説明

回転電気機器の巻線

本発明は、1回の巻線の構成要素であるM本の連続する電線(3)のそれぞれが挿入されるノッチ(22)で区切られた一連の歯を備える回転電気機器のロータ、またはステータ(2)の巻線方法に関する。Mは、1以上である。この方法は、n個のノッチ(22)の中のn×M本のワイヤー(3)の同時巻線から成り、nは、相数に相当し2以上である。M本のワイヤー(3)のすべては、1相を構成し、1つのノッチ(22)に挿入される。このようにして、n個の相は、すべて同時に巻かれるので時間を節約し、n個のノッチ(22)のすべてが同時に詰められるので、M本のワイヤー(3)はすべて、全く同じようにノッチ(22)の底部に挿入される。さらに、ノッチ(22)はすべて、全く同じように詰められ、従って、相による差はない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のオルタネータ、オルタネータ兼スタータ、またはスタータなどの回転電気機器のロータまたはステータにおける連続ワイヤーの巻線方法に関する。ロータは、ステータの内側で主軸Aの周りを回転する。ロータまたはステータの巻線は、ロータまたはステータに巻線用に設けられた複数のノッチの内部で行われる。
【背景技術】
【0002】
連続ワイヤーを用いるロータまたはステータの巻線は、一般に相ごとに行われている。例えば、3相機器に関しては、3相が、1相ずつ順々に巻かれ、各相は、前の相に対して1つ以上のノッチの分だけ位置をずらして設けられている。ダブル3相に関しては、6相が、同様に順々に巻かれる。各相の構成要素となるワイヤーは、ロータまたはステータの両側の軸の周りに波形を作り出し、これらの軸の周りのすベての波形は、巻線の構成要素となる。
【0003】
この種の巻線の欠点は、最初の相の軸の周りの波形が、次の相のノッチの基部への挿入を妨げ、次の相がまた次の相を妨げるなどして、最後の相は、すべての前の相の軸の周りの波形によって妨げられることである。そのため、ノッチが好適に充たされず、ノッチを充たす率が下がり、ひいては、機器の性能が損なわれる。
【0004】
この種の巻線の他の欠点は、巻線の時間が、巻く相の数に依存するということである。相数が多くなればなるほど、ますます巻線の時間が長くなり、ダブル3相または6相は、単なる3相に比べて、作成するのに2倍の時間を必要とすることとなる。
【0005】
ステータにおいては、巻線は、平らに、または閉じたステータ上で行われる。
【0006】
また、外側に開かれたノッチを備えるサポートまたはコア上に、ステータの複数回の巻線動作分を巻く。すなわち、ステータまたはロータの一回分を巻き、次いで巻線を挿入する。従って、サポートのノッチの巻線を広げて、ステータのノッチの方向に強く押すことにより、ステータに巻くことも可能である。この方法の欠点は、最初の巻線が行われるサポートのノッチの深さと幅が限定されることである。その理由は、ステータの内側に設けることができるように、サポートの外径を、ステータの内径より小さくする必要があり、かつロータとサポートのノッチの数は、全く同じにする必要があるからである。また、ステータが小さくなればなるほど、ますます巻線回数は多くなり、そのため、コアにそれらを収容するのが、ますます難しくなる。このように、巻線は、複数段階で行われ、巻線は、相を形成するために互いに接続される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、迅速であることに加えて、ノッチに隙間なく詰め込むことができ、巻線の長さを小として、使用する銅の量を減少させ、かつノッチへのワイヤーの挿入が完全な放射状であって、挿入に要する力が小さく、かつ巻線におけるワイヤーの重なりを改善した巻線方法を提案することである。また、本発明の方法によると、閉じたステータへの巻線をすることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による回転電気機器のロータまたはステータの巻線方法は、ノッチで区切られた一連の歯を備え、各ノッチの中に、1回の巻線を構成するM本の連続電線が挿入される。