説明

固体酸化物形電池のためのガス流を精製するための方法及びシステム

本発明は、実施形態において、電解電池様式と燃料電池様式との双方で動作され、第1の電極、電解質、及び第2の電極を少なくとも備える固体酸化物形電池のための入口ガス流を精製するための方法であって、少なくとも1つのスクラバーを固体酸化物形電池の第1の電極の入口側のガス流中に設置するステップ、及び/又は少なくとも1つのスクラバーを固体酸化物形電池の第2の電極の入口側のガス流中に設置するステップと、第1の電極及び第2の電極に向かうガス流を精製するステップとを含み、第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーが、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含み、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料が、ガス流が少なくとも1つのスクラバーを用いて精製される電極の三相境界と類似した又は同一の三相境界を形成する、方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、固体酸化物形電池のための入口ガス流(inlet gas streams)を精製するための方法及びシステムに関する。より具体的には、本発明は、固体酸化物形電池(SOC)中の粒界及び反応性電極部位を汚染することがある不純物を除去することによって固体酸化物形電池の電極へのガス流を精製するための方法及びシステムに関する。本発明はまた、固体酸化物形電池の電極へのガス流を精製するためのスクラバー(scrubber)の使用にも関する。
【0002】
[発明の背景]
高度な電極触媒システムでは、固体酸化物形電池において見出されるように、界面化学が動作中に重要な役割を果たし、各界面における不純物/添加物の存在は、装置の全体的性能及び耐久性に大きな影響を与える。
【0003】
電極触媒システムの例としての固体酸化物形電池には、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、固体酸化物形電解電池(SOEC)、又はメンブレン(membrane)など様々な用途用に設計された電池が一般に含まれる。2つの電極層、すなわちアノード層及びカソード層の間に挟まれた電解質層を基本的構成要素として含む共通の基本的構造に起因して、同じ電池をSOFC用途並びにSOEC用途において使用できるように設計することができる。したがって、SOCは、SOFC及びSOECとして両方の様式で可逆的に働くことができる基本的には同一の電池である、固体酸化物形燃料電池(SOFC)及び固体酸化物形電解電池に対する一般的用語である。図1及び図2に示すように、SOFC様式では、燃料が電池に供給され、電力に変換されるのに対し、SOEC様式では、電力が適用されて燃料を作り出す。したがって、これらの電池は、「可逆的」SOCと呼ばれる。
【0004】
電解様式で動作する際、例えば、以下の反応が電極で起こる:
CO2カソード→COカソード+1/2O2アノード
カソード→H2カソード+1/2O2アノード及び
COアノード+1/2O2カソード→CO2アノード
2アノード+1/2O2カソード→Hアノード
【0005】
図1において、CO 45%、HO 45%、及びH 10%;CO 70%及びCO 30%;CO 50%及びCO 50%;並びにHO 50%及びH 50%の混合物について、電流密度に対する電池電圧を示している。
【0006】
固体酸化物形電池の動作中、酸素イオンは供給される酸素含有ガス、例えば、空気、O、CO、又はHOなどから、カソードとして機能している電極において形成され、これら酸素イオンは電解質層を通って移動して、アノードとして機能している電極において、供給されるガスと化合する。しかし、実際に電気化学的に活性な領域は、多孔質電極内の反応性電極部位、いわゆる三相境界(triple phase boundray)に限られており、三相境界では、電解質材料、ガス、及び触媒として機能する電極材料(アノード又はカソード)が同時に存在する。
【0007】
不利なことに、各電極に向かって供給されるガス中に含有される様々な不純物の存在により、粒界中の位置に起因して伝導率が低下し、三相境界の妨害に起因して触媒活性が低下し、さらには動作中の界面の脆弱化、熱応力、及び起こり得る相転移に起因して装置が薄い層に離層することがある。したがって、不純物は入口ガスから、電池構成要素と接触する前に除去されなければならない。
【0008】
炭素質材料中に天然に存在する他の望ましくない汚染物質としては、硫黄、塩素、リン、及びさらにNH、並びにアルカリ高分子を含む化学種が挙げられる。しかし、これらの有害な化学種の除去は、前記精製手段に様々な濾過手段が必要とされるため、エネルギー及びスペースを要し、且つ多大な費用がかかる。
