説明

圧着接続部からのRFエネルギーの放出を低減するために、1対の凸部およびそれらの間に配置される溝を含む圧着接続部を有するワイヤケーブル組立体およびその製造方法

【課題】接触要素およびワイヤケーブルを含む圧着接続部を提供すること。
【解決手段】ワイヤケーブルは、長手方向軸に沿って配置され、接触要素を軸方向に収容するように構成される。接触要素がワイヤケーブルを収容するとき、ワイヤケーブルを接触要素に取り付ける圧着接続部が形成され、その結果、圧着接続部の少なくとも一部分は、その中で変形される少なくとも1つの窪み部を含む。窪み部は、間にある溝により分離される1対の凸部を含む。圧着接続部は、突起がその上に形成されないように、内側および外側フェルールを含むワイヤケーブル組立体に施すことができ、その結果、望ましくないRFエネルギーは、ワイヤケーブル組立体の圧着接続部から外に電気伝送されない。間にある溝により分離される1対の凸部を含む圧着接続部を構築する方法もさらに示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連文献
[0001]本出願は、2011年7月29日に出願した米国仮出願第61/512,950号の優先権を主張するものである。
【0002】
[0002]本発明は、一般にワイヤ組立体内の圧着部に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]一般に、電気接触子は、圧着部を利用し、圧着接続部を形成することにより、ワイヤケーブルに取り付けられる。遮蔽ケーブル(4)を使用する圧着接続部(1)を利用する、1つのそうした車両電気用途では、ワイヤ編組遮蔽部により吸収される電磁エネルギーを安全に電気的に排出することができるように、ワイヤ編組遮蔽部をフェルールに圧着することが望ましい。このために使用される1つの一般的な圧着部は、六角形状圧着部(2)である。しかし、このタイプの圧着部により、フェルールおよびワイヤ編組遮蔽部は、圧着接続部を形成するのにプレス工具が集まる圧着接続部内に、小さい外側突起(3)を形成するように継目に沿って押し出される可能性がある。これらの小さい突起(3)は、望ましくないことに、アンテナとして働き、圧着接続部(1)から外部に、またはワイヤケーブル上を伝送される電気信号から圧着接続部(1)内に高周波(RF)エネルギーを放出および/または受け取る可能性がある。これらの突起アンテナ(3)が車両環境内にRFエネルギーを放出するとき、このことは、車両内の他の電気部品の動作性能に悪影響を及ぼす可能性がある。対照的に、突起アンテナ(3)が、望ましくないことに、RFエネルギーを受信するとき、このことは、フェルールを使用するワイヤケーブル上を伝送される電気信号の伝送性能に悪影響を及ぼす可能性がある。ワイヤケーブル上を伝送される電気信号の伝送性能の劣化は、ワイヤケーブルと電気接続される電気部品の予期しない動作または誤動作の原因となる可能性もある。それに加えて、電気的完全性を維持または改善しながら、電気接触子をワイヤ編組遮蔽部またはワイヤケーブルの他の部分に取り付ける圧着接続部の機械的強度を改善する必要性が残る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]必要なものは、上述の欠点を克服する圧着接続部を含む、強いワイヤ組立体である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]本発明の一実施形態によれば、圧着接続部は、接触要素およびワイヤケーブルを含む。ワイヤケーブルは、圧着接続部を形成するのに、長手方向軸に沿って配置され、接触要素を軸方向に受け入れるように構成される。接触要素をワイヤケーブルに取り付ける圧着接続部が形成されるとき、圧着接続部の少なくとも一部分は、間にある溝により分離される1対の凸部を含む、少なくとも1つの窪み部を含む。
【0006】
[0006]別の実施形態では、ワイヤケーブル組立体は、少なくとも複数のフェルールを含み、複数のフェルールに形成され、ワイヤケーブルに取り付けられる圧着接続部が、間にある溝により分離される少なくとも1対の凸部を含む。
【0007】
[0007]さらに他の実施形態では、間に配置される溝により分離される1対の凸部を含む、ワイヤケーブル組立体内の圧着接続部を形成する方法が、さらに、本発明により示される。
【0008】
