説明

圧膜用超低溶融金属ナノ粒子組成物

【課題】数マイクロメートルの厚さ及び約130℃以下の金属ナノ粒子のアニール温度を有する導電性構造部を形成する方法を提供する。
【解決手段】基板上に導電性構造部を形成する方法であり、該方法は、金属化合物、還元剤及び安定剤を含む実質的に無溶媒の反応混合物内において安定剤の存在下で金属化合物を還元剤と反応させて、金属ナノ粒子表面に安定剤の分子を有する複数の金属ナノ粒子を形成する工程を含む。前記金属ナノ粒子表面に前記安定剤の分子を有する前記複数の金属ナノ粒子を分離させた後に、ポリマー結合剤、液体及び前記金属ナノ粒子表面に前記安定剤の分子を有する前記複数の金属ナノ粒子を含む液体組成物を液体堆積技術により基板上に堆積して堆積された組成物を形成する。堆積された組成物を次に加熱して基板上に導電性構造部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液体堆積技術を用いる電子回路素子の製造技術は、薄膜トランジスタ(TFT)、発光ダイオード(LED)、RFIDタグ、光電池等の電子応用にとって主流である従来のアモルファスシリコン技術に代わり低コストを提供する可能性があるので、大いに関心がもたれている。しかし、実用上の導電性、製造及びコスト要件を満たす機能電極、ピクセルパッド及び導電性トレース、ライン及びトラックの堆積及び/又はパターニングには大きな課題がある。電子デバイスのための導電性素子として特に銀が注目されている。その理由は、銀は金よりはるかに低コストであるため及び銀は銅よりはるかに環境安定性がよいためである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、銀化合物、還元剤、安定剤及び随意の溶媒を含む反応混合物内において、銀化合物を熱的に除去可能な安定剤の存在下でヒドラジン化合物を含む還元剤と反応させて、銀含有ナノ粒子表面に安定剤の分子を有する複数の銀含有ナノ粒子を形成するプロセスを開示している。
【0003】
特許文献2は、液体と安定剤が付いた複数の銀含有ナノ粒子とを含む組成物を開示しており、該組成物において、前記銀含有ナノ粒子は、銀化合物、還元剤、安定剤及び随意の有機溶媒を含む反応混合物内における熱的に除去可能な安定剤の存在下での銀化合物とヒドラジン化合物を含む還元剤との反応の生成物であり、前記ヒドラジン化合物はヒドロカルビルヒドラジン、ヒドロカルビルヒドラジン塩、ヒドラジド、カルバジン酸、スルホノヒドラジド又はその混合物であり、前記安定剤は有機アミンを含む。
【0004】
銀ナノ粒子は、例えば特許文献3に開示されているように、(1)アミン安定化銀ナノ粒子を用い、(2)アミン安定化剤をカルボン酸安定剤と交換することによっても生成される。しかし、この方法は、典型的には、溶解処理のための十分な溶解度を与えるために12炭素原子より長い炭素鎖を有するカルボン酸を必要とする。このような長い鎖のカルボン酸の高い沸点及びカルボン酸と銀ナノ粒子の強い結合のために、導電性銀膜を得るために必要とされるアニール温度は典型的には200℃より高くなる。
【0005】
現在利用可能な電子デバイス用導電性素子の生成方法はそれらの使用目的に適しているが、数マイクロメートルの厚さ及び低いアニール温度を有する導電性構造を生成するのに適していて、前記導電性構造の生成に使用される金属ナノ粒子が増加した保管寿命を有している方法が依然として必要とされている。いくつかの特別なプラスチック基板は250℃のアニール温度に耐え得るが、殆どのプラスチック基板は耐えられないため、依然として寸法安定性が問題である。また、低コストプラスチック基板は150℃より低いアニール温度を有する。更に、電子デバイスの導電性素子を製造するのに好適であり、増大した保管寿命を有する、液体処理可能な安定金属ナノ粒子組成物を生成する低コストで環境的に安全な方法が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,270,694号明細書
