説明

固体撮像素子およびその製造方法

【課題】表面位置の低い画素部とその周囲の高い多層配線部とが段差を有する高感度の固体撮像素子の画素部上に形成するカラーフィルタにおいて、枠色ムラや剥がれ等の品質不良のない正常な膜形成領域を広く確保するための構成を提供すること。
【解決手段】固体撮像素子において、画素部の受光面側表面が多層配線部の上面より低い位置となるように両部の境界付近に段差が形成され、画素部の受光面側表面に各光電変換素子に対応して複数色を平面配置したカラーフィルタが形成されており、カラーフィルタの第1色が上下2層の積層構成であり、上下2層の積層構成が、画素部の有効領域に略一致して形成された一方の層と該層の領域を含んで前記段差にいたる段差部に連なって形成された他方の層とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCDやCMOS等の光電変換素子を有する固体撮像素子とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置は画像の記録、通信、放送の内容の拡大に伴って広く用いられるようになっている。撮像装置として種々の形式のものが提案されているが、小型、軽量で高性能のものが安定して製造されるようになった固体撮像素子を組み込んだ撮像装置が、デジタルカメラやデジタルビデオとして普及してきている。
【0003】
固体撮像素子は、撮影対象物からの光学像を受け、入射した光を電気信号に変換する複数の光電変換素子を有する。光電変換素子の種類はCCD(電荷結合素子)タイプとCMOS(相補型金属酸化物半導体)タイプとに大別される。また、光電変換素子の配列形態から、光電変換素子を1列に配置したリニアセンサー(ラインセンサー)と、光電変換素子を縦横に2次元的に配列させたエリアセンサー(面センサー)との2種類に大別される。いずれのセンサにおいても光電変換素子の数(画素数)が多いほど撮影された画像は精密になる。
【0004】
また、光電変換素子に入射する光の経路に、特定の波長の光を透過する各種のカラーフィルタを設けることで対象物の色情報を得ることを可能とした単板式のカラーセンサーも普及している。カラーフィルタの色としては、赤色(R)、青色(B)、緑色(G)の3色からなる3原色系、あるいは、シアン色(C)、マゼンタ色(M)、イエロー色(Y)からなる補色系が一般的であり、特に3原色系が多く使われている。
【0005】
カラーフィルタは、感光性着色樹脂を基板上に塗布した後、所定のパターンを有する露光用マスクを介して感光性着色樹脂への露光、現像を行うことによりパターン形成する方法が主流となっている。また、感光性着色樹脂の塗布は、基板上に樹脂液を滴下した後に基板を回転させて基板上に塗り広げる回転塗布法を用いることが多い。
【0006】
固体撮像素子に要求される性能で重要な課題の一つに、入射する光への感度を向上させることが挙げられる。できるだけ小型化した固体撮像素子で撮影した画像の情報量を多くするためには受光部となる光電変換素子を微細化して高集積化する必要がある。しかし、光電変換素子を微細化した場合、各光電変換素子の面積が小さくなり、受光部として利用できる面積割合も減るので、光を取り込む面積が小さくなるため、光電変換素子の受光部に取り込める光の量が少なくなり、実効的な感度は低下する。
【0007】
このような、微細化した固体撮像素子の感度の低下を防止するための手段として、光電変換素子の受光部に効率良く光を取り込むために、対象物から入射される光を集光して光電変換素子の受光部に導くマイクロレンズを形成する技術が提案されている。マイクロレンズで光を集光して光電変換素子の受光部に導くことで、受光部の見かけ上の開口率(面積)を大きくすることが可能になり、固体撮像素子の感度の向上が可能になる。また、マイクロレンズと光電変換素子の受光部との距離を短くして、光の取り込み角度を大きくすることで更なる高感度化を図る技術も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−270500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、マイクロレンズと光電変換素子の受光部との距離を短くして、光の取り込み角度を大きくすることで高感度化を図ることは可能である。図2は、従来の固体撮像素子の構成をカラーフィルタ第1色10まで形成する工程途中の主要部について説明するための部分断面模式図である。本例では、多層配線が設けられていない画素部Aの上部を掘り込んで、基板2の画素部Aにおける厚さをその周囲の多層配線部Bより薄くすることにより、光電変換素子3とその上方に平坦化層6およびカラーフィルタ第1色10や他色のカラーフィルタを介して形成することになるマイクロレンズとの距離を短くしている。ここで、多層配線部Bには、複数の配線層4が各配線層間の層間絶縁膜5を介して積層配置されている。また、カラーフィルタは、画素部Aを越えて周辺にも形成される。
