説明

固体酸化物形燃料電池

【課題】起動時間の短縮を図り、改質触媒の劣化を抑制する固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料ガス供給手段と、水供給手段と、該水供給手段より供給される水を気化するための気化器14と、燃料供給手段より供給される燃料ガスと気化器より供給される水蒸気とを用いて水蒸気改質するための改質器4と、改質燃料ガス及び酸化材の酸化及び還元によって発電を行う燃料電池セルを複数個備えてなる燃料電池セルスタック6と、燃料電池セルスタック6の燃料ガス排出側に配設された燃焼室44と、酸化剤を燃料電池セルスタック6に送給するための送風手段8と、燃料ガス供給手段と水供給手段の動作を制御する制御装置56とを備え、制御装置56は、改質器4の温度が第1所定温度に到達すると、改質器4に供給される燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が1.0以下となるように燃料ガス供給手段及び水供給手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素系の燃料ガスを燃料として発電を行う燃料電池セルスタックを備えた固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、酸化物イオンを伝導する膜として固体電解質を用いた燃料電池セルスタックを備えた固体酸化物形燃料電池が知られている。この固体酸化物形燃料電池では、一般的に、固体電解質としてイットリアをドープしたジルコニアが用いられており、この固体電解質の一方側には燃料ガス(例えば、天然ガス)を酸化するための燃料極が設けられ、その他方側には酸化材(例えば、空気中の酸素)を還元するための酸素極が設けられている。固体酸化物形燃料電池、即ち燃料電池セルスタックの作動温度は約700〜1000℃と高く、このような高温下において、改質された燃料ガス中の水素、一酸化炭素、炭化水素等と酸化材としての空気中の酸素とが電気化学反応を起こすことによって発電が行われる。このような固体酸化物形燃料電池は、他の燃料電池やガスエンジンなどに比べて、高発電効率での発電が可能なことから、有望な発電技術として開発が行われている。特に1kW以下の低発電出力域でも高い発電効率が得られるため、家庭用コージェネレーションシステムとしての実用化を目指して開発が進められている。
【0003】
この固体酸化物形燃料電池における燃料電池セルスタックは、その作動温度が約700〜1000℃程度の高い温度で作動されるために、断熱材で囲まれて電池収容ハウジングに収容されて設置される。このような高温環境状態の設置状態では、燃料電池セルスタックなどに接続される配管部材、各種部材を取り付けるためのボルト類などが焼く付くおそれがある。また、固体酸化物形燃料電池の設置先(例えば、一戸建て住宅など)において、燃料電池セルスタック、改質器、気化器などを交換することは技術面、コスト面において困難な場合がある。このようなことから、高温環境状態に設置される部材(例えば、燃料電池セルスタック、改質器、気化器など)を耐用年数(例えば、10年間)にわたって交換しなくてよい固体酸化物形燃料電池を開発することが望まれている。
【0004】
一方、このような固体酸化物形燃料電池では、起動時に常温から作動温度付近まで上昇させ、この上昇後は燃料電池セルスタックでの燃料電池反応の発熱及び燃焼室での余剰の燃料ガスの燃焼によって作動温度に維持される。この燃料電池セルスタックにおいては、温度が上昇した状態(常温から温度が上昇した雰囲気)では燃料極側を還元ガス雰囲気に、また酸素極側を酸素雰囲気に保持する必要があり、仮に燃料極側が還元ガス雰囲気に保たれないと、燃料極側の材料(例えば、燃料極に用いられるニッケル)が酸化し劣化する。
【0005】
このようなことから、固体酸化物形燃料電池の起動方法として、部分酸化改質方法、オートサーマル改質方法及び水蒸気改質方法を組み合わせた起動方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この従来の起動方法では、起動時の温度が室温に近い温度状態のときには、燃料ガスと空気とを改質器及び燃料電池セルスタックに送給して、燃料電池セルスタックの燃料ガス排出側の燃焼室にて燃料ガスを燃焼し、この燃焼熱でもって改質器及び燃料電池セルスタックを加熱する。
【0006】
改質器の温度が100℃以上になると、燃料ガスと空気とが反応する部分酸化改質が行なわれ、その反応熱で改質器内部の温度が上昇し、改質された燃料ガスが燃料電池セルスタックを通して燃焼室で燃焼する。ここで、燃料電池セルスタックを構成する燃料電池セルを、その一端より燃料ガスを排出して燃焼させる構成とすることで、固体酸化物形燃料電池の部品構成を簡易なものとすることができるが、起動時の燃料ガスの燃焼により燃料電池セルの一端部側の温度が点火後迅速に上昇することになる。燃料ガスと空気とを改質器及び燃料電池セルスタックに送給するこの方法では、燃料ガスが起動後迅速に改質されるので、燃料電池セルの一端部側の温度が上昇しても、炭素析出するリスクが回避されている。この温度状態から更に温度が上昇して、水を水蒸気にすることが可能になると、改質器に燃料ガス、空気及び水蒸気を供給して燃料ガスを部分酸化改質及び水蒸気改質し、改質された燃料ガスを燃料電池セルスタックを通して燃焼室で燃焼することで、部分酸化反応による反応熱と改質燃料ガスの燃焼による燃焼熱と水蒸気改質反応による吸熱との制御でもって燃料電池セルスタック及び改質器の加熱とともに、燃焼ガスの部分酸化改質及び水蒸気改質を行う。そして、定常温度の温度状態まで上昇すると、改質器への酸化材(例えば、空気)の供給を停止し、改質器に燃料ガス及び水蒸気を供給して燃料ガスを水蒸気改質し、改質された燃料ガスを燃料電池セルスタックを通して燃焼室で燃焼させることで、改質燃料ガスの燃焼による燃焼熱でもって燃料電池セルスタック及び改質器の加熱を行う。この運転状態においては、燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(水蒸気/炭素)が1.5〜3.5となるように水蒸気が供給されて燃料ガスの水蒸気改質が行われる。このようにして固体酸化物形燃料電池の起動を行うと、燃料電池セルスタック及び改質器の温度を短時間で常温から作動温度まで上昇させることができ、固体酸化物形燃料電池の起動時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−319420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この固体酸化物形燃料電池の起動方法では、改質器の改質触媒として例えばアルミナにルテニウムを担持させたものを用いた場合に、改質触媒の劣化が速く、システムの耐用年数である10年間にわたってこの改質触媒を交換することなく使用することが難しいという問題がある。即ち、この起動方法における起動の前段階においては、改質器に燃料ガス及び酸化材としての空気を供給して部分酸化改質を行っているが、この部分酸化改質反応は発熱反応であり、また改質触媒に用いるルテニウムは高温酸素雰囲気にて酸化劣化し易く、それゆえ改質触媒の劣化(即ち、酸素の存在と高温環境によるシンタリング(表面積の減少現象))が発生していた。