固定電話機用フックボタンの軸受け構造
【課題】フックボタンの軸受け孔にバリが発生していてもフックボタンの回転運動に支障をきたさない軸受け部を提供する。
【解決手段】本発明による固定電話機用フックボタンの軸受け構造は、上側ケース1に開けられた窓に位置するフックボタン6と、上側ケース1の内側に位置されるフックボタン6の一部の両側に突設された一対の軸部8と、上側ケース1の裏面から該裏面に対して垂直な方向に延びる一対のリブ9と、を備える。その一対のリブ9は、上側ケース1と一体形成され、かつ、フックボタン6を前記窓から進退自在にするために各軸部8を回転可能に支持する孔10が貫通しているものである。孔10の長さ方向におけるリブ9の両側面のうち、フックボタン6の軸部8とは反対の側の面は平坦であり、フックボタン6の軸部8と対向する側の面は、該面から孔10の周囲部が軸部8の軸方向に突出することで形成された軸受け部9aを有する。
【解決手段】本発明による固定電話機用フックボタンの軸受け構造は、上側ケース1に開けられた窓に位置するフックボタン6と、上側ケース1の内側に位置されるフックボタン6の一部の両側に突設された一対の軸部8と、上側ケース1の裏面から該裏面に対して垂直な方向に延びる一対のリブ9と、を備える。その一対のリブ9は、上側ケース1と一体形成され、かつ、フックボタン6を前記窓から進退自在にするために各軸部8を回転可能に支持する孔10が貫通しているものである。孔10の長さ方向におけるリブ9の両側面のうち、フックボタン6の軸部8とは反対の側の面は平坦であり、フックボタン6の軸部8と対向する側の面は、該面から孔10の周囲部が軸部8の軸方向に突出することで形成された軸受け部9aを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内用の固定電話機に関し、特にフックボタンの回転運動を可能にするフックボタンの軸受け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
室内で使用される固定電話機は、電話回線に接続される電話機本体と、電話機本体と無線または有線で接続された送受話器とから構成されている。この電話機本体は、図4に示すように、前後方向に前下がりに傾斜した上部傾斜面を有する樹脂製の上側ケース1と、下側ケース2とからなる筐体を備え、その上部傾斜面に、複数のダイヤルボタン3や機能ボタン4が配設されると共に、送受話器(不図示)を載置する送受話器受部5が形成されている。送受話器受部5には、送受話器の受話部分と送話部分がそれぞれ嵌め込まれて係止される2つの凹陥部5a,5bが形成されており、一方の凹陥部5aの底面に、送受話器の載置と持ち上げに応じて通話回線の切断と接続を可能にするフックボタン6が配置されている。
【0003】
このようなフックボタン6は、図5および図9に示すように、電話機本体の筐体内にて回動可能に軸支されたアーム7を有し、且つその軸を中心とした回転運動によって、凹陥部5aの底面に開けられた窓5bから進退自在とされている。
【0004】
そのため、フックボタン6のアーム7の側面にはフックボタン6の回転軸となる軸部8が突設され、この軸部が嵌合する軸受け部が上側ケースの裏面に立設されている。
【0005】
この軸受け部の構造として例えば特許文献1および2には、電話機筐体の一部を構成するカバーの下面(すなわち上側ケースの裏面)に一対のリブが一体的に形成され、これらのリブの端部にフックボタンのアームの軸部がそれぞれ回動可能に支持されている構造が開示されている(本願の図5、図6、図9および図10のリブ9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−278379号公報(図11参照)
【特許文献2】実公平7−46998号公報(図3および図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した固定電話機において、フックボタンのアームの軸部を、上側ケースの裏面に一体形成された軸受け用のリブに支持させる場合、特許文献1および2に開示されているように、各リブに貫通して開けられた丸孔を軸受けの軸嵌合部とする方法(以下、第一の方法)や、各リブ先端より切り欠かれたU字状溝を軸受けの軸嵌合部とする方法(以下、第二の方法)がとられていた。しかし、以下に説明するようにそれぞれの方法において課題があった。