【特許文献2】米国特許第7,494,608号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0099357号明細書
【発明の概要】
【0007】
従って、数マイクロメートルの厚さ及び約130℃以下の金属ナノ粒子のアニール温度を有する導電性構造部を形成する方法の必要性があり、ここに記載される主題はこの課題の解決に取り組んでいる。
【0008】
上記の及び他の課題は本発明により解決され、いくつかの実施形態では、本発明は基板の上に導電性構造部を形成する方法に関し、該方法は、金属化合物、還元剤及び安定剤を含む実質的に無溶媒の反応混合物内において安定剤の存在下で金属化合物を還元剤と反応させて、金属ナノ粒子表面に安定剤の分子を有する複数の金属ナノ粒子を形成する工程と、 前記金属ナノ粒子表面に前記安定剤の分子を有する前記複数の金属ナノ粒子を分離させる工程と、ポリマー結合剤、液体及び前記金属ナノ粒子表面に前記安定剤の分子を有する前記複数の金属ナノ粒子を含む液体組成物を生成する工程と、前記液体組成物を液体堆積により前記基板上に堆積して堆積された組成物を形成する工程と、前記堆積された組成物を加熱して前記導電性構造部を前記基板上に形成する工程とを備える。
【0009】
いくつかの実施形態では、ポリマー結合剤、液体及び金属ナノ粒子表面に安定剤の分子を有する複数の金属ナノ粒子を含む液体組成物が記載され、該組成物において、前記金属ナノ粒子は、金属化合物、還元剤及び安定剤を含む実質的に無溶媒の反応混合物内における安定剤の存在下での金属化合物と還元剤との反応の生成物である。
【0010】
いくつかの実施形態では、基板上に導電性構造部を形成する方法が記載され、該方法は、金属化合物、還元剤及び安定剤を含む実質的に無溶媒の反応混合物内において安定剤の存在下で金属化合物を還元剤と反応させて、無溶媒還元処理中に金属ナノ粒子表面に安定剤の分子を有する複数の金属ナノ粒子を形成する工程と、前記金属ナノ粒子表面に前記安定剤の分子を有する前記複数の金属ナノ粒子を分離させる工程と、ポリマー結合剤、液体及び前記金属ナノ粒子表面に前記安定剤の分子を有する前記複数の金属ナノ粒子を含む液体組成物を生成する工程と、前記液体組成物を液体堆積により前記基板上に堆積して堆積された組成物を形成する工程と、前記堆積された組成物を加熱して約1マイクロメートルから約100マイクロメートルの厚さを有する導電性構造部を前記基板上に形成する工程とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のプロセスは、導電性インクを含む種々の用途に好適な、安定化(具体的には有機アミン安定化)金属ナノ粒子を生成するものである。この方法は、実質的に溶媒を含まない反応混合物内における有機アミン安定剤等の安定剤の存在下での還元剤(例えばフェニルヒドラジン)による金属化合物(例えば酢酸銀)の化学的な還元を含む。この無溶媒還元プロセス中に形成される金属ナノ粒子は溶媒ベースプロセスを含む従来方法により生成される金属ナノ粒子よりはるかに安定である。本発明による方法は、金属ナノ粒子形成中にこれまで必要とされたトルエン等の環境に有害な溶媒を不要にする。本発明による化学反応プロセスは、更に、溶媒の使用を実質的に不要にすることで製造コストの削減ももたらす。この方法は、数マイクロメートルから10マイクロメートルの厚さを有する導電性構造部に対して低いアニール温度が要求される用途のために、例えば約130℃以下の低いアニール温度を有する低温処理可能な金属ナノ粒子を生成するのに特に便利である。
【0012】
金属ナノ粒子は金属化合物の化学的還元により生成される。ここに記載されるプロセスには任意の金属化合物を使用することができる。金属化合物の例としては、金属酸化物、金属窒化物、金属カルボン酸塩、金属酢酸塩、金属炭酸塩、金属過塩素酸塩、金属硫酸塩、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、金属トリフルオロ酢酸塩、金属燐酸塩、金属トリフルオロ酢酸塩、金属ベンゾエート、金属乳酸塩、金属ヒドロカルビルスルホン酸塩又はそれらの組み合わせがある。
