固体電解コンデンサおよびその製造方法
【課題】所望の溶断条件を満足しかつ適切な強度を有する固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ2、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子1と、外部導通部材5と、上記固体電解質層と外部導通部材5とを導通させるヒューズワイヤ61と、を備える固体電解コンデンサA1であって、ヒューズワイヤ61は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなる。
【解決手段】弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ2、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子1と、外部導通部材5と、上記固体電解質層と外部導通部材5とを導通させるヒューズワイヤ61と、を備える固体電解コンデンサA1であって、ヒューズワイヤ61は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばタンタルまたはニオブからなる多孔質焼結体を備える固体電解コンデンサに関し、特にヒューズを有する固体電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図26は、従来の固体電解コンデンサの一例を示している。同図に示された固体電解コンデンサXは、コンデンサ素子91と、外部接続用電極92,93と、コンデンサ素子91を封止する樹脂パッケージ94とを有している。コンデンサ素子91は、たとえば多孔質焼結体90によって構成され、内部から陽極ワイヤ95が突出している。外部接続用電極92,93は、一部が樹脂パッケージ94内に封止され、残りの部分が樹脂パッケージ94から延出している。外部接続用電極92は、陽極ワイヤ95と接続されている一方、外部接続用電極93は、コンデンサ素子91の表面に形成された内部電極96とワイヤ97を介して電気的に接続されている。
【0003】
この固体電解コンデンサXでは、ワイヤ97がヒューズとしての機能を有している。すなわち、固体電解コンデンサXに過大な電流が流れた場合やコンデンサ素子91の温度が異常に上昇した場合には、ワイヤ97が溶断するように構成されている。これにより、固体電解コンデンサXを含む電気回路に異常動作が発生したり、固体電解コンデンサXが異常過熱したりすることを抑制することができる。
【0004】
ワイヤ97をヒューズとして機能させる場合、コンデンサ素子91の発火温度や固体電解コンデンサXの回路基板に実装する際の実装温度などを考慮して、ワイヤ97の溶融温度を設定する必要がある。たとえばコンデンサ素子91に発火温度が約400℃のタンタルを用い、融点が約260℃のはんだを用いて固体電解コンデンサXを回路基板に実装する場合には、300℃程度で溶断するワイヤ97が用いられる。
【0005】
この溶断条件を満足するワイヤ97の材料としては、たとえばAuなどが用いられる。しかしながら、Auからなるワイヤ97では、上記溶断条件を満足させたい場合には、ワイヤ径がたとえば20〜100μmといった極細のものにする必要があった。このような極細のワイヤ97は、強度が低いため、製造工程時の樹脂パッケージ94をモールドする際に、ワイヤ97の外部接続用電極93に対する接合が外れたり、あるいは製品搬送中にワイヤ97が切断したりすることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−142350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、所望の溶断条件を満足しかつ適切な強度を有する固体電解コンデンサおよびその製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面によって提供される固体電解コンデンサは、弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子と、外部導通部材と、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層と上記外部導通部材とを導通させるとともに、ヒューズとして機能する導体と、を備える固体電解コンデンサであって、上記導体は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなることを特徴としている。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体は、ワイヤによって構成されており、上記ワイヤの直径は、20〜100μmである。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体のうち、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層、あるいは上記外部導通部材に接合されている部分であるファーストボンディング部は、接合部分の直径が200〜300μmである。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記ファーストボンディング部の高さは、30〜70μmである。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体は、Au−Sn系合金からなり、かつAuとSnとの重量比率は、95:5〜65:35または45:55〜25:75の範囲とされる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージをさらに備えており、上記外部導通部材は、上記樹脂パッケージから露出しており、かつ実装端子として用いられる薄板部と、上記樹脂パッケージに覆われており、かつ上記導体が接合された平板部と、上記薄板部および上記平板部を連結する連結部と、を有している。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記薄板部と上記平板部とは、互いに平行である。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記連結部は、上記薄板部および上記平板部よりも、上記薄板部および上記平板部を連結する方向と直角である断面寸法が小であり、かつ折り曲げられている。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記連結部は、上記樹脂パッケージによって覆われている。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記連結部の少なくとも一部は、上記樹脂パッケージから露出している。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記薄板部は、その厚さ方向視において上記コンデンサ素子と重なる薄肉部と、上記コンデンサ素子と重ならない厚肉部と、を有している。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージをさらに備えており、上記外部導通部材は、上記樹脂パッケージから露出しており、かつ実装端子として用いられる薄板部と、上記薄板部に対して直角である立設部とを有しており、上記導体の端部が上記立設部に接合されている。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記薄板部は、その厚さ方向視において上記コンデンサ素子と重なる薄肉部と、上記コンデンサ素子と重ならない厚肉部と、を有している。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージをさらに備えており、上記陽極ワイヤが延びる方向に対して交差しており、かつ上記陽極ワイヤに導通する上記外部導通部材の表面の一部と上記樹脂パッケージの表面の一部とが面一に繋がることにより形成された端面を有する。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記陽極ワイヤと上記外部導通部材とは、上記導体を介して導通している。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記外部導通部材は、上記樹脂パッケージから露出しており、かつ実装端子として用いられる薄板部を有しており、上記薄板部は、その厚さ方向視において上記コンデンサ素子と重なる薄肉部と、上記コンデンサ素子と重ならない厚肉部と、を有している。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体は、帯状である。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体は、球状である。
【0026】
本発明の第2の側面によって提供される固体電解コンデンサは、弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子と、外部導通部材と、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層と上記外部導通部材とを電気的に接続するとともに、ヒューズとして機能する導体と、を備える固体電解コンデンサであって、板状の絶縁基材と、上記絶縁基材の表面に形成された陽極パターンおよびこの陽極パターンから離間した中間パターンと、上記絶縁基材の裏面に形成された陽極電極パターンと、上記中間パターンおよび上記陽極電極パターンをつなぐ陽極スルーホールと、を有する基板をさらに備えており、上記陽極パターンには、上記陽極ワイヤが接合されており、上記陽極パターンと上記中間パターンとは、上記導体によって接続されていることを特徴としている。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記陽極ワイヤは、上記絶縁基材の厚さ方向において上記絶縁基板寄りに配置されている。
【0028】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記基板は、上記絶縁基材の表面に形成された陰極パターンと、上記絶縁基材の裏面に形成された陰極電極パターンと、上記陰極パターンおよび上記陰極電極パターンとをつなぐ陰極スルーホールと、をさらに備えており、上記陰極パターンは、上記固体電解質層と導通している。
【0029】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなる。
【0030】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記多孔質焼結体は、タンタルまたはニオブからなる。
【0031】
本発明の第3の側面によって提供される固体電解コンデンサの製造方法は、ヒューズ機能を発揮しうる導体の一部を、外部導通部材に対してボールボンディングを用いて接合する工程と、上記導体の他の部分を、弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子の、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層に導通させる工程と、を有することを特徴としている。
【0032】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体の一端を上記外部導通部材に接合した後、上記導体を棒状に起立させる工程と、上記導体が接合された上記外部導通部材を折り曲げる工程と、上記外部導通部材が折り曲げられた状態で上記導体の他の部分を上記固体電解質層を覆う上記導電体層に接合する工程と、を有する。
【0033】
本発明の第4の側面によって提供される固体電解コンデンサの製造方法は、ヒューズ機能を発揮しうる導体の一部を、外部導通部材に対して接合する工程と、上記導体の他の部分を、弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子の、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層に導通させる工程と、上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージを形成する工程と、上記樹脂パッケージと上記外部導通部材とを一括して切断する工程と、を有することを特徴としている。
【0034】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなる。
【0035】
このような構成によれば、たとえばAuからなる上記導体に比べ、上記導体強度を高めることができる。そのため、上記導体は、たとえば20〜100μmといった極細のものであっても、製造工程時において上記導体が上記外部導通部材から外れたり、あるいは上記導体が切断したりすることを抑制することができる。また、上記導体は、環境問題に対応した鉛フリー化に寄与しうる。
【0036】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】ヒューズワイヤのファーストボンディング部を示す要部拡大断面図である。
【図4】ファーストボンディング部の直径と接合強度との関係を示すグラフである。
【図5】ファーストボンディング部の直径と不良発生頻度との関係を示すグラフである。
【図6】ファーストボンディング部の高さと不良発生頻度との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に基づく固体電解コンデンサの製造方法の一例を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態に基づく固体電解コンデンサの製造方法の一例を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1実施形態に基づく固体電解コンデンサの変形例を示す要部斜視図である。
【図11】本発明の第3実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿う断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に基づく固体電解コンデンサの製造方法の一例を示す平面図である。
