圧粉コア及びその製造方法
【課題】優れた磁気特性を有する複雑形状の圧粉コア及びその製造方法を提供する。
【解決手段】磁性粉末を含有する原料粉末を加圧成形することにより、ステータヨーク21から複数のティース22が突出した形状のステータコア23を製造する。この製造方法は、2段階の加圧成形工程からなる。第一成形工程は、部品用原料粉末を部品成形用金型に充填し、所定のプレス圧で加圧成形して部品を製造する。第二成形工程は、第一成形工程で得られた複数の部品を圧粉コア成形用金型内に入れ、各部品がティース22を形成するように各部品を圧粉コア成形用金型内の所定位置に配置する。そして、本体部分用原料粉末を圧粉コア成形用金型内に充填し、所定のプレス圧で加圧成形してステータコア23を得る。このとき、第一成形工程において部品を成形する際のプレス圧は、第二成形工程においてステータコア23を成形する際のプレス圧よりも高圧とする。
【解決手段】磁性粉末を含有する原料粉末を加圧成形することにより、ステータヨーク21から複数のティース22が突出した形状のステータコア23を製造する。この製造方法は、2段階の加圧成形工程からなる。第一成形工程は、部品用原料粉末を部品成形用金型に充填し、所定のプレス圧で加圧成形して部品を製造する。第二成形工程は、第一成形工程で得られた複数の部品を圧粉コア成形用金型内に入れ、各部品がティース22を形成するように各部品を圧粉コア成形用金型内の所定位置に配置する。そして、本体部分用原料粉末を圧粉コア成形用金型内に充填し、所定のプレス圧で加圧成形してステータコア23を得る。このとき、第一成形工程において部品を成形する際のプレス圧は、第二成形工程においてステータコア23を成形する際のプレス圧よりも高圧とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧粉コア及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータ等の電気機器の鉄心材料として圧粉コアが注目を集めている。圧粉コアは、鉄系の磁性粉末に絶縁体をコーティングし、さらに必要に応じてバインダを添加した混合物を、加圧成形し熱処理することによって作製される。そのため、従来モータ等の電気機器の鉄心材料として広く用いられてきた電磁鋼板とは異なり、3次元構造を有する鉄心を作製することが可能である。このように、圧粉コアによって電気機器の構造設計の幅は大きく広がった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−278623号公報
【特許文献2】特開2008−135560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧粉コアを鉄心として用いることには、いくつかのデメリットも存在する。例えば、圧粉コアは、皮膜が被覆された鉄系磁性粉末を加圧成形することにより作製されるため、高密度の物が得られにくいという問題点を有していた。密度が低いと、圧粉コアの磁束密度が低くなるので、その結果として高性能の電気機器を得ることは困難となる。
【0005】
また、電磁気的に最適化された鉄心の形状は複雑であることが多いが、複雑な形状を有する圧粉コアを加圧成形により作製することは容易ではない。特に、金型が複雑な形状となる場合は、プレス圧を高くできない点や、金型内面に潤滑剤を塗布して磁性粉末には潤滑剤を混合しない金型潤滑法で加圧成形を行うことが困難である点などから、高密度の物を得ることはいっそう困難である。
【0006】
実際にプレス圧を高めたり、金型潤滑法を用いて圧粉コアを作製することも可能ではあるが、このような場合には成形体が金型から取り出せなくなるなどのトラブルが発生する頻度が高くなり、その上金型の寿命は著しく低下する。そのため、複雑形状の圧粉コアを量産する場合には、上記のような手法は不向きである。よって、複雑形状の圧粉コアを量産に適した方法で作製する場合は、高密度で磁束密度の高い圧粉コアを得ることは困難であった。
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、優れた磁気特性を有する複雑形状の圧粉コア及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る圧粉コアの製造方法は、磁性粉末を含有する原料粉末を加圧成形することにより、本体部分から1箇所以上の突起部が突出した形状の圧粉コアを製造する方法であって、部品用原料粉末を部品成形用金型に充填し所定のプレス圧で加圧成形して1種以上の部品を製造する第一成形工程と、前記第一成形工程で得られた前記各種部品を、それぞれ1個以上圧粉コア成形用金型内に入れ、前記部品が前記突起部を形成するように前記部品を前記圧粉コア成形用金型内の所定位置に配置するとともに、本体部分用原料粉末を前記圧粉コア成形用金型内に充填し、所定のプレス圧で加圧成形して前記圧粉コアを得る第二成形工程と、を備え、前記第一成形工程において前記各種部品を成形する際の前記各プレス圧はいずれも、前記第二成形工程において前記圧粉コアを成形する際の前記プレス圧よりも高圧であることを特徴とする。
【0008】
このような本発明に係る圧粉コアの製造方法においては、前記第二成形工程で得られた前記圧粉コアを熱処理する熱処理工程を備えることが好ましい。
また、前記第一成形工程において前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際には、内面に潤滑剤を塗布した前記部品成形用金型を用い、前記第二成形工程において前記圧粉コアを成形する際には、潤滑剤を含有する前記本体部分用原料粉末を用いることが好ましい。
【0009】
さらに、前記部品用原料粉末及び前記本体部分用原料粉末はバインダを含有し、前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際に用いられる前記部品用原料粉末に含まれる前記バインダの含有量は、前記本体部分用原料粉末に含まれる前記バインダの含有量よりも少ないことが好ましい。
さらに、前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際に用いられる前記部品用原料粉末に含まれる不純物の濃度は、前記本体部分用原料粉末に含まれる不純物の濃度よりも低く且つ1000ppm未満であることが好ましい。
【0010】
さらに、前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際に用いられる前記部品用原料粉末は、扁平加工が施されていることが好ましい。
さらに、前記本体部分用原料粉末の平均粒径が前記部品用原料粉末の平均粒径よりも小さいことが好ましい。その場合には、前記本体部分用原料粉末の平均粒径が50μm以上100μm以下で、前記部品用原料粉末の平均粒径が200μm以上300μm以下であることがより好ましい。
さらに、本発明に係る圧粉コアは、磁性粉末を含有する原料粉末を加圧成形することにより得られ、本体部分から1箇所以上の突起部が突出した形状の圧粉コアであって、上記のような本発明に係る圧粉コアの製造方法により製造されたものであることを特徴とする。
【0011】
圧粉コアの主な用途であるモータの鉄心などは、ヨーク,ティース等から構成されているが、これらの中で動作時に最も磁束が飽和しやすいのはティース、すなわち突起部であることが多い。つまり、高密度が要求されるのは、圧粉コアのうち突起部である。また、モータの鉄心のティース一つ一つは複雑な形状を有することは少ないので、ティースを予め高圧で加圧成形することは容易である。
よって、突起部(ティース)に対応する成形体をあらかじめ高圧で加圧成形して作製しておき、その成形体を金型に入れ、さらに磁性粉末を充填し加圧成形すれば、磁束密度が高く且つ飽和しにくい突起部を有する圧粉コアを得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る圧粉コアの製造方法によれば、優れた磁気特性を有する複雑形状の圧粉コアを製造することができる。また、本発明に係る圧粉コアは、複雑形状であるにもかかわらず優れた磁気特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一実施形態の電磁ユニットの構造を説明する斜視図である。
【図2】図1の電磁ユニットの分解斜視図である。
【図3】図1の電磁ユニットに組み込まれたステータコア(圧粉コア)の断面図である。
【図4】図3のステータコア(圧粉コア)の変形例を示す断面図である。
【図5】図3のステータコア(圧粉コア)の別の変形例を示す部分平面図である。
【図6】第二実施形態の電磁ユニットの構造を示す斜視図である。
【図7】図6の電磁ユニットの分解斜視図である。
【図8】第三実施形態の電磁ユニットの構造を示す斜視図である。
【図9】図8の電磁ユニットの分解斜視図である。
【図10】第四実施形態の電磁ユニットの構造を示す斜視図である。
【図11】図10の電磁ユニットの分解斜視図である。
【図12】第五実施形態のモータの構造を示す斜視図である。
【図13】第六実施形態のモータの構造を示す斜視図である。
【図14】部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末の平均粒径が同一の場合において、ステータヨークとティースとの接合部分の両原料粉末の粒子同士の噛み合わせの様子を説明する模式図である。
【図15】部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末の平均粒径が異なる場合において、ステータヨークとティースとの接合部分の両原料粉末の粒子同士の噛み合わせの様子を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る圧粉コア及びその製造方法の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、本発明に係る圧粉コアを鉄心として用いた電磁ユニット(モータを構成する要素)の構造を説明する斜視図であり、図2は、図1の電磁ユニットの分解斜視図である。なお、図1においては、電磁ユニットの細部の構造が見えやすいように、ロータ及びステータが備えるティースの図示を一部のみ省略してある。
【0015】
まず、図1,2に示す電磁ユニットの構造について説明する。図1,2の電磁ユニットは、小型化(薄型化)に適したアキシャルモータを構成する要素であり、略環状のロータ10と、ロータ10と同心に配され且つロータ10に対して隙間を介して対向する略環状のステータ20と、を備えている。
ステータ20は、環状のステータヨーク21及び複数のティース22からなるステータコア23と、ステータコア23の内径面に沿うように(詳しくは、後述するように並ぶ複数のティース22の列に沿うように)同心に近接配置された環状のコイル25と、で構成されている。なお、コイル25の巻数は特に限定されるものではなく、供給される電圧に応じて適宜設定すればよい。
【0016】
ステータコア23について詳述すると(ステータコア23を軸方向に沿う平面で切断した断面図である図3も併せて参照)、ステータヨーク21の軸方向一端面から複数のティース22が軸方向に突出して設けられており、これらのティース22は互いに所定間隔をあけて周方向に沿って並べられている。そして、このステータコア23は、磁性粉末を含有する原料粉末を加圧成形することにより得られた圧粉コアで構成されている。なお、ステータヨーク21が、本発明の構成要件である本体部分に相当し、ティース22が本発明の構成要件である突起部に相当する。
【0017】
一方、ロータ10は、環状のロータヨーク11と複数(ステータ20のティース22と同数)のティース12とからなる。詳述すると、ロータヨーク11の外径面から、複数のティース12が径方向外方に突出して形成されており、これらのティース12は互いに所定間隔をあけて周方向に沿って並べられている。これらのティース12は、例えば鉄や圧粉コアのような磁性体からなるので、ロータヨーク11の外径面に磁性体からなる突起部と凹部とが周方向に沿って交互に並べられている状態となる。
【0018】
そして、ロータ10の各ティース12は、ステータ20の各ティース22に対してそれぞれ隙間を介して対向可能となっている。詳述すると、ステータ20の各ティース22の軸方向先端面とロータ10の各ティース12の軸方向側面とが、それぞれ軸方向隙間を介して対向可能となっている(図1を参照)。なお、ロータ10のティース12とステータ20のティース22は、必ずしも同数である必要はない。同数でなくても、ロータ10の回転に応じて磁気エネルギーが後述のように変化すれば、回転トルクが発生する。
【0019】
なお、鉄や圧粉コアのような磁性体で構成されたティース12をロータヨーク11の外径面に設ける代わりに、ロータヨーク11の外径面に複数の磁極(例えば永久磁石)を周方向に沿って並べてもよい。この場合には、磁極の外面のうちステータ20のティース22と対向する面を、N極又はS極とし、前記対向面がN極である磁極とS極である磁極とを周方向に沿って交互に配置する。また、ステータ20のティース22とロータ10の磁極対(N極とS極の対)の数は同数とすることが好ましい。
【0020】
ロータ10の各ティース12とステータ20の各ティース22とが、それぞれ対向している状態(正対状態)では、両ティース12,22を含む磁性体がコイル25の導通方向を囲んでおり、コイル25が発生させる磁束の磁路を形成する。この状態は、ロータ10の回転位置としては磁気的に最も安定(低磁気エネルギー)な状態であるので、コイル25に電流を供給しても回転トルクは発生しない。
【0021】
