説明

固定金具付電気ケーブル

【課題】機器に取り付けるための固定金具を備えた固定金具付電気ケーブルにおいて、時間が経過しても固定金具の電気ケーブルに対する固定把持力を安定なものとすることができる固定金具付電気ケーブルを提供すること。
【解決手段】固定金具付電気ケーブル10は、電気ケーブル11と電気ケーブル11を挿通するためのスリーブ部18を有する固定金具12とからなり、電気ケーブル11内に心金22を配置し、固定金具12のスリーブ部18に電気ケーブル11を挿通し、スリーブ部18をケーブル長手方向の心金22の配置箇所に配置し、スリーブ部18の加締部21を加締めることによって、固定金具12を電気ケーブル11に密着一体化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器に取り付けるための固定金具を備えた固定金具付電気ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の電動化に伴い、電源線と信号線を備えた電気ケーブルが、自動車の振動や屈曲を多く受ける場所に配策されるようになっている。
【0003】
図5は、電気ケーブルを、自動車の電動ブレーキ装置などの電気機器に取り付けた取付部の構造である。固定金具50は電気ケーブル53を挿通するためのスリーブ部51と、スリーブ部51と一体的に設けられているフランジ部52とからなる。電気ケーブル53を固定金具50のスリーブ部51に挿通し、スリーブ部51を加締部54において加締めることによって、固定金具50を電気ケーブル53に密着一体化している。固定金具50のフランジ部52にはボルト穴55が設けられており、ボルト56によって固定金具50のフランジ部52が電気機器のケース57に固定される。電気機器のケース57内で、電気ケーブル53の電源線、信号線などの電線58はばらけられて、それぞれ電気機器側の電気端子と接続される(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−322180
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固定金具は、スリーブ部の加締部において加締められることよって、加締部が電気ケーブルの外周を締めつける力により、電気ケーブルに密着一体化されている。一方、振動や屈曲を多く受ける場所に配策される電気ケーブルは可とう性を有するように設計されており、電源線や信号線はシース内にある程度の余裕をもって納められている。このことから、固定金具の加締部が電気ケーブルを外周から締め付ける力に対し、電気ケーブルの内側からの反発力は相対的に弱いものとなっている。これにより、時間がたつにつれて、固定金具の電気ケーブルを固定把持する力が弱くなるという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、電気ケーブルに対する固定金具の固定把持力を安定なものとした固定金具付ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の固定金具付電気ケーブルは、電源線や信号線などの複数の電線と複数の電線を覆うシースとを備えた電気ケーブルと、電気ケーブルを挿通するためのスリーブ部を有する固定金具とからなり、電気ケーブル内に心金を配置し、固定金具のスリーブ部に電気ケーブルを挿通し、スリーブ部をケーブル長手方向の心金の配置箇所に配置し、スリーブ部の加締部を加締めることによって、固定金具を電気ケーブルに密着一体化したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
電気ケーブルに対する固定金具の固定把持力を安定なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態を図に基づいて説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の固定金具付電気ケーブルを示す図であり、(a)は側断面図、(b)はA−A断面図である。図2は、第1の実施形態に使用する電気ケーブルの断面図であり、(a)は棒状の心金、(b)は円筒状の心金を用いた例の図である。図3は、第1の実施形態の固定金具付電気ケーブルを機器に取り付けた取付部の断面図である。
【0010】
(固定金具付電気ケーブル)
図1に示すように、固定金具付電気ケーブル10は、電気ケーブル11と、電気ケーブル11に密着一体化した固定金具12とからなる。
【0011】
(電気ケーブル)
図2に示すように、電気ケーブル11は、4本の信号線や電源線などの電線13と、これら電線13を束ねるおさえ巻き14と、その外周を覆うシース15とからなる。電線13は、導体16とその外周の絶縁層17からなる。シース15は、EPDMなどのゴム材、ポリウレタンなどの樹脂からなり、断面略円形に形成されている。
【0012】
(固定金具)
図1に示すように、固定金具12は電気ケーブル11を挿通するためのスリーブ部18と、スリーブ部18と一体的に設けられているフランジ部19とからなる。スリーブ部18は電気ケーブル11を挿通可能な円筒形状である。フランジ部19にはボルト穴20が設けられている。電気ケーブル11を固定金具12のスリーブ部18に挿通し、スリーブ部18の加締部21において全周から加締めることによって、固定金具12は電気ケーブル11に密着一体化される。
【0013】
(心金)