【図14】本発明の第4実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図15】本発明の第4実施形態に基づく固体電解コンデンサの製造方法の一例を示す断面図である。
【図16】本発明の第5実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図17】本発明の第5実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図18】本発明の第5実施形態に基づく固体電解コンデンサの製造方法の一例を示す断面図である。
【図19】本発明の第6実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図20】本発明の第7実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図21】本発明の第8実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図22】本発明の第9実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図23】本発明の第10実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図24】本発明の第11実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図25】本発明の第12実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図26】従来の固体電解コンデンサの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0039】
図1および図2は、本発明の第1実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA1は、コンデンサ素子1、陽極ワイヤ2、樹脂パッケージ3、陽極導通部材4、陰極導通部材5、およびヒューズワイヤ61を備えている。固体電解コンデンサA1は、たとえば電気回路においてノイズを除去したり、電源の供給を補助したりといった用途に用いられる。なお、図1においては、樹脂パッケージ3を想像線で示している。固体電解コンデンサA1の全体寸法は、長さ2.0mm程度、幅1.25mm程度、高さ1.1mm程度である。
【0040】
コンデンサ素子1は、多孔質焼結体11、誘電体層12、固体電解質層13、および導電体層14によって構成されている。多孔質焼結体11は、たとえばタンタルまたはニオブなどの弁作用金属からなり、内部に多数の細孔が形成された構造とされている。多孔質焼結体11の製作は、上記弁作用金属の微粉末を加圧成形した後に、この成形体に対して焼結処理を施すことによってなされる。この焼結処理により、弁作用金属の微粉末どうしが焼結し、多数の細孔を有する多孔質焼結体11が形成される。
【0041】
誘電体層12は、多孔質焼結体11の表面に形成されており、弁作用金属の酸化物からなる。誘電体層12の形成は、たとえば多孔質焼結体11をリン酸水溶液の化成液に漬けた状態で陽極酸化処理を施すことによってなされる。
【0042】
固体電解質層13は、誘電体層12の表面を覆うように積層されており、多孔質焼結体11の上記細孔を埋めるように形成されている。固体電解質層13は、たとえば二酸化マンガンや導電性ポリマからなる。この固体電解コンデンサA1では、固体電解質層13と誘電体層12との界面に電荷が蓄蔵される。
【0043】
導電体層14は、たとえばグラファイト層およびAg層(ともに図示せず)が積層された構造とされており、固体電解質層13を覆うように形成されている。
【0044】
陽極ワイヤ2は、多孔質焼結体11と同様に、たとえばタンタルまたはニオブなどの弁作用金属からなり、多孔質焼結体11の内部から図1においてy方向に突出している。上述した弁作用金属の微粉末を加圧成形する際に、この微粉末内に陽極ワイヤ2の一部を進入させておく。この状態で加圧成形することにより、多孔質焼結体11と陽極ワイヤ2とが一体品とされる。
【0045】
樹脂パッケージ3は、たとえばエポキシ樹脂からなり、多孔質焼結体11を保護するためのものである。樹脂パッケージ3は、たとえばエポキシ樹脂材料を用いてモールド成形される。
【0046】
陽極導通部材4は、たとえばCuメッキされた42アロイなどのNi−Fe合金からなり、平板部41、連結部42、および薄板部43によって構成されている。平板部41は、図1においてx方向に延びた平板状に形成されている。平板部41は、陽極ワイヤ2が接合される部分である。連結部42は、平板部41のx方向に延びる一端面から延出しており、互いに平行とされた1対の帯状要素からなる。この構成により、連結部42は、平板部41や薄板部43よりも断面サイズが小さい。連結部42は、略直角に折り曲げられており、先端が薄板部43に繋がっている。薄板部43は、平板状であり、平板部41と平行に配置されている。薄板部43の裏面は、樹脂パッケージ3から露出している。この薄板部43の露出面は、固体電解コンデンサA1を回路基板(図略)などに面実装するために用いられる陽極実装端子4aとされている。
【0047】
陰極導通部材5は、陽極導通部材4と同様に、たとえばCuメッキされた42アロイなどのNi−Fe合金からなり、平板部51、連結部52、および薄板部53によって構成されている。平板部51は、x方向に延びた平板状に形成されている。平板部51は、ヒューズワイヤ61が接合される部分である。連結部52は、平板部51のx方向に延びる一端面から延出しており、互いに平行とされた一対の帯状要素からなる。この構成により、連結部52は、平板部51や薄板部53よりも断面サイズが小さい。連結部52は、略直角に折り曲げられており、先端が薄板部53に繋がっている。薄板部53は、平板状であり、平板部51と平行に配置されている。薄板部53の裏面は、樹脂パッケージ3から露出している。この薄板部53の露出面は、固体電解コンデンサA1を回路基板(図略)などに面実装するために用いられる陰極実装端子5aとされている。
【0048】
ヒューズワイヤ61は、コンデンサ素子1の導電体層14と陰極導通部材5とを接続している。ヒューズワイヤ61は、固体電解コンデンサA1に過大な電流が流れたり、コンデンサ素子1が過剰に発熱したりした場合に溶断し、固体電解コンデンサA1に流れる電流を遮断する、いわゆるヒューズとしての機能を有するものである。ヒューズワイヤ61は、たとえばAu−Sn系合金からなり、その直径がたとえば20〜100μmとされている。本実施形態におけるAu−Sn系合金は、Auに対して1〜90重量%(好ましくは5〜35重量%または55〜75重量%)のSnを含有させたものである。なお、ヒューズワイヤ61は、Auの表面にSnのめっきが施されたものであってもよい。
【0049】
ヒューズワイヤ61は、その一端が陰極導通部材5の平板部51と接合され、その接合方法としてはいわゆるボールボンディングが用いられている。ボールボンディングは、内部がたとえばN2−H2ガス雰囲気とされたシューター内で行われる。加熱されたキャピラリに支持されたAu−Sn系合金ワイヤをスパークさせることにより、その一端をボール状とする。このボール状に形成された部分を陰極導通部材5の平板部51に熱圧着することにより接合される。この熱圧着された部分は、ファーストボンディング部61aと呼ばれる。
【0050】
図3に示すように、ファーストボンディング部61aは、扁平な形状に押しつぶされた部分であり、周縁が若干隆起した略円盤状である。本実施形態においては、ファーストボンディング部61aが平板部51に接合されている部分の直径Dが、200〜300μmとされている。また、ファーストボンディング部61aの平坦な部分の高さTが、30〜70μmとされている。図1および図2に示すように、ヒューズワイヤ61の他端は、たとえばAgペーストを用いた接合部68によってコンデンサ素子1の導電体層14に接合されている。
【0051】
次に、固体電解コンデンサA1の作用について説明する。
【0052】
本実施形態によれば、ヒューズワイヤ61は、Auに対して1〜90重量%のSnを含有させたAu−Sn系合金により構成されているので、たとえばAuからなるヒューズワイヤに比べ、強度の高いヒューズワイヤとすることができる。そのため、ヒューズワイヤ61のワイヤ径は、たとえば20〜100μmといった極細のものであっても、製造工程時において樹脂パッケージ3をモールドする際に、ヒューズワイヤ61と陰極導通部材5との接合が外れたり、あるいは製品搬送中にヒューズワイヤ61が切断したりすることを抑制することができる。また、ヒューズワイヤ61は、Au−Sn系合金により構成されているため、環境問題に対応した鉛フリー化を実現することができる。
【0053】
ヒューズワイヤ61には、上記したように、たとえば20〜100μmといった極細のものを用いることができるので、たとえばボールボンディング時においてキャピラリによるAu−Sn系合金ワイヤの引き回しを容易にすることができる。また、固体電解コンデンサA1の小型化に有利である。
【0054】
また、ヒューズワイヤ61は、上記した組成比のAu−Sn系合金によって構成されているので、多孔質焼結体11を構成するたとえばタンタルの発火温度(たとえば400℃)より低く、固体電解コンデンサA1の回路基板(図略)に実装する際の実装温度(たとえば240〜260℃)より高い溶融温度で溶融させることができる。つまり、回路基板に実装される際にリフロー炉における温度がたとえば260℃以下の場合に、ヒューズワイヤ61は溶断することがなく、固体電解コンデンサA1が正常に機能しうる温度において、不必要にヒューズワイヤ61は溶断することもない。
【0055】
ヒューズワイヤ61の一端と陰極導通部材5との接合は、ボールボンディングによる方法で行われている。これにより、陰極導通部材5の表面において狭い面積でヒューズワイヤ61を接合することが可能であり、小型の固体電解コンデンサの製作に有利である。
【0056】
次に、上記した作用を確認すべく、本願出願人が行った実験について、表1を参照して説明する。この実験は、ヒューズワイヤを構成する材料がそれぞれ異なる複数種類の固体電解コンデンサを用意し、各固体電解コンデンサの電流溶断時間、溶断温度、および製造工程時においてワイヤ切れなどが生じた数量を調べたものである。
【0057】
【表1】
【0058】
ヒューズワイヤの材料としては、表1に示すように、(A)直径60μm程度のAu、(B)直径38μm程度のAu、(C)直径20μm程度のAu、(D)直径60μm程度で約18重量%のSnを含むAu−Sn系合金、および(E)直径150μm程度のPb−Sn−Ag系合金からそれぞれなる5種類を用意した。ここで、(D)が本実施形態にかかるヒューズワイヤ61に適用されたものである。
【0059】
電流溶断時間の実験では、たとえば2Aの電流と5Aの電流とをそれぞれ各固体電解コンデンサに流したときに、ヒューズワイヤが溶断するまでの所要時間を調べた。その結果、2Aの電流を流したとき、(A)、(B)では切断が生じず、(C)〜(E)では200msec〜1secの間で溶断した。また、5Aの電流を流したとき、(A)〜(E)では40msec〜1.5secの間で溶断した。ヒューズワイヤとしては、たとえば2〜5Aの電流で1秒以内に溶断することが望ましいとされるが、本実施形態に係るヒューズワイヤ61に適用された(D)は、適切な電流溶断時間を示した。
【0060】
また、溶断温度の実験では、本実施形態に係るヒューズワイヤ61に適用された(D)が340℃、(E)が330℃でそれぞれ溶断した。(D)は、たとえばタンタルの発火温度(たとえば400℃)より低く、固体電解コンデンサA1の実装温度(たとえば240〜260℃)より高い、適切な溶断温度を示した。
【0061】
さらに、製造工程時においてワイヤ切れやワイヤ流れなどが生じた数量を調べる実験では、(B)で1000個中5個、(C)で1000個中350個のワイヤ切れなどが生じた。ヒューズワイヤ61に適用された(D)は、ワイヤ切れやワイヤ流れなどが皆無であった。
【0062】
このように、本実施形態のヒューズワイヤ61に適用された(D)は、適切な溶断時間で溶断することが確認できた。また、回路基板に実装される際の固体電解コンデンサA1の実装温度では、ヒューズワイヤ61は溶断することはなく、固体電解コンデンサA1が正常に機能しうる温度において、不必要にヒューズワイヤ61が溶断することもなく、ヒューズワイヤ61がヒューズとして正常に機能することが確認された。さらに、製造工程においてワイヤ切れやワイヤ流れなどが生じないことが確認された。
【0063】
さらに、本願出願人が追加して行った実験について、表2を参照して説明する。
【0064】
【表2】
【0065】
Auからなるヒューズワイヤ61は、ワイヤ径がφ38、φ20であると、ワイヤ切れの発生頻度が顕著に増加した。これに対し、Au−Sn系のヒューズワイヤ61は、電流および温度のいずれが上昇した場合においても適切に溶断している。その一方で、ワイヤ径がφ20の場合にワイヤ切れが発生しているだけであり、その他の条件ではワイヤ切れは発生していない。このことから、Au−Sn系のヒューズワイヤ61は、過電流防止と高温防止の両方の目的のヒューズとして適切に機能しうる。
【0066】
Zn−Al系のヒューズワイヤ61は、過電流によって比較的短時間で溶断する傾向を示した。このことから、Zn−Al系のヒューズワイヤ61は、過電流防止のヒューズとして好適に機能する。
【0067】
Sn−Ag−Cu系、Sn−Cu−Ni系、Sn−Sb系のヒューズワイヤ61は、いずれも過電流によって比較的短時間で溶断する傾向を示した。また、比較的低い温度で溶断している。これにより、Sn−Ag−Cu系、Sn−Cu−Ni系、Sn−Sb系のヒューズワイヤ61は、製造工程において晒される温度が比較的低い場合に、過電流防止および高温防止の目的のヒューズとして機能しうる。
【0068】
図4は、ファーストボンディング部61aの直径Dと、ファーストボンディング部61aの接合強度Stとの関係を示している。同図に示されているように、直径Dが大きくなるほど接合強度Stは高まる。一方、図5には、直径Dと、ワイヤ切れなどの不良発生頻度Erとの関係を示している。直径Dが200〜300μmの範囲においては、不良発生頻度Erが0である。この範囲においては、図4に示すように、接合強度Stは200〜500kgf程度の値をとっている。したがって、直径Dを200〜300μmとした構成を採用することにより、接合強度Stを適切な大きさとするとともに、不良発生頻度Erを低下させることができる。