Mは、1以上である。この方法は、n数のノッチの中にn×M本のワイヤーを同時に巻くのを特徴とし、nは、相数に相当し、2以上である。M本のワイヤーの集合は、相の構成要素となり、1つのノッチに挿入される。従って、n相は、n個の連続するノッチの中に、すべて同時に巻かれ、そのため、時間の節約が可能になるとともに、n個のノッチのすべてが同時に詰められるので、M本のワイヤーは、すべてノッチの基部に全く同じように挿入される。また、ノッチはすべて、全く同じように詰められ、従って、相による差はない。
【0009】
特別の特徴として、各相は、連続ワイヤーで作成される。すなわち、巻線は、分散波形の巻線動作の始めから終わりまで、すべての相のワイヤーは、連続的に巻かれる。
【0010】
別の特定の特徴として、M本のワイヤーは、ノッチの中に平行に入れられ、2つの連続的なノッチを連結する湾曲部に重ね合わされる。巻線中、M本のワイヤーは、各ノッチの中で平行のままであり、またノッチの外側でも平行のままである、すなわち、最初のノッチの一方の側に配置されたワイヤーは、n番目後のノッチでは、反対側に配置されることとなる。これには、幾つかの利点がある。一方の側で巻線の上にある線は、他方の側では下になるので、ワイヤーはすべて、全く同じ長さになる。巻線の幅は、ノッチの深さと等しく、従って、ロータ側にも、また磁気飽和および軸受を支持するために必要な表面積の限度内で小さくすることができるヘッド側にも、突き出すことはない。
【0011】
特定の特徴として、n×M本のワイヤーは、ステータの前面にある湾曲部を用いて、第1のコイルを作り出し、次のn1個のノッチの中に、n×M本のワイヤーを挿入し、次いで、ステータの後面にある湾曲部を用いて第2の曲線部を作り出し、次のn2個のノッチの中に、n×M本のワイヤーを挿入することにより巻かれる。n相の軸の周りの波形は、各曲線部で平行に作られ、ある相の軸の周りの波形は、次の相を挿入するのを妨げることはない。
【0012】
別の特徴として、n×M本のワイヤーは、ステータのすべてのノッチが、n相の少なくとも1本のワイヤーを備えていると、巻線の方向を反転して巻かれる。従って、これによって、いわゆる分散波形巻線が行われる。
【0013】
第1の変形形態として、Mは1より大きく、M本のワイヤーは、ノッチの基部に1列に並べられる。互いに隣接するM本のワイヤーを1列に並べることにより、全部の巻線の間、M本のワイヤーを平行に巻くことが可能になり、これにより巻線をより整然とさせることができる。
【0014】
第2の変形形態として、ノッチは、歯根を有しないか、または歯根が非対称である。Mは、1より大きく、M本のワイヤーは、ノッチの幅の中に、互いに隣接して1列に並べられる。M本のワイヤーの互いに隣接する配置は、ノッチが閉じられていないか(もしくは歯根がない)とき、またはノッチが非対称の歯根で閉じられているときに可能である。
【0015】
特定の例においては、ワイヤーの断面は円い。ワイヤーの断面は、矩形または平らな部分を有してもよいし、また円くなくてもよいが、この種のワイヤーをらせん状に曲げることは、円いワイヤーまたは楕円のワイヤーを曲げるよりも難しい。
【0016】
別の例においては、ステータの前面または後面におけるループは、おおむね三角形である。この形状により、巻線の冷却は改善される。
【0017】
特定の例においては、ループは、二等辺三角形になっている。
【0018】
別の例では、ループは、直角二等辺三角形となっている。
【0019】
特定の例においては、ループを構成するM本のワイヤーは、ステータの前面または後面に対し、角度αよりも大きい角度βをなし、tanαは、f/dと等しい。fは、ワイヤーの直径であり、dは、歯の幅である。従って、ある相のワイヤーは、ワイヤーの軸の周りの波形の上昇部および下降部のどこにおいても、巻線の次の相のワイヤーに触れることはない。
【0020】
