説明

固体燃料の製造方法及びシステム

【課題】処理対象に水分変動がある場合でも熱効率を高く維持し、且つシステムの円滑な運転が可能で高品質の固体燃料を安定して製造することができる固体燃料の製造方法及びシステムを提供する。
【解決手段】高含水有機物1は乾燥炉20にて乾燥した後炭化炉30にて炭化処理し、低含水有機物2は前処理装置39にて異物除去、粗破砕した後炭化炉30にて炭化処理するとともに、乾燥炉20からの乾燥排ガスと炭化炉30からの熱分解ガスをガス燃焼室55に導入して燃焼させ、該ガス燃焼室にて得られる燃焼ガスの一部と、乾燥炉20から回収した蒸気ドレンとを廃熱ボイラ70にて熱交換し、生成した飽和蒸気を前記乾燥炉20に供給し、該飽和蒸気を間接加熱用の熱媒として利用するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を炭化処理して炭化物からなる固体燃料を製造する方法及びシステムに関し、特に、前段に乾燥装置を有する炭化装置を備え、乾燥排ガスの燃焼排ガスや炭化炉で発生する熱分解ガスを燃焼した排ガスの熱エネルギを回収して有効利用するようにした固体燃料の製造方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物の減容化及びエネルギ回収を目的として、下水汚泥、食品残渣、プラスチック等の有機物が主成分である廃棄物を炭化処理して固体燃料化する技術が提案、実用化されている。炭化処理の際に、処理対象の含水率が高いと炭化炉が大型化したり、均一な炭化が困難であるなどの不具合が生じるため、炭化炉の前段に乾燥炉を具備した装置が用いられることがある。乾燥炉を具備した炭化処理装置については、特許文献1(特開2005−200522号公報)、特許文献2(特開2005−125265号公報)等に開示されている。
【0003】
一例として、特許文献1に記載される炭化処理装置を図4に示す。同図に示されるように、この炭化処理装置では、下水汚泥等の有機物を必要に応じて脱水機81にて脱水し、乾燥炉82にて乾燥処理した後、炭化炉83にて炭化処理して炭化物からなる固体燃料を製造する。炭化炉83から排出される熱分解ガスは、サイクロン84を介して乾燥用燃焼炉85に送られる。該乾燥用燃焼炉85では、必要に応じて助燃料が供給されるとともに、乾燥炉82からの乾燥排ガスが供給され、熱分解ガスを燃焼させることにより乾燥用燃焼ガスが生成される。この乾燥排ガスは、乾燥用燃焼炉85に供給する前に、熱交換器86にて燃焼炉85からの燃焼ガスの一部と熱交換して昇温されている。
一方、熱交換器86を通過した燃焼ガスと、炭化炉83からの炭化排ガスは、空気予熱器87にて空気と熱交換した後、排ガス処理装置88に送られる。空気予熱器87にて加熱された高温空気は、炭化排ガスとともに炭化用燃焼炉89に供給され、助燃料により燃焼させ炭化用燃焼ガスとして炭化炉83に供給される。
【0004】
このような装置では、熱エネルギを有効利用するために、炭化処理の過程で発生する熱分解ガスを燃焼炉で燃焼させ、燃焼ガスを炭化炉の熱源として利用したり、或いは特許文献1に記載されるように、乾燥炉の熱源として利用したりしている。特許文献2でも同様に、炭化排ガスの保有熱を熱交換器を介して熱回収し、乾燥処理に用いている。
また、乾燥排ガスの熱エネルギも再利用しており、例えば特許文献1では、乾燥排ガスを燃焼ガスにより昇温した後、乾燥用燃焼炉に導入して熱分解ガス若しくは助燃料とともに燃焼させ、乾燥用の燃焼ガスを生成している。このように、システム全体の熱効率を向上させるために様々な熱利用を図っている。
【0005】
しかし、このような炭化処理では、乾燥炉を備えることにより以下の問題が生じる。
炭化処理する処理対象が単一でなく、含水率の高い汚泥や食品残渣などの高含水有機物と、比較的含水率の低い紙、布類或いはプラスチック等の一般廃棄物などの低含水有機物とを処理する際に、全てを対象に乾燥処理すると、均一な乾燥が困難となる。即ち、乾燥熱が低含水有機物に伝わり過乾燥となり、乾燥炉中で部分燃焼による異常発熱が起こったり、高含水有機物の乾燥が不十分となるなどの問題が起こる。また、乾燥炉に攪拌機付の熱風回転乾燥炉を用いると、一般廃棄物等に含まれる長尺物が攪拌機に絡まるなどの不具合が生じる場合があり、連続稼動が困難となる。
【0006】
また、高含水有機物の処理量が少なくなり、乾燥炉は低負荷で運転し、一方で低含水有機物を定格で処理する際には、乾燥排ガス量が低下するため、乾燥排ガスを低温側ガスとし、燃焼ガスを高温側ガスとして熱交換する熱交換器の温度上昇をきたすため、高含水有機物と低含水有機物の処理量の変動幅を大きく取れない。さらに、炭化炉で発生する熱分解ガスは燃焼炉で燃焼させ、この燃焼ガスで有機物を乾燥することで熱分解ガスの燃焼熱を利用しているが、低含水有機物のみを処理し、乾燥炉を運転しない際は熱分解ガスの燃焼ガスの熱利用先がなくなるため、システム熱効率が悪化する。
さらにまた、 単一の処理対象であっても、乾燥炉が何らかのトラブルで運転停止となった際は、上記した熱交換器の温度上昇などを招くため、これをバイパスする配管あるいは、冷却する空気源などが必要となり、システムが複雑となる。
【0007】