【0069】
図6は、ファーストボンディング部61aの高さTと不良発生頻度Erとの関係を示している。本図から理解されるように、高さTが30〜70μmの範囲においては、不良発生頻度Erは0である。このことから、高さTを30〜70μmとした構成を採用することにより、不良発生頻度Erを好適に低下させることができる。
【0070】
図7〜図25は、本発明に係る固体電解コンデンサの他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0071】
図7は、本発明の第2実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA2は、陽極導通部材4および陰極導通部材5の構成が上述した第1実施形態の固体電解コンデンサA1と異なっている。本実施形態においては、陽極導通部材4は、薄板部44と、補助部45とによって構成されている。薄板部44は、xy平面に広がる平板状に形成されている。補助部45は、x方向に延びた略直方体形状に形成されている。補助部45は、陽極ワイヤ2を支持するためのものである。補助部45の上端面には、陽極ワイヤ2がたとえば抵抗溶接あるいはレーザ溶接により接合されている。
【0072】
陰極導通部材5は、薄板部54と、立設部55とによって構成されている。薄板部54は、xy平面に広がっており、凹部を有している。立設部55は、薄板部54の凹部からz方向に起立した長板状に形成されている。立設部55は、コンデンサ素子1の端面と平行に配された面55aを有している。立設部55の面55aには、ヒューズワイヤ61が接合されている。ヒューズワイヤ61は、棒状に形成され、その他端は、コンデンサ素子1の導電体層14に接合されている。
【0073】
立設部55は、ヒューズワイヤ61の他端が接合される導電体層14の接合面の近傍に配されている。面55aは、上記接合面と直交する方向に広がる直交面とされている。ヒューズワイヤ61は、棒状とされており、大きく湾曲する部分を有していない。これにより、ヒューズワイヤ61は、より単純な形状を維持した状態でかつより短い距離で、導電体層14と面55aとを接続することができる。
【0074】
図8および図9は、固体電解コンデンサA2の製造方法の一部を示す図であり、特に、コンデンサ素子1と陽極導通部材4および陰極導通部材5とを接合する場合の一例を示す図である。この製造工程においては、陽極導通部材4を構成する部分となる薄板部44および補助部45と、陰極導通部材5の薄板部54および立設部55となる部分54’,55’を有する部材5Aとを用意する。薄板部44、補助部45および部材5Aは、たとえばCuメッキされた42アロイなどのNi−Fe合金からなるプレートに対して打ち抜きおよびプレス加工を施す、あるいはエッチング処理を施すことによって形成される。
【0075】
まず、薄板部44の表面に、x方向に延びるように補助部45を配置し接合する。次いで、補助部45の上端面に、コンデンサ素子1の陽極ワイヤ2をたとえば抵抗溶接あるいはレーザ溶接により接合する。この場合、図示していないが、コンデンサ素子1の下部には、コンデンサ素子1を安定して支持するための台座が配置されていてもよい。
【0076】
次に、薄板部54となる部分54’に対して、立設部55の幅および長さと一致するように2本の切り込みC1を入れる。次いで、立設部55となる部分55’の一端近傍の位置に、ヒューズワイヤ61の一端をボールボンディングによって接合する。この場合、ヒューズワイヤ61を、立設部55となる部分55’の面55aに対して法線方向に起立するように形成する。
【0077】
次に、図9に示すように、立設部55となる部分55’の根元部分を、ヒューズワイヤ61の他端がコンデンサ素子1の導電体層14に当接するまでたとえば金型(図略)を用いて折り曲げる。そして、ヒューズワイヤ61の他端付近にたとえばAgペーストを用いて接合部68(図7参照)を形成し、ヒューズワイヤ61の他端と導電体層14とを接合する。この場合、ヒューズワイヤ61の他端と導電体層14との接合部分は、陰極導通部材5寄りであることが望ましい。
【0078】
その後、図9に示す切断線C2に沿って薄板部54となる部材54’を切断することにより、薄板部54を形成する。そして、コンデンサ素子1を覆う樹脂パッケージ3の形成を経て、図7に示す固体電解コンデンサA2を得る。
【0079】
このように、本実施形態によれば、陽極導通部材4および陰極導通部材5の構成を、より簡素化することができ、製造工程の短縮化および固体電解コンデンサA2の小型化を図ることができる。また、ヒューズワイヤ61は、棒状に形成されているため、第1実施形態のヒューズワイヤ61に比べその製作が容易であり、たとえばキャピラリ内でワイヤ自体が破損することを抑制することができる。また、ヒューズワイヤ61の長さを比較的短くすることが可能であり、材料の削減化を図ることができる。
【0080】
たとえば、上記実施形態においては、ヒューズワイヤ61の一端と陰極導通部材5(または5A)との接合は、ボールボンディングによって行われたが、ボールボンディングに代えて、たとえばシザースボンディングといったその他の熱圧着により接合する方法、スポット溶接により接合する方法、あるいはウェッジボンディングにより接合する方法などが適用可能である。
【0081】
さらに、たとえば図10に示すように、固体電解コンデンサA1の変形例として、ヒューズワイヤ61を、端部が陰極導通部材5の平板部51の長手方向に沿うように屈曲された構成としてもよい。この屈曲させた部分61bを平板部51の表面に接合させる。この方法によっても、比較的少ない面積でヒューズワイヤ61と平板部51とを接合させることができる。
【0082】
図11および図12は、本発明の第3実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA3は、陽極導通部材4の連結部42および陰極導通部材5の連結部52の一部ずつが、樹脂パッケージ3から突出している点が、上述した固体電解コンデンサA1と異なっている。連結部42および連結部52は、樹脂パッケージ3からy方向に突出し、屈曲された部分を経由してz方向下方に向かっている。本実施形態の陽極導通部材4は、側板部46を有している。連結部42は側板部46に繋がっている。側板部46の下端は、薄板部43に繋がっている。また、陰極導通部材5は、側板部56を有している。連結部52は側板部56に繋がっている。側板部56の下端は、薄板部53に繋がっている。
【0083】
図13は、固体電解コンデンサA3の製造方法の一例における一工程を示している。たとえば平板を打ち抜き加工することにより形成した部材4A,5Aを用意する。部材4Aは、平板部41、連結部42、側板部46、および薄板部43を有している。部材5Aは、平板部51、連結部52、側板部56、および薄板部53を有している。コンデンサ素子1およびワイヤ61の接合を行った後に、樹脂パッケージ3を形成する。この後に、連結部42,52を略直角に折り曲げ、さらに部材4A,5Aを折り曲げ線L1に沿って折り曲げる。これにより、固体電解コンデンサA3が得られる。
【0084】
本実施形態によれば、樹脂パッケージ3から露出した側板部46,56にハンダフィレットを形成することが可能であり、固体電解コンデンサA3の実装強度を高めることができる。また。樹脂パッケージ3を形成した後に、比較的断面サイズが小である連結部42,52を折り曲げる加工は、比較的容易に行うことができる。
【0085】
図14は、本発明の第4実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA4は、端面31を有する点が上述したいずれの実施形態とも異なっている。固体電解コンデンサA4のy方向両端には、互いに平行である端面31が形成されている。図中左方の端面31は、樹脂パッケージ3の表面の一部と、陽極導通部材4の補助部45および薄板部44の表面の一部と、によって構成されている。図中右方の端面31は、樹脂パッケージ3の表面の一部によって構成されている。
【0086】
薄板部44には、厚肉部44aと薄肉部44bとが形成されている。厚肉部44aは、補助部45が接合されており、薄板部44の厚さ方向視(z方向視)においてコンデンサ素子1とは重なっていない。薄肉部44bは、厚肉部44aの半分程度の厚さとされており、z方向視においてコンデンサ素子1と重なっている。
【0087】
薄板部54には、厚肉部54aと薄肉部54bとが形成されている。厚肉部54aは、z方向視においてコンデンサ素子1とは重なっていない。薄肉部54bは、厚肉部54aの半分程度の厚さとされており、z方向視においてコンデンサ素子1と重なっている。
【0088】
図15は、固体電解コンデンサA4の製造方法の一例を示している。本図から理解されるとおり、この製造方法においては、まず上述した固体電解コンデンサA2に類似した中間品を作成する。そして、この中間品を切断線C3に沿って切断する。図中左方の切断線C3は、補助部45および薄板部44を通っている。
【0089】
このような実施形態によれば、固体電解コンデンサA4のy方向寸法をより縮小することが可能である。また、補助部45の露出した部分にハンダフィレットを形成することができる。また、薄肉部44b,54bを設けることにより、コンデンサ素子1を相対的に下方に配置することが可能であり、固体電解コンデンサA4のz方向寸法をより縮小させることができる。
【0090】
図16および図17は、本発明の第5実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA5は、ヒューズワイヤ61が陽極ワイヤ2と陽極導通部材4とを接続している点が、上述した実施形態と異なっている。
【0091】
本実施形態においては、ヒューズワイヤ61は陽極ワイヤ2と補助部45とに、たとえば抵抗溶接あるいはレーザ溶接によって接合されている。一方、コンデンサ素子1と陰極導通部材5とは、たとえばAgペースト15によって接合されている。固体電解コンデンサA5もまた、固体電解コンデンサA4と同様に端面31を有している。なお、図17においては、樹脂パッケージ3およびAgペースト15を省略している。
【0092】
図18は、固体電解コンデンサA5の製造方法の一例を示している。本図から理解されるように、ヒューズワイヤ61の接合、樹脂パッケージ3の形成を経た後に、切断線C4に沿って中間品を切断する。これにより、図16に示す端面31が形成される。
【0093】
このような実施形態によっても、ヒューズワイヤ61にヒューズ機能を適切に発揮させることができる。また、陽極ワイヤ2側にヒューズワイヤ61を配置することにより、ヒューズワイヤ61を覆うために樹脂パッケージ3が大型化することを回避することが可能である。これは、固体電解コンデンサA5のさらなる小型化に有利である。
【0094】
図19は、本発明の第6実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA6は、2つのヒューズワイヤ61を備える点が、上述した実施形態と異なっている。図中左方のヒューズワイヤ61は、陽極ワイヤ2と陽極導通部材4とを接続しており、図中右方のヒューズワイヤ61は、導電体層14と陰極導通部材5とを接続している。たとえば、図中左方のヒューズワイヤ61の材質として、Zn−Al系合金を選択し、図中右方のヒューズワイヤ61としてAu−Sn系合金を選択する。これにより、図中左方のヒューズワイヤ61は、電流ヒューズとして機能し、図中右方のヒューズワイヤ61は温度ヒューズとして機能する。
【0095】
特に、図中左方のヒューズワイヤ61はコンデンサ素子1に近接しているため、コンデンサ素子1からの温度が伝わりやすい。これは、コンデンサ素子1が意図せず高温となったときに、即座に溶断することによりさらなる温度上昇を未然に防ぎやすいという利点がある。
【0096】
図20は、本発明の第7実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA7は、本発明におけるヒューズ機能を発揮する導体として、ヒューズリボン62を備える点が上述した実施形態と異なっている。なお、本図においては、樹脂パッケージ3を省略している。ヒューズリボン62は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなる薄い帯状である。本実施形態においては、ヒューズリボン62は、幅が200μm程度、厚さが20μm程度とされている。ヒューズリボン62は、コンデンサ素子1と陰極導通部材5とを接続している。このような実施形態によっても、ヒューズリボン62にヒューズ機能を適切に発揮させつつ、固体電解コンデンサA7の小型化を図ることができる。特に、ヒューズリボン62は、薄いため、固体電解コンデンサA7の小型化に適している。
【0097】
図21は、本発明の第8実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA8は、ヒューズリボン62の構成が上述した固体電解コンデンサA7と異なっている。本実施形態においては、ヒューズリボン62は、コンデンサ素子1の上面と陰極導通部材5とに接合されており、全体として斜めに配置されている。このような構成によれば、コンデンサ素子1と陰極導通部材5との配置を変更することなく、ヒューズリボン62の長さを固体電解コンデンサA7の場合よりも長くすることができる。これは、ヒューズリボン62の抵抗値の調整に役立つ。
【0098】
図22は、本発明の第9実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA9は、本発明におけるヒューズ機能を発揮する導体として、ヒューズビーズ63を備えている。ヒューズビーズ63は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなり、球状とされている。ヒューズビーズ63は、コンデンサ素子1の導電体層14と陰極導通部材5とを接続している。このような実施形態によっても、固体電解コンデンサA9にヒューズ機能を適切に具備させることができる。
