説明

固定リベット

【課題】器具なしで容易に取付け、取外しが可能で、固定される要素及びサポートの厚さにかかわらず、高い機械的強度を有するという利点を持つ金属リベットを提供する。
【解決手段】保持体と、軸の縦方向に離れて配置された少なくとも第一の切欠き及び第二の切欠きを備えた長い軸を持つ駆動ピンとを含む、取外し可能な金属製固定リベットである。保持体は、軸をガイドするための第一のガイドタブ対及び駆動ピンを保持体に最後まで押込んだところで確実にロッキングすることを保証する、一連の留め金突起が配置された弾性のある第二のタブ対を持つ、切断、折り曲げされた金属板からなる。第一のガイドタブ対には、駆動ピンの取付け前の上方位置において軸の第一の切欠きと、又はロッキング降下位置において第二の切欠きのいずれかと協働する1以上のばね板を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、留め金(ラッチ)手段を備える保持体と、その留め金手段を機能が作動するロッキング位置に移動させる駆動ピンと、を含む固定リベットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の固定リベットは、1又はそれ以上の要素、特にそれぞれに孔を持つパネル又は板の形状をしたものを迅速に組立てることができる。
【0003】
文献FR2852639及びEP1473449には、組立て品をロックするためにねじ込むセントラルピンを含むプラスチックリベットが記載されている。取外しは、ピンを引っ張るか回転することによりそれが持ち上がり、リベットを引抜くことができる。取外しは、リベットが円形の穴に取付けられ、回転作用がピンではなくリベット全体に作用する場合に問題となりうる。後者の場合、リベット自身が回転し、取外しが不可能となる。
【特許文献1】FR2852639
【特許文献2】EP1473449
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなプラスチックリベットが、例えば車両エンジン下部の保護障壁を固定するような、高応力の環境下に設置されるような場合、プラスチック製のロッキングピンの存在は適切な機械的強度を保証できず、短期間のうちに疲労して破壊の危険性がある。
【0005】
金属製リベット(複数)もあり、それらはサポートの裏にひだを付けて保持ビードを形成する特殊なプライヤにより取付けられる。ビードは材料を不可逆的に変形して得られるので、リベットを再利用するために取外すことはできない。リベットを引抜くためには、頭部をパワードリルで破壊する必要がある。そして取外したリベットは捨てなければならない。
【0006】
本発明の目的は、器具なしで容易に取付け、取外しが可能で、固定される要素及びサポートの厚さにかかわらず、高い機械的強度を有するという利点を持つ金属リベットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るリベットは、
駆動ピンは、軸に沿って縦方向に配置された少なくとも第一の切欠きと第二の切欠きを備えた長い軸を有し、
保持体は、切断し折り曲げられた金属板からなり、軸をガイドする第一のガイドタブ対と、
駆動ピンを胴体に最後まで押込んだ時(降下位置)に確実にロッキングすることを保証する、一連の留め金突起が設置された弾性のある第二のタブ対とを有する、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の望ましい実施形態によれば、第一のガイドタブ対は、軸上において、ピンの取付け前(上方)位置にある第一の切欠き(ノッチ)又はピンのロッキング降下位置にある第二の切欠き(ノッチ)と協働する1以上のばね板を備える。第二の留め金タブ対は第一のガイドタブ対よりも長く、互いに相手の方に向かって後方に折れ曲がり、その留め金タブがピンの差込みに伴って拡開するようにV字形の駆動領域を形成している。
【0009】
本発明に係る金属リベットは、ピンが降下した(押込まれた)ロッキング(降下)位置にある時に、良好な機械的強度と高い引抜き抵抗を得ることを可能にしている。リベットの取付けは、器具を必要とせず、サポートと固定する要素の厚さは変更可能である。金属リベットの取外しと引抜きは、ピンを開錠(アンロッキング)し、持ち上げて行う。
【0010】
他の利点や特徴は、非限定的な実施例として提示され、及び添付図に示された、本発明の実施形態についての以下の詳細な説明によってさらに明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図面を参照すると、金属固定リベット10は、駆動ピン(以下「ピン」とも略称する)11と、1以上の要素を組立てるためにピン11が挿入される保持体12とからなる。
