説明

固体撮像素子

【課題】一般的なCMOS製造プロセスを適用した場合においても、イメージセンサ特性の劣化を生じさせず、また、製造プロセス上の制約を受けることなく、フォトダイオード上に形成された反射防止膜の膜厚を最適化できる構造を有する固体撮像素子を提供する。
【解決手段】固体撮像素子は、シリコン基板10における上部に形成された光電変換を行うフォトダイオード11と、シリコン基板10上に、フォトダイオード11を覆うように形成されたシリコン酸化膜17と、シリコン酸化膜17の上に形成されたシリコン窒化膜18とを備える。シリコン窒化膜18は、フォトダイオード11の全部又は一部の上において、シリコン窒化膜18における少なくとも端部の膜厚よりも薄い膜厚部分を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCMOSイメージセンサなどの固体撮像素子及びその製造方法に関し、特に半導体基板に形成されたフォトダイオード上に反射防止膜を備えた固体撮像素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子として、画素部と周辺のCMOSロジック回路部とからなるCMOSイメージセンサが知られている。CMOSイメージセンサは、高い量子効率、高ダイナミックレンジ、及びランダムアクセスといった長所を持ち、製造プロセスにおいてはCMOSプロセスとの互換性を実現し易いことから、A/Dコンバーターや様々な信号処理回路を同一チップ内に形成することが可能となる。このような固体撮像素子においては近年、多画素化や画素寸法の縮小が急激に進んでおり、感度の維持又は向上が大きな課題となってきている。
【0003】
固体撮像素子では、受光部としてフォトダイオードが半導体基板に形成されており、フォトダイオード上に形成されている層間絶縁膜(通常はシリコン酸化膜)と半導体基板を構成するシリコンとの屈折率の差により、半導体基板表面において入射した光の一部が上方へ反射することから、フォトダイオードまで到達する光が低減し、感度の低下を招く。この対策として、例えばシリコン基板上にシリコン酸化膜を介してシリコン窒化膜からなる反射防止膜を設けることにより、多重干渉効果を利用して入射光の損失を低減し、感度の向上を図ることが知られている。
【0004】
以下で説明するように、CMOSイメージセンサの製造方法の一例として、CMOSプロセスとの互換性を維持しつつフォトダイオード上に反射防止膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図11(a)〜(e)は、上記特許文献1に開示された従来の固体撮像素子の製造方法を工程順に示す要部工程断面図である。
【0006】
まず、図11(a)に示すように、画素部を構成するフォトダイオード領域100AとCMOSロジック回路部を構成するトランジスタ領域100Bとを有する半導体基板100に、シリコン酸化膜からなる素子分離領域101を形成する。続いて、半導体基板100上に、熱酸化によってシリコン酸化膜106を形成し、その後、減圧CVD法によってポリシリコン膜108を形成する。
【0007】
次に、図11(b)に示すように、フォトリソグラフィー及びエッチング技術により、シリコン酸化膜106及びポリシリコン膜108をパターニングして、ゲート酸化膜106a及びゲート電極108aを形成する。続いて、イオン注入110を施すことにより、トランジスタ領域100Bにおいては、ゲート電極108aがマスクとなって、半導体基板100におけるゲート電極108aの外側方下の領域に低濃度不純物拡散層112を形成すると同時に、フォトダイオード領域100Aにおいては、半導体基板100における上部に低濃度不純物拡散層112を形成する。
【0008】
次に、図11(c)に示すように、減圧CVD法を用いて、半導体基板100の全面にシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜を堆積した後に、異方性エッチングを行うことにより、ゲート電極108aの側面にサイドウォールスペーサ114を形成する。続いて、イオン注入118を施すことにより、トランジスタ領域100Bにおいては、半導体基板100におけるサイドウォールスペーサ114の外側方下の領域にソース・ドレイン拡散層1
20を形成すると同時に、フォトダイオード領域100Aにおいては、高濃度不純物拡散層122を形成する。
【0009】
次に、図11(d)に示すように、フォトダイオード領域100Aにおいて、素子分離領域101及び高濃度不純物拡散層122の上に、シリコン酸化膜からなるシリサイド形成防止膜124を形成する。続いて、サリサイド法によって、ゲート電極108aの上面及びソース・ドレイン拡散層120の上面にシリサイド層126を形成する。
【0010】
次に、図11(e)に示すように、プラズマCVD法を用いて、半導体基板100上のフォトダイオード領域100A及びトランジスタ領域100Bを含む全面に、シリコン窒化膜からなるライナー層128を形成する。このとき、フォトダイオード領域100Aにおいては、シリコン窒化膜からなるライナー層128は、シリコン酸化膜からなるシリサイド形成防止膜124とは異なる屈折率を有し、反射防止膜として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許US6,906,364B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上記従来の固体撮像素子の製造方法においては、図11(c)に示すように、トランジスタのサイドウォールスペーサ114を構成するシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜は、フォトダイオード領域100Aにおいては、サイドウォールスペーサ114形成時のドライエッチングによって除去される。このため、同工程において、フォトダイオード表面には、ドライエッチング時に半導体基板の表面荒れや予期せぬ金属不純物などの半導体基板への打ち込みが発生することにより、イメージセンサ特性の劣化(感度低下、感度ばらつき増大、及び暗電流の増加)が生じるという問題があった。
【0013】
また、図11(e)に示すように、シリコン窒化膜からなるライナー層128は、フォトダイオード領域100Aにおいては反射防止膜として用いられるが、CMOSの製造プロセスにおける例えばコンタクトホール形成時にエッチングストッパーとして機能するライナー層として要求される膜厚(20〜30nm程度)と、反射防止膜として要求される最適な膜厚(30〜80nm程度)とを一致させることは製造上困難であるため、フォトダイオード領域100Aにおいて十分な反射防止効果を得ることができないという問題もあった。
【0014】
前記に鑑み、本発明の目的は、一般的なCMOS製造プロセスを適用した場合においても、イメージセンサ特性の劣化(感度低下、感度ばらつき増大、及び暗電流の増加)を生じさせることがない構造を有する固体撮像素子及びその製造方法を提供することである。また、製造プロセス上の制約を受けることなく、フォトダイオード上に形成された反射防止膜の膜厚を最適化できる構造を有する固体撮像素子及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の形態に係る固体撮像素子は、半導体基板における上部に形成された光電変換を行うフォトダイオードと、半導体基板上に、フォトダイオードを覆うように形成された第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜の上に形成された第2の絶縁膜とを備え、第2の絶縁膜は、フォトダイオードの全部又は一部の上において、第2の絶縁膜における少なくとも端部の膜厚よりも薄い膜厚部分を有し、第2の絶縁膜上に形成され、第2の絶縁膜におけるフォトダイオード上の全部又は一部分を露出する開口部を有する第3の絶縁膜をさらに備え、第2の絶縁膜と第3の絶縁膜とは、フォトダイオードが形成されている領域以外の領域で積層されている。