【0099】
図23は、本発明の第10実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA10は、ヒューズビーズ63が陽極ワイヤ2と陽極導通部材4とを接続している点が、上述した固体電解コンデンサA9と異なっている。このような実施形態によっても、固体電解コンデンサA10にヒューズ機能を適切に具備させることができる。
【0100】
図24は、本発明の第11実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA11は、基板7を備える点が上述したいずれの実施形態とも異なっている。基板7は、絶縁基材71、陽極パターン72、中間パターン73、陰極パターン74、スルーホール75,76、陽極電極パターン77、および陰極電極パターン78を有する。絶縁基材71は、たとえばエポキシ樹脂からなり、略板状である。陽極パターン72、中間パターン73、および陰極パターン74は、絶縁基材71の表面に形成されており、陽極電極パターン77および陰極電極パターン78は、絶縁基材71の裏面に形成されている。陽極パターン72、中間パターン73、陰極パターン74、陽極電極パターン77、および陰極電極パターン78は、たとえばAu−Niメッキ層からなる。
【0101】
陽極パターン72は、絶縁基材71の幅方向中央付近に形成されている。本実施形態の陽極ワイヤ2は、コンデンサ素子1の図中下端付近から突出している。陽極パターン72には、陽極ワイヤ2およびヒューズワイヤ61がAgペースト16によって接合されている。中間パターン73には、ヒューズワイヤ61がAgペースト17によって接合されている。スルーホール75は、絶縁基材7を貫通しており、中間パターン73と陽極電極パターン77とを導通させている。陽極電極パターン77は、固体電解コンデンサA11の実装に用いられる。
【0102】
陰極パターン74は、絶縁基材71の表面の長手方向におけるほぼ半分の領域を覆うように形成されている。陰極パターン74には、図示しないAgペーストによってコンデンサ素子1の導電体層14が接合されている。スルーホール76は、絶縁基材71を貫通しており、陰極パターン74と陰極電極パターン78とを導通させている。陰極電極パターン78は、固体電解コンデンサA11の実装に用いられる。
【0103】
このような実施形態によれば、固体電解コンデンサA11の小型化を図ることが可能であり、特に固体電解コンデンサA11の薄型化に有利である。ヒューズワイヤ61は、たとえばワイヤボンディングの手法によって形成する必要がなく、陽極パターン72と中間パターン73とを接続するに足る長さとすれば十分である。これは、固体電解コンデンサA11の小型化に適している。
【0104】
図25は、本発明の第12実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA12は、絶縁基材71に厚肉部71aが形成されている点が上述した固体電解コンデンサA11と異なっている。本実施形態においては、絶縁基材71の長手方向一端寄りに厚肉部71aが形成されている。また、陽極パターン72および中間パターン73が、厚肉部71aに形成されている。陽極ワイヤ2は、コンデンサ素子1の幅方向および高さ方向中央から突出しており、その下端が厚肉部71aに形成された陽極パターン72と同じ高さとされている。このような実施形態によっても、固体電解コンデンサA12の小型化を図ることができる。
【0105】
本発明に係る固体電解コンデンサおよびその製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る固体電解コンデンサおよびその製造方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0106】
A1〜A12 固体電解コンデンサ
1 コンデンサ素子
11 多孔質焼結体
12 誘電体層
13 固体電解質層
14 導電体層
15,16,17 Agペースト
2 陽極ワイヤ
3 樹脂パッケージ
31 端面
4 陽極導通部材
41 平板部
42 連結部
43,44 薄板部
45 補助部
4a 陽極実装端子
46 側板部
5 陰極導通部材
5a 陰極実装端子
51 平板部
52 連結部
53,54 薄板部
55 立設部
56 側板部
61 ヒューズワイヤ(導体)
61a ファーストボンディング部
62 ヒューズリボン(導体)
63 ヒューズビーズ
68 接合部
7 基板
71 絶縁基材
71a 厚肉部
72 陽極パターン
73 中間パターン
74 陰極パターン
75,76 スルーホール
77 陽極電極パターン
78 陰極電極パターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばタンタルまたはニオブからなる多孔質焼結体を備える固体電解コンデンサに関し、特にヒューズを有する固体電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図26は、従来の固体電解コンデンサの一例を示している。同図に示された固体電解コンデンサXは、コンデンサ素子91と、外部接続用電極92,93と、コンデンサ素子91を封止する樹脂パッケージ94とを有している。コンデンサ素子91は、たとえば多孔質焼結体90によって構成され、内部から陽極ワイヤ95が突出している。外部接続用電極92,93は、一部が樹脂パッケージ94内に封止され、残りの部分が樹脂パッケージ94から延出している。外部接続用電極92は、陽極ワイヤ95と接続されている一方、外部接続用電極93は、コンデンサ素子91の表面に形成された内部電極96とワイヤ97を介して電気的に接続されている。
【0003】
この固体電解コンデンサXでは、ワイヤ97がヒューズとしての機能を有している。すなわち、固体電解コンデンサXに過大な電流が流れた場合やコンデンサ素子91の温度が異常に上昇した場合には、ワイヤ97が溶断するように構成されている。これにより、固体電解コンデンサXを含む電気回路に異常動作が発生したり、固体電解コンデンサXが異常過熱したりすることを抑制することができる。
【0004】
ワイヤ97をヒューズとして機能させる場合、コンデンサ素子91の発火温度や固体電解コンデンサXの回路基板に実装する際の実装温度などを考慮して、ワイヤ97の溶融温度を設定する必要がある。たとえばコンデンサ素子91に発火温度が約400℃のタンタルを用い、融点が約260℃のはんだを用いて固体電解コンデンサXを回路基板に実装する場合には、300℃程度で溶断するワイヤ97が用いられる。
【0005】
この溶断条件を満足するワイヤ97の材料としては、たとえばAuなどが用いられる。しかしながら、Auからなるワイヤ97では、上記溶断条件を満足させたい場合には、ワイヤ径がたとえば20〜100μmといった極細のものにする必要があった。このような極細のワイヤ97は、強度が低いため、製造工程時の樹脂パッケージ94をモールドする際に、ワイヤ97の外部接続用電極93に対する接合が外れたり、あるいは製品搬送中にワイヤ97が切断したりすることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−142350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、所望の溶断条件を満足しかつ適切な強度を有する固体電解コンデンサおよびその製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面によって提供される固体電解コンデンサは、弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子と、外部導通部材と、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層と上記外部導通部材とを導通させるとともに、ヒューズとして機能する導体と、を備える固体電解コンデンサであって、上記導体は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなることを特徴としている。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体は、ワイヤによって構成されており、上記ワイヤの直径は、20〜100μmである。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体のうち、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層、あるいは上記外部導通部材に接合されている部分であるファーストボンディング部は、接合部分の直径が200〜300μmである。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記ファーストボンディング部の高さは、30〜70μmである。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体は、Au−Sn系合金からなり、かつAuとSnとの重量比率は、95:5〜65:35または45:55〜25:75の範囲とされる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージをさらに備えており、上記外部導通部材は、上記樹脂パッケージから露出しており、かつ実装端子として用いられる薄板部と、上記樹脂パッケージに覆われており、かつ上記導体が接合された平板部と、上記薄板部および上記平板部を連結する連結部と、を有している。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記薄板部と上記平板部とは、互いに平行である。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記連結部は、上記薄板部および上記平板部よりも、上記薄板部および上記平板部を連結する方向と直角である断面寸法が小であり、かつ折り曲げられている。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記連結部は、上記樹脂パッケージによって覆われている。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記連結部の少なくとも一部は、上記樹脂パッケージから露出している。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記薄板部は、その厚さ方向視において上記コンデンサ素子と重なる薄肉部と、上記コンデンサ素子と重ならない厚肉部と、を有している。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージをさらに備えており、上記外部導通部材は、上記樹脂パッケージから露出しており、かつ実装端子として用いられる薄板部と、上記薄板部に対して直角である立設部とを有しており、上記導体の端部が上記立設部に接合されている。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記薄板部は、その厚さ方向視において上記コンデンサ素子と重なる薄肉部と、上記コンデンサ素子と重ならない厚肉部と、を有している。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージをさらに備えており、上記陽極ワイヤが延びる方向に対して交差しており、かつ上記陽極ワイヤに導通する上記外部導通部材の表面の一部と上記樹脂パッケージの表面の一部とが面一に繋がることにより形成された端面を有する。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記陽極ワイヤと上記外部導通部材とは、上記導体を介して導通している。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記外部導通部材は、上記樹脂パッケージから露出しており、かつ実装端子として用いられる薄板部を有しており、上記薄板部は、その厚さ方向視において上記コンデンサ素子と重なる薄肉部と、上記コンデンサ素子と重ならない厚肉部と、を有している。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体は、帯状である。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体は、球状である。
【0026】
本発明の第2の側面によって提供される固体電解コンデンサは、弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子と、外部導通部材と、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層と上記外部導通部材とを電気的に接続するとともに、ヒューズとして機能する導体と、を備える固体電解コンデンサであって、板状の絶縁基材と、上記絶縁基材の表面に形成された陽極パターンおよびこの陽極パターンから離間した中間パターンと、上記絶縁基材の裏面に形成された陽極電極パターンと、上記中間パターンおよび上記陽極電極パターンをつなぐ陽極スルーホールと、を有する基板をさらに備えており、上記陽極パターンには、上記陽極ワイヤが接合されており、上記陽極パターンと上記中間パターンとは、上記導体によって接続されていることを特徴としている。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記陽極ワイヤは、上記絶縁基材の厚さ方向において上記絶縁基板寄りに配置されている。
【0028】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記基板は、上記絶縁基材の表面に形成された陰極パターンと、上記絶縁基材の裏面に形成された陰極電極パターンと、上記陰極パターンおよび上記陰極電極パターンとをつなぐ陰極スルーホールと、をさらに備えており、上記陰極パターンは、上記固体電解質層と導通している。
【0029】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなる。
【0030】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記多孔質焼結体は、タンタルまたはニオブからなる。
