングとしているため、支持部としての突起部64を含むリング全体がバネ性を有する構造である。従って、上記実施の形態1と同様の効果に加え、リング全体のバネ性により、フレーム7Cの加工精度による寸法のばらつきを吸収し、リング部材6とフレーム7Cの軸芯を容易に一致させることができる。このため組み立ても容易である。また、回転電機1Cの駆動時には振動を吸収し騒音を低減することができる。
【0028】
実施の形態4.
図11は、この発明の実施の形態4における回転電機1Dのリング部材6Dの構成を示す斜視図であり、図12は、回転電機1Dの構成を模式的に示す部分断面図である。図12は、回転電機1Dの回転軸2と直交する面で切断した断面であり、固定子4を構成する複数の固定子片のうち、一の固定子片40の近傍を拡大している。
図に示すように、本実施の形態4のリング部材6Dは、上記実施の形態1のリング部材6と支持部の構成が異なっている。リング部材6Dの支持部65は、リング部材6Dの外周面上に設けられた軸方向に延びる断面逆台形状の凸部の内周面側にあり溝66が形成された形状である。例えば、薄肉の鉄板を断面略台形状となるように折り曲げ加工した後、円筒曲げをして、溶接部62を溶接することで、支持部65を有するリング部材6Dを形成することができる。本実施の形態4ではこのような支持部65が3本形成されている。フレーム7Dの内周面は、上記実施の形態1のような凹部は設けられておらず、リング部材6Dの支持部65の端面がフレーム7Dの内周面と接することで、リング部材6Dがフレーム7Dにギャップ8Dを介して支持される。なお、支持部65の折り曲げ角度や、リング部材6Dの厚みを調整し、支持部65に適度なバネ性を持たせた構造としてもよい。これ以外の構成については上記実施の形態1と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
以上のように、本実施の形態4では、リング部材6D外周面に設けられた支持部65は、軸方向に延びる断面逆台形状の凸部の内周面側にあり溝66が形成された形状であるため、上記実施の形態1の効果に加え、支持部65の端面とフレーム7Dとの接触による固定子片40へかかる圧縮応力が、直接固定子片40に伝わることを防止し、圧縮応力を固定子片40の外周面全体に分散することができる。このため、局所的な圧縮応力の増加による回転電機1Dの磁気特性の低下を防止することができる。
なお、支持部65の内周面側のあり溝66に弾性部材を設置してもよく、弾性部材により支持部65の強度を高め、リング部材6Dのフレーム7Dへの支持が確実となる。
図12では、支持部65の構成をわかりやすくするため、支持部65を誇張して描いているが、ギャップ8Dは上記実施の形態1で述べたような微少なギャップであり、当然、リング部材6Dの熱膨張時にはリング部材6Dの外周面がフレーム7の内周面に接触し、フレーム7によりリング部材6Dの冷却が可能である。
なお、固定子片40の外周面に設けられた切り欠き41は、複数の固定子片40を環状に配置する際に一般的によく使用される切り欠き41である。本実施の形態4のように、リング部材6Dの支持部65を切り欠き41に対応する位置に設けることとすれば、支持部65の端面とフレーム7との接触による固定子片40への圧縮応力をより確実に分散することができる。
【0030】
実施の形態5.
図13は、この発明の実施の形態5における回転電機1Eの構成を模式的に示す部分断面図であり、回転電機1Eの回転軸2と直交する面で切断した断面である。固定子4を構成する複数の固定子片のうち、一の固定子片40の近傍を拡大している。
本実施の形態5は上記実施の形態4の構造の変形例であり、リング部材6Eの形状は上記実施の形態4のリング部材6Dの形状と同じである。本実施の形態5では、フレーム7Eの内周面にリング部材6Eの支持部65と嵌合するあり溝73を設け、支持部65をあり溝73に嵌合させることで、リング部材6Eがフレーム7Eにギャップ8Eを介して支持される。
【0031】
以上のように、本実施の形態5では、フレーム7Eにあり溝73を設け、リング部材6Eの支持部65とあり溝73とが嵌合する。このため、上記実施の形態4の効果に加え、フレーム7Eに対するリング部材6Eの回り止めを強固に行うことができる。
なお、上記実施の形態5の変形例の回転電機1Fとして、例えば図14のように、ギャップ8Fを、フレーム7Fのあり溝73Fとリング部材6Fの支持部65との間にも設ける構成としてもよい。この場合、リング部材6Fのフレーム7Fへの支持は、例えばリング部材6Fの外周面に上記実施の形態1で示したフック部を設けることにより行うことができる。
【0032】
なお、この発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1,1B〜1F 回転電機、2 回転軸、3 回転子、4 固定子、5 コイル、
6,6A〜6F リング部材、7,7A〜7F フレーム、
8,8A,8D〜8F ギャップ、61 支持部としてのフック部、
