説明

固形状の外用医薬組成物

【課題】本発明の目的は、薬理活性成分と粉末成分を含有していながら、安定性や使用感に優れており、優れた薬理効果を奏することができる固形状の外用医薬組成物を提供することである。
【解決手段】(A)薬理活性成分、(B)金属セッケン、(C)粉末成分、(d)ワックス及び(E)液状油を組み合わせて配合して、固形状の外用医薬組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用感や安定性に優れており、優れた薬理効果を奏することができる固形状の外用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
湿疹、炎症、あせも、かぶれ等の皮膚疾患の治療には、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン等の薬理活性成分が配合されたクリーム状の外用剤が使用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、クリーム状の外用剤には、塗布部が乾燥し難いという欠点があり、湿潤型の症状を呈する皮膚疾患には十分な薬理効果が得られないという問題点があった。更には、クリーム状の外用剤では、塗布部位がべたつく等の使用上の不都合もあった。
【0003】
一方、湿潤型の症状を呈する皮膚疾患の治療には、タルクやトウモロコシデンプン等の粉末成分が有効であることが知られている(特許文献4参照)。しかしながら、これらの粉末成分単独では、皮膚患部を乾燥させることはできても、消炎や鎮痛等の薬理作用自体を発揮することはできない。
【0004】
そのため、皮膚疾患の治療効果を高めるためには、薬理活性成分と共に粉末成分を配合した外用剤によって、粉末成分により患部を乾燥させると同時に、薬理活性成分による薬理作用を発揮させることが有効であると考えられている。
【0005】
しかしながら、薬理活性成分と粉末成分をクリーム状の外用剤として調製すると、粉末成分による乾燥効果が不十分になり、所期の効果を得ることはできないことが分かっている。また、薬理活性成分と粉末成分を粉末状外用剤として調製することも可能であるが、粉末状外用剤では使用時に粉末の飛散を生じるため、衛生上の点で問題がある。
【0006】
一方、薬理活性成分及び粉末成分と共に油性基剤を含む固形状外用剤として製剤化することにより、上記クリーム状及び粉末状の外用剤の問題点を解消できるが、その一方で、薬理活性成分と粉末成分を含む固形状外用剤では、保存時に油浮きが起こり、経時的安定性に劣るという欠点がある。更に、上記の固形状の油性外用剤では、外用剤を適量取り出すことが困難である、外用剤が皮膚上での滑りが悪く均一な塗布面が形成され難い、外用剤が皮膚上でべたつく等の使用感の点での欠点もある。
【0007】
このような従来技術を背景として、薬理活性成分と粉末成分を含有し、優れた薬理効果を奏すると共に、安定性や使用感に優れている固形状油性外用剤の開発が求められていた。
【特許文献1】特開昭55−87713号公報
【特許文献2】特公昭56−3339号公報
【特許文献3】特開平5−286860号公報
【特許文献4】特開2002−68986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決することである。具体的には、本発明は、薬理活性成分と粉末成分を含有していながら、安定性や使用感に優れており、優れた薬理効果を奏することができる固形状の外用医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、(A)薬理活性成分、(B)金属セッケン、(C)粉末成分、(d)ワックス及び(E)液状油を組み合わせて配合した固形状の外用医薬組成物は、長期間保存しても油浮き等の性状変化がなく経時的安定性に優れていると共に、使用感が良好であり、優れた薬理効果を奏することができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に改良を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる固形状の外用医薬組成物、及びその製造方法を提供する:
項1. (A)薬理活性成分、(B)金属セッケン、(C)粉末成分、(D)ワックス及び(E)液状油を含むことを特徴とする、固形状の外用医薬組成物。
項2. (A)薬理活性成分が、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、抗菌剤、局所麻酔剤、収斂剤、及びビタミン類よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の外用医薬組成物。
項3. (B)金属セッケンが、ステアリン酸の塩である、項1に記載の外用医薬組成物。
項4. (C)粉末成分が、トウモロコシデンプン、タルク及び酸化チタンよりなる群から選択される2種以上である、項1に記載の外用医薬組成物。
項5. (D)ワックスが、カルナウバロウ、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、及びワセリンよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の外用医薬組成物。
