説明

固液分離システム

【課題】固液分離システムにおける分離効率を向上して処理時間を短縮するとともに、設置スペースを縮小する。
【解決手段】原水に、原水中の固体を凝集してフロックを形成する際に利用される凝集助剤を注入する凝集剤注入装置5と、凝集助剤が注入された原水に、原水を所定のpH値に調整するpH調整剤を注入する第1pH調整剤注入装置7と、pH調整剤が注入された原水が流入して原水中のフロックが重力沈降すると、沈降したフロックを汚泥として排出するとともに、フロックが沈降後の原水の上澄を処理水として排出する沈殿槽8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理や浄水処理等の水処理で固形物を含む原水から固形物を分離する固液分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
排水処理や浄水処理等の水処理では、原水に含まれる懸濁物質や濁度成分等の固体の分離には、図9に示すような凝集剤と凝集助剤による凝集と重力沈降槽を利用した沈降分離の利用が一般的である。例えば、図9に示す固液分離システム100では、処理の対象となる原水は、水質や水量を調整するための調整槽1に送水される。調整された原水は、混和槽2に送水される。混和槽2では、凝集剤注入装置3から凝集剤が注入され、混合装置2aによって混和される。混和槽2では、凝集剤が水中の懸濁物質と結合し、細かなフロックとなる。フロックを含む原水はpH調整槽12に送水される。pH調整槽12では、後段の凝集槽4において凝集助剤の凝集域に当てはまるようにpH調整剤注入装置13からpH調整剤が注入され、混合装置12aによって混合される。pHが調整された原水は凝集槽4に送水される。凝集槽4では、凝集助剤注入装置5から凝集助剤が注入され、混合装置4aによって攪拌されて、フロックがより大きく成長する。沈殿槽8では、凝集槽4から流入する原水から重力によってフロックを沈降させて分離する。沈降したフロックは、掻寄機9によって掻き寄せられてフロック排出口から排出される。また、上澄みは処理水となり、処理水排出口から排出される。沈殿槽8から排出されたフロックは汚泥としてスラリポンプ10によって汚泥脱水機11に流入し、汚泥脱水機11で脱水されて乾燥汚泥として処理される。一方、沈殿槽8から排出された処理水は、pH調整槽20に流入し、放流の基準値に適合するようにpH調整剤注入装置21によってpHが調整される。
【0003】
すなわち、図9に示すように、従来の固液分離システム100では、水と懸濁物質や濁度成分のフロックとの比重差を利用し、水よりも比重の大きいフロックを沈降させた後に上澄液を処理水として得ることで、原水を固体(懸濁物質、濁度成分)と液体(処理水)とに分離している。
【0004】
このような固液分離システムは、フロックの沈降速度が遅いために沈殿槽での滞留時間を長くする必要があるため、沈殿槽の体積が大きくなる。したがって、沈殿槽における処理速度を低下させるため、傾斜管や傾斜板を利用して分離効率を向上させることもある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−85907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、傾斜管や傾斜板を利用したとしても分離効率の向上や処理時間の短縮には限界があり、沈殿槽の設置には広いスペースの確保が必要であった。また、水流によるせん断力を受けてフロック径が小さくなると、沈降速度が減少することがあった。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、固形物を含む水から固形物を取り除く固液分離装置の分離効率を向上して処理時間を短縮するとともに、固形物分離装置の設置スペースを縮小する固液分離システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は固体を含む原水が流入されると、この原水を固体と液体とに分離する固液分離システムであって、原水に、原水中の固体を凝集してフロックを形成する際に利用される凝集助剤を注入する凝集剤注入装置と、凝集助剤が注入された原水に、原水を所定のpH値に調整するpH調整剤を注入する第1pH調整剤注入装置と、pH調整剤が注入された原水が流入して原水中のフロックが重力沈降すると、沈降したフロックを汚泥として排出するとともに、フロックが沈降後の原水の上澄を処理水として排出する沈殿槽とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、固形物を含む水から固形物を取り除く固液分離装置の分離効率を向上して処理時間を短縮するとともに、固形物分離装置の設置スペースを縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る固液分離システムの概略図である。