別の構成においては、湾曲部を構成するM本のワイヤーは、ステータの前面または後面と角度βをなし、tanβは、(f+2mm)/dと等しい。fは、mm単位のワイヤーの直径であり、dは、mm単位の歯の幅である。最適な態様は、2つの連続する相のワイヤーの間に、約2mmの空間を設けることである。
【0021】
ステータは、請求項による方法によって得られる。
【0022】
本発明による回転電気機器のロータまたはステータの巻線装置は、n個のノッチで区切られた一連の歯を有する少なくとも2つのキャリッジを備え、各ノッチの中に、1回の巻線を構成するM本の連続電線が挿入される。ここで、nは、回転電気機器の相数に相当し、2を超えており、Mは、1以上である。この巻線装置は、キャリッジのn個のノッチの中のM×n本のワイヤーを、回転電気機器のn個のノッチの範囲に同時に挿入し、M×n本のワイヤーを、互いのキャリッジに対してキャリッジの方向を曲げることによって、少なくとも2度曲げ、こうして曲げたM×n本のワイヤーのすべてを、回転電気機器の次のn1個のノッチの中に折り畳むことを特徴としている。いったん、M×n本のワイヤーを、回転電気機器のステータまたはロータのn個のノッチに挿入すると、完全に一巡させるために、操作を、次のn2個のノッチに対して行う。
【0023】
追加の特徴として、巻線方向は、ワイヤーのノッチへの折り畳みの方向を反転することによって反転され、キャリッジの後部に配置されたM本のワイヤーを1列に並べているガイドブッシュは、180°回転し、櫛が、反転されたM本のワイヤーを第1のキャリッジの端部に向けて押す。分散波形を形成するには、巻線の回転方向を反転する必要があり、この反転には、M本のワイヤーをノッチの中で同じ方向に並べるために、M本の巻線の配列の反転を必要とする、すなわち、底部のワイヤーは、巻線の両方向において、ノッチの底部に留まる必要がある。
【0024】
本発明を、オルタネータのステータの例として示す以下の説明を、添付の図面を参照しながら読むことによって、本発明をより良く理解しうると思う。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による回転電気機器のステータの斜視図である。
【図2】図1における巻線の詳細図である。
【図2a】1回分の巻線の部分図である。
【図2b】2本の巻線の詳細図である。
【図3】ワイヤーがノッチに配置されているステータの斜視図である。
【図4】ワイヤーが第1の曲げ位置にあるステータの斜視図である。
【図5】ワイヤーが第2の曲げ位置にあるステータの斜視図である。
【図6】ワイヤーが第3の曲げ位置にあるステータの斜視図である。
【図7】図6において、n×M本のワイヤーが折り畳まれているステータの斜視図である。
【図8】図6において、n本の第1の湾曲部のコイルが次のn個のノッチに配列されているステータの斜視図である。
【図9】本発明による巻線装置の開始位置における側面図である。
【図10】本装置の次の位置における側面図である。
【図11】本装置のさらに次の位置における側面図である。
【図12】本装置のさらに次の位置における側面図である。
【図13】本装置のさらに次の位置における側面図である。
【図14】第1のキャリッジの斜視図である。
【図15】第2のキャリッジの斜視図である。
【図16】対向形状部の斜視図である。
【図17】ガイドブッシュの正面図である。
【図18】本装置の巻線の反転の開始位置における側面図である。
【図19】本装置の巻線の反転中の次の位置における側面図である。
【図20】本装置の巻線の反転中の次の位置における側面図である。
