説明

圧縮形直線スリーブおよび架空送電線接続方法

【課題】圧縮固定後の鋼スリーブおよびアルミスリーブの間の偏心を防止することができる圧縮形直線スリーブおよび架空送電線接続方法を提供する。
【解決手段】圧縮形直線スリーブ10は、鋼心アルミ撚線からなる2本の架空送電線1の鋼撚線1aを圧縮接続するための鋼スリーブ11と、2本の架空送電線1のアルミ撚線1bを圧縮接続するための第1および第2のアルミスリーブ12L,12Rとを具備する。ここで、鋼スリーブ11の長手方向の中心部の外周面には、突起11aが形成されている。また、第1および第2のアルミスリーブ12L,12Rは、鋼スリーブ11の突起11aを挟んで互いに結合可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼心アルミ撚線からなる架空送電線を接続するのに好適な圧縮形直線スリーブおよび架空送電線接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
架空送電線1(架空送電線路の電線)としては、大電流が流せることおよび大きな引張荷重に耐える必要があることから、図8に断面図で示すように内側を鋼撚線1aとし外側をアルミ撚線1bとした2層構造の鋼心アルミ撚線(ACSR)が使用されている。
【0003】
また、鋼心アルミ撚線からなる2本の架空送電線1の接続に使用される圧縮形直線スリーブ2は、図9に示すように、2本の鋼撚線1aを圧縮接続するための鋼スリーブ2aと、2本のアルミ撚線1bを圧縮接続するためのアルミスリーブ2bと、アルミスリーブ2bに形成されたピン挿入孔3に打ち込んで鋼スリーブ2aとアルミスリーブ2bとの偏心を防止するためのアルミピン2cと、アルミスリーブ2bに形成された防食剤注入口4を塞ぐための止め栓2dとを具備する。
【0004】
なお、下記の特許文献1には、ジョイントプロテクタを用いることなく金車通過時の電線の急激な曲がりを防止するために、一方の鋼心アルミ撚線の端部に第1の鋼スリーブおよび第1のアルミスリーブを圧縮固定するとともに、他方の鋼心アルミ撚線の端部に第2の鋼スリーブおよび第2のアルミスリーブを圧縮固定し、第1の鋼スリーブの先端部と第2の鋼スリーブの先端部とを回動自在にヒンジ結合して、圧縮形直線スリーブで接続された鋼心アルミ撚線を金車を用いて延線したのち、第1の鋼スリーブの先端部と第2の鋼スリーブの先端部とを複数のボルトで一体に固定するとともに、第1のアルミスリーブのラグ部と第2のアルミスリーブのラグ部との間を接続部材で接続するようにした圧縮形直線スリーブおよびそれを用いて接続される架空送電線の架線方法が開示されている。
また、下記の特許文献2には、鋼心アルミ撚線の接続部の引張強度を向上するために、2本の鋼心アルミ撚線の接続端部の内層アルミ素線の除去により露呈された鋼心線の両接手端部を突き合わせ状態で受け入れて圧縮変形により接手端部に一体化される鋼スリーブと、接続される2本の鋼心アルミ撚線の接続端部全体を覆った状態で圧縮変形される口径の大きなアルミスリーブとを備え、鋼スリーブは除去される内層アルミ素線の全体外径に略等しい外径を持ち、外層アルミ素線の接続端部は鋼スリーブの圧縮変形後に鋼スリーブの外周面に沿った状態に保たれるようにした圧縮型直線スリーブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−051711号公報
【特許文献1】特開2000−012185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、圧縮形直線スリーブ2を使用して架空送電線1を接続する際には、鋼スリーブ2aを圧縮固定して鋼撚線1aを圧縮接続したのち、アルミスリーブ2bを圧縮固定してアルミ撚線1bを圧縮接続するため、図10(a)に示すように圧縮接続後の鋼スリーブ2aおよびアルミスリーブ2bの中心位置が合っている場合には問題ないが、図10(b)に示すように圧縮固定後の鋼スリーブ2aおよびアルミスリーブ2bの中心位置がずれている場合(すなわち、圧縮固定後の鋼スリーブ2aおよびアルミスリーブ2bの間に偏心が生じた場合)には、架空送電線1に流れる電流により圧縮形直線スリーブ2において、正常に電流が流れないため異常加熱状態となり、圧縮形直線スリーブ2において架空送電線1が断線してしまうという問題があった。