一方、ロータ10の各ティース12とステータ20の各ティース22とが、それぞれまったく対向していない状態(非正対状態)では、コイル25の導通方向を囲む磁路において大きな空間が存在している。そして、前記正対状態と比べて磁路の磁気抵抗が大きくなるため、コイル25に電流を供給した際に発生する磁束は前記正対状態よりも小さくなる。この状態は、ロータ10の回転位置としては磁気的に最も不安定(高磁気エネルギー)な状態であるので、コイル25に電流を供給しても理論上は回転トルクは発生しない。
【0022】
実際には、ロータ10の回転位置が前記正対状態や前記非正対状態から僅かにずれることによって、磁気エネルギーが小さくなる方向に回転トルクが発生する。例えば、ロータ10の各ティース12とステータ20の各ティース22とが、各ティース間距離(以降はピッチと記すこともある)の1/4だけずれている状態であると、コイル25に電流を供給することによって磁束が発生し、ロータ10の各ティース12とステータ20の各ティース22とが前記正対状態となる方向に回転トルクが発生する。換言すると、前記正対状態が磁気的に最も安定(低磁気エネルギー)な状態であるため、その状態になろうとする回転トルクが発生する。
【0023】
よって、電磁ユニットのステータ20のコイル25に電流を供給すると、ステータ20の各ティース22に軸方向の磁束が発生し、上記のようなメカニズムによりロータ10が軸を中心に回転する。そして、このロータ10の回転が、ロータ10に連結された部材(図示せず)に伝達されるようになっている。
この電磁ユニットは、優れた磁気特性と最適化された複雑な3次元形状を有する圧粉コアを鉄心として用いているので、電磁鋼板などを鉄心として用いた場合に比べて、背景技術の項に前記したような優位性を有している。そして、このような電磁ユニットは、電気機器,電子機器,産業用機械,自動車,ロボット等に組み込まれるモータを構成する要素として好適である。
【0024】
なお、ステータコア23の内径面にコイル25を嵌め込めばよいので、ステータ20の組み立てが極めて容易であり、さらに、ロータ10とステータ20の嵌合も、側面から合わせる形で行うことができるので、電磁ユニットの組立性も良好である。また、ロータ10とステータ20の支持機構については図示していないが、互いの軸方向及び径方向の位置を維持しつつ相対的に回転可能に保持すればよい。
【0025】
次に、ステータコア23を構成する圧粉コアの製造方法について説明する。この圧粉コアは、磁性粉末を含有する原料粉末を加圧成形することにより製造される。そして、この加圧成形は、下記のような2段階の加圧成形工程からなる。
まず、第一成形工程により、ステータ20のティース22を形成する部品(例えば、図1,2の場合のような柱状の部品)を製造する。その際には、部品用原料粉末を部品成形用金型に充填し所定のプレス圧で加圧成形する。部品は1種類でもよいが、その形状,部品用原料粉末の種類,成形条件等が異なる複数種の部品を所望により製造してもよい。
【0026】
次に、第二成形工程により、ステータヨーク21の軸方向一端面から複数のティース22が軸方向に突出して形成されたステータコア23を製造する。その際には、前記部品を圧粉コア成形用金型内に入れ、前記部品がティース22を形成するように前記部品を前記圧粉コア成形用金型内の所定位置に配置する。そして、本体部分用原料粉末を前記圧粉コア成形用金型内に充填して、所定のプレス圧で加圧成形すると、本体部分用原料粉末によりステータヨーク21が形成され、ティース22を備えるステータヨーク21からなるステータコア23が得られる。このとき、第一成形工程において前記部品を成形する際のプレス圧は、第二成形工程におけるプレス圧よりも高圧とする。
【0027】
なお、複数種の部品を用いる場合は、各種部品をそれぞれ1個ずつ用いてもよいし、複数ずつ用いてもよい。また、ステータヨーク21とティース22は、図3のように、1面のみで接触していてもよいが、図4(ステータコア23を軸方向に沿う平面で切断した断面図である)のように、部品の一端部が本体部分(ステータヨーク21)に埋め込まれ且つ部品の径方向外径側部分がステータヨーク21に覆われていてもよい。さらに、図5(ステータコア23のティース22を軸方向から見た平面図である)のように、部品の表面のうち径方向内径側部分及び軸方向先端面のみがステータヨーク21から露出し、その他の部分がステータヨーク21に覆われていてもよい。
【0028】
部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末は、絶縁皮膜によってコーティングされた軟磁性の粉末が好ましい。粉末の成分は、軟磁性を示すものならば特に限定されるものではなく、例えば純Fe,Fe−Si合金,パーマロイ等があげられるが、モータ用鉄心のように低周波において使用され高い磁束密度が要求される場合には、純Feを用いることが好ましい。この粉末は、例えば水アトマイズ法で作製されたものが好ましく、その粒径は数十〜数百μm (例えば100μm )が好ましい。また、この粉末は、粒状の粉末に扁平加工(例えば、乾式法で機械的に偏平化する方法)を施して得た扁平粉末が好ましい。
【0029】
さらに、部品用原料粉末と本体部分用原料粉末は、同種の粉末でもよいし異種の粉末でもよい。例えば、純度の高い(酸素等の不純物の濃度が低い)粉末を用いることによって圧粉コアの磁気特性改善を行う場合は、部品用原料粉末と本体部分用原料粉末のうち部品用原料粉末の方のみ高純度(1000ppm未満)のものを用いるとよい。こうすることにより、磁気特性改善の際のコストアップを最低限に抑えることができる。不純物の濃度が低いほど性能は向上するが、通常(1000ppm)よりも低ければ、圧粉コアの磁気特性改善を行うことができる。なお、複数種の部品用原料粉末を用いて複数種の部品を作製する場合には、そのうち少なくとも1種の部品用原料粉末を純度の高いものとすれば、磁気特性の改善を行うことができる。
【0030】
さらに、加圧成形の際に生じた歪みの除去を目的として、第二成形工程により得られたステータコア23に適宜熱処理を施してもよい。熱処理を施す場合には、部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末に耐熱性の高い物質で絶縁皮膜を形成することが好ましい。このような耐熱性の高い物質としては、例えば、既によく知られているようにリン酸塩系化合物や酸化マグネシウム(MgO)などがあげられる。
【0031】
さらに、部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末はバインダを含有していてもよい。バインダの種類は特に限定されるものではないが、ポリイミド,エポキシ樹脂,フェノール樹脂,シリコーン樹脂などがあげられる。また、バインダの含有量は、原料粉末全体の1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。バインダの含有量が多いと、成形体内部の非磁性部分が増加して、磁気特性が不十分となるおそれがある。
【0032】
さらに、部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末の両方がバインダを含有する場合には、本体部分用原料粉末よりも部品用原料粉末の方が、バインダの含有量が少ないことが好ましい。そうすれば、強度を著しく低下させることなく、磁束が飽和しやすい部分のみ密度を高めることができる。なお、複数種の部品用原料粉末を用いて複数種の部品を作製する場合には、そのうち少なくとも1種の部品用原料粉末が本体部分用原料粉末よりもバインダの含有量が少なければ、上記効果が得られる。
【0033】
以下に、上記の第一成形工程及び第二成形工程について、さらに詳細に説明する。
上記のような部品用原料粉末からティース22に対応する部品を作製するが、部品は1種のみならず、その形状,部品用原料粉末の種類,成形条件等が異なる複数種の部品を作製してもよく、これらをティース部分に限らずあらゆる部位に用いることが可能である。ティース22はさほど複雑な形状を持たない場合が多いため、部品は高圧の加圧成形で製造することができ、第二成形工程における加圧成形よりも高圧で加圧成形することができる。複数種の部品を作製する場合には、いずれの種類の部品についても、第二成形工程における加圧成形よりも高圧で加圧成形する。
【0034】
第一成形工程における加圧成形の圧力は特に限定されるものではないが、700MPa以上1200MPa以下が好ましく、800MPa以上1000MPa以下がより好ましい。プレス圧があまりに低いと成形体の密度が十分に高くならず、本発明の有効性であるティース部分の高い磁束密度を実現することができないおそれがある。一方、あまりにプレス圧が高すぎると、単純な形状でも部品成形用金型の寿命が低下するなどの観点から、量産が難しくなる。
【0035】
この際の部品成形用金型の形状は、設計されたティース22の構造に合わせて適宜決定すればよいが、圧粉コアの強度向上の観点から、以下のような工夫をすることが好ましい。すなわち、部品の長さをステータコア23のティース22よりも長くする。こうすることで、第二成形工程において部品の一部分が本体部分(ステータヨーク21)に埋め込まれたような状態(図4を参照)となり、本体部分(ステータヨーク21)の上に単純に乗っている状態(図3を参照)よりも圧粉コアの強度が向上する。
【0036】
また、扁平粉末は、加圧成形すると、扁平粉末が有する平らな面をプレス方向に対して垂直にして並ぶ傾向がある。よって、扁平粉末を用いる場合は、完成した圧粉コアの磁束の流れる方向に対して、加圧成形により並んだ扁平粉末の前記平らな面が沿うように、加圧成形のプレス方向を決定するとよい。
さらに、部品の加圧成形を行う際には、潤滑剤を用いることが好ましい。その際には、潤滑剤を部品用原料粉末に混合してもよいが、高密度の成形体を得るためには、部品成形用金型の内面に潤滑剤を塗布して部品用原料粉末には潤滑剤を混合しない金型潤滑法を用いることが好ましい。使用する潤滑剤の種類は特に限定されるものではないが、例えばステアリン酸系潤滑剤があげられる。
【0037】
上記のような条件で加圧成形することにより得られた部品は、第二成形工程による圧粉コアの作製に対してそのまま用いることが好ましい。そうすれば、バインダの硬化などが進まないため、部品と本体部分用原料粉末とのなじみが良好となる。ただし、第二成形工程の加圧成形に供する前に、部品に対して熱処理を施しても差し支えない。
次に、こうして得られた1種又は複数種の部品と本体部分用原料粉末とを用いて、圧粉コアを作製する。ティース22に対応する部品は既に加圧成形されたものであるので、第二成形工程において再び加圧されても、その体積はほとんど変化しない。そのため、このことを考慮した上で各パンチの初期位置を適切に決める必要がある。例えば、図3のような圧粉コアの場合には、パンチは1段で済むが、図4のような圧粉コアの場合にはパンチは3段とする必要がある。
【0038】
また、本体部分用原料粉末には、潤滑剤を混合することが好ましい。部品の加圧成形の場合と同様に金型潤滑法を用いることもできるが、複雑形状の金型で加圧成形を行う場合は潤滑剤を本体部分用原料粉末に混合する方が、成形体が金型から抜けなくなるなどといったトラブルの頻度を低減することができる。本体部分用原料粉末全体に対する潤滑剤の混合量は、1.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
【0039】
第二成形工程においては、はじめに部品を圧粉コア成形用金型内の所定位置へ配置し、その後に各部品のすき間に本体部分用原料粉末を適量充填すればよい。この際、圧粉コア成形用金型のうちティース22に対応する部分の大きさが前記各部品よりも大きく、部品と圧粉コア成形用金型との間に隙間が生じる場合には、圧粉コア成形用金型内での部品の位置を決定しなければならない。
【0040】
一般的には、ティース22の中で最も高い磁束密度が要求されるのは、ティース22の外面のうちの一部であることが多いので、部品の当該面を圧粉コア成形用金型の内面に接触させた状態で(圧粉コアから部品の当該面が露出するように)部品を固定すればよい。例えば、部品に樹脂などを塗布しておくことにより、こうした固定を行うことが可能である。
【0041】
また、上記の最も高い磁束密度が要求される面がティース22の軸方向先端面である場合は、例えば柱状の部品の長手方向端面を圧粉コア成形用金型の内面に接触させた状態で固定した後に、圧粉コア成形用金型内に本体部分用原料粉末を充填すればよい。ただし、ティース部分は必ずしも部品の一部が露出している必要はなく、少量の粉末を充填した後に部品を固定することで部品が全く露出しない形態としてもよい。
【0042】
以上のようにして圧粉コア成形用金型内に部品を配し本体部分用原料粉末を充填したら、加圧成形を行う。第二成形工程における加圧成形の際のプレス圧は、500MPa以上1000MPa以下が好ましく、600MPa以上800MPa以下がより好ましい。複雑形状の圧粉コアの場合は、高圧で加圧成形すると成形体が圧粉コア成形用金型から抜けなくなったり、圧粉コア成形用金型の寿命が著しく低下することがあるので、あまり高いプレス圧で成形しないことが好ましい。特に、部品を加圧成形する際のプレス圧よりも小さくすることにより、ティース部の密度を相対的に高くすることができるので、高い量産性とティース部の高い磁束密度とを同時に実現することができる。
【0043】
このようにして得られた成形体を300℃以上600℃以下の温度で熱処理することにより、加圧成形により生じた歪みを取り除きコアロスを低下させて(バインダを含有する場合は、同時にバインダも硬化させて)、圧粉コアを完成させる。熱処理温度の最適値は、原料粉末の絶縁皮膜の種類によって異なるので、絶縁皮膜を構成する物質に応じて適宜決定すればよい。また、熱処理時間は10分以上1時間以下が好ましく、雰囲気は大気,窒素などから選択するとよい。以上のようにして、複雑形状であるにもかかわらず優れた磁気特性を有する圧粉コアを作製することができる。