61A 支持部としてのフランジ部、63 支持部としての第2フック部、
64 支持部としての突起部、65 支持部、71 流路、72 凹部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転電機の構造に関し、固定子を効率的に冷却し、かつ磁気特性の高い回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の交流モータは、ステータコイルが巻回された複数の独立したステータ片をリング状に配列して構成されたステータと、ステータが開口部に圧入固定されるステータ保持リングとを備え、ステータ保持リングとモータハウジングがネジ止め固定されている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来の回転電動機は、円筒状のアルミ製のハウジングと、ハウジングの円筒内周面に固定配置された円筒状の鉄製スリーブと、鉄製スリーブの円筒内周面に密着するように固定配置された、磁性体からなる複数のステータ片を周方向に連続して配置してなる環状のステータを備え、鉄製スリーブはハウジングに対して焼き嵌めにより固定されている(例えば、特許文献2参照)。
また、従来の外被冷却形回転電機は、ステータフレームに冷却媒体通路を形成しており、ステータフレームの内径部はステータコアを保持する(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−025187号公報
【特許文献2】特開2003−284269号公報
【特許文献3】特開平06−269143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の交流モータは、ステータ保持リングとモータハウジングがネジ止め固定されており、ステータ保持リングの外周面とモータハウジングとの間には厚い空気層が介在している。このため、交流モータの駆動により温度が上昇したステータ、ステータ保持リングの放熱がされにくく、冷却が十分になされないという問題があった。
また、上記従来の回転電動機は、鉄製スリーブがハウジングに対して焼き嵌めにより固定されており、鉄製スリーブの外周面とハウジングの内周面が密着している。このため、回転電動機の駆動時の温度上昇により鉄製スリーブが熱膨張し、ハウジングと鉄製スリーブ間に圧縮の面圧が増加する。このため、鉄製スリーブの内周面に密着するように配置されたステータに圧縮応力が生じ、ステータの鉄損が増大して磁気特性が低下するという問題があった。
また、上記従来の外被冷却形回転電機は、ステータフレームに冷却媒体通路を形成している。このため、回転電機の駆動時には、ステータは温度上昇により熱膨張するのに対し、ステータフレームは冷却媒体により冷却されるため、ステータフレームとステータ間の面圧の増加が顕著であり、ステータの鉄損の増大による磁気特性の低下という問題があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、固定子を効率よく冷却し、かつ磁気特性の高い回転電機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る回転電機は、回転軸を有し回転自在に配置される回転子と、上記回転子を囲むように配設されコイルが巻回された固定子と、上記固定子の外周側に上記固定子とギャップを介して配置されるフレームとを備えている。上記ギャップ寸法は温度変化による上記固定子の熱膨張により可変であり、上記固定子の熱膨張時に上記固定子の外周面が上記フレームに接触して冷却される。
【発明の効果】
【0006】
この発明に係る回転電機は、回転軸を有し回転自在に配置される回転子と、上記回転子を囲むように配設されコイルが巻回された固定子と、上記固定子の外周側に上記固定子とギャップを介して配置されるフレームとを備え、上記ギャップ寸法は温度変化による上記固定子の熱膨張により可変であり、上記固定子の熱膨張時に上記固定子の外周面が上記フレームに接触して冷却される。このため、回転電機の駆動時の温度変化による固定子の熱膨張時に固定子を効率よく冷却でき、かつ、固定子とフレーム間の面圧の増加を抑制して固定子の鉄損の増大を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の実施の形態1における回転電機の構成を示す断面図である。
【図2】図1の部分Aを拡大して示す部分拡大図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるリング部材の構成を示す斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるフレームの構成を示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態1におけるフレームと固定子との温度変化に対する直径変化量を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1におけるフレームと固定子との温度差と、締め代増加量との関係を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1における組み立て時のギャップ寸法とフレームに生じる円周応力との関係を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1におけるフレームとリング部材の支持構造の別例を模式的に示す斜視図である。
