説明

固定機構

【課題】 固定機構の改良。
【解決手段】 スナップ14と協働する弾性片17と平行状に副弾性片19を設けたので、押し込みの初期には弾性片17だけが弾性変形する期間があり、これを過ぎると弾性片17と共に副弾性片19も弾性変形する。従って、押し込み初期に要する力を低減でき、大きな力が掛けられて傾いて、弾性片17が折損したり、その弾性力が大きく低下したり、スナップ14が取付口21のエッジで傷ついたりすることはなくなる。板材20に固定された状態では弾性片17及び副弾性片19の弾性反発力が作用し充分な支持力が得られる。外力が作用しても簡単には傾けられないから、そのような傾きによって弾性片17又は副弾性片19が折損したり、弾性力が大きく低下するもない。弾性片17及び副弾性片19の2枚バネによって支持力を得る構成であるから、各々のバネ荷重を低く設定でき長期の使用でもバネ性が低下しにくいので、長期にわたって安定性を維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材に部品を取り付けるための固定機構の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えばクランプや結束帯等を板材に取り付けるための固定機構がある。なお、固定機構は機能部であるクランプ等と一体化されているのが普通である。
そのような固定機構の一例が特開2004−278703号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
この固定機構は、シャーシに部品を保持させるための保持部から下方に向けて突出されたポストと、ポストの先端部に設けられ、外径方向に弾性変形して透孔に嵌合される矢尻型をした一対の嵌合片と、嵌合片の先端部からそれぞれ保持部の両側面に沿って延設され、手操作されたときに一対の嵌合片を内径方向に弾性変形して透孔との嵌合から離脱させるための一対の解除片と、解除片の一部に基端部が連結され先端部がシャーシの表面に当接可能な一対の脚片とを備え、解除片の延設端部は保持部の側面に対して所要の間隔で対峙され、前記嵌合片が前記透孔に嵌合したときに前記保持部の側面に当接するように構成されており、嵌合部に設けた一体の解除片を両外側から指で摘んで嵌合片を内径方向に弾性変形させることでシャーシの透孔から固定具を容易に取り外すことができる。
【特許文献1】特開2004−278703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構造で、脚片の弾性力を強く設計すると、固定機構を取り外すために解除片に加える力が大きくなって取り外し難いものになる。
従って、解除片及び脚片の弾性力を弱く設計しなければならないが、そうすると脚片による支持力が小さくなってぐらつき易くなってしまう。このため、外力によって簡単に大きく傾けられてしまい、それによって脚片が折損したり、折損しないまでも弾性力が大きく低下することがある。
【0005】
また、脚片の弾性力を強く設計すると、固定機構を取付けるためにスナップを透孔に押し込み始めのときに要する力が大きくなり、取付作業が容易でなくなる。更には、この押し込み時の力が脚片の一方側に偏ると大きく傾いて、脚片が折損したり、弾性力が大きく低下したり、スナップが嵌合穴のエッジで傷ついたりすることがある。
【0006】
要するに、特許文献1の構成であると安定性及び信頼性に問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の固定機構は、
基部に立設された支柱部と、
一対の弾性係止片からなり、頭部を前記支柱部に連接された鏃型のスナップと、
各々の前記弾性係止片の可動端部に一端が連接された一対の操作片と
を備え、
板材に設けられた取付口に、該板材の片方の面側から前記スナップを挿通して該スナップを前記板材の他方の面側に突出させると、前記可動端部に設けられた係止部が前記板材の前記取付口の周縁部に係止し、
前記操作片を前記支柱部に接近させる方向の力を及ぼせば、前記可動端部を前記取付口の中心側に弾性変位させて前記係止部の係止を解除可能な
固定機構において、
各々の前記操作片は、
前記弾性係止片の前記可動端部から延出されて前記支柱部に沿って配された中継部と、
前記中継片部から前記支柱部とは反対側に延出された弾性部であり、前記係止部を前記取付口の周縁部に係止させると前記板材の前記片方の面との接触で弾性変形し、その弾性反発力により前記弾性係止片とで前記板材を挟持する弾性部と、
前記弾性部から前記基部側へ延出された側片部とからなり、