【0044】
〔第二実施形態〕
第二実施形態の電磁ユニットの構造を、図6,7を参照しながら詳細に説明する。図6は、第二実施形態の電磁ユニットの構造を説明する斜視図であり、図7は、図6の電磁ユニットの分解斜視図である。ただし、第二実施形態の電磁ユニットの構成及び作用効果は、第一実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。また、図6,7においては、図1,2と同一又は相当する部分には、図1,2と同一の符号を付してある。
【0045】
第二実施形態の電磁ユニットのロータ10においては、ロータヨーク11の外径面から複数のティース12が径方向外方に突出して形成されているが、第一実施形態と比較するとティース12の突出長さが短いため、各ティース12はステータ20の各ティース22の径方向内側に配されている。そして、ステータ20の各ティース22の径方向内側側面とロータ10の各ティース12の径方向先端面とが、それぞれ径方向隙間を介して対向可能となっている(図6を参照)。
【0046】
このような電磁ユニットは、軸方向長さをより短くすることが可能であるので、より一層の小型化(薄型化)が可能である。また、一般に平面よりも円筒面の方が高精度な加工を行うことができるので、ロータ10の各ティース12と対向するステータ20の各ティース22の対向面は、軸方向先端面よりも径方向内側側面の方が好ましい。対向面が径方向内側側面である場合は、対向面間の距離(隙間の大きさ)を短くすることができ、よってコイル25から見た磁気抵抗を低くすることができるため、発生する磁束が増加し、大トルク化し易くなる。
【0047】
〔第三実施形態〕
第三実施形態の電磁ユニットの構造を、図8,9を参照しながら詳細に説明する。図8は、第三実施形態の電磁ユニットの構造を説明する斜視図であり、図9は、図8の電磁ユニットの分解斜視図である。ただし、第三実施形態の電磁ユニットの構成及び作用効果は、第一,第二実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。また、図8,9においては、図1,2と同一又は相当する部分には、図1,2と同一の符号を付してある。
【0048】
第三実施形態の電磁ユニットのロータ10においては、ロータヨーク11の外径面から複数のティース12が軸方向のステータ20側に向かって突出して形成されている。そして、ステータヨーク21よりもロータヨーク11の方が大径とされているため、ロータ10の各ティース12はステータ20の各ティース22の径方向外側に配されていて、ステータ20の各ティース22の径方向外側側面とロータ10の各ティース12の径方向内側側面とが、それぞれ径方向隙間を介して対向可能となっている(図8を参照)。
【0049】
一般に、平面よりも円筒面の方が高精度な加工を行うことができるので、ロータ10の各ティース12と対向するステータ20の各ティース22の対向面は、軸方向先端面よりも径方向外側側面の方が好ましい。対向面が径方向外側側面である場合は、対向面間の距離(隙間の大きさ)を短くすることができ、よってコイル25から見た磁気抵抗を低くすることができるため、発生する磁束が増加し、大トルク化し易くなる。
【0050】
〔第四実施形態〕
第四実施形態の電磁ユニットの構造を、図10,11を参照しながら詳細に説明する。図10は、第四実施形態の電磁ユニットの構造を説明する斜視図であり、図11は、図10の電磁ユニットの分解斜視図である。ただし、第四実施形態の電磁ユニットの構成及び作用効果は、第一〜第三実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。また、図10,11においては、図1,2と同一又は相当する部分には、図1,2と同一の符号を付してある。
【0051】
第四実施形態の電磁ユニットのロータ10においては、ロータヨーク11の軸方向一端面から複数のティース12が軸方向のステータ20側に向かって突出して形成されている。一方、ステータ20においては、ステータヨーク21の軸方向一端面から複数のティース12が軸方向のロータ10側に向かって突出して形成されているが、周方向に沿って並ぶティース12の列が、径方向隙間を隔てて2列同心円状に形成されている。
【0052】
そして、この径方向隙間にロータ10のティース12が配されていて、ステータ20の内径側ティース列の各ティース22の径方向外側側面とロータ10の各ティース12の径方向内側側面とが、それぞれ径方向隙間を介して対向可能となっているとともに、ステータ20の外径側ティース列の各ティース22の径方向内側側面とロータ10の各ティース12の径方向外側側面とが、それぞれ径方向隙間を介して対向可能となっている(図10,11を参照)。
【0053】
このような電磁ユニットは、2列のティース列のそれぞれに対して回転トルクを発生をさせることができるため、大トルク化を図ることができる。また、一般に平面よりも円筒面の方が高精度な加工を行うことができるので、ロータ10の各ティース12と対向するステータ20の各ティース22の対向面は、軸方向先端面よりも径方向側面の方が好ましい。対向面が径方向側面である場合は、対向面間の距離(隙間の大きさ)を短くすることができ、よってコイル25から見た磁気抵抗を低くすることができるため、発生する磁束が増加し、大トルク化し易くなる。なお、ステータ20のティース列の数を3列以上とすることも可能である。その場合には、ロータ10のティース列の数についても、ステータ20のティース列の数に応じて適宜増加させることが好ましい。
【0054】
〔第五実施形態〕
第五実施形態のモータの構造を、図12を参照しながら詳細に説明する。図12は、第五実施形態のモータの構造を説明する斜視図である。ただし、第五実施形態のモータを構成する要素である電磁ユニットの構成及び作用効果は、第一〜第四実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。また、図12においては、図1,2と同一又は相当する部分には、図1,2と同一の符号を付してある。
【0055】
第一〜第四実施形態の電磁ユニットは、ロータ10のティース12とステータ20のティース22との回転位置に応じて回転トルクを発生させることができ、コイル25に供給する電流の極性を反転することによって、回転トルクの極性を反転させることができる。ただし、電磁ユニットのロータ10が、鉄や圧粉コアのような磁性体で構成されたティース12を有し磁極を有しない場合は、1個の電磁ユニットにより発生する回転トルクは脈動トルクであり、連続的に一方向に回転するトルクを発生させることはできない。よって、連続的に一方向に回転トルクを発生させてモータとして機能させるためには、3個以上の電磁ユニットを用いてモータを構成する必要がある。
【0056】
図12のモータは、第二実施形態の電磁ユニットU1,U2,U3を軸方向に3個連結することにより構成されている。各電磁ユニットU1,U2,U3は、ステータ20を軸方向の同一方向に向けて(図12においてはステータ20を下方に向けて)連結されている。ただし、連結する電磁ユニットの個数は、3個に限らず4個以上でもよい。図示していないが、3個のロータ10及び3個のステータ20は、それぞれ機械的に連結されており、相対的に回転可能に保持されている。すなわち、3個のロータ10を連結したものがモータのロータとして機能するとともに、3個のステータ20を連結したものがモータのステータとして機能するようになっている。
【0057】
モータを構成する各電磁ユニットU1,U2,U3においては、ロータ10のティース12とステータ20のティース22との回転位置が一致しておらず、ずれている(正対状態ではない)。そして、軸方向一端の電磁ユニットから他端の電磁ユニットに向かうにしたがって、そのずれ量は徐々に大きくなっており、しかもそのずれ量の増加は一定となっている。
【0058】
ただし、軸方向一端の電磁ユニットについては、両ティース12,22の前記回転位置が一致していてもよい。例えば、図12のモータの場合は、下端の電磁ユニットU1においては、両ティース12,22の前記回転位置が一致しており、中央の電磁ユニットU2においては1/3ピッチずれており、上端の電磁ユニットU3においては、2/3ピッチずれている(1/3ピッチずつ、ずれ量が大きくなっている)。
【0059】
なお、図12のモータの場合は、3つの電磁ユニットU1,U2,U3のロータ10のティース12の回転位置はいずれも揃っていて、ステータ20のティース22の回転位置はいずれも揃っていないが、相対的な位置関係がずれていればよいので、図12とは逆にステータ20のティース22の回転位置が揃っていて、ロータ10のティース12の回転位置が揃っていないという構成にしてもよい。
【0060】
3個の電磁ユニットU1,U2,U3のコイル25毎に所定の電流を供給すると、それぞれの電磁ユニットU1,U2,U3が回転トルクを発生させる。3個の電磁ユニットU1,U2,U3の各ロータ10及びステータ20はそれぞれ機械的に連結されてモータのロータ及びステータを構成しているので、モータのロータに発生する回転トルクは3個の電磁ユニットU1,U2,U3の回転トルクの合計(合成トルク)となる。この合成トルクは、一定の回転トルクに脈動分が重畳した波形となっていることから、連続的な回転トルクの発生が可能である。
【0061】
〔第六実施形態〕
第六実施形態のモータの構造を、図13を参照しながら詳細に説明する。図13は、第六実施形態のモータの構造を説明する斜視図である。ただし、第六実施形態のモータを構成する要素である電磁ユニットの構成及び作用効果は、第一〜第四実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。また、図13においては、図1,2と同一又は相当する部分には、図1,2と同一の符号を付してある。
【0062】
第五実施形態のモータとは異なり電磁ユニットのロータ10が磁極31を有する場合は、2個の電磁ユニットを用いてモータを構成することができる。図13のように、両電磁ユニットU1,U2のステータ20同士を背面連結してモータを構成することによって、薄型のモータとすることができる。すなわち、ステータヨーク21の軸方向他端面(ティース22が形成されていない軸方向端面)を対向させて、両電磁ユニットU1,U2のステータ20同士を連結してモータを構成している。
【0063】
図示していないが、2個のロータ10及び2個のステータ20は、それぞれ機械的に連結されており、相対的に回転可能に保持されている。すなわち、2個のロータ10を連結したものがモータのロータとして機能するとともに、2個のステータ20を連結したものがモータのステータとして機能するようになっている。
モータを構成する各電磁ユニットU1,U2のうち少なくとも一方においては、ロータ10の磁極31とステータ20のティース22との回転位置が一致しておらず(正対状態ではない)、ずれている。そして、両電磁ユニットU1,U2のずれ量の差は1/4ピッチとなっている。例えば、図13のモータの場合は、上側の電磁ユニットU2においては、ロータ10の磁極31のうちS極31Sとステータ20のティース22との回転位置が一致しており、下側の電磁ユニットU1においては1/4ピッチずれている。
【0064】
なお、図13のモータの場合は、2つの電磁ユニットU1,U2のロータ10の磁極31の回転位置は揃っていて、ステータ20のティース22の回転位置は揃っていないが、相対的な位置関係がずれていればよいので、図13とは逆にステータ20のティース22の回転位置が揃っていて、ロータ10の磁極31の回転位置が揃っていないという構成にしてもよい。
【0065】
2個の電磁ユニットU1,U2のコイル25毎に所定の電流を供給すると、それぞれの電磁ユニットU1,U2が回転トルクを発生させる。2個の電磁ユニットU1,U2のロータ10及びステータ20はそれぞれ機械的に連結されてモータのロータ及びステータを構成しているので、モータのロータに発生する回転トルクは2個の電磁ユニットU1,U2の回転トルクの合計(合成トルク)となる。この合成トルクは、一定の回転トルクに脈動分が重畳した波形となっていることから、連続的な回転トルクの発生が可能である。
【0066】
ロータ10の磁極31(S極又はN極)とステータ20の各ティース22とが、それぞれ対向している状態(正対状態)では、磁極31が作る磁束とコイル25による磁束が発生する。この状態は磁気的に最も安定な状態であり、回転トルクは発生しない。なお、コイル25の供給される電流の極性が逆極性となると、磁極31が作る磁束とコイル25による磁束の極性が相反するようになるので、磁気的には最も不安定な状態となる。
【0067】
ロータ10のN極31Nの回転位置が前記正対状態から僅かにずれている場合に、コイル25に所定の極性の電流を供給すると、ロータ10のN極31Nとステータ20のティース22とが前記正対状態となる方向に回転トルクが発生する。逆に、前記極性と反対の極性の電流を供給すると、ロータ10のS極31Sとステータ20のティース22とが前記正対状態となる方向に回転トルクが発生する。
【0068】
よって、電磁ユニットのステータ20のコイル25に電流を供給すると、ステータ20の各ティース22に軸方向の磁束が発生し、上記のようなメカニズムによりロータ10が軸を中心に回転する。そして、このロータ10の回転が、ロータ10に連結された部材(図示せず)に伝達されるようになっている。このように、電磁ユニットのロータ10が磁極31を有する場合は、コイル25に供給される電流の極性によって、発生する回転トルクの方向が変化する。なお、鉄や圧粉コアのような磁性体で構成されたティース12と磁極31との両方をロータ10が有する場合は、両方の特性が合成されたトルク特性が現れる。
【0069】
〔第七実施形態〕
