説明

固体撮像素子及びその駆動方法

【課題】前漏れを防止することが可能な固体撮像素子及びその駆動方法を提供する。
【解決手段】蓄積領域30aは、第一転送部20の電荷転送方向上流から下流に向かって幅の広がった形状となっており、蓄積領域30aに電荷を蓄積している状態で、第一転送部20を構成する多数の転送段のうちの最終の少なくとも3つの転送段の電荷転送方向上流側に隣接する隣接転送段に、蓄積領域30aに蓄積されている電荷とは異なる電荷が転送された際に、隣接転送段に転送された電荷が蓄積領域30aに流れ込むのを防ぐための空きパケットを、前記少なくとも3つの転送段を駆動して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCD型の固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等に搭載されるCCD型固体撮像素子は、通常、VCCD(垂直電荷転送素子)と、HCCD(水平電荷転送素子)とを備えている。インターライン型のCCD型固体撮像素子では、多数個の光電変換素子が複数行、複数列に沿って行列状に配設され、個々の光電変換素子列に1つずつVCCDが配置される。更に、各VCCDは1つのHCCDに接続される。又、VCCDとHCCDの間にラインメモリを設けた構成も知られている。
【0003】
一般的に1VCCDに接続されるHCCDの幅は、そのVCCDの幅に対して太くなっている。このため、特許文献1のように、VCCDの最終段に接続されたラインメモリの幅を、HCCDに向かうにしたがって滑らかに広げて、ラインメモリからHCCDに電荷が滑らかに転送されるようにした構造をとることが多い。しかし、このような構造をとると、ラインメモリの形状により、VCCDの最終段付近においてポテンシャルが深い方向に引っ張られた状態となってしまう。
【0004】
図8は、ラインメモリを有するCCD型固体撮像素子を6相駆動で駆動したときの、VCCDの最終段の周辺とラインメモリのポテンシャルを示す図である。図8において、記号V1〜V6はVCCDの駆動電極を示し、VLMはラインメモリの駆動電極を示す。又、ハッチングは電荷を示す。
【0005】
図8に示すように、駆動電極V4〜V6下のVCCDのポテンシャルはラインメモリの形状によって深い方向に引っ張られてしまっているため、ある光電変換素子から読み出された電荷がラインメモリに蓄積されている状態で、該光電変換素子の垂直方向隣の光電変換素子から読み出された電荷が駆動電極V2〜V5の下のVCCDに転送されると、駆動電極V2〜V5の下のVCCDに転送された電荷が、駆動電極V6下のバリアを超えてラインメモリに流れ込んでしまう、いわゆる前漏れといった現象が起こり、画質劣化を引き起こす。
【0006】
【特許文献1】特開2003−158257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、前漏れを防止することが可能な固体撮像素子及びその駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の固体撮像素子は、行方向とこれに直交する列方向に配列された多数の光電変換素子と、前記多数の光電変換素子から読み出された電荷を前記列方向に転送する第一転送部と、前記第一転送部から転送されてきた電荷を一時的に蓄積する蓄積部と、前記蓄積部から読み出した電荷を前記行方向に転送する第二転送部と、前記第二転送部から転送されてきた電荷に応じた信号を出力する出力部とを有する固体撮像素子であって、前記蓄積部は、前記第一転送部の電荷転送方向上流から下流に向かって幅の広がった形状の電荷蓄積領域を含み、前記第一転送部は、前記第一転送部に電荷が読み出される多数の光電変換素子毎に対応して同一数ずつ設けられた転送段で構成され、前記第一転送部の最終の少なくとも3つの転送段の駆動信号供給用の端子と、前記少なくとも3つの転送段以外の転送段の駆動信号供給用の端子が、それぞれ独立に設けられている。
【0009】
この構成によれば、転送容量を確保しながら、前漏れを防止した駆動が可能となる。
【0010】