[0008]さらに、本発明の特徴、使用法、および利点は、添付の図面を参照して非限定的な例のみによって与えられる、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読めば、より明らかになるであろう。
【0009】
[0009]さらに、本発明を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】[0010]六角形状圧着部から望ましくないRFエネルギーを放出する可能性がある望ましくない突起を含む、従来の六角形状圧着部を示す図である。
【図2】[0011]本発明によるワイヤケーブル組立体の分解図である。
【図3】[0012]圧着接続部を含まない、組立て時の図2のワイヤケーブル組立体を示す図である。
【図4】[0013]少なくとも1つの突出部材を有する圧着工具により係合する、図3のワイヤケーブル組立体を示す図である。
【図5】[0014]圧着接続部を形成するのに圧着工具と係合する、図4のワイヤケーブル組立体を示す図である。
【図6】[0015]図5のワイヤケーブル組立体の圧着接続部、およびその詳細を示す図である。
【図7】[0016]図6の線7−7を通る、圧着接続部の断面、およびその詳細を示す図である。
【図8】[0017]図2〜7のワイヤケーブル組立体の圧着接続部の組立方法を示す方法流れ図である。
【図9】[0018]本発明の別の実施形態による、その上に圧着接続部を形成するように端子に収容されるワイヤケーブルを示す図である。
【図10】[0019]ワイヤケーブルと図9の端子との間に形成される圧着接続部を示す図である。
【図11】[0020]端子の基部が、間にある溝により分離される1対の凸部を含む、図10の圧着接続部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0021]ワイヤ組立体は、自動車輸送産業に見ることができる電気システム用途において、ある電気部品を別の電気部品に接続することができる。1つのそうしたワイヤ組立体は、電気車両またはハイブリッド電気車両などの電動式車両内の負荷にエネルギー源を接続し、エネルギーを供給するのに利用することができる。これらのワイヤ組立体は、トラック、旅客機、船、および軍用車両内に配置されるワイヤハーネスおよび電気システムと結合することもできる。
【0012】
[0022]図2を参照すると、本発明によるワイヤケーブル組立体10の分解図が示されている。ワイヤケーブル組立体10は、ワイヤケーブル12、第1または内側の電導接触要素、すなわちフェルール22、および第2または外側の電導接触要素、すなわちフェルール26を含む。電気接触子は、本明細書で使用するとき、例えば、端子をワイヤ導体に相互接続し、または1つもしくは複数のフェルールをワイヤ導体もしくはワイヤ導体組立体に相互接続するなど、ある電気要素を別の電気要素に相互接続するのに使用される装置と定義することができる。
【0013】
[0023]フェルール22、26は、鋼鉄または真鍮などの金属材料から形成されることが好ましく、内側フェルール22が、外側フェルール26よりも小さい直径を有する。ワイヤケーブルは、銅または銅合金材料から形成されるのが好ましい。あるいは、ワイヤケーブルは、アルミニウムなどの、銅と異なる金属材料から形成することができる。あるいは、フェルールの少なくとも1つは、誘電性の非金属材料から作製することができる。内側フェルールまたは外側フェルールのいずれに金属フェルールを使用するかの選択は、特定の電気用途においてワイヤハーネスを支持する支持構造体との電気接触を最適にもたらすように行われてよい。ワイヤケーブル12は、長手方向軸Aに沿って配置され、内側コア14を含む。内側コア14は、第1の絶縁層16に取り囲まれる。第1の絶縁層16は、下になり、ワイヤ編組層18に取り囲まれる。ワイヤ編組層18は、下になり、第2の絶縁層20に取り囲まれる。ワイヤ編組層18は、電気ワイヤリング技術において理解されている、導体箔もしくは複数の編まれた個々の撚線、またはそれらの組合せなどの、電導材料の層から形成される。
【0014】