また、このシステム内の廃熱は、一般に空気予熱器87(図4参照)で回収しているが、空気(20℃)と熱交換させる場合、熱交換後の排ガス温度は排ガスの酸露点(約160℃)以下となり熱交が腐食することを防止するため、300℃程度以上とする必要がある。排ガス温度はより低い温度まで熱回収後に排出することがシステム燃費向上の鍵であるが、上記制約より排ガスからの熱回収後の温度は300℃程度が限度である。システム燃費向上のためには排ガス量の低減が必要であるが、直接乾燥の場合は、乾燥水分も排ガスとなるため排ガス量が多い。そこで排ガスをスクラバ等で温度低下させ水分を凝縮させる方法があるが、850℃の高温の熱風で直接乾燥した排ガス中にはシアンが含まれ、これが排水中に移行するので、水分凝縮は適用不可能である。
【0008】
【特許文献1】特開2005−200522号公報
【特許文献2】特開2005−125265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、炭化炉の前段に乾燥炉を備えたシステムでは、該乾燥炉を効率的に安定運転するには種々の問題があった。即ち、処理対象の含水率が変動する場合、乾燥や炭化が不均一となり、固体燃料の品質にばらつきが生じてしまったり、乾燥炉や炭化炉に不具合が発生して円滑な運転が困難となる。本発明のように、炭化処理により得られる炭化物を固体燃料として再利用する場合には、安定して一定の品質の固体燃料を製造する必要があるが、従来のシステムでは難しかった。また、処理対象の含水率が変動することにより、乾燥排ガスから回収できる熱エネルギも変動し、熱交換器等の機器に不具合が生じたり、安定して熱回収することができなくなり、システムの安定運転が困難となる。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、処理対象に水分変動がある場合でも熱効率を高く維持し、且つシステムの円滑な運転が可能で高品質の固体燃料を安定して製造することができる固体燃料の製造方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、有機物を乾燥処理した後、炭化処理して炭化物からなる固体燃料を製造するとともに、前記乾燥処理にて生じる乾燥排ガスを燃焼した排ガスの熱エネルギを前記乾燥処理の熱源の一部として利用するようにした固体燃料の製造方法において、
前記有機物のうち高含水有機物は、前記乾燥処理した後に前記炭化処理し、低含水有機物は、前記乾燥処理せずに、主として異物除去若しくは粗破砕からなる前処理を施した後、前記炭化処理するようにしたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、高含水有機物と低含水有機物の何れを処理する場合にも、乾燥装置を効率的に安定運転することができ、さらに炭化装置にて、安定的に高品質の固体燃料を得ることが可能である。
一般的に、高含水有機物としては、下水汚泥、製紙汚泥、その他排水処理で生じる有機性汚泥、或いは、コーヒー滓、茶滓等の食品廃棄物などが挙げられ、これらは金属や大型異物が殆ど存在しないものの含水率が高いことが多く、一方、低含水有機物としては、紙・布類、プラスチック類、一般廃棄物などが挙げられ、これらは含水率は低いものの大径物や長尺物が多く、また金属や大型異物が混入していることが多い。
【0012】
従って、本発明のごとく、高含水有機物には炭化処理前に乾燥処理を施し、低含水有機物には金属選別等の異物除去、粗破砕を主とする前処理を施すことにより、含水率が略均一で且つ大型物、異物等を含まない均質な有機物が炭化炉に投入されることとなり、安定して高品質の炭化物が得られるようになる。
また、乾燥装置には、高含水有機物のみが投入されるため、熱分解を起さず、均一な乾燥が可能となり、乾燥装置での低含水有機物の熱分解による回収率低下や、乾燥装置内での部分燃焼による温度変動を防止できるとともに、乾燥排ガスを燃焼した排ガスの熱エネルギに変動が少なくなり、熱効率の面から安定化が図れるとともに、後段側に熱交換器を具備した場合でも熱量変動による熱交換器の不具合を回避できる。
さらに、低含水有機物が、一般廃棄物のように長尺金属類等の異物を含む際には、乾燥装置での内部を撹拌する撹拌翼への絡みつき等のトラブルの可能性があるが、これを回避できる。また炭化装置として間接加熱式のロータリーキルンを用いた場合、低含水有機物を処理する際に水分蒸発に必要な伝熱面を要さないため、キルンへの処理物充填率を大きく取れ、炉本体の大きさをコンパクト化できる。
【0013】
また、有機物を熱媒により間接加熱して乾燥処理した後、炭化処理して炭化物からなる固体燃料を製造するとともに、前記乾燥処理にて生じる乾燥排ガスを燃焼した排ガスの熱エネルギを前記乾燥処理の熱源の一部として利用するようにした固体燃料の製造方法において、
前記乾燥排ガスを燃焼した排ガスの熱エネルギと、前記炭化処理にて発生した熱分解ガス若しくは助燃料の少なくとも何れか一方を燃焼させて得られた熱エネルギとにより、前記乾燥処理にて生じた蒸気ドレンを加熱して飽和蒸気を生成し、該飽和蒸気を前記熱媒として用いるようにしたことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、有機物の炭化処理に際して、乾燥装置を効率的に安定運転することができ、さらに炭化装置にて、安定的に高品質の固体燃料を得ることが可能である。即ち、廃熱ボイラを設けて乾燥装置の負荷変動を蒸気回収で吸収できる構成としたため、有機物の高含水有機物処理量の変動、或いは有無に対して柔軟なシステム運用が可能となる。また、間接加熱式乾燥装置を採用しているため、直接加熱式より低温で乾燥処理が行え、乾燥排ガスとしてNH、HCNが発生せず、乾燥排ガス中の水分を凝縮して回収可能となり、排ガス量が低減でき、システム燃費が向上する。さらにまた、本システムは、高含水有機物のみを対象とした場合においても、システム燃費、乾燥機トラブルなどによる停止時への対応性において優れたシステムとすることができる。