前記基部又は前記支柱部から前記弾性部の前記板材とは反対側になる面に沿って延出され、前記弾性部が前記弾性変形していないときは該弾性部とは非接触で、少なくとも前記固定機構が前記板材に固定された状態では前記弾性部によって押圧されて弾性変形する副弾性片を備えた
ことを特徴とする。
【0008】
基部は、例えばクランプや結束帯等の機能部を兼ねたり、基部により固定機構と機能部とが連結される。
この基部に立設された支柱部には、鏃型のスナップの頭部が連接されており、また、スナップの各弾性係止片の可動端部から延出された中継部が支柱部に沿って配されている。このため、板材に設けられた取付口に支柱部及び中継片を挿通してスナップの頭部を板材の裏面側に突出させて、弾性係止片の可動端部に設けられた係止部を取付口の周縁部に係止させることができる。なお、スナップは一対の弾性係止片からなるので、取付口を通る際に弾性係止片の可動端部を支柱部に近づける側に弾性変形して取付口を通る。
【0009】
また、弾性部が中継部から支柱部とは反対側に延出されており、スナップの係止部を取付口の周縁部に係止させた状態では、弾性部が板材との接触で弾性変形し、その弾性反発力により弾性係止片とで板材を挟持する。これにより固定機構が板材に取り付けられる。
【0010】
そして、側片部が弾性部から基部側へ延出されており、この側片部を指などで圧迫して、操作片を支柱部に接近させる方向の力を及ぼせば、弾性係止片の可動端部を取付口の中心側に弾性変位させて係止部の係止を解除可能であるから、操作片をこのように操作して固定機構を板材から取り外すことができる。
【0011】
さらに、基部又は支柱部から弾性部の板材とは反対側になる面に沿って延出された副弾性片が備わっている。
この副弾性片は、弾性部が弾性変形していないときは弾性部とは非接触で、少なくとも固定機構が板材に固定された状態では弾性変形した弾性部によって押圧されて弾性変形する。
【0012】
つまり、固定機構を板材に取り付けるためにスナップを取付口に押し込むと弾性部が板材と接触して弾性変形するのであるが、その初期には副弾性片は弾性部に接触しておらず、ある程度(これは、いわゆる設計事項であり、適宜に設定すればよい。)弾性部が弾性変形してから弾性部が副弾性片に接触する。
【0013】
すなわち、スナップを嵌合穴に押し込み始めたときには弾性部だけが弾性変形し、ある程度押し込んでから副弾性片も弾性変形するので、押し込み初期に要する力を低減できる。従って、大きな力が掛けられて固定機構が傾いて弾性部が折損したり、その弾性力が大きく低下したり、スナップが嵌合穴のエッジで傷ついたりすることはなくなる。
【0014】
副弾性片は、少なくとも固定機構が板材に固定された状態では弾性変形した弾性部によって押圧されて弾性変形するので、固定機構が板材に固定された状態では弾性部及び副弾性片の弾性反発力が作用する。すなわち、弾性部と副弾性片とによって充分な支持力が得られるので、がたつきが防止される。また、外力が作用しても簡単には傾かないから、そのような傾きによって弾性部又は副弾性片が折損したり、弾性力が大きく低下するもない。
【0015】
しかも、弾性部及び副弾性片の2枚バネによって支持力を得る構成であるから、各バネ(弾性部又は副弾性片)のバネ荷重を低く設定できる。従って、長期の使用でも劣化しにくく(バネ性が低下しにくいので)、長期にわたって安定性を維持できる。
【0016】
特に、請求項2記載のように、請求項1記載の固定機構において、前記側片部は、少なくとも前記固定機構が前記板材に固定された状態では前記基部又は該基部に連設された部材に当接する構成にすれば、外力が作用した際に側片部が支えとなるので傾き防止に効果的である。
【0017】
副弾性片と側片部との相対関係は、請求項3又は請求項4のように規定できる。
まず、請求項3記載のように、前記固定機構が前記板材に固定された状態でも、前記副弾性片は前記側片部とは接触しない設定にすれば、固定機構を板材から取り外すために操作片を支柱部に接近させる方向に変位させる際に、副弾性片が抵抗にならない。つまり、固定機構を板材から取り外すための操作が容易になる。
【0018】
一方、請求項4記載のように、前記固定機構が前記板材に固定された状態では、前記副弾性片の先端が前記側片部に接触する設定にすれば、固定機構をいずれかの弾性部側に傾かせる力が作用したときに、副弾性片が側片部と基部又は支柱部との間で筋交いのように機能して、この傾きを確実に防止する。
【0019】