また、この起動方法では、起動の前段階において部分酸化改質を行うために、改質器に空気を供給するための起動用空気ポンプ並びにこの空気ポンプに関連する供給制御弁及び流量計などを必要とし、固体酸化物形燃料電池の構造が複雑になるとともに、製作コストが高くなるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、起動時間の短縮を図りながら改質触媒の劣化を抑制することができる固体酸化物形燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池は、炭化水素系の燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段と、燃料ガスの改質に用いる水を供給するための水供給手段と、該水供給手段より供給される水を水蒸気に気化するための気化器と、前記燃料ガス供給手段より供給される燃料ガスを前記気化器より供給される水蒸気を用いて水蒸気改質するための改質器と、前記改質器にて水蒸気改質された改質燃料ガス及び酸化材の酸化及び還元によって発電を行う燃料電池セルを複数個備えてなる燃料電池セルスタックと、該燃料電池セルスタックにおける前記燃料ガス排出側に配設された燃焼室と、前記気化器、前記改質器、前記燃料電池セルスタック及び前記燃焼室を収容するための電池収容ハウジングと、酸化材を前記燃料電池セルスタックに送給するための送風手段と、前記燃料ガス供給手段、前記水供給手段及び前記送風手段の動作を制御する制御装置とを備え、前記燃料電池セルスタックより排出される燃料ガスを前記燃焼室で燃焼させ、この燃焼熱により前記気化器及び前記改質器を加熱する固体酸化物形燃料電池であって、
前記気化器、前記改質器及び前記燃料電池セルスタックのうち少なくとも1つに温度センサを備えるとともに、前記制御装置は、前記固体酸化物形燃料電池の起動時において、少なくとも1つの前記温度センサにより検知される温度が第1所定温度に到達する、又は前記燃焼室における燃料ガスの燃焼開始から第1所定時間が経過すると、前記燃料ガス供給手段及び前記水供給手段を、前記改質器に供給される燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が1.0以下となるように制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池では、前記制御装置は、少なくとも1つの温度センサにより検知される温度が前記第1所定温度に到達する、又は前記燃焼室における燃料ガスの燃焼開始から前記第1所定時間が経過すると、前記燃料ガス供給手段及び前記水供給手段を、前記改質器に供給される燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が0.1〜0.8となるように制御することを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池では、前記制御装置は、前記燃焼室における燃料ガスの燃焼開始から第2所定時間が経過した時点において、少なくとも1つの前記温度センサにより検知される温度が最低温度に到達していない場合に、前記燃料ガス供給手段を停止するように制御することを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池では、前記炭化水素系の燃料ガスがメタンを50%以上含むことを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池では、前記制御装置は、前記燃料ガス供給手段及び前記水供給手段を、前記改質器に供給される燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が1.0以下となるように継続して1分以上供給するように制御することを特徴とする。
【0015】
更に、本発明の請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池では、前記制御装置は、前記燃料ガス供給手段より前記気化器に供給される前記炭化水素系の燃料ガスが平均炭素数が2.0以上の炭化水素系の燃料ガスの場合に、前記送風手段を継続して作動させるとともに、前記燃焼室における燃料ガスの燃焼開始と停止とを1回又は複数回行った後、請求項1〜3及び5のいずれかに記載の制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池によれば、固体酸化物形燃料電池の起動時において、燃料供給手段から供給され燃料電池セルスタックより排出される燃料ガスを、送風手段より供給される酸化材とで燃焼させ、この燃焼熱を利用して気化器及び改質器を加熱することから、部品構成が簡易でありながら、気化器及び改質器を迅速に加熱して起動時間の短縮を図ることができる。
【0017】
さらに、制御装置は、気化器、改質器及び燃料電池セルスタックに備えられた温度センサのうち少なくとも1つの温度センサにより検知される温度が第1所定温度に到達する(又は燃焼室における燃料ガスの燃焼開始から第1所定時間経過する)と、燃料ガス供給手段及び水供給手段を、改質器に供給される燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が1.0以下となるように制御する。
【0018】
ここで、燃料ガスの燃焼により気化器及び改質器を加熱する場合において、燃料電池セルの燃料ガス排出側である一端部側の温度が点火後迅速に上昇することになる。そのために、燃焼室に近い燃料電池セルの一端部側において燃料ガスが迅速に高温になることで燃料電池セルの内部で炭素析出し、炭素析出による応力により燃料電池セルが破損するリスクが生じるが、制御装置が、改質器に供給される燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が1.0以下となるように、燃料ガス供給手段及び水供給手段を制御することにより、燃料電池セルスタックでの炭素の析出を抑制することができる。
【0019】
メタン、エタンなどの燃料ガスを水蒸気改質する場合において、定常運転時においては燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比を2.0以上にするように制御する必要があるが、起動開始初期においては気化器、改質器、燃料電池セルスタックとも温度が低いため、燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が2.0程度となるように水を供給することは困難である。従来は改質器に酸化材ガスである空気を加えることで、改質器内で燃料ガスと酸化材ガスの反応(部分酸化反応)が迅速に進行し、改質された燃料ガス(改質燃料ガス)が燃料電池セルに供給されることで、高温になる燃料電池セルの一端部側で炭素が析出するリスクを回避していた。
【0020】
ここで、本発明では、起動後、迅速に昇温する燃料電池セルの燃料ガス排出側である一端部側を保護するにあたり、少量の水蒸気を供給することで達成されうることを見出した。すなわち、改質器に供給される燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が1.0以下となるように、少量の水蒸気を供給するように制御することで、気化器・改質器の温度が十分に上がっていなくても水を蒸発させることが可能となる。
【0021】
気化器・改質器は燃料ガスの燃焼によって直接加熱されるが、それに比べ燃料電池セルスタックは燃焼室に近い燃料電池セルの一端部側を除けば温度上昇が遅い。そのため、気化器で蒸発させた水蒸気が燃料電池セルスタックの温度が低い部分において結露し、燃焼室に近い燃料電池セルの一端部側には水蒸気の一部しか供給されず、燃焼室に近い燃料電池セルの一端部側は燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が低くならざるをえない。それゆえ、本発明の適用に当たっては結露を考慮した燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比によって高温になる燃焼室に近い燃料電池セルの一端部側で炭素析出が生じるか否かを調べて適用する必要がある。