項6. (E)液状油が、イソステアリン酸イソセチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、スクワラン、流動パラフィン、及び軽質流動パラフィンよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の外用医薬組成物。
項7. レオメータ測定値による硬度が50〜750g/mm2(測定条件:検体温度25℃、感圧軸の針径3mmφ、針入速度20mm/min、針入長1mm)である、項1乃至6の何れかに記載の外用医薬組成物。
項8.下記の工程(1)〜(3)を含有する、(A)薬理活性成分、(B)金属セッケン、(C)粉末成分、(D)ワックス及び(E)液状油を含む固形状の外用医薬組成物の製造方法:
工程(1) (B)金属セッケン、(D)ワックス及び(E)液状油を90℃以上に加熱しながら混合することにより、半透明のゲル状混合物を得る工程、
工程(2) 前記工程(1)で得られた半透明のゲル状混合物に、(A)薬理活性成分及び(C)粉末成分を添加して、(A)〜(E)成分を含有する混合物を得る工程、及び
工程(3) 前記工程(2)で得られた混合物を冷却して、固形状の外用医薬組成物を得る工程。
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の外用医薬組成物は、固形状であり、(A)薬理活性成分、(B)金属セッケン、(C)粉末成分、(D)ワックス及び(E)液状油を含有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の外用医薬組成物に用いられる(A)薬理活性成分としては、経皮的に適用されて、薬理作用を発揮するものであれば、特に制限されない。当該薬理活性成分としては、例えば、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、抗菌剤、局所麻酔剤、収斂剤、ビタミン類等が挙げられる。これらの薬理活性成分として、具体的には、以下のものが例示される;
抗炎症剤:例えば、ブフェキサマク、イブプロフェンピコノール、スプロフェン、ウフェナマート、インドメタシン、ピロキシカム、アンピロキシカム、メロキシカム、ロルノキシカム、ベンザダック、ケトプロフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、ロキソプロフェン、アルミノプロフェン、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、スリンダック、フルフェナム酸、メフェナム酸、トルフェナム酸、グリチルレチン酸及びその塩、グリチルリチン酸及びその塩、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル等の非ステロイド系抗炎症剤;デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、プロピオン酸ベクロメタゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン、コハク酸メチル、プレドニゾロン、酢酸デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、デキサメタゾンメタスルホ酸安息香酸、トリアムシノロンジアセテート、ブチル酢酸プレドニゾロン、リン酸デキサメタゾン、リン酸ヒドロコルチゾン、リン酸プレドニゾロン、リン酸ベタメタゾン、コハク酸プレドニゾロン、酢酸コルチゾン、酢酸パラメタゾン、酢酸メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、吉草酸酢酸プレドニゾロン、吉草酸ジフルコルトロン、吉草酸デキサメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、酢酸ジフルプレドナート、酢酸ジフロラゾン、ジフルプレドナート、ジプロピオン酸ベタメタゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、プロピオン酸アルクロメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、酪酸クロベタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、酢酸フルドロコルチゾン、パルチミン酸デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン等のステロイド系抗炎症剤等。
抗ヒスタミン剤:例えば、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、シプロヘプタジン、トリプロリジン、プロメタジン、ホモクロルシクリジン、アリメマジン、クレマスチン、メタジン及びこれらの塩等。
抗菌剤:例えば、ブテナフィン及びその塩等のベンジルアミン系抗菌剤;ビフォナゾール、ネチコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、チオコナゾール、クロコナゾール、オモコナゾール、スルコナゾール及びこれらの塩等のイミダゾール系抗菌剤;テルビナフィン及びその塩等のアリルアミン系抗菌剤;アモロルフィン及びその塩等のモルホリン系抗菌剤;リラナフタート、トルナフテート及びトルシクラート等のチオカルバミン酸系抗菌剤;ナイスタチン、トリコマイシン、バリオチン、シッカニン、ピロールニトリン等の抗生物質等の抗菌剤等。