従って、使用目的や使用環境等に応じて、請求項3又は請求項4の構成を採用すればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施例等により発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は下記の実施例等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまに実施できることは言うまでもない。
[実施例1]
この実施例は、電線や光ファイバ等の長尺物を保持するクランプに本発明の固定機構を適用した例である。
【0021】
本実施例のクランプ1は、例えばナイロン、ポリエチレン等の合成樹脂の成形品である。
図1、図2に示すように、クランプ1においては、基部2の一端部に開閉部材3が連接されている。開閉部材3の中間部には肉薄のヒンジ部4が設けられており、このヒンジ部4にて屈伸できる。
【0022】
開閉部材3の先端にはU字状のフック部5が連接されている。フック部5には突起6が設けられ、先端は摘み7とされている。また、フック部5の付近には支え突起8が設けられている。
【0023】
一方、基部2の他端部には連結部材9が立設されており、その先端部にはフック部5を受け入れる収容孔10と、突起6を係止するための係止受11a及び嵌合縁11bが設けられている。
【0024】
このクランプ1は、開閉部材3をヒンジ部4にて屈曲させて、フック部5を収容孔10に挿し込んで突起6を係止受11aに係止させると、基部2、開閉部材3及び連結部材9により閉鎖環が形成されるので、その閉鎖環にて例えば電線を保持できる。
【0025】
また上記の閉鎖環が形成されたときには、嵌合縁11bがフック部5と支え突起8との間に嵌合状にはまり込む。そして、連結部材9を閉鎖環の内側に倒す力が作用した場合には、支え突起8がこの力を受けて連結部材9が倒れるような変形を防止する。これにより、連結部材9を閉鎖環の内側に倒す力が作用したために突起6と係止受11aとの係止が解除されるのを防止する。
【0026】
また、上述の閉鎖環が形成された状態で摘み7に力を加えてフック部5を弾性変形させて、突起6と係止受11aとの係止を解除すればフック部5を収容孔10から抜き取ること、つまり閉鎖環を開放することができる。
【0027】
次に固定機構について説明する。
まず、基部2の下部には支柱部12が立設されている。
この支柱部12の先端部には、一対の弾性係止片13からなる鏃型のスナップ14の頭部が連接されている。従って、弾性係止片13は、その可動端部15を支柱部12に近づける方向に弾性変形でき、その弾性変形から復帰できる。
【0028】
弾性係止片13の可動端部15からは中継片16(中継部に該当)が延出されている。中継片16は、板状の支柱部12の両側に平行状に配されている。
その中継片16の上端部は、それぞれ弾性片17(弾性部に該当)の一方の端部に連接されている。2枚の弾性片17はゆるやかな弓状に湾曲していて、支柱部12を挟んで互いに反対方向に延出されている。
【0029】
その弾性片17の先端部からは、基部2側へ(図1(a)で上向きに)側片18(側片部に該当)が延出されている。側片18の先端部18aは、それぞれ内側(開閉部材3、連結部材9側)に曲がっているが、開閉部材3又は連結部材9に接触してはいない。
【0030】
これら中継片16、弾性片17及び側片18により操作片が構成されている。
また、弾性片17の上側(基部2側)には、基部2から延出された副弾性片19が配されている。副弾性片19は、弾性片17と同様にゆるやかな弓状に湾曲していて、弾性片17の上面に沿って延伸されているが、その先端部19aは(他の部分も)、弾性片17に接触していない。
【0031】
このクランプ1は、図3に示すように、板材(例えば筐体の板金、プリント基板等)20に取り付けられる。板材20にはクランプ1を取り付けるための取付口21が設けられている。
【0032】
クランプ1の取付手順は、公知のスナップを備えたものと同様で、まず板材20の取付口21にスナップ14の頭部を入れて、例えば基部2の上面に力をかけて押し込む。すると、弾性係止片13が取付口21の内周から受ける反力で可動端部15を支柱部12に近づける方向に弾性変形しながらスナップ14が取付口21に進入する。言うまでもないが、スナップ14が取付口21に進入すれば支柱部12も取付口21に進入するし、やがて中継片16も取付口21に進入する。
【0033】
スナップ14が取付口21に進入して弾性片17の先端部が板材20に接触すると、板材20から受ける反力で弾性片17が弾性変形する。