本発明の固体撮像素子は、行方向とこれに直交する列方向に配列された多数の光電変換素子と、前記多数の光電変換素子から読み出された電荷を前記列方向に転送する第一転送部と、前記第一転送部から転送されてきた電荷を一時的に蓄積する蓄積部と、前記蓄積部から読み出した電荷を前記行方向に転送する第二転送部と、前記第二転送部から転送されてきた電荷に応じた信号を出力する出力部とを有する固体撮像素子であって、前記蓄積部は、前記第一転送部の電荷転送方向上流から下流に向かって幅の広がった形状の電荷蓄積領域を含み、前記第一転送部は、前記第一転送部に電荷が読み出される多数の光電変換素子毎に対応して同一数ずつ設けられた転送段と、該転送段の最終段と前記蓄積部との間に設けられた少なくとも3つの転送段とから構成され、前記少なくとも3つの転送段の駆動信号供給用の端子と、前記少なくとも3つの転送段以外の転送段の駆動信号供給用の端子が、それぞれ独立に設けられている。
【0011】
この構成によれば、転送容量を確保しながら、前漏れを防止した駆動が可能となる。
【0012】
本発明の固体撮像素子の駆動方法は、行方向とこれに直交する列方向に配列された多数の光電変換素子と、前記多数の光電変換素子から読み出された電荷を前記列方向に転送する第一転送部と、前記第一転送部から転送されてきた電荷を一時的に蓄積する蓄積部と、前記蓄積部から読み出した電荷を前記行方向に転送する第二転送部と、前記第二転送部から転送されてきた電荷に応じた信号を出力する出力部とを有する固体撮像素子の駆動方法であって、前記蓄積部は、前記第一転送部の電荷転送方向上流から下流に向かって幅の広がった形状の電荷蓄積領域を含み、前記電荷蓄積領域に前記電荷を蓄積している状態で、前記第一転送部を構成する多数の転送段のうちの最終の少なくとも3つの転送段の電荷転送方向上流側に隣接する隣接転送段に、前記電荷蓄積領域に蓄積されている電荷とは異なる電荷が転送された際に、前記隣接転送段に転送された電荷が前記電荷蓄積領域に流れ込むのを防ぐための空きパケットを、前記少なくとも3つの転送段を駆動して形成する空きパケット形成工程を含む。
【0013】
この方法によれば、前漏れを防止することができる。
【0014】
本発明の固体撮像素子の駆動方法は、前記第一転送部が、前記第一転送部に電荷が読み出される多数の光電変換素子毎に対応して同一数ずつ設けられた転送段で構成され、前記少なくとも3つの転送段を、それ以外の転送段の一部と同一の駆動を行って前記空きパケットを形成する。
【0015】
この方法によれば、端子数を減らすことができる。
【0016】
本発明の固体撮像素子の駆動方法は、前記第一転送部が、前記第一転送部に電荷が読み出される多数の光電変換素子毎に対応して同一数ずつ設けられた転送段で構成され、前記少なくとも3つの転送段を、それ以外の転送段とは独立で駆動して前記空きパケットを形成する。
【0017】
この方法によれば、転送容量を十分に確保することができるため、光電変換素子の飽和容量を大きくすることができる。
【0018】
本発明の固体撮像素子の駆動方法は、前記第一転送部の多数の転送段が、前記第一転送部に電荷が読み出される多数の光電変換素子毎に対応して同一数ずつ設けられた転送段と、該転送段の最終段と前記蓄積部との間に設けられた前記少なくとも3つの転送段とを含み、前記少なくとも3つの転送段を、それ以外の転送段とは独立で駆動して前記空きパケットを形成する。
【0019】
この方法によれば、電荷転送容量を十分に確保することができるため、光電変換素子の飽和容量を大きくすることができる。
【0020】
本発明の固体撮像素子の駆動方法は、前記光電変換素子から読み出された電荷を前記第一転送部において混合して転送する場合に、前記空きパケット形成工程を含んだ駆動を行う。
【0021】
電荷を混合して転送する場合は前漏れが発生しやすくなるため、この場合にのみ前漏れ防止駆動を行うことが効果的である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、前漏れを防止することが可能な固体撮像素子及びその駆動方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態を説明するための固体撮像素子の概略構成を示す平面図である。
