説明

固体薬物剤形

【課題】HIVプロテアーゼの阻害薬のための改良された経口アベイラビリティを与える固体薬物剤形の提供。
【解決手段】少なくとも1種のHIVプロテアーゼ阻害薬並びに少なくとも1種の医薬的に許容される水溶性ポリマー及び少なくとも1種の医薬的に許容される界面活性剤の固体分散物を含む固体薬物剤形。該医薬的に許容される水溶性ポリマーは、少なくとも約50℃のTgを有し、該医薬的に許容される界面活性剤は、約4から約10のHLB値を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のHIVプロテアーゼ阻害薬を含有する固体薬物剤形及びこの製造方法に指向している。
【背景技術】
【0002】
後天性免疫不全症候群(AIDS)を起こすウイルスは、T−リンパ球ウイルスIII(HTLV−III)又はリンパ節症関連ウイルス(LAV)又はAIDS関連ウイルス(ARV)又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含む、異なった名称によって知られている。現在まで、二つの別個のファミリー、即ち、HIV−1及びHIV−2が同定されている。
【0003】
レトロウイルス生活環に於ける重要な経路の一つは、アスパラギン酸プロテアーゼによるポリタンパク質前駆体のプロセッシングである。例えば、HIVウイルスで、gag−polタンパク質は、HIVプロテアーゼによってプロセッシングされる。アスパラギン酸プロテアーゼによる前駆体ポリタンパク質の正確なプロセッシングは、感染性ビリオンのアセンブリのために必要であり、従って、アスパラギン酸プロテアーゼを、抗ウイルス治療のための関心をそそる標的にする。特にHIV治療について、HIVプロテアーゼは関心をそそる標的である。
【0004】
薬物の経口剤形の潜在的有用性の尺度は、この剤形の経口投与後に観察されるバイオアベイラビリティである。経口で投与されるとき、種々の要因が、薬物のバイオアベイラビリティに影響を与え得る。これらの要因には、水溶解度、胃腸管を通過する薬物吸収、用量強度及び第一パス効果(pass effect)が含まれる。水溶解度は、これらの要因の最も重要なものの一つである。残念ながら、HIVプロテアーゼ阻害化合物は、典型的に、劣った水溶解度を有することによって特徴付けられる。
【0005】
患者のコンプライアンス及び味覚マスキングのような種々の理由のために、通常、固体剤形が液体剤形よりも好ましい。しかしながら、殆どの例に於いて、薬物の経口固体剤形は、薬物の経口溶液よりも低いバイオアベイラビリティを与える。
【0006】
薬物の固溶体を形成することにより、固体剤形により与えられるバイオアベイラビリティを改良するための試みがある。用語「固溶体」は、薬物が、マトリックス全体に分子的に分散され、こうしてこの系が、全体的に化学的に及び物理的に均一又は均質であるような、固体状態にある系を定義する。固溶体は、この中の成分が、胃液のような液体媒体と接触するとき、液体溶液を容易に形成するので好ましい物理系である。この溶解の容易性は、少なくとも部分的に、固溶体からの成分の溶解のために必要なエネルギーが、結晶性又は微結晶性固相からの成分の溶解のために必要なエネルギーよりも小さいと言う事実に帰属させることができる。しかしながら、胃腸管内の薬物吸収が遅い場合、固溶体から放出される薬物は、高い過飽和になり、胃腸管内の水性液体中で沈殿するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
適切な経口バイオアベイラビリティ及び安定性を有し、高いビヒクル体積を必要としない、HIVプロテアーゼ阻害薬のための改良された経口固体剤形の開発についての継続する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも1種の医薬的に許容される水溶性ポリマー及び少なくとも1種の医薬的に許容される界面活性剤中の、少なくとも1種のHIVプロテアーゼ阻害薬の固体分散物を含む、固体薬物剤形を提供する。一つの実施態様に於いて、この医薬的に許容される水溶性ポリマーは、少なくとも約50℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
用語「固体分散物」は、少なくとも2成分を含む固体状態(液体又は気体状態に対立するものとして)にある系を定義し、ここで、一成分は、他の成分又は成分群全体に均一に分散されている。例えば、活性成分又は活性成分の組合せは、医薬的に許容される水溶性ポリマー(群)及び医薬的に許容される界面活性剤(群)を含むマトリックス中に分散されている。用語「固体分散物」は、他の相中に分散された一つの相の小さい粒子、典型的に、直径が1μmよりも小さい粒子を有する系を包含する。成分の固体分散物が、系が、全体的に化学的に及び物理的に均一若しくは均質であるか又は(熱力学に於いて定義されるように)一つの相からなるようなものであるとき、このような固体分散物は、「固溶体」又は「ガラス状溶液」と呼ばれるであろう。ガラス状溶液は、溶質がガラス状溶媒中に溶解している、均一なガラス状系である。HIVプロテアーゼ阻害剤のガラス状溶液及び固溶体が、好ましい物理的系である。これらの系には如何なる顕著な量の活性成分も、熱分析(DSC)又はX線回折分析(WAXS)によって証明されるように、これらの顕著な結晶状態又は微結晶状態で含有されていない。
【0010】
本発明の一つの実施態様に於いて、薬物剤形には、全剤形の約5から約30重量%(好ましくは、全剤形の約10から約25重量%)のHIVプロテアーゼ阻害薬又はHIVプロテアーゼ阻害薬群の組合せ、全剤形の約50から約85重量%(好ましくは、全剤形の約60から約80重量%)の水溶性ポリマー(又はこのようなポリマーの全ての組合せ)、全剤形の約2から約20重量%(好ましくは、全剤形の約3から約15重量%)の界面活性剤(又は界面活性剤の組合せ)及び全剤形の約0から約15重量%の添加物が含有されている。
【0011】
本発明に於いて使用するために適しているHIVプロテアーゼ阻害化合物には、例えば、これらに限定されないが、下記のものが含まれる。
【0012】
(2S,3S,5S)−5−(N−(N−((N−メチル−N−((2−イソプロピル−4−チアゾリル)メチル)アミノ)カルボニル)−L−バリニル)アミノ−2−(N−((5−チアゾリル)メトキシカルボニル)−アミノ)−アミノ−1,6−ジフェニル−3−ヒドロキシヘキサン(リトナビル(ritonavir));
(2S,3S,5S)−2−(2,6−ジメチルフェノキシアセチル)アミノ−3−ヒドロキシ−5−[2S−(1−テトラヒドロ−ピリミド−2−オニル)−3−メチルブタノイル]−アミノ−1,6−ジフェニルヘキサン(ABT−378、ロピナビル(lopinavir));
N−(2(R)−ヒドロキシ−1(S)−インダニル)−2(R)−フェニルメチル−4(S)−ヒドロキシ−5−(1−(4−(3−ピリジルメチル)−2(S)−N’−(t−ブチルカルボキサミド)−ピペラジニル))−ペンタンアミド(インジナビル(indinavir));