【0007】
そのため、アルミスリーブ2bを圧縮固定してアルミ撚線1bを圧縮接続する際に、図10(c)に示すようにアルミピン2cをアルミスリーブ2bのピン挿入孔3に打ち込むことにより、圧縮固定後の鋼スリーブ2aおよびアルミスリーブ2bの間の偏心が物理的に生じないようにしている。
【0008】
しかし、このようなアルミピン方式では、アルミスリーブ2bを鋼スリーブ2aに対して適正な位置に合せたのちにアルミピン2cを打ち込むため、アルミスリーブ2bの鋼スリーブ2aに対する位置合せに手間がかかるとともに、アルミピン2cの打込み不足が生じるとアルミスリーブ2bの圧縮固定時に偏心を生じさせる場合があり、圧縮固定後のアルミスリーブ2bの中心の精度も良くないという問題があった。
【0009】
また、アルミピン2cを備えていない圧縮形直線スリーブでは、アルミ撚線1bにマーキングを付して、圧縮固定後のアルミスリーブ2bの両端が圧縮接続後のアルミ撚線1bのマーキングの位置と合っていることを確認している。
【0010】
しかし、このようなマーキング方式では、アルミ撚線1bにマーキングを付する際に、架空送電線1、鋼スリーブ2aおよびアルミスリーブ2bを並べて位置合せする必要があるため、架空送電線1の撚戻しや固定などに手間がかかるという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、圧縮固定後の鋼スリーブおよびアルミスリーブの間の偏心を防止することができる圧縮形直線スリーブおよび架空送電線接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の圧縮形直線スリーブは、内側を鋼撚線(1a)とし外側をアルミ撚線(1b)とした鋼心アルミ撚線からなる2本の架空送電線(1)を接続するための圧縮形直線スリーブ(10)であって、前記2本の架空送電線の前記鋼撚線を圧縮接続するための、かつ、長手方向の中心部の外周面に突起(11a)が形成された鋼スリーブ(11)と、該鋼スリーブの前記突起を挟んで互いに結合可能な、かつ、前記2本の架空送電線の前記アルミ撚線を圧縮接続するための第1および第2のアルミスリーブ(12L,12R)とを具備することを特徴とする。
ここで、前記第1のアルミスリーブの前記第2のアルミスリーブと結合する側の端面に、深さ(dL)が前記突起の前記鋼スリーブの長手方向に沿った長さである幅(w)と略同じである第1の凹部(12La)が形成されており、前記第2のアルミスリーブの前記第1のアルミスリーブと結合する側の端面に、深さ(dR)が前記突起の前記幅と略同じである第2の凹部(12Ra)が形成されており、前記第1の凹部の内径(φL)が前記第2の凹部の外径(ΦR)と略同じとされており、前記第2の凹部の内径(φR)が前記突起の外径と略同じとされていてもよい。
前記第1のアルミスリーブの前記第1の凹部の内周面に、ネジが形成されており、前記第2のアルミスリーブの前記第2の凹部の外周面に、前記ネジと螺合する他のネジが形成されていてもよい。
本発明の第2の圧縮形直線スリーブは、内側を鋼撚線(1a)とし外側をアルミ撚線(1b)とした鋼心アルミ撚線からなる2本の架空送電線(1)を接続するための圧縮形直線スリーブ(30)であって、前記2本の架空送電線の前記鋼撚線を圧縮接続するための、かつ、圧縮固定されたときに長手方向の中心部の外周面に突起(31a)が形成可能な鋼スリーブ(31)と、該鋼スリーブに形成された前記突起を挟んで互いに結合可能な、かつ、前記2本の架空送電線の前記アルミ撚線を圧縮接続するための第1および第2のアルミスリーブ(32L,32R)とを具備することを特徴とする。
ここで、前記第1のアルミスリーブの前記第2のアルミスリーブと結合する側の端面に、深さ(dL)が前記突起の前記鋼スリーブの長手方向に沿った長さである幅(w)と略同じである第1の凹部(32La)が形成されており、前記第2のアルミスリーブの前記第1のアルミスリーブと結合する側の端面に、深さ(dR)が前記突起の前記幅と略同じである第2の凹部(32Ra)が形成されており、前記第1の凹部の内径(φL)が前記第2の凹部の外径(ΦR)と略同じとされており、前記第2の凹部の内径(φR)が前記突起の外径と略同じとされていてもよい。
