説明

圧力発生装置

【課題】 サージ圧の発生を防止する。
【解決手段】 シリンダ本体2内にピストン10が収容され、シリンダ本体2のシリンダキャップ4とシリンダヘッド6との間で摺動可能である。シリンダキャップ4側に形成された部屋16が閉塞鍛造装置の圧力流体室に接続され、シリンダヘッド6側に形成されている部屋20が、蓄圧器に接続されている。ピストン10は、ピストン部材12、14からなり、ピストン部材12は、シリンダキャップ4側に位置し、ピストン部材14は、シリンダヘッド6側に位置し、部屋16の容積が最小で、部屋20の容積が最大の状態において、ピストン部材12、14間には間隙s1がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば閉塞鍛造装置において上型と下型とを閉塞するための圧力を発生させたり、プレス機のダイクッション装置として圧力を発生する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記の圧力発生装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。特許文献1の技術によれば、圧力発生装置のシリンダの内部が、ピストンによって上室と中室とに区画され、上室は、上型を支持する上ダイセットの圧力室と、下型を支持する下ダイセットの圧力室とに接続されている。上ダイセットは、スライドに取り付けられている。シリンダは、中室の下方に中室と区画壁によって区画された下室を有し、中室は、区画壁に形成された孔を介してシリンダの下室に接続されている。下室には蓄圧器が接続されている。上ダイセット及び下ダイセットのピストンが上限及び下限位置にあるとき、蓄圧器の圧力によってピストンはシリンダの上部に移動している。この状態において、スライドを下降させると、上型が下型に当接して閉塞され、更にスライドが下降すると、上ダイセット及び下ダイセットの圧力室が加圧され、その加圧油がシリンダの上室に流入し、ピストンを押し下げる。これに伴い中室内の油が下室から蓄圧器に流入して蓄圧される。ピストンがストロークエンドに達してピストンが停止する。その後、更にスライドが下降するこよによって上型と下型内で閉塞鍛造が行われる。
【0003】
【特許文献1】実開平4−33439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成では、上下ダイセットの圧力室から加圧油がシリンダの上室に流入する際に、ピストンの受ける衝撃が大きく、サージ圧が発生する。そのため、圧力発生装置には耐圧性の高いものを使用しなければ、安全性及び耐久性が悪くなる。
【0005】
本発明は、加圧流体がシリンダに流入する際に、サージ圧の発生を防止した圧力発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の圧力発生装置は、シリンダ本体を有し、このシリンダ本体内にピストンが収容されている。ピストンは、シリンダ本体の一端部側から他端部側まで摺動可能である。ピストンの一端部から他端部への摺動に従って容積が増加する第1室が、シリンダ本体の一端側に形成されている。ピストンの一端側から他端側への摺動に従って容積が減少する第2室が、シリンダ本体の他端側に形成されている。第1室は、可変圧力源に接続されている。可変圧力源としては、例えば閉塞鍛造装置の上型及び下型ダイセットの圧力流体室を使用することができる。可変圧力源の圧力は、小さい圧力から大きい圧力に変化する。第2室は蓄圧手段に接続されている。従って、第2室の圧力は一定である。ピストンは、第1及び第2のピストン部材からなり、第1のピストン部材は、シリンダ本体の一端側に位置し、第2のピストン部材は、シリンダ本体の他端側に位置している。第1のピストン部材は、第1室側に前記可変圧力源の圧力を受ける第1受圧部を有し、第2のピストン部材側に第1受圧部よりも受圧面積の小さい第2受圧部を有している。第2のピストン部材は、第2室側に第2室の圧力を受ける第3受圧部を有すると共に、第2室から第1のピストン部材側に貫通し、第2受圧部に第2室の圧力を印加する貫通孔を有している。可変圧力源の圧力が最小の状態で、第2室の圧力が第2受圧部に印加されて第1室の容積を最小とするように第1のピストン部材に印加され、第2室の圧力が第3受圧部に印加された状態で、第1のピストン部材と第2のピストン部材との間に隙間が形成されている。なお、第2室の圧力によって第2のピストン部材が所定位置よりも上昇して、第1及び第2のピストン部材間に所定の間隙が形成されなくなることを防止するために、第2のピストン部材に対してシリンダ本体の一端部側への移動を拘束する拘束手段を設けることが望ましい。