N−tert−ブチル−デカヒドロ−2−[2(R)−ヒドロキシ−4−フェニル−3(S)−[[N−(2−キノリルカルボニル)−L−アスパラギニル]アミノ]ブチル]−(4aS,8aS)−イソキノリン−3(S)−カルボキサミド(サキナビル(saquinavir));
5(S)−Boc−アミノ−4(S)−ヒドロキシ−6−フェニル−2(R)−フェニルメチルヘキサノイル−(L)−Val−(L)−Phe−モルホリン−4−イルアミド;
1−ナフトキシアセチル−β−メチルチオ−Ala−(2S,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−ブタノイル−1,3−チアゾリジン−4−t−ブチルアミド;
5−イソキノリンオキシアセチル−β−メチルチオ−Ala−(2S,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−ブタノイル−1,3−チアゾリジン−4−t−ブチルアミド;
[1S−[1R−(R−),2S])−N’−[3−[[[(1,1−ジメチルエチル)アミノ]カルボニル](2−メチルプロピル)アミノ]−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)プロピル]−2−[(2−キノリニルカルボニル)アミノ]−ブタンジアミド;
アムプレナビル(amprenavir)(VX−478);DMP323;DMP−450;AG1343(ネルフィナビル(nelfinavir));
アタザナビル(atazanavir)(BMS232,632);
チプラナビル(tipranavir);
パリナビル(palinavir);
TMC−114;
RO033−4649;
フォサムプレナビル(fosamprenavir)(GW433908);
P−1946;
BMS186,318;SC−55389a;BILA1096BS及びU−140690又はこれらの組合せ。
【0013】
一つの実施態様に於いて、リトナビル(アボット・ラボラトリーズ社(Abbott Laboratories)、米国イリノイ州アボット・パーク(Abbott Park))は、本発明の剤形の中に配合することができるHIVプロテアーゼ阻害薬である。これ及び他の化合物並びにこれらの製造方法は、米国特許第5,542,206号明細書及び米国特許第5,648,497号明細書(これらの開示は、参照によりここに組み込まれる)に開示されている。別の実施態様に於いて、本発明は、該HIVプロテアーゼ阻害薬が、リトナビル又はリトナビルと少なくとも1種の他のHIVプロテアーゼ阻害薬との組合せである剤形であって、少なくとも約9μg・h/mL/100mgのイヌに於けるリトナビル血漿濃度の用量調節したAUC(dose−adjusted AUC)を示す剤形を提供する。
【0014】
他の実施態様に於いて、ロピナビル(アボット・ラボラトリーズ社、米国イリノイ州アボット・パーク)は、本発明の剤形の中に配合することができるHIVプロテアーゼ阻害薬である。これ及び他の化合物並びにこれらの製造方法は、米国特許第5,914,332号明細書(この開示は、参照によりここに組み込まれる)に開示されている。別の実施態様に於いて、本発明は、該HIVプロテアーゼ阻害薬が、ロピナビル又はロピナビルと少なくとも1種の他のHIVプロテアーゼ阻害薬との組合せである剤形であって、少なくとも約20μg・h/mL/100mg(好ましくは少なくとも約22.5μg・h/mL/100mg、最も好ましくは少なくとも約35μg・h/mL/100mg)のイヌに於けるロピナビル血漿濃度の用量調節したAUCを示す剤形を提供する。
【0015】
更に他の実施態様に於いて、ネルフィナビルメシラート(カリフォルニア州ラ・ホーヤ(La Jolla)のアゴウロン・ファーマシューティカルス社(Agouron Pharmaceuticals,Inc.)により、商品名ビラセプト(Viracept)で市販されている)は、本発明の剤形の中に配合することができるHIVプロテアーゼ阻害薬である。
【0016】
本発明の剤形は、高い到達可能なAUC、高い到達可能なCmax(最大血漿濃度)及び低いTmax(最大血漿濃度に到達するための時間)によって特徴付けられる、放出及び吸収挙動を示す。
【0017】
更に他の実施態様に於いて、本発明は、該HIVプロテアーゼ阻害薬が、リトナビルとロピナビルとの組合せである剤形であって、少なくとも約9μg・h/mL/100mgのイヌに於けるリトナビル血漿濃度の用量調節したAUC及び少なくとも約20μg・h/mL/100mg(好ましくは少なくとも約22.5μg・h/mL/100mg、最も好ましくは少なくとも約35μg・h/mL/100mg)のロピナビル血漿濃度の用量調節したAUCを示す剤形を提供する。
【0018】
用語「AUC」は、「血漿濃度−時間曲線下面積」を意味し、この通常の意味で、即ち、剤形を、非絶食条件下でイヌ(ビーグル犬)に経口で投与した、0から24時の血漿濃度−時間曲線の下の面積として使用される。「非絶食条件」は、試験前期間及び全試験期間の間、イヌが、栄養的にバランスのとれた一日の食事を与えられることを意味する。AUCは、濃度×時間の単位を有する。実験的濃度−時間点が決定されると、例えば、コンピュータプログラムにより又は台形法により、AUCを便利に計算することができる。本明細書に於ける全てのAUCデータは、100mg用量レベルに調整した用量である。本発明に於ける目的のために、AUCは、AUCが用量と共に比例して増加する用量範囲内で決定される。イヌに対して、それぞれ50mgのリトナビル又は200mgのロピナビルの投与が、本明細書に於いて使用されるときAUC値を決定するために適していると考えられる。
【0019】
本発明に従った剤形は、優れた安定性によって特徴付けられ、特に、活性成分(群)の再結晶又は分解に対して高い耐性を示す。従って、40℃及び75%湿度で6週間貯蔵した際(例えば、乾燥剤無しに高密度ポリエチレン(HDPE)ボトル内に保存したとき)、本発明に従った剤形は、通常、(DSC又はWAXS分析によって証明されるように)結晶化度の如何なる徴候も示さず、(HPLC分析によって証明されるように)初期活性成分含有量の少なくとも約98%を含有する。
【0020】
本明細書で使用されるとき、用語「医薬的に許容される界面活性剤」は、医薬的に許容される非イオン性界面活性剤を指す。一つの実施態様に於いて、この剤形は、少なくとも1種の、約4から約10、好ましくは約7から約9の親水親油バランス(HLB)値を有する界面活性剤を含有している。HLBシステム(Fiedler,H.B.著、賦形剤百科事典(Encyclopedia of Excipients)、第5版、Aulendorf:ECV−Editio−Cantor−Verlag(2002年))は、親油性物質がより低いHLB値を受け取り、親水性物質がより高いHLB値を受け取るように、界面活性剤に数値を帰属させている。本発明に於いて使用するために適している約4から約10のHLB値を有する界面活性剤には、例えば、これらに限定されないが、下記のものが含まれる。