【0013】
「金属ナノ粒子」で使用される「ナノ」という用語は、例えば約1000nmより小さい粒径、例えば約0.5nm〜約1000nm、例えば約1nm〜約500nm、例えば約1nm〜約100nm、例えば約1nm〜約25nm又は例えば約1nm〜約10nmの粒径を言う。粒径は、TEM(透過型電子顕微鏡)又は他の適切な方法で測定される金属粒子の平均直径を言う。一般に、複数の粒径がここに記載されるプロセスにより得られる金属ナノ粒子に存在し得る。いくつかの実施の形態では、異なる大きさの銀含有ナノ粒子の存在が許容される。
【0014】
いくつかの実施の形態では、金属ナノ粒子は、(i)一種以上の金属又は(ii)一種以上の複合金属からなる。適切な金属は、例えばAl,Ag,Au,Pt,Pd,Cu,Co,Cr,In及びNiを含むことができ、特に遷移金属、例えばAg,Au,Pt,Pd,Cu,Cr,Ni及びそれらの混合物を含むことができる。銀は適切な材料として使用することができる。適切な複合金属は、Au−Ag,Ag−Cu,Ag−Ni,Au−Cu,Au−Ni,Au−Ag−Cu及びAu−Ag−Pdを含むことができる。複合金属は、例えばSi,C及びGe等の非金属を含むこともできる。複合金属の種々の成分は、例えば約0.01重量%から約99.9重量%、特に約10重量%から90重量%の範囲内の量で存在させることができる。
【0015】
いくつかの実施の形態では、複合金属は銀と1種又は2種又はそれ以上の他の金属とからなる金属合金であり、銀は、例えば少なくとも20重量%のナノ粒子、特に約50重量%を超えるナノ粒子を含む。
【0016】
特に断りのない限り、金属ナノ粒子の成分に関してここに記載する重量パーセントは安定剤を含まない。
【0017】
金属ナノ粒子は、同一出願人により2008年5月1日に出願されたNaveen Chopra他の米国特許出願第12/113,628号に記載されているように、2種以上のバイメタルの金属ナノ粒子種の混合物とすることができ、また2008年6月5日に出願されたMichelle N. Chretienの米国特許出願第12/133,548号に記載されているように、バイモダル金属ナノ粒子とすることができる。
【0018】
いくつかの実施の形態では、還元剤化合物はヒドラジン化合物とすることができる。ここで使用される「ヒドラジン化合物」という用語はヒドラジン(N)及び置換ヒドラジンを含む。置換ヒドラジンは、置換基として、例えばS及びO等の任意の適切なヘテロ原子を含み、例えば約0〜約30の炭素原子、約1〜約25の炭素原子、約2〜約20の炭素原子、又は約2〜約16の炭素原子を有する炭化水素族を含むものとすることができる。ヒドラジン化合物は、例えばヒドラジン酸タルトレート、ヒドラジンモノヒドロブロマイド、ヒドラジンモノヒドロクロライド、ヒドラジンジクロライド、ヒドラジンモノオキサレート及びヒドラジンサルフェート等のヒドラジンの任意の適切な塩及び水化物、及び置換ヒドラジンの塩及び水化物を含むこともできる。
【0019】
ヒドラジン化合物の例としては、ヒドロカルビルヒドラジン、例えば一つの窒素原子がR又はR’と単一又は二重置換され、他の窒素原子は随意にRと単一又は二重置換されたRNHNH,RNHNHR’及びRR’NNHを含むことができ、ここで各R又はR’は炭化水素基である。ヒドロカルビルヒドラジンの例としては、例えばメチルヒドラジン、tert−ブチルヒドラジン、2−ヒドロキシヒドラジン、クロロフェニルヒドラジン、ニトロフェニルヒドラジン、1,1−ジメチルヒドラジン、1,1−ジフェニルヒドラジン、1,2−ジエチルヒドラジン及び1,2−ジフェニルヒドラジンを含むことができる。
【0020】