【0009】
硫黄含有化学種、最も顕著にはHS及びCOSの除去は、アルカリ性溶液を用いた湿式スクラビングによってしばしば実施される。固体酸化物形電池に適用される供給流は反応物質としてCOを含有することがあるため、特殊な要件がこれらのガス流に適用され、選択的吸着/吸着のみが適用され得る。適切な吸着剤は、Ca(約50ppm)、Mn(約5ppm)、Fe(約1ppm)、Ni(<0.1ppm)、Cu(<1ppm)、Zn(<0.3ppm)を含む成分であり、精製されたガス流中の達成可能な最終HS濃度が括弧内に記載されている。しかし、これらの吸収剤(sorbent)の大半は再生することができず、使用後に廃棄しなければならない。
【0010】
塩素及びリンの除去工程は、2つの一般的方法、すなわち乾式工程及び湿式工程を含む。乾式工程では、不純物は吸着剤を用いて除去されるのに対し、湿式工程では、不純物はスクラビング液を用いて除去される。乾式除去のために、酸化ナトリウム又は酸化カルシウムに通常基づいている2つのタイプの吸着剤が市販されており、これらを用いて不純物濃度を1ppm未満に低下させることができる。湿式スクラビング工程は、アルカリ性水溶液に通常基づいている。不利なことに、湿式スクラビングは、塩素及びリンだけでなく、COなど他の成分も除去する。SOCに適用される供給流はCOを反応物質として含有することがあるため、したがって、湿式スクラビングは、SOCためのガス流の浄化には適していない。
【0011】
様々な不純物をガスが固体酸化物形電池に入る前に除去しなければならないので、不利なことには、すべての不純物が精製工程1つのみで確実に除去できるわけではないため、異なる精製ステップが各不純物に必要となり、これには多大な費用及び労力を要する。さらに、先行技術は、入口ガス中に存在することが公知である主要不純物にのみ注目している。しかし、入口ガス中に同様に含有される他の不純物については、これまでのところほとんど知られておらず、これらの不純物は、今のところ濾過されずに電池に入って電極被毒の一因となり、それによって電池の寿命を短縮することがある。
【0012】
欧州特許出願公開第1231663号では、特定の物質及び硫黄などの不純物だけでなく他の未知の不純物もガス流から除去される捕捉システムを備える、エネルギー変換装置と共に使用するためのトラップを開示している。
【0013】
上記の内容に鑑みて、装置の全体的性能をより費用効率の高い方法で改善するために、粒界及び反応性電極部位における不純物の量を減少させることが強く望まれている。
【0014】
[発明の目的]
固体酸化物形電池中の粒界及び反応性電極部位を汚染することがある不純物を除去することによって固体酸化物形電池の電極へのガス流を精製するための方法及びシステムを提供することが、本発明の目的であった。
【0015】
[発明の簡単な説明]
本発明は、実施形態において、第1の電極、電解質、及び第2の電極を少なくとも備える固体酸化物形電池のためのガス流を精製するための方法であって、
少なくとも1つのスクラバーを固体酸化物形電池の第1の電極の入口側のガス流中に設置するステップ、及び/又は少なくとも1つのスクラバーを固体酸化物形電池の第2の電極の入口側のガス流中に設置するステップと、
第1の電極及び第2の電極に向かうガス流を精製するステップと
を含み、
第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーが、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含む、方法を提供する。
【0016】
より具体的には、本発明は、実施形態において、第1の電極、電解質、及び第2の電極を少なくとも備える固体酸化物形電池のためのガス流を精製するための方法であって、
少なくとも1つのスクラバーを固体酸化物形電池の第1の電極の入口側のガス流中に設置するステップ、及び/又は少なくとも1つのスクラバーを固体酸化物形電池の第2の電極の入口側のガス流中に設置するステップと、
第1の電極及び第2の電極に向かうガス流を精製するステップと
を含み、
第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーが、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含み、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料が、ガス流が少なくとも1つのスクラバーを用いて精製される電極の三相境界と類似した又は同一の三相境界を形成する、方法を提供する。
【0017】
本発明は、固体酸化物形電池のためのガス流を精製するためのシステムであって、
第1の電極、
電解質、及び
第2の電極