【0008】
1)第一の方法では、図5および図6に示すように、フックボタン6の回転運動の中心となるリブ9の丸孔10に、フックボタン6のアーム7の軸部8が挿入される。このように組み立てられた状態の断面図が図7である。
【0009】
丸孔10を有するリブ9は、金型によって、電話機の上側ケース1と一体的に成形される。この場合、リブ9の丸孔10は成形品を金型から取り出す際の引っ掛かりとなる部分つまりアンダーカット部になるので、従来の軸受け用リブ形状を形成する金型においては可動側型に傾斜スライドを設ける必要があった。具体的には図8に示すように、傾斜スライド11は可動側型12から突出して成形品(上側ケース1)を持ち上げながら丸孔10から抜けていく構成となっている。したがって、傾斜スライド11とその周囲の型部分とのパーティングライン(以下、PL)は図8に点線で示しているようになり、PLに位置した丸孔部の開口縁(図8中のO部)に横バリを生じる。なお、横バリとはPLに沿って発生するバリを言い、後述する縦バリとはPLに垂直な方向のバリを言う。
【0010】
一方、成形時にリブ部にヒケが生じないようにするためには、図7に示すように上側ケース1の平均肉厚をtとすると、リブ9の厚さTは、該肉厚tより小さくするしかない。こうした従来の軸受け用リブ形状では、フックボタン6のアーム7の軸部8がリブ9の丸孔10から脱落しないようにするため、その軸部8をリブの丸孔10から貫通させる必要がある。
【0011】
しかし、上記のようにバリが生じたリブ9の丸孔10にフックボタン6のアーム7の軸部8が貫通されると、該バリの存在によってフックボタン6の回転運動に支障をきたし、結果、回線接続スイッチのON/OFFを切り替えるフックボタン6の動作点が不安定になるおそれがある。そのため、従来ではフックボタンの組立時に、上記リブの丸孔にバリが生じていないかを確認する必要があった。
【0012】
2)第二の方法では、図9および図10に示すように、上側ケース1の裏面のリブ先端のU字状溝13にフックボタン6のアーム7の軸部8が嵌め込まれ、かつ、下側ケース2に立設されたリブ14で該軸部8が該U字状溝13の内側へ押さえ込まれている。このように組み立てられた状態の断面図が図11である。
【0013】
この手法では、上側ケース1のリブ9におけるU字状溝13の高さ寸法(図11の“H”)の精度と、下側ケース2のリブ14における高さ寸法(図J8の“h”)の精度とが重要となる。また、上下両側の2つのリブ9,14でフックボタン6の軸部8を挟み込む本構造の場合どちらのリブも必然的にリブ高さが高くなるので、樹脂が充填し易くするためにガスベントを兼ねて入れ子構造にすることが多い。この部分を入れ子にすると、リブにおけるフックボタンの軸嵌合部に成形時にバリが発生する可能性がある。
【0014】
こうしたバリが生じると、図11に示す寸法Bが小さくなってフックボタン6の軸部8の軸径φAを圧迫する。これにより、フックボタン6の回転運動に支障をきたし、回線接続スイッチのON/OFFを切り替えるフックボタン6の動作に障害が起きるおそれがある。そのため、従来ではフックボタンの組立時に、両リブの軸受け部にバリが生じていないかを確認する必要があった。
【0015】
さらに、入れ子構造にしない場合でも、量産中に樹脂充填不良を生じることもある。目視では判別できないような充填不足が生じた場合、図11に示す寸法Bが大きくなる。この場合、フックボタン6の軸部8とその軸受けであるリブ9のU字状溝13との隙間が大きくなり、フックボタン6の回動の際ガタつきを生じることにより、フックボタンによる回線接続スイッチON/OFFの切り替え点に影響を及ぼすことになる。
【0016】
以上に説明したように、どちらの方法においても、フックボタンの回転動作時における軸と軸受け部との摺動不良は従来から問題となっており、量産時には軸の摺動部にバリが存在していないかを常に確認する必要があった。
【0017】