【図21】本装置の巻線の反転中の次の位置における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1のステータ1は、歯21およびノッチ22を有する1組のプレート2を備えている。絶縁体23が、ノッチ22の中に配置されている。ワイヤー3が、ノッチ22に挿入されている。各ノッチ22は、1相のワイヤーだけを受け入れ、n相であるとき、1相ずつのワイヤーが、それぞれn個のノッチのすべてに挿入される。例えば3相から7相のことがある。1相は、ステータ1のノッチ22に巻かれた1本または複数本のワイヤーから構成され、そのワイヤーは、曲線部の形状に曲げられ、ステータ1の内側のノッチ22に巻かれて1回分の巻線を形成する。複数回分の巻線で、相の完全な巻線が形成される。巻線は、ワイヤー3がまず第1の方向に巻かれ、最初の一巡が完了したら、次いで逆方向に巻かれて、循環するように巻かれると、いわゆる分散波形になる。ワイヤー3は、各波形において湾曲部を有し、この湾曲部は、ステータの外側、かつステータの一方の側または他方の側に交互に位置している。逆方向の巻線の間、この湾曲部は、第1の方向の巻線の2つの湾曲部の間の空き領域に配置される。従って、巻線は対称になる。
【0027】
バンドル30を構成する1相の巻線は、M本のワイヤー3から成り、Mは、1より大きい。ステータ1のそれぞれの側に突き出ているバンドル30の各湾曲部30aまたは30bは、この場合、おおむね三角形に作られ、これらの湾曲部30aまたは30bのすべてが、巻線を形成する。図2の詳細が示すように、各ワイヤー3は、直径fを有し、歯22の幅は、dであり、βは、ステータ1の前面または後面に対するワイヤー3の角度である。ワイヤー3が互いに触れるのを防ぐために、図2bのように、角度βは、ワイヤーが互いに触れると思われる角度に相当する角度α、すなわち、tanα=f/dである角度αより大きくする必要がある。
【0028】
1回の巻線の各湾曲部30aまたは30bは、M本のワイヤー3から構成され、図2aは、2本のワイヤー3aおよび3bを示す。これら2本のワイヤーは、ノッチ22に配置され、図2aに示すように、ワイヤー3aは、ノッチ22の22a側に置かれ、ワイヤー3bは、第1のノッチの22b側に置かれている。次いで、ワイヤー3aおよび3bが、第1のノッチからnノッチ後に配置されている第2のノッチでは、ワイヤー3aは、ノッチの22b側にあり、ワイヤー3bは、ノッチ22の22a側にある。ステータ2の上に位置している湾曲部30aは、2本のワイヤー3aおよび3bからなり、3aは、3bのステータ2から遠い側に位置している。他方、ステータ2の下に位置している湾曲部30bは、2本のワイヤー3aおよび3bによって構成され、3aは、3bのステータ2に近い側に位置している。従って、ワイヤー3aおよび3bのそれぞれは、いったん巻線が完了すると、同じ長さを有することが分かると思う。従って、巻線は、ノッチと同様に並べられ、ノッチ22の深さと等しい幅を有することとなる。従って、巻線のワイヤー3は、ロータ側にもヘッド側にも突き出すことはない。そのため、磁気飽和の限度内で、ヘッドをより小さくすることができる。相が多くなればなるほど、どんどん飽和は小さくなり、従って、軸受(約4mm)の支持面に対する十分な寸法的の限界内で、ヘッドは狭く(3.5mmほどにも狭く)なることとなる。
【0029】
図3から分かるように、巻線は、n×M本のワイヤー3から成っている。ここで、nは、相数に相当している。M本のワイヤー3のバンドル30のそれぞれは、n個のノッチ22に挿入され、n個のノッチ22に挿入されたワイヤーの部分に、番号3aを付してある。次いで、ワイヤー3は、図4に示すように、1番目の曲げが90°を超え、2番目の曲げが45°未満、3番目の曲げが90°を超えるように、アコーディオンの形に曲げられる。次いで、巻線の集合体は、図5に示すように、ノッチ22の端から90°を超える角度で、ステータ1の内部に折り畳まれる。次いで、同じ操作が、ステータ1の他の側で対称的に実行される(図6参照)。
【0030】
最初の曲げ操作を実行してしまうと、直線部分3bのn×M本のワイヤー3のすべてを、次のn個のノッチの中に回転して入れることができる。これらの操作の全ては、ステータ2の一巡が完了するまで、何度も繰り返される。
【0031】
いったん一巡が完了すると、巻線の方向および方位は、反転される。すなわち、ワイヤー3は、前の方向とは逆方向に回転して巻かれる。