図1に示す固体撮像素子200は、n型シリコン基板100上の行方向とこれに直交する列方向に配列された多数の光電変換素子10と、多数の光電変換素子10の各々から電荷読み出し領域60を介して読み出された電荷を列方向(以下、垂直方向ともいう)に転送する第一転送部20と、第一転送部20に接続されて電荷を一時的に記憶する蓄積部であるラインメモリ30と、ラインメモリ30から読み出した電荷を行方向(以下、水平方向ともいう)に転送する第二転送部40と、第二転送部40から転送されてきた電荷に応じた信号を出力する出力部50とを備える。なお、本明細書においては、第一転送部20によって転送される電荷の移動を1つの流れとみなして、個々の部材等の相対的な位置を、必要に応じて「何々の上流」、「何々の下流」等と称して特定する。
【0025】
図2は、図1に示す固体撮像素子のラインメモリ近傍の概略構成を模式的に示す部分拡大図である。
図2に示すように、第一転送部20は、n型不純物の濃度が略一定の垂直転送チャネル20aと、その上に絶縁膜を介して形成されたポリシリコン等からなる多数の駆動電極V1〜V6とを備える。第一転送部20は、1つの駆動電極と、その下方に形成された垂直転送チャネル20aの一領域とによって1つの垂直転送段が構成される。図2の例では、駆動電極V1〜V6のそれぞれによって6つの垂直転送段が構成され、第一転送部20に電荷が読み出される多数の光電変換素子10の各々に対し、この6つの垂直転送段が対応して設けられた構成となっている。又、駆動電極V2下方の垂直転送チャネル20aと光電変換素子10との間には、図1に示した電荷読み出し領域60が形成されており、駆動電極V2に高電圧を供給することで、光電変換素子10で発生して蓄積された電荷が垂直転送チャネル20aに読み出される。駆動電極V1〜V6に駆動信号φV1〜φV6が供給されることで、第一転送部20は6相駆動される。駆動信号φV1〜φV6は、それぞれL(ローレベル)、M(ミディアムレベル)、H(ハイレベル)の3つの状態をとることができる。
【0026】
第二転送部40は、行方向に延在する水平転送チャネル40aと、その上方に絶縁膜を介して形成された駆動電極H1,H2とを備える。図2の例では、駆動電極H1,H2それぞれと、その下方の水平転送チャネル40aとによって1つの水平転送段が構成され、1つの第一転送部20に対し、2つの水平転送段が対応して設けられた構成となっている。1つの水平転送段に含まれる水平転送チャネル40aの行方向の幅は、垂直転送チャネル20aの行方向の幅よりも大きくなっている。駆動電極H1,H2に駆動信号φH1,φH2が供給されることで、第二転送部40は2相駆動される。駆動信号φH1,φH2は、それぞれL(ローレベル)、H(ハイレベル)の2つの状態をとることができる。
【0027】
ラインメモリ30は、第一転送部20を転送されてきた電荷を一時的に保持するn型不純物の濃度が略一定のn型チャネル30a(特許請求の範囲の電荷蓄積領域に該当)と、その上方に絶縁膜を介して形成されたポリシリコン等からなる駆動電極VLMとによって構成されている。n型チャネル30aは、第一転送部20の電荷転送方向上流から下流に向かって行方向の幅が広がった形状となっており、垂直転送チャネル20aと水平転送チャネル40aとを接続している。
【0028】
以上のように、固体撮像素子200は、垂直転送チャネル20aを転送されてきた電荷がn型チャネル30aに一時的に蓄積され、蓄積された電荷が水平転送チャネル40aに読み出され、これが行方向に転送される仕組みになっている。
【0029】
以下、前漏れを防止するための固体撮像素子200の駆動方法について説明する。この駆動方法は、n型チャネル30aに電荷が蓄積されている状態で、第一転送部20の最終の3つの垂直転送段(駆動電極VLMから上流側に数えて3つの駆動電極V6,V5,V4で構成される垂直転送段)の電荷転送方向上流側に隣接する隣接転送段(駆動電極VLMから上流側に数えて4つ目の駆動電極V3で構成される垂直転送段)に、n型チャネル30aに蓄積されている電荷とは異なる電荷が転送された際に、隣接転送段に転送された電荷がn型チャネル30aに流れ込むのを防ぐための空きパケットを、最終の3つの垂直転送段を駆動して形成する空きパケット形成工程を含むことを特徴としている。
【0030】
本実施形態では、上述した駆動方法を、図3に示したようなタイミングで駆動信号φV1〜φV6を順次切り替えて6相駆動によって実現する。図3に示す記号HDは垂直同期信号を示す。
【0031】
図4は、第一転送部20の転送動作時の垂直転送チャネル20aのポテンシャルフローを示す図である。図4に示す記号V1〜V6は駆動電極を示す。