【図9】この発明の実施の形態2におけるリング部材の構成を示す斜視図である。
【図10】この発明の実施の形態3におけるリング部材の構成を示す斜視図である。
【図11】この発明の実施の形態4におけるリング部材の構成を示す斜視図である。
【図12】この発明の実施の形態4における回転電機の構成を模式的に示す部分断面図である。
【図13】この発明の実施の形態5における回転電機の構成を模式的に示す部分断面図である。
【図14】この発明の実施の形態5における変形例の回転電機の構成を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における回転電機の構成を示す断面図である。
図1に示すように、回転電機1は、回転軸2に取り付けられた回転子3と、回転子3の外周を囲むように配置される環状の固定子4を備えている。固定子4は材質を鉄とし、コイル5が巻回された複数の固定子片を環状に配列して構成された分割構造の固定子である。分割構造の固定子4は、外周側に固定子4の材質と同じ材質である鉄で形成された筒状で薄肉のリング部材6を備えており、リング部材6に対し固定子4が焼き嵌めされてリング部材6と固定子4とが同軸固定されている。リング部材6の外周側には円筒状に形成されたアルミ製のフレーム7が配置されている。フレーム7の内径はリング部材6の外径よりも大きい寸法に設定されてフレーム7にリング部材6が隙間嵌めされており、フレーム7の内周面とリング部材6の外周面との間には微少なギャップ8(図2参照)が設けられている。フレーム7の内部には冷却媒体を流すための流路71が設けられ、回転電機1の駆動によりコイル5で発生する熱は、固定子4、リング部材6、フレーム7を介して、流路71内を流通する冷却媒体により冷却される。
【0009】
図2〜図4を参照し、固定子4、リング部材6、フレーム7の構成を詳細に説明する。図2は、図1の点線で囲んだ部分Aを拡大して示す拡大図、図3はリング部材6の構成を示す斜視図、図4はフレーム7の構成を示す斜視図である。
上述の通り、固定子4は外周側にリング部材6を備え、固定子4は薄肉のリング部材6に焼き嵌めされて固定され、リング部材6の内周面と固定子4の外周面は密着している。なお、リング部材6は薄肉であるため熱容量が小さく、例えば誘導加熱などによって加熱することができ、加熱効率が高い。このため固定子4のリング部材6への焼き嵌めは、短時間で容易に行え、焼き嵌めをするための大型設備も不要である。焼き嵌めにより固定される固定子4とリング部材6は、共に材質を鉄としているため、熱膨張係数が一致する。このため、回転電機1の駆動時の温度変化に対し、固定子4とリング部材6とは同じように膨張、収縮し、固定子4とリング部材6との接合面に緩みが生じるようなことはない。なお、本実施の形態1ではリング部材6の材質は固定子4の材質と同じ鉄としているが、熱膨張係数が実質的に一致する材質とすればよく、これにより回転電機1の駆動時の温度変化に対する固定子4、リング部材6の膨張収縮により、両者の接合面に緩みが生じることを防止できる。また、本実施の形態1ではリング部材6と固定子4は焼き嵌めにより行われているが、圧入等の方法で行ってもよい。
【0010】
リング部材6は、外周面から径方向外側に突出する支持部としてのフック部61を備え、フック部61は、軸方向に3個、径方向に4個、整列して配置されている。フック部61は、リング部材6の一部に切り込みを入れ、切り込み部分を径方向外側に屈曲させた、切起こしにより形成されている。詳細には、フック部61は、四角形の4辺のうち軸方向上側の辺を除く3辺に設けられた切り込み部分を起こして形成されている。このようにして設けられたフック部61はバネ性を有している。リング部材6は、例えば、薄肉の鉄板にフック部61を形成した後、鉄板を円筒曲げし、溶接部62を溶接することで形成することができる。なお、フック部61の配置位置や個数は上記例に限られず、必要に応じて適宜設定すればよい。また、フック部の形状も、必要に応じて変更すればよく、上述のように、鉄板にフック部61を形成した後に円筒曲げをしてリング部材6を形成する方法であれば、リング部材6に複雑な形状のフック部を容易に設けることができる。
【0011】