【0032】
この巻線は、図9〜図21に示す、少なくとも2つのキャリッジ4および5、対向形状部6、ブッシュ7および櫛8を備える装置を用いて行われる。
【0033】
図14の第1のキャリッジ4は、1回の巻線のM本のワイヤー3が配置されるn個のノッチ40と、ワイヤー3に垂直に配置されている2つの曲げシャフト41および42とを備えている。
【0034】
図15の第2のキャリッジ5は、1回の巻線のM本のワイヤー3が設けられるn個のノッチ50と、ワイヤー3と垂直に、かつシャフト41および42と平行をなす曲げシャフト51を備えている。
【0035】
図16の対向形状部6は、n個のノッチ60および円形部61を備えている。
【0036】
図9の2つのキャリッジは、2つのキャリッジを動かすことができる基盤(図示せず)上に置かれている。
【0037】
図14に示す第1のキャリッジ4は、M本のワイヤー3が挿入されるn個のノッチ40を備え、こうしてバンドル30が形成される。シャフト41は、キャリッジ4の一端部に配置され、第2のシャフト42は、巻線の構成要素であるバンドル30の湾曲部30aまたは30bの三角形の辺におおむね相当する距離だけ、第1のシャフト41から離れて設けられている。シャフト41は、着脱可能である。
【0038】
図15に示す第2のキャリッジ5は、M本のワイヤー3が挿入されるn個のノッチ50を備えている。シャフト51は、キャリッジ5の一端部に配置されている。
【0039】
図16に示す対向形状部6は、n個のバンドルを挿入することができるn個のノッチを備えている。
【0040】
まず、巻線の最初の部分を作成するための巻線装置の動作について説明し、次いで、巻線の反転を実行するために必要な動きについて説明する。反転後の巻線は、最初の巻線と同様である。
【0041】
図9は開始位置であり、M×n本の線が、第1のキャリッジ4のn個のノッチ40の中に、第2のキャリッジ5のn個のノッチ50の中に、およびステータ1のn個のノッチ22の中に1列に並べられている。
【0042】
図10に示すように、2つのキャリッジ4および5の構体は、一緒に上方へ回転され、それによって、シャフト51の周りに、M×n本のワイヤー3の第1の曲げ37が形成される。
【0043】
次いで、2つのキャリッジ4および5は、分離されて、シャフト41の周りに、n×M本のワイヤー3の第2の曲げ(図11参照)を形成する。
【0044】
次いで、図12に示すように、2つのキャリッジ4および5は、そのままの態勢で、もう一度合同して動き、対向形状部6の端部61の周りにワイヤー3の新しい曲げを形成し、次いで、ワイヤー3と一緒に、ステータ1の内側に回転され、ワイヤー3は、n個のノッチ60の中に配置される。
【0045】
次いで、シャフト41は、キャリッジ4から離脱され、図13に示すように、キャリッジ4は、キャリッジ5および対向形状部6に並行な位置に置かれる。これによって、キャリッジ5の端部51およびキャリッジ4のシャフト42で、ワイヤー3が曲げられる。ワイヤー3の曲げが行われてしまうと、ワイヤー3のすべてが、ステータ2の最初の2n個のノッチ22の上に回転させられる。この動作は、ステータ1を完全に一巡して巻くまで繰り返される。
【0046】
分散波形を達成するためには、巻線の方向を反転する必要がある、すなわち、巻線の開始位置に戻って、ワイヤー3を巻く必要がある。巻線方向が反転されると、ワイヤー3をステータ1のノッチ22の中で同じ順序にするためには、キャリッジ4および5のn個のノッチの中のワイヤー3の順序を反転する必要がある。
【0047】
巻線方向の反転について、図18〜21に示す。
【0048】
図17に示すブッシュ7は、垂直に1列に並べられたM個(この場合2個)の穴70を備えている。
【0049】
図18は、第1の方向の巻線の終了時の装置を示す。ワイヤー3を案内するブッシュ7は、装置の最後尾に置かれ、このブッシュ7の前に、n個のノッチ80を有する櫛8が、ワイヤー3から離れて置かれている。キャリッジ4は、ワイヤー3から引き離され、シャフト41および42は、キャリッジ4から離脱されている。