【0007】
このように構成された圧力発生装置では、第1受圧部の受圧面積が第2受圧面積よりも大きいので、可変圧力源の圧力がわずかに上昇しただけで、第1のピストン部材が第2のピストン部材側に移動して、第1及び第2のピストン部材が接触し、両者が第2室側に移動を開始する。その後、可変圧力源の圧力が更に上昇して、第1受圧部に大きな力が印加されたときには、第1及び第2のピストン部材は既に移動を開始しているので、円滑に第1及び第2のピストン部材は移動する。従って、発生するサージ圧はごく僅かである。よって、この圧力発生装置をサージ圧に耐えるような耐久性の大きいものにする必要がない。また、サージ圧が殆ど発生しないので、例えば閉塞鍛造装置にこの圧力発生装置を使用した場合には、上型と下型とが接触する際に、これらが損傷することや大きな音が発生することもない。
【0008】
第1のピストン部材は、第2のピストン部材側に突出した突部を有するものとすることができる。この場合、突出部の先端が第2受圧部とされ、突出部は、貫通孔に挿通されている。突部は、第1のピストン部材とは別個に形成して、第1のピストン部材に結合することもできるし、第1のピストン部材と一体に形成することもできる。
【0009】
このように構成すると、突部が挿入部内に挿通されているので、第2受圧部である突部の先端に第2室の圧力が確実に印加される。また、第1のピストン部材が第2のピストン部材側に移動する際に、挿入部が案内としても機能する。
【0010】
第1室を、第1室側のみに加圧流体が供給される方向性の逆止弁を介して前記加圧流体源に接続すると共に、絞り弁を介して前記可変圧力源に接続することができる。
【0011】
このように構成すると、可変圧力源の圧力が最小の状態に戻る際に、第1室を最小容積に、第2室を最大容積とする状態に第1及び第2のピストン部材が復帰するが、この際に、第1室の加圧流体は絞り弁を介して可変圧力源に戻るので、ゆっくりと戻る。従って、例えば閉塞鍛造装置の場合には、上型と下型とが接触する際に、これらが損傷することや大きな音が発生することもない。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明による圧力発生装置によれば、シリンダ本体の第1室への圧力流体の流入時に、大きなサージ圧が発生することがなく、この圧力発生装置の耐圧性を極端に高める必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の1実施形態の圧力発生装置は、閉塞鍛造装置用の圧力発生装置であって、図1に示すように、シリンダ本体2を有している。シリンダ本体2は、その両端部が開口しており、その一方の端部がシリンダキャップ4によって閉じられ、他方の端部がシリンダヘッド6によって閉じられている。シリンダ本体2の長さ方向の中間には、シリンダ本体2の内径を狭めるように中間リング8が嵌められている。
【0014】
シリンダ本体2内にピストン10が設けられている。このピストン10は、シリンダキャップ4側に位置する第1のピストン部材12と、シリンダヘッド6側に位置する第2のピストン部材14とからなる。
【0015】
第1のピストン部材12は、シリンダ本体2の内径に等しい直径の円板状に形成され、シリンダ本体2内をその長さ方向に沿って正逆に摺動可能に構成されている。第1のピストン部材12のシリンダキャップ4側の面とシリンダキャップ4との間に第1室、例えば部屋16が形成されている。この部屋16は、第1のピストン部材12がシリンダキャップ4側に最も移動しているとき、図1に示すように最も容積が小さい。第1のピストン部材12がシリンダキャップ4側からシリンダヘッド6側に摺動すると、部屋16の容積が増加する。
【0016】
第1のピストン部材12は、それの第2のピストン部材14側の面の中央に、シリンダヘッド6側に突出した突出部、例えばピストンロッド18を有している。このピストンロッド18は、例えば円柱状で、第1のピストン部材12とは別個に形成され、第1のピストン部材12に結合されている。ピストンロッド18の直径は、第1のピストン部材12の直径よりもかなり小さい。
【0017】