【0016】
本発明の第1の形態に係る固体撮像素子において、第2の絶縁膜と前記第3の絶縁膜とは、転送ゲートのゲート電極の上で積層されている。
【0017】
この場合、第2の絶縁膜における少なくとも端部の膜厚よりも薄い膜厚部分は、第2の絶縁膜における開口部に露出する部分である。
【0018】
本発明の第2の形態に係る固体撮像素子は、半導体基板における上部に形成された光電変換を行うフォトダイオードと、半導体基板上におけるフォトダイオードと電気的に分離される領域に形成され、ゲート電極の側面にサイドウォールスペーサを有するトランジスタと、半導体基板上に、フォトダイオードを覆うように形成された第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜の上に形成された第2の絶縁膜とを備え、サイドウォールスペーサは、ゲート電極の側面に近い側から順に形成された第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜の積層構造よりなり、半導体基板の全面上にトランジスタを覆うように形成され、第2の絶縁膜におけるフォトダイオード上の全部又は一部分を露出する開口部を有する第3の絶縁膜をさらに備え、第2の絶縁膜と第3の絶縁膜とは、フォトダイオードが形成されている領域以外の領域で積層されている。
【0019】
本発明の第2の形態に係る固体撮像素子において、第2の絶縁膜は、フォトダイオードの全部又は一部の上において、第2の絶縁膜における少なくとも端部の膜厚よりも薄い膜厚部分を有している。
【0020】
本発明の第2の形態に係る固体撮像素子において、第2の絶縁膜と前記第3の絶縁膜とは、転送ゲートのゲート電極の上で積層されている。
【0021】
この場合、第2の絶縁膜における少なくとも端部の膜厚よりも薄い膜厚部分は、第2の絶縁膜における開口部に露出する部分である。
【0022】
本発明の第1又は第2の形態に係る固体撮像素子において、第2の絶縁膜の屈折率は、第1の絶縁膜の屈折率と異なり、第2の絶縁膜の膜厚は、30nm以上であって且つ80nm以下である。
【0023】
本発明の第1又は第2の形態に係る固体撮像素子において、第1の絶縁膜はシリコン酸化膜よりなり、第2の絶縁膜はシリコン窒化膜よりなる。
【0024】
本発明の第1又は第2の形態に係る固体撮像素子において、第1の絶縁膜はシリコン酸化膜よりなり、第2の絶縁膜及び第3の絶縁膜はシリコン窒化膜よりなる。
【0025】
本発明の一形態に係る固体撮像素子の製造方法は、半導体基板における上部に形成された光電変換を行うフォトダイオードと、半導体基板上におけるフォトダイオードと電気的に分離される領域に形成され、フォトダイオードにて光電変換された信号を処理するトランジスタとを備えた固体撮像素子の製造方法であって、フォトダイオードが形成される領域とトランジスタが形成される領域とが電気的に分離するように、半導体基板に素子分離領域を形成する工程(a)と、フォトダイオードが形成される領域において、半導体基板における上部に拡散層よりなるフォトダイオードを形成し、トランジスタが形成される領域において、半導体基板上にトランジスタを形成する工程(b)と、半導体基板の上に、フォトダイオード及びトランジスタを覆うように、第1の絶縁膜を形成する工程(c)と、第1の絶縁膜の上に、第2の絶縁膜を形成する工程(d)と、第2の絶縁膜におけるフォトダイオード上の全部又は一部分を覆う第1のレジストパターンを形成する工程(e)と、第1のレジストパターンをマスクに用いたエッチングにより、フォトダイオード上に第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜を残存させると共に、トランジスタを構成するゲート電極の側面に第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜よりなるサイドウォールスペーサを形成する工程
(f)と、第1のレジストパターンを除去する工程(g)とを備え、工程(g)の後に、半導体基板の全面に、トランジスタを覆うように、第3の絶縁膜を形成する工程(j)と、第3の絶縁膜におけるフォトダイオード上の全部又は一部分を露出する開口部を有する第3のレジストパターンを形成する工程(k)と、第3のレジストパターンをマスクに用いたエッチングにより、第3の絶縁膜におけるフォトダイオード上の全部又は一部分を除去することにより、第2の絶縁膜におけるフォトダイオード上の全部又は一部分を露出する工程(l)とをさらに備え、第2の絶縁膜と前記第3の絶縁膜とは、フォトダイオードが形成されている領域以外の領域で積層される。
【0026】
本発明の一形態に係る固体撮像素子の製造方法において、第2の絶縁膜と前記第3の絶縁膜とは、転送ゲートのゲート電極の上で積層されている。
【0027】
この場合、工程(l)は、第2の絶縁膜におけるフォトダイオード上の全部又は一部分を露出すると共に、第2の絶縁膜におけるフォトダイオード上の全部又は一部分を薄膜化する工程を含む。
【0028】
本発明の一形態に係る固体撮像素子の製造方法において、第2の絶縁膜の屈折率は、第1の絶縁膜の屈折率と異なり、第2の絶縁膜の膜厚は、30nm以上であって且つ80nm以下である。
【0029】
本発明の一形態に係る固体撮像素子の製造方法において、第1の絶縁膜はシリコン酸化膜よりなり、第2の絶縁膜はシリコン窒化膜よりなる。
【0030】
本発明の一形態に係る固体撮像素子の製造方法において、第1の絶縁膜はシリコン酸化膜よりなり、第2の絶縁膜及び第3の絶縁膜はシリコン窒化膜よりなる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る固体撮像素子及びその製造方法によると、一般的なCMOS製造プロセスを適用した場合においても、半導体基板の表面荒れや金属不純物の半導体基板への打ち込みに起因する、イメージセンサ特性の劣化(感度低下、感度ばらつき増大、及び暗電流の増加)の発生を抑制することが可能となる。また、製造プロセス上の制約を受けることなく、フォトダイオード上に形成された反射防止膜の膜厚を最適化できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像素子の構造を示す図であって、具体的にはCMOSイメージセンサを例として示しており、(a)は平面図であり、(b)は(a)のIb-Ib線に対応する断面図である。
【図2】(a)及び(b)は、本発明の第1の本実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を工程順に示す要部断面図であって、図1(b)の断面に対応する工程断面図である。
【図3】(a)及び(b)は、本発明の第1の本実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を工程順に示す要部断面図であって、図1(b)の断面に対応する工程断面図である。