そこで本発明の目的の一例は、上で述べたような従来の二つの方法における問題を解消することができる固定電話機用フックボタンの軸受け形状を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、ケースの、送受話器が置かれる部位に開けられた窓に位置するフックボタンと、該ケースの内側に位置される該フックボタンの一部の両側に突設された一対の軸部と、該ケースの裏面から該裏面に対して垂直な方向に延びる一対のリブとを備えた固定電話機用フックボタンの軸受け構造に係わる。さらに、その一対のリブは、該ケースと共に一体成形され、かつ該フックボタンを該窓から進退自在にするために各軸部を回転可能に支持する孔が貫通しているものである。
【0019】
この軸受け構造において、本発明の一つの態様は、孔の長さ方向におけるリブの両側面のうち、フックボタンの軸部とは反対の側の面は平坦であり、フックボタンの軸部と対向する側の面は、該面から孔の周囲部が軸部の軸方向に突出することで形成された軸受け部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、回転運動するフックボタンの軸が受け入れられるケース側の軸受け孔について、バリが発生していてもフックボタンの回転運動に支障をきたさない。そのため、軸受け部において成形時のバリが存在していないかを確認する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図5のX−X断面と同様の断面で見た、本発明の一実施形態による軸受け構造の断面図。
【図2】図1に示した軸受け用リブ形状を得るための金型のPLと、成形されるリブ部と、バリ発生箇所とを示す概略断面図。
【図3】本発明の一実施形態による軸受け孔に挿入されるフックボタンの軸の形状例を示す斜視図。
【図4】送受話器を外した状態の一般的な固定電話機の外観斜視図。
【図5】フックボタンを回動させる従来の軸受け構造の例(第1の方法)を説明するための断面図。
【図6】図5の従来例における、フックボタンのアームの軸部とその軸受け用のリブとを示す斜視図。
【図7】図5のX−X断面で見た従来の軸受け構造の断面図。
【図8】図7に示した軸受け用リブ形状を得るための金型のPLと、成形されるリブ部と、バリ発生箇所とを示す概略断面図。
【図9】フックボタンを回動させる従来の軸受け構造の例(第2の方法)を説明するための断面図。
【図10】図9の従来例における、フックボタンのアームの軸部とその軸受け用のリブとを示す斜視図。
【図11】図9のY−Y断面で見た従来の軸受け構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ここでは、背景技術と同一の構成要素については同一符号を用いて説明する。本発明によるフックボタンの軸嵌合部では、図5および図6を用いて既に説明した第二の方法がとられている。すなわち、図5に示すように、丸孔10を開けたリブ9が上側ケース1の裏面から突出され、このリブ9の丸孔10にフックボタン6のアーム7の軸部8が挿入されている。これにより、リブ9の丸孔10をフックボタン6の回転運動の中心として、フックボタン6が、上側ケース表面の凹陥部5aの底面に開けられた窓5bから進退自在とされる。リブ9は上側ケース1と一体成形によって作られている。
【0023】
図1は、図5のX−X断面と同様の断面で見た、本発明の一実施形態による軸受け構造の断面図を示している。
【0024】
本発明は、上側ケース1裏面の軸受け用のリブ9について、図1に示すような軸受け形状にした。具体的には、フックボタン6は電話機本体の筐体内にて回動可能に軸支される一対のアーム7を有し、フックボタン6の回転軸となる一対の軸部8がフックボタン6の各アーム7の外側に突設されている。
【0025】
さらに、図1に示すように、上側ケース1の裏面に一対のリブ9が上側ケース1と一体成形で形成されている。両リブ9は、上側ケース1の裏面から該裏面に対して垂直な方向に延出され、かつ、一対の軸部8の間隔と同等以上の所定の間隔を置いて略平行に配置されている。それぞれのリブ9の先端側は、フックボタン6の軸部8を回転可能に支持する軸受け部9aを構成している。この軸受け部9aはフックボタン6の軸部8が挿入される丸孔10を有する。
【0026】