局所麻酔剤:例えば、リドカイン、プロカイン、アミノ安息香酸エチル、ジブカイン、メピバカイン、これらの塩または誘導体;コールタール、石炭酸、ナフトール、メントール、チモール、サリチル酸、抱水クロラール、アコニチン、タンニン等。
収斂剤:例えば、酸化亜鉛、タンニン酸、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫化亜鉛、アズレン、カラミン、酢酸鉛、次硝酸ビスマス等。
ビタミン類:例えば、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンC又はその誘導体、ビタミンE又はその誘導体、パントテン酸又はその誘導体、ビタミンD又はその誘導体等。
【0014】
これらの薬理活性成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0015】
特に、本発明の外用医薬組成物を湿潤型の症状を呈する皮膚疾患の治療剤として調製する場合には、(A)薬理活性成分として、抗炎症剤(特に、非ステロイド系抗炎症剤)及び抗ヒスタミン剤を組み合わせて使用することが有効である。このような薬理成分を使用することにより、薬理活性成分による薬理作用と粉末成分による患部の乾燥作用が複合して発揮され、上記皮膚疾患の治療効果を一層向上させること可能になる。
【0016】
本発明の外用医薬組成物において、上記(A)薬理活性成分の配合割合は、使用する薬理成分の種類、該組成物の形態、対象患者の年齢や性別、期待される薬理効果等に応じて異なるが、例えば、該組成物の総重量に対して0.02〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、更に好ましくは0.2〜10重量%が挙げられる。
【0017】
また、例えば、(A)薬理活性成分として、抗炎症剤及び抗ヒスタミン剤を配合する場合であれば、外用医薬組成物の総重量に対して、抗炎症剤が0.01〜10重量%、及び抗ヒスタミン剤が0.01〜10重量%;好ましくは抗炎症剤が0.05〜7.5重量%、及び抗ヒスタミン剤が0.05〜7.5重量%;更に好ましくは抗炎症剤が0.1〜5重量%、及び抗ヒスタミン剤が0.1〜5重量%となる割合が例示される。
【0018】
本発明の外用医薬組成物に含まれる(B)金属セッケンとは、高級脂肪酸、樹脂酸、ナフテン酸等の金属塩(但し、アルカリ金属塩を除く)であり、具体的には、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸塩;ミリスチン酸アルミニウム、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸カルシウム等のミリスチン酸塩;ラウリン酸アルミニウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム等のラウリン酸;パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム等のパルミチン酸塩等が例示される。これら金属セッケンの中で、好ましくはステアリン酸塩であり、更に好ましくはステアリン酸アルミニウム、及びステアリン酸マグネシウムである。これらの金属セッケンは、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの金属セッケンを採用することにより、油浮き等が抑制されて、一層優れた安定性を備えることが可能になると共に、外用医薬組成物の硬度を適度に調整して、適量の外用医薬組成物を指でより一層取り易くすることが可能になる。
【0019】
金属セッケンの配合割合としては、使用する金属セッケンの種類、外用医薬組成物の形態、使用する粉末成分の種類や量等によって異なり、一律に規定することはできないが、例えば、外用医薬組成物の総重量に対して、該金属セッケンを通常0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、更に好ましくは1〜3重量%となる割合が挙げられる。上記範囲内であれば、経時的に油浮き等が生じずに安定で、使用感も良好な外用医薬組成物を得ることができる。
【0020】
また、本発明の外用医薬組成物に含まれる(C)粉末成分としては、皮膚に適用可能で薬学的に許容されるものであって、非水溶性の粉体成分である限り、特に制限されない。粉末成分として、具体的には、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン等のデンプン、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、グンジョウ、ナイロン、メチルメタアクリレート、シリコン樹脂、シリコンゴム、セルロース等が例示される。これらの粉末成分は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0021】