【0021】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、例えば、ポリオキシエチレン(2)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)オクチルフェニルエーテル;
ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、例えば、PEG−200モノラルラート、PEG−200ジラウラート、PEG−300ジラウラート、PEG−400ジラウラート、PEG−300ジステアラート、PEG−300ジオレアート;
アルキレングリコール脂肪酸モノエステル、例えば、プロピレングリコールモノラウラート(ラウログリコール(Lauroglycol)(登録商標));
スクロース脂肪酸エステル、例えば、スクロースモノステアラート、スクロースジステアラート、スクロースモノラウラート、スクロースジラウラート若しくは
ソルビタン脂肪酸モノエステル、例えば、ソルビタンモノラウラート(スパン(Span)(登録商標)20)、ソルビタンモノオレアート、ソルビタンモノパルミタート(スパン40)若しくはソルビタンステアラート又は
これらの1種若しくは2種以上の混合物。
【0022】
ソルビタンモノ脂肪酸エステルが好ましく、ソルビタンモノラウラート及びソルビタンモノパルミタートが特に好ましい。
【0023】
約4から約10のHLB値を有する界面活性剤と並んで、この剤形には、追加の医薬的に許容される界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、例えば、ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレアート若しくはポリオキシル35ひまし油(クレモホル(Cremophor)(登録商標)EL;BASF社)若しくはポリオキシエチレングリセロールオキシステアラート、例えば、ポリエチレングリコール40水素化ひまし油(クレモホル(登録商標)RH40)若しくはポリエチレングリコール60水素化ひまし油(クレモホル(登録商標)RH60);又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー若しくはポリオキシエチレンポリプロピレングリコールとしても知られている、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、例えば、ポロキサマー(Poloxamer)(登録商標)124、ポロキサマー(登録商標)188、ポロキサマー(登録商標)237、ポロキサマー(登録商標)388、ポロキサマー(登録商標)407(BASFヴィアンドッテ社(BASF Wyandotte Corp.));又はポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノ脂肪酸エステル、例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレアート(トゥイーン(Tween)(登録商標)80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアラート(トゥイーン(登録商標)60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミタート(トゥイーン(登録商標)40)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウラート(トゥイーン(登録商標)20)が含まれてよい。
【0024】
このような追加の界面活性剤を使用する場合、約4から約10のHLB値を有する界面活性剤は、一般的に、使用される界面活性剤の全量の少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約60重量%を占める。
【0025】
本発明に於いて使用される水溶性ポリマーは、少なくとも約50℃、好ましくは少なくとも約60℃、最も好ましくは約80℃から約180℃のTgを有する。有機ポリマーのTg値を決定するための方法は、1992年にジョン・ウイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,Inc.)によって刊行されたL.H.Sperling著、「物理的ポリマー科学概論(Introdution to Physical Polymer Science)」、第2版に記載されている。Tg値は、個々のモノマー、即ち、ポリマーを形成するもののそれぞれから誘導されたホモポリマーについてのTgの加重合計;Tg=ΣW(式中、Wは、有機ポリマー中のモノマーiの重量パーセントであり、Xは、モノマーiから誘導されるホモポリマーについてのTg値である)として計算することができる。ホモポリマーについてのTg値は、1975年にジョン・ウイリー・アンド・サンズ社によって刊行された、J.Brandrup及びE.H.Immergut編、「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」、第2版から得ることができる。
【0026】
上記定義されたようなTgを有する水溶性ポリマーは、機械的に安定であり、常温範囲内で、十分に温度安定性であって、固体分散物を、更に加工することなく剤形として使用することができるか又は小量の錠剤化助剤のみで錠剤に圧縮成形することができる固体分散物の製造を可能にする。
【0027】
剤形中に含まれる水溶性ポリマーは、好ましくは、2%(w/w)で水溶液中に20℃で溶解したとき、約1から約5000mPa・s、更に好ましくは約1から約700mPa・s、最も好ましくは約5から約100mPa・sの見掛け粘度を有するポリマーである。本発明に於いて使用するために適している水溶性ポリマーには、例えば、これらに限定されないが、下記のものが含まれる。
【0028】
N−ビニルラクタムのホモポリマー及びコポリマー、特に、N−ビニルピロリドンのホモポリマー及びコポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、N−ビニルピロリドンと酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニルとのコポリマー;
セルロースエステル及びセルロースエーテル、特に、メチルセルロース及びエチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、特にヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースフタラート若しくはスクシナート、特にセルロースアセタートフタラート及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシナート若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート;