【0010】
然るに、表面位置の低い画素部表面と、高い位置となった多層配線部上面との境界付近には段差が生じるため、マイクロレンズの形成に先立ってカラーフィルタを画素部に形成する際に、段差近傍のカラーフィルタ層の厚さが部分的に画素部の中央付近より厚くなる傾向がある。これは、カラーフィルタを構成する着色樹脂の塗布工程で液溜まりができるためであり、この傾向は、塗布方法を回転塗布とした時に特に顕著になる。図2において、段差近傍のカラーフィルタ層の厚さが部分的に厚くなる領域である段差部Cは、画素部Aと重なる領域を生じ、カラーフィルタが均一厚さに形成される部分は、段差部Cより内側の画素部Aの中央寄りの部分に限定される。
【0011】
上記の状態を塗布状態を示す簡略化した部分断面模式図である図5を用いてさらに詳しく説明すると、画素部Aと多層配線部Bとの表面位置間に段差Dが形成されている基板上に、着色樹脂20を塗布する工程で、段差から遠い箇所に較べて着色樹脂20が厚く形成される段差近傍の段差部Cが生じる。段差部Cの平面距離は、段差Dの垂直方向の大きさに較べて10倍以上にも及ぶことがあり、塗布厚変動の影響は画素部Aにまで及ぶので無視できない。
【0012】
固体撮像素子1の画素部Aの周辺部である段差部Cのカラーフィルタ着色層が均一厚さの画素部Aの中央部と較べて部分的に厚くなることにより、光の透過率の変化がムラとなって現れ、固体撮像素子1の品質不良となる「枠色ムラ」を引き起こす。また、光硬化タイプの着色樹脂を用いて、フォトリソグラフィー法でカラーフィルタのパターンを形成する一般的な製法では、着色層の局部的に厚い部分は他の部分に較べて主要な露光スペクトルであるi線(波長365nm)の透過光量が減少して硬化度が不足する上、膜内部のストレスも大きくなるので、段差直下部分を含めた段差部Cで剥がれを生じ易い。
【0013】
本発明は、前記の問題点に鑑みて提案するものであり、本発明が解決しようとする課題は、表面位置の低い画素部とその周囲の高い多層配線部とが段差を有する高感度の固体撮像素子の画素部上に形成するカラーフィルタにおいて、枠色ムラや剥がれ等の品質不良のない正常な膜形成領域を広く確保するための構成を提供するものである。また、本発明が解決しようとする他の課題は、上記構成を実現するための方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、複数の光電変換素子を平面配置した画素部と、画素部周辺にあって画素部と電気的に接続する複数の配線層を各配線層間の層間絶縁膜を介して積層配置した多層配線部と、を有する固体撮像素子において、画素部の受光面側表面が多層配線部の上面より低い位置となるように両部の境界付近に段差が形成され、画素部の受光面側表面に各光電変換素子に対応して複数色を平面配置したカラーフィルタが形成されており、カラーフィルタの第1色が上下2層の積層構
成であり、上下2層の積層構成が、画素部の有効領域に略一致して形成された一方の層と該層の領域を含んで前記段差にいたる段差部に連なって形成された他方の層とからなることを特徴とする固体撮像素子である。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、カラーフィルタがベイヤ配列であり、前記第1色が緑色であることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子である。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、画素部の有効領域におけるカラーフィルタの第2色以降の画素膜厚が、第1色の画素膜厚より薄いことを特徴とする請求項1または2に記載の固体撮像素子である。