まず、駆動信号φV1,φV4をMにし、駆動信号φV2をHにして、駆動電極V2下に光電変換素子10から電荷を読み出す(時刻t=1)。次に、駆動信号φV2をMにする(時刻t=2)。これにより、駆動電極V1,V2下に電荷転送用パケットが形成され、駆動電極V4下に空きパケットが形成された状態となる。次に、駆動信号φV5をMにし(時刻t=3)、その後、駆動信号φV4をLにして(時刻t=4)、空きパケットを電荷転送方向下流に1垂直転送段分転送する。次に、駆動信号φV3をMにし(時刻t=5)、その後、駆動信号φV1をLにして(時刻t=6)、電荷転送用パケットを電荷転送方向下流に1垂直転送段分転送する。
【0032】
このように、空きパケットを電荷転送方向下流に1垂直転送段分転送してから、電荷転送用パケットを電荷転送方向下流に1垂直転送段分転送するといった駆動を繰り返すことで、列方向に隣接する光電変換素子から読み出された電荷が溜まっている電荷転送用パケット同士の間には、上流と下流をポテンシャルバリアによって囲まれた空きパケットが常に存在することになる。
【0033】
上記駆動を行っているときのn型チャネル30aと、その付近の垂直転送チャネル20aのポテンシャルを図5に示した。図5において、記号V1〜V6、VLMはそれぞれ駆動電極を示し、ハッチング部分は電荷を示す。
図5に示すように、駆動電極VLM下のn型チャネル30aに電荷が蓄積された時点では、駆動電極V2,V3下に別の電荷が蓄積された電荷転送用パケットが形成された状態になっているが、この電荷転送用パケットとn型チャネル30aの間には、最終の3つの垂直転送段を構成する駆動電極V4〜V6によって形成された空きパケットが存在する。このため、駆動電極V4〜V6下のポテンシャルが深い方向に引っ張られた結果、電荷転送用パケットにある電荷が駆動電極V4下のバリアを越えて下流側に流れ出た場合でも、この流れ出た電荷を駆動電極V5下の空きパケットで拾うことができ、前漏れを防ぐことができる。
【0034】
電荷転送用パケットにある電荷をn型チャネル30aに蓄積した後の駆動は、次のように行う。
図5に示す状態から、駆動信号φVLMと駆動信号φH1を制御して、n型チャネル30aに蓄積されている電荷を水平転送チャネル40aに読み出し、駆動信号φH1,φH2を制御して、読み出した電荷を出力部50まで転送する。この電荷を水平転送チャネル40aに読み出した後は、駆動信号φV1〜φV6を再び制御して、次の電荷転送用パケットをn型チャネル30aまで転送する。このとき、空きパケットに溜まっていた電荷と、電荷転送用パケットに溜まっていた電荷とはn型チャネル30aで混合される。そして、この状態では駆動電極V5下に再度空きパケットが形成されるため、前漏れは発生しない。
【0035】
以上のように、本実施形態の駆動方法によれば、前漏れを防止して高画質の撮影を可能にすることができる。
【0036】
尚、本実施形態では、最終の3つの垂直転送段の駆動を、それ以外の垂直転送段のうちの駆動電極V4〜V6で構成される垂直転送段と同じ駆動にしているが、最終の3つの垂直転送段は、それ以外の垂直転送段とは独立して駆動しても良い。この場合、最終の3つの垂直転送段に駆動信号を供給するための端子と、それ以外の垂直転送段に駆動信号を供給するための端子とは独立に設けておくことになるため、端子数は増加してしまう。しかし、最終の3つの垂直転送段を独立で駆動することにより、最終の3つの垂直転送段以外の垂直転送段において空きパケットを形成する必要がなくなるため、電荷読み出し時の電荷転送用パケットの容量を大きくとることが可能になる。この結果、光電変換素子10の飽和容量を増やすことができる。例えば、固体撮像素子200の構成の場合には、最終の3つの垂直転送段を独立で駆動することで、電荷読み出し時の電荷転送用パケットを3つの垂直転送段で構成することができるようになり、独立に駆動しない場合に比べて1垂直転送段分、容量を大きくすることができる。
【0037】
又、前漏れは、光電変換素子10に蓄積される電荷の量が多い場合に特に問題となるため、上述した前漏れ防止用の駆動を、1つの電荷転送用パケットに蓄積する電荷量が多くなる場合にのみ行うようにしても良い。このような場合とは、例えば、複数の光電変換素子の各々から読み出された電荷を第一転送部20で混合して転送する電荷混合読み出しを行う動画撮影モードや、低感度撮影モードに設定された場合等である。つまり、動画撮影モードや低感度撮影モードに設定されたときは上述した駆動を行い、静止画撮影モードや高感度撮影モードに設定されたときは、一般に知られている6相駆動を行うようにしても、十分に画質を維持することは可能である。