フレーム7の内周面には、リング部材6のフック部61と対応する位置に凹部72が設けられている。フレーム7にリング部材6が挿入されることでフック部61が凹部72に嵌まり係止され、リング部材6とフレーム7との軸方向および径方向の位置決めが同時に行われる。フック部61のバネ性により、フック部61の端部が凹部72を径方向に押圧し、リング部材6がフレーム7に均一なギャップ8を介した状態で支持される。また、フック部61のバネ性により、リング部材6やフレーム7の寸法のばらつきを吸収し、リング部材6とフレーム7の軸芯を容易に一致させることができる。回転電機1の駆動時には振動を吸収し騒音を低減することができる。
【0012】
上述の通り、回転電機1を構成する固定子4や、リング部材6、フレーム7等の各部材の組み付け時には、フレーム7とリング部材6とがギャップ8を介して支持されているが、回転電機1の駆動時には、温度変化による固定子4やリング部材6やフレーム7の熱膨張によりギャップ8の寸法は変化するものである。ギャップ8の寸法は、固定子4等の各部材の温度が放熱が必要とされる温度範囲に達した時、リング部材6の外周面がフレーム7の内周面に密着しリング部材6の冷却が可能となるような寸法に設定されている。ギャップ8の寸法の設定について以下で検討する。
【0013】
ここでは、ギャップ8の寸法を、仮に、回転電機1の組み付け時にリング部材6外周面とフレーム7の内周面とが接触している場合、すなわちギャップ寸法0で支持されていると想定した場合の、温度変化によるリング部材6とフレーム7との締め代増加量に基づいて考える。ここで、リング部材6とフレーム7との締め代とは、リング部材6の外径とフレーム7の内径との差を指す。リング部材6とフレーム7とがギャップ寸法0で支持されている時に締め代0であり、温度変化によりリング部材6とフレーム7が熱膨張することで締め代が増加する。以下の検討例でこの締め代の増加量を求める。
検討例として、固定子4の寸法が内径Φ173mm、外径Φ200mm、フレーム7の寸法が内径Φ204mm、外径Φ216mm、リング部材6が厚み2mmとした回転電機1を採用し、締め代増加量を求める。なお、フレーム7の材料であるアルミの線膨張率は2.1×10−5し、リング部材6や固定子4の材料である鉄の線膨張率は1.3×10−5とする。また、回転電機1の組み付け時の温度を20℃とし、回転電機1の駆動時におけるフレーム7の想定温度を−30℃から40℃までとする。
図5は、フレーム7と固定子4との温度変化に対する直径変化量を示す図である。なお、固定子4とリング部材6とは同じ材料である鉄により形成され、かつ焼き嵌めにより一体に固定されているため、固定子4の温度とリング部材6の温度は同じになるものとし、固定子4の直径変化量はリング部材6の厚みも含む直径変化量とする。回転電機1の組み付け時の温度である20℃を基準とし、温度20℃でフレーム7、固定子4ともに直径変化量が0である。例えばフレーム7が40℃、固定子4が100℃の場合の両者の直径変化量の差Aは約0.12mm、フレーム7が−30℃、固定子4が30℃の場合の両者の直径変化量の差Bは約0.24mmとなる。
【0014】
上述の通り、組み付け時にリング部材6とフレーム7とがギャップ寸法0で支持されていると想定した場合、図5で説明したフレーム7と固定子4との直径変化量の差が、温度変化時のリング部材6とフレーム7との締め代増加量となる。図6に、フレーム7が−30℃の場合(図中上側実線)と40℃の場合(図中下側実線)における、フレーム7と固定子4との温度差と、締め代増加量との関係を示す。例えば、図6中のC点は、フレーム7が40℃、固定子4が100℃の時、締め代増加量が約0.12mmであることを示している。また、図6中D点はフレーム7が−30℃、固定子4が30℃の時、締め代増加量が約0.24mmであることを示している。
ここで、回転電機1の内部部品の耐熱性等を考慮し、放熱が必要と想定される範囲をフレーム7と固定子4の温度差が60℃以上とし、上限は温度差100℃とする。その範囲を図6中斜線で示す。斜線で示す範囲内で、締め代増加量が最小となるのは、図6中のC点であり、上述の通り、フレーム7が40℃、固定子4が100℃、締め代増加量は約0.12mmである。
この検討例の検討結果から、本実施の形態1において、放熱が必要とされる温度範囲において、フレーム7の内周面にリング部材6の外周面が密着するようなギャップ8の寸法を最大値は0.12mmと設定することができる。すなわち、ギャップ8の寸法を0.12mm以下とすれば、放熱が必要と想定される全範囲でリング部材6の外周面が冷却媒体用の流路71を備えたフレーム7に接触して、固定子4およびリング部材6の冷却が効果的に行われる。
【0015】
一方、図6において、放熱が必要と想定される斜線の範囲内で、締め代増加量が最大となるのは、図6中E点である。E点はフレーム7が−30℃、固定子4が70℃の時であり、締め代増加量は約0.34mmである。締め代増加量が最大となるということは、この時にフレーム7とリング部材6との間の面圧が最も増大するということである。
そこで、図7で、フレーム7が−30℃、固定子4が70℃の場合における、組み立て時のギャップ寸法とフレーム7に生じる円周応力との関係を実線で示す。図6のG点において締め代増加量が約0.34mmであったことから、組み立て時のギャップ寸法が0.34mmであればフレーム7に生じる円周応力は0であり、仮に組み立て時のギャップ寸法が0の場合には、ほぼ100MPaの円周応力がフレーム7に生じる。