【0022】
また、固体酸化物形燃料電池の起動時において、改質器に酸化材を供給する必要がないため、改質器の改質触媒(例えば、ルテニウム)の劣化を抑制することができる。更にまた、固体酸化物形燃料電池の起動時において、改質器に酸化材を供給する必要がないため、酸化剤を供給するための専用の供給ポンプなどを必要とせず、固体酸化物形燃料電池の構成を簡単にすることができる。
【0023】
また、本発明の請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池によれば、制御装置は、少なくとも1つの温度センサにより検知される温度が第1所定温度に到達する(又は燃焼室における燃料ガスの燃焼開始から第1所定時間経過する)と、改質器に供給される燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が0.1〜0.8となるように燃料ガス供給手段及び水供給手段を制御する。
【0024】
燃料電池セルスタックを構成する燃料電池セルを、その一端より燃料ガスを排出する構成とすることにより部品構成を簡易にすることが達成されているが、起動時の燃料ガスの燃焼により燃料電池セルの一端部側の温度が点火後迅速に上昇することになる。そのために、燃焼室に近い燃料電池セルの一端部側において燃料ガスが迅速に高温になることで燃料電池セルの内部で炭素析出し、炭素析出による応力により燃料電池セルが破損するリスクが生じるが、改質器に供給される燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が0.1〜0.8となるように燃料ガス供給手段及び水供給手段を制御することで、このリスクを回避することができる。燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が0.1より少ないと燃焼室に近い燃料電池セルの一端部側での炭素析出を抑制する効果が不足するリスクが生じ、0.8より大きいと十分に温度が上がっていない気化器内に蒸発しない水がたまりやすくなる。水がたまると気化器からの所定の水蒸気が発生することが遅れるため、改質器や燃料電池セルスタックで炭素析出する可能性が生じる。
【0025】
更に、本発明の請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池によれば、燃焼室における燃料ガスの燃焼開始から第2所定時間が経過した時点における、少なくとも1つの温度センサにより検知される温度が最低温度に到達していないときには、制御装置は、燃料ガス供給手段を停止するように制御するので、この時点で燃焼室での燃料ガスの燃焼が停止し、これによって、燃料電池セルスタックの一部(燃焼室に近い燃料電池セルの一端部側)が高温になりながら、全く水が供給されない条件になることを抑制することができ、これによって、燃料電池セルスタックでの炭素析出を抑制することができる。尚、燃料ガス供給手段の停止後は、固体酸化物形燃料電池を再起動することとなる。このとき、燃料ガス供給手段の停止から固体酸化物形燃料電池の再起動の間にわたって、燃料電池セルスタックに酸化材を送給するための送風手段を作動し続けるのが望ましく、このように送風手段を作動させることによって、温められた酸化材によって燃料電池セルスタックが温められ、固体酸化物形燃料電池の再起動が容易となる。
【0026】
更に、本発明の請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池によれば、前記炭化水素系の燃料ガスがメタンを50%以上含む燃料ガス、例えば天然ガスを用いることが最も適している。
【0027】
更に、本発明の請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池によれば、制御装置は、燃料ガス供給手段及び水供給手段を、改質器に供給される燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が1.0以下となるように継続して1分以上(例えば4分程度)供給するように制御する。なお、気化器や燃料電池セルスタックの温度が上がると、順次水蒸気の添加量を増やして燃料ガスを水蒸気改質するのに適した燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比2.0以上に増加させるように制御することが好ましい。
【0028】
本発明の請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池によれば、炭化水素系の燃料ガスとして平均炭素数が2.0以上である炭化水素系の燃料ガスを用いる場合に、制御装置は、送風手段を継続して作動させながら、前記燃焼室における燃料ガスの燃焼開始と停止を1回又は複数回行った後、上記に記載の制御を行なうことが好ましく、さらには燃焼開始と停止における燃焼継続時間は1回に2分程度であることが望ましい。ここで、平均炭素数とはメタンが1、エタンが2、プロパンが3で表される1分子のあたりの炭素数を組成により平均した数値である。このような固体酸化物形燃料電池は、メタンを主成分とする天然ガスより平均炭素数が大きいガス、例えばプロパンガスを燃料ガスとして用いる際に有効となる。プロパンガスを、メタンを主成分とするガスの場合と比べると、燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が同じであっても、その混合ガスの露点は高くなる。したがって、最低温度部位における結露により、燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が低くなりすぎる傾向が生じる。そこで、固体酸化物形燃料電池の起動時において予熱操作を積極的に導入することで、炭素析出の少ない起動が容易になる。ここで、燃焼室における燃料ガスの燃焼開始と停止を行うのは、燃料ガスの燃焼により燃焼室に近い燃料電池セルの一端部側が迅速に高温となるため、この部位の温度が高くなりすぎるのを避けながら、燃料電池セルスタックなどを予熱するためである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の起動方法が適用された固体酸化物形燃料電池システムの一実施形態を示す簡略図。
【図2】図1の固体酸化物形燃料電池システムの起動時の制御を示すフローチャート。
【図3】実施例における起動後の温度の変化状態を示す図。
【図4】比較例1における起動後の温度の変化状態を示す図。
【図5】比較例2における固体酸化物形燃料電池システムを示す概略図。
【図6】比較例2における起動後の温度の変化状態を示す図。
【図7】燃料電池セルスタックの上端部における温度変化を示す図。
【図8】炭素析出の基礎実験の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池の一実施例について説明する。図1は、本発明の固体酸化物形燃料電池の一実施形態を示す簡略図であり、図2は、図1の固体酸化物形燃料電池における制御装置による起動時の制御を示すフローチャートである。
【0031】
図1において、図示の固体酸化物形燃料電池2は、燃料ガスとしてメタンを主成分とする炭化水素系の燃料ガス、例えば天然ガス(都市ガス)を消費して発電を行うものであり、燃料ガスを改質するための改質器4と、改質器4にて改質された燃料ガス及び酸化材としての空気の酸化及び還元によって発電を行う固体酸化物形の燃料電池セルスタック6と、空気を燃料電池セルスタック6に送給するための送風手段8と、を備えている。