第七実施形態の電磁ユニットについて、以下に詳細に説明する。ただし、第七実施形態の電磁ユニットの構成及び作用効果は、第一〜第六実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
上記第一〜第六実施形態におけるステータコア23においては、ステータヨーク21とティース22との接合部分の接合強度は十分なものであったが、該接合部分における割れなどの発生を確実に防止するためには、該接合部分の接合強度をより高めることが好ましい。
【0070】
まず、上記各実施形態におけるステータヨーク21とティース22との接合部分について、図14を参照しながら説明する。上記各実施形態においては、部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末の平均粒径は特に限定されるものではなく、両原料粉末の平均粒径は同一であっても差し支えなかった。しかしながら、両原料粉末の平均粒径が同一であると、図14からわかるように、接合部分における両原料粉末の粒子同士の噛み合わせが良好ではない。その結果、ステータヨーク21とティース22との接合部分における割れなどの発生を、確実に防止することができないおそれがあった。
【0071】
そこで、本体部分用原料粉末の平均粒径を部品用原料粉末の平均粒径よりも小さくすると、図15に示すように、ティース22の表面における部品用原料粉末の粒子同士の隙間に、本体部分用原料粉末の粒子が入り込んで、ステータヨーク21とティース22との接合部分における両原料粉末の粒子同士の噛み合わせが良好となる。その結果、ステータヨーク21とティース22との接合部分の接合強度がより高くなって、高強度のステータコア23が得られる。
【0072】
両原料粉末の粒径を小さくすると、ステータコア23のヒステリシス損は増加し、透磁率が低下してしまう。しかしながら、一般に、ティース22以外の部分(ステータヨーク21など)は、ティース22に比べて磁束密度の変化が激しくなく、飽和しにくい。よって、ティース22以外の部分のみに粒径の小さい原料粉末を使用することにより、ステータコア23全体での磁気特性の劣化を最低限に抑えることができる。
【0073】
部品用原料粉末の平均粒径は、200μm以上300μm以下であることが好ましい。200μm未満であると、ステータヨーク21とティース22との接合部分の接合強度が十分に向上しないおそれがある。一方、300μm超過であると、ステータコア23の渦電流損が増加するおそれがある。また、本体部分用原料粉末の平均粒径は、50μm以上100μm以下であることが好ましい。50μm未満であると、透磁率が低下するおそれがある。一方、100μm超過であると、ステータヨーク21とティース22との接合部分の接合強度が十分に向上しないおそれがある。
なお、上記の各実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、電磁ユニット,モータの構造や圧粉コアの形状は特に限定されるものではなく、本発明はあらゆる構造の軟磁性部品に対して適用することができる。
【0074】
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。図1と同様の構成のモータの鉄心用圧粉コア(ステータコア)を前述と同様の製造方法で作製し、この圧粉コアを用いて図1のモータを作製した。そして、モータの特性を比較評価した。圧粉コアのステータヨーク部分の寸法は、外径100mm、内径70mm、高さ10mmであり、ティース部分の寸法は、縦10mm、横10mm、高さ20mmである。また、ティースの個数は10個である。
【0075】
部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末に含まれる磁性粉末は、断りのない限りいずれも平均粒径200μm の純鉄粉にリン酸塩の皮膜が施されたものである。また、部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末に混合されるバインダは、いずれもエポキシ樹脂である。そして、金型の内面に塗布される潤滑剤及び原料粉末に混合される潤滑剤としては、いずれもステアリン酸亜鉛を用いた。
【0076】
〔加圧成形のプレス圧について〕
表1に示すように、磁性粉末にバインダと潤滑剤を混合した部品用原料粉末を部品成形用金型内に充填し、加圧成形して部品を作製した。部品の寸法は縦6mm、横6mm、高さ25mmである。そして、この部品を圧粉コア成形用金型内に配するとともに、磁性粉末にバインダと潤滑剤を混合した本体部分用原料粉末(部品用原料粉末と同一の物)を圧粉コア成形用金型内に充填し、加圧成形して実施例1及び比較例1の圧粉コアを作製した。圧粉コアにおける前記部品の固定位置は、図5のように、部品の表面のうち径方向内径側部分及び軸方向先端面のみがステータヨークから露出し、その他の部分がステータヨークに覆われるようにした。
【0077】
このようにして作製した実施例1及び比較例1の圧粉コアの比較対照として、実施例1及び比較例1で用いた部品用原料粉末と同一の物を圧粉コア成形用金型内に充填し、加圧成形して従来例の圧粉コアを作製した。すなわち、2段階の加圧成形工程からなる製造方法ではなく、従来と同様に1段階の加圧成形工程からなる製造方法で圧粉コアを作製したものを従来例とした。
【0078】
【表1】
【0079】
これらの圧粉コアを組み込んだモータの特性を評価したところ、表1に示すように、比較例1のように部品と圧粉コアを成形する際のプレス圧が等しいと、モータの特性は従来例と同等であるが、実施例1のように部品を成形する際のプレス圧を圧粉コアを成形する際のプレス圧よりも高圧とすると、従来例よりもトルクが向上した。なお、表1に示した各モータのトルク及び効率は、従来例のモータのトルク及び効率を1とした場合の相対値でそれぞれ示してある。
【0080】
〔熱処理について〕
前述の実施例1の圧粉コアに、500℃で1時間加熱する熱処理を施して(実施例2とする)、熱処理の有無によるモータの性能の差異を比較した。結果を表2に示す。なお、表2に示した各モータのトルク及び効率は、従来例のモータのトルク及び効率を1とした場合の相対値でそれぞれ示してある。
表2から、熱処理を施すことによって圧粉コアの鉄損が減少し、結果として効率が上昇することがわかる。
【0081】
【表2】
【0082】
〔潤滑剤について〕
部品を加圧成形する際に、潤滑剤を部品用原料粉末に混合するか、混合せず金型潤滑法を用いるかによって、モータの性能に差異が出るかを検討した。結果を表3に示す。なお、表3に示した各モータのトルク及び効率は、従来例のモータのトルク及び効率を1とした場合の相対値でそれぞれ示してある。
表3から、潤滑剤を部品用原料粉末に混合して部品を製造した実施例2と比べて、金型潤滑法を用いて部品を製造した実施例3は、部品の密度が高いためモータのトルクが高いことがわかる。
【0083】
【表3】
【0084】
〔バインダについて〕
原料粉末に含まれるバインダの量によるモータの性能の差異を比較した。結果を表4に示す。なお、表4に示した各モータのトルク及び効率は、従来例のモータのトルク及び効率を1とした場合の相対値でそれぞれ示してある。
表4から、部品用原料粉末に含まれるバインダの含有量と本体部分用原料粉末に含まれるバインダの含有量が等しい実施例3と比べて、部品用原料粉末に含まれるバインダの含有量が本体部分用原料粉末に含まれるバインダの含有量よりも少ない実施例4は、部品の密度が高いためモータのトルクが高いことがわかる。
【0085】
【表4】
【0086】
〔不純物について〕
原料粉末に含まれる不純物の濃度によるモータの性能の差異を比較した。結果を表5に示す。なお、表5に示した各モータのトルク及び効率は、従来例のモータのトルク及び効率を1とした場合の相対値でそれぞれ示してある。
表5から、部品用原料粉末に含まれる不純物の濃度が通常の高さである実施例4(1000ppm)と比べて、部品用原料粉末に含まれる不純物の濃度が通常よりも低い実施例5(100ppm)は、モータの効率が高いことがわかる。
【0087】
【表5】
【0088】
〔扁平加工について〕
部品用原料粉末に用いる磁性粉末に扁平加工が施されているか否かによる、モータの性能の差異を比較した。部品は、その側面(高さ25mm×縦又は横6mmの面)をプレス面として加圧成形することにより作製した。結果を表6に示す。なお、表6に示した各モータのトルク及び効率は、従来例のモータのトルク及び効率を1とした場合の相対値でそれぞれ示してある。
表6から、扁平加工が施されていない通常の磁性粉末を用いた実施例5と比べて、扁平加工が施され粒子形状が扁平な磁性粉末を用いた実施例6は、部品の透磁率が高いためモータのトルクが高いことがわかる。
【0089】
【表6】
【0090】
〔平均粒径について〕
本体部分用原料粉末と部品用原料粉末の平均粒径を変化させた場合の、モータの性能の差異を比較した。結果を表7に示す。なお、圧粉コアの製造方法は、本体部分用原料粉末と部品用原料粉末の平均粒径が異なる点を除いては、実施例1と同様である。また、表7に示した各モータのトルク,効率,及び圧粉コアの機械強度は、実施例6のモータのトルク,効率,及び圧粉コアの機械強度を1とした場合の相対値でそれぞれ示してある。
【0091】
表7からわかるように、同一の平均粒径を有する本体部分用原料粉末と部品用原料粉末を用いた実施例6と比べて、本体部分用原料粉末の平均粒径が部品用原料粉末の平均粒径よりも小さい実施例7〜10は、トルクと効率がほぼ同等で、機械強度が著しく向上している。これに対して、実施例11は、本体部分用原料粉末の平均粒径が50μm未満であるため、実施例7,8,9に対して機械強度の向上は認められるものの、トルクと効率が低いことがわかる。また、実施例12は、本体部分用原料粉末の平均粒径が100μmより大きいため、実施例7,8,9に対して機械強度の向上が少ないことがわかる。以上のことから、本体部分用原料粉末の平均粒径を50μm以上100μm以下とすると、トルクと効率を大きく低下させずに機械強度を向上させることができることがわかる。
【0092】
一方、実施例13は、部品用原料粉末の平均粒径が200μm未満であるため、実施例7,10に対して機械強度の向上が少ないことがわかる。さらに、実施例14は、部品用原料粉末の平均粒径が300μmより大きいため、実施例7,10に対して強度の向上は認められるものの、効率が低下していることがわかる。以上のことから、部品用原料粉末の平均粒径を200μm以上300μm以下とすると、効率を大きく低下させずに機械強度を向上させることができることがわかる。
【0093】
【表7】
【符号の説明】
【0094】
10 ロータ
11 ロータヨーク
12 ティース
20 ステータ
21 ステータヨーク
22 ティース
23 ステータコア
25 コイル
U1,U2,U3 電磁ユニット
31S S極
31N N極
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧粉コア及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータ等の電気機器の鉄心材料として圧粉コアが注目を集めている。圧粉コアは、鉄系の磁性粉末に絶縁体をコーティングし、さらに必要に応じてバインダを添加した混合物を、加圧成形し熱処理することによって作製される。そのため、従来モータ等の電気機器の鉄心材料として広く用いられてきた電磁鋼板とは異なり、3次元構造を有する鉄心を作製することが可能である。このように、圧粉コアによって電気機器の構造設計の幅は大きく広がった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−278623号公報
【特許文献2】特開2008−135560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧粉コアを鉄心として用いることには、いくつかのデメリットも存在する。例えば、圧粉コアは、皮膜が被覆された鉄系磁性粉末を加圧成形することにより作製されるため、高密度の物が得られにくいという問題点を有していた。密度が低いと、圧粉コアの磁束密度が低くなるので、その結果として高性能の電気機器を得ることは困難となる。
【0005】
また、電磁気的に最適化された鉄心の形状は複雑であることが多いが、複雑な形状を有する圧粉コアを加圧成形により作製することは容易ではない。特に、金型が複雑な形状となる場合は、プレス圧を高くできない点や、金型内面に潤滑剤を塗布して磁性粉末には潤滑剤を混合しない金型潤滑法で加圧成形を行うことが困難である点などから、高密度の物を得ることはいっそう困難である。
【0006】
実際にプレス圧を高めたり、金型潤滑法を用いて圧粉コアを作製することも可能ではあるが、このような場合には成形体が金型から取り出せなくなるなどのトラブルが発生する頻度が高くなり、その上金型の寿命は著しく低下する。そのため、複雑形状の圧粉コアを量産する場合には、上記のような手法は不向きである。よって、複雑形状の圧粉コアを量産に適した方法で作製する場合は、高密度で磁束密度の高い圧粉コアを得ることは困難であった。
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、優れた磁気特性を有する複雑形状の圧粉コア及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る圧粉コアの製造方法は、磁性粉末を含有する原料粉末を加圧成形することにより、本体部分から1箇所以上の突起部が突出した形状の圧粉コアを製造する方法であって、部品用原料粉末を部品成形用金型に充填し所定のプレス圧で加圧成形して1種以上の部品を製造する第一成形工程と、前記第一成形工程で得られた前記各種部品を、それぞれ1個以上圧粉コア成形用金型内に入れ、前記部品が前記突起部を形成するように前記部品を前記圧粉コア成形用金型内の所定位置に配置するとともに、本体部分用原料粉末を前記圧粉コア成形用金型内に充填し、所定のプレス圧で加圧成形して前記圧粉コアを得る第二成形工程と、を備え、前記第一成形工程において前記各種部品を成形する際の前記各プレス圧はいずれも、前記第二成形工程において前記圧粉コアを成形する際の前記プレス圧よりも高圧であることを特徴とする。
