説明

圧力補正開口部を有する二重壁容器

圧力平衡開口部(24)を有する二重壁容器(1)を開示する。この開口部は栓(4)で閉じられ、栓には少なくとも1つのガス通路(41)がある。通路は、空気は通すが中間スペースへの水の侵入は阻止するように形成される。好ましくは、栓はシリコーン系プラスティックから作られ、アセトキシシリコーンをベースとした接着剤を用いて容器に取り付けられる。取り付けのために、栓は円盤状固定フランジ(43)を有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側容器本体及びその中に配置した内側容器本体を有し、外側及び内側容器本体の間にガスを充填した断熱空間が存在する二重壁容器に関する。この種の二重壁容器は、特にガラスで作ることができる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、二重壁容器を開示し、この外側容器本体が貫通孔を有する。貫通孔は、内側と外側の容器本体の接続の後、これら容器本体の間の空間に熱伝導率の低いガスの導入に用いられる。このガス交換の後、開口部は少量の接着剤、及び、任意選択で、さらにシール板によって密閉される。
【0003】
この種の容器を、激しい温度変化にさらすと、容器本体の間の空間にあるガスの圧力が変化する。この圧力変化は、一方で、容器の材料のストレスにつながり、極端な場合、容器を破裂させることにもなる。他方、絶え間ない圧力変化は、長期使用に際し、接着栓の漏れをもたらし、空間内への液体の侵入を起こしうる。これにより、容器は実質的に使用不可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP−A−0717949
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、簡単な方法で、容器本体の間の空間における過度な圧力変化を防ぐ二重壁容器を提供することである。この目的は請求項1の特徴を有する二重壁容器によって達成される。
【0006】
本発明のさらなる目的は、この種の二重壁容器を製造する方法を提供することである。この目的は、請求項9の特徴を有する方法によって達成される。
有利な実施形態を従属項に示す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、外側容器本体及び内側容器本体を有する二重壁容器が提供される。内側容器本体は、内側及び外側容器本体の間にガスを充填した空間が形成されるように、外側容器本体の中に配置される。容器本体の少なくとも1つの壁、好ましくは、底を形成する外側容器本体の壁に、圧力補正開口部があり、この開口部は、具体的には、2つの容器本体が結合されるとき、空間と外部の間の圧力補正のために、ガス交換が可能となるよう機能する。この圧力補正開口部は、栓により密閉され、水分が空間内に浸透しないようになっている。それにもかかわらず、空間と外部の間の圧力補正を可能にし続けるために、この栓は、栓を通って延びる少なくとも1つのガス通路を有し、このガス通路が、圧力差のある場合、ガス、特に空気を通し、一方で液体、特に水が通るのを阻止する。
【0008】
このような容器は、好ましくは、まず、外側及び内側容器本体を準備することにより製造され、これらの容器本体の少なくとも1つが圧力補正開口部を含む境界壁(limit wall)を有する。次に、内側の容器本体を、外側容器本体の中に配置し、外側容器本体に接続する。これは、好ましくは、内側と外側容器本体を、2つの容器本体の、少なくとも1つの領域、好ましくは上部辺縁部で、互いに溶着又は溶接させることによってなされる。これにより、2つの容器本体の間にガスの充填された空間が形成される。容器本体が互いに接続される間、圧力補正開口部は、空間と外部の間でのガス交換を可能にするため、空間において過度の圧力又は低圧は起こらない。容器本体を互いに接続した後、空間を、圧力補正開口部を通して、任意に、例えば空気等のガス、又は窒素等の不活性ガスで洗い流す。この後、圧力補正開口部を栓で密閉する。
【0009】
本発明は、内側及び外側の容器本体をガラスで作製すれば特に有利である。この場合、圧力補正開口部は、製造時、特に2つの容器本体の溶着時のストレスを避けるのに特に重要である。しかしながら、原理的には、2つの容器本体が、他の材料、例えばステンレス又はプラスチックからなってもよい。