を備える固体酸化物形電池、
第1の電極に向かうガス入口、
第2の電極に向かうガス入口、
第1の電極のガス入口に位置する少なくとも1つのスクラバーを備える精製手段、及び/又は第1の電極のガス入口に位置する少なくとも1つのスクラバーを備える精製手段
を具備し、
第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーが、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含む、システムをさらに提供する。
【0018】
より具体的には、本発明は、固体酸化物形電池のためのガス流を精製するためのシステムであって、
第1の電極、
電解質、及び
第2の電極
を備える固体酸化物形電池、
第1の電極に向かうガス入口、
第2の電極に向かうガス入口、
第1の電極のガス入口に位置する少なくとも1つのスクラバーを備える精製手段、及び/又は第1の電極のガス入口に位置する少なくとも1つのスクラバーを備える精製手段
を具備し、
第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーが、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含む、システムをさらに提供する。
【0019】
本発明は、第1の電極及び/又は第2の電極に向かうガス流を精製するための、固体酸化物形電池の第1の電極及び/又は第2の電極の入口側のガス流中での少なくとも1つのスクラバーの使用であって、
第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーが、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含む、使用にさらに関する。
【0020】
好ましい実施形態は、従属請求項において記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】CO 45%、HO 45%、及びH 10%;CO 70%及びCO 30%;CO 50%及びCO 50%;並びにHO 50%及びH 50%の混合物について、電流密度に対する電池電圧を示す図である。
【図2】不純物が本発明による固体酸化物形電池の耐久性に与える影響、すなわち、電解様式で動作される固体酸化物形電池が電池電圧上昇の結果として劣化することを示す図である。
【図3】不純物が本発明による固体酸化物形電池の耐久性に与える影響、すなわち、電解様式で動作される固体酸化物形電池が電池電圧低下の結果として劣化することを示す図である。
【図4】当技術分野において公知の標準的方法を用いて精製された燃料ガスとしてのCO/COと比較して、本発明の方法に従って精製されたCO/COが燃料ガスとして供給された固体酸化物形電解電池の経時的な電池電圧の比較を示す図である。
【図5】当技術分野において公知の標準的方法を用いて精製された燃料ガスとしてのHO/Hと比較して、本発明の方法に従って精製されたHO/Hが燃料ガスとして供給された固体酸化物形電解電池の経時的な電池電圧の比較を示す図である。
【図6】当技術分野において公知の標準的方法を用いて精製された燃料ガスと比較して、本発明の方法に従って精製されたHO/Hが燃料ガスとして供給された固体酸化物形燃料電池の経時的な電池電圧の比較を示す図である。
【0022】
[発明の詳細な説明]
本発明は、固体酸化物形電池の(1つ又は複数の)電極への少なくとも入口側のガス流の精製であって、ガス流が、各電極の三相境界と類似した又は同一の三相境界を含む材料と接触することにより精製される、ガス流の精製に全般的に関する。電極の活性部位を汚染することができる任意の不純物はガス流から、精製に使用される材料中の三相境界に対する親和性に起因して効果的に除去される。
【0023】
より具体的には、本発明は、第1の電極、電解質、及び第2の電極を少なくとも備える固体酸化物形電池のためのガス流を精製するための方法であって、
少なくとも1つのスクラバーを固体酸化物形電池の第1の電極の入口側のガス流中に設置するステップ、及び/又は少なくとも1つのスクラバーを固体酸化物形電池の第2の電極の入口側のガス流中に設置するステップと、
第1の電極及び第2の電極に向かうガス流を精製するステップと
を含み、
第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーが、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含む、方法を提供する。
【0024】