高分子ポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド並びにエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー;
ポリアクリレート及びポリメタクリレート、例えば、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸/メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸ブチル/メタクリル酸2−ジメチルアミノエチルコポリマー、ポリ(アクリル酸ヒドロキシアルキル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシアルキル);
ポリアクリルアミド;
酢酸ビニルポリマー、例えば、酢酸ビニルとクロトン酸とのコポリマー、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル(部分的に鹸化された「ポリビニルアルコール」としても参照される);
ポリビニルアルコール;
オリゴ糖及び多糖類、例えば、カラギーナン、ガラクトマンナン及びキサンタンゴム;
又はこれらの1種若しくは2種以上の混合物。
【0029】
これらの中で、N−ビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマー、特に、N−ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマーが好ましい。特に好ましいポリマーは、コポリマーの約60重量%のN−ビニルピロリドンと、コポリマーの約40重量%の酢酸ビニルとのコポリマーである。
【0030】
本発明の剤形には、少なくとも1種の一般的な添加物、例えば、流動調節剤、滑剤、増量剤(充填剤)及び崩壊剤が含有されていてよい。一般的に、この添加物は、剤形の重量に対して、約0.01から約15重量%の量で含有される。
【0031】
本発明に従って固体剤形を製造するために、種々の方法を使用することができる。これらの方法には、水溶性ポリマー及び界面活性剤のマトリックス中の、HIVプロテアーゼ阻害薬又はHIVプロテアーゼ阻害薬の組合せの固溶体の製造並びに要求される錠剤形への造形が含まれる。代わりに、固溶体生成物を、例えば、粉砕又は微粉砕によって顆粒に再分割し、続いてこの顆粒を錠剤に圧縮成形することができる。
【0032】
溶融押出、噴霧乾燥及び溶液蒸発を含む、固溶体を製造するための種々の技術が存在し、溶融押出が好ましい。
【0033】
溶融押出方法には、HIVプロテアーゼ阻害薬又はHIVプロテアーゼ阻害薬の組合せ、水溶性ポリマー及び界面活性剤の均質な溶融物を製造する工程並びにそれが固化するまで溶融物を冷却する工程が含まれる。「溶融すること」は、液体又はゴム状態への転移を意味し、この場合、一成分が他の成分の中に均一に埋め込まれるようになることが可能である。典型的に、一成分は溶融し、他の成分は、溶融物の中に溶解し、こうして溶液を形成するであろう。溶融することには、通常、水溶性ポリマーの軟化点よりも上に加熱することが含まれる。溶融物の製造は、種々の方法で行うことができる。成分の混合を、溶融物の形成の前、間又は後に行うことができる。例えば、成分を最初に混合し、次いで溶融するか又は同時に混合し、溶融することができる。通常、活性成分を効率よく分散させるために、溶融物を均質化させる。また、最初に水溶性ポリマーを溶融し、次いで活性成分を混入し、均質化することが便利であろう。
【0034】
通常、この溶融温度は、約70から約250℃、好ましくは約80から約180℃、最も好ましくは約100から約140℃の範囲内である。
【0035】
活性成分は、このままで又は適切な溶媒、例えばアルコール、脂肪族炭化水素若しくはエステル中の溶液若しくは分散液として使用することができる。使用することができる他の溶媒は、液体二酸化炭素である。溶媒は、溶融物が製造されたとき、除去、例えば蒸発される。
【0036】
種々の添加物、例えば、コロイドシリカのような流動調節剤、滑剤、充填剤、崩壊剤、可塑剤、安定剤、例えば酸化防止剤、光安定剤、ラジカル捕獲剤、微生物攻撃に対する安定剤が、溶融物中に含有されていてよい。
【0037】
溶融すること及び/又は混合することは、この目的のための慣習的な装置内で起こる。特に適しているものは、押出機又は混練機である。適切な押出機には、一軸スクリュー押出機、かみ合いスクリュー押出機又は他の多スクリュー押出機、好ましくは二軸スクリュー押出機(これは、同転又は逆転することができ、場合により混練ディスクが設けられていてよい)が含まれる。作動温度は、また、押出機の種類又は使用する押出機内の形状の種類によって決定されるであろう。押出機内の成分を溶融、混合及び溶解するために必要なエネルギーの一部は、要素を加熱することによって与えることができる。しかしながら、押出機内の材料の摩擦及び剪断も、かなりの量のエネルギーを混合物に与えることができ、成分の均一な溶融物の形成に助けになり得る。
【0038】
溶融物は、ペースト状から粘稠までの範囲である。押出物の造形は、便利には、これらの表面上に相互にマッチングするくぼみを有する、2個の逆転ローラーを有するカレンダーによって実施される。広範囲の剤形を、異なったくぼみの形状を有するローラーを使用することによって達成できる。代わりに、押出物を、固化の前(ホットカット)又は固化の後(コールドカット)に片に切断する。
【0039】
場合により、得られる固溶体生成物を、微粉砕又は粉砕して顆粒にする。次いで、この顆粒を圧縮成形することができる。圧縮成形は、顆粒を含む粉末体を、高圧下で高密度化して、低多孔度の圧縮物、例えば、錠剤を得る方法を意味する。粉末体の圧縮は、通常、錠剤成形機内で、更に特に、2個の移動する杵の間のスチールダイ内で行われる。本発明の固体剤形に2種以上のHIVプロテアーゼ阻害薬の組合せ(又はHIVプロテアーゼ阻害薬と1種若しくは2種以上の他の活性成分との組合せ)が含まれる場合、個々の活性成分の固溶体生成物を別々に製造し、圧縮成形の前に微粉砕した又は粉砕した生成物をブレンドすることが、勿論可能である。
【0040】
流動調節剤、崩壊剤、増量剤(充填剤)及び滑剤から選択された少なくとも1種の添加物が、顆粒を圧縮成形する際に好ましく使用される。崩壊剤は、胃の中での圧縮物の迅速な崩壊を促進し、遊離された顆粒をお互いから分離して保持する。適切な崩壊剤は、架橋ポリマー、例えば、架橋ポリビニルピロリドン及び架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロースである。適切な増量剤(「充填剤」としても参照される)は、ラクトース、リン酸水素カルシウム、微結晶性セルロース(アビセル(Avicell)(登録商標))、ケイ酸塩、特に二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、タルク、ジャガイモ又はトウモロコシデンプン、イソマルト(isomalt)、ポリビニルアルコールから選択される。