前記第1のアルミスリーブの前記第1の凹部の内周面に、ネジが形成されており、前記第2のアルミスリーブの前記第2の凹部の外周面に、前記ネジと螺合する他のネジが形成されていてもよい。
本発明の第1の架空送電線接続方法は、本発明の第1の圧縮形直線スリーブ(10)を使用して前記2本の架空送電線を接続するための架空送電線接続方法であって、前記2本の架空送電線の前記アルミ撚線(1a)を切断して該2本の架空送電線の前記鋼撚線(1b)を露出させる第1のステップと、前記第1のアルミスリーブ(12L)を前記2本の架空送電線の一方の架空送電線の前記アルミ撚線(1b)に通すとともに、前記第2のアルミスリーブ(12R)を該2本の架空送電線の他方の架空送電線の前記アルミ撚線に通す第2のステップと、前記2本の架空送電線の前記鋼撚線を前記鋼スリーブ(11)の両端からそれぞれ挿入する第3のステップと、前記突起(11a)をつぶさないように前記鋼スリーブを圧縮固定して、前記2本の架空送電線の前記鋼撚線を圧縮接続する第4のステップと、前記第1の凹部(12La)の底面が前記鋼スリーブの前記突起(11a)に当接するまで前記第1のアルミスリーブ(12L)を該鋼スリーブに向けて移動させたのち、前記第2の凹部の底面が前記鋼スリーブの前記突起に当接するまで前記第2のアルミスリーブを該鋼スリーブに向けて移動させて、該第1のアルミスリーブと該第2のアルミスリーブとを結合させる第5のステップと、前記第1および第2のアルミスリーブを圧縮固定して、前記2本の架空送電線の前記アルミ撚線を圧縮接続する第6のステップとを具備することを特徴とする。
本発明の第2の架空送電線接続方法は、本発明の第2の圧縮形直線スリーブ(30)を使用して前記2本の架空送電線を接続するための架空送電線接続方法であって、前記2本の架空送電線の前記アルミ撚線(1a)を切断して該2本の架空送電線の前記鋼撚線(1b)を露出させる第1のステップと、前記第1のアルミスリーブ(32L)を前記2本の架空送電線の一方の架空送電線の前記アルミ撚線に通すとともに、前記第2のアルミスリーブ(32R)を該2本の架空送電線の他方の架空送電線の前記アルミ撚線に通す第2のステップと、前記2本の架空送電線の前記鋼撚線を前記鋼スリーブ(31)の両端からそれぞれ挿入する第3のステップと、前記鋼スリーブの長手方向の中心部の外周面に前記突起(31a)を形成するように該鋼スリーブを圧縮固定して、前記2本の架空送電線の前記鋼撚線を圧縮接続する第4のステップと、前記第1の凹部(32La)の底面が前記鋼スリーブに形成された前記突起に当接するまで前記第1のアルミスリーブ(32L)を該鋼スリーブに向けて移動させたのち、前記第2の凹部の底面が前記鋼スリーブに形成された前記突起に当接するまで前記第2のアルミスリーブを該鋼スリーブに向けて移動させて、該第1のアルミスリーブと該第2のアルミスリーブとを結合させる第5のステップと、前記第1および第2のアルミスリーブを圧縮固定して前記2本の架空送電線の前記アルミ撚線を圧縮接続する第6のステップとを具備することを特徴とする。
ここで、前記第4のステップで、前記突起を形成するための上側凹部(41a)が形成された上側圧縮ダイス(41)と、前記突起を形成するための下側凹部(42a)が形成された下側圧縮ダイス(42)とを用いて、前記2本の架空送電線の前記鋼撚線の接続点両側部の前記鋼スリーブを圧縮固定してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の圧縮形直線スリーブおよび架空送電線接続方法は、以下の効果を奏する。
(1)鋼スリーブの長手方向の中心部の外周面に突起を形成するとともに、アルミスリーブを鋼スリーブの突起を挟んで互いに結合可能な第1および第2のアルミスリーブに分割することにより、圧縮固定後の鋼スリーブおよびアルミスリーブの間の偏心を防止することができる。