有利なことには、本発明の方法を用いると、固体酸化物形電池に向かうガスは、活性な三相境界部位を妨害することによって固体酸化物形電池の劣化を引き起こすあらゆる重大な不純物に関して、特定の同定された不純物に対して微調整する必要なく精製される。したがって、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含むスクラバーを1つだけ使用するにもかかわらず、ガス流は、当技術分野においてこれまで公知である手段によって精製したガス流中には依然として残存する不純物すべてについて精製でき、これは、システムをスペース及び重量の要件の観点から最小化したいという今日の要求の点でも有利である。より具体的には、固体酸化物形電池の第1の電極の入口側のガス流中のスクラバー及び/又は固体酸化物形電池の第2の電極の入口側のガス流中のスクラバーは、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含み、それによって、反応性部位に似た構造、すなわち、電極の各反応性部位と類似した又は同一の三相境界を形成する。電極中の反応性部位を汚染し得る任意の不純物は、代わりにスクラバーの各構造中に吸着されて、電極に向かう入口ガスから効果的に除去されることになる。
【0025】
したがって、本発明の方法により、電池の材料をさらに改良する必要なく、すなわち、不純物に対する電池の回復力(resilient)を高める必要なく、固体酸化物形電池の寿命を費用効果的に延長する。これによって見返りとして、電池材料に関するより高い自由度が、電池の耐久性を損なうことなく、可能になる。
【0026】
本発明の方法(及びシステム)において使用されるスクラバーは、ガス通路を備える多孔質材料、例えば、一枚岩のようなハチの巣構造である。精製されるべきガスは多孔質材料を、各電極への途中で通過する。スクラバーは固体酸化物形電池のための電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含むため、スクラバーは、固体酸化物形電池の電極層中の三相境界に一致して、電解質材料、電極材料、及びガスから形成された三相境界を含む構造を含む。
【0027】
類似した又は同一の構造に起因して、不純物はスクラバー材料中に、固体酸化物形電池に入る前に沈着することになる。すなわち、不純物に対する電池の抵抗性を高める必要性である。これによって見返りとして、電池材料に関するより高い自由度が、電池の耐久性を損なうことなく、可能になる。
【0028】
好ましい実施形態において、第1の電極の入口側のガス流中のスクラバーは、第1の電極と同じ材料を含み、及び/又は第2の電極の入口側のガス流中のスクラバーは、第2の電極と同じ材料を含む。
【0029】
スクラバー材料は同一の三相境界部位、すなわち、各電極と同じ材料を含有するか、又はスクラバー材料が、さらには実際の電極よりも不純物に対する「耐性が低い」、すなわち反応性が高い三相境界部位を含有するかのいずれかが最も好ましい。
【0030】
燃料ガス流、例えば、H/HO、CO/CO、CHを含む混合物の場合、不純物に対する耐性がより低い材料の適用は、Ni/スカンジアをドープしたイットリア安定化ジルコニア(ScYSC)サーメット電極に好ましいNi/イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含む。より安価なNi/YSZ材料は一部の不純物に対する耐性が、より高価なNi/ScYSZ材料よりも低い。したがって、吸着能力及び価格に関して、SOCための最も好ましい材料は、活性なNi/ScYSZ電極とのスタック用のNi/YSZを含むスクラバーである。
【0031】
酸化剤ガス流の場合、例えば、空気又はO、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM/YSZ)又はランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF/YSZ)を含む材料を適用することができる。硫黄、塩素、及びリンなどの不純物に対するガス浄化能力は、Na、Ca、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、又はCeからなる群から選択される酸化物を添加することによってさらに改善することができる。
【0032】
燃料ガス流(H/HO、CO/CO、CH)の浄化に適切な材料のより具体的な例としては、適用をそれらに限定するわけではないが、以下が挙げられる。
【0033】
燃料ガス流用のスクラバー中の活性材料は、SOC中の平均粒径に対応する約2μmの平均粒径を有するNi/YSZ又はNi/ScYSZであってもよい。
【0034】
燃料ガス流用のスクラバー中の活性材料は、Na、Ca、La、Zr、Nb、Cr、Mn、Fe、Cu、Ni、Cu、Zn、Al、Si、又はCe、及びそれらの合金の群から選択される材料の少なくとも1種を添加した、SOC中の平均粒径に対応する約2μmの平均粒径を有するNi/YSZ又はNi/ScYSCであってもよい。
【0035】