[0024]図3に示すように、フェルール22、26は、ワイヤケーブル12の軸方向に受け入れられることにより、ワイヤケーブル12上に組み立てられる。末端突起部30は、ワイヤケーブル12の端部24に嵌合するが、端部24は、ワイヤケーブル12の内側コア14の露出リード線である。突起部30は、車両内の電気部品と関連するボルト(図示せず)に固定することができる。あるいは、突起部は、ワイヤ組立体を別のワイヤハーネスまたは電気部品に接続するのに必要な任意のタイプの末端部とすることができる。内側フェルール22は、第1の絶縁層16の少なくとも一部分の周囲に重なるように、ワイヤケーブル12に嵌合する。外側フェルール26も、ワイヤケーブル12の端部24で軸方向に受け入れられるように構成される。外側フェルール26は、内側フェルール22の少なくとも一部分に重なり、ワイヤ編組層18が内側フェルール22と外側フェルール26との間の周囲に隣接配置されるようにする。図3に示すように、内側フェルール22がワイヤケーブル12に嵌合するとき、ワイヤ編組層18は、少なくとも内側フェルール22の全長まで切断される。あるいは、ワイヤ編組層は、少なくとも内側フェルールの長さよりも長くし、U字形に折り返し、内側フェルールと外側フェルールとの中間に配置されるように内側フェルールの外側表面に重なることができる。
【0015】
[0025]図4および5を参照すれば、内側および外側フェルール22、26が、圧着工具組立体すなわち圧着工具66によりワイヤケーブル12に共に圧着されるとき、圧着接続部28が形成される。圧着工具の下部および上部66a、66bはそれぞれ、圧着接続部28を形成するように、互いに向かって、かつフェルール22、26およびワイヤケーブル12に向かって収束する(converge)。
【0016】
[0026]圧着接続部28は、ワイヤ編組層18をフェルール22、26に機械的かつ電気的に接続する。あるいは、圧着接続部は、遮蔽ワイヤまたはワイヤ編組層を有する同軸ケーブルタイプワイヤケーブル組立体が利用される場所ではどこでも使用することができる。圧着工具66の2つの部分または半体は、ワイヤリング技術において知られているように、それぞれプレス機(図示せず)に固定することができる。圧着工具の上半体66bは、プレートとして規定され、圧着工具の下半体66aは、台として規定される。圧着工具66の上半体および下半体は、硬化鋼などの金属材料から形成することができる。圧着工具66のプレートおよび台はそれぞれ、突出部材68を画定し、2つの凸部(hump)を画定し、突出部材68は、2つの凸部を分離する。圧着工具66は、それに応じて、突出部材68と共に、プレス機によりもたらされる加圧力の下で、外側フェルール26の凸部46、48および溝54を形成する。圧着工具66のプレートは、本明細書に上述したように、外側フェルール26のもう一つの反対部分の凸部46、48と同様の他の凸部および溝を同様に形成する台と相補的に構築される。あるいは、必要な窪み部(indention arrangement)を構築するのに、限定することなく、必要な窪み部の量に応じて、他の圧着工具形態または圧着工具形態の組合せを使用することができる。図6に示すように、内側フェルール22は、外側フェルール26の窪みパターンと同様であるが、窪みパターンがより明白でない、より小さい程度の窪みパターンを有する。あるいは、圧着接続部が形成されるとき、内側フェルールは、窪みパターンを示さなくてもよい。圧着接続部28は、組立作業員により手動で操作されるプレス機によって形成され、または自動組立製造ラインの一部分として生産することができる。必要なプレス機の定格力(force rating)は、主として、使用されるワイヤケーブルのワイヤゲージサイズおよび形成される圧着接続部のタイプに依存する。
【0017】
[0027]図5〜7を参照すれば、圧着接続部28が形成されるとき、台およびプレートはそれぞれ、少なくとも外側フェルール26内の窪み部42、44を形成する。窪み部42は、第1の窪み部であり、窪み部44は、軸Aに対して窪み部42と直径方向反対側にある第2の窪み部である。台の窪み部42は、第1の凸部46および第2の凸部48を形成し、突出部材68は、第1の谷すなわち溝54を形成するのを助ける。第1の凸部46は、図7に最も良く示すように、溝54を介して移行しながら、第2の凸部48と連絡する。窪み部42、44は、圧着接続部28の外側フェルール26の他の部分の形状と異なる窪み形状を有する。圧着接続部28の他の部分は、六角形状圧着接続部の平面部分と同様の複数の平面部分すなわち側面38を含む。あるいは、側面、すなわち少なくとも1つの窪み部から離れた、圧着接続部の他の任意の部分は、円形、または強い圧着接続部をもたらす他の任意のタイプの形状とすることができる。プレートは、本明細書に上述したように、台の窪み部と同様の窪み部を形成する。プレートにより形成される窪み部44は、台により形成される窪み部42の反対側にある。図5において最も良くわかるように、圧着接続部28を形成するのに圧着工具66のプレートおよび台が係合するとき、窪み部42、44は、継目が画定される場所から少なくとも外側フェルール26内の中点に形成されるのが好ましい。2つの窪み部を図5〜7に示すが、その代わりに、1つの窪み要素を利用することができる。さらにその代わりに、同じ圧着接続部に、2つより多い窪み部を利用することができる。窪み部の量または数は、使用されるワイヤケーブル又はワイヤケーブル組立体のワイヤゲージサイズに依存することができる。