【図2】第2の実施形態に係る固液分離システムの概略図である。
【図3】第3の実施形態に係る固液分離システムの概略図である。
【図4】第4の実施形態に係る固液分離システムの概略図である。
【図5】第5の実施形態に係る固液分離システムの概略図である。
【図6】第6の実施形態に係る固液分離システムの概略図である。
【図7】第7の実施形態に係る固液分離システムの概略図である。
【図8】第8の実施形態に係る固液分離システムの概略図である。
【図9】従来の固液分離システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を用いて本発明の各実施形態に係る固液分離システムについて説明する。本発明に係る固液分離システムは、図9を用いて上述した従来の固液分離システム100と同様に、排水処理や浄水処理等の水処理において、懸濁物質等の固体を含む原水を固体と液体とに分離する装置である。また、以下の説明において、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0012】
〈第1の実施形態〉
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る固液分離システム100aは、処理対象である原水が導入される調整槽1と、調整槽1で調整された原水が導入される混和槽2と、原水に凝集剤を注入する凝集剤注入装置3と、混和槽2で凝集剤が混和された原水が導入される凝集槽4と、原水に凝集剤によって形成されるフロックを硬化又は強化させる凝集助剤を注入する凝集助剤注入装置5と、硬化又は強化されたフロックを含む原水が導入される第1pH調整槽6と、原水のpH値を変化させるpH調整剤を注入する第1pH調整剤注入装置7と、pH値が調整された原水が導入されてフロックを沈降させる沈殿槽8と、沈降したフロックを排出口に掻き寄せる掻寄機9と、スラリポンプ10によって沈殿槽8から排出されたフロックをスラリとして導入し、スラリを圧搾して含水率を下げ、脱水汚泥とする汚泥脱水機11とを備えている。
【0013】
汚泥脱水機11で脱水された脱水汚泥は、例えば廃棄物として廃棄される。また、脱水汚泥が再生可能な金属等を含む場合や有機物等を含む場合は、脱水汚泥は再利用のプロセスに供給される。一方、沈殿槽8で原水からフロックが分離されて上澄みとして得られる処理水は、後段の処理プロセスへと導水されるか、あるいはpH値の調整等の必要な処理を経た後に下水道や河川に放流される。
【0014】
凝集剤注入装置3は、混和槽2内の原水に、原水に含まれる固体を凝集させる凝集剤を注入する。凝集剤には、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化第2鉄、硫酸バンド等の無機系の凝集剤を利用する。ここで利用する凝集剤の種類は、原水に含まれる固体の種類や量や帯電状態によっても異なり、固液分離システム100aが処理対象の原水によって定められる。
【0015】
混和槽2は、内部に、混和槽2内の原水を混和する混合装置2aを有している。混和槽2内では、混合装置2aが原水と凝集剤とを混和すると、凝集剤による凝集効果によって原水中の懸濁物質等の固体が凝集してフロックに成長する。
【0016】
凝集助剤注入装置5は、凝集槽4内の原水に、凝集剤の凝集効果で形成されたフロックを硬化させたり強化させる凝集助剤を注入する。凝集助剤には、ポリアクリルアミド等の有機高分子凝集剤を利用する。ここで使用する凝集助剤は、原水に含まれる固体の種類や量によっても異なり、固液分離システム100aが処理対象の原水によって定められる。すなわち、この凝集助剤注入装置5が注入する凝集助剤は、凝集を促進させる目的で用いられるだけではなく、主に凝集で生成されたフロックを硬化又は強化させる目的で用いる。フロックの表面の状態を硬く(硬化)することで、フロックが破壊されにくくなる。また、フロックの結合を強く(強化)することでも、フロックが破壊されにくくなる。
【0017】
凝集槽4は、内部に、凝集槽4内の原水を混合する混合装置4aを有している。凝集槽4内では、混合装置4aで原水と凝集助剤を混合することで、凝集助剤の分子量の大きさと架橋作用によってフロック同士を強固に結合させ、フロックの耐久性を向上させる。