第2のピストン部材14は、第1のピストン部材12よりもシリンダヘッド6側に寄った位置に配置され、シリンダ本体2の内径に等しい直径の円板状部14aを有している。円板状部14aは、中間リング8よりもシリンダヘッド6側に寄った位置に配置されている。円板状14aのシリンダヘッド6と反対側の面の中央に、円板状部14aよりも小径の円筒状部14bが中間リング8の内部を通って第1のピストン部材12側に向かって突出するように円板状部14aと一体に形成されている。円筒状部14bの直径は、中間リング8の内径にほぼ等しく、ピストンロッド18の直径よりも大きい。第2のピストン部材14もシリンダ本体2内をその長さ方向に沿って正逆に摺動可能である。但し、円板状部14aが中間リンク8のシリンダヘッド6側の面と接触すると、それ以上のシリンダキャップ4側への第2のピストン部材14の移動が阻止される。従って、中間リンク8は阻止手段として機能する。
【0018】
円板状部14aとシリンダヘッド6との間に第2室、例えば部屋20が形成されている。部屋20は、第2のピストン部材14がシリンダキャップ4側に最も寄った位置にあるとき、図1に示すように容積が最も大きくなり、シリンダヘッド6側に移動することによって容積が小さくなる。
【0019】
円筒状部14bの先端部中央から円板状部14a側に向かって途中まで、挿入部、例えば挿入孔22が形成されている。挿入孔22は、ピストンロッド18の直径と同じ径である。この挿入孔22の長さ寸法は、ピストンロッド18の長さ寸法以上、例えば長く形成されている。この挿入孔22の円板状部14a側の端部から、部屋20に連通する連通孔24が形成されている。この連通孔24と挿入孔22とが貫通孔を構成し、部屋20は、第1のピストン部材12側に連通している。
【0020】
部屋16は、可変圧力源、例えば図示していない閉塞鍛造装置の上型を支持する上ダイセットの圧力室と、下型を支持する下ダイセットの圧力室(図示せず)とに、シリンダキャップ4に形成された通路26と逆止弁(図示せず)を介して接続されている。逆止弁は、部屋16側に圧力室から圧力流体、例えば圧油が流れる方向に接続されている。この部屋16は、シリンダキャップ4に設けた絞り弁28が中途に介在する通路30を介しても上記圧力室に接続されている。
【0021】
圧力室の圧力は、上ダイセットが取り付けられているスライドが上昇していて、上型と下型とが非接触状態のとき、最も低く、スライドが降下して、上型が下型に接触すると、圧力室の圧力は上昇する。この圧力室の圧力が、第1のピストン部材12のシリンダキャップ4側の面である第1受圧部に印加される。
【0022】
部屋20は、シリンダヘッド6に形成された通路32を介して蓄圧手段、例えば蓄圧器(図示せず)に接続されている。この蓄圧器からの圧力が、連通孔24を介してピストンロッド18の先端である第2受圧部に印加され、かつピストン部材14の円板状部14aのシリンダヘッド6側の面である第3受圧部に印加される。
【0023】
スライドが上昇して、上型と下型とが離れている状態では、上ダイセット及び下ダイセットの圧力室の圧力は低く、第1のピストン部材12のシリンダキャップ側の面に印加されている力よりも、ピストンロッド18の先端である第2受圧部に印加されている力が大きい。その結果、図1に示すように、第1のピストン部材12がシリンダキャップ4側に最も移動している。
【0024】
第2のピストン部材14は、第2のピストン部材14の円板状部14aのシリンダヘッド6側の面に印加された力によってシリンダキャップ4側に移動しているが、第2のピストン部材14の円板状部14aが中間リング8に接触して、それ以上の移動を拘束して、第2のピストン部材14の円筒状部14bと第1のピストン部材12とはストロークs1だけ離れている。
【0025】
この状態において、上ダイセットが取り付けられているスライドが降下して上型が下型に接触を開始すると、上ダイセット及び下ダイセットの圧力室の圧力が上昇を開始する。第1のピストン部材12のシリンダキャップ4側の面の面積は、ピストンロッド18の先端の面積よりも大きいので、上記圧力上昇に伴って、第1のピストン部材12のシリンダキャップ4側の面に印加されている力が、ピストンロッド18の先端に印加されている力よりも大きくなる。これによって第1のピストン部材12が第2のピストン部材14側に移動を開始し、第1のピストン部材12がストロークs1だけ移動し、その後に、第1及び第2のピストン部材12、14が共に移動する。スライドの移動に従って上型が下型に完全に接触して、閉塞鍛造が行われる。これに伴って圧力室の圧力がさらに上昇し、第1及び第2のピストン部材12、14がシリンダヘッド6側に移動する。
【0026】