【0015】
また、有機物を熱媒により間接加熱して乾燥処理した後、炭化処理して炭化物からなる固体燃料を製造するとともに、前記乾燥処理にて生じる乾燥排ガスを燃焼した排ガスの熱エネルギを前記乾燥処理の熱源の一部として利用するようにした固体燃料の製造方法において、
前記有機物のうち高含水有機物は、前記乾燥処理した後に前記炭化処理し、低含水有機物は、前記乾燥処理せずに、主として異物除去若しくは粗破砕からなる前処理を施した後、前記炭化処理するとともに、
前記乾燥排ガスを燃焼した排ガスの熱エネルギと、前記炭化処理にて発生した熱分解ガス若しくは助燃料の少なくとも何れか一方を燃焼させて得られた熱エネルギとにより、前記乾燥処理にて生じた蒸気ドレンを加熱して飽和蒸気を生成し、該飽和蒸気を前記熱媒として用いるようにしたことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、上記した発明と同様に、有機物の炭化処理に際して、乾燥装置を効率的に安定運転することができ、さらに炭化装置にて、安定的に高品質の固体燃料を得ることが可能である。また、高含水有機物と低含水有機物を別ラインで炭化装置に供給する構成としたため、乾燥装置内における負荷変動を最小限に抑えることができるとともに、負荷変動が生じた場合であっても、廃熱ボイラにより負荷変動を吸収できる構成としたため、安定運転が可能となる。さらに本発明では、前記廃熱ボイラにて、蒸気ドレンとの熱交換を行う構成としたため、空気と熱交換する場合に比べて排ガス熱回収量が増加しシステム燃費が向上する。
【0017】
さらに、前記乾燥処理の熱需要に応じて、前記飽和蒸気の少なくとも一部を引抜くことにより前記乾燥処理へ供給する蒸気量を調整するようにしたことを特徴とする。
これにより、乾燥排ガス量の変動があった場合でも、引抜き蒸気量を調整することにより乾燥処理に供給する熱量を容易に調整可能となる。
なお、ボイラ水量が不足した場合は、必要に応じて適宜ボイラに給水を行い、ボイラ水温度と圧力を所定値に調節する。
【0018】
また、有機物を乾燥処理する乾燥装置と、該乾燥処理した有機物を炭化処理して炭化物からなる固体燃料を製造する炭化装置と、前記乾燥装置からの乾燥排ガスと前記炭化装置からの熱分解ガス若しくは助燃料の少なくとも何れか一方とが供給され、該熱分解ガス若しくは助燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼装置と、該燃焼ガスを前記乾燥装置若しくは前記炭化装置に導入するラインと、を備えた固体燃料の製造システムにおいて、
前記乾燥装置とは別に、前記炭化装置の前段に主として異物除去若しくは粗破砕を行う前処理装置を設け、
前記有機物のうち高含水有機物を前記乾燥装置から前記炭化装置に投入するラインと、低含水有機物を前記前処理装置から前記炭化装置に投入するラインとを夫々独立して設けたことを特徴とする。
【0019】
また、有機物を熱媒により間接加熱して乾燥処理する乾燥装置と、該乾燥処理した有機物を炭化処理して炭化物からなる固体燃料を製造する炭化装置と、前記乾燥装置からの乾燥排ガスと前記炭化装置からの熱分解ガス若しくは助燃料の少なくとも何れか一方とが供給され、該熱分解ガス若しくは助燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼装置と、を備えた固体燃料の製造システムにおいて、
前記燃焼装置にて生成した燃焼ガスと、前記乾燥装置から回収した蒸気ドレンとを熱交換して飽和蒸気を生成する廃熱ボイラを備え、前記廃熱ボイラからの飽和蒸気を前記乾燥装置に熱媒として供給するラインを設けたことを特徴とする。
【0020】
また、有機物を乾燥処理する乾燥装置と、該乾燥処理した有機物を炭化処理して炭化物からなる固体燃料を製造する炭化装置と、前記乾燥装置からの乾燥排ガスと前記炭化装置からの熱分解ガス若しくは助燃料の少なくとも何れか一方とが供給され、該熱分解ガス若しくは助燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼装置と、を備えた固体燃料の製造システムにおいて、
前記乾燥装置とは別に、前記炭化装置の前段に主として異物除去若しくは粗破砕を行う前処理装置を設け、前記有機物のうち高含水有機物を前記乾燥装置から前記炭化装置に投入するラインと、低含水有機物を前記前処理装置から前記炭化装置に投入するラインとを夫々独立して設けるとともに、
前記燃焼装置にて生成した燃焼ガスと、前記乾燥装置から回収された蒸気ドレンとを熱交換して飽和蒸気を生成する廃熱ボイラを備え、前記廃熱ボイラからの飽和蒸気を前記乾燥装置に熱媒として供給するラインを設けたことを特徴とする。
【0021】
さらに、前記飽和蒸気を前記乾燥装置に供給するラインから該飽和蒸気の少なくとも一部を引抜き、該引抜いた飽和蒸気を復水させる復水器と、該復水により得られたドレンを貯留するドレン回収タンクと、前記飽和蒸気の引抜き量を制御するバルブとを設け、
前記乾燥装置の熱需要に応じて、前記バルブにより該乾燥装置へ供給する蒸気量を調整するとともに、前記ドレン回収タンク内のドレンを必要に応じて前記廃熱ボイラに給水するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上記載のごとく本発明によれば、乾燥装置を効率的に安定運転することができ、さらに炭化装置にて、安定的に高品質の固体燃料を得ることが可能である。