【0018】
[0028]図7を参照すると、圧着接続部28の断面が示されている。第1の窪み部42は、第1、第2、第3、および第4の凸部46、48、50、52を含む。第1および第2の凸部46、48は、外側フェルール26に形成される。第3および第4の凸部50、52は、内側フェルール22に形成される。第1の凸部46は、第3の凸部50に隣接する。第2の凸部48は、第4の凸部52に隣接する。第3および第4の凸部50、52も、工具66のプレートおよび台が合わさり、圧着接続部28が構築されるとき、形成される。圧着接続部28内の凸部46、48、50、52および溝54、56はそれぞれ、全体的に軸Aに垂直な方向に形成される。プレス機からの加圧力により、突出部材68を含む圧着工具66は、溝54および凸部46、48を形成するのに外側フェルール26を形成および変形するのを助ける。第1および第2の凸部46、48が構築されるとき、本明細書に上述したように、第3および第4の凸部50、52も、より小さい程度で変形する。溝54は、第1および第2の凸部46、48と連絡し、さらに第1および第2の凸部46、48を分離する。第2の谷すなわち溝56は、第3および第4の凸部50、52と連絡し、さらに第3および第4の凸部50、52を分離する。溝54、56のそれぞれは、軸Aから見て離れる方向に向く凹面弓形形状を有するように、圧着接続部28の幅および長さに沿って延びる。凸部46、48、50、52もそれぞれ、軸Aの方を向く凹面弓形形状を有する。溝54から第1および第2の凸部46、48の頂部まで測定された深さdは、第2の谷すなわち溝56から内側フェルール22の第3および第4の凸部50、52の頂部までの深さdよりも大きい。背景技術で上述したように、凸部46、48、50、52が圧着工具66により圧着接続部28内に形成されるとき、このことにより、工具66の上部および下部が合わさる場所で、フェルール22、26の材料が、圧着接続部28内に再配分されることができ、望ましくないアンテナ突起の形成を妨げる。このことは、有利なことに、ワイヤケーブル組立体10が電気用途で配置されるときのRFエネルギーの放出または受け取りに対して影響を受けにくい、より均一の圧着接続部を実現する。凸部46、48、50、52および溝54、56は、ワイヤ編組層18のフェルール22、26へのより強い機械的取付けももたらすように結合し、ワイヤ編組層18のフェルール22、26との電気接続の改善をもたらすこともできる。したがって、窪み部44は、本明細書で前述した窪み部42と同様の形状により同様に形成される。
【0019】
[0029]あるいは、凸部の対の一方は、それぞれの溝54、56に関連する凸部の対の他方よりも深い深さを有することができる。凸部および溝は、望ましくない欠点を生成する、フェルール材料中に穴を開けることなく窪み部を構築することができる十分な形状を有することができる。溝と凸部の頂部との間の深さは、フェルール材料の原材料厚さと関係するように選ぶことができる。あるいは、凸部および溝は、圧着接続部が形成されるとき、フェルール材料に穴が開かないように、どんな形状も呈することができる。鋭角の隅部すなわち縁部を有する弓形状窪みが、好ましく、圧着接続部の形成中、フェルール材料の穴を生成しそうにないことがわかる。圧着接続部形成中に接触要素に穴が開けば、このことは、望ましくない品質不良をもたらす。
【0020】
[0030]図8を参照すると、圧着接続部28を構築する方法100が示されている。方法100の1つのステップ102は、長手方向軸Aに沿ってワイヤケーブル12および少なくとも1つの接触要素22、26を供給している。方法100の別のステップ104は、ワイヤケーブル12により少なくとも1つの接触要素22、26を受け入れる。方法100のさらに別のステップ106は、少なくとも1つの接触要素22、26をワイヤケーブル12に取り付ける圧着接続部28を形成するのに、少なくとも1つの接触要素22、26をワイヤケーブル12と共に圧着し、圧着接続部28の少なくとも一部分は、1対の凸部46、48および溝54を含む、圧着接続部28で変形された少なくとも1つの窪み部42、44を含む。圧着接続部28は、少なくとも1つの窪み部42、44を利用しない圧着接続部よりも、ワイヤケーブル12のフェルール22、26に対する機械的強度および/または保持力をさらに向上させる。