【0031】
本発明の第3の側面によって提供される固体電解コンデンサの製造方法は、ヒューズ機能を発揮しうる導体の一部を、外部導通部材に対してボールボンディングを用いて接合する工程と、上記導体の他の部分を、弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子の、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層に導通させる工程と、を有することを特徴としている。
【0032】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体の一端を上記外部導通部材に接合した後、上記導体を棒状に起立させる工程と、上記導体が接合された上記外部導通部材を折り曲げる工程と、上記外部導通部材が折り曲げられた状態で上記導体の他の部分を上記固体電解質層を覆う上記導電体層に接合する工程と、を有する。
【0033】
本発明の第4の側面によって提供される固体電解コンデンサの製造方法は、ヒューズ機能を発揮しうる導体の一部を、外部導通部材に対して接合する工程と、上記導体の他の部分を、弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子の、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層に導通させる工程と、上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージを形成する工程と、上記樹脂パッケージと上記外部導通部材とを一括して切断する工程と、を有することを特徴としている。
【0034】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導体は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなる。
【0035】
このような構成によれば、たとえばAuからなる上記導体に比べ、上記導体強度を高めることができる。そのため、上記導体は、たとえば20〜100μmといった極細のものであっても、製造工程時において上記導体が上記外部導通部材から外れたり、あるいは上記導体が切断したりすることを抑制することができる。また、上記導体は、環境問題に対応した鉛フリー化に寄与しうる。
【0036】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】ヒューズワイヤのファーストボンディング部を示す要部拡大断面図である。
【図4】ファーストボンディング部の直径と接合強度との関係を示すグラフである。
【図5】ファーストボンディング部の直径と不良発生頻度との関係を示すグラフである。
【図6】ファーストボンディング部の高さと不良発生頻度との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に基づく固体電解コンデンサの製造方法の一例を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態に基づく固体電解コンデンサの製造方法の一例を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1実施形態に基づく固体電解コンデンサの変形例を示す要部斜視図である。
【図11】本発明の第3実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿う断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に基づく固体電解コンデンサの製造方法の一例を示す平面図である。
【図14】本発明の第4実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図15】本発明の第4実施形態に基づく固体電解コンデンサの製造方法の一例を示す断面図である。
【図16】本発明の第5実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図17】本発明の第5実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図18】本発明の第5実施形態に基づく固体電解コンデンサの製造方法の一例を示す断面図である。
【図19】本発明の第6実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図20】本発明の第7実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図21】本発明の第8実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図22】本発明の第9実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図23】本発明の第10実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図24】本発明の第11実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図25】本発明の第12実施形態に基づく固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図26】従来の固体電解コンデンサの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0039】
図1および図2は、本発明の第1実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA1は、コンデンサ素子1、陽極ワイヤ2、樹脂パッケージ3、陽極導通部材4、陰極導通部材5、およびヒューズワイヤ61を備えている。固体電解コンデンサA1は、たとえば電気回路においてノイズを除去したり、電源の供給を補助したりといった用途に用いられる。なお、図1においては、樹脂パッケージ3を想像線で示している。固体電解コンデンサA1の全体寸法は、長さ2.0mm程度、幅1.25mm程度、高さ1.1mm程度である。
【0040】
コンデンサ素子1は、多孔質焼結体11、誘電体層12、固体電解質層13、および導電体層14によって構成されている。多孔質焼結体11は、たとえばタンタルまたはニオブなどの弁作用金属からなり、内部に多数の細孔が形成された構造とされている。多孔質焼結体11の製作は、上記弁作用金属の微粉末を加圧成形した後に、この成形体に対して焼結処理を施すことによってなされる。この焼結処理により、弁作用金属の微粉末どうしが焼結し、多数の細孔を有する多孔質焼結体11が形成される。
【0041】
誘電体層12は、多孔質焼結体11の表面に形成されており、弁作用金属の酸化物からなる。誘電体層12の形成は、たとえば多孔質焼結体11をリン酸水溶液の化成液に漬けた状態で陽極酸化処理を施すことによってなされる。
【0042】
固体電解質層13は、誘電体層12の表面を覆うように積層されており、多孔質焼結体11の上記細孔を埋めるように形成されている。固体電解質層13は、たとえば二酸化マンガンや導電性ポリマからなる。この固体電解コンデンサA1では、固体電解質層13と誘電体層12との界面に電荷が蓄蔵される。
【0043】
導電体層14は、たとえばグラファイト層およびAg層(ともに図示せず)が積層された構造とされており、固体電解質層13を覆うように形成されている。
【0044】
陽極ワイヤ2は、多孔質焼結体11と同様に、たとえばタンタルまたはニオブなどの弁作用金属からなり、多孔質焼結体11の内部から図1においてy方向に突出している。上述した弁作用金属の微粉末を加圧成形する際に、この微粉末内に陽極ワイヤ2の一部を進入させておく。この状態で加圧成形することにより、多孔質焼結体11と陽極ワイヤ2とが一体品とされる。
【0045】
樹脂パッケージ3は、たとえばエポキシ樹脂からなり、多孔質焼結体11を保護するためのものである。樹脂パッケージ3は、たとえばエポキシ樹脂材料を用いてモールド成形される。
【0046】
陽極導通部材4は、たとえばCuメッキされた42アロイなどのNi−Fe合金からなり、平板部41、連結部42、および薄板部43によって構成されている。平板部41は、図1においてx方向に延びた平板状に形成されている。平板部41は、陽極ワイヤ2が接合される部分である。連結部42は、平板部41のx方向に延びる一端面から延出しており、互いに平行とされた1対の帯状要素からなる。この構成により、連結部42は、平板部41や薄板部43よりも断面サイズが小さい。連結部42は、略直角に折り曲げられており、先端が薄板部43に繋がっている。薄板部43は、平板状であり、平板部41と平行に配置されている。薄板部43の裏面は、樹脂パッケージ3から露出している。この薄板部43の露出面は、固体電解コンデンサA1を回路基板(図略)などに面実装するために用いられる陽極実装端子4aとされている。
【0047】
陰極導通部材5は、陽極導通部材4と同様に、たとえばCuメッキされた42アロイなどのNi−Fe合金からなり、平板部51、連結部52、および薄板部53によって構成されている。平板部51は、x方向に延びた平板状に形成されている。平板部51は、ヒューズワイヤ61が接合される部分である。連結部52は、平板部51のx方向に延びる一端面から延出しており、互いに平行とされた一対の帯状要素からなる。この構成により、連結部52は、平板部51や薄板部53よりも断面サイズが小さい。連結部52は、略直角に折り曲げられており、先端が薄板部53に繋がっている。薄板部53は、平板状であり、平板部51と平行に配置されている。薄板部53の裏面は、樹脂パッケージ3から露出している。この薄板部53の露出面は、固体電解コンデンサA1を回路基板(図略)などに面実装するために用いられる陰極実装端子5aとされている。
【0048】
ヒューズワイヤ61は、コンデンサ素子1の導電体層14と陰極導通部材5とを接続している。ヒューズワイヤ61は、固体電解コンデンサA1に過大な電流が流れたり、コンデンサ素子1が過剰に発熱したりした場合に溶断し、固体電解コンデンサA1に流れる電流を遮断する、いわゆるヒューズとしての機能を有するものである。ヒューズワイヤ61は、たとえばAu−Sn系合金からなり、その直径がたとえば20〜100μmとされている。本実施形態におけるAu−Sn系合金は、Auに対して1〜90重量%(好ましくは5〜35重量%または55〜75重量%)のSnを含有させたものである。なお、ヒューズワイヤ61は、Auの表面にSnのめっきが施されたものであってもよい。
【0049】
ヒューズワイヤ61は、その一端が陰極導通部材5の平板部51と接合され、その接合方法としてはいわゆるボールボンディングが用いられている。ボールボンディングは、内部がたとえばN2−H2ガス雰囲気とされたシューター内で行われる。加熱されたキャピラリに支持されたAu−Sn系合金ワイヤをスパークさせることにより、その一端をボール状とする。このボール状に形成された部分を陰極導通部材5の平板部51に熱圧着することにより接合される。この熱圧着された部分は、ファーストボンディング部61aと呼ばれる。
【0050】
図3に示すように、ファーストボンディング部61aは、扁平な形状に押しつぶされた部分であり、周縁が若干隆起した略円盤状である。本実施形態においては、ファーストボンディング部61aが平板部51に接合されている部分の直径Dが、200〜300μmとされている。また、ファーストボンディング部61aの平坦な部分の高さTが、30〜70μmとされている。図1および図2に示すように、ヒューズワイヤ61の他端は、たとえばAgペーストを用いた接合部68によってコンデンサ素子1の導電体層14に接合されている。
【0051】
次に、固体電解コンデンサA1の作用について説明する。
【0052】
本実施形態によれば、ヒューズワイヤ61は、Auに対して1〜90重量%のSnを含有させたAu−Sn系合金により構成されているので、たとえばAuからなるヒューズワイヤに比べ、強度の高いヒューズワイヤとすることができる。そのため、ヒューズワイヤ61のワイヤ径は、たとえば20〜100μmといった極細のものであっても、製造工程時において樹脂パッケージ3をモールドする際に、ヒューズワイヤ61と陰極導通部材5との接合が外れたり、あるいは製品搬送中にヒューズワイヤ61が切断したりすることを抑制することができる。また、ヒューズワイヤ61は、Au−Sn系合金により構成されているため、環境問題に対応した鉛フリー化を実現することができる。
【0053】
ヒューズワイヤ61には、上記したように、たとえば20〜100μmといった極細のものを用いることができるので、たとえばボールボンディング時においてキャピラリによるAu−Sn系合金ワイヤの引き回しを容易にすることができる。また、固体電解コンデンサA1の小型化に有利である。
【0054】
また、ヒューズワイヤ61は、上記した組成比のAu−Sn系合金によって構成されているので、多孔質焼結体11を構成するたとえばタンタルの発火温度(たとえば400℃)より低く、固体電解コンデンサA1の回路基板(図略)に実装する際の実装温度(たとえば240〜260℃)より高い溶融温度で溶融させることができる。つまり、回路基板に実装される際にリフロー炉における温度がたとえば260℃以下の場合に、ヒューズワイヤ61は溶断することがなく、固体電解コンデンサA1が正常に機能しうる温度において、不必要にヒューズワイヤ61は溶断することもない。
【0055】
ヒューズワイヤ61の一端と陰極導通部材5との接合は、ボールボンディングによる方法で行われている。これにより、陰極導通部材5の表面において狭い面積でヒューズワイヤ61を接合することが可能であり、小型の固体電解コンデンサの製作に有利である。
【0056】
次に、上記した作用を確認すべく、本願出願人が行った実験について、表1を参照して説明する。この実験は、ヒューズワイヤを構成する材料がそれぞれ異なる複数種類の固体電解コンデンサを用意し、各固体電解コンデンサの電流溶断時間、溶断温度、および製造工程時においてワイヤ切れなどが生じた数量を調べたものである。
【0057】
【表1】
【0058】