【0018】
第1pH調整剤注入装置7は、原水のpH値を変化させる塩酸、苛性ソーダ、消石灰等のpH調整剤を注入する。原水のpH値を所定の値にコントロールすると、原水内で正負電荷をもつイオンの存在バランスに変化が生じるため、原水に存在しているフロックの表面の荷電状態を変化させる。たとえば、凝集助剤の種類によっては、原水のpH値をアルカリ性にしてフロックの表面の荷電状態を変化させたことで、強固なフロックを形成させるものがある。したがって、固液分離装置100aでは、原水に含まれる固体の種類や量に応じて最適なpH値になるような薬品を選択する。
【0019】
第1pH調整槽6は、内部に、第1pH調整槽6内の原水を混合する混合装置6aを有している。第1pH調整槽6内では、混合装置6aで原水とpH調整剤を混合することで、原水中のフロックが、凝集槽4で形成されたよりも硬く又は強固なフロックに成長させ、フロックの耐久性を向上させる。
【0020】
図9を用いて上述した従来の固液分離システム100でもpH調整剤を注入していたが、pH値の調整の目的は、水質汚濁防止法等の水質基準に基づいて処理水のpH値を下水道や河川等の放流の基準に適合させて中性にするためであった。これに対し、本発明の第1の実施形態に係る固液分離システム100aでは、沈殿槽8で得られた処理水ではなく、沈殿槽8より前段の原水にpH調整剤を注入し、フロックの表面の状態を変化させて水流によって壊れにくく、抗力を受けにくいフロックを形成することができる。また、沈殿槽8よりも前にpH値を調整しているために、沈殿槽8の後段のpH値の調整も不要となる。さらに、沈殿槽8よりも前に原水を中性付近にすることで、配管や沈殿槽8の材質への負担を軽減することができる。
【0021】
上述したように、第1の実施形態に係る固液分離システム100aでは、凝集剤及び凝集助剤を利用して形成したフロックを含む原水にpH調整剤を注入し、フロックの荷電状態を変化させて、沈殿槽8で沈殿しやすいより強固なフロックを形成している。したがって、固液分離システム100aによれば、従来と比較して短時間でフロックを回収できるため、分離効率が向上する。また、沈殿槽8における沈殿時間を短縮することで、沈殿槽8を小さくすることができるため、従来と比較してシステムの設置スペースを縮小することができる。さらに、沈殿槽8よりも前の段階で原水を中性にすることで、配管や沈殿槽8の延命が可能となるとともに、材料の選択を容易にして低コスト化を実現することができる。
【0022】
〈第2の実施形態〉
図2に示すように、本発明の第2の実施形態に係る固液分離システム100bは、図1を用いて上述した第1の実施形態に係る固液分離システム100aと比較して、調整槽1に代えて、第2pH調整槽12を有している点で異なる。また、固液分離システム100bは、第2pH調整槽12にpH調整剤を注入する第2pH調整剤注入装置13を有している。
【0023】
第2pH調整剤注入装置13は、凝集剤注入装置3が注入する凝集剤の凝集域に合致するように、酸やアルカリ等のpH調整剤を注入して原水のpH値を所定の値に調整する。固液分離システム100bでは、原水に含まれる固体の種類や量に応じて適切なpH値になるような薬品を選択する。
【0024】
第2pH調整槽12は、内部に、第2pH調整槽12内の原水を混合する混合装置12aを有し、原水とpH調整剤を混合した後に原水を混和槽2へ送水する。
【0025】
上述したように、第2の実施形態に係る固液分離システム100bでは、第2pH調整剤注入装置13によってpH調整剤を注入して凝集剤の効果を得やすくするため、混和槽2において注入する凝集剤の量を低減することができるとともに、水質が変動した場合でも安定した水処理を行うことができる。
【0026】
また、第2の実施形態に係る固液分離システム100bによれば、第1の実施形態に係る固液分離システム100aと同様にシステム全体の省スペース化及びシステムの簡易化を実現し、分離効率を向上することができるとともに、沈殿槽8等の材料の選択を容易にして低コスト化を実現することもできる。
【0027】
〈第3の実施形態〉
図3に示すように、本発明の第3の実施形態に係る固液分離システム100cは、図2を用いて上述した第2の実施形態に係る固液分離システム100bと比較して、2台の凝集槽41,42と2台の凝集剤注入装置51,52を備えている点で異なる。すなわち、固液分離システム100cでは、混和槽2から原水を流入する第1凝集槽41と、第1凝集槽41から原水を流入する第2凝集槽42を有し、第1凝集槽41には第1凝集助剤注入装置51が凝集助剤を注入し、第2凝集槽42には第2凝集助剤注入装置52が凝集助剤を注入する。ここで、第1凝集助剤注入装置51が注入する凝集助剤と第2凝集助剤注入装置52が注入する凝集助剤とは異なる種類であっても良いし、同一の種類であっても良い。