【0041】
適切な流動調節剤は、高分散シリカ(エーロジル(Aerosil)(登録商標))及び動物又は植物脂又はワックスから選択される。
【0042】
滑剤は、好ましくは、顆粒を圧縮成形する際に使用される。適切な滑剤は、ポリエチレングリコール(例えば、1000から6000のMwを有する)、ステアリン酸マグネシウム及びカルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムなどから選択される。
【0043】
種々の他の添加物、例えば、アゾ染料のような染料、酸化アルミニウム若しくは二酸化チタンのような有機若しくは無機顔料又は天然起源の染料、安定剤、例えば酸化防止剤、光安定剤、ラジカル捕獲剤、微生物攻撃に対する安定剤を使用することができる。
【0044】
本発明に従った剤形は、幾つかの層からなる剤形、例えば積層した又は多層錠剤として提供することができる。これらは開放又は閉塞形であってよい。「閉塞剤形」は、一つの層が、少なくとも1個の他の層によって完全に取り囲まれているものである。多層形態は、お互いに共存できない2種の活性成分を処理できるという利点又は活性成分(群)の放出特徴を制御できるという利点を有する。例えば、外側層の一つ中に活性成分を含有させることによって初期用量を与え、内側層(群)中に活性成分を含有させることによって維持用量を与えることが可能である。多層錠剤型は、2個又は3個以上の、顆粒の層を圧縮することによって製造することができる。代わりに、多層剤形は、「共押出」として知られている方法によって製造することができる。本質的に、この方法は、少なくとも2種の異なった、前記説明したような溶融物組成物の製造及びこれらの溶融組成物をジョイント共押出ダイの中に通過させることを含む。共押出ダイの形状は、必要な薬物剤形に依存する。例えば、スロットダイと呼ばれる平らなダイ間隙を有するダイ及び環状スリットを有するダイが適している。
【0045】
哺乳動物によるこのような剤形の摂取を容易に行うために、剤形に適切な形状を与えることが有利である。これで、楽に飲み込むことができる大きい錠剤は、好ましくは、形状は丸くなくて伸びている。
【0046】
錠剤上のフィルム皮膜は、これを飲み込むことができる容易性に更に寄与する。フィルム皮膜は、また、味を改良し、優雅な外観を与える。所望により、このフィルム皮膜は腸溶性皮膜であってよい。このフィルム皮膜には、通常、ポリマーフィルム形成性材料、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びアクリレート又はメタクリレートコポリマーが含まれる。フィルム形成性ポリマーの他に、フィルム皮膜には、更に、可塑剤、例えばポリエチレングリコール、界面活性剤、例えばトゥイーン(登録商標)型及び場合により顔料、例えば二酸化チタン又は酸化鉄が含まれていてよい。フィルム皮膜には、また、接着防止剤としてタルクが含まれていてよい。フィルム皮膜は、通常、剤形の約5重量%未満を占める。
【0047】
投与の正確な用量及び頻度は当業者によく知られているように、治療される特別の条件、特別の患者の年齢、体重及び一般的身体状態並びに個体が取ることができる他の薬物治療に依存する。
【0048】
リトナビル/ロピナビルの組合せ投与のための、本発明の代表的組成物を、下記の表1に示し、値は重量%である。
【0049】
【表1】


【0050】
リトナビルのみの投与のための、本発明の代表的組成物を、下記の表2に示す。値は重量%である。
【0051】
【表2】

【0052】
上記の組成物を溶融押出によって加工する。得られる押出物をこのまま使用するか又は粉砕し、好ましくは、適切な錠剤化助剤、例えば、ステアリルフマル酸ナトリウム、コロイドシリカ、ラクトース、イソマルト、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、セルロース又はリン酸水素カルシウムの使用によって、錠剤に圧縮成形することができる。
【0053】
下記の実施例は、これを限定することなく本発明を更に例示する機能を果たすであろう。
【0054】
経口バイオアベイラビリティ研究のためのプロトコル
イヌ(ビーグル犬、雌雄混在、体重約10kg)に、27%の脂肪を有するバランスの取れた食餌を与え、任意量の水を与えた。それぞれのイヌに、投与の約30分前に、ヒスタミンの100μg/kgの皮下用量を与えた。それぞれ、約200mgのロピナビル、約50mgのリトナビル又は約200mgのロピナビル及び約50mgのリトナビルに相当する1回用量を、それぞれのイヌに投与した。投与に続いて、約10ミリリットルの水を与えた。血液サンプルを、それぞれの動物から、投与の前並びに薬物投与後0.25、0.5、1.0、1.5、2、3、4、6、8、10、12及び24時間で得た。血漿を赤血球から遠心分離によって分離し、分析まで凍結させた(−30℃)。HIVプロテアーゼ阻害薬の濃度を、血漿サンプルの液液抽出に続く、低波長UV検出器を有する逆相HPLCによって決定した。血漿濃度−時間曲線下面積(AUC)は、研究の時間経過に亘る台形法によって計算した。それぞれの剤形を、8匹のイヌを含むグループ内で評価した。報告した値は、それぞれのイヌのグループについての平均である。
【0055】
(比較例)
コポビドン(Copovidone)(N−ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー60:40、78.17重量部)を、リトナビル(4.16重量部)、ロピナビル(16.67重量部)及びコロイドシリカ(1.0重量部)と混合した。次いで、この粉末状混合物を、二軸スクリュー押出機(スクリュー直径18mm)の中に、2.0kg/時の速度及び133℃の溶融温度で供給した。このきれいで完全に透明な溶融物を、これらの表面上に相互にマッチングするキャビティを有する、2個の逆転ローラーを有するカレンダーに供給した。こうして、1080mgの錠剤を得た。DSC及びWAXS分析によって、この配合物中に結晶性薬物物質の如何なる証拠も示されなかった。
【0056】
イヌに於ける用量調節したAUCは、リトナビルについて0.52μg・h/mL/100mg及びロピナビルについて4.54μg・h/mL/100mgであった。この比較例は、添加した界面活性剤を含有しないHIVプロテアーゼ阻害薬の固溶体が、非常に劣ったバイオアベイラビリティをもたらすことを示している。
【実施例1】
【0057】