燃料ガス流用のスクラバー中の活性材料は、Ni/YSZ又はNi/ScYSCであってもよい。電子伝導率又はイオン伝導率に制限はないため、平均粒径を2μmより小さくして、活性部位の長さを増加させることができる。
【0036】
燃料ガス流用のスクラバー中の活性材料は、Na、Ca、La、Zr、Nb、Cr、Mn、Fe、Cu、Ni、Cu、Zn、Al、Si、又はCe、及びそれらの合金の群から選択される材料を添加したNi/YSZ又はNi/ScYSCであってもよい。電子伝導率又はイオン伝導率に制限はないため、平均粒径を2μmより小さくして、活性部位の長さを増加させることができる。
【0037】
酸化剤ガス流の浄化に適切な材料のより具体的な例としては、適用をそれらに限定するわけではないが、以下が挙げられる。
【0038】
酸化剤ガス流用のスクラバー中の活性材料は、SOC中の平均粒径に対応して約2μmの平均粒径を有するLSM/YSZ(ランタンストロンチウムマンガナイト/イットリア安定化ジルコニア)又はLSCF/YSZ(ランタンストロンチウムコバルタイトフェライト/イットリア安定化ジルコニア)であってもよい。
【0039】
酸化剤ガス流用のスクラバー中の活性材料は、Na、Ca、La、Zr、Nb、Cr、Mn、Fe、Cu、Ni、Cu、Zn、Al、Si、又はCe、及びそれらの合金の群から選択される材料を添加した、SOC中の平均粒径に対応して約2μmの平均粒径を有するLSM/YSZ又はLSCF/YSZであってもよい。
【0040】
酸化剤ガス流用のスクラバー中の活性材料は、LSM/YSZ又はLSCF/YSZであってもよい。電子伝導率又はイオン伝導率に制限はないため、平均粒径を2μmより小さくして、活性部位の長さを増加させてもよい。酸化剤ガス流用のスクラバー中の活性材料は、Al、Ba、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、Gd、La、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Sb、Sc、Si、Sm、Sr、St、Ti、Y、Zn、Zr、LSM、LSC、LSF、LSCF、LNF、LaMnO、LaCoO、SmCoO、LaFeO、LBSM、GDC、STN、NdNiO、LaSrSiO、BSC、SmSr(Co、Fe、Ni)O、YBaCoO、SrCoSbO、SrTiFeO、SrScCoO、LaSrCoNiO、安定化ジルコニア(YSZ、ScYSZ)、ドープセリア(ガドリニウムをドープしたセリア(CGO)、サマリウム、ランタン、イットリウム、イッテルビウム、及び/又はネオジムをドープしたセリア);ストロンチウム/マグネシウム/バリウムドープランタンガレート(LSGM、LBGM、LSGM−Co、又はLSGM−Fe);サマリウム、ネオジム、及び/又はイッテルビウムをドープしたBaCeO、並びにそれらの混合物の群から選択される材料を添加したLSM/YSZ又はLSCF/YSZであってもよい。電子伝導率又はイオン伝導率に制限はないため、平均粒径を2μmより小さくして、活性部位の長さを増加させてもよい。
【0041】
図3〜6から認めることができるように、電解電池様式又は燃料電池様式のいずれかで動作される固体酸化物形電池に向かうガス流中の不純物の排除が実証されている。固体酸化物形電解電池の場合、測定された電池電圧の経時的上昇は、本発明の方法に従ったさらなる精製を行わない同一の電池と比較して大幅により少ない。固体酸化物形燃料電池の場合、測定された電池電圧の経時的低下は、本発明の方法に従ったさらなる精製を行わない同じ電池と比較してごくわずかである。
【0042】
図4は、当技術分野において公知の標準的方法を用いて精製された燃料ガスとしてのCO/COと比較した、本発明の方法に従って精製されたCO/COが燃料ガスとして供給される電解様式で動作された固体酸化物形電池の経時的な電池電圧の比較である。測定は、850℃、−0.25A/cm、70%CO/30%COの条件下で実施した。図から明らかであるように、電池電圧の経時的上昇は、供給される燃料ガスが本発明の方法に従ってさらに精製される場合、同一条件下であるがさらなる精製を行わない同じ電池と比較してより少なく、有利である。
【0043】
図5は、当技術分野において公知の標準的方法を用いて精製された後に供給される燃料ガスとしてのHO/Hと比較した、本発明の方法に従って精製されたHO/Hが燃料ガスとして供給される電解様式で動作された固体酸化物形電池の経時的な電池電圧の比較である。測定は、850℃、−0.50A/cm、50%HO/50%Hの条件下で実施した。図から明らかであるように、電池電圧の経時的上昇は、供給される燃料ガスが本発明の方法に従ってさらに精製される場合、同一条件下であるがさらなる精製を行わない同一の電池と比較してより少なく、有利である。
【0044】