それぞれの軸受け部9aは、一方のリブ9の丸孔10の周囲部が他方のリブ9に向かって突出する形で形成されている。特に、丸孔10の長さ方向におけるリブ9の両側面のうち、フックボタン6の軸部8とは反対の側の面は平坦(アンダーカットが無い面)であるが、フックボタン6の軸部8と対向する側の面は丸孔10の周囲部が軸受け部9aとして突出する形にされている。この形の為、それぞれの軸受け部9aは、軸受け部9aを除いたリブの部分である平板状のリブ根元部9bの厚さTより厚く、結果、各軸受け部9aの丸孔10の長さがリブ根元部9bの肉厚Tより長くなっている。さらに、フックボタン6の軸部8がリブ9の軸受け部9aの丸孔10を貫通しないように、丸孔10の長さはフックボタン6の軸部8の長さよりも長い。また、上側ケース1の成形時にリブ9の存在によって上側ケース1にヒケが発生しないように、各リブ根元部9bの厚さTは上側ケース1の平均肉厚tよりも小さくされている。
【0027】
このようなリブ形状を成形するための金型構造を図2に示す。この図に示すように金型の可動側型12に傾斜スライド11が設けられ、傾斜スライド11は可動側型12から突出して成形品の上側ケース1を持ち上げながらリブ9の軸受け部9aの丸孔10から抜けていく構成となっている。したがって、傾斜スライド11とその周囲の型部分とのPLは図2に点線で示しているようになり、傾斜スライド11でバリが生じる可能性があるのは図2で示すP部、Q部、R部、S部、T部である。P部およびQ部では横バリが発生し易く、R部とS部とT部では縦バリが発生し易い。
【0028】
しかし、これらの場所にバリが生じても、上記のような軸受け部9aの形状にしたので、フックボタン6の回転運動に支障をきたすことは全くない。
【0029】
すなわち、本発明では図1に示したように、軸受け部9aの軸方向長さを平板状のリブ根元部9bの厚さTより長くして、軸受け部9aの丸孔10の長さをフックボタン6の軸部8より長くした。このことにより、図2に示すP部およびQ部に相当する丸孔10の開口縁にバリが生じていても、フックボタン6の軸部8を軸受け部9aに挿入したときにその丸孔開口縁に軸部8は届かないので、フックボタン6の回転運動にバリが全く関与しなくなる。
【0030】
なお、図1に示したように、丸孔10の長さ方向におけるリブ9の両側面のうち、フックボタン6の軸部8とは反対の側の面は平坦であるが、フックボタン6の軸部8と対向する側の面は該面から丸孔10の周囲部が突出する形で形成された軸受け部9aを有している。このため、金型のPLは図2に点線で示したようになり、軸部8が最初に挿入される側の丸孔10の開口縁には成形時のバリは発生せず、軸部8の回転は妨げられない。
【0031】
加えて、上記の軸受け形状により、軸受け部の丸孔10を貫通しない程度にフックボタン6の軸部8を長くできるので、フックボタンの軸部8が脱落するおそれも無くなる。さらに、上記の軸受け形状にすることにより、リブ根元部9bの肉厚Tを上側ケース1の平均肉厚tより厚くする必要がないのでヒケの心配もない。
【0032】
また、フックボタン6の軸部8に関して、フックボタン6の樹脂成形で軸部8の外周面に金型のPLによってバリが生じてもフックボタン6の軸部8の回転運動に支障をきたさないために、図3に示すように、丸ピン形状の軸部8の外周面の、PLに沿った方向にある部分8aが切り欠かれている。
【0033】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の例に限らず、回転運動体の回転軸を支持する軸受け部を構成するモールド品全般に適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 上側ケース
6 フックボタン
7 アーム
8 軸部
9 リブ
9a 軸受け部
9b リブ根元部
10 丸孔
11 傾斜スライド
12 可動側型
P、Q 横バリの発生場所
R、S、T 縦バリの発生場所
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内用の固定電話機に関し、特にフックボタンの回転運動を可能にするフックボタンの軸受け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
室内で使用される固定電話機は、電話回線に接続される電話機本体と、電話機本体と無線または有線で接続された送受話器とから構成されている。この電話機本体は、図4に示すように、前後方向に前下がりに傾斜した上部傾斜面を有する樹脂製の上側ケース1と、下側ケース2とからなる筐体を備え、その上部傾斜面に、複数のダイヤルボタン3や機能ボタン4が配設されると共に、送受話器(不図示)を載置する送受話器受部5が形成されている。送受話器受部5には、送受話器の受話部分と送話部分がそれぞれ嵌め込まれて係止される2つの凹陥部5a,5bが形成されており、一方の凹陥部5aの底面に、送受話器の載置と持ち上げに応じて通話回線の切断と接続を可能にするフックボタン6が配置されている。