【図4】(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の構造を示す図であって、具体的にはCMOSイメージセンサを例として示しており、(a)は平面図であり、(b)は(a)のIVb-IVb線に対応する断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す工程断面図であって、図4(a)のIVb-IVb線に対応する工程断面図である。
【図6】(a)及び(b)は、本発明の第3の実施形態に係る固体撮像素子の構造を示す図であって、具体的にはCMOSイメージセンサを例として示しており、(a)は平面図であり、(b)は(a)のVIb-VIb線に対応する断面図である。
【図7】(a)及び(b)は、本発明の第3の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す工程断面図であって、上述の図6(a)のVIb-VIb線に対応する工程断面図である。
【図8】(a)及び(b)は、本発明の第4の実施形態に係る固体撮像素子の構造を示す図であって、具体的にはCMOSイメージセンサを例として示しており、(a)は平面図であり、(b)は(a)のVIIIb-VIIIb線に対応する断面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す工程断面図であって、図8(a)のVIIIb-VIIIb線に対応する工程断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法において、サリサイド層が露出した構造を比較例として示した断面図である。
【図11】(a)〜(e)は、従来の固体撮像素子の製造方法を工程順に示す要部工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0034】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る固体撮像素子及びその製造方法について説明する。
【0035】
まず、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像素子の構造について説明する。
【0036】
図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像素子の構造を示す図であって、具体的にはCMOSイメージセンサを例として示しており、(a)は平面図であり、(b)は(a)のIb-Ib線に対応する断面図である。
【0037】
図1(a)に示す平面図では、複数の画素をアレイ状に配置した構造の要部が示されており、光電変換を行うフォトダイオード11を含む活性領域1、転送ゲートを構成するゲート電極16、n型拡散層からなる浮遊拡散層14、リセットトランジスタを構成するゲート電極4、アンプトランジスタを構成するゲート電極5、及び、活性領域1におけるフ
ォトダイオード11上のシリコン酸化膜17(図示せず)及びシリコン窒化膜18からなる積層構造が形成されている。
【0038】
図1(b)に示す断面図では、シリコン基板10上に、画素部を構成する光電変換を行うフォトダイオード11が形成されたセンサ領域10Aと、図1(a)には示されていないCMOSロジック回路部を構成するMOSトランジスタが形成されたトランジスタ領域10Bとが示されている。
【0039】
具体的に、図1(b)に示すように、センサ領域10Aにおいては、n型のシリコン基板10内には素子分離領域12が形成されており、素子分離領域12によって区画された素子形成領域には、活性領域1を構成する深いp型ウェル13が形成されている。p型ウェル13の上部には、n型拡散層からなるフォトダイオード11が形成されている。シリコン基板10上におけるフォトダイオード11に隣接する領域には、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜15を介して、ポリシリコン膜からなる転送ゲートのゲート電極16が形成されている。
【0040】
ゲート電極16の側面には、断面形状がL字状のシリコン酸化膜19a及び該シリコン酸化膜19aの内側表面に形成されたシリコン窒化膜19bからなるサイドウォールスペーサ19が形成されている。シリコン基板10におけるゲート電極16の外側方下の領域には、低濃度不純物拡散層35が形成されており、低濃度不純物拡散層35の内側には浮遊拡散層14が形成されている。フォトダイオード11上には、素子分離領域12上から、転送ゲートのゲート電極16におけるフォトダイオード11が形成されている側の側面及び上面の一部にかけて、上記サイドウォールスペーサ19の積層構造と同じシリコン酸化膜17及びシリコン窒化膜18からなる積層構造が形成されている。
【0041】
一方、図1(b)に示すように、トランジスタ領域10Bにおいては、シリコン基板10内には素子分離領域12が形成されており、素子分離領域12によって区画された素子形成領域には、活性領域1を構成する深いp型ウェル21が形成されている。シリコン基板10上には、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜15を介して、ポリシリコン膜からなるトランジスタのゲート電極24が形成されており、該ゲート電極24の側面には、サイドウォールスペーサ19の積層構造と同じ断面形状がL字状のシリコン酸化膜25a及び該シリコン酸化膜25aの内側表面に形成されたシリコン窒化膜25bからなる積層構造のサイドウォールスペーサ25が形成されている。シリコン基板10におけるゲート電極24の外側方下の領域には、低濃度不純物拡散層36が形成されており、シリコン基板10におけるサイドウォールスペーサ25の外側方下の領域には、トランジスタのソース拡散層22及びドレイン拡散層23が形成されている。
【0042】
次に、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法について説明する。
【0043】
図2(a)及び(b)並びに図3(a)及び(b)は、本発明の第1の本実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を工程順に示す要部断面図であって、上記図1(b)の断面に対応する工程断面図である。なお、シリコン基板10に形成する素子分離領域12、p型ウェル13及び21、並びにフォトダイオード11は、公知の方法で形成されるものであって、当該固体撮像素子の製造方法の説明では説明の簡易化のためにその具体的な説明は省略する。
【0044】
まず、図2(a)に示すように、センサ領域10A及びトランジスタ領域10Bにおいて、n型のシリコン基板10内には素子分離領域12が形成されており、素子分離領域12によって区画された素子形成領域には、活性領域1を構成する深いp型ウェル13及び21が形成されている。また、センサ領域10Aにおいて、p型ウェル13の上部には、
n型の拡散層からなるフォトダイオード11が形成されている。この状態で、センサ領域10A及びトランジスタ領域10Bにおいて、フォトダイオード11が形成されたシリコン基板10上に、熱酸化により、膜厚が10nm程度のシリコン酸化膜31を形成した後、シリコン酸化膜31及び素子分離領域12の上に、減圧CVD法により、膜厚が200nm程度のポリシリコン膜32を堆積する。
【0045】