図6から認めることができるように、本発明の方法に従って精製されたHO/Hが燃料ガスとして供給される燃料電池様式で動作された固体酸化物形電池の電池電圧の経時的低下は、当技術分野において公知の標準的方法を用いて精製したガスと比較してより少なく、有利である。測定は、750℃、0.75A/cm、40%HO/60%Hの条件下で実施した。
【0045】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態において、固体酸化物形電池の第1の電極の入口側のガス流中のスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中のスクラバーは、第1の電極及び/又は第2の電極の動作温度と同じ温度又はこれより若干低い温度で動作される。これにより、スクラバー中に含まれる材料がSOCの電極材料と同じ化学的及び電気化学的挙動を示すため、ガス流の最適な精製が確実になる。
【0046】
本発明は、固体酸化物形電池のためのガス流を精製するためのシステムであって、
第1の電極、
電解質、及び
第2の電極
を備える固体酸化物形電池、
第1の電極に向かうガス入口、
第2の電極に向かうガス入口、
第1の電極のガス入口に位置する少なくとも1つのスクラバーを備える精製手段、及び/又は第1の電極のガス入口に位置する少なくとも1つのスクラバーを備える精製手段
を具備し、
第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーが、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含む、システムをさらに提供する。
【0047】
本発明の方法に関連して上記に示したように、有利なことには、システムのガス流中のスクラバーはガスを、活性な三相境界部位を妨害することによって固体酸化物形電池の劣化を引き起こすあらゆる重大な不純物に関して、特定の同定された不純物に対して微調整することを必要とせずに精製する。したがって、たった1つのスクラバーによって、ガス流は不純物すべてについて効果的に精製でき、これは、システムをスペース及び重量の要件の観点から最小化したいという今日の要求の点でも有益である。
【0048】
さらに、スクラバーは固体酸化物形電池システムにガス流中で、SOCの一部分を形成することなく取り付けられ、したがって、電池スタックそれ自体を取り扱うことを必要とせずに、必要に応じて容易に交換することができる。したがって、スクラバーの精製効率が所望のとおり最小値より低くなる(decreases below as desired minimum)場合、スクラバーの簡単な交換を、時間効率のよい方法で実施することができ、それによって、電池の寿命を延長するとともにシステムの安価な部品の交換を提供して、システム全体の費用効率をより高くすることができる。
【0049】
好ましい実施形態において、第1の電極の入口側のガス流中のスクラバーは、第1の電極と同じ材料を含み、及び/又は第2の電極の入口側のガス流中のスクラバーは、第2の電極と同じ材料を含む。
【0050】
スクラバー材料は同一の三相境界部位、すなわち、各電極と同じ材料を含有するか、又はスクラバー材料は、さらには実際の電極よりも不純物に対する「耐性が低い」、すなわち反応性が高い三相境界部位を含有するかのいずれかが最も好ましい。
【0051】
好ましい材料に関しては、本発明の方法に関連して上記に示した同じ材料が、同様にシステムにおいて好ましく使用される。
【0052】
有利なことには、本発明の方法及びシステムを用いると、固体酸化物形電池の電気化学的に活性な部位の不純物を電池の電極に向かうガス流から効果的に除去することができ、その結果、寿命が延長され且つ経時的性能が高い固体酸化物形電池が得られる。
【0053】
有利なことには、本発明の方法により、不純物が固体状態の電気化学的装置中の粒界及び反応性電極部位から、簡単且つ非常に効率的に固定化されて除去され、先行技術のSOC寿命と比較して、工程の費用効率がより高くなるとともにSOC寿命がより改善され得、不純物の除去に必要とされるスペース及び重量が先行技術と比較して減少され得る。
【0054】
本発明は、第1の電極及び/又は第2の電極に向かうガス流を精製するための、固体酸化物形電池の第1の電極及び/又は第2の電極の入口側のガス流中で使用するためのスクラバーであって、
第1の電極の入口側のガス流中のスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中のスクラバーが、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含む、スクラバーにさらに関する。
【0055】