【0012】
ピン11(図2A及び2B)は、円形断面の幅広い頭部13と、それにつながる長い垂直軸14を含む。頭部13の円環形底面15は、取外すときに道具を用いてピン11を持ち上げる駆動面の役を果たす。軸14は実質的に四角形の断面を持ち、対向する2つの平行面に配置される第一の切欠き(対)16a、16bと第二の切欠き(対)17a、17bを備え、それぞれピン11を上部位置で保持し、下部(下降)位置でロックする役を果たす。第二の切欠き(対)17a、17bはより上方で頭部13のすぐ下部に位置し、第一の切欠き(対)16a、16bはより下方で第二の切欠き(対)17a、17bと端部の間に位置する。4つの各切欠き16a、16b、17a、17bは、ピン11の取付け、取外しの際の摩擦負荷を減少するために、面取りした同一のV字断面形状を持つ。端部は第一の切欠き(対)16a、16bの下部に配置された2つのサポート領域18a、18bを持ち、保持体12と協働するように設計されている。軸14の他の対向する2つの面(対)には、端部のエッジ19a、19bが面取りされている。
【0013】
図3Aから3Dはリベット10の保持体(リテイナ)12である。これは切断、折り曲げした金属板23からできており、その上部には、固定する要素22の表面21に対して保持体12をしっかり安定化させるための、折り曲げられて横方向に向いた小翼(対)20a、20bを含む。保持体12は、ピン11をガイドするための弾性のある第一のガイドタブ対24a、24bと、ピン11が挿入されたときに確実なロックを保証するための一連の留め金突起40をそれぞれに備える第二の弾性のあるタブ対25a、25bをさらに含む。
【0014】
第一のガイドタブ対24a、24bには、その下端部に、軸14の側面を弾性的に押え付けてピン11を縦の挿入方向にその位置で保持する押圧舌状部(対)26a、26bを備える。他に2つのばね板(対)27a、27bが上部からガイドタブ(対)24a、24bの内側に向かって突き出ており、(複数の)切欠き(ノッチ)16a、16b;17a、17bと協働してピン11を異なった位置にロックする。
【0015】
第二のタブ対25a、25bは第一のガイドタブ対24a、24bに比べて長く、その端部28a、28bはお互いにそれぞれに対して背面側に曲げられており、ピン11が押込まれるとタブ25a、25bを拡開する働きをするV字形の駆動領域を形成している。
【0016】
リベット10は、サポート(支持体)29の上で要素22を取外し可能に固定する働きをする。サポート29は、例えば金属材のような剛性物であるか、或いは例えばプラスチックでできた柔軟性のある物質でありうる。金属製の挿入体(インサート)30は柔軟性のあるサポート29の場合に機械的強度を確保するために用いられる。リベット10の突起40が剛体で留められるからである。挿入体30はまた剛性のあるサポート29とともに用いてもよい。例えば、図5から図8までは、固定する要素22とサポート29は板又はパネルの形状で描かれている。
【0017】
図4A及び図4Bによれば、切断し、折り曲げた金属板からなる挿入体30は、サポート29の相補性の形状の穴31に挿入されるように実質上正方形の形をしている。挿入体30は円形の開口部33を設けた底部32と、平行6面体の容器を形成するように直角に配置された4つの長方形の側面34を持つ。各側面34は長方形の開口35を持ち、その中にはサポート29の穴31に挿入体30を固定保持するための、やや外側に曲げられた可撓性の固定タブ36が伸びている。2つの対向する側面34には、弾性のある翼37a、37bが互いに反対方向へ外側に曲げられ、水平方向に対して鋭角dをなして伸びている。挿入体30が穴31に設置された後、偏向領域39の弾性により、2つの弾性のある翼37a、37bがサポート29の異なる厚さに対応可能である。
【0018】
挿入体30の底部32の開口部33は、挿入体の位置をピン11に関連して位置決めする又はその逆の問題を解消するために円形とするのが有利である。保持体12の外部突起40は、ピン11を押込むことにより挿入体30の開口部33の裏側に係止し、第二のタブ対25a、25bを拡開する。
【0019】
固定する要素22のリベット10を挿入する貫通孔38は、例えば断面が円形であるが、保持体12の小翼20a、20bが要素22の表面21に対して支持することができれば他の形状でも良い。
【0020】
サポート29に要素22を組立てるためのリベット10の取付けは以下のように行われる。
【0021】
挿入体30はサポート29が金属でも可塑性のプラスチックでも、その材質によらず使用可能である。挿入体30はサポート29に適合することを可能にするが、その穴31は必ずしもリベットの最適な付着固定のために設計されているわけではない。