フレーム7が例えばADC材(アルミニウムダイカスト材)であるとすると、円周応力に対する耐力は180MPaである。安全率2以上で使用する場合、つまりフレーム7にかかる円周応力を90MPa(図7中点線Fで示す)以下とする場合、組み立て時のギャップ寸法を0.03mm以上にすれば良い。
ここで、ギャップ寸法を0.03mmと設定し、フレーム7が−30℃、固定子4が70℃の時に、固定子4の外周面に生じる圧縮応力を計算すると約75MPaである。なお、この圧縮応力は、固定子4をリング部材6に焼き嵌めすることにより生じる面圧と、温度上昇時の各部材の熱膨張によりフレーム7から受ける面圧とによるものである。
比較例として、仮に、内径Φ173mm、外径Φ200mmの固定子を、内径200mm、外径216mmのフレームに直接焼き嵌めしている回転電機の場合、フレームが−30℃、固定子が70℃の時のフレームに生じる円周応力は約175MPa(図7中一点鎖線Gで示す)であり、本実施の形態1の構成でギャップ寸法を0.03mmとした場合のフレーム7にかかる円周応力の値は、比較例に比べて非常に小さいことがわかる。そしてこの比較例の場合における固定子外周面に生じる圧縮応力を計算すると約107MPaであり、固定子外周面の圧縮応力の値も、本実施の形態1の構成でギャップ寸法を0.03mmとした場合の方が、比較例の場合よりも低いことがわかる。なお、比較例の場合の圧縮応力は、固定子をフレームに焼き嵌めすることにより生じる面圧と、温度上昇時の各部材の熱膨張によりフレームから受ける面圧とによるものである。
このように、ギャップ8の寸法を0.03mm以上とすることで、温度上昇時でも、フレーム7に過剰な円周応力を生じさせることがなく、固定子4外周面の圧縮応力の増加を抑制できる。
【0016】
以上の検討結果から、本実施の形態1の構成において、ギャップ寸法を0.03mm以上0.12mm以下とすることで、放熱が必要と想定される全範囲でリング部材6の外周面がフレーム7の内周面に接触して効果的に冷却を行うことができるとともに、固定子4やリング部材6、フレーム7の熱膨張による固定子4外周面の圧縮応力の増加を抑制することができる。本検討例において、例えばギャップ寸法を0.03mmと設定する場合は、上記厚さ2mmのリング部材6の外周面を0.03mm研磨加工することにより、リング部材6とフレーム7との間に0.03mmのギャップ8を設けることができる。
なお、上記検討では、ギャップ寸法を設定するための条件として、例えば回転電機1の駆動時におけるフレーム7の想定温度を−30℃から40℃としたり、放熱が必要と想定される範囲をフレーム7と固定子4の温度差が60℃以上100℃以下と設定したが、これらの条件は、回転電機1の動作環境や使用目的により適宜変更すればよい。
【0017】
ここで、リング部材6の最適な厚みについて説明する。
本実施の形態1の構成は、固定子4がリング部材6に焼き嵌めされるため、固定子4の外周面には焼き嵌めによる面圧がかかり、リング部材6の厚みが大きくなるほど、固定子4の焼き嵌めによる面圧が増大する。上記検討例において、ギャップ8の寸法が0.03mm、フレーム7が−30℃、固定子4が70℃の時の固定子4外周面に生じる圧縮応力は約75MPaであったが、この圧縮応力は、固定子4をリング部材6に焼き嵌めすることによる面圧と、温度上昇時の各部材の熱膨張によりフレーム7から受ける面圧とによるものである。このため、焼き嵌めによる面圧が増大すると、固定子4外周面の圧縮応力も増大する。そこで、ギャップ寸法0.03mm、フレーム7が−30℃、固定子4が70℃の条件で、リング部材6の厚みを徐々に増大させ、固定子4の圧縮応力を求めたところ、固定子4の外径Φ200mmに対してリング部材6の厚みを5mm、すなわちリング部材6の厚みを固定子4の外径の2.5%とした場合、固定子4の外周面に生じる圧縮応力が比較例の場合とほぼ同じ値となった。これにより、リング部材6の最適な厚みは固定子4の外径の2.5%以下である。
【0018】
以上のように、本実施の形態1では、リング部材6とフレーム7とがギャップ8を介して配置され、温度変化によるリング部材6の熱膨張によりギャップ8の寸法は可変であり、この寸法変化によりリング部材6の外周面がフレーム7に接触して冷却される構成である。
このため、放熱が必要な時には、固定子4、リング部材6の冷却を効率的に行うことができ、加えて、固定子4やリング部材6やフレーム7の熱膨張による固定子4の外周面の圧縮応力の増加を抑制して固定子4の鉄損の増加を防止し、回転電機1の磁気特性の向上を図ることができる。また、フレーム7に過剰な円周応力を生じさせないため、回転電機1の耐久性も向上する。また、リング部材6の外周面とフレーム7が接触することにより、回転電機1の駆動時におけるリング部材6の回り止めの効果も得ることができる。