【0003】
このようなフックボタン6は、図5および図9に示すように、電話機本体の筐体内にて回動可能に軸支されたアーム7を有し、且つその軸を中心とした回転運動によって、凹陥部5aの底面に開けられた窓5bから進退自在とされている。
【0004】
そのため、フックボタン6のアーム7の側面にはフックボタン6の回転軸となる軸部8が突設され、この軸部が嵌合する軸受け部が上側ケースの裏面に立設されている。
【0005】
この軸受け部の構造として例えば特許文献1および2には、電話機筐体の一部を構成するカバーの下面(すなわち上側ケースの裏面)に一対のリブが一体的に形成され、これらのリブの端部にフックボタンのアームの軸部がそれぞれ回動可能に支持されている構造が開示されている(本願の図5、図6、図9および図10のリブ9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−278379号公報(図11参照)
【特許文献2】実公平7−46998号公報(図3および図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した固定電話機において、フックボタンのアームの軸部を、上側ケースの裏面に一体形成された軸受け用のリブに支持させる場合、特許文献1および2に開示されているように、各リブに貫通して開けられた丸孔を軸受けの軸嵌合部とする方法(以下、第一の方法)や、各リブ先端より切り欠かれたU字状溝を軸受けの軸嵌合部とする方法(以下、第二の方法)がとられていた。しかし、以下に説明するようにそれぞれの方法において課題があった。
【0008】
1)第一の方法では、図5および図6に示すように、フックボタン6の回転運動の中心となるリブ9の丸孔10に、フックボタン6のアーム7の軸部8が挿入される。このように組み立てられた状態の断面図が図7である。
【0009】
丸孔10を有するリブ9は、金型によって、電話機の上側ケース1と一体的に成形される。この場合、リブ9の丸孔10は成形品を金型から取り出す際の引っ掛かりとなる部分つまりアンダーカット部になるので、従来の軸受け用リブ形状を形成する金型においては可動側型に傾斜スライドを設ける必要があった。具体的には図8に示すように、傾斜スライド11は可動側型12から突出して成形品(上側ケース1)を持ち上げながら丸孔10から抜けていく構成となっている。したがって、傾斜スライド11とその周囲の型部分とのパーティングライン(以下、PL)は図8に点線で示しているようになり、PLに位置した丸孔部の開口縁(図8中のO部)に横バリを生じる。なお、横バリとはPLに沿って発生するバリを言い、後述する縦バリとはPLに垂直な方向のバリを言う。
【0010】
一方、成形時にリブ部にヒケが生じないようにするためには、図7に示すように上側ケース1の平均肉厚をtとすると、リブ9の厚さTは、該肉厚tより小さくするしかない。こうした従来の軸受け用リブ形状では、フックボタン6のアーム7の軸部8がリブ9の丸孔10から脱落しないようにするため、その軸部8をリブの丸孔10から貫通させる必要がある。
【0011】
しかし、上記のようにバリが生じたリブ9の丸孔10にフックボタン6のアーム7の軸部8が貫通されると、該バリの存在によってフックボタン6の回転運動に支障をきたし、結果、回線接続スイッチのON/OFFを切り替えるフックボタン6の動作点が不安定になるおそれがある。そのため、従来ではフックボタンの組立時に、上記リブの丸孔にバリが生じていないかを確認する必要があった。
【0012】
2)第二の方法では、図9および図10に示すように、上側ケース1の裏面のリブ先端のU字状溝13にフックボタン6のアーム7の軸部8が嵌め込まれ、かつ、下側ケース2に立設されたリブ14で該軸部8が該U字状溝13の内側へ押さえ込まれている。このように組み立てられた状態の断面図が図11である。
【0013】