コポビドン(N−ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー60:40;68.17重量部)を、クレモホルRH40(ポリオキシエチレングリセロールオキシステアラート;10.00重量部)と、ジオスナ(Diosna)高剪断ミキサー内でブレンドした。得られた顆粒を、リトナビル(4.17重量部)、ロピナビル(16.67重量部)及びコロイドシリカ(1.00重量部)と混合した。次いで、この粉末状混合物を、ライストリッツ・ミクロ(Leistritz Micro)18二軸スクリュー押出機の中に、2.3kg/時の速度及び126℃の溶融温度で供給した。押出物を片に切断し、固化させた。押し出された片を、高衝撃万能ミルを使用して粉砕した。粉砕した材料(86.49重量部)を、ビンブレンダー内で、ラクトース一水和物(6.00重量部)、架橋PVP(6.00重量部)、コロイドシリカ(1.00重量部)及びステアリン酸マグネシウム(0.51重量部)とブレンドした。この粉末状ブレンドを、フェッテ(Fette)E1単発式打錠機で、1378.0mgの錠剤に圧縮した。この錠剤を、コーティングパン内で、60℃の温度でフィルム皮膜用の水性分散液(カラーコン社(Colorcon)から入手可能な、オパドライ(Opadry))をスプレーすることによって、フィルムコーティングした。
【0058】
イヌに於ける用量調節したAUCは、リトナビルについて0.60μg・h/mL/100mg及びロピナビルについて7.43μg・h/mL/100mgであった。この実施例は、HIVプロテアーゼ阻害薬の固溶体中に界面活性剤を含有させることによって、得られるバイオアベイラビリティが改良されることを示している。
【実施例2】
【0059】
コポビドン(N−ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー60:40;853.8重量部)を、スパン20(ソルビタンモノラウラート;83.9重量部)と、ジオスナ高剪断ミキサー内でブレンドした。得られた顆粒を、リトナビル(50重量部)、ロピナビル(200重量部)及びコロイドシリカ(12重量部)と混合した。次いで、この粉末状混合物を、二軸スクリュー押出機(スクリュー直径18mm)の中に、2.1kg/時の速度及び119℃の溶融温度で供給した。この押出物を、これらの表面上に相互にマッチングするキャビティを有する、2個の逆転ローラーを有するカレンダーに供給した。こうして、1120mgの錠剤を得た。
【0060】
イヌに於ける用量調節したAUCは、リトナビルについて10.88μg・h/mL/100mg及びロピナビルについて51.2μg・h/mL/100mgであった。この実施例は、HIVプロテアーゼ阻害薬の固溶体中に4から10のHLBを有する界面活性剤を含有させることによって、得られるバイオアベイラビリティが顕著に改良されることを示している。
【実施例3】
【0061】
実施例2を繰り返した。しかしながら、押出物を片に切断し、固化させた。押し出された片を、高衝撃万能ミルを使用して、約250μmの粒子サイズに粉砕した。粉砕した材料を、ビンブレンダー内で、ステアリルフマル酸ナトリウム(12.3重量部)及びコロイドシリカ(8.0重量部)と20分間ブレンドした。この粉末状ブレンドを、3個の杵を有するロータリー錠剤機(6500錠剤/時)で圧縮した。次いで、この錠剤を、コーティングパン内で、60℃の温度でフィルム皮膜用の水性分散液(オパドライ)をスプレーすることによって、フィルムコーティングした。
【0062】
イヌに於ける用量調節したAUCは、リトナビルについて14.24μg・h/mL/100mg及びロピナビルについて52.2μg・h/mL/100mgであった。
【実施例4】
【0063】
コポビドン(N−ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー60:40;841.3重量部)を、クレモホルRH40(ポリオキシエチレングリセロールオキシステアラート;36.2重量部)、スパン20(ソルビタンモノラウラート;60.2重量部)と、ジオスナ高剪断ミキサー内でブレンドした。得られた顆粒を、リトナビル(50重量部)、ロピナビル(200重量部)及びコロイドシリカ(12重量部)と混合した。次いで、この粉末状混合物を、二軸スクリュー押出機(スクリュー直径18mm)の中に、2.1kg/時の速度及び114℃の溶融温度で供給した。この押出物を、これらの表面上に相互にマッチングするキャビティを有する、2個の逆転ローラーを有するカレンダーに供給した。こうして、1120mgの錠剤を得た。
【0064】
イヌに於ける用量調節したAUCは、リトナビルについて10.96μg・h/mL/100mg及びロピナビルについて46.5μg・h/mL/100mgであった。この実施例は、4から10のHLBを有する界面活性剤と別の界面活性剤との組合せを、成功裡に使用できることを示している。
【実施例5】
【0065】
実施例4を繰り返した。しかしながら、押出物を片に切断し、固化させた。押し出された片を、高衝撃万能ミルを使用して、約250μmの粒子サイズに粉砕した。粉砕した材料を、ビンブレンダー内で、ステアリルフマル酸ナトリウム(13.9重量部)、コロイドシリカ(7.0重量部)、イソマルトDC100(159.4重量部)及びケイ酸カルシウム(7.0重量部)と20分間ブレンドした。このブレンドを、実施例1に記載したようにして、圧縮し、フィルムコーティングした。
【0066】
イヌに於ける用量調節したAUCは、リトナビルについて10.38μg・h/mL/100mg及びロピナビルについて42.7μg・h/mL/100mgであった。
【実施例6】
【0067】
コポビドン(N−ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー60:40;683.3重量部)を、スパン40(ソルビタンモノパルミタート;67.2重量部)と、ジオスナ高剪断ミキサー内でブレンドした。得られた顆粒を、ロピナビル(200重量部)及びコロイドシリカ(9.6重量部)と混合した。次いで、この粉末状混合物を、二軸スクリュー押出機(スクリュー直径18mm)の中に、2.1kg/時の速度及び119℃の溶融温度で供給した。この押出物を片に切断し、固化させた。押し出された片を、高衝撃万能ミルを使用して粉砕した。粉砕した材料を、ビンブレンダー内で、ステアリルフマル酸ナトリウム(7.9重量部)、コロイドシリカ(11.3重量部)、イソマルトDC100(129.1重量部)及びドデシル硫酸ナトリウム(15.6重量部)とブレンドした。このブレンドを、実施例1に記載したようにして、圧縮し、フィルムコーティングした。
【0068】
200mgのロピナビルに相当する錠剤を、50mgのリトナビルと一緒にイヌに共投与した。ロピナビルの用量調節したAUCは、38.8μg・h/mL/100mgであった。
【実施例7】
【0069】