即ち、高含水有機物と低含水有機物を別ラインで投入するようにし、高含水有機物は乾燥処理後に炭化装置に投入し、低含水有機物は異物除去、粗破砕からなる前処理後に炭化装置に投入するようにしたため、乾燥装置における負荷変動をを最小限に抑えることができるとともに、炭化装置に投入される有機物が含水量、粒径等の観点から略均質のものとなり、安定して高品質の固体燃料を製造することが可能となる。
【0023】
また、廃熱ボイラを設けて乾燥装置の負荷変動を蒸気回収で吸収できる構成としたため、有機物の高含水有機物処理量の変動、或いは有無に対して柔軟なシステム運用が可能となる。さらに、生成した蒸気の少なくとも一部を抜き出すことにより、前記乾燥処理に供給する蒸気量を調整する構成としたため、乾燥排ガス量の変動があった場合でも、引抜き蒸気量を調整することにより乾燥処理に供給する熱量を容易に調整可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施例1に係るシステムの全体構成図、図2は本発明の実施例2に係るシステムの全体構成図、図3は本発明の実施例3に係るシステムの全体構成図である。
【実施例1】
【0025】
本実施例1では、含水率の高い下水汚泥や食品残渣などの高含水有機物と、含水率の低い紙、布類或いはプラスチック等の一般廃棄物などの低含水有機物とを処理対象とし、含水率に幅がある有機物を処理対象とした場合でも、乾燥炉を効率的に安定運転できるシステムとなっている。このシステムは、高含水有機物と低含水有機物の何れにも対応可能な構成となっており、何れか一方を処理する場合若しくは両方同時に処理する場合に用いられる。
図1を参照して、本実施例1の固体燃料製造システムの主要構成は、高含水有機物1を脱水する脱水機10と、脱水した有機物を乾燥する乾燥炉20と、低含水有機物2に異物・金属選別や粗破砕からなる前処理を施す前処理装置39と、乾燥後の高含水有機物及び/又は前処理後の低含水有機物2を炭化処理する炭化炉30と、該炭化炉30で生成した熱分解ガスを燃焼させ、燃焼ガスを乾燥炉20に供給する乾燥用燃焼炉40と、炭化炉30に燃焼ガスを供給する炭化用燃焼炉50と、を備える。
【0026】
前記脱水機10は、必要に応じて設けるものとする。前記乾燥炉20は、熱風を有機物に直接接触させて乾燥を行う直接加熱式乾燥炉、或いは空気又は蒸気等の熱媒により間接的に有機物を加熱する間接加熱式乾燥炉等が用いられ、有機物を燃焼させずに乾燥させる構成であれば特に限定されない。
前記炭化炉30は、外熱式ロータリーキルン型の装置が好適であるが、本発明の目的に適う限り、他の形態の炭化炉とすることもできる。
【0027】
炭化炉30の内部と乾燥用燃焼炉40とは、炭化炉30内で生成した熱分解ガスの配管であるライン31で接続されている。このライン31には熱分解ガス中から炭化物を分離除去するサイクロン32が設けられている。該サイクロン32の底部と炭化炉30の炭化物出口には、炭化物3を排出するライン33とライン34が夫々設けられている。炭化炉30の外筒は、ライン51により炭化用燃焼炉50と接続され、該炭化用燃焼炉50からの燃焼ガスが炭化炉30の加熱用に供給される。炭化炉30の炭化排ガス出口は、ライン36、ライン53を介して炭化用燃焼炉50に接続される。ライン36はその一部が分岐され、ライン37を介して空気予熱器38に接続されている。該空気予熱器38には、低温側ガスとしてファン60により空気が導入され、高温側ガスとして炭化排ガスが導入される。この低温側ガス出口は、ライン61を介して炭化用燃焼炉50に接続され、加熱された高温空気が炭化用燃焼炉50に供給されるようになっている。
【0028】
乾燥用燃焼炉40と乾燥炉20とは、燃焼炉40からの燃焼ガスを乾燥用ガスとして供給するためのライン43で接続されている。ライン43は、ライン44、ライン45に分岐し、ライン44は乾燥炉20に接続され該乾燥炉20へ乾燥用燃焼ガスを供給し、ライン45は熱交換器22の高温側ガス入口に接続されている。熱交換器22は、高温側ガスとして前記乾燥用燃焼ガスが導入され、低温側ガスとして乾燥炉20から排出される乾燥排ガスが導入される。該熱交換器22の内部を経たライン45からのガス流路は、ライン37に合流し、以後このライン37は、順に空気予熱器38、排ガス処理設備63、誘引ファン64、煙突65を結ぶ配管として構成されている。排ガス処理装置63は、排ガス成分、性状及び量に応じてその装置構成が適宜設定され、例えば、ガス冷却塔、バグフィルタ、洗煙塔等から構成される。乾燥用燃焼炉40には、ファン41が設置され、燃焼用空気を内部に送り込む。一方、熱交換器22の低温側ガス出口は、乾燥排ガスの配管としてライン23を介して乾燥用燃焼炉40に接続されている。
【0029】
次に、上記した構成を有する実施例1のシステムを用いて、高含水有機物と低含水有機物とを炭化処理する方法の一例につき説明する。
含水率が60%以上の高含水有機物1は、必要に応じて脱水機10にて脱水した後、ライン11を介して乾燥炉20に投入される。乾燥炉20に投入される有機物の含水率は60〜90%とする。乾燥炉20での乾燥処理は、ライン44から導入される乾燥用燃焼ガスを、汚泥に直接接触させることにより行う。このとき、上記したように、乾燥炉20は直接加熱式に限らず、間接加熱式であってもよい。尚、乾燥に必要な量以上の燃焼ガスは、ライン45の系統に送られる。乾燥させた高含水有機物1は、ライン21を介して炭化炉30に投入される。