(2)圧縮固定後の鋼スリーブおよびアルミスリーブの間の偏心を防止することができるため、圧縮形直線スリーブを使用して接続した架空送電線の品質の均一化および機能低下抑制を図ることができる。
(3)圧縮固定後の鋼スリーブおよびアルミスリーブの間の偏心による架空送電線の断線を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例による圧縮形直線スリーブ10の構成を示す図である。
【図2】図1に示した圧縮形直線スリーブ10を使用して図8に示した架空送電線1を接続する手順について説明するための断面図である。
【図3】図1に示した圧縮形直線スリーブ10を使用したときの鋼撚線1aの接続点両側部の鋼スリーブ11を圧縮固定する際に使用する上側圧縮ダイス21および下側圧縮ダイス22の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施例による圧縮形直線スリーブ30の構成を示す図である。
【図5】図4に示した圧縮形直線スリーブ30を使用して図8に示した架空送電線1を接続する手順について説明するための断面図である。
【図6】図4に示した圧縮形直線スリーブ30を使用したときの鋼撚線1aの接続点両側部の鋼スリーブ31を圧縮固定する際に使用する上側圧縮ダイス41および下側圧縮ダイス42の構成を示す断面図である。
【図7】図4に示した圧縮形直線スリーブ30を使用したときの従来の圧縮ダイスを用いて鋼撚線1aの接続点両側部の鋼スリーブ11を圧縮固定する方法について説明するための断面図である。
【図8】鋼心アルミ撚線からなる架空送電線1の構成を示す断面図である。
【図9】従来の圧縮形直線スリーブ2の構成を示す図である。
【図10】従来の圧縮形直線スリーブ2の問題点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記の目的を、鋼スリーブの長手方向の中心部の外周面に突起を形成するとともに、アルミスリーブを鋼スリーブの突起を挟んで互いに結合可能な第1および第2のアルミスリーブに分割することにより実現した。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の圧縮形直線スリーブおよび架空送電線接続方法の実施例について図面を参照して説明する。
本発明の第1の実施例による圧縮形直線スリーブ10は、図1に示すように、鋼スリーブ11と、左側アルミスリーブ12Lと、右側アルミスリーブ12Rと、左側アルミスリーブ12Lに形成された左側防食剤注入口13Lを塞ぐための左側止め栓14Lと、右側アルミスリーブ12Rに形成された右側防食剤注入口13Rを塞ぐための右側止め栓14Rとを具備する。
【0017】
ここで、鋼スリーブ11は、その長手方向の中心部の外周面に突起11aが一体的に形成されている点で、図9に示した従来の鋼スリーブ2aと異なる。
【0018】
左側および右側アルミスリーブ12L,12Rは、図9に示した従来のアルミスリーブ2bをその長手方向の中心から2つに分割するとともに、左側および右側アルミスリーブ12L,12Rに左側および右側防食剤注入口13L,13Rをそれぞれ形成したものである。
【0019】
また、左側および右側アルミスリーブ12L,12Rを鋼スリーブ11の突起11aを挟んで互いに結合可能とするために、左側アルミスリーブ12Lの右側アルミスリーブ12Rと結合する側の端面(以下、「右端面」と称する。)には、深さdLが突起11aの幅w(鋼スリーブ11の長手方向に沿った長さ)と略同じである左側凹部12Laが形成されており、右側アルミスリーブ12Rの左側アルミスリーブ12L側の端面(以下、「左端面」と称する。)には、深さdRが突起11aの幅wと略同じである右側凹部12Raが形成されている。
ここで、左側凹部12Laの外径ΦLは左側アルミスリーブ12Lの右端部の外径と同じとされており、左側凹部12Laの内径φLは右側凹部12Raの外径ΦRと略同じとされている。また、右側凹部12Raの内径φRは突起11aの外径と略同じとされている。