この手法では、上側ケース1のリブ9におけるU字状溝13の高さ寸法(図11の“H”)の精度と、下側ケース2のリブ14における高さ寸法(図J8の“h”)の精度とが重要となる。また、上下両側の2つのリブ9,14でフックボタン6の軸部8を挟み込む本構造の場合どちらのリブも必然的にリブ高さが高くなるので、樹脂が充填し易くするためにガスベントを兼ねて入れ子構造にすることが多い。この部分を入れ子にすると、リブにおけるフックボタンの軸嵌合部に成形時にバリが発生する可能性がある。
【0014】
こうしたバリが生じると、図11に示す寸法Bが小さくなってフックボタン6の軸部8の軸径φAを圧迫する。これにより、フックボタン6の回転運動に支障をきたし、回線接続スイッチのON/OFFを切り替えるフックボタン6の動作に障害が起きるおそれがある。そのため、従来ではフックボタンの組立時に、両リブの軸受け部にバリが生じていないかを確認する必要があった。
【0015】
さらに、入れ子構造にしない場合でも、量産中に樹脂充填不良を生じることもある。目視では判別できないような充填不足が生じた場合、図11に示す寸法Bが大きくなる。この場合、フックボタン6の軸部8とその軸受けであるリブ9のU字状溝13との隙間が大きくなり、フックボタン6の回動の際ガタつきを生じることにより、フックボタンによる回線接続スイッチON/OFFの切り替え点に影響を及ぼすことになる。
【0016】
以上に説明したように、どちらの方法においても、フックボタンの回転動作時における軸と軸受け部との摺動不良は従来から問題となっており、量産時には軸の摺動部にバリが存在していないかを常に確認する必要があった。
【0017】
そこで本発明の目的の一例は、上で述べたような従来の二つの方法における問題を解消することができる固定電話機用フックボタンの軸受け形状を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、ケースの、送受話器が置かれる部位に開けられた窓に位置するフックボタンと、該ケースの内側に位置される該フックボタンの一部の両側に突設された一対の軸部と、該ケースの裏面から該裏面に対して垂直な方向に延びる一対のリブとを備えた固定電話機用フックボタンの軸受け構造に係わる。さらに、その一対のリブは、該ケースと共に一体成形され、かつ該フックボタンを該窓から進退自在にするために各軸部を回転可能に支持する孔が貫通しているものである。
【0019】
この軸受け構造において、本発明の一つの態様は、孔の長さ方向におけるリブの両側面のうち、フックボタンの軸部とは反対の側の面は平坦であり、フックボタンの軸部と対向する側の面は、該面から孔の周囲部が軸部の軸方向に突出することで形成された軸受け部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、回転運動するフックボタンの軸が受け入れられるケース側の軸受け孔について、バリが発生していてもフックボタンの回転運動に支障をきたさない。そのため、軸受け部において成形時のバリが存在していないかを確認する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図5のX−X断面と同様の断面で見た、本発明の一実施形態による軸受け構造の断面図。
【図2】図1に示した軸受け用リブ形状を得るための金型のPLと、成形されるリブ部と、バリ発生箇所とを示す概略断面図。
【図3】本発明の一実施形態による軸受け孔に挿入されるフックボタンの軸の形状例を示す斜視図。
【図4】送受話器を外した状態の一般的な固定電話機の外観斜視図。
【図5】フックボタンを回動させる従来の軸受け構造の例(第1の方法)を説明するための断面図。
【図6】図5の従来例における、フックボタンのアームの軸部とその軸受け用のリブとを示す斜視図。
【図7】図5のX−X断面で見た従来の軸受け構造の断面図。
【図8】図7に示した軸受け用リブ形状を得るための金型のPLと、成形されるリブ部と、バリ発生箇所とを示す概略断面図。
【図9】フックボタンを回動させる従来の軸受け構造の例(第2の方法)を説明するための断面図。
【図10】図9の従来例における、フックボタンのアームの軸部とその軸受け用のリブとを示す斜視図。