【0050】
装置においてワイヤー3の反転を行うために、図19に示すように、ブッシュ7は、180°の回転を行い、櫛8は、ワイヤー3が櫛8のノッチ80の中に置かれている状態で、ブッシュ7と接触して置かれる。ワイヤー3の反転領域は、図19に符号36で示されている。
【0051】
次いで、図20に示すように、ワイヤー3の反転領域36が、キャリッジ4の2つのシャフト41と42の間の地点に置かれるまで、ワイヤー3を新しい方向に置くように、櫛8は、キャリッジ5の方向に押し戻される。次いで、図21に示すように、キャリッジ4は、もう一度ワイヤー3上に置かれ、キャリッジ4にもう一度設置された2つのシャフト41と42の間に、反転領域36が位置させられる。
【0052】
巻線は、巻線の第1の方向に関して、前述したのと同じ原理に従って、逆方向に再開される。
【0053】
この巻線を数回繰り返すことによって、図1に示すステータの、おおむね3角形の巻線を有する完全な巻線が行われる。
【符号の説明】
【0054】
1 ステータ
2 プレート
3、3a、3b ワイヤー
4 第1のキャリッジ
5 第2のキャリッジ
6 対向形状部
7 ブッシュ
8 櫛
21 歯
22 ノッチ
22a、22b ノッチの側
23 絶縁体
30 バンドル
30a、30b バンドル30の湾曲部
31、32、33、34、35 曲げ
36 反転領域
37 曲げ
40 ノッチ
41、42 曲げシャフト
50 ノッチ
51 曲げシャフト
60 ノッチ
61 円形部
70 穴
80 ノッチ
α ワイヤーが互いに触れる角度に相当する角度
β ワイヤーと、ステータの前面または後面との角度
d 歯の幅
f ワイヤーの直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノッチ(22)で区切られた一連の歯(21)を備える回転電気機器のロータまたはステータ(2)の巻線方法であって、前記ノッチのそれぞれに、1回の巻線の構成要素であるM本の連続電線(3)が挿入し、Mは、1以上であって、nは、相数に相当し2以上であるとき、n×M本のワイヤー(3)を、n個のノッチ(22)に同時に巻き、前記M本のワイヤー(3)の集合体が、1つの相を構成し、1つのノッチ(22)に挿入されることを特徴とする巻線方法。
【請求項2】
各相は、連続ワイヤー(3)で作成されることを特徴とする請求項1に記載の巻線方法。
【請求項3】
前記M本のワイヤー(3)は、前記ノッチ(22)に平行に入れられ、2つの連続的なノッチ(22)を、連結する湾曲部(30a、30b)の中に重ね合わすことを特徴とする請求項1または2に記載の巻線方法。
【請求項4】
前記n×M本のワイヤー(3)は、前記ステータ(2)の前面に位置する湾曲部(30a)を有する第1の曲線部を形成し、前記n×M本のワイヤーをn1個のノッチ(22)に挿入し、次いで、前記ステータ(2)の後面に位置する湾曲部(30b)を有する第2の曲線部を形成し、前記n×M本のワイヤー(3)を、n2個のノッチ(22)に挿入することによって巻かれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の巻線方法。
【請求項5】
前記ステータの前記ノッチ(22)のすべてが、前記n相の少なくとも1本のワイヤー(3)を備えるとき、前記n×M本のワイヤー(3)は、前記巻線の方向を反転して巻かれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の巻線方法。
【請求項6】
Mは、1より大きく、前記M本のワイヤー(3)は、前記ノッチ(22)の基部に1列に並べられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の巻線方法。
【請求項7】