これにより、左側アルミスリーブ12Lと右側アルミスリーブ12Rとは、図2(d)に示すように、右側アルミスリーブ12Rの右側凹部12Raを左側アルミスリーブ12Lの左側凹部12Laに嵌入することにより、鋼スリーブ11の突起11aを左側アルミスリーブ12Lの左側凹部12Laおよび右側アルミスリーブ12Rの右側凹部12Raに嵌入した状態で結合することができるようにされている。
【0020】
なお、左側アルミスリーブ12Lの左側凹部12Laの内周面に雌ネジを形成するとともに、右側アルミスリーブ12Rの右側凹部12Raの外周面にこの雌ネジと螺合する雄ネジを形成して、右側凹部12Raを左側凹部12Laにねじ込むことにより左側アルミスリーブ12Lと右側アルミスリーブ12Rとを結合するようにしてもよい。
【0021】
左側防食剤注入口13Lは左側アルミスリーブ12Lの右端面近傍に形成されており、右側防食剤注入口13Rは右側アルミスリーブ12Rの左端面近傍に形成されている。
【0022】
次に、圧縮形直線スリーブ10を使用して2本の架空送電線1を接続する手順について、図2(a)〜(d)および図3を参照して説明する。
【0023】
(手順1)アルミ撚線1bの切断
作業員は、接続する2本の架空送電線1の傷、曲りおよびわらいなどを調べたのち、アルミ撚線1bを切断して鋼撚線1aを露出させる切断点を決めたのち、決めた切断点においてアルミ撚線1bを切断して鋼撚線1aを露出させる。
その後、作業員は、露出させた鋼撚線1aの先端部分をバインド線で束ねるとともに、切断したアルミ撚線1bの先端部分をバインド線で束ねる。
【0024】
(手順2)アルミ撚線1bの磨き
作業員は、アルミ撚線1bの先端部分の外周面をワイヤブラシで磨く。
【0025】
(手順3)鋼撚線1aの圧縮接続
作業員は、左側アルミスリーブ12Lを一方の架空送電線1のアルミ撚線1bに通すとともに、右側アルミスリーブ12Rを他方の架空送電線1のアルミ撚線1bに通す。
その後、作業員は、2本の架空送電線1の鋼撚線1aの露出された部分の寸法を確認すると、バインド線を解いたのち、図2(a)に示すように2本の架空送電線1の鋼撚線1aを圧縮形直線スリーブ10の鋼スリーブ11の両端からそれぞれ挿入する。
その後、作業員は、圧縮ダイスを用いて、鋼撚線1aの接続点両側部の鋼スリーブ11を圧縮固定したのち、鋼スリーブ11の左端に向かって鋼スリーブ11を圧縮固定していき、続いて、鋼スリーブ11の右端に向かって鋼スリーブ11を圧縮固定していくことにより、2本の鋼撚線1aを圧縮接続する。
このとき、鋼撚線1aの接続点両側部の鋼スリーブ11を圧縮固定する際には、突起11aをつぶさないように、図3に示すような突起11aを収納するための上側凹部21aが内面に形成された上側圧縮ダイス21と突起11aを収納するための下側凹部22aが内面に形成された下側圧縮ダイス22とを用いる。なお、鋼スリーブ11の他の部分を圧縮固定する際には、上側凹部21aおよび下側凹部22aが形成されていない従来の圧縮ダイスを用いる。
作業員は、圧縮ゲージを用いて鋼スリーブ11の寸法を測定して、鋼スリーブ11の伸びを記録する。
【0026】
(手順4)左側および右側アルミスリーブ12L,12Rの結合
作業員は、図2(c)に示すように左側凹部12Laの底面が鋼スリーブ11の突起11aに当接するまで左側アルミスリーブ12Lを鋼スリーブ11に向けて移動させたのち、図2(d)に示すように右側凹部12Raの底面が鋼スリーブ11の突起11aに当接するまで右側アルミスリーブ12Rを鋼スリーブ11に向けて移動させることにより(左側アルミスリーブ12Lの左側凹部12Laの内周面に雌ネジを形成するとともに右側アルミスリーブ12Rの右側凹部12Raの外周面に雄ネジを形成した場合には、移動後に右側凹部12Raを左側凹部12Laにねじ込むことにより)左側アルミスリーブ12Lと右側アルミスリーブ12Rとを結合させる。
これにより、鋼スリーブ11およびアルミスリーブ(左側アルミスリーブ12Lおよび右側アルミスリーブ12R)の間の偏心を防止することができる。
【0027】
(手順5)防食剤の注入
作業員は、左側アルミスリーブ12Lの左側防食剤注入口13L(図1参照)から所定量の防食剤を注入したのち、右側アルミスリーブ12Rの右側防食剤注入口13R(図1参照)から所定量の防食剤を注入する。
【0028】