【0032】
燃料電池セルスタック6は、燃料電池反応によって発電を行うための複数の固体酸化物形燃料電池セルを集電部材を介して積層して構成されており、図示していないが、酸素イオンを伝導する固体電解質と、この固体電解質の一方側に設けられた燃料極と、固体電解質の他方側に設けられた酸素極とを備え、固体電解質として例えばイットリアをドープしたジルコニアが用いられる。
【0033】
燃料電池セルスタック6の燃料極の導入側は、改質燃料ガス送給ライン10を介して改質器4に接続され、この改質器4は、ガス・水蒸気送給ライン12を介して気化器14に接続され、この気化器14は、燃料ガス供給ライン16を介して燃料ガスを供給するための燃料ガス供給源18(例えば、埋設管や貯蔵タンクなど)に接続されているとともに、水供給ライン20を介して改質用水供給源22(例えば、水道管、水タンクなど)に接続されている。改質器4は、改質触媒として例えばアルミナにルテニウムを担持させたものを備え、この改質触媒によって燃料ガスを後述するように水蒸気改質を行う。また、気化器14は、水供給ライン20を通して送給される水を気化させて水蒸気を発生する。なお、改質器4と気化器14とを一体的に形成することもできる。
【0034】
燃料ガス供給ライン16には、脱硫器24、燃料ガス供給用ポンプ26及び流量センサ28が配設されている。脱硫器24は燃料ガスに含まれる硫黄成分を除去し、燃料ガス供給用ポンプ26は燃料ガス供給源18からの燃料ガスを燃料ガス供給ライン16を通して気化器14に送給し、流量センサ28は燃料ガス供給ライン16を通して送給される燃料ガスの流量を計測する。この燃料ガス供給ライン16には、更に、開閉弁30及び流量制御弁32が配設されている。開閉弁30は燃料ガス供給ライン16を開閉して燃料ガスの供給、供給停止を行い、流量制御弁32は燃料ガス供給ライン16を流れる燃料ガスの流量を制御する。本発明において燃料ガス供給手段とはこれらの各装置を意味する。また、水供給ライン20には水供給用ポンプ34が配設されており、この水供給用ポンプ34は、水供給源22からの水を気化器14に供給する。本発明において水供給手段とはこれらの各装置を意味する。
【0035】
この燃料電池セルスタック6の酸素極の導入側は、空気送給ライン36を介して空気(酸化材)を予熱するための空気予熱器38に接続され、この空気予熱器38は、空気供給ライン40を介して送風手段8に接続されている。送風手段8は、例えば送風ブロアから構成され、この送風ブロアの回転数を制御することによって、空気供給ライン40を通して供給される空気の送給量が制御される。空気供給ライン40には流量センサ42が配設され、この流量センサ42は空気供給ライン40を流れる空気の流量を計測する。
【0036】
燃料電池セルスタック6の燃料極及び酸素極の各排出側には燃焼室44が設けられ、燃料電池セルの一端から排出された反応燃料ガス(余剰の燃料ガスを含んでいる)と酸素極側から排出された空気(酸素を含んでいる)とがこの燃焼室44に送給されて燃焼される。この燃焼室44は排気ガス送給ライン46を介して空気予熱器38に接続され、空気予熱器38を流れる排ガスは排気ガス排出ライン48を介して大気に排出されている。空気余熱器38においては、空気供給ライン40を通して供給される空気と排気ガス送給ライン46を通して送給される排気ガスとの間で熱交換が行われ、この熱交換によって加温された空気が空気送給ライン36を通して燃料電池セルスタック6に送給される。
【0037】
この実施形態では、改質器4に関連して温度センサ50が配設され、燃料電池セルスタック6に関連して温度センサ51が配設されている。温度センサ50は改質器4内に配設され、改質器4内の温度を検知し、温度センサ51は燃料電池セルスタック6の近傍に配設され、この燃料電池セルスタック6の温度を検知し、この温度センサ50と温度センサ51の検知温度に基づいて固体酸化物形燃料電池2が後述するように制御される。なお、燃料電池セルスタック6に関連して温度センサ51が配設されているとは、燃料電池セルスタック6の近傍に温度センサが配置され、それにより燃料電池セルスタック6の温度を検知することを意味し、特には、燃料電池セルスタック6の一端部(燃焼室44側)の近傍に温度センサを配置することが好ましい。
【0038】
この実施形態では、また、改質器4、燃料電池セルスタック6、気化器14及び空気予熱器38が電池収容ハウジング52に収容され、電池収容ハウジング52の内壁面が断熱材で覆われて高温室54を規定し、改質器4、燃料電池セルスタック6、気化器14及び空気予熱器38が高温室54内で高温状態に保たれる。尚、固体酸化物形燃料電池2を効率よく運転するためには、少なくとも改質器4、燃料電池スタック6及び気化器14を電池収容ハウジング52の高温室54内に収容するのが望ましい。
【0039】
この実施形態では、これらの各装置の動作を制御する制御装置56が配置されており、制御装置56は、燃料ガス供給手段、水供給手段、送風手段8等の各装置の動作を制御する。なお図1に示した制御装置56においては、燃料ガス供給手段のうちの燃料ガス供給用ポンプ26、水供給用ポンプ34、送風手段8を制御する例を示しているが(図中において鎖線にて示す)、それ以外にも開閉弁30や流量制御弁32等の動作を適宜制御することができる。
【0040】
この固体酸化物形燃料電池2の定常運転(発電)は、次のようにして行われる。燃料ガス供給源18からの燃料ガス(炭化水素系の燃料ガスであって、例えば都市ガス)が、燃料ガス供給ライン16を通して気化器14に供給され、また水供給源22からの水が、水供給ライン20を通して気化器14に供給される。気化器14においては、水が加熱されて水蒸気となり、加熱された燃料ガスと発生した水蒸気がガス・水蒸気送給ライン12を介して改質器4に送給される。
【0041】
改質器4においては、燃料ガスと水蒸気とで水蒸気改質反応が行なわれ、改質された燃料ガス(改質燃料ガス)が改質燃料ガス送給ライン10を通して燃料電池セルスタック6の燃料極側に送給される。また、送風手段8からの空気は、空気供給ライン40を通して空気予熱器38に供給され、この空気予熱器38において燃焼室44より排出されて排気ガス送給ライン46を介して供給される排気ガスとの間で熱交換されて加温された後に、空気送給ライン36を通して燃料電池セルスタック6の酸素極側に送給される。
【0042】
燃料電池セルスタック6の燃料極側は改質された燃料ガスを酸化し、また酸素極側は空気中の酸素を還元し、燃料極側の酸化及び酸素極側の還元による電気化学反応により発電が行われる。燃料電池セルの一端より排出される燃料ガス及び酸素極側に送給された空気の一部は燃焼室44に送給され、空気中の酸素を利用して燃料電池セルの一端より排出された燃料ガス(余剰の燃料ガス)が燃焼され、この燃料ガスの燃焼熱を利用して改質器4及び気化器14が加熱される。燃焼室44での燃焼反応に伴って生じる排気ガスは排気ガス送給ライン46を通して空気予熱器38に送給され、この空気予熱器38において送風手段8から供給される空気との熱交換に利用された後に、排気ガス排出ライン48を通して大気に排出される。
【0043】
この固体酸化物形燃料電池2の起動は、例えば次の通りにして行われる。図1とともに図2を参照して、固体酸化物形燃料電池2を起動するには、操作装置(図示せず)を起動操作すればよく、起動操作する(ステップS1)と、燃料電池セルスタック6の酸素極側への空気の供給が行われ(ステップS2)、また燃料電池スタック6の燃料極側への燃料ガスの供給が行われ(ステップS3)、更に燃焼室44に配設された点火装置(図示せず)が点火作動し(ステップS4)、このようにして燃焼室44にて燃料ガスの燃焼が行われる(ステップS5)。