ヒューズワイヤの材料としては、表1に示すように、(A)直径60μm程度のAu、(B)直径38μm程度のAu、(C)直径20μm程度のAu、(D)直径60μm程度で約18重量%のSnを含むAu−Sn系合金、および(E)直径150μm程度のPb−Sn−Ag系合金からそれぞれなる5種類を用意した。ここで、(D)が本実施形態にかかるヒューズワイヤ61に適用されたものである。
【0059】
電流溶断時間の実験では、たとえば2Aの電流と5Aの電流とをそれぞれ各固体電解コンデンサに流したときに、ヒューズワイヤが溶断するまでの所要時間を調べた。その結果、2Aの電流を流したとき、(A)、(B)では切断が生じず、(C)〜(E)では200msec〜1secの間で溶断した。また、5Aの電流を流したとき、(A)〜(E)では40msec〜1.5secの間で溶断した。ヒューズワイヤとしては、たとえば2〜5Aの電流で1秒以内に溶断することが望ましいとされるが、本実施形態に係るヒューズワイヤ61に適用された(D)は、適切な電流溶断時間を示した。
【0060】
また、溶断温度の実験では、本実施形態に係るヒューズワイヤ61に適用された(D)が340℃、(E)が330℃でそれぞれ溶断した。(D)は、たとえばタンタルの発火温度(たとえば400℃)より低く、固体電解コンデンサA1の実装温度(たとえば240〜260℃)より高い、適切な溶断温度を示した。
【0061】
さらに、製造工程時においてワイヤ切れやワイヤ流れなどが生じた数量を調べる実験では、(B)で1000個中5個、(C)で1000個中350個のワイヤ切れなどが生じた。ヒューズワイヤ61に適用された(D)は、ワイヤ切れやワイヤ流れなどが皆無であった。
【0062】
このように、本実施形態のヒューズワイヤ61に適用された(D)は、適切な溶断時間で溶断することが確認できた。また、回路基板に実装される際の固体電解コンデンサA1の実装温度では、ヒューズワイヤ61は溶断することはなく、固体電解コンデンサA1が正常に機能しうる温度において、不必要にヒューズワイヤ61が溶断することもなく、ヒューズワイヤ61がヒューズとして正常に機能することが確認された。さらに、製造工程においてワイヤ切れやワイヤ流れなどが生じないことが確認された。
【0063】
さらに、本願出願人が追加して行った実験について、表2を参照して説明する。
【0064】
【表2】
【0065】
Auからなるヒューズワイヤ61は、ワイヤ径がφ38、φ20であると、ワイヤ切れの発生頻度が顕著に増加した。これに対し、Au−Sn系のヒューズワイヤ61は、電流および温度のいずれが上昇した場合においても適切に溶断している。その一方で、ワイヤ径がφ20の場合にワイヤ切れが発生しているだけであり、その他の条件ではワイヤ切れは発生していない。このことから、Au−Sn系のヒューズワイヤ61は、過電流防止と高温防止の両方の目的のヒューズとして適切に機能しうる。
【0066】
Zn−Al系のヒューズワイヤ61は、過電流によって比較的短時間で溶断する傾向を示した。このことから、Zn−Al系のヒューズワイヤ61は、過電流防止のヒューズとして好適に機能する。
【0067】
Sn−Ag−Cu系、Sn−Cu−Ni系、Sn−Sb系のヒューズワイヤ61は、いずれも過電流によって比較的短時間で溶断する傾向を示した。また、比較的低い温度で溶断している。これにより、Sn−Ag−Cu系、Sn−Cu−Ni系、Sn−Sb系のヒューズワイヤ61は、製造工程において晒される温度が比較的低い場合に、過電流防止および高温防止の目的のヒューズとして機能しうる。
【0068】
図4は、ファーストボンディング部61aの直径Dと、ファーストボンディング部61aの接合強度Stとの関係を示している。同図に示されているように、直径Dが大きくなるほど接合強度Stは高まる。一方、図5には、直径Dと、ワイヤ切れなどの不良発生頻度Erとの関係を示している。直径Dが200〜300μmの範囲においては、不良発生頻度Erが0である。この範囲においては、図4に示すように、接合強度Stは200〜500kgf程度の値をとっている。したがって、直径Dを200〜300μmとした構成を採用することにより、接合強度Stを適切な大きさとするとともに、不良発生頻度Erを低下させることができる。
【0069】
図6は、ファーストボンディング部61aの高さTと不良発生頻度Erとの関係を示している。本図から理解されるように、高さTが30〜70μmの範囲においては、不良発生頻度Erは0である。このことから、高さTを30〜70μmとした構成を採用することにより、不良発生頻度Erを好適に低下させることができる。
【0070】
図7〜図25は、本発明に係る固体電解コンデンサの他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0071】
図7は、本発明の第2実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA2は、陽極導通部材4および陰極導通部材5の構成が上述した第1実施形態の固体電解コンデンサA1と異なっている。本実施形態においては、陽極導通部材4は、薄板部44と、補助部45とによって構成されている。薄板部44は、xy平面に広がる平板状に形成されている。補助部45は、x方向に延びた略直方体形状に形成されている。補助部45は、陽極ワイヤ2を支持するためのものである。補助部45の上端面には、陽極ワイヤ2がたとえば抵抗溶接あるいはレーザ溶接により接合されている。
【0072】
陰極導通部材5は、薄板部54と、立設部55とによって構成されている。薄板部54は、xy平面に広がっており、凹部を有している。立設部55は、薄板部54の凹部からz方向に起立した長板状に形成されている。立設部55は、コンデンサ素子1の端面と平行に配された面55aを有している。立設部55の面55aには、ヒューズワイヤ61が接合されている。ヒューズワイヤ61は、棒状に形成され、その他端は、コンデンサ素子1の導電体層14に接合されている。
【0073】
立設部55は、ヒューズワイヤ61の他端が接合される導電体層14の接合面の近傍に配されている。面55aは、上記接合面と直交する方向に広がる直交面とされている。ヒューズワイヤ61は、棒状とされており、大きく湾曲する部分を有していない。これにより、ヒューズワイヤ61は、より単純な形状を維持した状態でかつより短い距離で、導電体層14と面55aとを接続することができる。
【0074】
図8および図9は、固体電解コンデンサA2の製造方法の一部を示す図であり、特に、コンデンサ素子1と陽極導通部材4および陰極導通部材5とを接合する場合の一例を示す図である。この製造工程においては、陽極導通部材4を構成する部分となる薄板部44および補助部45と、陰極導通部材5の薄板部54および立設部55となる部分54’,55’を有する部材5Aとを用意する。薄板部44、補助部45および部材5Aは、たとえばCuメッキされた42アロイなどのNi−Fe合金からなるプレートに対して打ち抜きおよびプレス加工を施す、あるいはエッチング処理を施すことによって形成される。
【0075】
まず、薄板部44の表面に、x方向に延びるように補助部45を配置し接合する。次いで、補助部45の上端面に、コンデンサ素子1の陽極ワイヤ2をたとえば抵抗溶接あるいはレーザ溶接により接合する。この場合、図示していないが、コンデンサ素子1の下部には、コンデンサ素子1を安定して支持するための台座が配置されていてもよい。
【0076】
次に、薄板部54となる部分54’に対して、立設部55の幅および長さと一致するように2本の切り込みC1を入れる。次いで、立設部55となる部分55’の一端近傍の位置に、ヒューズワイヤ61の一端をボールボンディングによって接合する。この場合、ヒューズワイヤ61を、立設部55となる部分55’の面55aに対して法線方向に起立するように形成する。
【0077】
次に、図9に示すように、立設部55となる部分55’の根元部分を、ヒューズワイヤ61の他端がコンデンサ素子1の導電体層14に当接するまでたとえば金型(図略)を用いて折り曲げる。そして、ヒューズワイヤ61の他端付近にたとえばAgペーストを用いて接合部68(図7参照)を形成し、ヒューズワイヤ61の他端と導電体層14とを接合する。この場合、ヒューズワイヤ61の他端と導電体層14との接合部分は、陰極導通部材5寄りであることが望ましい。
【0078】
その後、図9に示す切断線C2に沿って薄板部54となる部材54’を切断することにより、薄板部54を形成する。そして、コンデンサ素子1を覆う樹脂パッケージ3の形成を経て、図7に示す固体電解コンデンサA2を得る。
【0079】
このように、本実施形態によれば、陽極導通部材4および陰極導通部材5の構成を、より簡素化することができ、製造工程の短縮化および固体電解コンデンサA2の小型化を図ることができる。また、ヒューズワイヤ61は、棒状に形成されているため、第1実施形態のヒューズワイヤ61に比べその製作が容易であり、たとえばキャピラリ内でワイヤ自体が破損することを抑制することができる。また、ヒューズワイヤ61の長さを比較的短くすることが可能であり、材料の削減化を図ることができる。
【0080】
たとえば、上記実施形態においては、ヒューズワイヤ61の一端と陰極導通部材5(または5A)との接合は、ボールボンディングによって行われたが、ボールボンディングに代えて、たとえばシザースボンディングといったその他の熱圧着により接合する方法、スポット溶接により接合する方法、あるいはウェッジボンディングにより接合する方法などが適用可能である。
【0081】
さらに、たとえば図10に示すように、固体電解コンデンサA1の変形例として、ヒューズワイヤ61を、端部が陰極導通部材5の平板部51の長手方向に沿うように屈曲された構成としてもよい。この屈曲させた部分61bを平板部51の表面に接合させる。この方法によっても、比較的少ない面積でヒューズワイヤ61と平板部51とを接合させることができる。
【0082】
図11および図12は、本発明の第3実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA3は、陽極導通部材4の連結部42および陰極導通部材5の連結部52の一部ずつが、樹脂パッケージ3から突出している点が、上述した固体電解コンデンサA1と異なっている。連結部42および連結部52は、樹脂パッケージ3からy方向に突出し、屈曲された部分を経由してz方向下方に向かっている。本実施形態の陽極導通部材4は、側板部46を有している。連結部42は側板部46に繋がっている。側板部46の下端は、薄板部43に繋がっている。また、陰極導通部材5は、側板部56を有している。連結部52は側板部56に繋がっている。側板部56の下端は、薄板部53に繋がっている。
【0083】
図13は、固体電解コンデンサA3の製造方法の一例における一工程を示している。たとえば平板を打ち抜き加工することにより形成した部材4A,5Aを用意する。部材4Aは、平板部41、連結部42、側板部46、および薄板部43を有している。部材5Aは、平板部51、連結部52、側板部56、および薄板部53を有している。コンデンサ素子1およびワイヤ61の接合を行った後に、樹脂パッケージ3を形成する。この後に、連結部42,52を略直角に折り曲げ、さらに部材4A,5Aを折り曲げ線L1に沿って折り曲げる。これにより、固体電解コンデンサA3が得られる。
【0084】
本実施形態によれば、樹脂パッケージ3から露出した側板部46,56にハンダフィレットを形成することが可能であり、固体電解コンデンサA3の実装強度を高めることができる。また。樹脂パッケージ3を形成した後に、比較的断面サイズが小である連結部42,52を折り曲げる加工は、比較的容易に行うことができる。
【0085】
図14は、本発明の第4実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA4は、端面31を有する点が上述したいずれの実施形態とも異なっている。固体電解コンデンサA4のy方向両端には、互いに平行である端面31が形成されている。図中左方の端面31は、樹脂パッケージ3の表面の一部と、陽極導通部材4の補助部45および薄板部44の表面の一部と、によって構成されている。図中右方の端面31は、樹脂パッケージ3の表面の一部によって構成されている。
【0086】
薄板部44には、厚肉部44aと薄肉部44bとが形成されている。厚肉部44aは、補助部45が接合されており、薄板部44の厚さ方向視(z方向視)においてコンデンサ素子1とは重なっていない。薄肉部44bは、厚肉部44aの半分程度の厚さとされており、z方向視においてコンデンサ素子1と重なっている。
【0087】
薄板部54には、厚肉部54aと薄肉部54bとが形成されている。厚肉部54aは、z方向視においてコンデンサ素子1とは重なっていない。薄肉部54bは、厚肉部54aの半分程度の厚さとされており、z方向視においてコンデンサ素子1と重なっている。
【0088】
図15は、固体電解コンデンサA4の製造方法の一例を示している。本図から理解されるとおり、この製造方法においては、まず上述した固体電解コンデンサA2に類似した中間品を作成する。そして、この中間品を切断線C3に沿って切断する。図中左方の切断線C3は、補助部45および薄板部44を通っている。
【0089】
このような実施形態によれば、固体電解コンデンサA4のy方向寸法をより縮小することが可能である。また、補助部45の露出した部分にハンダフィレットを形成することができる。また、薄肉部44b,54bを設けることにより、コンデンサ素子1を相対的に下方に配置することが可能であり、固体電解コンデンサA4のz方向寸法をより縮小させることができる。
【0090】
図16および図17は、本発明の第5実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA5は、ヒューズワイヤ61が陽極ワイヤ2と陽極導通部材4とを接続している点が、上述した実施形態と異なっている。
【0091】
本実施形態においては、ヒューズワイヤ61は陽極ワイヤ2と補助部45とに、たとえば抵抗溶接あるいはレーザ溶接によって接合されている。一方、コンデンサ素子1と陰極導通部材5とは、たとえばAgペースト15によって接合されている。固体電解コンデンサA5もまた、固体電解コンデンサA4と同様に端面31を有している。なお、図17においては、樹脂パッケージ3およびAgペースト15を省略している。
【0092】
図18は、固体電解コンデンサA5の製造方法の一例を示している。本図から理解されるように、ヒューズワイヤ61の接合、樹脂パッケージ3の形成を経た後に、切断線C4に沿って中間品を切断する。これにより、図16に示す端面31が形成される。