【0008】
このような本発明に係る圧粉コアの製造方法においては、前記第二成形工程で得られた前記圧粉コアを熱処理する熱処理工程を備えることが好ましい。
また、前記第一成形工程において前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際には、内面に潤滑剤を塗布した前記部品成形用金型を用い、前記第二成形工程において前記圧粉コアを成形する際には、潤滑剤を含有する前記本体部分用原料粉末を用いることが好ましい。
【0009】
さらに、前記部品用原料粉末及び前記本体部分用原料粉末はバインダを含有し、前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際に用いられる前記部品用原料粉末に含まれる前記バインダの含有量は、前記本体部分用原料粉末に含まれる前記バインダの含有量よりも少ないことが好ましい。
さらに、前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際に用いられる前記部品用原料粉末に含まれる不純物の濃度は、前記本体部分用原料粉末に含まれる不純物の濃度よりも低く且つ1000ppm未満であることが好ましい。
【0010】
さらに、前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際に用いられる前記部品用原料粉末は、扁平加工が施されていることが好ましい。
さらに、前記本体部分用原料粉末の平均粒径が前記部品用原料粉末の平均粒径よりも小さいことが好ましい。その場合には、前記本体部分用原料粉末の平均粒径が50μm以上100μm以下で、前記部品用原料粉末の平均粒径が200μm以上300μm以下であることがより好ましい。
さらに、本発明に係る圧粉コアは、磁性粉末を含有する原料粉末を加圧成形することにより得られ、本体部分から1箇所以上の突起部が突出した形状の圧粉コアであって、上記のような本発明に係る圧粉コアの製造方法により製造されたものであることを特徴とする。
【0011】
圧粉コアの主な用途であるモータの鉄心などは、ヨーク,ティース等から構成されているが、これらの中で動作時に最も磁束が飽和しやすいのはティース、すなわち突起部であることが多い。つまり、高密度が要求されるのは、圧粉コアのうち突起部である。また、モータの鉄心のティース一つ一つは複雑な形状を有することは少ないので、ティースを予め高圧で加圧成形することは容易である。
よって、突起部(ティース)に対応する成形体をあらかじめ高圧で加圧成形して作製しておき、その成形体を金型に入れ、さらに磁性粉末を充填し加圧成形すれば、磁束密度が高く且つ飽和しにくい突起部を有する圧粉コアを得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る圧粉コアの製造方法によれば、優れた磁気特性を有する複雑形状の圧粉コアを製造することができる。また、本発明に係る圧粉コアは、複雑形状であるにもかかわらず優れた磁気特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一実施形態の電磁ユニットの構造を説明する斜視図である。
【図2】図1の電磁ユニットの分解斜視図である。
【図3】図1の電磁ユニットに組み込まれたステータコア(圧粉コア)の断面図である。
【図4】図3のステータコア(圧粉コア)の変形例を示す断面図である。
【図5】図3のステータコア(圧粉コア)の別の変形例を示す部分平面図である。
【図6】第二実施形態の電磁ユニットの構造を示す斜視図である。
【図7】図6の電磁ユニットの分解斜視図である。
【図8】第三実施形態の電磁ユニットの構造を示す斜視図である。
【図9】図8の電磁ユニットの分解斜視図である。
【図10】第四実施形態の電磁ユニットの構造を示す斜視図である。
【図11】図10の電磁ユニットの分解斜視図である。
【図12】第五実施形態のモータの構造を示す斜視図である。
【図13】第六実施形態のモータの構造を示す斜視図である。
【図14】部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末の平均粒径が同一の場合において、ステータヨークとティースとの接合部分の両原料粉末の粒子同士の噛み合わせの様子を説明する模式図である。
【図15】部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末の平均粒径が異なる場合において、ステータヨークとティースとの接合部分の両原料粉末の粒子同士の噛み合わせの様子を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る圧粉コア及びその製造方法の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、本発明に係る圧粉コアを鉄心として用いた電磁ユニット(モータを構成する要素)の構造を説明する斜視図であり、図2は、図1の電磁ユニットの分解斜視図である。なお、図1においては、電磁ユニットの細部の構造が見えやすいように、ロータ及びステータが備えるティースの図示を一部のみ省略してある。
【0015】
まず、図1,2に示す電磁ユニットの構造について説明する。図1,2の電磁ユニットは、小型化(薄型化)に適したアキシャルモータを構成する要素であり、略環状のロータ10と、ロータ10と同心に配され且つロータ10に対して隙間を介して対向する略環状のステータ20と、を備えている。
ステータ20は、環状のステータヨーク21及び複数のティース22からなるステータコア23と、ステータコア23の内径面に沿うように(詳しくは、後述するように並ぶ複数のティース22の列に沿うように)同心に近接配置された環状のコイル25と、で構成されている。なお、コイル25の巻数は特に限定されるものではなく、供給される電圧に応じて適宜設定すればよい。
【0016】
ステータコア23について詳述すると(ステータコア23を軸方向に沿う平面で切断した断面図である図3も併せて参照)、ステータヨーク21の軸方向一端面から複数のティース22が軸方向に突出して設けられており、これらのティース22は互いに所定間隔をあけて周方向に沿って並べられている。そして、このステータコア23は、磁性粉末を含有する原料粉末を加圧成形することにより得られた圧粉コアで構成されている。なお、ステータヨーク21が、本発明の構成要件である本体部分に相当し、ティース22が本発明の構成要件である突起部に相当する。
【0017】
一方、ロータ10は、環状のロータヨーク11と複数(ステータ20のティース22と同数)のティース12とからなる。詳述すると、ロータヨーク11の外径面から、複数のティース12が径方向外方に突出して形成されており、これらのティース12は互いに所定間隔をあけて周方向に沿って並べられている。これらのティース12は、例えば鉄や圧粉コアのような磁性体からなるので、ロータヨーク11の外径面に磁性体からなる突起部と凹部とが周方向に沿って交互に並べられている状態となる。
【0018】
そして、ロータ10の各ティース12は、ステータ20の各ティース22に対してそれぞれ隙間を介して対向可能となっている。詳述すると、ステータ20の各ティース22の軸方向先端面とロータ10の各ティース12の軸方向側面とが、それぞれ軸方向隙間を介して対向可能となっている(図1を参照)。なお、ロータ10のティース12とステータ20のティース22は、必ずしも同数である必要はない。同数でなくても、ロータ10の回転に応じて磁気エネルギーが後述のように変化すれば、回転トルクが発生する。
【0019】
なお、鉄や圧粉コアのような磁性体で構成されたティース12をロータヨーク11の外径面に設ける代わりに、ロータヨーク11の外径面に複数の磁極(例えば永久磁石)を周方向に沿って並べてもよい。この場合には、磁極の外面のうちステータ20のティース22と対向する面を、N極又はS極とし、前記対向面がN極である磁極とS極である磁極とを周方向に沿って交互に配置する。また、ステータ20のティース22とロータ10の磁極対(N極とS極の対)の数は同数とすることが好ましい。
【0020】
ロータ10の各ティース12とステータ20の各ティース22とが、それぞれ対向している状態(正対状態)では、両ティース12,22を含む磁性体がコイル25の導通方向を囲んでおり、コイル25が発生させる磁束の磁路を形成する。この状態は、ロータ10の回転位置としては磁気的に最も安定(低磁気エネルギー)な状態であるので、コイル25に電流を供給しても回転トルクは発生しない。
【0021】
一方、ロータ10の各ティース12とステータ20の各ティース22とが、それぞれまったく対向していない状態(非正対状態)では、コイル25の導通方向を囲む磁路において大きな空間が存在している。そして、前記正対状態と比べて磁路の磁気抵抗が大きくなるため、コイル25に電流を供給した際に発生する磁束は前記正対状態よりも小さくなる。この状態は、ロータ10の回転位置としては磁気的に最も不安定(高磁気エネルギー)な状態であるので、コイル25に電流を供給しても理論上は回転トルクは発生しない。
【0022】
実際には、ロータ10の回転位置が前記正対状態や前記非正対状態から僅かにずれることによって、磁気エネルギーが小さくなる方向に回転トルクが発生する。例えば、ロータ10の各ティース12とステータ20の各ティース22とが、各ティース間距離(以降はピッチと記すこともある)の1/4だけずれている状態であると、コイル25に電流を供給することによって磁束が発生し、ロータ10の各ティース12とステータ20の各ティース22とが前記正対状態となる方向に回転トルクが発生する。換言すると、前記正対状態が磁気的に最も安定(低磁気エネルギー)な状態であるため、その状態になろうとする回転トルクが発生する。
【0023】
よって、電磁ユニットのステータ20のコイル25に電流を供給すると、ステータ20の各ティース22に軸方向の磁束が発生し、上記のようなメカニズムによりロータ10が軸を中心に回転する。そして、このロータ10の回転が、ロータ10に連結された部材(図示せず)に伝達されるようになっている。
この電磁ユニットは、優れた磁気特性と最適化された複雑な3次元形状を有する圧粉コアを鉄心として用いているので、電磁鋼板などを鉄心として用いた場合に比べて、背景技術の項に前記したような優位性を有している。そして、このような電磁ユニットは、電気機器,電子機器,産業用機械,自動車,ロボット等に組み込まれるモータを構成する要素として好適である。
【0024】
なお、ステータコア23の内径面にコイル25を嵌め込めばよいので、ステータ20の組み立てが極めて容易であり、さらに、ロータ10とステータ20の嵌合も、側面から合わせる形で行うことができるので、電磁ユニットの組立性も良好である。また、ロータ10とステータ20の支持機構については図示していないが、互いの軸方向及び径方向の位置を維持しつつ相対的に回転可能に保持すればよい。
【0025】
次に、ステータコア23を構成する圧粉コアの製造方法について説明する。この圧粉コアは、磁性粉末を含有する原料粉末を加圧成形することにより製造される。そして、この加圧成形は、下記のような2段階の加圧成形工程からなる。
まず、第一成形工程により、ステータ20のティース22を形成する部品(例えば、図1,2の場合のような柱状の部品)を製造する。その際には、部品用原料粉末を部品成形用金型に充填し所定のプレス圧で加圧成形する。部品は1種類でもよいが、その形状,部品用原料粉末の種類,成形条件等が異なる複数種の部品を所望により製造してもよい。
【0026】
次に、第二成形工程により、ステータヨーク21の軸方向一端面から複数のティース22が軸方向に突出して形成されたステータコア23を製造する。その際には、前記部品を圧粉コア成形用金型内に入れ、前記部品がティース22を形成するように前記部品を前記圧粉コア成形用金型内の所定位置に配置する。そして、本体部分用原料粉末を前記圧粉コア成形用金型内に充填して、所定のプレス圧で加圧成形すると、本体部分用原料粉末によりステータヨーク21が形成され、ティース22を備えるステータヨーク21からなるステータコア23が得られる。このとき、第一成形工程において前記部品を成形する際のプレス圧は、第二成形工程におけるプレス圧よりも高圧とする。
【0027】
なお、複数種の部品を用いる場合は、各種部品をそれぞれ1個ずつ用いてもよいし、複数ずつ用いてもよい。また、ステータヨーク21とティース22は、図3のように、1面のみで接触していてもよいが、図4(ステータコア23を軸方向に沿う平面で切断した断面図である)のように、部品の一端部が本体部分(ステータヨーク21)に埋め込まれ且つ部品の径方向外径側部分がステータヨーク21に覆われていてもよい。さらに、図5(ステータコア23のティース22を軸方向から見た平面図である)のように、部品の表面のうち径方向内径側部分及び軸方向先端面のみがステータヨーク21から露出し、その他の部分がステータヨーク21に覆われていてもよい。
【0028】
部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末は、絶縁皮膜によってコーティングされた軟磁性の粉末が好ましい。粉末の成分は、軟磁性を示すものならば特に限定されるものではなく、例えば純Fe,Fe−Si合金,パーマロイ等があげられるが、モータ用鉄心のように低周波において使用され高い磁束密度が要求される場合には、純Feを用いることが好ましい。この粉末は、例えば水アトマイズ法で作製されたものが好ましく、その粒径は数十〜数百μm (例えば100μm )が好ましい。また、この粉末は、粒状の粉末に扁平加工(例えば、乾式法で機械的に偏平化する方法)を施して得た扁平粉末が好ましい。