【0028】
2回の凝集プロセスを設けることで、凝集槽41,42における滞留時間が長くなり、フロック同士の衝突や凝集助剤がフロックと接触して結合するまでの時間を確保して、より良好なフロック形成が可能となる。また、一般に、形成したフロックに凝集助剤を添加して再び攪拌することで、水中に残存していた懸濁物質等をフロックに取り込むことが可能となり、より清澄な処理水を得ることができる。
【0029】
上述したように、第3の実施形態に係る固液分離システム100cでは、複数の凝集槽を有することで、滞留時間が長くなり、より良好なフロック形成が可能となる。したがって、固液分離システム100cによれば、凝集効果を向上させて分離に最適なフロックを形成し、分離効率を向上することができる。
【0030】
また、第3の実施形態に係る固液分離システム100cによれば、第2の実施形態に係る固液分離システム100bと同様にシステム全体の省スペース化及びシステムの簡易化を実現し、分離効率を向上することができるとともに、沈殿槽8等の材料の選択を容易にして低コスト化を実現することもできる。
【0031】
〈第4の実施形態〉
図4に示すように、本発明の第4の実施形態に係る固液分離システム100dは、図3を用いて上述した第3の実施形態に係る固液分離システム100cと比較して、第2凝集槽42の後段で、pH調整槽6の前段にフロック形成槽14を備えている点で異なる。
【0032】
フロック形成槽14は、内部に、フロック形成槽14内の原水に緩速攪拌を与えるフロッキュレータ14aを有している。このフロッキュレータ14aは、羽を有する攪拌機であるが、混合装置2a、41a,42aよりも小さい攪拌強度で運転される。フロック形成槽14を利用してフロックの滞留時間を長くして、フロッキュレータ14aで攪拌することで、未反応で残存する凝集助剤を効果的に利用することができる。また、フロック形成槽14内で緩速攪拌を与えて穏やかな水流でフロックが滞留すると、フロックの形状が沈降速度が大きい球形に近づく。
【0033】
なお、図4に示す例では、フロック形成槽14は、第2凝集槽42の後段に配置されているが、いずれかの凝集槽41,42の後段であって、第1pH調整剤注入装置7がpH調整剤を注入する前に設置されていればよいため、第1凝集槽41と第2凝集槽42の間に配置されていてもよい。また、凝集槽4が1台しかない場合でも、フロック形成槽14を利用することで、凝集助剤との反応時間を長くすることができる。
【0034】
上述したように、第4の実施形態に係る固液分離システム100dでは、フロック形成槽14を利用して未反応で残存する凝集助剤を効果的に利用することが可能になる。したがって、固液分離システム100dによれば、使用する凝集助剤の量を低減させることができ、発生する脱水汚泥の量を減少させることもできる。
【0035】
また、第4の実施形態に係る固液分離システム100dでは、フロック形成槽14でフロックの形状を沈降速度の大きい球形に近づけることができる。したがって、固液分離システム100dによれば、処理時間を短縮するとともに分離効率を向上することができる。また、沈殿槽8を小型化してシステム設置スペースを減少するため、システム全体の省スペース化及びシステムの簡易化を実現することができる。
【0036】
なお、第4の実施形態に係る固液分離システム100dによれば、第3の実施形態に係る固液分離システム100cと同様に沈殿槽8等の材料の選択を容易にして低コスト化を実現することもできる。
【0037】
〈第5の実施形態〉
図5に示すように、本発明の第5の実施形態に係る固液分離システム100eは、図4を用いて上述した第4の実施形態に係る固液分離システム100dと比較して、第2pH調整剤に流入する原水のpH値を測定するpHセンサ15と、第2凝集槽42からフロック形成槽14に流入する原水のpH値を測定するpHセンサ16を備えている点で異なる。
【0038】
固液分離システム100eの第2pH調整剤注入装置13は、pHセンサ15の測定結果を入し、pHセンサ15の測定結果に応じた量のpH調整剤を第2pH調整槽12に注入する。すなわち、第2pH調整剤注入装置13は、pHセンサ15の測定結果を利用してフィードフォワード制御する。この第2pH調整剤注入装置13は、例えば、原水のpH値とpH調整剤の注入量の関係を表わす関係式を記憶しており、入力したpH値に対応する注入量を求めpH調整剤を注入する。