【0044】
即ち、起動操作すると、制御装置56は送風手段8を作動させ、空気供給ライン40及び空気送給ライン36を通して燃料電池セルスタック6の酸素極側に空気を供給し、その供給された空気が燃焼室44に流れる。続いて制御装置56は、開閉弁30を開状態とする制御を行ない、あわせて燃料ガス供給用ポンプ26を作動させて燃料ガス供給源18からの燃料ガスを燃料ガス供給ライン16を通して気化器14に送給する。気化器14に供給された燃料ガスは更にガス・水蒸気送給ライン12、改質器4及び改質燃料ガス送給ライン10を通して燃料電池セルスタック6の燃料極側に供給された後燃焼室44に流れる。そして、このような供給状態において制御装置56は点火装置(図示せず)を点火作動させ、これによって、送風手段8からの空気を燃焼用空気として利用して燃料ガス供給源18から供給された燃料ガスが燃焼され、この燃焼熱を利用して燃料電池セルスタック6、改質器4及び気化器14が加熱される。
【0045】
燃焼室44での燃料ガスの燃焼が行われて温度センサ50の検知温度(即ち、改質器4内部の温度)が第1所定温度(80〜120℃程度の温度、例えば90℃に設定される)に達すると、ステップS6からステップS7に進む。また、温度センサ50の検知温度が第1所定温度に達することなく燃焼室44での燃焼の開始(換言すると、点火装置の点火作動)から第1所定時間(2〜5分、例えば3分に設定される)経過すると、ステップS6からS8を経てステップS7に移る。なお、ステップS6とステップS8とを逆とすることも可能であるが、改質器4(気化器14)での気化を行うにあたり、ステップS6とステップS8とはこの順とすることが好ましい。
【0046】
このようにしてステップS7に進むと、制御装置56は水供給源22から水を供給するように水供給手段の作動を制御する。即ち、制御装置56は、水供給用ポンプ34を作動させ水供給源22からの水を水供給ライン20を通して気化器14に供給する。この気化器14に供給された水は、気化されて水蒸気になった後に、燃料ガス供給源18から供給される燃料ガスとともに、改質器4、改質燃料ガス送給ライン10及び燃料電池セルスタック6の燃料極側を通して燃焼室44に供給される。
【0047】
燃料電池セルスタック6を構成する燃料電池セルの一端には燃料ガスを排出するための噴出し口があり、この噴き出し口は燃焼室44と接しているので、燃料電池セルの一端部側が迅速に温度上昇する。それに伴い、燃焼室44に近い燃料電池セルの一端部側において燃料電池セルに供給される燃料ガスが迅速に高温になることで燃料電池セルの内部で炭素析出し、炭素析出による応力により燃料電池セルが破損するリスクが生じるが、本発明においては、改質器4に供給される燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が1.0以下となるように制御して、改質器4で改質された水蒸気を含む改質燃料ガスを燃料電池セルスタック6に供給することにより、燃料電池セルスタック6での炭素の析出を抑制することができる。
【0048】
水の供給、即ち改質器4に供給される燃料ガス及び水蒸気は、燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(以下、水蒸気/炭素=S/Cと表す場合がある)が1.0以下となるように制御することが重要であり、このモル比(S/C)が1.0を超えると、水蒸気の供給量が多くなり、気化器14において供給した水が水蒸気となることなく気化器14内に溜まり気化器14の温度上昇がさまたげられるので、気化器14における所定量の水蒸気発生が遅れ、その結果、炭素析出を招く可能性がある。また、それを回避するために、気化器14でモル比(S/C)が1.0を超える水を蒸発できるまで水の導入を待つと、燃焼室44と接している燃料電池セルの一端の温度が高くなり、燃料ガスが分解して炭素析出する可能性が高くなる。
【0049】
このようにして温度が上昇して、温度センサ50の検知温度が次の温度、例えば250℃に達すると、制御装置56は、水の供給を、燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)が2.5になるように燃料ガス供給手段及び水供給手段を制御する。さらに温度センサ50の検知温度が700℃に達すると、ステップS11からステップS12に進み、制御装置56は、水の供給を燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)が3.5になるように燃料ガス供給手段及び水供給手段を制御する。
【0050】
なお、燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)は、本発明の固体酸化物形燃料電池を設置する場所(例えば、一戸建て住宅など)に供給される燃料ガスの組成に基づき、その燃料ガスの組成と燃料ガスの供給量との関係を予め調査しておき、その結果に基づいて燃料ガス供給手段より供給される燃料ガス中の炭素のモル比を算出するとともに、気化器14に供給する水の量に基づく水蒸気のモル比を算出して規定することができ、これらの情報を予め記憶させており、各流量センサにより測定される燃料ガスの量と水の量とから、予め記憶させた情報に基づいて、燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)を求める。
【0051】
さらに、燃料電池セルスタック6近傍の温度センサ51の検知温度が650℃に到達すると、ステップS13からステップS14に進み、上述した定常運転(発電)が行われる。この定常運転(発電)は、上述したように水供給源22から供給される水が気化器14において水蒸気になり、改質器4において燃料ガスと水蒸気とで水蒸気改質が行われ、この定常状態においては、制御装置56は、改質器4に供給される燃料ガス及び水蒸気を、燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)が2.0〜2.5となるように燃料ガス供給手段及び水供給手段の動作を制御する。
【0052】
なお、上述の実施形態において、燃焼室44における燃料ガスの燃焼開始から第2所定時間経過した時点における温度センサ50、温度センサ51の少なくとも一方の温度が最低温度(例えば60℃)に到達していないときには、制御装置56は燃料ガス供給源18からの燃料ガスの供給を停止するように燃料ガス供給手段を制御することが望ましい。このように燃料ガスの供給を停止させることにより、この時点で燃焼室44での燃料ガスの燃焼が停止し、これによって、燃料電池セルスタック6の一部(燃焼室44に近い燃料電池セルの一端部側)が高温になりながら、全く水が供給されない条件になることを抑制することができるので、燃料電池セルスタック6での炭素析出を抑制することができる。なお、第2所定時間は第1所定時間と同じであってもよい。なお、最低温度は、第2所定時間の設定に合わせて適宜設定すればよい。
【0053】
燃料ガスの供給を停止させた後は、固体酸化物形燃料電池2の再起動を行ない、上述した起動動作を再度遂行する。尚、燃料ガスの供給停止後再起動が行われる間は、送風手段8を作動状態に保つのが望ましく、このように継続して作動させることによって、燃料電池セルスタック6の酸素極側を流れる空気によって改質器4及び気化器14を温めることができ、これによって、再起動させる際の起動が容易となる。
【0054】