【0038】
又、本実施形態では、空きパケットの容量を1垂直転送段分にしているが、これに限らず、第一転送部20を構成する多数の垂直転送段の最終の4つ以上の垂直転送段を駆動して、複数垂直転送段分の容量を持つ空きパケットを形成するようにしても良い。これを実現するためには、1つの光電変換素子10に対して設ける垂直転送段の数を適宜調整したり、電荷読み出し時の電荷転送用パケットの容量を適宜調整したりする必要がある。例えば、1つの光電変換素子10に対して8つの垂直転送段を設け、電荷読み出し時の電荷転送用パケットの容量を3垂直転送段分にすれば、2つの空きパケットを形成することが可能である。
【0039】
(第二実施形態)
本実施形態の固体撮像素子の構成は、第一実施形態で説明した固体撮像素子200の第一転送部20の構成に、空きパケット形成用の3つの垂直転送段を追加したことと、駆動方法とが異なる。
【0040】
図6は、図1に示す固体撮像素子のラインメモリ近傍の概略構成の変形例を模式的に示す部分拡大図である。図6において図2と同様の構成には同一符号を付してある。
図6に示す第一転送部20は、n型不純物の濃度が略一定の垂直転送チャネル20aと、その上に絶縁膜を介して形成されたポリシリコン等からなる多数の駆動電極V1〜V9とを備える。第一転送部20は、1つの駆動電極と、その下方に形成された垂直転送チャネル20aの一領域とによって1つの垂直転送段が構成される。図6の例では、駆動電極V1〜V6のそれぞれによって6つの垂直転送段が構成され、第一転送部20に電荷が読み出される多数の光電変換素子10の各々に対し、この6つの垂直転送段が対応して設けられ、駆動電極V7〜V9のそれぞれによって構成された空きパケット形成用の3つの垂直転送段が、第一転送部20に電荷が読み出される多数の光電変換素子10毎に対応して設けられた多数の垂直転送段の最終段とラインメモリ30との間に設けられた構成となっている。
【0041】
本実施形態の固体撮像素子には、空きパケット形成用の3つの垂直転送段に駆動信号を供給するための端子と、それ以外の垂直転送段に駆動信号を供給するための端子とが独立に設けられており、空きパケット形成用の3つの垂直転送段と、それ以外の垂直転送段とは、それぞれ独立に駆動される。
【0042】
駆動電極V7〜V9には、それぞれ駆動信号φV7〜φV9が供給される。駆動信号φV7〜φV9は、それぞれL(ローレベル)、M(ミディアムレベル)、H(ハイレベル)の3つの状態をとることができる。駆動電極V1〜V6には、それぞれ駆動信号φV1〜φV6が供給され、空きパケット形成用の3つの垂直転送段以外の垂直転送段は6相駆動される。この6相駆動は一般に知られている様々な方法を採用することができる。本実施形態では、電荷読み出し時の電荷転送用パケットを4つの垂直転送段で形成し、これを順次下流に転送していく方法を採用する。
【0043】
以下、前漏れを防止するための本実施形態の固体撮像素子200の駆動方法について説明する。この駆動方法は、n型チャネル30aに電荷が蓄積されている状態で、第一転送部20の空きパケット形成用の3つの垂直転送段の電荷転送方向上流側に隣接する隣接転送段(駆動電極VLMから上流側に数えて4つ目の駆動電極V6で構成される垂直転送段)に、n型チャネル30aに蓄積されている電荷とは異なる電荷が転送された際に、隣接転送段に転送された電荷がn型チャネル30aに流れ込むのを防ぐための空きパケットを、空きパケット形成用の垂直転送段を駆動して形成する空きパケット形成工程を含むことを特徴としている。
【0044】
空きパケット形成工程時のn型チャネル30aと、その付近の垂直転送チャネル20aのポテンシャルを図7に示した。図7において、記号V1〜V9、VLMはそれぞれ駆動電極を示し、ハッチング部分は電荷を示す。