最後に、本発明は、固体酸化物形電池におけるガス流を精製するのに適したスクラバーとしての、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含む組成物の使用に関する。
【0056】
有利なことには、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含む組成物は、三相境界を電極に向かうガスと共に形成する。材料が、各電極に使用される材料に類似している場合、又はより好ましい場合では、材料が、各電極に使用される材料と同一である場合、形成される三相境界は、電極それ自体において形成される三相境界と類似している又はさらには同一である。したがって、三相境界が形成される実際の電極中の各部位にとって有害であるガス流中に含まれる任意の不純物は、上記の組成物を使用するスクラバー中の部位に既に引きつけられており、電極に入る前にガス流から効果的に除去され、その結果、寿命が延長され且つ経時的性能が高い固体酸化物形電池が得られる。
【0057】
好ましくは、第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーは、第1の電極において電解質材料及び電極材料として使用されるのと同じ材料を含む。また、第2の電極の入口側のガス流中のスクラバーが、第2の電極において電解質材料及び電極材料として使用されるのと同じ材料を含むことも好ましい。
【0058】
好ましい材料に関しては、本発明の方法及びシステムに関連して上記に示した同じ材料が、同様にこの実施形態においても好ましくは使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極、電解質、及び第2の電極を少なくとも備える固体酸化物形電池におけるガス流を精製するための方法であって、
少なくとも1つのスクラバーを固体酸化物形電池の第1の電極の入口側のガス流中に設置するステップ、及び/又は少なくとも1つのスクラバーを固体酸化物形電池の第2の電極の入口側のガス流中に設置するステップと、
第1の電極及び第2の電極に向かうガス流を精製するステップと
を含み、
第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーが、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含み、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料が、ガス流が少なくとも1つのスクラバーを用いて精製される電極の三相境界と類似した又は同一の三相境界を形成する、方法。
【請求項2】
第1の電極の入口側のガス流中のスクラバーが、第1の電極において電解質材料及び電極材料として使用されるのと同じ材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の電極の入口側のガス流中のスクラバーが、第2の電極において電解質材料及び電極材料として使用されるのと同じ材料を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーのための電極材料として適した材料が、Al、Ba、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、Gd、La、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Sb、Sc、Si、Sm、Sr、St、Ti、Y、Zn、Zr、LSM、LSC、LSF、LSCF、LNF、LaMnO、LaCoO、SmCoO、LaFeO、LBSM、GDC、STN、NdNiO、LaSrSiO、BSC、SmSr(Co、Fe、Ni)O、YBaCoO、SrCoSbO、SrTiFeO、SrScCoO、LaSrCoNiO、及びそれらの混合物のうちからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーのために適した電解質材料スクラバー中の活性材料が、YSZ、ScYSZ;ガドリニウム、サマリウム、ランタン、イットリウム、イッテルビウム、及び/又はネオジムをドープしたセリア;LSGM、LBGM、LSGM−Co、LSGM−Fe;サマリウム、ネオジム、及び/又はイッテルビウムをドープしたBaCeOからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
固体酸化物形電池の第1の電極の入口側のガス流中のスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中のスクラバーが、第1の電極及び/又は第2の電極の動作温度と同じ温度で動作される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
固体酸化物形電池におけるガス流を精製するためのシステムであって、