【0021】
[0031]どんな特定の理論にも限定されないが、最初にワイヤケーブルの端部を通して受け入れられるとき、外側フェルールは、初期半径を有する穴を有し、内側フェルールは、外側穴の半径よりも小さい初期半径を有する穴を有することが理解されよう。圧着接続部が形成されるとき、それぞれのフェルールの半径は、圧着工具組立体又は圧着工具の上部および下部を収束させることにより、ほぼ制約され、圧着接続部が形成されるとき、幾分減少されてよい。収束する圧着工具による加圧力を増大させれば、少なくとも外側フェルールの材料は、加圧力から離れる方向に強制的に押し出される。圧着工具の突出部材が、圧着接続部形成中に圧着工具により形成される継目の間の、外側フェルールに沿った場所に配置される外側フェルールに窪みを付けるとき、窪みにより、押出材料は、圧着接続部形成中に、外側フェルールに沿って圧着工具の継目から離れた方向に動くことができ、その結果、継目の近くに位置する外側方向押出突起すなわち突起アンテナは、形成されない。図2に示すように、それぞれの溝が外側フェルールに形成され、外側フェルールがワイヤ導体によって受け入れられるとき、溝は、外側フェルールの初期半径よりも小さい公称半径を有する。図5に最も良く示すように、圧着工具の上部および下部が、共に収束し、外側フェルールの周囲に対して圧縮圧力を加えるとき、溝の公称半径も、外側フェルールの制約された公称半径よりも小さい。したがって、背景技術で説明したように、圧着接続部28は、同様のサイズの六角形圧着部の周長を超える外側フェルール26の圧着接続部28の周長の増大をもたらすように、制御可能に形成される。外側フェルール26の材料が、圧着接続部形成中、加圧力により押し出されるとき、その材料は、圧着工具66のプレートと台との係合により形成される継目の近くからより遠くに離れて位置する圧着接続部28の領域に送られる。このことは、背景技術で説明したように、圧着接続部が構築されるとき、望ましくない突起アンテナが形成されないことを確実にする。
【0022】
[0032]ワイヤケーブル12が、圧着接続部28を形成するようにフェルール26、28に取り付けられないとき、ケーブル組立体10は、使用されない。末端突起部30がワイヤケーブル12に接続されないときも、ワイヤ接続部組立体10は使用されない。使用されないとき、ワイヤケーブル12上を伝送される電気信号は、電気フェルール26、28および末端突起部30を通して伝送されない。
【0023】
[0033]ワイヤケーブル12がフェルール26、28に取り付けられ、圧着接続部28が形成されるとき、ワイヤケーブル組立体10は使用される。末端突起部30がワイヤケーブル12に接続されるときも、ワイヤ接続部組立体10は使用される。使用されるとき、ワイヤケーブル12上を伝送される電気信号は、取り付けられた電気フェルール26、28および取り付けられた末端突起部30を通して伝送される。
【0024】
[0034]図9〜11を参照して、本発明の別の実施形態によれば、ワイヤ組立体200は、ワイヤケーブル202および端子204を互いに接合する圧着接続部206を含む。端子204は、長手方向軸Bに沿って配置される長さLを有する。端子204の基部212も軸方向に配置される。ワイヤケーブル202のリード線208は、リード線208の少なくとも一部分が、少なくとも1つのコア翼部210および端子204の床部220に隣接するように、軸Bに沿って端子204内に受け入れられる。リード線208がプレス機により端子204に圧着されるとき、圧着接続部206が形成される。圧着工具は、本明細書に上述したように、突出部材および1対の凸部を画定し、圧着接続部206が形成されるとき、プレス機と共に、基部212内の谷すなわち溝218により分離される少なくとも1つの凸部216a、216bを形成するのを助ける。
【0025】