また、リング部材6とフレーム7とは、焼き嵌めや圧入で固定されるのではなく、ギャップ8を介した隙間嵌めで支持されるので、従来必要であった、焼き嵌めや圧入のための大型の設備が不要でとなり、設備の環境負荷を低減することができる。
【0019】
また、リング部材6のフレーム7への支持を、リング部材6に設けられたバネ構造のフック部61とフレーム7に設けられた凹部72により行うため、簡単な構成でリング部材6をフレーム7に均一なギャップ8を介して支持することができる。また、リング部材6とフレーム7との軸方向および径方向の位置決めも容易である。また、回転電機1の駆動時におけるフレーム7に対するリング部材6の回り止めも確実に行える。
さらに、フック部61がバネ構造を有することにより、リング部材6やフレーム7の加工精度による寸法のばらつきを吸収し、リング部材6とフレーム7の軸芯を容易に一致させることができる。回転電機1の駆動時には振動を吸収し騒音を低減することもできる。
【0020】
なお、本実施の形態1ではフレーム7に凹部72を設けてリング部材6のフック部61を凹部72に嵌めて係止する構成としたが、フレーム7に凹部72を設けないで、リング部材6のフック部61のバネ反力のみによってリング部材6をフレーム7に支持する構造としてもよい。また、リング部材6のフレーム7への支持構造は、フック部61によるものに限られず、リング部材の外周面が熱膨張によりフレームに接触するようなギャップを介してリング部材とフレームとを支持することができる支持構造であればどのようなものでもよい。例えば、図8に示すように、リング部材6Aの外周面上端から径方向外側に突出する支持部としてのフランジ部61Aを設け、このようなリング部材6Aをフレーム7Aに挿入し、フランジ部61Aをフレーム7Aにネジ止めしたり、接着することにより、リング部材6Aをフレーム7Aにギャップ8Aを介して支持する構造としてもよい。
【0021】
また、本実施の形態1のように、フレーム7に凹部72を設けてリング部材6のフック部61を凹部72に嵌めて係止する構成とした場合、リング部材6の押圧力により凹部72に対し局所的に応力が生じることが考えられる。このため、フレーム7の内周側に鉄を鋳込むなどすることで、フレーム7の強度を高くして、応力によりフレーム7に永久歪が生じることを防止することができる。
【0022】
また、本実施の形態1では、フレーム7の内部に冷却媒体を流すための流路71が設けられているが、流路を設ける場所はこれに限られるものではない。例えば、冷却媒体用の流路がフレームの外周面に設けられる構成であってもよく、フレームの近傍に流路を設けることでフレームを冷却することができればよい。また、フレームに冷却媒体用の流路が設けられていれば、非常に効率よく固定子やリング部材を冷却することができるが、フレームに冷却媒体用の流路が設けられていない場合であってもよく、フレームは外気と接触しているため、フレームとリング部材が接触することで、固定子やリング部材の冷却を行うことができる。
【0023】
また、本実施の形態1では、固定子4は分割構造としたが、必ずしも分割構造の固定子を使用する必要はない。例えば分割構造でない一体型の環状鉄心から形成される固定子をリング部材に焼き嵌め後、リング部材とフレームとを微少なギャップを介して支持する構成としても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
なお、仮に、分割構造ではない一体型の環状鉄心から形成される固定子を使用する場合には、リング部材を設けない構成とすることもできる。リング部材を設けずに固定子を直接フレームにギャップを介して支持する構造とし、温度変化時に固定子が膨張して固定子の外周面がフレームと接触するようにすれば、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0024】
実施の形態2.
図9は、この発明の実施の形態2における回転電機1Bのリング部材6Bの構成を示す斜視図である。リング部材6Bは上記実施の形態1のリング部材6の構成に加えてさらに支持部としての第2フック部63を備えている。第2フック部63は、フック部61に比べて切起こす向きが90度回転しており、本実施の形態2では、第2フック部63はリング部材6Bの軸方向上端に設けられている。リング部材6Bを支持するフレーム7Bには、第2フック部63に対応する位置に、第2フック部63を係止するための第2凹部が設けられている。それ以外の構成については上記実施の形態1と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0025】
以上のように、本実施の形態2では、切起こし方向の異なる2種類のフック部61と第2フック部63が、フレーム7Bの凹部72と第2凹部にそれぞれ嵌り係止されるため、上記実施の形態1の効果に加え、さらに回転電機1Bの駆動時におけるフレーム7Bに対するリング部材6Bの回り止めを強固に行うことができる。
【0026】
実施の形態3.