第1の電極、
電解質、及び
第2の電極
を備える固体酸化物形電池、
第1の電極に向かうガス入口、
第2の電極に向かうガス入口、
第1の電極のガス入口に位置する少なくとも1つのスクラバーを備える精製手段、及び/又は第1の電極のガス入口に位置する少なくとも1つのスクラバーを備える精製手段
を具備し、
第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーが、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含み、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料が、ガス流が少なくとも1つのスクラバーを用いて精製される電極の三相境界と類似した又は同一の三相境界を形成する、システム。
【請求項8】
第1の電極の入口側のガス流中のスクラバーが、第1の電極において電解質材料及び電極材料として使用されるのと同じ材料を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
第2の電極の入口側のガス流中のスクラバーが、第2の電極において電解質材料及び電極材料として使用されるのと同じ材料を含む、請求項7又は8に記載のシステム。
【請求項10】
第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーのための電極材料として適した材料が、Al、Ba、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、Gd、La、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Sb、Sc、Si、Sm、Sr、St、Ti、Y、Zn、Zr、LSM、LSC、LSF、LSCF、LNF、LaMnO、LaCoO、SmCoO、LaFeO、LBSM、GDC、STN、NdNiO、LaSrSiO、BSC、SmSr(Co、Fe、Ni)O、YBaCoO、SrCoSbO、SrTiFeO、SrScCoO、LaSrCoNiO、及びそれらの混合物のうちからなる群から選択される、請求項7〜9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーのために適した電解質材料スクラバー中の活性材料が、YSZ、ScYSZ;ガドリニウム、サマリウム、ランタン、イットリウム、イッテルビウム、及び/又はネオジムをドープしたセリア;LSGM、LBGM、LSGM−Co、LSGM−Fe;サマリウム、ネオジム、及び/又はイッテルビウムをドープしたBaCeOからなる群から選択される、請求項7〜10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
第1の電極及び/又は第2の電極に向かうガス流を精製するための、固体酸化物形電池の第1の電極及び/又は第2の電極の入口側のガス流中で使用するためのスクラバーであって、
第1の電極の入口側のガス流中のスクラバー及び/又は第2の電極の入口側のガス流中のスクラバーが、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含み、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料が、ガス流が少なくとも1つのスクラバーを用いて精製される電極の三相境界と類似した又は同一の三相境界を形成する、スクラバー。
【請求項13】
第1の電極の入口側のガス流中の少なくとも1つのスクラバーが、第1の電極において電解質材料及び電極材料として使用されるのと同じ材料を含む、請求項12に記載のスクラバー。
【請求項14】
第2の電極の入口側のガス流中のスクラバーが、第2の電極において電解質材料及び電極材料として使用されるのと同じ材料を含む、請求項12に記載のスクラバー。
【請求項15】
固体酸化物形電池におけるガス流を精製するのに適したスクラバーとしての、電解質材料として適した材料及び電極材料として適した材料を含む組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−519984(P2013−519984A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553230(P2012−553230)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000793
【国際公開番号】WO2011/101162
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(507018838)テクニカル ユニヴァーシティー オブ デンマーク (11)
【Fターム(参考)】