次に、図2(b)に示すように、センサ領域10A及びトランジスタ領域10Bにおいて、ポリシリコン膜32及びシリコン酸化膜31をパターニングすることにより、センサ領域50においては、シリコン酸化膜31からなるゲート絶縁膜15を介してポリシリコン膜32からなる転送ゲートのゲート電極16を形成すると共に、トランジスタ領域10Bにおいては、ポリシリコン膜32からなるトランジスタのゲート電極24を形成する。続いて、センサ領域10Aにおいて、フォトダイオード11上を覆うように、素子分離領域12上から、転送ゲートのゲート電極16におけるフォトダイオード11が形成されている側の側面及び上面の一部にかけてレジストパターン33を形成する。レジストパターン33をマスクに用いてリンイオンのイオン注入34を行うことにより、センサ領域10Aにおいては、p型ウェル領域13におけるゲート電極16の外側方下の領域に低濃度不純物拡散層35を形成すると共に、トランジスタ領域10Bにおいては、シリコン基板10におけるトランジスタのゲート電極24の外側方下の領域に低濃度不純物拡散層36を形成する。ここで、リンイオンを用いたイオン注入34は、例えば加速エネルギーが45keVであって且つ注入ドーズ量が5×1012cm−2程度の条件下で、シリコン基板10に向けて注入するとよい。
【0046】
次に、図3(a)に示すように、センサ領域10A及びトランジスタ領域10Bにおいて、シリコン基板10の全面に、減圧CVD法により、膜厚が20nm程度のシリコン酸化膜37を堆積した後、該シリコン酸化膜37の上に、減圧CVD法により、膜厚が80nm程度のシリコン窒化膜38を堆積する。このとき、シリコン窒化膜38は、トランジスタの電気特性を最適化するために必要なサイドウォールスペーサ幅を確保できる膜厚分だけ堆積される。また、シリコン窒化膜38は、以降の工程における薬液を用いた洗浄等が加わった場合においても、膜減りや膜質劣化の影響を抑える必要があるため、緻密で安定した膜質を実現できるように、上述の通り減圧CVD法によって形成することが最適である。さらに、シリコン窒化膜38は、後述のように、フォトダイオード11上に残存させるため、入射光の透過性、すなわち透明性を確保することが要求される。
【0047】
次に、図3(b)に示すように、素子分離領域12上から、フォトダイオード11上を含んで転送ゲートのゲート電極16の上面の一部までを覆う一方で、転送ゲート電極16の上面の一部及び後述のサイドウォールスペーサ19から素子分離領域12上の一部までを開口するレジストパターン39をセンサ領域10Aに形成する。レジストパターン39をマスクとして、異方性ドライエッチングを行うことにより、シリコン窒化膜38及びシリコン酸化膜37を順次エッチング除去する。これにより、センサ領域10Aにおいては、転送ゲートのゲート電極16におけるフォトダイオード11が形成されていない側の側面に、断面形状L字状のシリコン酸化膜19a及び該シリコン酸化膜19aの内側表面上に形成されたシリコン窒化膜19bの積層構造からなるサイドウォールスペーサ19を形成すると共に、トランジスタ領域10Bにおいては、トランジスタのゲート電極24の両側面に、断面形状L字状のシリコン酸化膜25a及び該シリコン酸化膜25aの内側表面上に形成されたシリコン窒化膜25bの積層構造からなるサイドウォールスペーサ25を形成する。
【0048】
続いて、センサ領域10Aでは、レジストパターン39、転送ゲートのゲート電極16、及びサイドウォールスペーサ19、トランジスタ領域10Bでは、トランジスタのゲート電極24、及びサイドウォールスペーサ25をマスクとして、ヒ素イオンのイオン注入
40を行うことにより、センサ領域10Aにおいては、p型ウェル13におけるゲート電極16の外側方下の領域に浮遊拡散層14を形成すると共に、トランジスタ領域10Bにおいては、p型ウェル領域21におけるサイドウォールスペーサ25の外側方下の領域にソース拡散層22及びドレイン拡散層23を形成する。このとき、ヒ素イオンのイオン注入は、例えば加速エネルギーが50keVであって且つ注入ドーズ量が2×1015cm−2程度の条件下で、シリコン基板10に向けて注入するとよい。その後、レジストパターン39を除去することにより、上記図1(b)に示した構造を有する本実施形態に係る固体撮像素子が形成される。
【0049】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像素子及びその製造方法によると、一般的なCMOS製造プロセスを適用した場合においても、トランジスタのサイドウォールスペーサ形成時には、フォトダイオード11上に堆積されたシリコン酸化膜37及びシリコン窒化膜38はエッチングされずに残存するため、サイドウォールスペーサを形成するためのドライエッチング時にフォトダイオード11の表面において、半導体基板の表面荒れや予期せぬ金属不純物などの半導体基板への打ち込みが発生することがない。このため、半導体基板の表面荒れや金属不純物の半導体基板への打ち込みに起因する、イメージセンサ特性の劣化(感度低下、感度ばらつき増大、及び暗電流の増加)の発生を抑制することが可能となる。
【0050】
なお、本実施形態では、図1(a)に示したように、1画素1セルの構成を有する固体撮像素子の場合を例に説明したが、後述の第4の実施形態のように、複数の画素で、転送ゲート、浮遊拡散層、リセットトランジスタ、及び、アンプトランジスタを共有する多画素1セルの構成を有する場合であっても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0051】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子及びその製造方法について説明する。
【0052】
まず、本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の構造について説明する。
【0053】
図4(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の構造を示す図であって、具体的にはCMOSイメージセンサを例として示しており、(a)は平面図であり、(b)は(a)のIVb-IVb線に対応する断面図である。
【0054】
図4(a)及び(b)に示す本実施形態に係る固体撮像素子の構造は、上述の図1(a)及び(b)に示した第1の実施形態に係る固体撮像素子の構造と比較すると、シリコン窒化膜18の構造が異なっている点で異なり、その他の構造は同様である。
【0055】
すなわち、図4(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る固体撮像素子の構造では、シリコン窒化膜18が、フォトダイオード11上の少なくとも一部、並びに転送ゲートのゲート電極16におけるフォトダイオード11が形成されている側の側面及び上面の一部において、素子分離領域12上又は転送ゲートのゲート電極16の上面上に位置するシリコン窒化膜18の端部の膜厚と比べて、薄膜化されている膜厚の領域20aを有している点に特徴がある。なお、その他の構造は、上述の第1の実施形態と同様であるから、その説明は繰り返さない。
【0056】
次に、本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法について説明する。
【0057】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す工程断面図であって、上述の図4(a)のIVb-IVb線に対応する工程断面図である。なお、本実施形態に
係る固体撮像素子の製造方法は、上述の図4(a)及び(b)を用いて説明した固体撮像
素子の構造における特徴に伴う工程に特徴を有しており、その他の工程は、上述の第1の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法と同様であるから、以下ではその特徴部分を中心に説明する。