本実施形態では、電気ケーブル11の略中心位置に心金22が配置されている。心金22は電気ケーブル11の端面から挿入して配置される。固定金具12のスリーブ部18の加締部21は、ケーブル長手方向において心金22の位置と重なるように配置されている。心金22の径は、電気ケーブル11のシース15内の余裕に合わせて設定される。心金22の長さは固定金具12のスリーブ部18の長さとほぼ同じまたは少し長い長さに設定することが好ましい。心金22は図2(a)のような棒状または図2(b)のような円筒状に形成される。心金22の径が大きいときは、円筒状とすることにより、心金の軽量化が可能である。心金22は鉄などの金属材料で形成される。
【0014】
(電気機器への取り付け)
電気ケーブルは、自動車のバッテリー、インバータ、モータなどの電気機器間の接続に用いられる。図3に示すように、電気機器のケース23にはケーブル取り付け部24が設けられている。ケーブル取り付け部24の開口から、電気ケーブル11を電気機器のケース23内に収容し、固定金具12のフランジ部19をボルト25によって電気機器のケース23に固定する。これにより、電気ケーブル11が電気機器に取り付けられる。電気機器のケース内で、電気ケーブル11の電源線、信号線などの電線13はばらけられて、それぞれ電気機器側の電気端子と接続される。
【0015】
(作用)
本実施形態の固定金具付電気ケーブルによれば、電気ケーブル内の固定金具の加締部の位置に心金が配置されているので、加締めによる電気ケーブル外周からの締めつけ力に対する電気ケーブル内部からの反発力が従来技術に比べて強くなる。これにより、固定金具の電気ケーブルの固定把持力を安定なものとすることができる。
【0016】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に使用する電気ケーブルの断面図である。
【0017】
(構成)
本実施形態の第1の実施形態の異なる部分は、径の大きい円筒状の心金40を使用し、電気ケーブル41の電源線や信号線などの電線42を束ねるおさえ巻き43とシース44の間に配置したものである。
【0018】
(作用)
本実施形態においても、第1の実施形態と同じ作用を奏する。
【0019】
(その他の変形例)
本発明は、上記実施形態の電気ケーブルに限られず、電源線や信号線などの電線の形状、大きさや数、シース内における電線の配置などを、応用目的に対応して設計したものに適用できる。
【0020】
(応用例)
本発明の固定金具付電気ケーブルは、ロボットや自動車の可動機器に接続する電気ケーブルに使用できる。自動車においては、電動ブレーキハーネスやインホイールモータ用ハーネスのような振動や屈曲が頻繁に加わる電気ケーブルに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態の固定金具付電気ケーブルを示す図であり、(a)は側断面図、(b)はA−A断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に使用する電気ケーブルの断面図であり、(a)は棒状の心金、(b)は円筒状の心金である。
【図3】本発明の第1の実施形態の固定金具付電気ケーブルの機器への取付部の断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に使用する電気ケーブルの断面図である。
【図5】従来技術の固定金具付電気ケーブルの機器への取付部の断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 固定金具付電気ケーブル
11、41、53 電気ケーブル
12、50 固定金具
13、42、58 電線
14、43 おさえ巻き
15、44 シース
16 導体
17 絶縁層
18、51 スリーブ部
19、52 フランジ部
20、55 ボルト穴
21、54 加締部
22、40 心金
23、57 ケース
24 ケーブル取り付け部
25、56 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源線や信号線などの複数の電線と前記複数の電線を覆うシースとを備えた電気ケーブルと、
前記電気ケーブルを挿通するためのスリーブ部を有する固定金具とからなり、
前記電気ケーブル内に心金を配置し、前記固定金具の前記スリーブ部に前記電気ケーブルを挿通し、前記スリーブ部をケーブル長手方向の前記心金の配置箇所に配置し、前記スリーブ部の加締部を加締めることによって、前記固定金具を前記電気ケーブルに密着一体化したことを特徴とする固定金具付電気ケーブル。
【請求項2】
前記心金を前記電気ケーブルの略中心に配置したことを特徴とする請求項1に記載の固定金具付電気ケーブル。
【請求項3】
前記心金は棒状であることを特徴とする請求項1または2に記載の固定金具付電気ケーブル。
【請求項4】
前記心金は円筒状であることを特徴とする請求項1または2に記載の固定金具付電気ケーブル。
【請求項5】
円筒状の心金を前記複数の電線と前記シースの間に配置したことを特徴とする請求項1に記載の固定金具付電気ケーブル。
【請求項6】
前記固定金具は、前記スリーブ部と一体的にフランジ部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5に記載の固定金具付電気ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−299819(P2007−299819A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124673(P2006−124673)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】