【0029】
さらに、部品用原料粉末と本体部分用原料粉末は、同種の粉末でもよいし異種の粉末でもよい。例えば、純度の高い(酸素等の不純物の濃度が低い)粉末を用いることによって圧粉コアの磁気特性改善を行う場合は、部品用原料粉末と本体部分用原料粉末のうち部品用原料粉末の方のみ高純度(1000ppm未満)のものを用いるとよい。こうすることにより、磁気特性改善の際のコストアップを最低限に抑えることができる。不純物の濃度が低いほど性能は向上するが、通常(1000ppm)よりも低ければ、圧粉コアの磁気特性改善を行うことができる。なお、複数種の部品用原料粉末を用いて複数種の部品を作製する場合には、そのうち少なくとも1種の部品用原料粉末を純度の高いものとすれば、磁気特性の改善を行うことができる。
【0030】
さらに、加圧成形の際に生じた歪みの除去を目的として、第二成形工程により得られたステータコア23に適宜熱処理を施してもよい。熱処理を施す場合には、部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末に耐熱性の高い物質で絶縁皮膜を形成することが好ましい。このような耐熱性の高い物質としては、例えば、既によく知られているようにリン酸塩系化合物や酸化マグネシウム(MgO)などがあげられる。
【0031】
さらに、部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末はバインダを含有していてもよい。バインダの種類は特に限定されるものではないが、ポリイミド,エポキシ樹脂,フェノール樹脂,シリコーン樹脂などがあげられる。また、バインダの含有量は、原料粉末全体の1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。バインダの含有量が多いと、成形体内部の非磁性部分が増加して、磁気特性が不十分となるおそれがある。
【0032】
さらに、部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末の両方がバインダを含有する場合には、本体部分用原料粉末よりも部品用原料粉末の方が、バインダの含有量が少ないことが好ましい。そうすれば、強度を著しく低下させることなく、磁束が飽和しやすい部分のみ密度を高めることができる。なお、複数種の部品用原料粉末を用いて複数種の部品を作製する場合には、そのうち少なくとも1種の部品用原料粉末が本体部分用原料粉末よりもバインダの含有量が少なければ、上記効果が得られる。
【0033】
以下に、上記の第一成形工程及び第二成形工程について、さらに詳細に説明する。
上記のような部品用原料粉末からティース22に対応する部品を作製するが、部品は1種のみならず、その形状,部品用原料粉末の種類,成形条件等が異なる複数種の部品を作製してもよく、これらをティース部分に限らずあらゆる部位に用いることが可能である。ティース22はさほど複雑な形状を持たない場合が多いため、部品は高圧の加圧成形で製造することができ、第二成形工程における加圧成形よりも高圧で加圧成形することができる。複数種の部品を作製する場合には、いずれの種類の部品についても、第二成形工程における加圧成形よりも高圧で加圧成形する。
【0034】
第一成形工程における加圧成形の圧力は特に限定されるものではないが、700MPa以上1200MPa以下が好ましく、800MPa以上1000MPa以下がより好ましい。プレス圧があまりに低いと成形体の密度が十分に高くならず、本発明の有効性であるティース部分の高い磁束密度を実現することができないおそれがある。一方、あまりにプレス圧が高すぎると、単純な形状でも部品成形用金型の寿命が低下するなどの観点から、量産が難しくなる。
【0035】
この際の部品成形用金型の形状は、設計されたティース22の構造に合わせて適宜決定すればよいが、圧粉コアの強度向上の観点から、以下のような工夫をすることが好ましい。すなわち、部品の長さをステータコア23のティース22よりも長くする。こうすることで、第二成形工程において部品の一部分が本体部分(ステータヨーク21)に埋め込まれたような状態(図4を参照)となり、本体部分(ステータヨーク21)の上に単純に乗っている状態(図3を参照)よりも圧粉コアの強度が向上する。
【0036】
また、扁平粉末は、加圧成形すると、扁平粉末が有する平らな面をプレス方向に対して垂直にして並ぶ傾向がある。よって、扁平粉末を用いる場合は、完成した圧粉コアの磁束の流れる方向に対して、加圧成形により並んだ扁平粉末の前記平らな面が沿うように、加圧成形のプレス方向を決定するとよい。
さらに、部品の加圧成形を行う際には、潤滑剤を用いることが好ましい。その際には、潤滑剤を部品用原料粉末に混合してもよいが、高密度の成形体を得るためには、部品成形用金型の内面に潤滑剤を塗布して部品用原料粉末には潤滑剤を混合しない金型潤滑法を用いることが好ましい。使用する潤滑剤の種類は特に限定されるものではないが、例えばステアリン酸系潤滑剤があげられる。
【0037】
上記のような条件で加圧成形することにより得られた部品は、第二成形工程による圧粉コアの作製に対してそのまま用いることが好ましい。そうすれば、バインダの硬化などが進まないため、部品と本体部分用原料粉末とのなじみが良好となる。ただし、第二成形工程の加圧成形に供する前に、部品に対して熱処理を施しても差し支えない。
次に、こうして得られた1種又は複数種の部品と本体部分用原料粉末とを用いて、圧粉コアを作製する。ティース22に対応する部品は既に加圧成形されたものであるので、第二成形工程において再び加圧されても、その体積はほとんど変化しない。そのため、このことを考慮した上で各パンチの初期位置を適切に決める必要がある。例えば、図3のような圧粉コアの場合には、パンチは1段で済むが、図4のような圧粉コアの場合にはパンチは3段とする必要がある。
【0038】
また、本体部分用原料粉末には、潤滑剤を混合することが好ましい。部品の加圧成形の場合と同様に金型潤滑法を用いることもできるが、複雑形状の金型で加圧成形を行う場合は潤滑剤を本体部分用原料粉末に混合する方が、成形体が金型から抜けなくなるなどといったトラブルの頻度を低減することができる。本体部分用原料粉末全体に対する潤滑剤の混合量は、1.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
【0039】
第二成形工程においては、はじめに部品を圧粉コア成形用金型内の所定位置へ配置し、その後に各部品のすき間に本体部分用原料粉末を適量充填すればよい。この際、圧粉コア成形用金型のうちティース22に対応する部分の大きさが前記各部品よりも大きく、部品と圧粉コア成形用金型との間に隙間が生じる場合には、圧粉コア成形用金型内での部品の位置を決定しなければならない。
【0040】
一般的には、ティース22の中で最も高い磁束密度が要求されるのは、ティース22の外面のうちの一部であることが多いので、部品の当該面を圧粉コア成形用金型の内面に接触させた状態で(圧粉コアから部品の当該面が露出するように)部品を固定すればよい。例えば、部品に樹脂などを塗布しておくことにより、こうした固定を行うことが可能である。
【0041】
また、上記の最も高い磁束密度が要求される面がティース22の軸方向先端面である場合は、例えば柱状の部品の長手方向端面を圧粉コア成形用金型の内面に接触させた状態で固定した後に、圧粉コア成形用金型内に本体部分用原料粉末を充填すればよい。ただし、ティース部分は必ずしも部品の一部が露出している必要はなく、少量の粉末を充填した後に部品を固定することで部品が全く露出しない形態としてもよい。
【0042】
以上のようにして圧粉コア成形用金型内に部品を配し本体部分用原料粉末を充填したら、加圧成形を行う。第二成形工程における加圧成形の際のプレス圧は、500MPa以上1000MPa以下が好ましく、600MPa以上800MPa以下がより好ましい。複雑形状の圧粉コアの場合は、高圧で加圧成形すると成形体が圧粉コア成形用金型から抜けなくなったり、圧粉コア成形用金型の寿命が著しく低下することがあるので、あまり高いプレス圧で成形しないことが好ましい。特に、部品を加圧成形する際のプレス圧よりも小さくすることにより、ティース部の密度を相対的に高くすることができるので、高い量産性とティース部の高い磁束密度とを同時に実現することができる。
【0043】
このようにして得られた成形体を300℃以上600℃以下の温度で熱処理することにより、加圧成形により生じた歪みを取り除きコアロスを低下させて(バインダを含有する場合は、同時にバインダも硬化させて)、圧粉コアを完成させる。熱処理温度の最適値は、原料粉末の絶縁皮膜の種類によって異なるので、絶縁皮膜を構成する物質に応じて適宜決定すればよい。また、熱処理時間は10分以上1時間以下が好ましく、雰囲気は大気,窒素などから選択するとよい。以上のようにして、複雑形状であるにもかかわらず優れた磁気特性を有する圧粉コアを作製することができる。
【0044】
〔第二実施形態〕
第二実施形態の電磁ユニットの構造を、図6,7を参照しながら詳細に説明する。図6は、第二実施形態の電磁ユニットの構造を説明する斜視図であり、図7は、図6の電磁ユニットの分解斜視図である。ただし、第二実施形態の電磁ユニットの構成及び作用効果は、第一実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。また、図6,7においては、図1,2と同一又は相当する部分には、図1,2と同一の符号を付してある。
【0045】
第二実施形態の電磁ユニットのロータ10においては、ロータヨーク11の外径面から複数のティース12が径方向外方に突出して形成されているが、第一実施形態と比較するとティース12の突出長さが短いため、各ティース12はステータ20の各ティース22の径方向内側に配されている。そして、ステータ20の各ティース22の径方向内側側面とロータ10の各ティース12の径方向先端面とが、それぞれ径方向隙間を介して対向可能となっている(図6を参照)。
【0046】
このような電磁ユニットは、軸方向長さをより短くすることが可能であるので、より一層の小型化(薄型化)が可能である。また、一般に平面よりも円筒面の方が高精度な加工を行うことができるので、ロータ10の各ティース12と対向するステータ20の各ティース22の対向面は、軸方向先端面よりも径方向内側側面の方が好ましい。対向面が径方向内側側面である場合は、対向面間の距離(隙間の大きさ)を短くすることができ、よってコイル25から見た磁気抵抗を低くすることができるため、発生する磁束が増加し、大トルク化し易くなる。
【0047】
〔第三実施形態〕
第三実施形態の電磁ユニットの構造を、図8,9を参照しながら詳細に説明する。図8は、第三実施形態の電磁ユニットの構造を説明する斜視図であり、図9は、図8の電磁ユニットの分解斜視図である。ただし、第三実施形態の電磁ユニットの構成及び作用効果は、第一,第二実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。また、図8,9においては、図1,2と同一又は相当する部分には、図1,2と同一の符号を付してある。
【0048】
第三実施形態の電磁ユニットのロータ10においては、ロータヨーク11の外径面から複数のティース12が軸方向のステータ20側に向かって突出して形成されている。そして、ステータヨーク21よりもロータヨーク11の方が大径とされているため、ロータ10の各ティース12はステータ20の各ティース22の径方向外側に配されていて、ステータ20の各ティース22の径方向外側側面とロータ10の各ティース12の径方向内側側面とが、それぞれ径方向隙間を介して対向可能となっている(図8を参照)。
【0049】
一般に、平面よりも円筒面の方が高精度な加工を行うことができるので、ロータ10の各ティース12と対向するステータ20の各ティース22の対向面は、軸方向先端面よりも径方向外側側面の方が好ましい。対向面が径方向外側側面である場合は、対向面間の距離(隙間の大きさ)を短くすることができ、よってコイル25から見た磁気抵抗を低くすることができるため、発生する磁束が増加し、大トルク化し易くなる。
【0050】
〔第四実施形態〕
第四実施形態の電磁ユニットの構造を、図10,11を参照しながら詳細に説明する。図10は、第四実施形態の電磁ユニットの構造を説明する斜視図であり、図11は、図10の電磁ユニットの分解斜視図である。ただし、第四実施形態の電磁ユニットの構成及び作用効果は、第一〜第三実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。また、図10,11においては、図1,2と同一又は相当する部分には、図1,2と同一の符号を付してある。
【0051】
第四実施形態の電磁ユニットのロータ10においては、ロータヨーク11の軸方向一端面から複数のティース12が軸方向のステータ20側に向かって突出して形成されている。一方、ステータ20においては、ステータヨーク21の軸方向一端面から複数のティース12が軸方向のロータ10側に向かって突出して形成されているが、周方向に沿って並ぶティース12の列が、径方向隙間を隔てて2列同心円状に形成されている。
【0052】
そして、この径方向隙間にロータ10のティース12が配されていて、ステータ20の内径側ティース列の各ティース22の径方向外側側面とロータ10の各ティース12の径方向内側側面とが、それぞれ径方向隙間を介して対向可能となっているとともに、ステータ20の外径側ティース列の各ティース22の径方向内側側面とロータ10の各ティース12の径方向外側側面とが、それぞれ径方向隙間を介して対向可能となっている(図10,11を参照)。
【0053】