本発明の外用医薬組成物において、粉末成分として、トウモロコシデンプン、タルク及び酸化チタンよりなる群から選択される2種以上を使用することが望ましく、特に、タルクと酸化チタンとの併用が望ましい。このような態様で2種以上の粉末成分を併用することにより、外用医薬組成物の塗布時の皮膚患部での滑り、及び皮膚患部におけるさらさらとした塗布面の形成を、一層良好にすることができる。このように2種以上の粉末成分を併用する場合、各粉末成分の併用割合については制限されるものではないが、その一例として、以下の併用割合が例示される:タルクと酸化チタンを併用する場合であれば、タルク100重量部に対して、酸化チタンが1〜30重量部、好ましくは5〜25重量部;またトウモロコシデンプンと酸化チタンを併用する場合であれば、トウモロコシデンプン100重量部に対して、酸化チタンが1〜30重量部、好ましくは5〜30重量部。
【0022】
本発明の外用医薬組成物に含まれる粉末成分の割合については、使用する粉末成分の種類、該組成物の形態等に応じて適宜設定される。粉末成分の配合割合の一例として、外用医薬組成物の総重量に対して、該粉末成分が総量で、通常20〜70重量%、好ましくは25〜60重量%、更に好ましくは30〜50重量%となる割合が挙げられる。上記範囲内で粉末成分を含有すれば、皮膚患部に対して優れた乾燥作用を発揮すると共に、外用医薬組成物の指での取り易さ、皮膚患部上での滑り、さらさらとした塗布面の形成等の点でも良好になり、優れた使用感を得ることができる。
【0023】
また、本発明の外用医薬組成物には、油性基剤成分として、(D)ワックスを含有する。本発明に使用されるワックスとしては、常温で固体状であって、薬学的に許容され、外用医薬組成物を固形化させ得る限り特に制限されない。ワックスとしては、具体的には、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ライスワックス、モクロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ、ゲイロウ、ラノリンロウ、セラック、ミンクロウ等の動物系ワックス;固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等の石油系ワックス;セレシン、モンタンワックス、オゾケライト、ヘクトライト、ベントナイト、モンモリロナイト等の鉱物系ワックス;ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、セタノール等の高級アルコール類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸類等が例示される。これらのワックスは、1種単独で、また2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、カルナウバロウ、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリンが好適である。
【0024】
本発明の外用医薬組成物に含まれるワックスの割合については、使用するワックスの種類、該組成物の形態、該組成物の硬度等に応じて適宜設定される。例えば、ワックスの配合割合として、外用医薬組成物の総重量に対して、該ワックスが総量で、1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%、更に好ましくは3〜10重量%となる割合が挙げられる。上記範囲内で粉末成分を含有すれば、外用医薬組成物に所望の硬度を付与して固形状の形態を備えさせることが可能になる。
【0025】
更に、本発明の外用医薬組成物は、更に油性基剤として、(E)液状油を含有する。油性基剤として、液状油を含有することによって、本発明の外用医薬組成物の安定性及び使用感を一層向上させることができる。ここで、液状油としては、20±5℃で液状のものであれば、植物系、動物系、石油系等のいずれであってもよい。20±5℃で液状であるか否かは、危険物確認試験実施マニュアル、第3章、その他の確認方法、1.液状確認[新日本法規出版株式会社、危険物技術研究会編、p91−92]に従って確認することができる。液状油として、具体的には、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、(カプリル・カプリン酸)グリセリン、アジピン酸ジイソプロピル、オレイン酸エチル、オクチルドデカノール、スクワラン、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、液状ラノリン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状シリコーン、オリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、アボカド油、アルモンド油、カカオ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、パーシック油、ミンク油、綿実油、ヤシ油、卵黄油等が挙げられる。これらの液状油剤は、1種単独で、また2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、イソステアリン酸イソセチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、スクワラン、流動パラフィン、軽質流動パラフィンが好適である。
【0026】
液状油剤を配合する場合、その配合割合としては、使用する液状油剤の種類、組成物の形態や硬度等によって異なり、一律に規定することはできないが、例えば、外用医薬組成物の総重量に対して、該液状油剤を20〜70重量%、好ましくは25〜65重量%、更に好ましくは30〜60重量%となる割合が挙げられる。