【0039】
また、固液分離システム100eの第1pH調整剤注入装置7は、pHセンサ16の測定結果を入し、pHセンサ16の測定結果に応じた量のpH調整剤を第1pH調整槽6に注入する。すなわち、第1pH調整剤注入装置7は、pHセンサ16の測定結果を利用してフィードフォワード制御する。この第1pH調整剤注入装置7は、例えば、原水のpH値とpH調整剤の注入量の関係を表わす関係式を記憶しており、入力したpH値に対応する注入量を求めpH調整剤を注入する。
【0040】
なお、pHセンサ16は、pH調整槽6よりも前であればよく、混和槽2と第1凝集槽41の間に設置してもよいし、第1凝集槽41と第2凝集槽42の間に設置してもよいし、槽41,42,14内に設置してもよい。
【0041】
上述したように、第5の実施形態に係る固液分離システム100eでは、第1pH調整剤注入装置7及び第2pH調整剤注入装置13は、原水のpH値に応じた適量の調整剤を注入する。したがって、固液分離システム100eによれば、適切な量のpH調整剤の注入が可能となり、凝集剤や凝集助剤に対しても最適なpH値にすることが可能となり、良好なフロックの形成を実現することができる。
【0042】
また、第5の実施形態に係る固液分離システム100eによれば、第4の実施形態に係る固液分離システム100dと同様にシステム全体の省スペース化及びシステムの簡易化を実現することができるとともに、分離効率を向上することができる。
【0043】
〈第6の実施形態〉
図6に示すように、本発明の第6の実施形態に係る固液分離システム100fは、図5を用いて上述した第5の実施形態に係る固液分離システム100eと比較して、pHセンサ15,16の設置位置が異なる。すなわち、図5に示す固液分離システム100eでは、pHセンサ15,16はpH調整剤を注入する前の原水のpH値を測定し、測定結果はpH調整剤注入装置13,7のフィードフォワード制御に使用していた。これに対し、図6に示す固液分離システム100fでは、pHセンサ15は、混和槽2から流出して第1凝集槽41に流入する原水のpH値を測定し、測定結果は第2pH調整剤注入装置13におけるフィードバック制御に利用する。また、pHセンサ16は、第1pH調整槽6から流出して沈殿槽8に流入する原水のpH値を測定し、測定結果は第1pH調整剤注入装置7におけるフィードバック制御に利用する。
【0044】
なお、pHセンサ15の設置位置は、混和槽2の後段から第1pH調整槽6の間であればどの位置に設置していてもよい。また、pHセンサ16の設置位置は、第1pH調整槽16の後段であればよいため、沈殿槽8内に設置してもよいし、沈殿槽8から処理水を流出するラインに設置してもよい。
【0045】
上述したように、第6の実施形態に係る固液分離システム100fでも、固液分離システム100eと同様に適切な量のpH調整剤の注入が可能となり、凝集剤や凝集助剤に対しても最適なpH値にすることが可能となり、良好なフロックの形成を実現することができる。また、システム全体の省スペース化及びシステムの簡易化を実現することができるとともに、分離効率を向上することができる。
【0046】
〈第7の実施形態〉
図7に示すように、本発明の第7の実施形態に係る固液分離システム100gは、図6を用いて上述した第6の実施形態に係る固液分離システム100gと比較して、送水ポンプ17を備え、沈殿槽8に代えてサイクロン18を備えている点で異なる。
【0047】
サイクロン18は、内部で原水が旋回するようにpH調整槽6で調整された原水を流入し、旋回で生じる遠心力を利用して原水中のフロックを沈降させる。サイクロン18は、沈降したフロックを汚泥として汚泥脱水機11に排出し、フロックが分離された上澄みを処理水として排出する。サイクロン18は、遠心力を利用して固液分離するため、通常の重力沈降よりも大きな沈降速度を得ることができる。
【0048】
送水ポンプ17は、原水がサイクロン18内で必要な旋回流が生じるような水流で原水を加圧してサイクロン18に送水する。
【0049】
上述したように、第7の実施形態に係る固液分離システム100gでは、遠心分離を行うサイクロン18によってフロックを分離している。したがって、重力沈降を利用するシステムよりも分離速度を短縮することができる。
【0050】
また、第7の実施形態に係る固液分離システム100gによれば、第6の実施形態に係る固液分離システム100fと同様にシステム全体の省スペース化及びシステムの簡易化を実現し、分離効率を向上することができるとともに、沈殿槽8等の材料の選択を容易にして低コスト化を実現することもできる。