前記ノッチ(22)は、歯根を持たないかまたは前記歯根が非対称であり、Mは、1より大きく、前記M本のワイヤー(3)は、前記ノッチ(22)の幅の中に互いに隣接して1列に並べられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の巻線方法。
【請求項8】
前記ワイヤー(3)は、円いことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の巻線方法。
【請求項9】
前記ステータ(2)の前面または後面に位置している前記湾曲部(30a、30b)は、おおむね三角形を有することを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の巻線方法。
【請求項10】
前記湾曲部(30a、30b)は、二等辺三角形を形成していることを特徴とする請求項9に記載の巻線方法。
【請求項11】
前記湾曲部(30a、30b)は、直角三角形を形成していることを特徴とする請求項10に記載の巻線方法。
【請求項12】
前記湾曲部(30a、30b)を構成する前記M本のワイヤー(3)は、前記ステータ(2)の前面または後面と、角度αより大きい角度βをなし、tanαは、f/dと等しく、fは、前記ワイヤー(3)の直径であり、dは、前記歯(21)の幅であることを特徴とする請求項2〜10のいずれかに記載の巻線方法。
【請求項13】
前記湾曲部(30a、30b)を構成する前記M本のワイヤー(3)は、前記ステータ(2)の前面または後面と角度βをなし、tanβは、(f+2mm)/dと等しく、fは、前記ワイヤー(3)のmm単位の直径であり、dは、前記歯(21)のmm単位の幅であることを特徴とする請求項12に記載の巻線方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の方法を用いて得られることを特徴とするステータ。
【請求項15】
n個のノッチ(40、50)で区切られた一連の歯を有する少なくとも2つのキャリッジ(4、5)を備える、回転電気機器のロータまたはステータの巻線装置であって、前記ノッチのそれぞれに、1回の巻線の構成要素であるM本の連続電線(3)を挿入し、nは、前記回転電気機器の相数に相当し、2以上であり、Mは、1以上であり、前記キャリッジ(4、5)の前記n個のノッチ(40、50)の中のM×n本のワイヤー(3)は、前記回転電気機器の前記n個のノッチ(22)の範囲に同時に挿入され、前記M×n本のワイヤー(3)のすべてが、互いに対して前記キャリッジ(4、5)を曲げることによって、少なくとも2度一緒に曲げられ、このようにして曲げられた前記M×n本のワイヤー(3)のすべてを、前記回転電気機器の次のn1個のノッチ(22)の中に折り畳むことを特徴とする巻線装置。
【請求項16】
巻線方向を、前記ノッチ(22)の中の前記ワイヤー(3)の折り畳み方向を反転することによって反転させ、前記キャリッジ(4、5)の後部に配置された、前記M本のワイヤー(3)用のガイドブッシュ(7)は180°の回転を行い、櫛(7)が、前記反転されたM本のワイヤー(3)を、前記第1のキャリッジ(4)の後部に向けて押すようになっていることを特徴とする請求項15に記載の巻線装置。

【図1】
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【図2】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2012−533269(P2012−533269A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519033(P2012−519033)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051327
【国際公開番号】WO2011/004100
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(508075579)ヴァレオ エキプマン エレクトリク モトゥール (49)
【Fターム(参考)】