スナップ14の押し込みがさらに進行して弾性片17の弾性変形も進行すると、弾性片17の上面が副弾性片19の先端部19aに接触するので、弾性片17から先端部19aに及ぼされる押圧力によって副弾性片19も弾性変形する。
【0034】
つまり、スナップ14の押し込みの初期には弾性片17だけが弾性変形する期間があり、その期間を過ぎると弾性片17と共に副弾性片19も弾性変形する。なお、副弾性片19の先端部19aが弾性片17の上面に接触しているが、副弾性片19の弾性変形に伴って接触位置は変化する。
【0035】
スナップ14がさらに押し込まれて、可動端部15が取付口21を通過すると、取付口21の内周からの反力が解除されるので、弾性係止片13が弾性復帰して可動端部15の端面を取付口21の周縁部に係止させる。
【0036】
一方、弾性片17及び副弾性片19は、スナップ14の可動端部15が取付口21の周縁部に係止しても弾性変形したままであり、その弾性反発力によりスナップ14の弾性係止片13とで板材20を挟持する。これにより、図3に示すように、クランプ1が板材20に取り付けられる。なお、副弾性片19の先端部19aは、弾性片17と側片18とのコーナー部分にまでは達しておらず、側片18には接触していない。
【0037】
また、2枚の側片18は、弾性片17の弾性変形が図1(a)に示す上に凸の状態から図3に示すように平坦化される変形であるために、基部2側に傾き、その先端部18aを開閉部材3、連結部材9に当接させる。
【0038】
この取付作業に際してスナップ14を取付口21に押し込むときに、はじめに弾性片17だけが弾性変形し、ある程度押し込んでから副弾性片19も弾性変形するので、押し込み初期に要する力を低減できる。従って、大きな力が掛けられて固定機構が傾き、弾性片17が折損したり、その弾性力が大きく低下したり、スナップ14が取付口21のエッジで傷ついたりすることはなくなる。
【0039】
また、クランプ1が板材20に固定された状態では弾性片17及び副弾性片19の弾性反発力が作用し、それによって充分な支持力が得られるので、クランプ1のがたつきが防止される。また、外力が作用しても簡単には傾けられないから、そのような傾きによって弾性片17又は副弾性片19が折損したり、弾性力が大きく低下するもない。
【0040】
しかも、弾性片17及び副弾性片19の2枚バネによって支持力を得る構成であるから、各バネ(弾性片17又は副弾性片19)のバネ荷重を低く設定できる。従って、長期の使用でも劣化しにくく(バネ性が低下しにくいので)、長期にわたって安定性を維持できる。
【0041】
さらに、側片18は、少なくとも固定機構が板材20に固定された状態では、側片18の先端部18aが、基部2に連設された部材である開閉部材3、連結部材9に当接する。このため、クランプ1に外力が作用した際に側片18が支えとなるので、クランプ1の傾き防止に効果的である。
【0042】
一方、板材20に取り付けられたクランプ1を取り外したい場合は、2枚の側片18を両側から押さえて挟みつけるように力を加える。すると、側片18が支柱部12に接近するように変位し、この変位が弾性片17に伝わり、これを支柱部12に向けて変位させる。その弾性片17の変位は中継片16を介してスナップ14の可動端部15に伝わり、これを取付口21の中心側に弾性変位させて、可動端部15を取付口21の周縁部から離れさせる。つまり係止が解除されるから、そのままクランプ1を板材20から引き離すようにして、スナップ14を取付口21から抜き取ればよい。
【0043】
このように2枚の側片18を両側から押さえて挟みつけるように力を加えたときには、開閉部材3、連結部材9に当接している側片18の先端部18aが支点となるので、側片18に加えられた力が、可動端部15を取付口21の中心側に弾性変位させる力として効率よく作用する。
【0044】
また、クランプ1を板材20に取り付けた状態では、副弾性片19は側片18とは接触していない。それだけでなく、副弾性片19の先端部19aと側片18との間には、上述のように側片18が支柱部12に接近変位するのに充分な間隔がある。従って、クランプ1を取り外すために側片18を支柱部12に接近させる方向に変位させる際に、副弾性片19が抵抗にならない。つまり、クランプ1を板材20から取り外すための操作は容易である。
[実施例2]
この実施例は、2枚の板材、例えばプリント基板とシャーシとを適宜の間隔を保って連結するためのスペーサに本発明の固定機構を適用した例である。なお、固定機構の実施例1と共通な部分については、実施例1と同符号を使用して説明を省略する。
【0045】