[0035]図11を参照すれば、圧着接続部206は、少なくとも1つの凸部216a、216bおよびそれらの間に配置される溝218を含む。溝218から凸部216a、216bの頂部までの深さは、ほぼ同じ深さであるのが好ましい。両凸部が同様の深さを有するとき、このことは、有利なことに、ワイヤ組立体を収容するコネクタ本体内に端子をより容易に挿入し、端子を取り付けることを可能にすることができる。あるいは、凸部のそれぞれは、溝に関して異なる深さを有することができる。凸部216a、216bおよび溝218はそれぞれ、基部212に沿って全体的に軸Bに垂直な方向に配置される。凸部の一方216aは、全体的に、溝218に対して凸部の他方216bと鏡対称であるのが好ましい。凸部216a、216bはそれぞれ、基部212の床部220に対して軸Bから外側方向に離れて延びる。圧着接続部206の少なくとも1つのコア翼部210のそれぞれの軸方向縁部224に画定される平面222は、軸Bに垂直な端子204の基部212を通って下に延びる。2つの凸部216a、216bの少なくとも一部分が、それぞれの平面の間に配置されるのが好ましい。圧着接続部206は、少なくとも1つの凸部および溝を利用しない圧着接続部よりも、ワイヤケーブル202の端子204に対する機械的強度および/または保持力をさらに向上させる。
【0026】
[0036]あるいは、窪み部を含むワイヤ組立体は、電波周波数および/または調波周波数が緩和されるのが望ましい、ワイヤ編組遮蔽部が必要などんな電気用途にも使用することができる。
【0027】
[0037]あるいは、車両内に配置されるワイヤハーネス上に1つより多いワイヤケーブル組立体を使用することができる。
[0038]あるいはさらに、ワイヤ組立体は、本明細書に同様に上述したように、圧着接続部が少なくとも1対の凸部をそれらの間に配置された溝と共に含む、ワイヤケーブルとの圧着接続部内に形成される、3つ以上のフェルールから構築することができる。
【0028】
[0039]別の代替的実施形態では、図2に示す実施形態の末端突起部は、図9〜11に示す実施形態で説明する圧着接続部を有することができる。
[0040]あるいはさらに、他のワイヤ組立体では、内側フェルールは、図2の実施形態に示す内側フェルールおよび外側フェルールの物理的サイズと対照的に、外側フェルールの物理的サイズよりも大きい物理的サイズを有し、それでもなお、本発明の技術的思想および範囲内とすることができる。
【0029】
[0041]ワイヤケーブル組立体からの望ましくないRFエネルギーの放出を低減する圧着接続部を含む、強いワイヤケーブル組立体を示してきた。圧着工具は、ワイヤケーブル組立体内に圧着接続部を形成するのに、1対の凸部および突出部材をそれぞれが含む、1対のプレス半体を含む。圧着接続部を形成するのに工具半体が合わさるとき、工具は、ワイヤケーブル組立体の外側フェルール材料が、プレス工具の継目から離れる方向に動くように、構築され、その結果、プレス工具は、先行技術の図1に示す、背景技術で上述した六角形状圧着部の場合のように、望ましくない突起が形成されるのを妨げる形状に圧着接続部を形成する。有利な結果は、同軸ケーブルタイプのワイヤケーブル組立体に生じる可能性がある、エネルギー、より具体的にはRFエネルギーを放出または受け取らない、より均一な形状の圧着部である。それに加えて、同軸ケーブルタイプのワイヤケーブル組立体の圧着接続部の一部分としての、ワイヤ編組体のフェルールに対するより強い機械的取付けも実現されよう。間にある溝により分離された1対の凸部を有する圧着接続部は、基部を含む端子を備える電気接触子に形成することもできる。圧着接続部が、端子をワイヤケーブルに取り付けるように構築されるとき、1対の凸部および溝は、端子の基部内に形成される。少なくとも1対の凸部をそれらの間に配置される溝と共に含む圧着接続部は、強い電気的および機械的接続を確実にするように、複数のフェルールを有するワイヤケーブル組立体上に構築することができる。
【0030】
[0042]本発明をその好ましい実施形態に関して説明してきたが、それらに限定することを目的とせず、むしろ、添付の特許請求の範囲に記載する範囲のみにより限定される。
[0043]本発明が広範な利用性および適用性を許容することは、当業者には容易に理解されよう。上述の実施形態以外の本発明の多くの実施形態および適合形態、ならびに多くの変形形態、変更形態、および均等な構成は、本発明の実体または範囲から逸脱することなく、本発明および上述の説明から明らかであり、または本発明および上述の説明より合理的に示されよう。したがって、本発明は、その好ましい実施形態に関して本明細書に詳細に説明してきたが、本開示は、本発明の説明および例示のためだけのものであり、本発明の開示内容を十分に提供し、実施可能にするためだけに行ったことを理解されたい。上述の開示内容は、本発明を限定し、または他にそうした他の実施形態、適合形態、変形形態、変更形態、および均等な構成のいずれも除外することを目的とせず、またはそう解釈されるべきでなく、本発明は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等なものによってのみ限定される。