【0030】
一方、含水率が60%以下の低含水有機物2は、必要に応じて前処理装置39に投入される。前処理装置39では主に大型物の粗破砕、大型・長尺異物選別、金属選別が行われる。低含水有機物2は、前処理装置39にて有機物中の金属が除去され、粗破砕により長さ或いは径が50〜100mm以下として炭化炉30へ投入される。尚、高含水有機物1を乾燥機20に投入する前、及び低含水有機物2を炭化炉30に投入する前に、必要に応じて有機物を細破砕することが好ましい。
【0031】
炭化炉30では、有機物を、酸素が欠乏した雰囲気下で約300〜600℃に加熱して炭化処理を行い、熱分解ガスと固体燃料である炭化物3とを生成する。熱分解ガスは、ライン31を介して乾燥用燃焼炉40に導入する。
この炭化炉30の加熱は、炭化用燃焼炉50からの炭化用燃焼ガスの供給により行われる。炭化用燃焼炉50では、ライン61から燃焼用空気が供給されるとともに、ライン53から炭化排ガスが供給され、助燃料で燃焼して炭化用燃焼ガスを生成する。生成した燃焼ガスは炭化炉30の外筒に供給される。このとき炭化用燃焼ガスは、有機物に直接には接触しない。ここで、上記したように、炭化炉30は本実施例のごとく間接加熱式であっても、或いは直接加熱式であっても何れでもよい。尚、ライン61からの空気は、ファン60により外気から供給される空気を、空気予熱器38にて炭化排ガスと熱交換して加熱したものである。炭化用燃焼炉50には、熱分解ガスを一部加えてもよいが、熱源の主体は助燃料とすることが好ましい。
【0032】
一方、これに対して乾燥用燃焼炉40には、乾燥炉20から排気され熱交換器22で過熱した排ガスと、ファン41により供給される燃焼用空気、LNG又は重油等の化石燃料といった助燃料、及び炭化炉30からの熱分解ガスが供給される。燃焼炉40には、このように助燃料も供給されるが、これは温度を850℃以上に保つために最低限必要な量を加える。
【0033】
本実施例では、固体燃料である炭化物3は、炭化炉30出口からライン33を介して得られるとともに、サイクロン32において熱分解ガス中から分離除去されライン34を介して回収することもできる。このようにして得られた炭化物3は、石炭焚きボイラ(図示略)に供給し、石炭とともに混焼して火力発電に用いるなどして有効利用できる。
乾燥用燃焼炉40の燃焼ガスのうち、乾燥炉20に送給する以外の一部は、ライン45を介して熱交換器22に導入され、ここで乾燥排ガスと熱交換して降温され、ライン37を介して空気予熱器38に導入される。また、炭化炉30の加熱に用いられた後の炭化排ガスのうち、炭化用燃焼炉50に送給する以外の一部は、ライン37を介して空気予熱器38に導入される。これらの排ガスは、空気予熱器38にて空気と熱交換した後、ライン62を介して排ガス処理装置63に導かれ、該排ガス処理装置63にて冷却、洗浄、除塵等の排ガス処理が施された後、煙突65より大気放出される。
【0034】
本実施例によれば、高含水有機物1と低含水有機物2の何れを処理する場合にも、乾燥炉20を効率的に安定運転することができ、さらに炭化炉30にて、安定的に高品質の固体燃料を得ることが可能である。
即ち、本実施例のごとく、高含水有機物は脱水、乾燥を主とする前処理を施し、低含水有機物は異物除去、粗破砕を主とする前処理を施すことにより、炭化炉30に、含水率が略均一で且つ大型物、異物を含まない有機物が投入されることとなり、安定して高品質の炭化物が得られることとなる。
【0035】
また、乾燥炉20には、高含水有機物1のみが投入されるため、熱分解を起さず、均一な乾燥が可能となり、乾燥炉20での低含水有機物2の熱分解による回収率低下や、乾燥炉20内での部分燃焼による温度変動を防止できるとともに、乾燥排ガスを燃焼した排ガスの熱エネルギに変動が少なくなり、熱効率の面から安定化が図れるとともに、後段側に熱交換器22を具備した場合でも受熱ガス流量と、加熱ガス量のアンバランスによる熱交換器22の異常加熱等の不具合を回避できる。
さらに、低含水有機物2が、一般廃棄物のように長尺金属類等の異物を含む際には、乾燥炉20での内部を撹拌する撹拌翼への絡みつき等のトラブルの可能性があるが、本実施例によればこれを回避できる。また炭化炉30として間接加熱式のロータリーキルンを用いた場合、低含水有機物2を処理する際に水分蒸発に必要な伝熱面を要さないため、キルンへの処理物充填率を大きく取れ(10〜20%)、炉本体の大きさをコンパクト化できる。
【実施例2】
【0036】
図2に本実施例2に係るシステムの全体構成を示す。尚、実施例2において、上記した実施例1と同様の構成については、その詳細な説明を省略する。
本実施例2のシステムは、有機物全般に適用することができるが、特に含水率の高い高含水有機物や、ある程度含水率に幅のある有機物の処理に適している。
図2を参照して、本実施例2の固体燃料製造システムの主要構成は、有機物5を熱媒により間接加熱して乾燥させる乾燥炉20と、乾燥させた有機物を炭化処理する炭化炉30と、該炭化炉30で生成した熱分解ガスを燃焼させ、燃焼ガスを生成するガス燃焼室55と、該燃焼ガスの少なくとも一部が供給されるとともに助燃料が供給され、これを燃焼させて炭化炉用燃焼ガスを生成する炭化用燃焼炉50と、を備える。
さらに、ガス燃焼室55からの燃焼ガスの他の一部を利用して蒸気を生成する廃熱ボイラ70を備える。さらに好適には、前記廃熱ボイラ70で生成した蒸気を乾燥炉20に供給するライン71上に、該蒸気の一部を引抜いて冷却、凝縮させる復水器73を備える。