【0010】
栓は、例えば、弾性プラスチック材料からなってもよく、射出成形法、圧縮成形法又はトランスファー成形法、即ち、プラスチック又はこのプラスチックの前駆体を鋳型に流し込み、その後硬化させるという方法で製造可能である。特に、栓の材料が少なくとも部分的に硬化した後初めて、例えば針を用いて栓に穴を開けることにより、ガスの通路を形成すると有利である。
【0011】
確実に水がガス通路を通れなくするために、栓は、好ましくは疎水性材料(即ち、水との接触角が90°より大きい材料)から作られる。この場合、ガス通路の大きさは、通路の毛管効果が効果的に水の通行を阻止するように選択される。ガス通路の直径は、シリコーンプラスティック又は同様の疎水性を有する材料に対して、例えば最大約0.1mmであり、少なくとも長さが約1mmである。もちろん、他の大きさも可能である。
【0012】
圧力補正通路は、特に、セルフシールであるように構成されることができる。即ち、空間と外部の間の圧力差があるときだけ開き、このような圧力差がなければ密閉されている。この特性は、特に、上述の穴開けによる通路の製造によって得ることができる。針を引き抜いた後、栓材料の弾性が適当なら、このような通路は自動的に再び閉じる。容器本体の空間と外部との間に、一定の圧力差が生じるとすぐに、この圧力差によりガス通路が十分に広がり、ガスが通れるようになる。それにもかかわらず、通路は、常に直径が十分小さいままなので、材料の疎水性とその結果生じる負の毛管現象のため、水は通過することができない。
【0013】
栓の材料としては、シリコーン系プラスティック又は類似の特性を有する材料が、特に好ましく選択される。その高い弾性と疎水性のために、シリコーンプラスティックの栓には、ガスを通すが水を通さないガス通路を特に良好に形成することができる。シリコーンプラスティックの栓を用いると、容器本体がガラスからできている場合、ガラスとシリコーンプラスティックが、それらの類似の化学組成により、永久的に互いによく結合し得るため、特に有利である。
【0014】
栓は、好ましくは、圧力補正開口部があるこの容器本体に接着され、特に、アセトキシシリコーン系の接着剤を用いてこの容器本体に固定される。シリコーンゴムと化学的に同系の組成のため、このような接着剤は、シリコーンの栓への永久的な結合を確立するのに特に好適である。特に、このような接着剤はまた、ガラスの容器本体への結合、同様に、類似の化学組成を有するガラスへの結合に非常に好適である。
【0015】
栓は、特に、ピン状の(又はくぎ状の)主要部を有する平板の形状であり、主要部がこの平板から圧力補正開口部へ延びているように構成してもよい。言い換えれば、この場合、栓は、ガス通路が中を通って延びる主要部と、この主要部を側面に沿って取り巻き、少なくとも一部の領域において容器本体の壁に平らに(flat)位置し、好ましくはこの壁に接着されている固定フランジとを含む。ピン状の主要部は、好ましくは円筒形であり、好ましくは圧力補正開口部の最小内径より小さい最大外径を有し、そのため主要部と圧力補正開口部を画定する容器本体の壁領域の間に側方の隙間が存在する。これにより、とりわけガラス容器の場合と同様に、圧力補正開口部が大きさにかなりの許容差を有するとき、特に有利となる。そのため、圧力補正開口部が正確であっても、ピン状の主要部を圧力補正開口部に力をかけずに挿入できる。従って、容器壁への栓の接続は固定フランジを介してのみ実現される。
【0016】
他の実施形態において、栓は円盤状又は円筒形であり、円周の外皮表面に円周状環状の溝を有し、この溝の中に、圧力補正開口部を画定する容器本体の壁領域が突出する。従って、この場合、栓は、少なくとも部分的に、環状の溝を用いた形状密閉により、圧力補正開口部に保持される。さらに、この実施形態では、栓はまた、好ましくは、容器壁に接着される。栓のこのような実施形態は、特に、形及び大きさの許容差が小さい圧力補正開口部には好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】二重壁容器の中心長手方向の断面図である。
【図2】図1の容器の部分的断面の斜視部分図である。
【図3】図1の底領域の拡大詳細図である。