【0093】
このような実施形態によっても、ヒューズワイヤ61にヒューズ機能を適切に発揮させることができる。また、陽極ワイヤ2側にヒューズワイヤ61を配置することにより、ヒューズワイヤ61を覆うために樹脂パッケージ3が大型化することを回避することが可能である。これは、固体電解コンデンサA5のさらなる小型化に有利である。
【0094】
図19は、本発明の第6実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA6は、2つのヒューズワイヤ61を備える点が、上述した実施形態と異なっている。図中左方のヒューズワイヤ61は、陽極ワイヤ2と陽極導通部材4とを接続しており、図中右方のヒューズワイヤ61は、導電体層14と陰極導通部材5とを接続している。たとえば、図中左方のヒューズワイヤ61の材質として、Zn−Al系合金を選択し、図中右方のヒューズワイヤ61としてAu−Sn系合金を選択する。これにより、図中左方のヒューズワイヤ61は、電流ヒューズとして機能し、図中右方のヒューズワイヤ61は温度ヒューズとして機能する。
【0095】
特に、図中左方のヒューズワイヤ61はコンデンサ素子1に近接しているため、コンデンサ素子1からの温度が伝わりやすい。これは、コンデンサ素子1が意図せず高温となったときに、即座に溶断することによりさらなる温度上昇を未然に防ぎやすいという利点がある。
【0096】
図20は、本発明の第7実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA7は、本発明におけるヒューズ機能を発揮する導体として、ヒューズリボン62を備える点が上述した実施形態と異なっている。なお、本図においては、樹脂パッケージ3を省略している。ヒューズリボン62は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなる薄い帯状である。本実施形態においては、ヒューズリボン62は、幅が200μm程度、厚さが20μm程度とされている。ヒューズリボン62は、コンデンサ素子1と陰極導通部材5とを接続している。このような実施形態によっても、ヒューズリボン62にヒューズ機能を適切に発揮させつつ、固体電解コンデンサA7の小型化を図ることができる。特に、ヒューズリボン62は、薄いため、固体電解コンデンサA7の小型化に適している。
【0097】
図21は、本発明の第8実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA8は、ヒューズリボン62の構成が上述した固体電解コンデンサA7と異なっている。本実施形態においては、ヒューズリボン62は、コンデンサ素子1の上面と陰極導通部材5とに接合されており、全体として斜めに配置されている。このような構成によれば、コンデンサ素子1と陰極導通部材5との配置を変更することなく、ヒューズリボン62の長さを固体電解コンデンサA7の場合よりも長くすることができる。これは、ヒューズリボン62の抵抗値の調整に役立つ。
【0098】
図22は、本発明の第9実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA9は、本発明におけるヒューズ機能を発揮する導体として、ヒューズビーズ63を備えている。ヒューズビーズ63は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなり、球状とされている。ヒューズビーズ63は、コンデンサ素子1の導電体層14と陰極導通部材5とを接続している。このような実施形態によっても、固体電解コンデンサA9にヒューズ機能を適切に具備させることができる。
【0099】
図23は、本発明の第10実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA10は、ヒューズビーズ63が陽極ワイヤ2と陽極導通部材4とを接続している点が、上述した固体電解コンデンサA9と異なっている。このような実施形態によっても、固体電解コンデンサA10にヒューズ機能を適切に具備させることができる。
【0100】
図24は、本発明の第11実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA11は、基板7を備える点が上述したいずれの実施形態とも異なっている。基板7は、絶縁基材71、陽極パターン72、中間パターン73、陰極パターン74、スルーホール75,76、陽極電極パターン77、および陰極電極パターン78を有する。絶縁基材71は、たとえばエポキシ樹脂からなり、略板状である。陽極パターン72、中間パターン73、および陰極パターン74は、絶縁基材71の表面に形成されており、陽極電極パターン77および陰極電極パターン78は、絶縁基材71の裏面に形成されている。陽極パターン72、中間パターン73、陰極パターン74、陽極電極パターン77、および陰極電極パターン78は、たとえばAu−Niメッキ層からなる。
【0101】
陽極パターン72は、絶縁基材71の幅方向中央付近に形成されている。本実施形態の陽極ワイヤ2は、コンデンサ素子1の図中下端付近から突出している。陽極パターン72には、陽極ワイヤ2およびヒューズワイヤ61がAgペースト16によって接合されている。中間パターン73には、ヒューズワイヤ61がAgペースト17によって接合されている。スルーホール75は、絶縁基材7を貫通しており、中間パターン73と陽極電極パターン77とを導通させている。陽極電極パターン77は、固体電解コンデンサA11の実装に用いられる。
【0102】
陰極パターン74は、絶縁基材71の表面の長手方向におけるほぼ半分の領域を覆うように形成されている。陰極パターン74には、図示しないAgペーストによってコンデンサ素子1の導電体層14が接合されている。スルーホール76は、絶縁基材71を貫通しており、陰極パターン74と陰極電極パターン78とを導通させている。陰極電極パターン78は、固体電解コンデンサA11の実装に用いられる。
【0103】
このような実施形態によれば、固体電解コンデンサA11の小型化を図ることが可能であり、特に固体電解コンデンサA11の薄型化に有利である。ヒューズワイヤ61は、たとえばワイヤボンディングの手法によって形成する必要がなく、陽極パターン72と中間パターン73とを接続するに足る長さとすれば十分である。これは、固体電解コンデンサA11の小型化に適している。
【0104】
図25は、本発明の第12実施形態に基づく固体電解コンデンサを示している。本実施形態の固体電解コンデンサA12は、絶縁基材71に厚肉部71aが形成されている点が上述した固体電解コンデンサA11と異なっている。本実施形態においては、絶縁基材71の長手方向一端寄りに厚肉部71aが形成されている。また、陽極パターン72および中間パターン73が、厚肉部71aに形成されている。陽極ワイヤ2は、コンデンサ素子1の幅方向および高さ方向中央から突出しており、その下端が厚肉部71aに形成された陽極パターン72と同じ高さとされている。このような実施形態によっても、固体電解コンデンサA12の小型化を図ることができる。
【0105】
本発明に係る固体電解コンデンサおよびその製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る固体電解コンデンサおよびその製造方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0106】
A1〜A12 固体電解コンデンサ
1 コンデンサ素子
11 多孔質焼結体
12 誘電体層
13 固体電解質層
14 導電体層
15,16,17 Agペースト
2 陽極ワイヤ
3 樹脂パッケージ
31 端面
4 陽極導通部材
41 平板部
42 連結部
43,44 薄板部
45 補助部
4a 陽極実装端子
46 側板部
5 陰極導通部材
5a 陰極実装端子
51 平板部
52 連結部
53,54 薄板部
55 立設部
56 側板部
61 ヒューズワイヤ(導体)
61a ファーストボンディング部
62 ヒューズリボン(導体)
63 ヒューズビーズ
68 接合部
7 基板
71 絶縁基材
71a 厚肉部
72 陽極パターン
73 中間パターン
74 陰極パターン
75,76 スルーホール
77 陽極電極パターン
78 陰極電極パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子と、
外部導通部材と、
上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層と上記外部導通部材とを導通させるとともに、ヒューズとして機能する導体と、
を備える固体電解コンデンサであって、
上記導体は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなることを特徴とする、固体電解コンデンサ。
【請求項2】
上記導体は、ワイヤによって構成されており、
上記ワイヤの直径は、20〜100μmである、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
上記導体のうち、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層、あるいは上記外部導通部材に接合されている部分であるファーストボンディング部は、接合部分の直径が200〜300μmである、請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
上記ファーストボンディング部の高さは、30〜70μmである、請求項3に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
上記導体は、Au−Sn系合金からなり、かつAuとSnとの重量比率は、95:5〜65:35または45:55〜25:75の範囲とされる、請求項1ないし4のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージをさらに備えており、
上記外部導通部材は、上記樹脂パッケージから露出しており、かつ実装端子として用いられる薄板部と、上記樹脂パッケージに覆われており、かつ上記導体が接合された平板部と、上記薄板部および上記平板部を連結する連結部と、を有している、請求項1ないし5のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
上記薄板部と上記平板部とは、互いに平行である、請求項6に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
上記連結部は、上記薄板部および上記平板部よりも、上記薄板部および上記平板部を連結する方向と直角である断面寸法が小であり、かつ折り曲げられている、請求項7に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
上記連結部は、上記樹脂パッケージによって覆われている、請求項8に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項10】
上記連結部の少なくとも一部は、上記樹脂パッケージから露出している、請求項8に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項11】
上記薄板部は、その厚さ方向視において上記コンデンサ素子と重なる薄肉部と、上記コンデンサ素子と重ならない厚肉部と、を有している、請求項6ないし10のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項12】
上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージをさらに備えており、
上記外部導通部材は、上記樹脂パッケージから露出しており、かつ実装端子として用いられる薄板部と、上記薄板部に対して直角である立設部とを有しており、
上記導体の端部が上記立設部に接合されている、請求項1ないし5のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項13】
上記薄板部は、その厚さ方向視において上記コンデンサ素子と重なる薄肉部と、上記コンデンサ素子と重ならない厚肉部と、を有している、請求項12に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項14】
上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージをさらに備えており、
上記陽極ワイヤが延びる方向に対して交差しており、かつ上記陽極ワイヤに導通する上記外部導通部材の表面の一部と上記樹脂パッケージの表面の一部とが面一に繋がることにより形成された端面を有する、請求項1ないし5のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項15】
上記陽極ワイヤと上記外部導通部材とは、上記導体を介して導通している、請求項14に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項16】
上記外部導通部材は、上記樹脂パッケージから露出しており、かつ実装端子として用いられる薄板部を有しており、
上記薄板部は、その厚さ方向視において上記コンデンサ素子と重なる薄肉部と、上記コンデンサ素子と重ならない厚肉部と、を有している、請求項14または15に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項17】
上記導体は、帯状である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項18】
上記導体は、球状である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項19】
弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子と、
外部導通部材と、
上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層と上記外部導通部材とを電気的に接続するとともに、ヒューズとして機能する導体と、
を備える固体電解コンデンサであって、