コポビドン(N−ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー60:40;151.5重量部)を、クレモホルRH40(24重量部)及びPEG6000(12重量部)と、ジオスナ高剪断ミキサー内でブレンドした。得られた顆粒を、リトナビル(50重量部)及びコロイドシリカ(2.4重量部)と混合した。次いで、この粉末状混合物を、二軸スクリュー押出機の中に供給し、溶融押出した。この押出物を片に切断し、固化させた。押し出された片を、高衝撃万能ミルを使用して粉砕した。粉砕した材料を、ビンブレンダー内で、コロイドシリカ(1.4重量部)、イソマルトDC100(31.9重量部)及びケイ酸カルシウム(4.2重量部)とブレンドした。このブレンドを、実施例1に記載したようにして、圧縮し、フィルムコーティングした。
【0070】
イヌに於ける用量調節したAUCは、9.98μg・h/mL/100mgであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のHIVプロテアーゼ阻害薬並びに少なくとも1種の医薬的に許容される水溶性ポリマー及び少なくとも1種の医薬的に許容される界面活性剤の固体分散物を含み、前記医薬的に許容される水溶性ポリマーが、少なくとも約50℃のTgを有する固体薬物剤形。
【請求項2】
前記HIVプロテアーゼ阻害薬のガラス状溶液又は固溶体を含む、請求項1に記載の剤形。
【請求項3】
前記医薬的に許容される界面活性剤が、約4から約10のHLB値を有する、請求項1に記載の剤形。
【請求項4】
前記医薬的に許容される界面活性剤が、少なくとも1種の約4から約10のHLB値を有する医薬的に許容される界面活性剤と、少なくとも1種の別の医薬的に許容される界面活性剤との組合せである、請求項1に記載の剤形。
【請求項5】
前記医薬的に許容される界面活性剤がソルビタン脂肪酸エステルである、請求項1に記載の剤形。
【請求項6】
剤形の重量に対して、約5から約30重量%の前記HIVプロテアーゼ阻害薬、約50から約85重量%の前記水溶性ポリマー、約2から約20重量%の前記界面活性剤及び約0から約15重量%の添加物が含有されている、請求項1に記載の剤形。
【請求項7】
前記HIVプロテアーゼ阻害薬が、
(2S,3S,5S)−5−(N−(N−((N−メチル−N−((2−イソプロピル−4−チアゾリル)メチル)アミノ)カルボニル)−L−バリニル)アミノ−2−(N−((5−チアゾリル)メトキシカルボニル)−アミノ)−アミノ−1,6−ジフェニル−3−ヒドロキシヘキサン(リトナビル);
(2S,3S,5S)−2−(2,6−ジメチルフェノキシアセチル)アミノ−3−ヒドロキシ−5−[2S−(1−テトラヒドロ−ピリミド−2−オニル)−3−メチルブタノイル]アミノ−1,6−ジフェニルヘキサン(ロピナビル);
N−(2(R)−ヒドロキシ−1(S)−インダニル)−2(R)−フェニルメチル−4(S)−ヒドロキシ−5−(1−(4−(3−ピリジルメチル)−2(S)−N’−(t−ブチルカルボキサミド)−ピペラジニル))−ペンタンアミド(インジナビル);
N−tert−ブチル−デカヒドロ−2−[2(R)−ヒドロキシ−4−フェニル−3(S)−[[N−(2−キノリルカルボニル)−L−アスパラギニル]アミノ]ブチル]−(4aS,8aS)−イソキノリン−3(S)−カルボキサミド(サキナビル);
5(S)−Boc−アミノ−4(S)−ヒドロキシ−6−フェニル−2(R)−フェニルメチルヘキサノイル−(L)−Val−(L)−Phe−モルホリン−4−イルアミド;
1−ナフトキシアセチル−β−メチルチオ−Ala−(2S,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−ブタノイル−1,3−チアゾリジン−4−t−ブチルアミド;
5−イソキノリンオキシアセチル−β−メチルチオ−Ala−(2S,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−ブタノイル−1,3−チアゾリジン−4−t−ブチルアミド;
[1S−[1R−(R−),2S])−N’−[3−[[[(1,1−ジメチルエチル)アミノ]カルボニル](2−メチルプロピル)アミノ]−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)プロピル]−2−[(2−キノリニルカルボニル)アミノ]−ブタンジアミド;
アムプレナビル(VX−478);DMP−323;DMP−450;AG1343(ネルフィナビル);
アタザナビル(BMS232,632);
チプラナビル;
パリナビル;
TMC−114;
RO033−4649;
フォサムプレナビル(GW433908);
P−1946;
BMS186,318;SC−55389a;BILA1096BS及びU−140690又はこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の剤形。
【請求項8】
前記HIVプロテアーゼ阻害薬が、(2S,3S,5S)−5−(N−(N−((N−メチル−N−((2−イソプロピル−4−チアゾリル)メチル)アミノ)カルボニル)−L−バリニル)アミノ−2−(N−((5−チアゾリル)メトキシカルボニル)−アミノ)−アミノ−1,6−ジフェニル−3−ヒドロキシヘキサン(リトナビル)である、請求項1に記載の剤形。
【請求項9】
非絶食条件下のイヌに於いて、少なくとも約9μg・h/mL/100mgのリトナビル血漿濃度の用量調節したAUCを示す、請求項8に記載の剤形。
【請求項10】
前記HIVプロテアーゼ阻害薬が、(2S,3S,5S)−2−(2,6−ジメチルフェノキシアセチル)アミノ−3−ヒドロキシ−5−[2S−(1−テトラヒドロ−ピリミド−2−オニル)−3−メチルブタノイル]アミノ−1,6−ジフェニルヘキサン(ロピナビル)である、請求項1に記載の剤形。
【請求項11】
非絶食条件下のイヌに於いて、少なくとも約20μg・h/mL/100mgのロピナビル血漿濃度の用量調節したAUCを示す、請求項10に記載の剤形。
【請求項12】
前記HIVプロテアーゼ阻害薬が、(2S,3S,5S)−5−(N−(N−((N−メチル−N−((2−イソプロピル−4−チアゾリル)メチル)アミノ)カルボニル)−L−バリニル)アミノ−2−(N−((5−チアゾリル)メトキシカルボニル)−アミノ)−アミノ−1,6−ジフェニル−3−ヒドロキシヘキサン(リトナビル)及び(2S,3S,5S)−2−(2,6−ジメチルフェノキシアセチル)アミノ−3−ヒドロキシ−5−[2S−(1−テトラヒドロ−ピリミド−2−オニル)−3−メチルブタノイル]アミノ−1,6−ジフェニルヘキサン(ロピナビル)の組合せである、請求項1に記載の剤形。
【請求項13】
非絶食条件下のイヌに於いて、少なくとも約9μg・h/mL/100mgのリトナビル血漿濃度の用量調節したAUC及び少なくとも約20μg・h/mL/100mgのロピナビル血漿濃度の用量調節したAUCを示す、請求項12に記載の剤形。
【請求項14】
前記水溶性ポリマーが、約80から約180℃のTgを有する、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項15】