また、この実施形態では、燃料ガス供給源18からの燃料ガス及び水供給源22からの水を気化器14に送給する構成であるが、このような構成に限定されず、水供給源22からの水を気化器14に供給するとともに、燃料ガス供給源18からの燃料ガスを直接的に改質器4に供給するようにしてもよい。
【0055】
また、上述した実施形態では、改質器4の温度を温度センサ50で検知し、この検知温度を利用して固体酸化物形燃料電池2を構成する各装置の動作を制御しているが、このような構成に限定されず、気化器14に温度センサを備え、この温度センサの検知温度を利用して固体酸化物形燃料電池2を構成する各装置の動作を制御するようにしてもよい。更には、改質器4の温度センサ50、気化器14の温度センサ及び燃料電池セルスタック6の温度センサ51の任意に二つ又はこれら三つの温度センサによる検知温度を利用して固体酸化物形燃料電池2を構成する各装置の動作を制御するようにしてもよく、複数の温度センサを用いることによってより細かい制御を行なうことが可能となる。なお、2つ又は3つの温度センサを用いる場合においては、制御装置56は、少なくとも1つの温度センサにより測定される温度が、温度センサごとに設定される第1所定温度を超えた場合に、上述のような制御を行なうことができるが、より細かい制御を行なうにあたって、いずれか2つまたは3つの温度センサにより測定される温度が、温度センサごとに設定される第1所定温度を超えた場合に、上述のような制御を行なうようにすることもできる。
【0056】
なお、上述した固体酸化物形燃料電池2においては、起動時において、改質器4に酸化材を供給する必要がないため、改質器4に酸化材を供給するための専用の供給ポンプなどを必要とせず、固体酸化物形燃料電池2の構成を簡単にすることができるとともに、改質器4の改質触媒(例えば、ルテニウム)の劣化を抑制することができる。
実施例及び比較例
【0057】
実施例として、図1に示す形態の固体酸化物形燃料電池2を用いて起動の繰返し実験を行った。燃料電池セルスタック6(固体酸化物形燃料電池)の定格発電出力は700Wで、燃料電池セルスタック6の燃料電池セルは燃料極支持型と呼ばれる構造であり、燃料電池セルの燃料極/支持体内に燃料ガスの流路が形成されたものであった。燃料極/支持体は金属ニッケルとセラミックスの混合物から形成され、改質器4の改質触媒としてアルミナにルテニウムを担持した直径3mmの球状のものを用いた。また、温度センサとして改質器4内の温度を検知するもの(第1温度センサ50)と燃料電池セルスタック6近傍の温度を検知するもの(第2温度センサ51)とを用いた。この繰返し実験においては、停止時における触媒劣化を避けるために、停止した段階で燃料極側に窒素を10L/分の割合で2分間供給して停止させた。
【0058】
この実施例においては、起動時に燃料ガスを燃料電池セルスタック6の一端部(上端部)側の燃焼室44で燃焼させ、燃料ガスを燃焼させるための点火装置として点火ヒータを用いた。この燃料電池セルスタック6の外側には送風手段としての送風ブロア8により空気を供給し、燃料ガスが完全燃焼するために必要な酸素量の2倍相当分を起動開始時から起動完了まで供給した。
【0059】
この実施例においては、図3に示すように、起動開始時には燃料ガスを燃焼室44で燃焼させ、この燃焼熱により、改質器4内の温度(第1温度センサ50の検知温度)が90℃以上に上昇し、且つ燃料電池セルスタック6近傍の温度(第2温度センサ51の検知温度)が60℃以上に上昇した時点で気化器14に水を供給した。すなわち、本実施例においては、第1温度センサ50および第2温度センサ51のそれぞれが、温度センサごとに設定される第1所定温度を超えた場合に気化器14に水を供給した。改質器4に供給される燃料ガス及び水の供給量は、供給当初においては燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)が0.2となるように燃料ガス供給手段及び水供給手段を制御し、温度が上昇した段階でこのモル比(S/C)が0.5となるように燃料ガス供給手段及び水供給手段を制御し、更に温度が上昇した段階でこのモル比(S/C)が2.0となるように燃料ガス供給手段及び水供給手段を制御し、更に最終的な温度まで上昇した段階でこのモル比(S/C)が3.0となるように燃料ガス供給手段及び水供給手段を制御した。なお、これらモル比と改質器4内の温度及び燃料電池セルスタック6近傍の温度との関係は図3に示す通りであった。図3において一点鎖線Aで示す時間と温度との関係は、改質器4内の温度変化を示し、実線Bで示す時間と温度との関係は、燃料電池セルスタック6近傍の温度変化を示す。尚、図3におけるO/Cは、燃料ガス中の炭素(C)に対する酸素(O)のモル比であり、この実施例ではこのモル比(O/C)は0(ゼロ)であり、起動が終了するまで気化器14に空気(即ち、酸素)を供給しなかった。
【0060】
この実施例においては、起動完了後4時間にわたって発電を定格出力で行い、その後停止させた。この発電停止においては、改質器4に供給される燃料ガス及び水蒸気として、起動時の1/6の量の燃料ガスと、この量の燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)が3.0となるような量の水とを供給した。そして、改質器4内の温度が400℃となった時点で燃料ガスと水の供給を停止した。また、この停止時においては、送風ブロア8による空気の供給は、起動時の2倍の流量となるように供給し、改質器4内の温度が100℃に低下するまで供給した。このようにして停止した後、24時間にわたって放置し、24時間経過後に再び起動、発電、停止を行い、これらの一連の動作を30回繰り返し遂行した。
【0061】
このような繰返し起動実験の後に改質器4の改質触媒の劣化(ルテニウムの表面積の残存率)及び燃料極/燃料極支持体の状態を評価し、その評価結果は、表1に示す通りであった。尚、セルの燃料極/支持体の状態の評価における「セル中央」とは、燃料電池セルの下端とその上端との間の中央部であり、「セル上端」とはセル上端から下端側に3mmまでの部位である。
【0062】
【表1】

【0063】
比較例1として、実施例1と同様の固体酸化物形燃料電池を用いて起動の繰返し実験を行った。比較例1においても、起動時に燃料ガスを燃料電池セルスタック6の一端部(上端部)側の燃焼室44で燃焼させ、燃焼させるための点火装置として点火ヒータを用いた。また、燃料電池セルスタック6の外側には送風ブロア8により空気を供給し、燃料ガスが完全燃焼するのに必要な酸素量の2倍相当分を起動開始時から起動完了まで供給した。
【0064】
この比較例1においては、図4に示すように、起動開始時には燃料ガスを燃焼室44で燃焼させ、この燃焼熱により、改質器4内の温度(第1温度センサ50の検知温度)が温度上昇し、改質器4内の温度が300℃に上昇した時点で気化器14に水を供給した。改質器4に供給される燃料ガス及び水の供給量は、燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)が3.0となるように燃料ガス供給手段及び水供給手段を制御した。これらモル比と改質器4内の温度及び燃料電池セルスタック6近傍の温度との関係は図4に示す通りであった。図4において一点鎖線Aで示す時間と温度との関係は、改質器4内の温度変化を示し、実線Bで示す時間と温度との関係は、燃料電池セルスタック6近傍の温度変化を示す。尚、図4において、O/Cは、燃料ガス中の炭素(C)に対する酸素(O)のモル比であり、この比較例1においても、このモル比(O/C)は0(ゼロ)であり、起動が終了するまで気化器に空気(即ち、酸素)を供給しなかった。
【0065】