【図4】他の実施形態の二重壁容器の底領域の拡大詳細図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好ましい実施形態を、図を参照して以下に記載する。
図1〜3に、本発明による二重壁容器の第1の例示の実施形態を示す。容器1は、ケイ酸塩ガラスからなる外側容器本体2と、この中に収容されている、同じ材料からなる内側容器本体3から形成される。2つの容器本体は、これらそれぞれの上端23,33で、互いに溶着される。従って、2つの容器本体は、共同で、ガスが充填される空間5を画定する。従って、容器本体は、外側の底21、外側の側壁22、内側の底31及び内側の側壁32で、空間のための境界壁を形成する。これらの境界壁の1つ、ここでは外側の底21に、圧力補正開口部24が存在する。本実施例において、この直径は約1.5〜3.5mmである。容器本体はガラスで構成されるため、この圧力補正開口部の形と寸法は、一続きの製造工程内にあってさえ、かなりばらつく。しかしながら、いずれにしても、圧力補正開口部は十分に大きく、容器本体の溶着の際、空間と外部の間の素早い圧力補正を可能にする。
【0019】
容器本体の結合に続き、この圧力補正開口部を、栓4で密閉する。これは、平らな円板の形をしており、圧力補正開口部内に延びる中央のピン状主要部42を有する。本実施例では、主要部の外径dは約1.5mmである。この場合、製造許容差を考慮しても、圧力補正開口部の内径Dより完全に小さい。このピン状の主要部から、円盤状の固定フランジ43が横方向外側に延び、底21の外側に平らに位置する。この固定フランジ43は、接着剤を用いて底21に接着される。
【0020】
主要部42は、中央ガス通路41を有する。この通路は主要部を例えば直径約0.6mmの針で穴を開けることによって形成されている。もちろん、針は他の寸法でもよい。一旦針を引き抜いてしまうと、栓の材料の弾性のため、ガス通路がほぼ再密閉される。しかしながら、空間と外部の間の圧力差がある場合には、材料の弾性により通路が十分に広がり、ガスが通り抜けられる。
【0021】
好ましくは、栓は、シリコーン系プラスティックからなり、本実施例ではショアA硬度70を有するシリコーンである。栓は、射出成形によって製造される。疎水性及びその結果として起こる負の毛管効果のため、栓は、ガス通路の存在にもかかわらず、空間5への水の侵入を阻止する。食器洗い機内の攻撃的な化学的条件下でも、皿を手洗いするとき(洗剤があってもなくても)でも同様である。熱水が容器に入ると、空間5内の膨張した空気はガス通路41を通って逃がされ、冷却時には対応して空間内に戻る。
【0022】
栓を底21に取り付けるためには、シリコーン系の接着剤を用い、具体的に本実施例では、例えばLoctiteTM 5366の名称で、Henkel Loctite Europeから入手可能なアセトキシシリコーン系接着剤を使用する。この接着剤は、一方で、栓のシリコーン材料への粘着性が非常に高く、他方で、外側の容器本体のガラス材料への結合が非常に良い。
【0023】
図4に、他の実施形態を示す。第1の実施形態とは異なり、この場合、圧力補正開口部は底21の中央に配置されておらず、容器の中心軸からずれている。栓4’は、実質的に円筒円盤状の基本形状を有する。円筒形の外皮表面には、円周状環状溝44が形成されており、この溝の中に、圧力補正開口部を画定する底21の領域が突出する。従って、栓4’はこの溝によって、底21の圧力補正開口部の領域に少なくとも部分的に形状密閉(form closure)により保持される。さらに、栓4’はまた、環状溝の領域で、底21に接着される。ガス通路41’は、第1の実施形態と同様に、少なくとも部分的に硬化した栓4’に針で穴を開けることによって形成される。第1の実施形態とは異なり、第2の実施形態では、栓が圧力補正開口部の領域に直接取り付けられるため、圧力補正開口部の形や寸法に求められる許容差ははるかに小さい。
【0024】
もちろん、多くの変更が可能であり、本発明は、上記の例示の実施形態に決して制限されない。例えば、二重壁の容器は、例えば、取っ手付きのコップ、注ぎ口付きの水差し等の背の高いグラスといった、ここで挙げた形とは異なる形をとることができる。栓によって密閉される圧力補正開口部はまた、容器の外側壁の他の領域にあってもよい。好ましくは、容器はガラス製であるが、他の材料から作られてもよい。対応して、栓や接着剤には、他の材料も考えられる。ガス通路を1つだけ設ける代わりに、このような通路を複数形成することも可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側容器本体(2)及び内側容器本体(3)を含む二重壁容器(1)であって、