本実施例のスペーサ31は、例えばナイロン、ポリエチレン等の合成樹脂の成形品である。
図4、図5に示すとおり、このスペーサ31の固定機構は実施例1とほぼ同様であるが、弾性片17と側片18との連接部分に凸部32が設けられている点並びに基部2は矩形の板状で、その側面部分から副弾性片19が延出されている点で異なる。なお、凸部32は、固定機構によってスペーサ31を板材に取り付けるときに(図3参照)板材との接点となるが、実施例1との比較でも分かるように必須ではない。
【0046】
スペーサ31をもう1枚の板材に連結するための構成は、基部2に連接されている。
まず、基部2の上面には中間柱33が立設されており、その上端部には基部2と平行状に接面板34が連接されている。
【0047】
接面板34上には、縦長アーチ状の挿入部35が立設されている。挿入部35の頭部35aは半球状で、その下側に設けられた支持部36からは弾性係止脚37が下向きに延出されている。
【0048】
弾性係止脚37は案内傾斜面38、係止面39及び当接面40とを有する。案内傾斜面38と係止面39とで山状の凸所が形成され、係止面39と当接面40とで凹所が形成されている。
【0049】
このスペーサ31は、実施例1のクランプ1と同様に、第1の板材20(図示は省略、図3参照)に取り付けられる。
また、第2の板材(図示は省略)に設けられた挿入口に挿入部35を頭部35aからさし込むと、案内傾斜面38が挿入口の内周に接触する。弾性係止脚37は挿入口から案内傾斜面38に及ぼされる反力によって弾性変形しながら挿入口に進入するが、凸所の頂部が挿入口を通過すると弾性反発して、凹所に挿入口のエッジがはまり込んだ状態になり、係止面39を挿入口の周縁に係止させる。これにより、第2の板材を接面板34と係止面39とで挟みつけた状態になり、スペーサ31が第2の板材に取り付けられる。
【0050】
このように、スペーサ31を、第1の板材20及び第2の板材に取り付けることで、両板材を連結でき、またそれらの間隔を確保できる。
このスペーサ31を第1の板材20から取り外す作業は実施例1と同様に行える。
【0051】
このスペーサ31も実施例1のクランプと同様に以下の通りの効果を奏する。
即ち、取付作業に際してスナップ14を取付口21に押し込むとき、はじめは弾性片17だけが弾性変形し、ある程度押し込んでから副弾性片19も弾性変形するので、押し込み初期に要する力を低減できる。従って、大きな力が掛けられて固定機構が傾き、弾性片17が折損したり、その弾性力が大きく低下したり、スナップ14が取付口21のエッジで傷ついたりすることはなくなる。
【0052】
また、スペーサ31が板材20に固定された状態では弾性片17及び副弾性片19の弾性反発力が作用し、それによって充分な支持力が得られるので、スペーサ31のがたつきが防止される。また、外力が作用しても簡単には傾けられないから、そのような傾きによって弾性片17又は副弾性片19が折損したり、弾性力が大きく低下するもない。
【0053】
しかも、弾性片17及び副弾性片19の2枚バネによって支持力を得る構成であるから、各バネ(弾性片17又は副弾性片19)のバネ荷重を低く設定できる。従って、長期の使用でも劣化しにくく(バネ性が低下しにくいので)、長期にわたって安定性を維持できる。
【0054】
板材20に取り付けられたスペーサ31を取り外すには、2枚の側片18を両側から押さえて挟みつけるように力を加えると、側片18が支柱部12に接近するように変位し、この変位が弾性片17に伝わり、これを支柱部12に向けて変位させる。その弾性片17の変位は中継片16を介してスナップ14の可動端部15に伝わり、これを取付口21の中心側に弾性変位させて、可動端部15を取付口21の周縁部から離れさせる。つまり係止が解除されるから、そのままスペーサ31を板材20から引き離すようにして、スナップ14を取付口21から抜き取ればよい。
【0055】
また、スペーサ31を板材20に取り付けた状態では、副弾性片19は側片18とは接触していない。それだけでなく、副弾性片19の先端部19aと側片18との間には、側片18が支柱部12に接近変位するのに充分な間隔がある。従って、スペーサ31を取り外すために側片18を支柱部12に接近させる方向に変位させる際に、副弾性片19が抵抗にならない。つまり、スペーサ31を板材20から取り外すための操作は容易である。
[実施例3]
この実施例は、電線等を結束するための結束バンドに本発明の固定機構を適用した例である。なお、実施例1又は2と共通の部分については、実施例1又は2と同符号を用いて説明を省略する。