比較例1においても、実施例と同様に、起動完了後4時間にわたって発電を定格出力で行い、その後停止させた。この発電停止においては、上述した実施例と同様に、改質器4に供給される燃料ガス及び水蒸気として、起動時の1/6の量の燃料ガスと、この量の燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)が5.0となるような量の水とを供給した。そして、改質器4内の温度が400℃となった時点で燃料ガスと水の供給を停止した。また、この停止時においては、送風ブロア8による空気の供給は、起動時の2倍の流量となるように供給し、改質器4内の温度が100℃に低下するまで供給した。このようにして停止した後、24時間にわたって放置し、24時間経過後に再び起動、発電、停止を行い、これらの一連の動作を30回繰り返し遂行した。
【0066】
比較例1における繰返し起動実験の後に改質器4の改質触媒の劣化(初期ルテニウムの表面積の合計に対する実験後のルテニウムの表面積の合計、以下ルテニウムの表面積の残存率という)及び燃料極/燃料極支持体の状態を評価し、その評価結果は、表1に示す通りであった。
【0067】
また、比較例2として、図5に示す形態の固体酸化物形燃料電池を用いて起動の繰返し実験を行った。比較例2の固体酸化物形燃料電池では、起動時に気化器14を通して改質器4に空気を供給するための起動用空気供給手段62が設けられ、この起動用空気供給手段62は、空気供給流路64に空気を供給するための起動用空気ポンプ66と、この空気供給流路64に配設された流量制御弁68及び流量センサ70とから構成され、流量センサ70が空気供給流路64を通して供給される空気流量を計測し、流量制御弁68は空気供給流路64を通して流れる空気の流量を制御する。この比較例2のその他の構成は、図1に示す固体酸化物形燃料電池と実質上同一であり、図1に示す部材と同一の部材には同一の参照番号を付している。
【0068】
この実施形態では、これらの各装置の動作を制御する制御装置56が配置されており、制御装置56は、燃料ガス供給手段、水供給手段、送風手段8、起動用空気ポンプ66等の各装置の動作を制御する。なお図1に示した制御装置56においては、燃料ガス供給手段のうちの燃料ガス供給用ポンプ26、水供給用ポンプ34、送風手段8、起動用空気ポンプ66を制御する例を示している(図中において鎖線にて示す)。
【0069】
比較例2においても、起動時に燃料ガスを燃料電池セルスタック6の一端部(上端部)側の燃焼室44で燃焼させ、燃焼させるための点火装置として点火ヒータを用いた。この比較例2では、起動初期においては、制御装置56は、燃料ガス中の炭素(C)に対する酸素(O)のモル比(O/C)が0.5となるように起動用空気ポンプ66を作動させて空気供給流路64を通して気化器14に空気を供給した。また、燃料電池セルスタック6の外側には送風ブロア8からの空気を供給し、燃料ガスが完全燃焼するのに必要な酸素量の2倍相当分を起動開始時から起動完了まで供給した。
【0070】
この比較例2においては、図6に示すように、起動開始時には燃料ガスを燃焼室44で燃焼させ、この燃焼熱により、改質器4内の温度(第1温度センサ50の検知温度)が上昇した後に水を供給するように水供給手段を制御した。改質器4に供給される燃料ガス及び水の供給量は、燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)が2.0となるように燃料ガス供給手段及び水供給手段を制御し、このように水を供給したときにも起動用空気ポンプ66からの空気の供給が、燃料ガス中の炭素(C)に対する酸素(O)のモル比(O/C)で0.5となるように維持した。このようにして更に温度が上昇すると、燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)が3.0となるように燃料ガス供給手段及び水供給手段を制御し、起動用空気ポンプ66からの空気の供給を停止した。これらモル比と改質器4内の温度及び燃料電池セルスタック6近傍の温度との関係は、図6に示す通りであった。図6において一点鎖線Aで示す時間と温度との関係は、改質器4内の温度変化を示し、実線Bで示す時間と温度との関係は、燃料電池セルスタック6近傍の温度変化を示す。
【0071】
比較例2においても、実施例及び比較例1と同様に、起動完了後4時間にわたって発電を定格出力で行い、その後停止させた。この発電停止においては、上述した実施例と同様に、改質器4に供給される燃料ガス及び水蒸気として、起動時の1/6の量の燃料ガスと、この量の燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)が3.0となるような量の水とを供給した。そして、改質器4内の温度が400℃となった時点で燃料ガスと水の供給を停止した。また、この停止時においては、送風ブロア8による空気の供給は、起動時の2倍の流量となるように供給し、改質器4内の温度が100℃に低下するまで供給した。このようにして停止した後、24時間にわたって放置し、24時間経過後に再び起動、発電、停止を行い、これらの一連の起動動作を30回繰り返し遂行した。
【0072】
比較例2における繰返し起動実験の後に改質器4の改質触媒の劣化(ルテニウムの表面積の残存率)及び燃料極/燃料極支持体の状態を評価し、その評価結果は、表1に示す通りであった。
【0073】
表1の結果から明らかなように、比較例2では、燃料極/燃料極支持体の状態の評価において、「セル中央」及び「セル上端」とも問題はないものの、改質触媒の劣化が進行し、表面積の残存率が10%に減少していた。初期の10%のルテニウム表面積であっても固体酸化物形燃料電池の動作自体には大きな支障がないが、10年間で120〜300回の起動停止をすると想定すると、5年程度で改質触媒の性能低下による動作不良が発生する可能性が高くなる。従って、固体酸化物形燃料電池の寿命を10年とすると、この寿命に至る途中で改質触媒の交換が必要となる。
【0074】
また、比較例1では改質触媒の劣化は抑制され、初期のルテニウム表面積の58%が残存しており、10年間改質触媒を交換しなくても改質触媒の性能低下による動作不良が発生する可能性は低いが、燃料極/支持体の状態における評価において「セル上端」付近にクラックが発生し、異常状態が生じていた。この部位におけるクラックの発生は、起動時に炭素が析出し、析出した炭素が発電中に消失するという現象が繰り返発生していたと推定された。
【0075】
これに対して、実施例では、比較例1と同様に改質触媒の劣化は抑制され、初期のルテニウム表面積の60%が残存しており、10年間改質触媒を交換しなくても改質触媒の性能低下による動作不良が発生する可能性は充分に低く、また燃料極/燃料極支持体の状態の評価においても、「セル中央」及び「セル上端」とも健全であり、10年間の使用に耐えうることが確認できた。
【0076】
比較例1において、燃料電池セルスタック6のセル上端で燃料極/燃料極支持体に異常が発生したのは、起動時におけるセル上端での燃料ガスの燃焼によって、セル上端の温度がセル中央よりも迅速に100〜400℃程度高くならざるを得ないためである。水(水蒸気)又は酸素ガス(空気)がない状態で400℃以上に上昇すると、セル上端で炭素析出が起こる。固体酸化物形燃焼電池では燃料電池セルスタック6が高温室54に収納されるため、こうした局部的な燃料電池セルスタック6の温度上昇は正しく把握することが難しいが、燃料電池セルスタック6の上端の温度測定は、セル上端の燃料極/支持体内部に細い熱電対を2.5mm挿入して直接測定を試みた。この温度の測定結果は、図7に示す通りであり、図7は、燃料電池セルスタック6のセル上端において起動時と同等程度の燃料ガスを燃焼させたときのセル上端の温度変化を示している。尚、熱電対の絶縁、寿命の観点から、実用の固体酸化物形燃料電池でこのような温度測定は不可能である。