なお、ボイラ水量が不足した場合は、必要に応じてドレン回収タンク76から廃熱ボイラ70に適宜給水を行い、ボイラ水温度と圧力を所定値に調節を行えるものとする。
【0037】
前記乾燥炉20の前段には、必要に応じて脱水機(図示略)を設ける。
前記乾燥炉20は、蒸気を熱媒として間接的に有機物5を加熱する間接加熱式乾燥炉であり、例えば炉本体内に熱媒が通流するチューブが配設されたチューブ型乾燥炉、炉本体内に回転可能に撹拌用ディスクが配設され、該ディスク内部に熱媒の通流経路を設けたディスク型乾燥炉等の周知の構造が用いられる。
前記炭化炉30は、外熱式ロータリーキルン型の装置が好適であるが、本発明の目的に適う限り、他の形態の炭化炉とすることもできる。
【0038】
前記ガス燃焼炉55は、炭化炉30からの熱分解ガスを燃焼させて燃焼ガスを生成する装置である。
炭化炉30の内部とガス燃焼室55とは、炭化炉30内で生成した熱分解ガスの配管であるライン31で接続されている。このライン31には熱分解ガス中から炭化物を分離除去するサイクロン32が設けられている。該サイクロン32の底部と炭化炉30の炭化物出口には、炭化物を排出するライン33とライン34が夫々設けられている。ガス燃焼室55には、炭化炉30の間接加熱に用いられた炭化排ガスの配管がライン36、49で接続されている。このライン上には、空気予熱器38が配設されており、該空気予熱器38では、高温側ガスとして前記炭化排ガスが導入され、低温側ガスとして空気がライン46により導入される。このライン46は、ガス燃焼室55とライン47で接続されており、昇温された高温空気をガス燃焼室55の燃焼用空気として導入するようになっている。さらに、この高温空気の一部は、炭化用燃焼炉50にも導入される。
【0039】
ガス燃焼炉55の出口には、燃焼ガスの配管であるライン56が設けられ、該ライン56は2つに分岐され、一方はライン57、51を介して炭化炉30の外筒に接続されている。ライン57、51上には、炭化用燃焼炉50が設置されている。炭化用燃焼炉50は、前記燃焼ガスと助燃料と燃焼用空気とが供給されて炭化用燃焼ガスを生成する装置である。ライン56から分岐された他の一方は、ライン58を介して廃熱ボイラ70に接続される。
前記廃熱ボイラ70は、ガス燃焼炉55からの燃焼ガスを利用して飽和蒸気を生成する装置である。該廃熱ボイラ70には、乾燥炉20から回収された蒸気ドレンが導入される。具体的には、乾燥炉20から排出された蒸気ドレンは、ライン75を介して一旦ドレン回収タンク76に貯留され、所定量のドレンがポンプ77によりライン78を介して廃熱ボイラ70に供給されるようになっている。
【0040】
この廃熱ボイラ70は、飽和蒸気の配管であるライン71を介して乾燥炉20の熱媒流路に接続されている。また好適には、飽和蒸気のライン71上に、該蒸気の少なくとも一部を引抜くライン72と、引抜き蒸気量を調整するバルブ72aとを設け、該ライン72上に復水器73を設ける。引抜かれた蒸気は該復水器72にて冷却、凝縮された後、ドレン回収タンク76に貯留される。復水にて得られたドレンは、ドレン回収タンク76にて乾燥炉20からの蒸気ドレンとともに貯留され、必要に応じて廃熱ボイラ70に供給される。
乾燥炉20にて、前記飽和蒸気は間接加熱用に用いられる。廃熱ボイラ70の排ガスは、ライン66を介して排ガス処理装置63に接続され、誘引ファン64、煙突65を結ぶ配管として構成されている。排ガス処理装置63以降の構成は実施例1と同様である。
【0041】
次に、上記した構成を有する実施例2のシステムを用いて、高含水有機物と低含水有機物とを炭化処理する方法の一例につき説明する。
有機物5は、必要に応じて脱水した後、乾燥炉20に投入される。乾燥炉20では、ライン71から導入される飽和蒸気を用いて有機物5を間接加熱することにより乾燥処理が行われる。乾燥炉20に導入される蒸気温度は150〜200℃とし、例えば160℃、10ataとする。
乾燥炉20に導入する蒸気は、バルブ72aの制御により引抜き量を調整し、有機物5の処理量、含水率に応じて、供給蒸気量を調整する。余剰の蒸気は、ライン72から引抜き、復水器73にて凝縮した後ドレン回収タンク76へ送られる。
乾燥炉20にて乾燥させた有機物5は、ライン21を介して炭化炉30に投入される。
【0042】
炭化炉30では、有機物5を、酸素が欠乏した雰囲気下で約300〜600℃に加熱して炭化処理を行い、熱分解ガスと固体燃料である炭化物3とを生成する。熱分解ガスは、サイクロン32にて集塵した後、ライン31を介してガス燃焼室55に導入する。
この炭化炉30の加熱は、ガス燃焼室55からの燃焼ガスを該炭化炉30の外筒に供給することにより行う。この燃焼ガスは、ガス燃焼室55にて前記熱分解ガスを燃料とし、必要に応じて助燃料を供給して燃焼し、得られる燃焼ガスをさらに炭化用燃焼炉50にて助燃料を供給して燃焼させて加熱し、所定温度まで昇温させたものである。ガス燃焼室55では、燃焼用空気として、炭化炉30の間接加熱に用いられた炭化排ガス、若しくは空気予熱器38で空気を加熱して得られた加熱空気、乾燥炉20からの乾燥排ガスの少なくとも何れかを導入している。ここで乾燥排ガスのライン25上にスクラバ等の洗煙塔(図示略)を設置してもよく、該洗煙塔にて乾燥排ガス中の水分を凝縮して回収可能である。
尚、炭化炉30は本実施例のごとく間接加熱式であっても、或いは直接加熱式であっても何れでもよい。
【0043】