【0056】
本実施例の結束バンド41は、例えばナイロン、ポリエチレン等の合成樹脂の成形品である。
図6、図7に示すように、結束バンド41においては、基部2には門型部43が連接され、基部2と共にバンド孔44を形成している。門型部43の梁部分からはバンド45が延出され、またバンド孔44の内側に突出する係止爪46が延出されている。
【0057】
バンド45はバンド孔44に挿通させることが可能な幅及び厚みであるが、片面には断面形状が三角形になる凸条47が平行状に多数配列されている。バンド45をバンド孔44に挿通させると、この凸条47のいずれかが係止爪46に係止される。
【0058】
バンド45をバンド孔44に挿通させて輪を作る際に電線等を輪に通しておき、バンド45を引いて輪を締める。すると、バンド45の凸条47のいずれかが係止爪46に係止されて緩むのを防止するから、電線等が結束される。
【0059】
この結束バンド41は、実施例1のクランプ1と同様に板材20(図示略)に取り付けられる。また、結束バンド41を板材20から取り外す作業も実施例1と同様に行える。
この結束バンド41も実施例1のクランプと同様に以下の通りの効果を奏する。
【0060】
即ち、取付作業に際してスナップ14を取付口21に押し込むとき、はじめは弾性片17だけが弾性変形し、ある程度押し込んでから副弾性片19も弾性変形するので、押し込み初期に要する力を低減できる。従って、大きな力が掛けられて固定機構が傾き、弾性片17が折損したり、その弾性力が大きく低下したり、スナップ14が取付口21のエッジで傷ついたりすることはなくなる。
【0061】
また、スペーサ31が板材20に固定された状態では弾性片17及び副弾性片19の弾性反発力が作用し、それによって充分な支持力が得られるので、スペーサ31のがたつきが防止される。また、外力が作用しても簡単には傾けられないから、そのような傾きによって弾性片17又は副弾性片19が折損したり、弾性力が大きく低下するもない。
【0062】
しかも、弾性片17及び副弾性片19の2枚バネによって支持力を得る構成であるから、各バネ(弾性片17又は副弾性片19)のバネ荷重を低く設定できる。従って、長期の使用でも劣化しにくく(バネ性が低下しにくいので)、長期にわたって安定性を維持できる。
【0063】
板材20に取り付けられたスペーサ31を取り外すには、2枚の側片18を両側から押さえて挟みつけるように力を加えると、側片18が支柱部12に接近するように変位し、この変位が弾性片17に伝わり、これを支柱部12に向けて変位させる。その弾性片17の変位は中継片16を介してスナップ14の可動端部15に伝わり、これを取付口21の中心側に弾性変位させて、可動端部15を取付口21の周縁部から離れさせる。つまり係止が解除されるから、そのままスペーサ31を板材20から引き離すようにして、スナップ14を取付口21から抜き取ればよい。
【0064】
また、スペーサ31を板材20に取り付けた状態では、副弾性片19は側片18とは接触していない。それだけでなく、副弾性片19の先端部19aと側片18との間には、側片18が支柱部12に接近変位するのに充分な間隔がある。従って、スペーサ31を取り外すために側片18を支柱部12に接近させる方向に変位させる際に、副弾性片19が抵抗にならない。つまり、スペーサ31を板材20から取り外すための操作は容易である。
[変形例]
実施例1〜3では、固定機構(クランプ1、スペーサ31、結束バンド41)を板材20に取り付けた状態では、副弾性片19は側片18とは接触していないが、これを接触させる構成も可能である。
【0065】
すなわち、図8に示すように、副弾性片19の基部2からの延出長さを長くして、板材20に取り付けられていない状態では、副弾性片19の先端部19aと側片18との間にわずかな間隙ができるようにする。この間隙の寸法は適宜に設定すればよいが、少なくとも固定機構(クランプ1、スペーサ31、結束バンド41)を板材20に取り付けて固定した状態では、副弾性片19の先端部19aが側片18に(又は側片18と弾性片17とのコーナー部に)接触する設定にする。
【0066】
これらの固定機構(クランプ1、スペーサ31、結束バンド41)を板材20に取り付ける作業は実施例1〜3と同様に行われる。そして、取付けに関しては実施例1〜3で説明したと同様の効果がある。
【0067】
板材20に取り付けた後の使用時においても実施例1〜3で説明したと同様の効果があるが、この状態では、副弾性片19の先端部19aが側片18に(又は側片18と弾性片17とのコーナー部に)接触するので、固定機構をいずれかの弾性片17側に傾かせる力が作用したときに、副弾性片19が側片18と基部2との間で筋交いのように機能して、この傾きを確実に防止する。