【0051】
〈第8の実施形態〉
図8に示すように、本発明の第8の実施形態に係る固液分離システム100hは、図7を用いて上述した第7の実施形態に係る固液分離システム100gと比較して、サイクロン18から汚泥脱水機11に汚泥を引き抜く引抜ポンプ19を備えている点で異なる。
【0052】
一般的に、サイクロン18では、底部で下向きに引き抜く流れを起こすことで分離効率が向上する。したがって、引抜ポンプ19で下向きの流を作ることで、サイクロン18での分離効率を向上することができる。
【0053】
上述したように、第8の実施形態に係る固液分離システム100hでは、引抜ポンプ19によってサイクロン18内の原水に下向きの流れを起こしている。したがって、サイクロン18内での分離効率を向上することができる。
【0054】
また、第8の実施形態に係る固液分離システム100hによれば、第7の実施形態に係る固液分離システム100gと同様にシステム全体の省スペース化及びシステムの簡易化を実現し、分離効率を向上することができるとともに、沈殿槽8等の材料の選択を容易にして低コスト化を実現することもできる。
【符号の説明】
【0055】
100a〜100h…固液分離システム
1…調整槽
2…混和槽
2a…混合装置
3…凝集剤注入装置
4,41,42…凝集槽
4a,41a,42a…混合装置
5,51,51…凝集助剤注入装置
5a,51a,52a…混合装置
6…pH調整槽(第1pH調整槽)
6a…混合装置
7…第1pH調整剤注入装置
8…沈殿槽
9…掻寄機
10…スラリポンプ
11…汚泥脱水機
12…第2pH調整槽
12a…混合装置
13…第2pH調整剤注入装置
14…フロック形成槽
14a…フロッキュレータ
15,16…pHセンサ
17…送水ポンプ
18…サイクロン
19…引抜ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体を含む原水が流入されると、この原水を固体と液体とに分離する固液分離システムであって、
第2pH調整槽の原水に、原水を所定のpH値に調整するpH調整剤を注入する第2pH調整剤注入装置と、
前記第2pH調整槽の後段に設置され、pH調整剤が注入された原水を貯留する混和槽に、原水中の固体を凝集する凝集剤を注入する凝集剤注入装置と、
前記混和槽の後段に設置され、凝集剤が注入された原水を貯留する凝集槽に、原水中の固体を凝集してフロックを形成する際に利用される凝集助剤を注入する凝集助剤注入装置と、
前記凝集槽の後段に設置され、流入する原水を攪拌する攪拌機を内部に有し、原水を滞留させてフロックを清澄させるフロック形成槽と、
前記凝集槽の後段に設置され、凝集助剤が注入された原水を貯留する第1pH調整槽に、凝集助剤が導入された原水を所定のpH値に調整するpH調整剤を注入する第1pH調整剤注入装置と、
前記第2pH調整剤注入装置がpH調整剤を注入した後、前記第1調整剤注入装置がpH調整剤を注入する前のpH値を測定する第2pHセンサと、
前記第1pH調整剤注入装置がpH調整剤を注入した後のpH値を測定する第1pHセンサと、
pH調整剤が注入された原水が流入して内部で旋回させ、遠心力を利用して原水中のフロックが沈降すると、沈降したフロックを汚泥として排出するとともに、フロックが沈降後の原水の上澄みを処理水として排出するサイクロンと、
を備え、
前記第1pH調整剤注入装置は、前記第1pHセンサの測定結果に応じた量のpH調整剤を原水に注入し、前記第2pH調整剤注入装置は、前記第2pHセンサの測定結果に応じた量のpH調整剤を原水に注入することを特徴とする固液分離システム。
【請求項2】
前記サイクロンの後段に設置され、前記サイクロン内で原水の上部から底部への流れを発生させるポンプをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の固液分離システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−223764(P2012−223764A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153704(P2012−153704)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2009−238687(P2009−238687)の分割
【原出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】