このような電磁ユニットは、2列のティース列のそれぞれに対して回転トルクを発生をさせることができるため、大トルク化を図ることができる。また、一般に平面よりも円筒面の方が高精度な加工を行うことができるので、ロータ10の各ティース12と対向するステータ20の各ティース22の対向面は、軸方向先端面よりも径方向側面の方が好ましい。対向面が径方向側面である場合は、対向面間の距離(隙間の大きさ)を短くすることができ、よってコイル25から見た磁気抵抗を低くすることができるため、発生する磁束が増加し、大トルク化し易くなる。なお、ステータ20のティース列の数を3列以上とすることも可能である。その場合には、ロータ10のティース列の数についても、ステータ20のティース列の数に応じて適宜増加させることが好ましい。
【0054】
〔第五実施形態〕
第五実施形態のモータの構造を、図12を参照しながら詳細に説明する。図12は、第五実施形態のモータの構造を説明する斜視図である。ただし、第五実施形態のモータを構成する要素である電磁ユニットの構成及び作用効果は、第一〜第四実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。また、図12においては、図1,2と同一又は相当する部分には、図1,2と同一の符号を付してある。
【0055】
第一〜第四実施形態の電磁ユニットは、ロータ10のティース12とステータ20のティース22との回転位置に応じて回転トルクを発生させることができ、コイル25に供給する電流の極性を反転することによって、回転トルクの極性を反転させることができる。ただし、電磁ユニットのロータ10が、鉄や圧粉コアのような磁性体で構成されたティース12を有し磁極を有しない場合は、1個の電磁ユニットにより発生する回転トルクは脈動トルクであり、連続的に一方向に回転するトルクを発生させることはできない。よって、連続的に一方向に回転トルクを発生させてモータとして機能させるためには、3個以上の電磁ユニットを用いてモータを構成する必要がある。
【0056】
図12のモータは、第二実施形態の電磁ユニットU1,U2,U3を軸方向に3個連結することにより構成されている。各電磁ユニットU1,U2,U3は、ステータ20を軸方向の同一方向に向けて(図12においてはステータ20を下方に向けて)連結されている。ただし、連結する電磁ユニットの個数は、3個に限らず4個以上でもよい。図示していないが、3個のロータ10及び3個のステータ20は、それぞれ機械的に連結されており、相対的に回転可能に保持されている。すなわち、3個のロータ10を連結したものがモータのロータとして機能するとともに、3個のステータ20を連結したものがモータのステータとして機能するようになっている。
【0057】
モータを構成する各電磁ユニットU1,U2,U3においては、ロータ10のティース12とステータ20のティース22との回転位置が一致しておらず、ずれている(正対状態ではない)。そして、軸方向一端の電磁ユニットから他端の電磁ユニットに向かうにしたがって、そのずれ量は徐々に大きくなっており、しかもそのずれ量の増加は一定となっている。
【0058】
ただし、軸方向一端の電磁ユニットについては、両ティース12,22の前記回転位置が一致していてもよい。例えば、図12のモータの場合は、下端の電磁ユニットU1においては、両ティース12,22の前記回転位置が一致しており、中央の電磁ユニットU2においては1/3ピッチずれており、上端の電磁ユニットU3においては、2/3ピッチずれている(1/3ピッチずつ、ずれ量が大きくなっている)。
【0059】
なお、図12のモータの場合は、3つの電磁ユニットU1,U2,U3のロータ10のティース12の回転位置はいずれも揃っていて、ステータ20のティース22の回転位置はいずれも揃っていないが、相対的な位置関係がずれていればよいので、図12とは逆にステータ20のティース22の回転位置が揃っていて、ロータ10のティース12の回転位置が揃っていないという構成にしてもよい。
【0060】
3個の電磁ユニットU1,U2,U3のコイル25毎に所定の電流を供給すると、それぞれの電磁ユニットU1,U2,U3が回転トルクを発生させる。3個の電磁ユニットU1,U2,U3の各ロータ10及びステータ20はそれぞれ機械的に連結されてモータのロータ及びステータを構成しているので、モータのロータに発生する回転トルクは3個の電磁ユニットU1,U2,U3の回転トルクの合計(合成トルク)となる。この合成トルクは、一定の回転トルクに脈動分が重畳した波形となっていることから、連続的な回転トルクの発生が可能である。
【0061】
〔第六実施形態〕
第六実施形態のモータの構造を、図13を参照しながら詳細に説明する。図13は、第六実施形態のモータの構造を説明する斜視図である。ただし、第六実施形態のモータを構成する要素である電磁ユニットの構成及び作用効果は、第一〜第四実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。また、図13においては、図1,2と同一又は相当する部分には、図1,2と同一の符号を付してある。
【0062】
第五実施形態のモータとは異なり電磁ユニットのロータ10が磁極31を有する場合は、2個の電磁ユニットを用いてモータを構成することができる。図13のように、両電磁ユニットU1,U2のステータ20同士を背面連結してモータを構成することによって、薄型のモータとすることができる。すなわち、ステータヨーク21の軸方向他端面(ティース22が形成されていない軸方向端面)を対向させて、両電磁ユニットU1,U2のステータ20同士を連結してモータを構成している。
【0063】
図示していないが、2個のロータ10及び2個のステータ20は、それぞれ機械的に連結されており、相対的に回転可能に保持されている。すなわち、2個のロータ10を連結したものがモータのロータとして機能するとともに、2個のステータ20を連結したものがモータのステータとして機能するようになっている。
モータを構成する各電磁ユニットU1,U2のうち少なくとも一方においては、ロータ10の磁極31とステータ20のティース22との回転位置が一致しておらず(正対状態ではない)、ずれている。そして、両電磁ユニットU1,U2のずれ量の差は1/4ピッチとなっている。例えば、図13のモータの場合は、上側の電磁ユニットU2においては、ロータ10の磁極31のうちS極31Sとステータ20のティース22との回転位置が一致しており、下側の電磁ユニットU1においては1/4ピッチずれている。
【0064】
なお、図13のモータの場合は、2つの電磁ユニットU1,U2のロータ10の磁極31の回転位置は揃っていて、ステータ20のティース22の回転位置は揃っていないが、相対的な位置関係がずれていればよいので、図13とは逆にステータ20のティース22の回転位置が揃っていて、ロータ10の磁極31の回転位置が揃っていないという構成にしてもよい。
【0065】
2個の電磁ユニットU1,U2のコイル25毎に所定の電流を供給すると、それぞれの電磁ユニットU1,U2が回転トルクを発生させる。2個の電磁ユニットU1,U2のロータ10及びステータ20はそれぞれ機械的に連結されてモータのロータ及びステータを構成しているので、モータのロータに発生する回転トルクは2個の電磁ユニットU1,U2の回転トルクの合計(合成トルク)となる。この合成トルクは、一定の回転トルクに脈動分が重畳した波形となっていることから、連続的な回転トルクの発生が可能である。
【0066】
ロータ10の磁極31(S極又はN極)とステータ20の各ティース22とが、それぞれ対向している状態(正対状態)では、磁極31が作る磁束とコイル25による磁束が発生する。この状態は磁気的に最も安定な状態であり、回転トルクは発生しない。なお、コイル25の供給される電流の極性が逆極性となると、磁極31が作る磁束とコイル25による磁束の極性が相反するようになるので、磁気的には最も不安定な状態となる。
【0067】
ロータ10のN極31Nの回転位置が前記正対状態から僅かにずれている場合に、コイル25に所定の極性の電流を供給すると、ロータ10のN極31Nとステータ20のティース22とが前記正対状態となる方向に回転トルクが発生する。逆に、前記極性と反対の極性の電流を供給すると、ロータ10のS極31Sとステータ20のティース22とが前記正対状態となる方向に回転トルクが発生する。
【0068】
よって、電磁ユニットのステータ20のコイル25に電流を供給すると、ステータ20の各ティース22に軸方向の磁束が発生し、上記のようなメカニズムによりロータ10が軸を中心に回転する。そして、このロータ10の回転が、ロータ10に連結された部材(図示せず)に伝達されるようになっている。このように、電磁ユニットのロータ10が磁極31を有する場合は、コイル25に供給される電流の極性によって、発生する回転トルクの方向が変化する。なお、鉄や圧粉コアのような磁性体で構成されたティース12と磁極31との両方をロータ10が有する場合は、両方の特性が合成されたトルク特性が現れる。
【0069】
〔第七実施形態〕
第七実施形態の電磁ユニットについて、以下に詳細に説明する。ただし、第七実施形態の電磁ユニットの構成及び作用効果は、第一〜第六実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
上記第一〜第六実施形態におけるステータコア23においては、ステータヨーク21とティース22との接合部分の接合強度は十分なものであったが、該接合部分における割れなどの発生を確実に防止するためには、該接合部分の接合強度をより高めることが好ましい。
【0070】
まず、上記各実施形態におけるステータヨーク21とティース22との接合部分について、図14を参照しながら説明する。上記各実施形態においては、部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末の平均粒径は特に限定されるものではなく、両原料粉末の平均粒径は同一であっても差し支えなかった。しかしながら、両原料粉末の平均粒径が同一であると、図14からわかるように、接合部分における両原料粉末の粒子同士の噛み合わせが良好ではない。その結果、ステータヨーク21とティース22との接合部分における割れなどの発生を、確実に防止することができないおそれがあった。
【0071】
そこで、本体部分用原料粉末の平均粒径を部品用原料粉末の平均粒径よりも小さくすると、図15に示すように、ティース22の表面における部品用原料粉末の粒子同士の隙間に、本体部分用原料粉末の粒子が入り込んで、ステータヨーク21とティース22との接合部分における両原料粉末の粒子同士の噛み合わせが良好となる。その結果、ステータヨーク21とティース22との接合部分の接合強度がより高くなって、高強度のステータコア23が得られる。
【0072】
両原料粉末の粒径を小さくすると、ステータコア23のヒステリシス損は増加し、透磁率が低下してしまう。しかしながら、一般に、ティース22以外の部分(ステータヨーク21など)は、ティース22に比べて磁束密度の変化が激しくなく、飽和しにくい。よって、ティース22以外の部分のみに粒径の小さい原料粉末を使用することにより、ステータコア23全体での磁気特性の劣化を最低限に抑えることができる。
【0073】
部品用原料粉末の平均粒径は、200μm以上300μm以下であることが好ましい。200μm未満であると、ステータヨーク21とティース22との接合部分の接合強度が十分に向上しないおそれがある。一方、300μm超過であると、ステータコア23の渦電流損が増加するおそれがある。また、本体部分用原料粉末の平均粒径は、50μm以上100μm以下であることが好ましい。50μm未満であると、透磁率が低下するおそれがある。一方、100μm超過であると、ステータヨーク21とティース22との接合部分の接合強度が十分に向上しないおそれがある。
なお、上記の各実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、電磁ユニット,モータの構造や圧粉コアの形状は特に限定されるものではなく、本発明はあらゆる構造の軟磁性部品に対して適用することができる。
【0074】
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。図1と同様の構成のモータの鉄心用圧粉コア(ステータコア)を前述と同様の製造方法で作製し、この圧粉コアを用いて図1のモータを作製した。そして、モータの特性を比較評価した。圧粉コアのステータヨーク部分の寸法は、外径100mm、内径70mm、高さ10mmであり、ティース部分の寸法は、縦10mm、横10mm、高さ20mmである。また、ティースの個数は10個である。
【0075】
部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末に含まれる磁性粉末は、断りのない限りいずれも平均粒径200μm の純鉄粉にリン酸塩の皮膜が施されたものである。また、部品用原料粉末及び本体部分用原料粉末に混合されるバインダは、いずれもエポキシ樹脂である。そして、金型の内面に塗布される潤滑剤及び原料粉末に混合される潤滑剤としては、いずれもステアリン酸亜鉛を用いた。
【0076】
〔加圧成形のプレス圧について〕
表1に示すように、磁性粉末にバインダと潤滑剤を混合した部品用原料粉末を部品成形用金型内に充填し、加圧成形して部品を作製した。部品の寸法は縦6mm、横6mm、高さ25mmである。そして、この部品を圧粉コア成形用金型内に配するとともに、磁性粉末にバインダと潤滑剤を混合した本体部分用原料粉末(部品用原料粉末と同一の物)を圧粉コア成形用金型内に充填し、加圧成形して実施例1及び比較例1の圧粉コアを作製した。圧粉コアにおける前記部品の固定位置は、図5のように、部品の表面のうち径方向内径側部分及び軸方向先端面のみがステータヨークから露出し、その他の部分がステータヨークに覆われるようにした。