【符号の説明】
【0031】
1 圧着接続部
2 六角形状圧着部
3 外側突起
4 遮蔽ケーブル
10 ワイヤケーブル組立体
12 ワイヤケーブル
14 内側コア
16 第1の絶縁層
18 ワイヤ編組層
20 第2の絶縁層
22 内側フェルール
24 端部
26 外側フェルール
28 圧着接続部
30 末端突起部
38 外側フェルールの側面
42 窪み部
44 窪み部
46 凸部
48 凸部
50 凸部
52 凸部
54 溝
56 溝
66a 圧着工具の下部(台)
66b 圧着工具の上部(プレート)
68 突出部材
100 圧着接続部を構築する方法
200 ワイヤ組立体
202 ワイヤケーブル
204 端子
206 圧着接続部
208 リード線
210 コア翼部
212 基部
216a 凸部
216b 凸部
218 溝
220 床部
222 平面
224 軸方向端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触要素と、
長手方向軸に沿って配置され、前記接触要素を軸方向に受け入れるように構成される、ワイヤケーブルと、
を含む、圧着接続部であって、
前記接触要素が前記ワイヤケーブルを受け入れるとき、前記ワイヤケーブルを前記接触要素に取り付ける前記圧着接続部が形成され、前記圧着接続部の少なくとも一部分は、変形された少なくとも1つの窪み部を含み、前記窪み部は、溝によって分離される1対の凸部を含む、
圧着接続部。
【請求項2】
前記溝は、軸に向かって内側方向に配置され、前記1対の凸部はそれぞれ、前記内側方向と反対に前記軸から離れる外側方向に配置される、請求項1に記載の圧着接続部。
【請求項3】
前記1対の凸部のそれぞれの少なくとも一部分は、弓形形状を有し、前記溝の少なくとも一部分は、弓形形状を有する、請求項2に記載の圧着接続部。
【請求項4】
電気接触子が、基部および少なくとも1つのコア翼部を含み、前記圧着接続部が形成されるとき、前記少なくとも1つのコア翼部は、リード線の少なくとも一部分を取り囲み、前記1対の凸部および前記溝はそれぞれ、前記ワイヤケーブルのリード線に係合するように前記基部に形成される、請求項1に記載の圧着接続部。
【請求項5】
前記圧着接続部は、ワイヤケーブル組立体と関連し、前記ワイヤケーブル組立体は、モータ付き車両に配置される、請求項1に記載の圧着接続部。
【請求項6】
少なくとも内側電導コアと、
前記内側電導コアを取り囲む第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層を取り囲む外側電導ワイヤ層と、
を含む、長手方向軸に沿って配置されるワイヤケーブルと、
前記ワイヤケーブルの端部に受け入れられ、少なくとも前記外側電導ワイヤ層が間に配置されるように前記端部に近接して嵌合する、複数のフェルールとを備える、
ワイヤケーブル組立体であって、
前記複数のフェルールおよび前記ワイヤケーブルが共に圧着されるとき、前記複数のフェルールの少なくとも1つが、内側の溝によって分離される外側を向く1対の凸部を含む窪み部を有するように、圧着接続部が形成される、
ワイヤケーブル組立体。
【請求項7】
前記複数のフェルールは、
前記ワイヤケーブルの端部を軸方向に受け入れるように構成され、内側フェルールの少なくとも一部分に重なる、外側電導フェルールであって、編組ワイヤ層が、前記内側フェルールと前記外側電導フェルールの間の周囲に隣接配置される、外側電導フェルールを含み、少なくとも1つの前記凸部が、軸から離れる垂直方向に延びる、請求項6に記載のワイヤケーブル組立体。
【請求項8】
前記圧着接続部の形状は、少なくとも1対の凸部、少なくとも1つの溝、および複数の平坦な側面を含む、請求項7に記載のワイヤケーブル組立体。
【請求項9】
前記1対の凸部は、前記軸に沿って配置され且つ前記軸から離れる垂直な外側方向に延び、前記少なくとも1対の凸部は、2対の凸部および2つの溝を含み、一方の対の凸部は、前記軸に関して他方の対の凸部と反対側にある、請求項7に記載のワイヤケーブル組立体。
【請求項10】