(手順6)アルミ撚線1bの圧縮接続
作業員は、従来の圧縮ダイスを用いて、2本のアルミ撚線1bの接続点両側部の左側および右側アルミスリーブ12L,12Rを圧縮固定したのち、左側アルミスリーブ12Lの左端に向かって左側アルミスリーブ12Lを圧縮固定して一方の架空送電線1のアルミ撚線1bを圧縮接続していき、続いて、右側アルミスリーブ12Rの右端に向かって右側アルミスリーブ12Rを圧縮固定して他方の架空送電線1のアルミ撚線1bを圧縮接続していく。
【0029】
(手順7)バリ削り
作業員は、左側および右側アルミスリーブ12L,12Rの圧縮によって生じたバリをペンチで折り取り、やすりで角ばらないように面取りする。
【0030】
(手順8)左側および右側アルミスリーブ12L,12Rの圧縮記録
作業員は、圧縮ゲージを用いて左側および右側アルミスリーブ12L,12Rの寸法を測定して、左側および右側アルミスリーブ12L,12Rの伸びを記録する。
【実施例2】
【0031】
次に、本発明の第2の実施例による圧縮形直線スリーブ30について、図4〜図7を参照して説明する。
本実施例による圧縮形直線スリーブ30は、図4に示すように、鋼スリーブ31が、図1に示した突起11aを備えていない点と、圧縮ダイスで鋼スリーブ31を圧縮固定したのちに鋼スリーブ31の中央部の外周面に突起31a(図5(b)参照)が形成されるように鋼スリーブ31の外径が図1に示した鋼スリーブ11の外径よりも大きくされている点で、図1に示した圧縮形直線スリーブ10と異なる。
【0032】
したがって、左側アルミスリーブ32L、右側アルミスリーブ32R、左側止め栓34Lおよび右側止め栓34Rは、図1に示した左側アルミスリーブ12L、右側アルミスリーブ12R、左側止め栓14Lおよび右側止め栓14Rと同様に構成されている。
【0033】
次に、圧縮形直線スリーブ30を使用して図8に示した架空送電線1を接続する手順について、図5(a),(b)、図6および図7(a),(b)を参照して説明する。
【0034】
(手順1)アルミ撚線1bの切断
作業員は、接続する2本の架空送電線1の傷、曲りおよびわらいなどを調べたのち、アルミ撚線1bを切断して鋼撚線1aを露出させる切断点を決めたのち、決めた切断点においてアルミ撚線1bを切断して鋼撚線1aを露出させる。
その後、作業員は、露出させた鋼撚線1aの先端部分をバインド線で束ねるとともに、切断したアルミ撚線1bの先端部分をバインド線で束ねる。
【0035】
(手順2)アルミ撚線1bの磨き
作業員は、アルミ撚線1bの先端部分の外周面をワイヤブラシで磨く。
【0036】
(手順3)鋼撚線1aの圧縮接続
作業員は、左側アルミスリーブ32Lを一方の架空送電線1のアルミ撚線1bに通すとともに、右側アルミスリーブ32Rを他方の架空送電線1のアルミ撚線1bに通す。
その後、作業員は、2本の架空送電線1の鋼撚線1aの露出された部分の寸法を確認すると、バインド線を解いたのち、図5(a)に示すように2本の架空送電線1の鋼撚線1aを圧縮形直線スリーブ30の鋼スリーブ31の両端からそれぞれ挿入する。
その後、作業員は、圧縮ダイスを用いて、鋼撚線1aの接続点両側部の鋼スリーブ31を圧縮固定したのち、鋼スリーブ31の左端に向かって鋼スリーブ31を圧縮固定していき、続いて、鋼スリーブ31の右端に向かって鋼スリーブ31を圧縮固定していくことにより、2本の鋼撚線1aを圧縮接続する。
【0037】
このとき、鋼撚線1aの接続点両側部の鋼スリーブ31を圧縮固定する際には、図5(b)に示すように鋼スリーブ31の長手方向の中心部の外周面に突起31aが形成されるように、図6に示すような突起31aを形成するための上側凹部41aが内面に形成された上側圧縮ダイス41と突起31aを形成するための下側凹部42aが内面に形成された下側圧縮ダイス42とを用いる。なお、鋼スリーブ31の他の部分を圧縮固定する際には、上側凹部41aおよび下側凹部42aが形成されていない従来の圧縮ダイスを用いる。
【0038】