板状の絶縁基材と、上記絶縁基材の表面に形成された陽極パターンおよびこの陽極パターンから離間した中間パターンと、上記絶縁基材の裏面に形成された陽極電極パターンと、上記中間パターンおよび上記陽極電極パターンをつなぐ陽極スルーホールと、を有する基板をさらに備えており、
上記陽極パターンには、上記陽極ワイヤが接合されており、
上記陽極パターンと上記中間パターンとは、上記導体によって接続されていることを特徴とする、固体電解コンデンサ。
【請求項20】
上記陽極ワイヤは、上記絶縁基材の厚さ方向において上記絶縁基板寄りに配置されている、請求項19に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項21】
上記基板は、上記絶縁基材の表面に形成された陰極パターンと、上記絶縁基材の裏面に形成された陰極電極パターンと、上記陰極パターンおよび上記陰極電極パターンとをつなぐ陰極スルーホールと、をさらに備えており、
上記陰極パターンは、上記固体電解質層と導通している、請求項19または20に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項22】
上記導体は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなる、請求項19ないし21のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項23】
上記多孔質焼結体は、タンタルまたはニオブからなる、請求項1ないし22のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項24】
ヒューズ機能を発揮しうる導体の一部を、外部導通部材に対してボールボンディングを用いて接合する工程と、
上記導体の他の部分を、弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子の、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層に導通させる工程と、を有することを特徴とする、固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項25】
上記導体の一端を上記外部導通部材に接合した後、上記導体を棒状に起立させる工程と、
上記導体が接合された上記外部導通部材を折り曲げる工程と、
上記外部導通部材が折り曲げられた状態で上記導体の他の部分を上記固体電解質層を覆う上記導電体層に接合する工程と、
を有する、請求項24に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項26】
ヒューズ機能を発揮しうる導体の一部を、外部導通部材に対して接合する工程と、
上記導体の他の部分を、弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子の、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層に導通させる工程と、
上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージを形成する工程と、
上記樹脂パッケージと上記外部導通部材とを一括して切断する工程と、
を有することを特徴とする、固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項27】
上記導体は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなる、請求項24ないし26のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項1】
弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子と、
外部導通部材と、
上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層と上記外部導通部材とを導通させるとともに、ヒューズとして機能する導体と、
を備える固体電解コンデンサであって、
上記導体は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなることを特徴とする、固体電解コンデンサ。
【請求項2】
上記導体は、ワイヤによって構成されており、
上記ワイヤの直径は、20〜100μmである、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
上記導体のうち、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層、あるいは上記外部導通部材に接合されている部分であるファーストボンディング部は、接合部分の直径が200〜300μmである、請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
上記ファーストボンディング部の高さは、30〜70μmである、請求項3に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
上記導体は、Au−Sn系合金からなり、かつAuとSnとの重量比率は、95:5〜65:35または45:55〜25:75の範囲とされる、請求項1ないし4のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージをさらに備えており、
上記外部導通部材は、上記樹脂パッケージから露出しており、かつ実装端子として用いられる薄板部と、上記樹脂パッケージに覆われており、かつ上記導体が接合された平板部と、上記薄板部および上記平板部を連結する連結部と、を有している、請求項1ないし5のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
上記薄板部と上記平板部とは、互いに平行である、請求項6に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
上記連結部は、上記薄板部および上記平板部よりも、上記薄板部および上記平板部を連結する方向と直角である断面寸法が小であり、かつ折り曲げられている、請求項7に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
上記連結部は、上記樹脂パッケージによって覆われている、請求項8に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項10】
上記連結部の少なくとも一部は、上記樹脂パッケージから露出している、請求項8に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項11】
上記薄板部は、その厚さ方向視において上記コンデンサ素子と重なる薄肉部と、上記コンデンサ素子と重ならない厚肉部と、を有している、請求項6ないし10のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項12】
上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージをさらに備えており、
上記外部導通部材は、上記樹脂パッケージから露出しており、かつ実装端子として用いられる薄板部と、上記薄板部に対して直角である立設部とを有しており、
上記導体の端部が上記立設部に接合されている、請求項1ないし5のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項13】
上記薄板部は、その厚さ方向視において上記コンデンサ素子と重なる薄肉部と、上記コンデンサ素子と重ならない厚肉部と、を有している、請求項12に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項14】
上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージをさらに備えており、
上記陽極ワイヤが延びる方向に対して交差しており、かつ上記陽極ワイヤに導通する上記外部導通部材の表面の一部と上記樹脂パッケージの表面の一部とが面一に繋がることにより形成された端面を有する、請求項1ないし5のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項15】
上記陽極ワイヤと上記外部導通部材とは、上記導体を介して導通している、請求項14に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項16】
上記外部導通部材は、上記樹脂パッケージから露出しており、かつ実装端子として用いられる薄板部を有しており、
上記薄板部は、その厚さ方向視において上記コンデンサ素子と重なる薄肉部と、上記コンデンサ素子と重ならない厚肉部と、を有している、請求項14または15に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項17】
上記導体は、帯状である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項18】
上記導体は、球状である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項19】
弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子と、
外部導通部材と、
上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層と上記外部導通部材とを電気的に接続するとともに、ヒューズとして機能する導体と、
を備える固体電解コンデンサであって、
板状の絶縁基材と、上記絶縁基材の表面に形成された陽極パターンおよびこの陽極パターンから離間した中間パターンと、上記絶縁基材の裏面に形成された陽極電極パターンと、上記中間パターンおよび上記陽極電極パターンをつなぐ陽極スルーホールと、を有する基板をさらに備えており、
上記陽極パターンには、上記陽極ワイヤが接合されており、
上記陽極パターンと上記中間パターンとは、上記導体によって接続されていることを特徴とする、固体電解コンデンサ。
【請求項20】
上記陽極ワイヤは、上記絶縁基材の厚さ方向において上記絶縁基板寄りに配置されている、請求項19に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項21】
上記基板は、上記絶縁基材の表面に形成された陰極パターンと、上記絶縁基材の裏面に形成された陰極電極パターンと、上記陰極パターンおよび上記陰極電極パターンとをつなぐ陰極スルーホールと、をさらに備えており、
上記陰極パターンは、上記固体電解質層と導通している、請求項19または20に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項22】
上記導体は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなる、請求項19ないし21のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項23】
上記多孔質焼結体は、タンタルまたはニオブからなる、請求項1ないし22のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項24】
ヒューズ機能を発揮しうる導体の一部を、外部導通部材に対してボールボンディングを用いて接合する工程と、
上記導体の他の部分を、弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子の、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層に導通させる工程と、を有することを特徴とする、固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項25】
上記導体の一端を上記外部導通部材に接合した後、上記導体を棒状に起立させる工程と、
上記導体が接合された上記外部導通部材を折り曲げる工程と、
上記外部導通部材が折り曲げられた状態で上記導体の他の部分を上記固体電解質層を覆う上記導電体層に接合する工程と、
を有する、請求項24に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項26】
ヒューズ機能を発揮しうる導体の一部を、外部導通部材に対して接合する工程と、
上記導体の他の部分を、弁作用金属からなる多孔質焼結体、この多孔質焼結体から突出する陽極ワイヤ、この多孔質焼結体を覆う誘電体層および固体電解質層、を有するコンデンサ素子の、上記陽極ワイヤまたは上記固体電解質層に導通させる工程と、
上記コンデンサ素子を覆う樹脂パッケージを形成する工程と、
上記樹脂パッケージと上記外部導通部材とを一括して切断する工程と、
を有することを特徴とする、固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項27】
上記導体は、Au−Su系合金、Zn−Al系合金、Zn−Al系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Cu−Ni系合金、Sn−Sb系合金の少なくともいずれかを含む金属からなる、請求項24ないし26のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
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【図20】
【図21】
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【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2010−251716(P2010−251716A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44856(P2010−44856)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
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