前記フェルールは、前記溝の深さを有し、前記1対のフェルールは、外側および内側のフェルールを含み、前記外側フェルールの前記溝の深さは、前記内側フェルールの前記溝の深さよりも大きい、請求項12に記載のワイヤケーブル組立体。
【請求項11】
前記ワイヤケーブル組立体は、ワイヤケーブルハーネスの一部分として形成され、前記ワイヤケーブルハーネスは、1つより多いワイヤケーブル組立体を含む、請求項1に記載のワイヤケーブル組立体。
【請求項12】
ワイヤケーブル組立体に圧着接続部を形成する方法であって、
長手方向軸に沿って配置されるワイヤケーブルおよび電気接触要素を提供するステップであって、前記接触要素は、前記ワイヤケーブルを受け入れるように構成されている、ステップと、
前記ワイヤケーブルの一部分を前記接触要素内に受け入れるステップと、
前記ワイヤケーブルを前記接触要素に取り付ける圧着接続部を形成するように前記ワイヤケーブルおよび前記接触要素を共に圧着するステップであって、前記圧着接続部の少なくとも一部分は、前記圧着接続部で変形された少なくとも1つの形状を有し、前記少なくとも1つの形状は、溝により分離される1対の凸部を含む、ステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記提供するステップは、
前記圧着するステップにおいて前記少なくとも1つの形状を形成するのに使用される圧着工具を提供するステップを含み、前記圧着工具は、1対の凸部と前記1対の凸部の間に延びる突出部材とを有しており、前記圧着工具の前記突出部材が前記溝を形成し、前記圧着工具の前記1対の凸部が前記圧着接続部の前記1対の凸部を形成する、請求項13に記載の方法。
【請求項14】
前記ワイヤケーブル組立体は、少なくとも1つのフェルールを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ワイヤケーブル組立体の前記少なくとも1つのフェルールは、内側フェルールおよび前記内側フェルールに重なる外側フェルールを含み、前記方法は、
前記圧着工具により、前記圧着接続部が前記圧着接続部の継目から離れる方向に形成されるとき、前記外側フェルールに沿って材料を押し出すステップであって、前記圧着工具により前記材料に形成される1つまたは複数の突起が、前記継目に隣接して形成されないようにする、ステップ
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記提供するステップは、基部を有する端子を含む電気接触子をさらに含み、前記圧着接続部が形成されるとき、前記1対の凸部および前記溝は、前記ワイヤケーブルの電気リード線に係合するように前記基部に配置される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記ワイヤケーブル組立体は、モータ付き車両に関連している、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
ワイヤケーブル組立体に圧着接続部を形成する方法であって、
長手方向軸に沿って配置されるワイヤケーブルおよび複数のフェルールを提供するステップであって、前記複数のフェルールはそれぞれ、前記ワイヤケーブルを受け入れるように構成される、ステップと、
前記複数のフェルールに前記ワイヤケーブルの一部分を受け入れるステップと、
前記ワイヤケーブルを前記複数のフェルールに接続する圧着接続部を形成するように、前記ワイヤケーブルおよび前記複数のフェルールを互いに取り付けるステップであって、前記圧着接続部の少なくとも一部分は、前記圧着接続部で変形される少なくとも1つの形状を有し、前記少なくとも1つの形状は、溝によって分離される1対の凸部を含む、ステップと
を含む、方法。
【請求項19】
前記ワイヤケーブル組立体は、モータ付き車両に配置されるワイヤリングシステムおよび電気システムの少なくとも1つと関連している、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−33722(P2013−33722A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−113014(P2012−113014)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【出願人】(599023978)デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (281)
【Fターム(参考)】