または、従来の圧縮ダイス(上側圧縮ダイス51および下側圧縮ダイス52)を用いるときには、図7(a)に示すように鋼スリーブ31の突起31aを形成する部分を除いた鋼撚線1aの接続点よりも左側の部分を上側圧縮ダイス51および下側圧縮ダイス52で圧縮固定したのち、図7(b)に示すように鋼スリーブ31の突起31aを形成する部分を除いた鋼撚線1aの接続点よりも右側の部分を上側圧縮ダイス51および下側圧縮ダイス52で圧縮固定することにより、鋼スリーブ31の中央部に突起31aを形成する。
【0039】
その後、作業員は、圧縮ゲージを用いて鋼スリーブ11の寸法を測定して、鋼スリーブ31の伸びを記録する。
【0040】
以下、作業員は、上述した第1の実施例による圧縮形直線スリーブ10について説明した手順4から手順8までを同様にして行う。
【符号の説明】
【0041】
1 架空送電線
1a 鋼撚線
1b アルミ撚線
2 圧縮形直線スリーブ
2a 鋼スリーブ
2b アルミスリーブ
2c アルミピン
2d 止め栓
3 ピン挿入孔
4 防食剤注入口
10,30 圧縮形直線スリーブ
11,31 鋼スリーブ
11a 突起
12L,12R,32L,32R 左側および右側アルミスリーブ
12La,12Ra,32La,32Ra 左側および右側凹部
13L,13R,33L,33R 左側および右側防食剤注入口
14L,14R,34L,34R 左側および右側止め栓
21,41,51 上側圧縮ダイス
21a,41a 上側凹部
22,42,52 下側圧縮ダイス
22a,42a 下側凹部
w 幅
h 高さ
ΦL,ΦR 外径
φL,φR 内径
L,dR 深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側を鋼撚線(1a)とし外側をアルミ撚線(1b)とした鋼心アルミ撚線からなる2本の架空送電線(1)を接続するための圧縮形直線スリーブ(10)であって、
前記2本の架空送電線の前記鋼撚線を圧縮接続するための、かつ、長手方向の中心部の外周面に突起(11a)が形成された鋼スリーブ(11)と、
該鋼スリーブの前記突起を挟んで互いに結合可能な、かつ、前記2本の架空送電線の前記アルミ撚線を圧縮接続するための第1および第2のアルミスリーブ(12L,12R)と、
を具備することを特徴とする、圧縮形直線スリーブ。
【請求項2】
前記第1のアルミスリーブの前記第2のアルミスリーブと結合する側の端面に、深さ(dL)が前記突起の前記鋼スリーブの長手方向に沿った長さである幅(w)と略同じである第1の凹部(12La)が形成されており、
前記第2のアルミスリーブの前記第1のアルミスリーブと結合する側の端面に、深さ(dR)が前記突起の前記幅と略同じである第2の凹部(12Ra)が形成されており、
前記第1の凹部の内径(φL)が前記第2の凹部の外径(ΦR)と略同じとされており、
前記第2の凹部の内径(φR)が前記突起の外径と略同じとされている、
ことを特徴とする、請求項1記載の圧縮形直線スリーブ。
【請求項3】
前記第1のアルミスリーブの前記第1の凹部の内周面に、ネジが形成されており、
前記第2のアルミスリーブの前記第2の凹部の外周面に、前記ネジと螺合する他のネジが形成されている、
ことを特徴とする、請求項2記載の圧縮形直線スリーブ。
【請求項4】
内側を鋼撚線(1a)とし外側をアルミ撚線(1b)とした鋼心アルミ撚線からなる2本の架空送電線(1)を接続するための圧縮形直線スリーブ(30)であって、
前記2本の架空送電線の前記鋼撚線を圧縮接続するための、かつ、圧縮固定されたときに長手方向の中心部の外周面に突起(31a)が形成可能な鋼スリーブ(31)と、
該鋼スリーブに形成された前記突起を挟んで互いに結合可能な、かつ、前記2本の架空送電線の前記アルミ撚線を圧縮接続するための第1および第2のアルミスリーブ(32L,32R)と、
を具備することを特徴とする、圧縮形直線スリーブ。
【請求項5】
前記第1のアルミスリーブの前記第2のアルミスリーブと結合する側の端面に、深さ(dL)が前記突起の前記鋼スリーブの長手方向に沿った長さである幅(w)と略同じである第1の凹部(32La)が形成されており、
前記第2のアルミスリーブの前記第1のアルミスリーブと結合する側の端面に、深さ(dR)が前記突起の前記幅と略同じである第2の凹部(32Ra)が形成されており、
前記第1の凹部の内径(φL)が前記第2の凹部の外径(ΦR)と略同じとされており、