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、前記画素部を有する半導体基板上に、前記多層配線部を選択形成する多層配線部形成工程と、画素部と多層配線部との境界付近に段差を形成する段差形成工程と、画素部の受光面側表面に複数色のカラーフィルタを色別に順次平面配置するカラーフィルタ形成工程と、同一単位のマイクロレンズを平面配置するマイクロレンズ形成工程と、を順に有し、カラーフィルタ形成工程の1色目の工程が、前記第1色の下層を形成する工程に引き続いて、上層を重ねて形成する工程からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固体撮像素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明による固体撮像素子は、画素部と多層配線部との段差に起因してカラーフィルタの膜厚が大きくなる段差部を従来より狭い周辺領域に抑制することによって、画素部のカラーフィルタを広い領域で正常な均一厚さに得ることができ、その結果、枠色ムラや剥がれの少ない良好な品質の固体撮像素子を提供できる。さらに、カラーフィルタの第1色を上下2層の積層構成とするため、画素部におけるカラーフィルタの欠けやピンホール等の一般的な欠陥も減らせるという副次的な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の固体撮像素子の構成を工程途中の主要部について説明するための部分断面模式図である。
【図2】従来の固体撮像素子の構成を工程途中の主要部について説明するための部分断面模式図である。
【図3】本発明の固体撮像素子の製造方法を主要工程について説明するための断面模式図である。(a)は、カラーフィルタの第1色の下層を形成するまで、(b)は、カラーフィルタの第1色の上層を形成するまで、(c)は、カラーフィルタの第2色以降を含めた色層を形成するまで、(d)は、マイクロレンズを形成するまで、を工程順に示す。
【図4】本発明の固体撮像素子におけるカラーフィルタ各色の平面配列の一例を説明するための部分平面模式図である。
【図5】従来の固体撮像素子の製造工程における塗布状態を示す簡略化した部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に従って、本発明を実施するための形態を説明する。
図1は、本発明の固体撮像素子の構成を工程途中の主要部について説明するための部分断面模式図である。
【0021】
複数の光電変換素子3を平面配置した画素部Aと、画素部周辺にあって画素部と電気的に接続する複数の配線層4を各配線層間の層間絶縁膜5を介して積層配置した多層配線部Bと、を有する固体撮像素子1において、画素部Aの受光面側表面が多層配線部の上面より低い位置となるように両部の境界付近に段差が形成され、画素部の受光面側表面に各光
電変換素子に対応して複数色を平面配置したカラーフィルタが形成される。カラーフィルタの第1色10が上下2層11、12の積層構成であり、上下2層の積層構成が、画素部の有効領域に略一致して形成された一方の層と該層の領域を含んで前記段差にいたる段差部Cに連なって形成された他方の層とからなる。図では、上層11を画素部の有効領域に略一致して形成された一方の層とし、下層12を上層11の領域を含んで前記段差にいたる段差部Cに連なって形成された他方の層としている。図示しないが、逆に、下層12を画素部の有効領域に略一致して形成された一方の層とし、上層11を下層12の領域を含んで前記段差にいたる段差部Cに連なって形成された他方の層とすることも可能である。以下の説明は、前者の例について述べる。
【0022】
従来の固体撮像素子と同様に、多層配線が設けられていない画素部Aの上部を掘り込んで、画素部Aの領域での基板2の厚さをその周囲の多層配線部Bの領域より薄くすることにより、光電変換素子3とその上方に平坦化層6およびカラーフィルタ第1色10や他色のカラーフィルタを介して形成することになるマイクロレンズとの距離を短くできる。
【0023】
カラーフィルタ第1色10は、所望の色特性を保持するために一定の膜厚を必要とするが、従来のように1層で形成しようとすると、図2に示すようにカラーフィルタを構成する着色樹脂の塗布工程で液溜まりができるため、段差部Cでのカラーフィルタ層の厚さが部分的に厚くなる領域が広くなり、カラーフィルタが均一厚さに形成される部分は、画素部Aの中央寄りの部分に狭く限定される。