もし、上ダイセット及び下ダイセットの圧力室の圧力がかなり上昇して始めて、第1及び第2のピストン部材12、14が移動を開始するのであれば、大きなサージ圧が発生する。しかし、この圧力発生装置では、わずかに圧力が上昇した時点で第1のピストン部材12が移動を開始している。従って、上型と下型とが本格的に接触して、圧力室の圧力が大きくなった時点では、第1及び第2のピストン部材12、14が既に移動を開始しており、殆どサージ圧は発生しない。従って、シリンダ本体2やピストン10の耐久性を非常に大きくしておく必要は無い。
【0027】
このようにして、スライドの移動に従って上型が下型に接触して、閉塞鍛造が終了し、スライドが上昇を開始する。このとき、部屋16の圧油は、圧力室に戻り、第1及び第2のピストン部材12、14は、図1に示す状態に戻る。但し、通路26には逆止弁が設けられているので、圧油は絞り28を介して戻る。従って、部屋16の圧力は徐々に低下するので、第1及び第2のピストン12、14も低速で戻り、サージ圧は発生しないし、第1のピストン部材12がシリンダキャップ4に急速に衝突することがなく、第1のピストン部材12や、シリンダ本体2の耐久性を非常に大きくしておく必要がないし、大きな衝撃音が発生することもない。
【0028】
図2は、この圧力発生装置における部屋16の密閉鍛造開始時から終了時までの圧力変化を示したもので、鍛造の開始時にごくわずかなサージが発生しているだけであり、鍛造中にはほぼ一定の圧力を維持している。
【0029】
上記の実施形態では、ピストン部材14は、円板状部14aと円筒状部14bとから構成したが、これに限ったものではなく、挿入孔22を形成できれば、円板状部14aのみによって構成することもできる。但し、この場合、ピストンロッド18が挿通され、部屋20側から第1のピストン部材12側に貫通した貫通孔を円板状部14aに形成する。また、上記の実施形態では、この圧力発生装置を閉塞鍛造装置に実施したが、これに限ったものではなく、例えばプレス機のダイクッション発生装置に実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の1実施形態の圧力発生装置の縦断面図である。
【図2】図1の圧力発生装置の圧力図である。
【符号の説明】
【0031】
2 シリンダ本体
10 ピストン
12 第1のピストン部材
14 第2のピストン部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ本体と、このシリンダ本体内に収容され、前記シリンダ本体の一端部側から他端部側まで摺動可能なピストンとを、有し、
前記ピストンの前記シリンダ本体の一端側から他端側に摺動するに従って容積が増加する第1室が、前記シリンダ本体の一端側に形成され、前記ピストンの前記シリンダの一端側から他端側に摺動するに従って容積が減少する第2室が、前記シリンダ本体の他端側に形成され、第1室は、圧力が変化する可変圧力源に接続され、第2室は蓄圧手段に接続され、
前記ピストンは、第1及び第2のピストン部材からなり、第1のピストン部材は、前記シリンダ本体の第1室側に位置し、第2のピストン部材は、前記シリンダ本体の第2室側に位置し、
第1のピストン部材は、第1室側に前記可変圧力源の圧力を受ける第1受圧部を有し、第2のピストン部材側に第1受圧部よりも受圧面積の小さい第2受圧部を有し、
第2のピストン部材は、第2室側に第2室の圧力を受ける第3受圧部を有すると共に、第2室から第1のピストン部材側に貫通し、第2受圧部に第2室の圧力を印加する貫通孔を有し、
前記可変圧力源の圧力が最小の状態で、第2室の圧力が第2受圧部に印加されて第1室の容積を最小とするように第1のピストン部材に印加され、第2室の圧力が第3受圧部に印加されている状態において、第1及び第2のピストン部材との間に隙間が形成されている
圧力発生装置。
【請求項2】
請求項1記載の圧力発生装置において、第1のピストン部材は、第2のピストン部材側に突出した突部を有し、その突部の先端部が第2受圧部とされ、前記突部が前記貫通孔に挿通されている圧力発生装置。
【請求項3】
請求項1記載の圧力発生装置において、第1室は、第1室側に前記可変圧力源から圧力流体が流れる方向に接続された逆止弁を介して前記可変圧力源に接続されると共に、絞り弁を介して前記可変圧力源に接続されている圧力発生装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−12034(P2009−12034A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176171(P2007−176171)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000102452)エスアールエンジニアリング株式会社 (17)
【Fターム(参考)】