図10は、この発明の実施の形態3における回転電機1Cのリング部材6Cの構成を示す斜視図である。本実施の形態3では、リング部材6Cをトレランスリングで形成している。トレランスリングはリング全体がバネ性を有する構造であり、ここではリング部材6Cの外周面に軸方向に伸びる複数の突起部64が設けられたトレランスリングを採用している。フレーム7Cは、上記実施の形態1のリング部材6のような凹部72は有しておらず、単純な薄肉筒状である。複数の突起部64はリング部材6Cをフレーム7Cに支持する支持部としての役割をなし、支持部としての突起部64がフレーム7Cの内周面と接して、リング部材6Cがフレーム7Cにギャップを介して支持される。それ以外の構成については上記実施の形態1と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
以上のように、本実施の形態3では、リング部材6Cをトレランスリングとしているため、支持部としての突起部64を含むリング全体がバネ性を有する構造である。従って、上記実施の形態1と同様の効果に加え、リング全体のバネ性により、フレーム7Cの加工精度による寸法のばらつきを吸収し、リング部材6とフレーム7Cの軸芯を容易に一致させることができる。このため組み立ても容易である。また、回転電機1Cの駆動時には振動を吸収し騒音を低減することができる。
【0028】
実施の形態4.
図11は、この発明の実施の形態4における回転電機1Dのリング部材6Dの構成を示す斜視図であり、図12は、回転電機1Dの構成を模式的に示す部分断面図である。図12は、回転電機1Dの回転軸2と直交する面で切断した断面であり、固定子4を構成する複数の固定子片のうち、一の固定子片40の近傍を拡大している。
図に示すように、本実施の形態4のリング部材6Dは、上記実施の形態1のリング部材6と支持部の構成が異なっている。リング部材6Dの支持部65は、リング部材6Dの外周面上に設けられた軸方向に延びる断面逆台形状の凸部の内周面側にあり溝66が形成された形状である。例えば、薄肉の鉄板を断面略台形状となるように折り曲げ加工した後、円筒曲げをして、溶接部62を溶接することで、支持部65を有するリング部材6Dを形成することができる。本実施の形態4ではこのような支持部65が3本形成されている。フレーム7Dの内周面は、上記実施の形態1のような凹部は設けられておらず、リング部材6Dの支持部65の端面がフレーム7Dの内周面と接することで、リング部材6Dがフレーム7Dにギャップ8Dを介して支持される。なお、支持部65の折り曲げ角度や、リング部材6Dの厚みを調整し、支持部65に適度なバネ性を持たせた構造としてもよい。これ以外の構成については上記実施の形態1と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
以上のように、本実施の形態4では、リング部材6D外周面に設けられた支持部65は、軸方向に延びる断面逆台形状の凸部の内周面側にあり溝66が形成された形状であるため、上記実施の形態1の効果に加え、支持部65の端面とフレーム7Dとの接触による固定子片40へかかる圧縮応力が、直接固定子片40に伝わることを防止し、圧縮応力を固定子片40の外周面全体に分散することができる。このため、局所的な圧縮応力の増加による回転電機1Dの磁気特性の低下を防止することができる。
なお、支持部65の内周面側のあり溝66に弾性部材を設置してもよく、弾性部材により支持部65の強度を高め、リング部材6Dのフレーム7Dへの支持が確実となる。
図12では、支持部65の構成をわかりやすくするため、支持部65を誇張して描いているが、ギャップ8Dは上記実施の形態1で述べたような微少なギャップであり、当然、リング部材6Dの熱膨張時にはリング部材6Dの外周面がフレーム7の内周面に接触し、フレーム7によりリング部材6Dの冷却が可能である。
なお、固定子片40の外周面に設けられた切り欠き41は、複数の固定子片40を環状に配置する際に一般的によく使用される切り欠き41である。本実施の形態4のように、リング部材6Dの支持部65を切り欠き41に対応する位置に設けることとすれば、支持部65の端面とフレーム7との接触による固定子片40への圧縮応力をより確実に分散することができる。
【0030】
実施の形態5.