【0022】
(挿入体30がない場合)
挿入体30を用いない剛性のあるサポート29の場合、リベット10は、保持体12の中でピン11を取付け前の状態にして、直接使用される(図1)。ピン11は、第一のタブ対24a、24bのばね板27a、27bが、軸14の第一の切欠き(対)16a、16bに係合した後、取付け前の上方の位置(図中の下部ノッチ位置)の状態で配置、固定される。
【0023】
サポート29の穴31は、保持体12の第二の留め金タブ対25a、25bを受入れるような寸法でなければならない。理想的な形状は、保持体12をピン11に関連して位置決めする問題をなくす円形の穴31にすることである。
【0024】
保持体12の留め金タブ25a、25bのV字形の端部28a、28bは、要素22の貫通孔38とサポート29の穴31にリベット10を挿入しやすくする。リベット10は、保持体12の小翼20a、20bが固定される要素22の表面21に達して支持されるまで押込まれる。
【0025】
ピン11を押込み方向に押込むと、ばね板27a、27bが軸14の第一の切欠き16a、16bから開放(係合解除)され、さらに押込むとやや進んだ後、第二の切欠き17a、17bにはまり込む。ピン11はこの時、保持体12の留め金タブ25a、25bを拡開することにより、突起40がサポート29に嵌め込まれ、ロッキング(降下)位置となる。
【0026】
(挿入体30がある場合)
この場合、サポート29の穴31は、挿入体(インサート)30の外形寸法よりもやや大きい四角の形状をしている。一旦挿入体30が穴31に嵌め込まれると、4つの固定タブ36がアンカーの役割を果たすことによってサポート29に固定される。さらに2つの可撓性のある翼37a、37bがあることにより、サポート29の厚さが変わっても対応できる。
【0027】
図7及び図8にリベット10の押込み及びロッキングの機構を図示したが、上述の「挿入体なし」の場合も同様である。ただ1つの違いは、ピン11の下部のロッキング位置において、挿入体30の円形の開口部33の下を把持するのではなく、サポート29の底面を把持する留め金タブ25a、25bの突起40に関してである。
【0028】
留め金タブ25a、25b上に高さ方向に離散的に配置(配列)された突起40によって、固定する要素22は厚さが異なっていても良い。
【0029】
(リベット10の取外し)
図6及び図8はピン11が下部のロッキング位置にあるところであるが、ピン11の頭部13と固定する要素22の上部表面21との間に隙間41がある。隙間41の厚さは、保持体12の小翼20a、20bの厚さと実質同一である。ピン11を取外すには、ねじ回しの先を隙間41に差込み、持ち上げて軸14の第一の切欠き16a、16bからばね板27a、27bを移動させればよい。ばね板27a、27bが、(ピンの)上方位置(図7及び図5)に対応する第二の切欠き17a、17bに嵌るまでピン11を引っ張る。
【0030】
さらに引っ張るとリベット10が完全に引抜かれる。なぜなら、ピン11が上部の開錠された取付け前位置にあるときは、ばね板27a、27bを第二の切欠き17a、17bから引き離すために必要な力のほうがリベット10全体を引抜くために必要な力より大きいからである。
【0031】
本発明に係る金属リベット10の利点は以下のとおりである。
−ピン11がロッキング(降下)位置にあるときは良好な機械的強度と大きな引抜き抵抗を持つ。
−リベットを道具を使わず容易に取外しできる。
−サポート29と固定する要素22は1以上の寸法が適用可能。
−ピン11を解ロック(開錠)したあと金属リベット10を取外し、引抜き。
−リベットは何度も再使用可能。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る金属リベットの、(駆動)ピンが保持体の取付け前上方位置にある場合の模式的斜視図である。
【図2A】ピンの立面図である。
【図2B】ピンの斜視図である。
【図3A】ピンを除いた保持体の斜視図である。
【図3B】図3Aの保持体の側面図である。
【図3C】図3Aの保持体の正面図である。
【図3D】図3Aの保持体の切断した金属板の折り曲げ前の展開図である。
【図4A】挿入体の立面図である。
【図4B】挿入体の斜視図である。
【図5】組立て装置の分解図である。
【図6】リベットが所定の位置に配置された組立て装置である。
【図7】ピンが取付け前の上方位置にある図6の断面図である。
【図8】ピンがロッキング降下位置にある図6の断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10 リベット
11 駆動ピン