ガス燃焼室55からの燃焼ガスは、上記したように、一部は炭化用燃焼炉50に導入されるが、他の一部は廃熱ボイラ70に導入される。該廃熱ボイラ70では、乾燥炉20から排出される蒸気ドレンがライン75を介して導入され、前記燃焼ガスとの熱交換により加熱して飽和蒸気を生成している。蒸気ドレンの温度は例えば160℃であり、ガス燃焼室55からの排ガスを250℃程度まで熱回収可能である。
このようにして生成された飽和蒸気は、前記乾燥炉20の熱媒通路に供給され、有機物5の間接加熱に用いられる。
【0044】
固体燃料である炭化物3は、炭化炉30出口からライン33を介して得られるとともに、サイクロン32において熱分解ガス中から分離除去されライン34を介して回収することもできる。
また、廃熱ボイラ70から排出される熱交換後の排ガスは、ライン66を介して排ガス処理装置63に導かれ、該排ガス処理装置63にて冷却、洗浄、除塵等の排ガス処理が施された後、煙突65より大気放出される。
【0045】
本実施例によれば、有機物5の炭化処理に際して、乾燥炉20を効率的に安定運転することができ、さらに炭化炉30にて、安定的に高品質の固体燃料を得ることが可能である。
即ち、廃熱ボイラ70を設けて乾燥炉20の負荷変動を蒸気回収で吸収できる構成としたため、有機物5の高含水有機物処理量の変動、或いは有無に対して柔軟なシステム運用が可能となる。
また、乾燥炉20として、乾燥温度850℃程度で使用される直接熱風乾燥とは異なり、乾燥温度が160℃程度の間接加熱式を採用したため、乾燥排ガスとしてNH、HCNが発生せず、乾燥排ガス中の水分を凝縮して回収可能となり、排ガス量が低減でき、システム燃費が向上する。
【0046】
さらに、排熱ボイラでは、蒸気ドレン(160℃)との熱交換を行うため、排ガス温度250℃程度まで熱回収可能で、システム燃費が向上する。
さらにまた、本システムは、高含水有機物のみを対象とした場合においても、システム燃費、乾燥機トラブルなどによる停止時への対応性において優れたシステムとすることができる。
【実施例3】
【0047】
また、これらの実施例の応用として、実施例1と実施例2とを組み合わせた構成としてもよい。これを実施例3として以下に説明する。
図3に示すように、本システムでは、上記した実施例2の構成に加えて、高含水有機物1を乾燥炉20に投入し、低含水有機物2を炭化炉30に投入する構成としている。さらに、乾燥炉20の前段にて、高含水有機物1を脱水処理する脱水機10を備え、該脱水後の高含水有機物1をライン11を介して乾燥炉20に投入するようにしている。また炭化炉30の前段にて、低含水有機物2に対して異物・金属選別や粗破砕からなる前処理を施す前処理装置39を備え、該前処理後の低含水有機物2を炭化炉30に直接投入する構成としている。
【0048】
図3では実施例2のシステム構成に、高含水有機物1と低含水有機物2を別ラインで投入する構成と、夫々に対応した乾燥炉20、前処理装置39を備えた構成を付加しているが、同様にして、実施例1のシステム構成に、乾燥排ガスを燃焼した排ガスの熱エネルギや炭化炉で発生した熱分解ガスを燃焼させた排ガスの熱エネルギから蒸気回収し、回収した飽和蒸気を間接加熱式乾燥炉20の加熱に用いる構成を付加してもよい。さらに、乾燥炉20へ送給する蒸気の一部を抜き出すラインを設け、該ライン上に復水器を設ける構成を付加することもできる。
【0049】
本実施例3によれば、実施例1と実施例2の効果を兼ね備えたシステムとすることができ、有機物の炭化処理に際して、乾燥炉20を効率的に安定運転することができ、さらに炭化炉30にて、安定的に高品質の固体燃料を得ることが可能である。また、高含水有機物1と低含水有機物2を別ラインで炭化装置に供給する構成としたため、乾燥炉20内における負荷変動を最小限に抑えることができるとともに、ここで負荷変動が生じた場合であっても、廃熱ボイラ70によりこの負荷変動を吸収できる構成としたため、安定運転が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明では、乾燥装置を効率的に安定運転することができ、さらに炭化装置にて、安定的に高品質の固体燃料を得ることが可能であるため、下水汚泥、製紙汚泥、その他排水処理で生じる有機性汚泥、コーヒー滓・茶滓等の食品廃棄物、紙・布類、プラスチック類、一般廃棄物等の有機性廃棄物全般に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例1に係るシステムの全体構成図である。
【図2】本発明の実施例2に係るシステムの全体構成図である。
【図3】本発明の実施例3に係るシステムの全体構成図である。
【図4】従来のシステムの全体構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1 高含水有機物
2 低含水有機物
3 炭化物(固体燃料)
10 脱水機
20 乾燥炉
22 熱交換器
30 炭化炉
32 サイクロン
38 空気予熱器
39 前処理装置
40 乾燥用燃焼炉
50 炭化用燃焼炉
55 ガス燃焼室
63 排ガス処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を乾燥処理した後、炭化処理して炭化物からなる固体燃料を製造するとともに、前記乾燥処理にて生じる乾燥排ガスを燃焼した排ガスの熱エネルギを前記乾燥処理の熱源の一部として利用するようにした固体燃料の製造方法において、
前記有機物のうち高含水有機物は、前記乾燥処理した後に前記炭化処理し、低含水有機物は、前記乾燥処理せずに、主として異物除去若しくは粗破砕からなる前処理を施した後、前記炭化処理するようにしたことを特徴とする固体燃料の製造方法。