図13は、この発明の実施の形態5における回転電機1Eの構成を模式的に示す部分断面図であり、回転電機1Eの回転軸2と直交する面で切断した断面である。固定子4を構成する複数の固定子片のうち、一の固定子片40の近傍を拡大している。
本実施の形態5は上記実施の形態4の構造の変形例であり、リング部材6Eの形状は上記実施の形態4のリング部材6Dの形状と同じである。本実施の形態5では、フレーム7Eの内周面にリング部材6Eの支持部65と嵌合するあり溝73を設け、支持部65をあり溝73に嵌合させることで、リング部材6Eがフレーム7Eにギャップ8Eを介して支持される。
【0031】
以上のように、本実施の形態5では、フレーム7Eにあり溝73を設け、リング部材6Eの支持部65とあり溝73とが嵌合する。このため、上記実施の形態4の効果に加え、フレーム7Eに対するリング部材6Eの回り止めを強固に行うことができる。
なお、上記実施の形態5の変形例の回転電機1Fとして、例えば図14のように、ギャップ8Fを、フレーム7Fのあり溝73Fとリング部材6Fの支持部65との間にも設ける構成としてもよい。この場合、リング部材6Fのフレーム7Fへの支持は、例えばリング部材6Fの外周面に上記実施の形態1で示したフック部を設けることにより行うことができる。
【0032】
なお、この発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1,1B〜1F 回転電機、2 回転軸、3 回転子、4 固定子、5 コイル、
6,6A〜6F リング部材、7,7A〜7F フレーム、
8,8A,8D〜8F ギャップ、61 支持部としてのフック部、
61A 支持部としてのフランジ部、63 支持部としての第2フック部、
64 支持部としての突起部、65 支持部、71 流路、72 凹部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有し回転自在に配置される回転子と、
上記回転子を囲むように配設されコイルが巻回された固定子と、
上記固定子の外周側に上記固定子とギャップを介して配置されるフレームとを備え、
上記ギャップ寸法は温度変化による上記固定子の熱膨張により可変であり、上記固定子の熱膨張時に上記固定子の外周面が上記フレームに接触して冷却されることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
上記固定子は外周側に上記固定子が固定される筒状のリング部材を備え、上記リング部材と上記フレームとが上記ギャップを介して配置され、
上記ギャップ寸法は温度変化による上記固定子と上記リング部材との熱膨張により可変であり、上記固定子と上記リング部材との熱膨張時に上記リング部材の外周面が上記フレームに接触して冷却されることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
上記リング部材は外周面から突出する支持部を備え、上記支持部が上記フレームに接することにより上記リング部材が上記フレームに上記ギャップを介して支持されることを特徴とする請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
上記支持部は上記フレームを径方向に押圧するバネ構造を有することを特徴とする請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
上記支持部は上記リング部材の一部を切起こして設けられたフック部であることを特徴とする請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
上記フレームの内周面には上記支持部を係止するための凹部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【請求項7】
上記リング部材はトレランスリングであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の回転電機。
【請求項8】
上記リング部材の材質は上記固定子の材質と同じであることを特徴とする請求項2ないし請求項7のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項9】
上記リング部材の厚みは上記固定子の外径の2.5%以下の厚みであることを特徴とする請求項2ないし請求項8のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項10】
上記フレームは冷却媒体が流れる流路を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項1】
回転軸を有し回転自在に配置される回転子と、
上記回転子を囲むように配設されコイルが巻回された固定子と、
上記固定子の外周側に上記固定子とギャップを介して配置されるフレームとを備え、
上記ギャップ寸法は温度変化による上記固定子の熱膨張により可変であり、上記固定子の熱膨張時に上記固定子の外周面が上記フレームに接触して冷却されることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
上記固定子は外周側に上記固定子が固定される筒状のリング部材を備え、上記リング部材と上記フレームとが上記ギャップを介して配置され、
上記ギャップ寸法は温度変化による上記固定子と上記リング部材との熱膨張により可変であり、上記固定子と上記リング部材との熱膨張時に上記リング部材の外周面が上記フレームに接触して冷却されることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
上記リング部材は外周面から突出する支持部を備え、上記支持部が上記フレームに接することにより上記リング部材が上記フレームに上記ギャップを介して支持されることを特徴とする請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
上記支持部は上記フレームを径方向に押圧するバネ構造を有することを特徴とする請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
上記支持部は上記リング部材の一部を切起こして設けられたフック部であることを特徴とする請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
上記フレームの内周面には上記支持部を係止するための凹部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【請求項7】
上記リング部材はトレランスリングであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の回転電機。
【請求項8】
上記リング部材の材質は上記固定子の材質と同じであることを特徴とする請求項2ないし請求項7のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項9】
上記リング部材の厚みは上記固定子の外径の2.5%以下の厚みであることを特徴とする請求項2ないし請求項8のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項10】
上記フレームは冷却媒体が流れる流路を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の回転電機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−90405(P2013−90405A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227774(P2011−227774)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]