【図11】図9のY−Y断面で見た従来の軸受け構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ここでは、背景技術と同一の構成要素については同一符号を用いて説明する。本発明によるフックボタンの軸嵌合部では、図5および図6を用いて既に説明した第二の方法がとられている。すなわち、図5に示すように、丸孔10を開けたリブ9が上側ケース1の裏面から突出され、このリブ9の丸孔10にフックボタン6のアーム7の軸部8が挿入されている。これにより、リブ9の丸孔10をフックボタン6の回転運動の中心として、フックボタン6が、上側ケース表面の凹陥部5aの底面に開けられた窓5bから進退自在とされる。リブ9は上側ケース1と一体成形によって作られている。
【0023】
図1は、図5のX−X断面と同様の断面で見た、本発明の一実施形態による軸受け構造の断面図を示している。
【0024】
本発明は、上側ケース1裏面の軸受け用のリブ9について、図1に示すような軸受け形状にした。具体的には、フックボタン6は電話機本体の筐体内にて回動可能に軸支される一対のアーム7を有し、フックボタン6の回転軸となる一対の軸部8がフックボタン6の各アーム7の外側に突設されている。
【0025】
さらに、図1に示すように、上側ケース1の裏面に一対のリブ9が上側ケース1と一体成形で形成されている。両リブ9は、上側ケース1の裏面から該裏面に対して垂直な方向に延出され、かつ、一対の軸部8の間隔と同等以上の所定の間隔を置いて略平行に配置されている。それぞれのリブ9の先端側は、フックボタン6の軸部8を回転可能に支持する軸受け部9aを構成している。この軸受け部9aはフックボタン6の軸部8が挿入される丸孔10を有する。
【0026】
それぞれの軸受け部9aは、一方のリブ9の丸孔10の周囲部が他方のリブ9に向かって突出する形で形成されている。特に、丸孔10の長さ方向におけるリブ9の両側面のうち、フックボタン6の軸部8とは反対の側の面は平坦(アンダーカットが無い面)であるが、フックボタン6の軸部8と対向する側の面は丸孔10の周囲部が軸受け部9aとして突出する形にされている。この形の為、それぞれの軸受け部9aは、軸受け部9aを除いたリブの部分である平板状のリブ根元部9bの厚さTより厚く、結果、各軸受け部9aの丸孔10の長さがリブ根元部9bの肉厚Tより長くなっている。さらに、フックボタン6の軸部8がリブ9の軸受け部9aの丸孔10を貫通しないように、丸孔10の長さはフックボタン6の軸部8の長さよりも長い。また、上側ケース1の成形時にリブ9の存在によって上側ケース1にヒケが発生しないように、各リブ根元部9bの厚さTは上側ケース1の平均肉厚tよりも小さくされている。
【0027】
このようなリブ形状を成形するための金型構造を図2に示す。この図に示すように金型の可動側型12に傾斜スライド11が設けられ、傾斜スライド11は可動側型12から突出して成形品の上側ケース1を持ち上げながらリブ9の軸受け部9aの丸孔10から抜けていく構成となっている。したがって、傾斜スライド11とその周囲の型部分とのPLは図2に点線で示しているようになり、傾斜スライド11でバリが生じる可能性があるのは図2で示すP部、Q部、R部、S部、T部である。P部およびQ部では横バリが発生し易く、R部とS部とT部では縦バリが発生し易い。
【0028】
しかし、これらの場所にバリが生じても、上記のような軸受け部9aの形状にしたので、フックボタン6の回転運動に支障をきたすことは全くない。
【0029】
すなわち、本発明では図1に示したように、軸受け部9aの軸方向長さを平板状のリブ根元部9bの厚さTより長くして、軸受け部9aの丸孔10の長さをフックボタン6の軸部8より長くした。このことにより、図2に示すP部およびQ部に相当する丸孔10の開口縁にバリが生じていても、フックボタン6の軸部8を軸受け部9aに挿入したときにその丸孔開口縁に軸部8は届かないので、フックボタン6の回転運動にバリが全く関与しなくなる。
【0030】
なお、図1に示したように、丸孔10の長さ方向におけるリブ9の両側面のうち、フックボタン6の軸部8とは反対の側の面は平坦であるが、フックボタン6の軸部8と対向する側の面は該面から丸孔10の周囲部が突出する形で形成された軸受け部9aを有している。このため、金型のPLは図2に点線で示したようになり、軸部8が最初に挿入される側の丸孔10の開口縁には成形時のバリは発生せず、軸部8の回転は妨げられない。
【0031】
加えて、上記の軸受け形状により、軸受け部の丸孔10を貫通しない程度にフックボタン6の軸部8を長くできるので、フックボタンの軸部8が脱落するおそれも無くなる。さらに、上記の軸受け形状にすることにより、リブ根元部9bの肉厚Tを上側ケース1の平均肉厚tより厚くする必要がないのでヒケの心配もない。