【0077】
図3に示すように、着火後、3分程度では燃料電池セルスタック6近傍温度、改質器4温度は数十℃しか上昇していないが、図7から明らかなように、燃料電池セルスタック6のセル上端は起動初期の4分間で300℃程度まで上昇し、7分後においては350℃、12分後には420℃まで上昇している。このように燃料電池セルスタック6の一端で燃焼させる構成の固体酸化物形燃料電池においては、燃料電池セルスタック6に局部的な温度上昇が起動初期において起こっていることが確認できた。
【0078】
これらの繰返し起動実験を元に、改質器4に供給される燃料ガス及び水蒸気の供給量について、燃料電池セルスタック6のセル上端で炭素析出を起こさない燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)を炭素析出の基礎試験により確認した。燃料極/支持体材料と同様のニッケル−セラミックス混合物を電気炉で所定の温度に加熱し、そこに水を添加した燃料ガスを流した。燃料ガスの組成を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
この基礎試験の結果は、図8に示す通りであった。この結果から明らかなように、350℃であれば、燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)燃のモル比(S/C)が0.1で炭素析出が起こらないこと、400℃であれば燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)が0.2で炭素析出が起こらないことが確認できた。図7に示したセル上端での迅速な温度上昇に合わせて、炭素析出を抑制するために水蒸気を供給すればよいことがこの基礎実験結果からわかる。燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)が1.0以下となるように燃料ガス供給手段及び水供給手段を制御すれば、炭素析出を抑制することができ、気化器14に供給する燃料ガスの組成の若干の違い、気化器14・改質器4での水の結露程度などを考慮すると、燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比(S/C)が0.1〜1.0となるように燃料ガス供給手段及び水供給手段を制御することが、着火後の早い段階で供給する水の量として適している。この水蒸気の供給量が多くなると、気化器14において供給した水が水蒸気となることなく溜まり気化器14の温度上昇がさまたげられるので、気化器14での所定量の水蒸気発生が遅れ、その結果、改質器4や燃料電池セルでの炭素析出を招く可能性がある。
【0081】
尚、改質器4内の温度・燃料電池セルスタック6近傍の温度測定方法によっては、温度測定値が上昇するのが遅れ、燃料電池セルスタック6に局部加熱の温度上昇が進行してしまうため、所定の時間の経過によっても水の供給が開始するようにしておくことが望ましい。
【符号の説明】
【0082】
2 固体酸化物形燃料電池
4 改質器
6 燃料電池セルスタック
8 送風手段
14 気化器
18 燃料ガス供給源
22 改質用水供給源
38 空気予熱器
44 燃焼室
50 温度センサ
51 温度センサ
52 燃料電池ハウジング
54 高温室
56 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系の燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段と、燃料ガスの改質に用いる水を供給するための水供給手段と、該水供給手段より供給される水を水蒸気に気化させるための気化器と、前記燃料ガス供給手段より供給される燃料ガスを前記気化器より供給される水蒸気を用いて水蒸気改質するための改質器と、前記改質器にて水蒸気改質された改質燃料ガス及び酸化材の酸化及び還元によって発電を行う燃料電池セルを複数個備えてなる燃料電池セルスタックと、該燃料電池セルスタックにおける前記燃料ガス排出側に配設された燃焼室と、前記気化器、前記改質器、前記燃料電池セルスタック及び前記燃焼室を収容するための電池収容ハウジングと、酸化材を前記燃料電池セルスタックに送給するための送風手段と、前記燃料ガス供給手段、前記水供給手段及び前記送風手段の動作を制御する制御装置とを備え、前記燃料電池セルスタックより排出される燃料ガスを前記燃焼室で燃焼させ、この燃焼熱により前記気化器及び前記改質器を加熱する固体酸化物形燃料電池であって、
前記気化器、前記改質器及び前記燃料電池セルスタックのうち少なくとも1つに温度センサを備えるとともに、前記制御装置は、前記固体酸化物形燃料電池の起動時において、少なくとも1つの前記温度センサにより検知される温度が第1所定温度に到達する、又は前記燃焼室における燃料ガスの燃焼開始から第1所定時間が経過すると、前記燃料ガス供給手段及び前記水供給手段を、前記改質器に供給される燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が1.0以下となるように制御することを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記制御装置は、少なくとも1つの前記温度センサにより検知される温度が前記第1所定温度に到達する、又は前記燃焼室における燃料ガスの燃焼開始から前記第1所定時間が経過すると、前記燃料ガス供給手段及び前記水供給手段を、前記改質器に供給される燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が0.1〜0.8となるように制御することを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記制御装置は、前記燃焼室における燃料ガスの燃焼開始から第2所定時間が経過した時点において、少なくとも1つの前記温度センサにより検知される温度が最低温度に到達していない場合に、前記燃料ガス供給手段を停止するように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記炭化水素系の燃料ガスがメタンを50%以上含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記制御装置は、前記燃料ガス供給手段及び前記水供給手段を、前記改質器に供給される燃料ガス中の炭素(C)に対する水蒸気中の水(HO)のモル比が1.0以下となるように継続して1分以上供給するように制御することを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
前記制御装置は、前記燃料ガス供給手段より前記気化器に供給される前記炭化水素系の燃料ガスが平均炭素数が2.0以上の炭化水素系の燃料ガスの場合に、前記送風手段を継続して作動させるとともに、前記燃焼室における燃料ガスの燃焼開始と停止とを1回又は複数回行った後、請求項1〜3及び5のいずれかに記載の制御を行なうことを特徴とする固体酸化物形燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−170900(P2010−170900A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13290(P2009−13290)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】