【0024】
これに対して、本発明では、カラーフィルタの第1色10を上下2層の積層構成とし、必要とする第1色の膜厚を2層に分けて形成できるので、前記着色樹脂の塗布工程での液溜まりの程度を軽減でき、従って、段差部Cでのカラーフィルタ層の厚さが部分的に厚くなる領域を小さくすることができる。すなわち、画素部のカラーフィルタを広い領域で正常な均一厚さに得ることができ、その結果、枠色ムラや剥がれの少ない良好な品質の固体撮像素子を提供できる。
【0025】
図3は、本発明の固体撮像素子の製造方法を主要工程について説明するための断面模式図である。(a)は、カラーフィルタの第1色の下層を形成するまで、(b)は、カラーフィルタの第1色の上層を形成するまで、(c)は、カラーフィルタの第2色以降を含めた色層を形成するまで、(d)は、マイクロレンズを形成するまで、を工程順に示す。固体撮像素子1は、前記複数の光電変換素子3を平面配置した画素部Aを予め形成して有する半導体基板2上に、前記複数の配線層4を各配線層間の層間絶縁膜5を介して積層配置した多層配線部Bを形成する。上記多層配線部形成工程は、画素部と多層配線部との境界付近に段差を形成する段差形成工程とともに、フォトリソグラフィー法または印刷法に適宜エッチング法等の加工手段を加えるなど、一般的な方法を用いて可能であり、詳細な説明は省略する。
【0026】
カラーフィルタの形成に先立って、平坦化層6を受光面側に形成する。平坦化層6は、主に画素部Aの表面を平坦にして、カラーフィルタの着色樹脂を塗布する際の下地を平坦にする目的であり、受光部の光電変換素子3と入光部のマイクロレンズ8との距離を遠ざけて段差部Cの段差を埋める方向に働くことは、望まない。従って、平坦化層6としては、例えば、無色透明なアクリル樹脂溶液を0.1μmの厚さで薄く塗布形成し、熱処理する。
【0027】
図4は、本発明の固体撮像素子におけるカラーフィルタ各色の平面配列の一例を説明するための部分平面模式図である。図示した例は、総画素数を多くしないで周囲の画素出力を利用した補間演算により実効的な解像度を高く保つ方式で、固体撮像素子1枚による単板式カラー撮影を行うのに適したカラーフィルタ画素のベイヤ(Bayer)配列の例で
ある。人間の視感度に合わせて、緑色着色層21の着色画素数を青色着色層22や赤色着色層23の着色画素数より多く配置する。
【0028】
上記のベイヤ配列の例では、緑色着色層21をカラーフィルタ第1色10とし、第2色以降に青色着色層22や赤色着色層23を形成することが望ましい。緑色着色層21の占める面積が相対的に大きく、対角に位置する同色の着色画素と連なることによって、さらに密着性が高まるからである。
【0029】
また、一般に、画素部の有効領域におけるカラーフィルタの第2色以降の画素膜厚を、第1色の画素膜厚より薄くすることが望ましい。そうすることによって、カラーフィルタ第2色、第3色が、段差部Cでも第1色より薄い画素膜厚となり、既に第1色をパターン形成された抜け部分に沈没する形での薄い画素膜厚の形成となり、段差部の悪影響が軽減される。従って、カラーフィルタ第2色、第3色における枠色ムラや剥がれは問題にならない。さらに画素部Aの領域においても、ベイヤ配列で第1色を緑色とする場合、カラーフィルタ第2色、第3色の各画素は4辺を第1色の高い壁に囲まれて形成されるので、剥がれ等の欠陥が生じ難い。
【0030】
図3(a)に示す、カラーフィルタ第1色の下層12として、上記の例では、緑色の顔料分散樹脂である感光性ネガ型レジストを塗布する。ここで、段差部Cが充分に狭い領域に限定されて画素部A上の画素膜厚が均一になることと残余の上層膜厚とのバランスとを考慮して、下層の塗布膜厚を決める。レジスト塗布後、プレベイク、選択的露光、現像、熱処理の各工程を経て、カラーフィルタ第1色の下層12がパターン形成される。選択的露光においては、下に設けた光電変換素子3との位置合わせが重要となり、微細化した固体撮像素子の品質を支配する。
【0031】
次いで、前記と同様の工程で、カラーフィルタ第1色の上層11をパターン形成するが、この場合の着色層の画素膜厚は、上記第1色の下層12との合計の画素膜厚が所望の色特性を保持するための一定の膜厚となるように決める。また、カラーフィルタ第1色の上層11のパターン形成領域は、段差部Cをカバーする第1色の下層12より小さく、画素部Aの有効領域に略一致した領域に限定する。第1色の下層12が画素部A上の画素膜厚が均一になることを考慮して既に形成されているので、第1色の上層11のパターン形成領域は、下地が平坦な領域となり、上下層が合わさったカラーフィルタ第1色10の画素膜厚は、図3(b)のように、画素部A上で均一に形成することができる。