前記第2の凹部の内径(φR)が前記突起の外径と略同じとされている、
ことを特徴とする、請求項4記載の圧縮形直線スリーブ。
【請求項6】
前記第1のアルミスリーブの前記第1の凹部の内周面に、ネジが形成されており、
前記第2のアルミスリーブの前記第2の凹部の外周面に、前記ネジと螺合する他のネジが形成されている、
ことを特徴とする、請求項5記載の圧縮形直線スリーブ。
【請求項7】
請求項1乃至3いずれかに記載の圧縮形直線スリーブ(10)を使用して前記2本の架空送電線を接続するための架空送電線接続方法であって、
前記2本の架空送電線の前記アルミ撚線(1a)を切断して該2本の架空送電線の前記鋼撚線(1b)を露出させる第1のステップと、
前記第1のアルミスリーブ(12L)を前記2本の架空送電線の一方の架空送電線の前記アルミ撚線(1b)に通すとともに、前記第2のアルミスリーブ(12R)を該2本の架空送電線の他方の架空送電線の前記アルミ撚線に通す第2のステップと、
前記2本の架空送電線の前記鋼撚線を前記鋼スリーブ(11)の両端からそれぞれ挿入する第3のステップと、
前記突起(11a)をつぶさないように前記鋼スリーブを圧縮固定して、前記2本の架空送電線の前記鋼撚線を圧縮接続する第4のステップと、
前記第1の凹部(12La)の底面が前記鋼スリーブの前記突起(11a)に当接するまで前記第1のアルミスリーブ(12L)を該鋼スリーブに向けて移動させたのち、前記第2の凹部の底面が前記鋼スリーブの前記突起に当接するまで前記第2のアルミスリーブを該鋼スリーブに向けて移動させて、該第1のアルミスリーブと該第2のアルミスリーブとを結合させる第5のステップと、
前記第1および第2のアルミスリーブを圧縮固定して、前記2本の架空送電線の前記アルミ撚線を圧縮接続する第6のステップと、
を具備することを特徴とする、架空送電線接続方法。
【請求項8】
請求項4乃至6いずれかに記載の圧縮形直線スリーブ(30)を使用して前記2本の架空送電線を接続するための架空送電線接続方法であって、
前記2本の架空送電線の前記アルミ撚線(1a)を切断して該2本の架空送電線の前記鋼撚線(1b)を露出させる第1のステップと、
前記第1のアルミスリーブ(32L)を前記2本の架空送電線の一方の架空送電線の前記アルミ撚線に通すとともに、前記第2のアルミスリーブ(32R)を該2本の架空送電線の他方の架空送電線の前記アルミ撚線に通す第2のステップと、
前記2本の架空送電線の前記鋼撚線を前記鋼スリーブ(31)の両端からそれぞれ挿入する第3のステップと、
前記鋼スリーブの長手方向の中心部の外周面に前記突起(31a)を形成するように該鋼スリーブを圧縮固定して、前記2本の架空送電線の前記鋼撚線を圧縮接続する第4のステップと、
前記第1の凹部(32La)の底面が前記鋼スリーブに形成された前記突起に当接するまで前記第1のアルミスリーブ(32L)を該鋼スリーブに向けて移動させたのち、前記第2の凹部の底面が前記鋼スリーブに形成された前記突起に当接するまで前記第2のアルミスリーブを該鋼スリーブに向けて移動させて、該第1のアルミスリーブと該第2のアルミスリーブとを結合させる第5のステップと、
前記第1および第2のアルミスリーブを圧縮固定して前記2本の架空送電線の前記アルミ撚線を圧縮接続する第6のステップと、
を具備することを特徴とする、架空送電線接続方法。
【請求項9】
前記第4のステップで、前記突起を形成するための上側凹部(41a)が形成された上側圧縮ダイス(41)と、前記突起を形成するための下側凹部(42a)が形成された下側圧縮ダイス(42)とを用いて、前記2本の架空送電線の前記鋼撚線の接続点両側部の前記鋼スリーブを圧縮固定することを特徴とする、請求項8記載の架空送電線接続方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−130118(P2012−130118A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277858(P2010−277858)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】