前記水溶性ポリマーが、N−ビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマーである、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項16】
前記水溶性ポリマーが、N−ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマーである、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項17】
少なくとも1種の、流動調節剤、崩壊剤、増量剤及び滑剤から選択された添加物を含有する、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項18】
少なくとも40℃及び約75%湿度で約6週間の貯蔵で、HIVプロテアーゼ阻害薬の初期含有量の少なくとも約98%を含有する、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項19】
i.前記HIVプロテアーゼ阻害薬(群)、前記水溶性ポリマー(群)及び前記界面活性剤(群)の均一溶融物を製造し、
ii.この溶融物を可溶化して、固体分散生成物を得る
ことを含む、請求項1に記載の固体剤形の製造方法。
【請求項20】
前記固体分散生成物を粉砕し、前記固体分散生成物を錠剤に圧縮することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1に記載の固体剤形を、HIV感染の治療が必要な哺乳動物に投与することを含む、HIV感染の治療方法。
【請求項22】
(2S,3S,5S)−5−(N−(N−((N−メチル−N−((2−イソプロピル−4−チアゾリル)メチル)アミノ)カルボニル)−L−バリニル)アミノ−2−(N−((5−チアゾリル)メトキシカルボニル)−アミノ)−アミノ−1,6−ジフェニル−3−ヒドロキシヘキサン(リトナビル);
N−ビニルピロリドンのホモポリマー及び
ソルビタン脂肪酸エステル
を含む、固体薬物剤形。
【請求項23】
少なくとも1種の、流動調節剤、崩壊剤、増量剤及び滑剤から選択された添加物を含有する、請求項22に記載の固体剤形。
【請求項24】
(2S,3S,5S)−2−(2,6−ジメチルフェノキシアセチル)アミノ−3−ヒドロキシ−5−[2S−(1−テトラヒドロ−ピリミド−2−オニル)−3−メチルブタノイル]アミノ−1,6−ジフェニルヘキサン(ロピナビル);
N−ビニルピロリドンのコポリマー及び
ソルビタン脂肪酸エステル
を含む、固体薬物剤形。
【請求項25】
少なくとも1種の、流動調節剤、崩壊剤、増量剤及び滑剤から選択された添加物を含有する、請求項24に記載の固体剤形。
【請求項26】
(2S,3S,5S)−5−(N−(N−((N−メチル−N−((2−イソプロピル−4−チアゾリル)メチル)アミノ)カルボニル)−L−バリニル)アミノ−2−(N−((5−チアゾリル)メトキシカルボニル)−アミノ)−アミノ−1,6−ジフェニル−3−ヒドロキシヘキサン(リトナビル)及び(2S,3S,5S)−2−(2,6−ジメチルフェノキシアセチル)アミノ−3−ヒドロキシ−5−[2S−(1−テトラヒドロ−ピリミド−2−オニル)−3−メチルブタノイル]アミノ−1,6−ジフェニルヘキサン(ロピナビル);
N−ビニルピロリドン及び酢酸ビニルのコポリマー並びに
ソルビタン脂肪酸エステル
を含む、固体薬物剤形。
【請求項27】
少なくとも1種の、流動調節剤、崩壊剤、増量剤及び滑剤から選択された添加物を含有する、請求項26に記載の固体剤形。
【請求項28】
剤形の約5重量%から約30重量%の(2S,3S,5S)−5−(N−(N−((N−メチル−N−((2−イソプロピル−4−チアゾリル)メチル)アミノ)カルボニル)−L−バリニル)アミノ−2−(N−((5−チアゾリル)メトキシカルボニル)−アミノ)−アミノ−1,6−ジフェニル−3−ヒドロキシヘキサン(リトナビル);
剤形の約50重量%から約85重量%のN−ビニルピロリドンのホモポリマー及び
剤形の約2重量%から約20重量%のソルビタン脂肪酸エステル
を含む、固体薬物剤形。
【請求項29】
少なくとも1種の、流動調節剤、崩壊剤、増量剤及び滑剤から選択された添加物を含有する、請求項28に記載の固体剤形。
【請求項30】
少なくとも1種の添加物が、約0重量%から約15重量%の量で存在する、請求項29に記載の剤形。
【請求項31】
剤形の約5重量%から約30重量%の(2S,3S,5S)−2−(2,6−ジメチルフェノキシアセチル)アミノ−3−ヒドロキシ−5−[2S−(1−テトラヒドロ−ピリミド−2−オニル)−3−メチルブタノイル]アミノ−1,6−ジフェニルヘキサン(ロピナビル);
剤形の約50重量%から約85重量%のN−ビニルピロリドンのコポリマー及び
剤形の約2重量%から約20重量%のソルビタン脂肪酸エステル
を含む、固体薬物剤形。
【請求項32】
少なくとも1種の、流動調節剤、崩壊剤、増量剤及び滑剤から選択された添加物を含有する、請求項31に記載の固体剤形。
【請求項33】
少なくとも1種の添加物が、約0重量%から約15重量%の量で存在する、請求項32に記載の剤形。
【請求項34】
剤形の約5重量%から約30重量%の量で存在する、(2S,3S,5S)−5−(N−(N−((N−メチル−N−((2−イソプロピル−4−チアゾリル)メチル)アミノ)カルボニル)−L−バリニル)アミノ−2−(N−((5−チアゾリル)メトキシカルボニル)−アミノ)−アミノ−1,6−ジフェニル−3−ヒドロキシヘキサン(リトナビル)及び(2S,3S,5S)−2−(2,6−ジメチルフェノキシアセチル)アミノ−3−ヒドロキシ−5−[2S−(1−テトラヒドロ−ピリミド−2−オニル)−3−メチルブタノイル]アミノ−1,6−ジフェニルヘキサン(ロピナビル);
剤形の約50重量%から約85重量%のN−ビニルピロリドン及び酢酸ビニルのコポリマー並びに
剤形の約2重量%から約20重量%のソルビタン脂肪酸エステル
を含む、固体薬物剤形。
【請求項35】
少なくとも1種の、流動調節剤、崩壊剤、増量剤及び滑剤から選択された添加物を含有する、請求項34に記載の固体剤形。
【請求項36】
少なくとも1種の添加物が、約0重量%から約15重量%の量で存在する、請求項35に記載の剤形。
【請求項37】
請求項22から36の何れか1項に記載の固体剤形を、HIV感染の治療が必要な哺乳動物に投与することを含む、HIV感染の治療方法。

【公開番号】特開2011−236232(P2011−236232A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−149721(P2011−149721)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【分割の表示】特願2006−524782(P2006−524782)の分割
【原出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】