【0032】
次に、図3(c)に示すように、カラーフィルタの第2色およびそれ以降を含めた残りの色層を形成する。選択した色の顔料分散樹脂である感光性ネガ型レジストを塗布し、プレベイク、選択的露光、現像、熱処理の各工程を経て形成することは、上記と同様である。前述のとおり、第1色の場合より画素膜厚を薄くした方が好ましいので、必要とする色特性を考慮して顔料の材質および含有比率、ならびに分散樹脂としての処方を適宜選択する。
【0033】
以上で、画素部の受光面側表面に複数色のカラーフィルタを色別に順次平面配置するカラーフィルタ形成工程を終える。
【0034】
次に、図3(d)に示すように、カラーフィルタ各色上に設ける第2の平坦化層7を介して、マイクロレンズ8を平面配置するマイクロレンズ形成工程を行う。
第2の平坦化層7は、画素部Aにおけるカラーフィルタ各色の厚さの不均一さや微小な凹凸を覆い、マイクロレンズ形成のための平坦で均一な下地を提供するものであり、例えば、無色透明なアクリル樹脂溶液を0.2μmの厚さで塗布形成し、熱処理する。
第2の平坦化層7を形成後、レンズ材料となる透明樹脂である感光性ポジ型レジストを平
坦化層上に塗布形成し、プレベイク、選択的露光後、有機アルカリ現像水溶液にて現像し、熱処理工程を加えて熱フロー挙動を利用することにより、同一単位の繰り返し平面配置されるマイクロレンズ8を、画素部Aの上方領域に画素ピッチと一致させて形成する。
【実施例1】
【0035】
本発明の固体撮像素子の実施例について、以下に説明する。
〈実施例1〉
光電変換素子からなる受光素子が多数配置されたエリアがチップ上面に対して1μm程度掘り込まれた半導体デバイス上に、アクリル樹脂溶液を0.1μmの厚さでスピンコート法により塗布形成し、熱処理する。
〔カラーフィルタ形成工程〕
次いで、カラーフィルタ第1色の下層となる緑色着色層を緑色ネガ型カラーレジスト(顔料分散型)をスピン塗布、プレベイク(70℃、1分)し、選択的露光、現像、熱処理してパターン形成する。この時、形成後の画素膜厚を緑色着色層の所定の画素膜厚の半分以下とする。また、カラーフィルタ第1色の下層を形成する領域は、半導体デバイスのウェハ上の段差を含んだ広い領域とする。また、微細なパターン以外のベタ部分を段差近傍の数μm領域に含んで形成しても良い。
次いで、カラーフィルタ第1色の上層となる緑色着色層を緑色ネガ型カラーレジスト(顔料分散型)を、上記第1色の下層と同様に積層形成する。但し、第1色の下層と第1色の上層の緑色着色積層の合計膜厚が所定の膜厚となるようにする。また、カラーフィルタ第1色の上層パターンを形成する領域は、第1色の下層のパターン形成領域より小さく、画素部の有効領域より広い領域とする。
次いで、青色、赤色の着色層についても、緑色着色層と同様に、各所定の配置にフォトリソグラフィー法により形成する。青色、赤色の着色層の画素膜厚は、緑色着色層の画素膜厚より薄い。
〔マイクロレンズ形成工程〕
次いで、カラーフィルタパターンの表面にアクリル樹脂溶液を0.2μmの厚さでスピンコート法により塗布形成し、熱処理する。
次いで、レンズとなるポジ型レジストを塗布形成し、プレベイク後、選択的に露光する。その後、有機アルカリ現像水溶液(TMAH系:0.5%)にて現像し、熱フロー法によりレンズを形成する。
〔接続端子部形成工程、その他〕
次いで、ポジ型レジストとして透明樹脂を5μmの厚さで塗布形成し、100℃、120秒のプレベイクをかけた後、接続端子部やスクライブラインなど透明樹脂を除去したい箇所を選択的に露光する。その後、有機アルカリ現像水溶液(TMAH系:0.5%)にて現像する。
次いで、上記ポジ型レジストパターンをエッチングマスクとして、ドライエッチングにて開口部下層の樹脂をエッチング除去する。ドライエッチングは、アルバック社製NA1300にて出力500W、ガス圧50Pa、O流量600cm/min.(1hPa、0℃)、N流量10cm/min.(1hPa、0℃)、エッチングレート0.5μm/min.で3分間処理し、1.5μmエッチング除去した。