【0027】
本発明の外用医薬組成物には、本発明の効果を妨げないことを限度として、前述の配合成分の他に、必要に応じて、保湿剤、香料、着色剤、清涼化剤、精油成分、温感、温熱成分、エキス類、界面活性剤、溶剤、溶解剤、pH調整剤、緩衝剤、基剤、発泡剤、消泡剤、乳化剤、懸濁剤、軟化剤、粘ちょう剤、分散剤、賦形剤、滑沢剤、酸化防止剤、防腐剤、保存剤、可塑剤等の任意成分を適当量配合してもよい。
【0028】
本発明の外用医薬組成物は固形状であり、その硬度については、外用医薬組成物として使用し得ることを限度として、特に制限されるものではない。外用医薬組成物の指での取り易さや皮膚患部上での滑り等の使用感を良好にするという点からは、その硬度が50〜750g/mm2、好ましくは75〜650g/mm2、更に好ましくは100〜550g/mm2であることが望ましい。本発明において、固形状の組成物の硬度は、レオメーター(CR-500DX;株式会社サン科学製)により、検体保存温度25℃、最大荷重2kg、感圧軸(アダプター)の針径3mmφ、テーブル移動速度20mm/minにおける針入度試験において、感圧軸を深さ1mmまで押し込む際に感圧軸にかかる荷重(g/mm2)である。
【0029】
本発明の外用医薬組成物は、あせも、かぶれ、オムツかぶれ、しもやけ、あかぎれ、虫さされ、皮膚炎、湿疹、皮膚掻痒症、痒疹、ただれ、じんましん、日焼けに伴うほてり・いたみ・かゆみ、水虫、ぜにたむし、いんきんたむし、たむし等の皮膚疾患の治療剤として使用される。特に、本発明の外用医薬組成物は、薬理活性成分による薬理作用と共に、粉末成分による皮膚患部の乾燥作用を複合して発揮させることができるので、特に湿潤型の症状を呈する皮膚疾患(例えば、あせも、かぶれ、オムツかぶれ、水虫、いんきんたむし等)の治療剤として有用性が高い。
【0030】
本発明の外用医薬組成物は、上記の含有成分を配合し、常法に従って製造することができる。特に、油浮き等がなく、経時的安定に一層優れている外用医薬組成物を製造するには、以下の工程(1)〜(3)に従って製造することが望ましい:
工程(1) (B)金属セッケン、(D)ワックス及び(E)液状油を90℃程度以上、好ましくは90〜110℃に加熱しながら混合することにより、半透明のゲル状混合物を得る工程、
工程(2) 前記工程(1)で得られた半透明のゲル状混合物に、(A)薬理活性成分、(C)粉末成分及びその他任意配合成分を添加し混合して、(A)〜(E)成分を含有する混合物を得る工程、及び
工程(3) 前記工程(2)で得られた混合物を冷却して、固形状の外用医薬組成物を得る工程。
【0031】
なお、上記製造方法の工程(2)における混合は、減圧雰囲気で行うことが望ましい。かかる減圧雰囲気としては、例えば50mmHg〜400mmHg、好ましくは50mmHg〜300mmHgが例示される。
【発明の効果】
【0032】
本発明の外用医薬組成物は、薬理活性成分に基づく薬理作用と粉末成分に基づく皮膚患部の乾燥作用が発揮されるので、皮膚疾患の治療効果が優れている。
【0033】
また、本発明の外用医薬組成物は、安定性や使用感の点でも以下の優れた効果が奏される:
(i)経時的安定性に優れており、保存によっても、油浮き等の性状変化は認められない。
(ii)使用に際して、適量の外用医薬組成物を指で容易に取ることができる。
(iii)皮膚患部において、外用医薬組成物の滑りが良好であり、該組成物の均一な塗布面を容易に形成することができる。
(iv)皮膚患部において、べたつきがなく、さらさらとした塗布面を形成できる。
(v)固形状であり、手で患部に塗り拡げることにより適用されるので、適用時に含有成分が飛散することなく、衛生的に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、試験例及び実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の表中に示す数値の単位は、特段示さない限り、重量(g)である。
【0035】
試験例1 使用感及び安定性の評価
表1及び2に示す処方の固形状の外用医薬組成物(実施例1−6及び比較例1−10)を調製した。各外用医薬組成物のレオメータ測定値による硬度を以下の条件で測定した:測定条件:レオメーター(CR-500DX;株式会社サン科学製)、検体保存温度25℃、感圧軸の針径3mmφ、針入速度20mm/min、針入長1mm、最大荷重2kg。
【0036】
また、各外用医薬組成物の安定性及び使用感について、以下の方法に従って評価した。
(1)安定性の評価方法
容器に充填した各外用医薬組成物(約10g)を40℃、相対湿度75%の条件下で1週間保存した。保存後、各外用医薬組成物の外観性状を目視にて確認し、下記の評価基準に従って判定した。
<安定性評価基準>
○:外用医薬組成物の表面に油浮きが一切認められない。
×:外用医薬組成物の表面に油浮きが認められる。
【0037】
(2)使用感の評価方法
12名の被験者(健常者10名、湿潤型皮膚疾患の患者2名)により以下の方法で、各外用医薬組成物の使用感の評価を行った。具体的には、各外用医薬組成物の適量を指で取り、これを肘の内側に塗布した。各被験者が、(1)各外用医薬組成物の取り易さ、(2)各外用医薬組成物を塗布する際の皮膚上での滑りの程度、及び(3)皮膚上に形成された各外用医薬組成物の塗布面のさらさら感について、「良好である」、「やや良好である」、「普通である」、「やや悪い」及び「悪い」の5段階で判定を行った。得られた各被験者の判定結果を、下記基準に従って統計処理して、各外用医薬組成物の使用感について評価した。