図7に示すように、駆動電極VLM下のn型チャネル30aに電荷が蓄積された状態で、駆動電極V3〜V6下に別の電荷が蓄積された電荷転送用パケットが形成された状態になると、この電荷転送用パケットとn型チャネル30aの間には、駆動電極V7〜V9によって形成された空きパケットが形成される。このため、駆動電極V7〜V9下のポテンシャルが深い方向に引っ張られた結果、電荷転送用パケットにある電荷が駆動電極V7下のバリアを越えて下流側に流れ出た場合でも、この流れ出た電荷を駆動電極V8下の空きパケットで拾うことができ、前漏れを防ぐことができる。
【0045】
電荷転送用パケットにある電荷をn型チャネル30aに蓄積するまでの駆動は、例えば次のように行う。
図7に示す状態から、駆動信号φVLMと駆動信号φH1を制御して、n型チャネル30aに蓄積されている電荷を水平転送チャネル40aに読み出し、駆動信号φH1,φH2を制御して、読み出した電荷を出力部50まで転送する。この電荷を水平転送チャネル40aに読み出した後は、駆動信号φV7〜φV9をそれぞれMにし、駆動信号φV1〜φV6を制御して、次の電荷転送用パケットにある電荷をn型チャネル30aに蓄積する。このとき、空きパケットに溜まっていた電荷と、電荷転送用パケットに溜まっていた電荷とはn型チャネル30aで混合される。そして、更に駆動信号φV1〜φV6を制御し、駆動電極V6下に次の電荷転送用パケットが形成されるタイミングで、駆動信号φ7,φ9をL、駆動信号φ8をMにして空きパケットを形成して、図7に示すような状態に戻る。
【0046】
以上のように、本実施形態の駆動方法によれば、前漏れを防止して高画質の撮影を可能にすることができる。
【0047】
又、本実施形態の固体撮像素子によれば、空きパケット形成用の垂直転送段を、従来からある垂直転送段とは全く別に設けたため、第一実施形態の固体撮像素子に比べ、電荷転送用パケットの容量を大きくすることが可能となる。
【0048】
尚、空きパケット形成用の垂直転送段は3つ以上設けても良い。3つ以上設けた場合は、空きパケットの容量をより大きくすることができる。
【0049】
又、本実施形態の固体撮像素子においても、上述した前漏れ防止用の駆動を、1つの電荷転送用パケットに蓄積する電荷量が多くなる場合にのみ行うようにしても良い。
【0050】
第一実施形態、第二実施形態では、固体撮像素子の光電変換素子が正方格子状に配列されたものを例に挙げたが、光電変換素子の配列はこれに限らず、例えば、特開平10−136391号公報に記載されたような、いわゆるハニカム配列であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第一実施形態を説明するための固体撮像素子の概略構成を示す平面図
【図2】図1に示す固体撮像素子のラインメモリ近傍の概略構成を模式的に示す部分拡大図
【図3】本発明の第一実施形態を説明するための固体撮像素子の駆動タイミングを示す図
【図4】図1に示す固体撮像素子の第一転送部の転送動作時の垂直転送チャネルのポテンシャルフローを示す図
【図5】第一実施形態の固体撮像素子において、前漏れ駆動を行っているときのラインメモリ付近の垂直転送チャネルのポテンシャルを示す図
【図6】図1に示す固体撮像素子のラインメモリ近傍の概略構成の変形例を模式的に示す部分拡大図
【図7】第二実施形態の固体撮像素子において、前漏れ駆動を行っているときのラインメモリ付近の垂直転送チャネルのポテンシャルを示す図
【図8】ラインメモリを有するCCD型固体撮像素子を6相駆動で駆動したときの、VCCDの最終段の周辺とラインメモリのポテンシャルを示す図
【符号の説明】
【0052】
10 光電変換素子
20 第一転送部
20a 垂直転送チャネル
30 ラインメモリ
30a n型チャネル
LM ラインメモリ用駆動電極
40 第二転送部
40a 水平転送チャネル
50 出力部
60 電荷読み出し領域
100 シリコン基板
200 固体撮像素子
V1〜V6 垂直転送チャネル用駆動電極
H1,H2 水平転送チャネル用駆動電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
行方向とこれに直交する列方向に配列された多数の光電変換素子と、前記多数の光電変換素子から読み出された電荷を前記列方向に転送する第一転送部と、前記第一転送部から転送されてきた電荷を一時的に蓄積する蓄積部と、前記蓄積部から読み出した電荷を前記行方向に転送する第二転送部と、前記第二転送部から転送されてきた電荷に応じた信号を出力する出力部とを有する固体撮像素子であって、