次いで、ドライエッチングされずに残ったポジ型レジストを剥離液にて剥離除去する。
最後に、水分を除去するために100℃、2分の熱処理をかける。
〔評価〕
得られた固体撮像素子は、枠色ムラが殆ど認められず、ウェハ段差近傍においてカラーフィルタ着色層の画素剥がれのない、高品質のカラー固体撮像素子であった。
また、緑色、青色、赤色の各色の画素感度もチップ内での均一性は良好で高感度であり、高品質のカラー固体撮像素子であった。
【実施例2】
【0036】
本発明の固体撮像素子の比較例について、以下に説明する。
〈比較例1〉
〔工程〕
実施例1におけるカラーフィルタ形成工程の内、カラーフィルタ第1色の緑色着色層を上下2層の積層構造とせずに、所定の画素膜厚を1層で形成した。また、カラーフィルタ第2色および第3色の青色、赤色の着色層の画素膜厚は、緑色着色層の画素膜厚より厚く形成した。上記以外のカラーフィルタ形成工程およびその他の工程は、実施例1と同様に形成して、比較例1とした。
〔評価〕
得られた固体撮像素子は、段差部において枠色ムラが発生した。高低差1μmの段差に対して、枠色ムラの平面範囲は段差から約30μmまで及んだ。また、段差近傍の緑色画素は画素剥がれや形状の歪みが生じた。
さらに、青色、赤色の画素膜厚も緑色同様に段差に対して厚さの影響を受け、青色については、画素剥がれが発生した。
また、緑色、青色、赤色の各色の画素感度もチップ内での均一性は劣る結果であった。
【符号の説明】
【0037】
1・・・固体撮像素子
2・・・基板
3・・・光電変換素子
4・・・配線層
5・・・層間絶縁膜
6・・・平坦化層
7・・・第2の平坦化層
8・・・マイクロレンズ
10・・・カラーフィルタ第1色
11・・・カラーフィルタ第1色の上層
12・・・カラーフィルタ第1色の下層
13・・・カラーフィルタ第2色
20・・・着色樹脂
21・・・緑色着色層
22・・・青色着色層
23・・・赤色着色層
A・・・・画素部
B・・・・多層配線部
C・・・・段差部
D・・・・段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光電変換素子を平面配置した画素部と、画素部周辺にあって画素部と電気的に接続する複数の配線層を各配線層間の層間絶縁膜を介して積層配置した多層配線部と、を有する固体撮像素子において、画素部の受光面側表面が多層配線部の上面より低い位置となるように両部の境界付近に段差が形成され、画素部の受光面側表面に各光電変換素子に対応して複数色を平面配置したカラーフィルタが形成されており、カラーフィルタの第1色が上下2層の積層構成であり、上下2層の積層構成が、画素部の有効領域に略一致して形成された一方の層と該層の領域を含んで前記段差にいたる段差部に連なって形成された他方の層とからなることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
カラーフィルタがベイヤ配列であり、前記第1色が緑色であることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
画素部の有効領域におけるカラーフィルタの第2色以降の画素膜厚が、第1色の画素膜厚より薄いことを特徴とする請求項1または2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記画素部を有する半導体基板上に、前記多層配線部を選択形成する多層配線部形成工程と、画素部と多層配線部との境界付近に段差を形成する段差形成工程と、画素部の受光面側表面に複数色のカラーフィルタを色別に順次平面配置するカラーフィルタ形成工程と、同一単位のマイクロレンズを平面配置するマイクロレンズ形成工程と、を順に有し、カラーフィルタ形成工程の1色目の工程が、前記第1色の下層を形成する工程に引き続いて、上層を重ねて形成する工程からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固体撮像素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−165791(P2011−165791A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25233(P2010−25233)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】