前記内側容器本体(3)は、ガスを充填した空間(5)が前記内側及び外側容器本体の間に形成されるように前記外側容器本体(2)内に配置され、
前記容器本体の少なくとも1つの境界壁(21)に圧力補正開口部(24)が存在し、
前記圧力補正開口部は栓(4;4’)によって密閉され、
前記栓が、少なくとも1つのガス通路(41;41’)を有し、前記ガス通路は空気を通し、前記空間への水の侵入を阻止する二重壁容器。
【請求項2】
前記栓(4;4’)が疎水性材料から作られる、請求項1に記載の二重壁容器。
【請求項3】
前記栓(4;4’)がシリコーン系プラスティックから作られる、請求項1又は2に記載の二重壁容器。
【請求項4】
前記栓(4;4’)が、アセトキシシリコーン系の接着剤を用いて、前記容器本体(2)に取り付けられる、請求項3に記載の二重壁容器。
【請求項5】
前記ガス通路(41;41’)が、セルフシーリング構造である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の二重壁容器。
【請求項6】
前記栓(4)が、主要部(42)及び固定フランジ(43)を含み、前記主要部(42)が前記圧力補正開口部(24)内に延び、前記ガス通路(41)が前記主要部(42)の中を通って延び、
前記固定フランジ(43)は前記主要部を側面に沿って取り巻き、少なくとも一部の領域において前記容器本体(2)の壁(21)に平らに(flat)位置し、好ましくはこの壁に接着されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の二重壁容器。
【請求項7】
前記主要部(42)が、前記圧力補正開口部(24)の最小内径(D)より小さい最大外径(d)を有するため、前記主要部(42)と、前記圧力補正開口部(42)を画定する前記容器本体(2)の壁領域の間に、側方の隙間が存在する、請求項6に記載の二重壁容器。
【請求項8】
前記栓(4’)が、円周状環状溝(44)を有し、この溝の中に、前記圧力補正開口部(42)を画定する前記容器本体(2)の壁領域が突出する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の二重壁容器。
【請求項9】
外側容器本体(2)及び内側容器本体(3)を用意し、前記容器本体の少なくとも1つの境界壁(21)に圧力補正開口部(24)が存在し、
前記内側容器本体を、前記外側容器本体の中に配置し、前記容器本体(2,3)を、前記容器本体の間にガスを充填した空間(5)が形成されるように接続し、前記接続時には前記圧力補正開口部を通ってガスの通過が可能であり、
前記圧力補正開口部を栓(4;4’)で密閉し、前記栓が、空気を通すが水は通さない少なくとも1つのガス通路(41;41’)を有する
ことを含む二重壁容器の製造方法。
【請求項10】
前記栓(4;4’)は弾性プラスチック材料から製造され、前記プラスチック材料又はそれの先駆体は液体の形で鋳型に注がれ、その後硬化され、
前記ガス通路(41;41’)は、前記プラスチック材料が少なくとも部分的に硬化された後初めて形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ガス通路(41;41’)が、針を用いて前記栓(4;4’)に穴を開けることによって形成される、請求項9又は10に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−509886(P2011−509886A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541667(P2010−541667)
【出願日】平成20年1月14日(2008.1.14)
【国際出願番号】PCT/CH2008/000017
【国際公開番号】WO2009/089636
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(507047481)ピーアイ デザイン アーゲー (8)
【Fターム(参考)】