【0058】
まず、本実施形態においても、上述の第1の実施形態における図2(a)及び(b)並びに図3(a)及び(b)に示す工程での説明と同様にして、上述の図1(b)に示す構造を得る。
【0059】
次に、図5に示すように、センサ領域10Aにおいては、シリコン窒化膜18における、フォトダイオード11上の少なくとも一部上、並びに転送ゲートのゲート電極16におけるフォトダイオード11が形成されている側の側面及び上面の一部上を露出する一方で、転送ゲートのゲート電極16の一部上からサイドウォールスペーサ19の表面を含み、シリコン窒化膜18における素子分離領域12上の端部近傍までを覆うと共に、トランジスタ領域10Bにおいては、シリコン基板10の全面を覆う、レジストパターン41を形成する。続いて、レジストパターン41をマスクとしたドライエッチングにより、センサ領域10Aにおいて、フォトダイオード11上の少なくとも一部の上、並びに転送ゲートのゲート電極16におけるフォトダイオード11が形成されている側の側面及び上面の一部の上において、膜厚が40nm程度に薄膜化された領域20aをシリコン窒化膜18に形成する。ここで、シリコン窒化膜18における薄膜化された部分の膜厚としては、下地のシリコン酸化膜17の膜厚にも左右されるものの、シリコン基板10からの反射を防止するために最適な膜厚となる30nm以上であって且つ80nmの範囲内であることが望ましい。
【0060】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子及びその製造方法によると、上述の第1の実施形態と同様に、イメージセンサ特性の劣化(感度低下、感度ばらつき増大、及び暗電流の増加)の発生を抑制することが可能となるという効果を奏することができる。さらに、フォトダイオード11上の少なくとも一部上においてシリコン窒化膜38をエッチングにより薄膜化できるように、フォトダイオード11上におけるシリコン窒化膜38の膜厚を自在に調整することが可能となるため、CMOSの製造プロセスにおけるサイドウォールスペーサ25を構成するシリコン窒化膜25bとして要求される膜厚と、反射防止膜として機能するために最適なシリコン窒化膜18の膜厚とをそれぞれ独立に制御することができる。したがって、フォトダイオード11上には十分な反射防止効果をもった反射防止膜を形成することができるため、画素寸法の縮小が進んだ場合においても感度の維持又は向上を実現することが容易となる。
【0061】
また、上述したように、フォトダイオード11上におけるシリコン窒化膜38の膜厚を独立して調整することが可能となるため、フォトダイオード11上の絶縁膜として、例えばシリコン窒化膜などの膜応力(ストレス)がシリコンよりも大きい材質の絶縁膜を堆積する場合においては、その膜厚を必要最低限に薄膜化することが可能となるため、膜応力によって発生するシリコン基板10の結晶欠陥を抑制できる。したがって、フォトダイオード11が形成されている領域に位置するシリコン基板10の結晶欠陥の存在によって生じる、イメージセンサの特性劣化(暗電流の増加や画像のキズ)を抑制することも可能となる。
【0062】
なお、本実施形態では、図4(a)に示したように、1画素1セルの構成を有する固体撮像素子の場合を例に説明したが、後述の第4の実施形態のように、複数の画素で、転送ゲート、浮遊拡散層、リセットトランジスタ、及び、アンプトランジスタを共有する多画素1セルの構成を有する場合であっても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0063】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る固体撮像素子及びその製造方法について説明する。
【0064】
まず、本発明の第3の実施形態に係る固体撮像素子の構造について説明する。
【0065】
図6(a)及び(b)は、本発明の第3の実施形態に係る固体撮像素子の構造を示す図であって、具体的にはCMOSイメージセンサを例として示しており、(a)は平面図であり、(b)は(a)のVIb-VIb線に対応する断面図である。
【0066】
図6(a)及び(b)に示す本実施形態に係る固体撮像素子の構造は、上述の図1(a)及び(b)に示した第1の実施形態に係る固体撮像素子の構造と比較すると、シリコン基板10の全面上に形成されたシリコン窒化膜からなるライナー膜26(なお、(a)では図示を省略している)をさらに備えている点で異なり、その他の構造は同様である。
【0067】
すなわち、図6(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る固体撮像素子の構造では、シリコン基板10の全面に形成され、フォトダイオード11上の少なくとも一部、並びに転送ゲートのゲート電極16におけるフォトダイオード11が形成されている側の側面及び上面の一部の上に形成されているシリコン窒化膜18を露出する開口部を領域20bに有する、シリコン窒化膜からなるライナー膜26が形成されている。なお、その他の構造は、上述の第1の実施形態と同様であるから、その説明は繰り返さない。
【0068】
次に、本発明の第3の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法について説明する。
【0069】
図7(a)及び(b)は、本発明の第3の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す工程断面図であって、上述の図6(a)のVIb-VIb線に対応する工程断面図である。な
お、本実施形態に係る固体撮像素子の製造方法は、上述の図6(a)及び(b)を用いて説明した固体撮像素子の構造における特徴に伴う工程に特徴を有しており、その他の工程は、上述の第1の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法と同様であるから、以下ではその特徴部分を中心に説明する。
【0070】
まず、本実施形態においても、上述の第1の実施形態における図2(a)及び(b)並びに図3(a)及び(b)に示す工程での説明と同様にして、上述の図1(b)に示す構造を得る。
【0071】
次に、図7(a)に示すように、シリコン基板10の全面にコバルトを堆積した後、サリサイド法により、センサ領域10Aにおいては、転送ゲートのゲート電極16における上面の一部及び浮遊拡散層14の上面の一部に、トランジスタ領域10Bにおいては、ゲート電極24における上面、ソース拡散層22及びドレイン拡散層23の上面に、コバルトシリサイドからなるサリサイド層42を形成する。続いて、シリコン基板10の全面に、プラズマCVD法により、膜厚が30nm程度のシリコン窒化膜からなるライナー層26を形成する。このとき、ライナー膜26を構成するシリコン窒化膜26は、本実施形態の説明では図示しないが、ゲート電極24、ソース拡散層22、及びドレイン拡散層23上に到達するコンタクトホールを形成する際のドライエッチングを実施した際に、エッチングストッパー膜として必要となる膜厚である30nm程度だけ堆積される。また、ライナー膜26を構成するシリコン窒化膜は、下地に形成されたコバルトシリサイドからなるサリサイド層42の変質(サリサイド層の異常成長やサリサイド層の高抵抗化)を抑制するために、600℃以下の温度で成膜する必要があり、比較的低温下でシリコン窒化膜を形成することが可能なプラズマCVD法による形成が最適である。
【0072】