【0068】
これらの固定機構(クランプ1、スペーサ31、結束バンド41)を板材20から取り外す作業も実施例1〜3と同様に行われる。そして、取外しに関しても実施例1〜3で説明したと同様の効果がある。
【0069】
但し、取り付けた状態では、副弾性片19の先端部19aが側片18に(又は側片18と弾性片17とのコーナー部に)接触しているから、取り外すために側片18を支柱部12に接近させる方向に変位させる際に、副弾性片19が若干は抵抗になる。しかし、板材20から取り外すための操作が阻害される程ではなく、実施例1〜3と同様に容易に取り外しできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施例1のクランプの正面図(a)、平面図(b)、左側面図(c)、底面図(d)、右側面図(e)及び背面図(f)。
【図2】実施例1のクランプの斜視図。
【図3】実施例1のクランプの取付状態の説明図。
【図4】実施例2のスペーサの正面図(a)、平面図(b)、底面図(c)、右側面図(d)及び背面図(e)。
【図5】実施例2のスペーサの斜視図。
【図6】実施例3の結束バンドの正面図(a)、平面図(b)、底面図(c)、右側面図(d)及び背面図(e)。
【図7】実施例3の結束バンドの斜視図。
【図8】変形例のクランプの正面図(a)、スペーサの正面図(b)及び結束バンドの主要部正面図(c)。
【符号の説明】
【0071】
1・・・クランプ、
2・・・基部、
3・・・開閉部材、
5・・・フック部、
9・・・連結部材、
12・・・支柱部、
13・・・弾性係止片、
14・・・スナップ、
15・・・可動端部、
16・・・中継片、
17・・・弾性片、
18・・・側片、
19・・・副弾性片、
20・・・板材、
21・・・取付口、
31・・・スペーサ、
41・・・結束バンド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部に立設された支柱部と、
一対の弾性係止片からなり、頭部を前記支柱部に連接された鏃型のスナップと、
各々の前記弾性係止片の可動端部に一端が連接された一対の操作片と
を備え、
板材に設けられた取付口に、該板材の片方の面側から前記スナップを挿通して該スナップを前記板材の他方の面側に突出させると、前記可動端部に設けられた係止部が前記取付口の周縁部に係止し、
前記操作片を前記支柱部に接近させる方向の力を及ぼせば、前記可動端部を前記取付口の中心側に弾性変位させて前記係止部の係止を解除可能な
固定機構において、
各々の前記操作片は、
前記弾性係止片の前記可動端部から延出されて前記支柱部に沿って配された中継部と、
前記中継片部から前記支柱部とは反対側に延出された弾性部であり、前記係止部を前記取付口の周縁部に係止させると前記板材の前記片方の面との接触で弾性変形し、その弾性反発力により前記弾性係止片とで前記板材を挟持する弾性部と、
前記弾性部から前記基部側へ延出された側片部とからなり、
前記基部又は前記支柱部から前記弾性部の前記板材とは反対側になる面に沿って延出され、前記弾性部が前記弾性変形していないときは該弾性部とは非接触で、少なくとも前記固定機構が前記板材に固定された状態では前記弾性部によって押圧されて弾性変形する副弾性片を備えた
ことを特徴とする固定機構。
【請求項2】
請求項1記載の固定機構において、
前記側片部は、少なくとも前記固定機構が前記板材に固定された状態では前記基部又は該基部に連設された部材に当接する
ことを特徴とする固定機構。
【請求項3】
請求項1又は2記載の固定機構において、
前記固定機構が前記板材に固定された状態でも、前記副弾性片は前記側片部とは接触しない
ことを特徴とする固定機構。
【請求項4】
請求項1又は2記載の固定機構において、
前記固定機構が前記板材に固定された状態では、前記副弾性片の先端が前記側片部に接触する
ことを特徴とする固定機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−113729(P2007−113729A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307171(P2005−307171)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【出願人】(000187242)
【Fターム(参考)】