前記蓄積部は、前記第一転送部の電荷転送方向上流から下流に向かって幅の広がった形状の電荷蓄積領域を含み、
前記第一転送部は、前記第一転送部に電荷が読み出される多数の光電変換素子毎に対応して同一数ずつ設けられた転送段で構成され、
前記第一転送部の最終の少なくとも3つの転送段の駆動信号供給用の端子と、前記少なくとも3つの転送段以外の転送段の駆動信号供給用の端子が、それぞれ独立に設けられている固体撮像素子。
【請求項2】
行方向とこれに直交する列方向に配列された多数の光電変換素子と、前記多数の光電変換素子から読み出された電荷を前記列方向に転送する第一転送部と、前記第一転送部から転送されてきた電荷を一時的に蓄積する蓄積部と、前記蓄積部から読み出した電荷を前記行方向に転送する第二転送部と、前記第二転送部から転送されてきた電荷に応じた信号を出力する出力部とを有する固体撮像素子であって、
前記蓄積部は、前記第一転送部の電荷転送方向上流から下流に向かって幅の広がった形状の電荷蓄積領域を含み、
前記第一転送部は、前記第一転送部に電荷が読み出される多数の光電変換素子毎に対応して同一数ずつ設けられた転送段と、該転送段の最終段と前記蓄積部との間に設けられた少なくとも3つの転送段とから構成され、
前記少なくとも3つの転送段の駆動信号供給用の端子と、前記少なくとも3つの転送段以外の転送段の駆動信号供給用の端子が、それぞれ独立に設けられている固体撮像素子。
【請求項3】
行方向とこれに直交する列方向に配列された多数の光電変換素子と、前記多数の光電変換素子から読み出された電荷を前記列方向に転送する第一転送部と、前記第一転送部から転送されてきた電荷を一時的に蓄積する蓄積部と、前記蓄積部から読み出した電荷を前記行方向に転送する第二転送部と、前記第二転送部から転送されてきた電荷に応じた信号を出力する出力部とを有する固体撮像素子の駆動方法であって、
前記蓄積部は、前記第一転送部の電荷転送方向上流から下流に向かって幅の広がった形状の電荷蓄積領域を含み、
前記電荷蓄積領域に前記電荷を蓄積している状態で、前記第一転送部を構成する多数の転送段のうちの最終の少なくとも3つの転送段の電荷転送方向上流側に隣接する隣接転送段に、前記電荷蓄積領域に蓄積されている電荷とは異なる電荷が転送された際に、前記隣接転送段に転送された電荷が前記電荷蓄積領域に流れ込むのを防ぐための空きパケットを、前記少なくとも3つの転送段を駆動して形成する空きパケット形成工程を含む固体撮像素子の駆動方法。
【請求項4】
請求項3記載の固体撮像素子の駆動方法であって、
前記第一転送部は、前記第一転送部に電荷が読み出される多数の光電変換素子毎に対応して同一数ずつ設けられた転送段で構成され、
前記少なくとも3つの転送段を、それ以外の転送段の一部と同一の駆動を行って前記空きパケットを形成する固体撮像素子の駆動方法。
【請求項5】
請求項3記載の固体撮像素子の駆動方法であって、
前記第一転送部は、前記第一転送部に電荷が読み出される多数の光電変換素子毎に対応して同一数ずつ設けられた転送段で構成され、
前記少なくとも3つの転送段を、それ以外の転送段とは独立で駆動して前記空きパケットを形成する固体撮像素子の駆動方法。
【請求項6】
請求項3記載の固体撮像素子の駆動方法であって、
前記第一転送部の多数の転送段は、前記第一転送部に電荷が読み出される多数の光電変換素子毎に対応して同一数ずつ設けられた転送段と、該転送段の最終段と前記蓄積部との間に設けられた前記少なくとも3つの転送段とを含み、
前記少なくとも3つの転送段を、それ以外の転送段とは独立で駆動して前記空きパケットを形成する固体撮像素子の駆動方法。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか記載の固体撮像素子の駆動方法であって、
前記光電変換素子から読み出された電荷を前記第一転送部において混合して転送する場合に、前記空きパケット形成工程を含んだ駆動を行う固体撮像素子の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−27978(P2007−27978A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204601(P2005−204601)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】