次に、図7(b)に示すように、ライナー膜26の上に、領域20bを開口領域とするレジストパターン44を形成した後、該レジストパターン44を用いてドライエッチング
を行う。これにより、ライナー膜26には、領域20bにおいて、フォトダイオード11上の少なくとも一部、並びに転送ゲートのゲート電極16におけるフォトダイオード11が形成されている側の側面及び上面の一部の上に形成されているシリコン窒化膜18を露出する開口部が形成される。その後、レジストパターン44を除去することで、上述の図6(b)に示した構造を得る。なお、領域20bにおいてライナー膜26に開口部を形成する工程では、シリコン窒化膜18を露出させることなく、下地となるシリコン窒化膜18とで構成する反射防止機能が発揮される程度に、ライナー膜26の一部が残存するように開口部を形成してもかまわない。この場合に残存させる膜厚としては、第2の実施形態におけるシリコン窒化膜18と同様に、30nm以上であって且つ80nmの範囲内であることが望ましい。
【0073】
以上のように、本発明の第3の実施形態に係る固体撮像素子及びその製造方法によると、上述の第1の実施形態と同様に、イメージセンサ特性の劣化(感度低下、感度ばらつき増大、及び暗電流の増加)の発生を抑制することが可能となるという効果を奏することができる。さらに、シリコン基板10の表面にサリサイド層42を形成する際には、フォトダイオード11上にシリコン窒化膜18が存在しているため、フォトダイオード11の表面にはサリサイド層42が形成されることはない。この点、フォトダイオード上にサリサイド層が形成された場合には、サリサイド層によって入射光の透過が妨げれて感度の低下が発生するだけではなく、シリサイド化せずに残留したコバルト原子がフォトダイオードを形成しているシリコン基板内において結晶欠陥を誘発するためリーク電流が生じて、暗電流の増加や感度のばらつきといった問題が発生すると考えられるが、本発明によるとこのような事態を防止することができる。
【0074】
さらに、フォトダイオード11上に形成されたシリコン窒化膜からなるライナー膜26のみを選択的に除去することが可能となるため、固体撮像素子に光が入射した際、フォトダイオード11上のみに効率良く光を入射させることができる。一方で、フォトダイオード11が存在している領域以外の領域には、シリコン窒化膜18及びシリコン窒化膜からなるライナー膜26が積層して形成されているため、入射光が透過しにくくなる。このため、例えば、隣り合うフォトダイオード11とフォトダイオード11との間に存在する素子分離領域12に光が入射することによって発生する混色現象(隣り合うフォトダイオード11への入射光の漏れ)だけでなく、周辺のCMOS回路部へ強い光が入射することによって発生する回路誤動作を抑制することが可能となる。またここで、フォトダイオード11が存在している領域以外の領域への入射光の透過をさらに抑制するためには、ライナー層26を構成する材料として、シリコン窒化膜よりも光透過率が低く、且つ、エッチングストッパー膜としても使用できる材料を用いてもい。例えば、アルミナ(Al)等の金属酸化物や、水素化窒化ケイ素化合物(SiO)からなるライナー層26を形成すればよい。
【0075】
また、上述したように、フォトダイオード11上におけるシリコン窒化膜からなるライナー膜26の膜厚を独立して調整することが可能となるため、フォトダイオード11上の絶縁膜として、例えばシリコン窒化膜などの膜応力(ストレス)がシリコンよりも大きい材質の絶縁膜を堆積する場合においては、その膜厚を必要最低限に薄膜化することが可能となるため、膜応力によって発生するシリコン基板10の結晶欠陥を抑制できる。したがって、フォトダイオード11が形成されている領域に位置するシリコン基板10の結晶欠陥の存在によって生じる、イメージセンサの特性劣化(暗電流の増加や画像のキズ)を抑制することも可能となる。
【0076】
さらに、本実施形態に係る固体撮像素子の製造方法では、図3(b)工程で用いたレジストパターン39の形成位置と図7(b)に示したレジストパターン44の形成位置とが、転送ゲートのゲート電極16上でオーバーラップするように、図7(b)に示す工程に
おいてレジストパターン44を形成することにより、該レジストパターン44を用いたエッチングの際にコバルトシリサイドからなるサリサイド層42が露出することがない。このため、エッチング時やその後の洗浄時において、本実施形態に係る固体撮像素子だけではなく製造設備へのコバルトによる金属汚染が発生しないという効果も奏することができる。すなわち、図10に示すように、転送ゲートのゲート電極16上において図3(b)工程で用いたレジストパターン39の形成位置とオーバーラップしないようにレジストパターン44を形成した場合には、該レジストパターン44を用いたエッチングの際に転送ゲートのゲート電極16上のコバルトシリサイドからなるサリサイド層42が露出する領域45が生じるため、上記した固体撮像素子だけではなく製造設備へのコバルトによる金属汚染が発生するが、本発明によるとこのような事態を防止することができる。
【0077】
なお、本実施形態においては、サリサイド層42をセンサ領域10A及びトランジスタ領域10Bにおいて形成した場合について説明したが、周辺のCMOS回路部を構成するトランジスタ領域10Bにだけ設ける構成であっても、センサ領域10A及びトランジスタ領域10Bのいずれの領域においても設けない構成であっても、上記サリサイド層と関係する効果以外の効果を同様に得ることができる。
【0078】
なお、本実施形態では、図6(a)に示したように、1画素1セルの構成を有する固体撮像素子の場合を例に説明したが、後述の第4の実施形態のように、複数の画素で、転送ゲート、浮遊拡散層、リセットトランジスタ、及び、アンプトランジスタを共有する多画素1セルの構成を有する場合であっても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0079】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る固体撮像素子及びその製造方法について説明する。
【0080】
まず、本発明の第4の実施形態に係る固体撮像素子の構造について説明する。
【0081】
図8(a)及び(b)は、本発明の第4の実施形態に係る固体撮像素子の構造を示す図であって、具体的にはCMOSイメージセンサを例として示しており、(a)は平面図であり、(b)は(a)のVIIIb-VIIIb線に対応する断面図である。
【0082】
図8(a)及び(b)に示す本実施形態に係る固体撮像素子の構造は、上述の図4(a)及び(b)に示した第2の実施形態に係る固体撮像素子の構造と上述の図6(a)及び(b)に示した第3の実施形態に係る固体撮像素子の構造とを組み合わせた構造である。
【0083】
すなわち、図8(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る固体撮像素子の構造では、上述の第2の実施形態と同様に、シリコン窒化膜18は、フォトダイオード11上の少なくとも一部の上、並びに転送ゲートのゲート電極16におけるフォトダイオード11が形成されている側の側面及び上面の一部の上において、素子分離領域12上又は転送ゲートのゲート電極16の上面上に位置するシリコン窒化膜18の端部の膜厚と比べて、薄膜化されている膜厚の領域20cを有している。さらに、上述の第3の実施形態と同様に、シリコン基板10の全面に形成され、フォトダイオード11上の少なくとも一部、並びに転送ゲートのゲート電極16におけるフォトダイオード11が形成されている側の側面及び上面の一部の上に形成されているシリコン窒化膜18の薄膜化されている部分を露出する開口部を有する、シリコン窒化膜からなるライナー膜26が形成されている。なお、その他の構造は、上述の第1の実施形態と同様であるから、その説明は繰り返さない。但し、本実施形態では、図6(a)に示すように、複数の画素で、転送ゲート、浮遊拡散層、リセットトランジスタ、及び、アンプトランジスタを共有する多画素1セルの場合の構成を例にしてしる。