<使用感の評価基準>
○:「良好である」「やや良好である」と回答した人数が9人以上
△:「良好である」「やや良好である」と回答した人数が5〜8人
×:「良好である」「やや良好である」と回答した人数が4人以下。
【0038】
得られた結果を表1及び2に示す。この結果から、本発明の外用医薬組成物(実施例1−6)は、40℃で保存しても、油浮き等の外観性状に変化は認められず、安定性に優れていることが分かった。更に、本発明の外用医薬組成物(実施例1−6)は、(1)指での取り易さに優れていること、(2)皮膚上での滑りの程度が良好であり、均一な塗布面を容易に形成できること、(3)皮膚上でさらさらした塗布面が形成されること、が確認され、使用感の点でも良好であることが明らかとなった。
【0039】
これに対して、比較例1−10の外用医薬組成物では、優れた安定性と良好な使用感の双方を兼ね備えることはできないことが確認された。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
試験例2 製造方法の検討
表3に示す固形状外用医薬組成物(実施例7)を、以下の方法に従って製造した。即ち、真空乳化機中で、ステアリン酸アルミニウム((B)成分)、セレシン((D)成分)、軽質流動パラフィン((E)成分)、スクワラン((E)成分)、及びイソステアリン酸イソセチル((E)成分)を所定量混合して、大気圧下で100に加熱しながら撹拌し、半透明のゲル状の混合物を調製した。次いで、このゲル状混合物を80℃に冷却した後、該ゲル状混合物に、ブフェキサマク((A)成分)、マレイン酸クロルフェニラミン((A)成分)、酢酸トコフェロール((A)成分)、タルク((B)成分)、酸化チタン((B)成分)、及びシリカ((B)成分)を所定量添加して、100mmHgまで減圧して、80℃で60分間撹拌した。次いで、斯くして得られた混合物を所定の容器に充填して冷却することにより、固形状外用医薬組成物(実施例7)を製造した。
【0043】
上記の方法により製造された固形状外用医薬組成物は、50℃、相対湿度60%という過酷条件下で1週間保存しても、浮き等の外観性状に変化は認められず、極めて優れた安定性を備えていることが分かった。
【0044】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)薬理活性成分、(B)金属セッケン、(C)粉末成分、(D)ワックス及び(E)液状油を含むことを特徴とする、固形状の外用医薬組成物。
【請求項2】
(A)薬理活性成分が、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、抗菌剤、局所麻酔剤、収斂剤、及びビタミン類よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の外用医薬組成物。
【請求項3】
(B)金属セッケンが、ステアリン酸の塩である、請求項1に記載の外用医薬組成物。
【請求項4】
(C)粉末成分が、トウモロコシデンプン、タルク及び酸化チタンよりなる群から選択される2種以上である、請求項1に記載の外用医薬組成物。
【請求項5】
(D)ワックスが、カルナウバロウ、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、及びワセリンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の外用医薬組成物。
【請求項6】
(E)液状油が、イソステアリン酸イソセチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、スクワラン、流動パラフィン、及び軽質流動パラフィンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の外用医薬組成物。
【請求項7】
レオメータ測定値による硬度が50〜750g/mm2(測定条件:検体温度25℃、感圧軸の針径3mmφ、針入速度20mm/min、針入長1mm)である、請求項1乃至6の何れかに記載の外用医薬組成物。
【請求項8】
下記の工程(1)〜(3)を含有する、(A)薬理活性成分、(B)金属セッケン、(C)粉末成分、(D)ワックス及び(E)液状油を含む固形状の外用医薬組成物の製造方法:
工程(1) (B)金属セッケン、(D)ワックス及び(E)液状油を90℃以上に加熱しながら混合することにより、半透明のゲル状混合物を得る工程、
工程(2) 前記工程(1)で得られた半透明のゲル状混合物に、(A)薬理活性成分及び(C)粉末成分を添加して、(A)〜(E)成分を含有する混合物を得る工程、及び
工程(3) 前記工程(2)で得られた混合物を冷却して、固形状の外用医薬組成物を得る工程。

【公開番号】特開2007−99648(P2007−99648A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289314(P2005−289314)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】