【0077】
このようにして作製した実施例1及び比較例1の圧粉コアの比較対照として、実施例1及び比較例1で用いた部品用原料粉末と同一の物を圧粉コア成形用金型内に充填し、加圧成形して従来例の圧粉コアを作製した。すなわち、2段階の加圧成形工程からなる製造方法ではなく、従来と同様に1段階の加圧成形工程からなる製造方法で圧粉コアを作製したものを従来例とした。
【0078】
【表1】
【0079】
これらの圧粉コアを組み込んだモータの特性を評価したところ、表1に示すように、比較例1のように部品と圧粉コアを成形する際のプレス圧が等しいと、モータの特性は従来例と同等であるが、実施例1のように部品を成形する際のプレス圧を圧粉コアを成形する際のプレス圧よりも高圧とすると、従来例よりもトルクが向上した。なお、表1に示した各モータのトルク及び効率は、従来例のモータのトルク及び効率を1とした場合の相対値でそれぞれ示してある。
【0080】
〔熱処理について〕
前述の実施例1の圧粉コアに、500℃で1時間加熱する熱処理を施して(実施例2とする)、熱処理の有無によるモータの性能の差異を比較した。結果を表2に示す。なお、表2に示した各モータのトルク及び効率は、従来例のモータのトルク及び効率を1とした場合の相対値でそれぞれ示してある。
表2から、熱処理を施すことによって圧粉コアの鉄損が減少し、結果として効率が上昇することがわかる。
【0081】
【表2】
【0082】
〔潤滑剤について〕
部品を加圧成形する際に、潤滑剤を部品用原料粉末に混合するか、混合せず金型潤滑法を用いるかによって、モータの性能に差異が出るかを検討した。結果を表3に示す。なお、表3に示した各モータのトルク及び効率は、従来例のモータのトルク及び効率を1とした場合の相対値でそれぞれ示してある。
表3から、潤滑剤を部品用原料粉末に混合して部品を製造した実施例2と比べて、金型潤滑法を用いて部品を製造した実施例3は、部品の密度が高いためモータのトルクが高いことがわかる。
【0083】
【表3】
【0084】
〔バインダについて〕
原料粉末に含まれるバインダの量によるモータの性能の差異を比較した。結果を表4に示す。なお、表4に示した各モータのトルク及び効率は、従来例のモータのトルク及び効率を1とした場合の相対値でそれぞれ示してある。
表4から、部品用原料粉末に含まれるバインダの含有量と本体部分用原料粉末に含まれるバインダの含有量が等しい実施例3と比べて、部品用原料粉末に含まれるバインダの含有量が本体部分用原料粉末に含まれるバインダの含有量よりも少ない実施例4は、部品の密度が高いためモータのトルクが高いことがわかる。
【0085】
【表4】
【0086】
〔不純物について〕
原料粉末に含まれる不純物の濃度によるモータの性能の差異を比較した。結果を表5に示す。なお、表5に示した各モータのトルク及び効率は、従来例のモータのトルク及び効率を1とした場合の相対値でそれぞれ示してある。
表5から、部品用原料粉末に含まれる不純物の濃度が通常の高さである実施例4(1000ppm)と比べて、部品用原料粉末に含まれる不純物の濃度が通常よりも低い実施例5(100ppm)は、モータの効率が高いことがわかる。
【0087】
【表5】
【0088】
〔扁平加工について〕
部品用原料粉末に用いる磁性粉末に扁平加工が施されているか否かによる、モータの性能の差異を比較した。部品は、その側面(高さ25mm×縦又は横6mmの面)をプレス面として加圧成形することにより作製した。結果を表6に示す。なお、表6に示した各モータのトルク及び効率は、従来例のモータのトルク及び効率を1とした場合の相対値でそれぞれ示してある。
表6から、扁平加工が施されていない通常の磁性粉末を用いた実施例5と比べて、扁平加工が施され粒子形状が扁平な磁性粉末を用いた実施例6は、部品の透磁率が高いためモータのトルクが高いことがわかる。
【0089】
【表6】
【0090】
〔平均粒径について〕
本体部分用原料粉末と部品用原料粉末の平均粒径を変化させた場合の、モータの性能の差異を比較した。結果を表7に示す。なお、圧粉コアの製造方法は、本体部分用原料粉末と部品用原料粉末の平均粒径が異なる点を除いては、実施例1と同様である。また、表7に示した各モータのトルク,効率,及び圧粉コアの機械強度は、実施例6のモータのトルク,効率,及び圧粉コアの機械強度を1とした場合の相対値でそれぞれ示してある。
【0091】
表7からわかるように、同一の平均粒径を有する本体部分用原料粉末と部品用原料粉末を用いた実施例6と比べて、本体部分用原料粉末の平均粒径が部品用原料粉末の平均粒径よりも小さい実施例7〜10は、トルクと効率がほぼ同等で、機械強度が著しく向上している。これに対して、実施例11は、本体部分用原料粉末の平均粒径が50μm未満であるため、実施例7,8,9に対して機械強度の向上は認められるものの、トルクと効率が低いことがわかる。また、実施例12は、本体部分用原料粉末の平均粒径が100μmより大きいため、実施例7,8,9に対して機械強度の向上が少ないことがわかる。以上のことから、本体部分用原料粉末の平均粒径を50μm以上100μm以下とすると、トルクと効率を大きく低下させずに機械強度を向上させることができることがわかる。
【0092】
一方、実施例13は、部品用原料粉末の平均粒径が200μm未満であるため、実施例7,10に対して機械強度の向上が少ないことがわかる。さらに、実施例14は、部品用原料粉末の平均粒径が300μmより大きいため、実施例7,10に対して強度の向上は認められるものの、効率が低下していることがわかる。以上のことから、部品用原料粉末の平均粒径を200μm以上300μm以下とすると、効率を大きく低下させずに機械強度を向上させることができることがわかる。
【0093】
【表7】
【符号の説明】
【0094】
10 ロータ
11 ロータヨーク
12 ティース
20 ステータ
21 ステータヨーク
22 ティース
23 ステータコア
25 コイル
U1,U2,U3 電磁ユニット
31S S極
31N N極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉末を含有する原料粉末を加圧成形することにより、本体部分から1箇所以上の突起部が突出した形状の圧粉コアを製造する方法であって、
部品用原料粉末を部品成形用金型に充填し所定のプレス圧で加圧成形して1種以上の部品を製造する第一成形工程と、
前記第一成形工程で得られた前記各種部品を、それぞれ1個以上圧粉コア成形用金型内に入れ、前記部品が前記突起部を形成するように前記部品を前記圧粉コア成形用金型内の所定位置に配置するとともに、本体部分用原料粉末を前記圧粉コア成形用金型内に充填し、所定のプレス圧で加圧成形して前記圧粉コアを得る第二成形工程と、
を備え、
前記第一成形工程において前記各種部品を成形する際の前記各プレス圧はいずれも、前記第二成形工程において前記圧粉コアを成形する際の前記プレス圧よりも高圧であることを特徴とする圧粉コアの製造方法。
【請求項2】
前記第二成形工程で得られた前記圧粉コアを熱処理する熱処理工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の圧粉コアの製造方法。
【請求項3】
前記第一成形工程において前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際には、内面に潤滑剤を塗布した前記部品成形用金型を用い、前記第二成形工程において前記圧粉コアを成形する際には、潤滑剤を含有する前記本体部分用原料粉末を用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧粉コアの製造方法。
【請求項4】
前記部品用原料粉末及び前記本体部分用原料粉末はバインダを含有し、前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際に用いられる前記部品用原料粉末に含まれる前記バインダの含有量は、前記本体部分用原料粉末に含まれる前記バインダの含有量よりも少ないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧粉コアの製造方法。
【請求項5】
前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際に用いられる前記部品用原料粉末に含まれる不純物の濃度は、前記本体部分用原料粉末に含まれる不純物の濃度よりも低く且つ1000ppm未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧粉コアの製造方法。
【請求項6】
前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際に用いられる前記部品用原料粉末は、扁平加工が施されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧粉コアの製造方法。
【請求項7】
前記本体部分用原料粉末の平均粒径が前記部品用原料粉末の平均粒径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の圧粉コアの製造方法。
【請求項8】
前記本体部分用原料粉末の平均粒径が50μm以上100μm以下で、前記部品用原料粉末の平均粒径が200μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の圧粉コアの製造方法。
【請求項9】
磁性粉末を含有する原料粉末を加圧成形することにより得られ、本体部分から1箇所以上の突起部が突出した形状の圧粉コアであって、請求項1〜8のいずれか一項に記載の圧粉コアの製造方法により製造されたものであることを特徴とする圧粉コア。
【請求項1】
磁性粉末を含有する原料粉末を加圧成形することにより、本体部分から1箇所以上の突起部が突出した形状の圧粉コアを製造する方法であって、
部品用原料粉末を部品成形用金型に充填し所定のプレス圧で加圧成形して1種以上の部品を製造する第一成形工程と、
前記第一成形工程で得られた前記各種部品を、それぞれ1個以上圧粉コア成形用金型内に入れ、前記部品が前記突起部を形成するように前記部品を前記圧粉コア成形用金型内の所定位置に配置するとともに、本体部分用原料粉末を前記圧粉コア成形用金型内に充填し、所定のプレス圧で加圧成形して前記圧粉コアを得る第二成形工程と、
を備え、
前記第一成形工程において前記各種部品を成形する際の前記各プレス圧はいずれも、前記第二成形工程において前記圧粉コアを成形する際の前記プレス圧よりも高圧であることを特徴とする圧粉コアの製造方法。
【請求項2】
前記第二成形工程で得られた前記圧粉コアを熱処理する熱処理工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の圧粉コアの製造方法。
【請求項3】
前記第一成形工程において前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際には、内面に潤滑剤を塗布した前記部品成形用金型を用い、前記第二成形工程において前記圧粉コアを成形する際には、潤滑剤を含有する前記本体部分用原料粉末を用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧粉コアの製造方法。
【請求項4】
前記部品用原料粉末及び前記本体部分用原料粉末はバインダを含有し、前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際に用いられる前記部品用原料粉末に含まれる前記バインダの含有量は、前記本体部分用原料粉末に含まれる前記バインダの含有量よりも少ないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧粉コアの製造方法。
【請求項5】
前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際に用いられる前記部品用原料粉末に含まれる不純物の濃度は、前記本体部分用原料粉末に含まれる不純物の濃度よりも低く且つ1000ppm未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧粉コアの製造方法。
【請求項6】
前記各種部品のうち少なくとも1種を成形する際に用いられる前記部品用原料粉末は、扁平加工が施されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧粉コアの製造方法。
【請求項7】
前記本体部分用原料粉末の平均粒径が前記部品用原料粉末の平均粒径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の圧粉コアの製造方法。
【請求項8】
前記本体部分用原料粉末の平均粒径が50μm以上100μm以下で、前記部品用原料粉末の平均粒径が200μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の圧粉コアの製造方法。
【請求項9】
磁性粉末を含有する原料粉末を加圧成形することにより得られ、本体部分から1箇所以上の突起部が突出した形状の圧粉コアであって、請求項1〜8のいずれか一項に記載の圧粉コアの製造方法により製造されたものであることを特徴とする圧粉コア。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−146681(P2011−146681A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224091(P2010−224091)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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