【0084】
次に、本発明の第4の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法について説明する。
【0085】
図9は、本発明の第4の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法を示す工程断面図であって、上述の図8(a)のVIIIb-VIIIb線に対応する工程断面図である。なお、本実施形
態に係る固体撮像素子の製造方法は、上述の図8(a)及び(b)を用いて説明した固体撮像素子の構造における特徴に伴う工程に特徴を有しており、その他の工程は、上述の第1の実施形態に係る固体撮像素子の製造方法と同様であるから、以下ではその特徴部分を中心に説明する。
【0086】
まず、本実施形態においても、上述の第1の実施形態における図2(a)及び(b)並びに図3(a)及び(b)に示す工程での説明と同様にして、上述の図1(b)に示す構造を得る。続いて、上述の第2の実施形態における図7(a)に示す工程での説明と同様にして、シリコン基板10の全面にシリコン窒化膜からなるライナー膜26を形成する。
【0087】
次に、図9に示すように、センサ領域10Aにおいては、ライナー膜26における、フォトダイオード11上の少なくとも一部上、並びに転送ゲートのゲート電極16におけるフォトダイオード11が形成されている側の側面及び上面の一部上を露出する一方で、転送ゲートのゲート電極16の一部上からサイドウォールスペーサ19の表面を含み、シリコン窒化膜18における素子分離領域12上の端部近傍までを覆うと共に、トランジスタ領域10Bにおいては、シリコン基板10の全面を覆う、レジストパターン44を形成する。続いて、レジストパターン41をマスクとしたドライエッチングにより、センサ領域10Aにおいて、フォトダイオード11上の少なくとも一部、並びに転送ゲートのゲート電極16におけるフォトダイオード11が形成されている側の側面及び上面の一部において、ライナー膜26を除去すると共に、シリコン窒化膜18に膜厚が40nm程度に薄膜化された領域20cを形成する。なお、シリコン窒化膜18における薄膜化された部分の膜厚としては、第2の実施形態と同様に、30nm以上であって且つ80nmの範囲内であることが望ましい。
【0088】
以上のように、本発明の第4の実施形態に係る固体撮像素子及びその製造方法によると、上述の第1の実施形態と同様に、イメージセンサ特性の劣化(感度低下、感度ばらつき増大、及び暗電流の増加)の発生を抑制することが可能となるという効果を奏することができる。さらに、上述の第2の実施形態と同様に、フォトダイオード11上の少なくとも一部上においてシリコン窒化膜38をエッチングにより薄膜化できるように、フォトダイオード11上におけるシリコン窒化膜38の膜厚を自在に調整することが可能となるため、CMOSの製造プロセスにおけるサイドウォールスペーサ25を構成するシリコン窒化膜25bとして要求される膜厚と、反射防止膜として機能するために最適なシリコン窒化膜18の膜厚とをそれぞれ独立に制御することができる。したがって、フォトダイオード11上には十分な反射防止効果をもった反射防止膜を形成することができるため、多画素化や画素寸法の縮小が進んだ場合においても感度の維持又は向上を実現することが容易となる。
【0089】
さらに、上述の第3の実施形態と同様に、シリコン基板10の表面にサリサイド層42を形成する際には、フォトダイオード11上にシリコン窒化膜18が存在しているため、フォトダイオード11の表面にはサリサイド層42が形成されることはない。この点、フォトダイオード上にサリサイド層が形成された場合には、サリサイド層によって入射光の透過が妨げれて感度の低下が発生するだけではなく、シリサイド化せずに残留したコバルト原子がフォトダイオードを形成しているシリコン基板内において結晶欠陥を誘発するためリーク電流が生じて、暗電流の増加や感度のばらつきといった問題が発生すると考えられるが、本発明によるとこのような事態を防止することができる。
【0090】
さらに、フォトダイオード11上に形成されたシリコン窒化膜からなるライナー膜26のみを選択的に除去することが可能となるため、固体撮像素子に光が入射した際、フォトダイオード11上のみに効率良く光を入射させることができる。一方で、フォトダイオード11が存在している領域以外の領域には、シリコン窒化膜18及びシリコン窒化膜からなるライナー膜26が積層して形成されているため、入射光が透過しにくくなる。このため、例えば、隣り合うフォトダイオード11とフォトダイオード11との間に存在する素子分離領域12に光が入射することによって発生する混色現象(隣り合うフォトダイオード11への入射光の漏れ)だけでなく、周辺のCMOS回路部へ強い光が入射することによって発生する回路誤動作を抑制することが可能となる。またここで、フォトダイオード11が存在している領域以外の領域への入射光の透過をさらに抑制するためには、ライナー層26を構成する材料として、シリコン窒化膜よりも光透過率が低く、且つ、エッチングストッパー膜としても使用できる材料を用いることもできる。例えば、アルミナ(Al)等の金属酸化物や、水素化窒化ケイ素化合物(SiO)からなるライナー層26を形成すればよい。
【0091】
また、上述したように、フォトダイオード11上におけるシリコン窒化膜からなるライナー膜26の膜厚を独立して調整することが可能となるため、フォトダイオード11上の絶縁膜として、例えばシリコン窒化膜などの膜応力(ストレス)がシリコンよりも大きい材質の絶縁膜を堆積する場合においては、その膜厚を必要最低限に薄膜化することが可能となるため、膜応力によって発生するシリコン基板10の結晶欠陥を抑制できる。したがって、フォトダイオード11が形成されている領域に位置するシリコン基板10の結晶欠陥の存在によって生じる、イメージセンサの特性劣化(暗電流の増加や画像のキズ)を抑制することも可能となる。
【0092】
さらに、上述の第3の実施形態と同様に、本実施形態に係る固体撮像素子の製造方法では、図3(b)工程で用いたレジストパターン39の形成位置と図9に示したレジストパターン44の形成位置とが、転送ゲートのゲート電極16上でオーバーラップするように、図9に示す工程においてレジストパターン44を形成することにより、該レジストパターン44を用いたエッチングの際にコバルトシリサイドからなるサリサイド層42が露出することがない。このため、エッチング時やその後の洗浄時において、本実施形態に係る固体撮像素子だけではなく製造設備へのコバルトによる金属汚染が発生しないという効果も奏することができる。
【0093】
なお、本実施形態においては、コバルトシリサイドからなるサリサイド層42をセンサ領域10A及びトランジスタ領域10Bにおいて形成した場合について説明したが、周辺のCMOS回路部を構成するトランジスタ領域10Bにだけ設ける構成であっても、センサ領域10A及びトランジスタ領域10Bのいずれの領域においても設けない構成であっても、上記サリサイド層と関係する効果以外の効果を同様に得ることができる。
【0094】