12 保持体(リテイナ)
13 頭部
14 垂直軸
15 円環形底面
16a、16b 第一の切欠き(対)(ノッチ)
17a、17b 第二の切欠き(対)(ノッチ)
18a、18b サポート領域
19a、19b エッジ
20a、20b 小翼(対)
21 (要素の)表面
22 要素
24a、24b 弾性的な第一の留め金タブ(ガイドタブ)対
25a、25b 弾性的な第二の留め金タブ(ガイドタブ)対
26a、26b 押圧舌状部
27a、27b ばね板
28a、28b (第二の留め金タブの)端部
29 サポート(支持体)
30 挿入体(インサート)
31 (サポートの)穴
32 (挿入体の)底部
33 (挿入体の底部の)円形の開口部
34 (挿入体の)側面
35 (挿入体の側面の)開口
36 固定タブ
37a、37b 弾性のある翼
38 貫通孔
39 偏向領域
40 突起
41 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
留め金手段を備えた保持体(12)と、該留め金手段を有効なロッキング位置に移動させるように設計された駆動ピン(11)を含む固定リベットであって、
−該駆動ピン(11)は、軸(14)の縦方向に離れて配置された少なくとも第一の切欠き(16a、16b)及び第二の切欠き(17a、17b)を備えた長い軸(14)を有し、
−該保持体(12)は、切断、折り曲げされた金属板からなり、該軸(14)をガイドするための第一のガイドタブ対(24a、24b)及び該駆動ピン(11)を該保持体(12)に最後まで押込んだところで確実にロッキングすることを保証する、一連の留め金突起(40)が配置された弾性のある第二のタブ対(25a、25b)を有する、
ことを特徴とする、固定リベット。
【請求項2】
前記第一のガイドタブ対(24a、24b)には、前記駆動ピン(11)の取付け前の上方位置において前記軸(14)の前記第一の切欠き(16a、16b)と、又はロッキング降下位置において前記第二の切欠き(17a、17b)のいずれかと協働する1以上のばね板(27a、27b)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の固定リベット。
【請求項3】
前記第二の留め金タブ対(25a、25b)は、前記第一のガイドタブ対(24a、24b)より長く、そしてお互いにそれぞれに対して背面側に曲げられており、前記駆動ピン(11)が押込まれると前記留め金タブを拡開する働きをするV字形の駆動領域を形成する端部(28a、28b)を有することを特徴とする、請求項1に記載の固定リベット。
【請求項4】
前記保持体(12)は、前記第二のタブ対(25a、25b)の上部に形成された2つの横方向を向いた小翼(20a、20b)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の固定リベット。
【請求項5】
前記留め金突起(40)は、前記第二のタブ対(25a、25b)の中間部に縦方向に配列していることを特徴とする、請求項1に記載の固定リベット。
【請求項6】
前記第一のガイドタブ対(24a、24b)は、前記ばね板(27a、27b)の反対側に、前記軸(14)を弾性的に押え付けて前記駆動ピン(11)を縦の挿入方向にその位置で保持する押圧舌状部(26a、26b)を備えることを特徴とする、請求項2に記載の固定リベット。
【請求項7】
前記駆動ピン(11)は、前記軸(14)よりも大きな断面の頭部(13)を持つことを特徴とする、請求項1に記載の固定リベット。
【請求項8】
前記軸(14)は、断面が四角形であることを特徴とする、請求項7に記載の固定リベット。
【請求項9】
前記第二のタブ対(25a、25b)のロッキングは、金属製の挿入体(30)の底部(32)に設けられた円形の開口部(33)の裏側で行われることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一に記載の固定リベット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−530466(P2008−530466A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555466(P2007−555466)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000050
【国際公開番号】WO2006/087049
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(507046288)アー ライモント エ カンパニュイ (71)
【Fターム(参考)】