【0032】
また、フックボタン6の軸部8に関して、フックボタン6の樹脂成形で軸部8の外周面に金型のPLによってバリが生じてもフックボタン6の軸部8の回転運動に支障をきたさないために、図3に示すように、丸ピン形状の軸部8の外周面の、PLに沿った方向にある部分8aが切り欠かれている。
【0033】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の例に限らず、回転運動体の回転軸を支持する軸受け部を構成するモールド品全般に適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 上側ケース
6 フックボタン
7 アーム
8 軸部
9 リブ
9a 軸受け部
9b リブ根元部
10 丸孔
11 傾斜スライド
12 可動側型
P、Q 横バリの発生場所
R、S、T 縦バリの発生場所
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの、送受話器が置かれる部位に開けられた窓に位置するフックボタンと、
前記ケースの内側に位置される前記フックボタンの一部の両側に突設された一対の軸部と、
前記ケースの裏面から該裏面に対して垂直な方向に延びる一対のリブであって、前記ケースと共に一体成形され、前記フックボタンを前記窓から進退自在にするために各前記軸部を回転可能に支持する孔が貫通している一対のリブと、
を備えた固定電話機用フックボタンの軸受け構造において、
前記孔の長さ方向における前記リブの両側面のうち、前記フックボタンの軸部とは反対の側の面は平坦であり、前記フックボタンの軸部と対向する側の面は、該面から前記孔の周囲部が前記軸部の軸方向に突出することで形成された軸受け部を有することを特徴とする固定電話機用フックボタンの軸受け構造。
【請求項2】
前記孔の長さは前記フックボタンの前記軸部の長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載の固定電話機用フックボタンの軸受け構造。
【請求項3】
前記軸受け部を除いた前記リブの部分であるリブ根元部における、前記孔の長さ方向に沿った方向の肉厚が、前記ケースの平均肉厚よりも小さくされていることを特徴とする請求項1または2に記載の固定電話機用フックボタンの軸受け構造。
【請求項1】
ケースの、送受話器が置かれる部位に開けられた窓に位置するフックボタンと、
前記ケースの内側に位置される前記フックボタンの一部の両側に突設された一対の軸部と、
前記ケースの裏面から該裏面に対して垂直な方向に延びる一対のリブであって、前記ケースと共に一体成形され、前記フックボタンを前記窓から進退自在にするために各前記軸部を回転可能に支持する孔が貫通している一対のリブと、
を備えた固定電話機用フックボタンの軸受け構造において、
前記孔の長さ方向における前記リブの両側面のうち、前記フックボタンの軸部とは反対の側の面は平坦であり、前記フックボタンの軸部と対向する側の面は、該面から前記孔の周囲部が前記軸部の軸方向に突出することで形成された軸受け部を有することを特徴とする固定電話機用フックボタンの軸受け構造。
【請求項2】
前記孔の長さは前記フックボタンの前記軸部の長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載の固定電話機用フックボタンの軸受け構造。
【請求項3】
前記軸受け部を除いた前記リブの部分であるリブ根元部における、前記孔の長さ方向に沿った方向の肉厚が、前記ケースの平均肉厚よりも小さくされていることを特徴とする請求項1または2に記載の固定電話機用フックボタンの軸受け構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−19393(P2012−19393A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155808(P2010−155808)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】
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