なお、本実施形態では多画素1セルの構成を有する固体撮像素子の場合について説明したが、上述の第1〜第3の実施形態と同様に、複数の画素で、転送ゲート、浮遊拡散層、リセットトランジスタ、及び、アンプトランジスタを共有しない1画素1セルの構成を有する場合であっても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0095】
なお、以上の各実施形態では、サイドウォールスペーサ(19、25)の構成として、断面形状L字状のシリコン酸化膜(19a、25a)及び該シリコン酸化膜の内側表面に形成されたシリコン窒化膜(19b、25b)からなる積層構造である場合について説明したが、断面形状L字状のシリコン酸化膜(19a、25a)とゲート電極(16、24)の側面との間に断面形状I字状の絶縁膜を設ける構成としてもよい。この場合、転送ゲートのゲート電極16におけるフォトダイオードが形成されている側の側面とシリコン酸
化膜17との間にも断面形状I字状の絶縁膜が形成される構造、もしくは、断面形状I字状のサイドウォールスペーサを構成する絶縁膜が、フォトダイオード11上を含んで転送ゲートのゲート電極16の上面の一部まで覆う構造をとることになる。
【0096】
なお、以上の各実施形態において、反射防止膜として機能するシリコン窒化膜18又はシリコン窒化膜からなるライナー膜26の屈折率は、下地となるシリコン酸化膜17の屈折率とは異なるものである。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、一般的なCMOS製造プロセスを適用した場合においてもイメージセンサ特性の劣化(感度低下、感度ばらつき増大、及び暗電流の増加)を生じさせることがなく、さらに、フォトダイオード上に形成された反射防止膜の膜厚を、製造プロセス上の制約を受けることなく最適化できるため、多画素化や画素寸法の縮小が進んだ場合においても感度の維持あるいは向上を実現することができ、固体撮像素子における性能向上及び占有面積の縮小等にとって有効である。
【符号の説明】
【0098】
1 活性領域
4 リセットトランジスタのゲート電極
5 アンプトランジスタのゲート電極
10 シリコン基板
10A センサ領域
10B トランジスタ領域
11 フォトダイオード
12 素子分離領域
13、21 深いp型ウェル
14 浮遊拡散層
15 ゲート絶縁膜
16 転送ゲートのゲート電極
17 シリコン酸化膜
18 シリコン窒化膜
19a、25a 断面形状L字状のシリコン酸化膜
19b、25b シリコン窒化膜
19、25 サイドウォールスペーサ
20a〜20c 領域
22 ソース拡散層
23 ドレイン拡散層
24 トランジスタのゲート電極
26 ライナー層
31 シリコン酸化膜
32 ポリシリコン膜
33、39、41、44 レジストパターン
34、40、41 イオン注入
35 転送ゲートの低濃度不純物拡散層
36 トランジスタの低濃度不純物拡散層
37 シリコン酸化膜
38 シリコン窒化膜
42 サリサイド層
43 シリコン窒化膜
45 サリサイド層が露出した領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板における上部に形成された光電変換を行うフォトダイオードと、
前記半導体基板の上に、前記フォトダイオードを覆うように形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上に形成され、前記フォトダイオードの上方の全部又は一部分を露出する開口部を有する第2の絶縁膜とを備え、
前記第1の絶縁膜は、前記フォトダイオードの全部又は一部の上方において、前記第1の絶縁膜の端部よりも膜厚が薄い薄膜部を有し、
前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜とは、前記フォトダイオードが形成されている領域以外の領域で重なっている、固体撮像素子。
【請求項2】
前記半導体基板の上であって、前記フォトダイオードの側方に形成されたトランジスタをさらに備える、請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜とは、前記トランジスタのゲート電極の上方で重なっている、請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記フォトダイオードとは反対側にある前記トランジスタの側面に形成されたサイドウォールスペーサをさらに備える、請求項3に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記サイドウォールスペーサは、断面形状がL字状の第3の絶縁膜と、前記第3の絶縁膜の上に形成され、前記第3の絶縁膜とは異なる材料の第4の絶縁膜とを含む、請求項4に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記第3の絶縁膜は、シリコン酸化膜である、請求項5に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記第4の絶縁膜は、シリコン窒化膜である、請求項5または6に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記第4の絶縁膜は、前記第1の絶縁膜と同一の膜である、請求項6または7に記載の固体撮像素子。
【請求項9】
前記半導体基板と前記第1の絶縁膜の間に形成された第5の絶縁膜をさらに備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項10】
前記第5の絶縁膜の屈折率は、前記第1の絶縁膜の屈折率と異なる、請求項9に記載の固体撮像素子。
【請求項11】
前記第5の絶縁膜の屈折率は、前記第2の絶縁膜の屈折率と異なる、請求項9または10に記載の固体撮像素子。
【請求項12】
前記第5の絶縁膜は、シリコン酸化膜である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項13】
前記第3の絶縁膜は、前記第5の絶縁膜と同一の膜である、請求項9〜12のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項14】
前記第1の絶縁膜は、シリコン窒化膜である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項15】
前記第2の絶縁膜は、シリコン窒化膜である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項16】
前記薄膜部の厚みは30nm以上80nm以下である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項17】
前記薄膜部は、前記開口部によって露出されている、請求項1〜16のいずれか1項に記載の固体撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−21352(P2013−21352A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204247(P2012−204247)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2007−186704(P2007−186704)の分割
【原出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】