【請求項2】
有機物を熱媒により間接加熱して乾燥処理した後、炭化処理して炭化物からなる固体燃料を製造するとともに、前記乾燥処理にて生じる乾燥排ガスを燃焼した排ガスの熱エネルギを前記乾燥処理の熱源の一部として利用するようにした固体燃料の製造方法において、
前記乾燥排ガスを燃焼した排ガスの熱エネルギと、前記炭化処理にて発生した熱分解ガス若しくは助燃料の少なくとも何れか一方を燃焼させて得られた熱エネルギとにより、前記乾燥処理にて生じた蒸気ドレンを加熱して飽和蒸気を生成し、該飽和蒸気を前記熱媒として用いるようにしたことを特徴とする固体燃料の製造方法。
【請求項3】
有機物を熱媒により間接加熱して乾燥処理した後、炭化処理して炭化物からなる固体燃料を製造するとともに、前記乾燥処理にて生じる乾燥排ガスを燃焼した排ガスの熱エネルギを前記乾燥処理の熱源の一部として利用するようにした固体燃料の製造方法において、
前記有機物のうち高含水有機物は、前記乾燥処理した後に前記炭化処理し、低含水有機物は、前記乾燥処理せずに、主として異物除去若しくは粗破砕からなる前処理を施した後、前記炭化処理するとともに、
前記乾燥排ガスを燃焼した排ガスの熱エネルギと、前記炭化処理にて発生した熱分解ガス若しくは助燃料の少なくとも何れか一方を燃焼させて得られた熱エネルギとにより、前記乾燥処理にて生じた蒸気ドレンを加熱して飽和蒸気を生成し、該飽和蒸気を前記熱媒として用いるようにしたことを特徴とする固体燃料の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥処理の熱需要に応じて、前記飽和蒸気の少なくとも一部を引抜くことにより前記乾燥処理へ供給する蒸気量を調整するようにしたことを特徴とする請求項2若しくは3記載の固体燃料の製造方法。
【請求項5】
有機物を乾燥処理する乾燥装置と、該乾燥処理した有機物を炭化処理して炭化物からなる固体燃料を製造する炭化装置と、前記乾燥装置からの乾燥排ガスと前記炭化装置からの熱分解ガス若しくは助燃料の少なくとも何れか一方とが供給され、該熱分解ガス若しくは助燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼装置と、該燃焼ガスを前記乾燥装置若しくは前記炭化装置に導入するラインと、を備えた固体燃料の製造システムにおいて、
前記乾燥装置とは別に、前記炭化装置の前段に主として異物除去若しくは粗破砕を行う前処理装置を設け、
前記有機物のうち高含水有機物を前記乾燥装置から前記炭化装置に投入するラインと、低含水有機物を前記前処理装置から前記炭化装置に投入するラインとを夫々独立して設けたことを特徴とする固体燃料の製造システム。
【請求項6】
有機物を熱媒により間接加熱して乾燥処理する乾燥装置と、該乾燥処理した有機物を炭化処理して炭化物からなる固体燃料を製造する炭化装置と、前記乾燥装置からの乾燥排ガスと前記炭化装置からの熱分解ガス若しくは助燃料の少なくとも何れか一方とが供給され、該熱分解ガス若しくは助燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼装置と、を備えた固体燃料の製造システムにおいて、
前記燃焼装置にて生成した燃焼ガスと、前記乾燥装置から回収した蒸気ドレンとを熱交換して飽和蒸気を生成する廃熱ボイラを備え、前記廃熱ボイラからの飽和蒸気を前記乾燥装置に熱媒として供給するラインを設けたことを特徴とする固体燃料の製造システム。
【請求項7】
有機物を乾燥処理する乾燥装置と、該乾燥処理した有機物を炭化処理して炭化物からなる固体燃料を製造する炭化装置と、前記乾燥装置からの乾燥排ガスと前記炭化装置からの熱分解ガス若しくは助燃料の少なくとも何れか一方とが供給され、該熱分解ガス若しくは助燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼装置と、を備えた固体燃料の製造システムにおいて、
前記乾燥装置とは別に、前記炭化装置の前段に主として異物除去若しくは粗破砕を行う前処理装置を設け、前記有機物のうち高含水有機物を前記乾燥装置から前記炭化装置に投入するラインと、低含水有機物を前記前処理装置から前記炭化装置に投入するラインとを夫々独立して設けるとともに、
前記燃焼装置にて生成した燃焼ガスと、前記乾燥装置から回収された蒸気ドレンとを熱交換して飽和蒸気を生成する廃熱ボイラを備え、前記廃熱ボイラからの飽和蒸気を前記乾燥装置に熱媒として供給するラインを設けたことを特徴とする固体燃料の製造システム。
【請求項8】
前記飽和蒸気を前記乾燥装置に供給するラインから該飽和蒸気の少なくとも一部を引抜き、該引抜いた飽和蒸気を復水させる復水器と、該復水により得られたドレンを貯留するドレン回収タンクと、前記飽和蒸気の引抜き量を制御するバルブとを設け、
前記乾燥装置の熱需要に応じて、前記バルブにより該乾燥装置へ供給する蒸気量を調整するとともに、前記ドレン回収タンク内のドレンを必要に応じて前記廃熱ボイラに給水するようにしたことを特徴とする請求項6若しくは7記載の固体燃料の製造システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−201964(P2008−201964A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41487(P2007−41487)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】