種々のヒドラジン化合物のR及びR’に対する置換基の特定において、特に断らない限り、「炭化水素基」という語句は非置換炭化水素基及び置換炭化水素基の両方を含む。非置換炭化水素基は、例えば水素原子、直鎖又は分鎖アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アルキルアリル基、アリルアルキル基又はそれらの組み合わせ等の任意の適切な置換基を含むことができる。アルキル基及びシクロアルキル基は、約1から約30の炭素原子、約5から約25の炭素原子、約10から約20の炭素原子を含むことができる。アルキル基及びシクロアルキル基の例には、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル又はエイコサニル、及びそれらの組み合わせが含まれる。アリル置換基は、約6から約48の炭素原子、約6から約36の炭素原子、約6から約24の炭素原子を含むことができる。アリル置換基の例には、例えばフェニル、メチルフェニル(トリル)、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、オクチルフェニル、ノニフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、トリデシルフェニル、テトラデシルフェニル、ペンタデシルフェニル、ヘキサデシルフェニル、ヘプタデシルフェニル、オクタデシルフェニル又はそれらの組み合わせが含まれる。置換炭化水素基は、例えばハロゲン(塩素、フッ素、臭素及びヨウ素)、ニトロ基、アルコキシ基(メトキシル、エトキシル及びプロポキシ)又はヘテロアリルと1回又は2回以上置換されたここに記載する非置換炭化水素基を含むことができる。ヘテロアリル基の例には、チエニル、フラニル、ピリジニル、オキサゾイル、ピロロイル、トラジニル、イミダゾイル、ピリミジニル、ピラジニル、オキサジゾイル、ピラゾイル、トリアゾイル、チアゾイル、チアジゾイル、クイノィニル、クイナゾリニル、ナフチリジニル、カルバゾイル又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0021】
ヒドラジン化合物の例としては、(ここに記載するヒドロカルビルヒドラジンの塩である)ヒドロカルビルヒドラジン塩、例えばメチルヒドラジンヒドロクロライド、フェニルヒドラジンヒドロクロライド、ベンジルヒドラジンオキサレート、ブチルヒドラジンヒドロクロライド、ブチルヒドラジンオキサレート塩及びプロピルヒドラジンオキサレート塩も含むことができる。
【0022】
ヒドラジン化合物の例としては、ヒドラジド、例えば1つ又は2つの窒素原子がRC(O)型のアシル基と置換されたRC(O)NHNH,RC(O)NHNHR’及びRC(O)NHNHC(O)Rも含むことができ、ここで、各Rは水素及び炭化水素基から独立に選択され、1つ又は2つの窒素原子は随意にR’と単一又は二重置換され、各R’は独立に選択された炭化水素基である。ヒドラジドの例としては、例えばホルムヒドラジド、アセチルヒドラジド、ベンジルヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、ブタノヒドラジド、ヘキサン酸ヒドラジド、オクタン酸ヒドラジド、オキサミド酸ヒドラジド、マレイン酸ヒドラジド、N−メチルヒドラジンカルボキサミド及びセミカルバジドを含むことができる。
【0023】
ヒドラジン化合物の例としては、カルバゼート及びヒドラジノカルボキシレート、例えば1つ又は2つの窒素原子がROC(O)型のエステル基と置換されたROC(O)NHNHR’, ROC(O)NHNH及びROC(O)NHNHC(O)Rを含むこともでき、ここで、各Rは水素及び炭化水素基から独立に選択され、1つ又は2つの窒素原子は随意にR’と単一又は二重置換され、各R’は独立に選択された炭化水素基である。カルバゼートの例としては、例えばメチルカルベゼート(メチルヒドラジノカルボキシレート)、エチルカルバゼート、ブチルカルバゼート、ベンジルカルバゼート及び2−ヒドロキシエチルカルバゼートを含むことができる。
【0024】
ヒドラジン化合物の例としては、スルホノヒドラジド、例えば1つ又は2つの窒素原子がRSO型のエステル基と置換されたRSO(O)NHNH2,RSO(O)NHNHR’及びRSO(O)NHNHSORを含むこともでき、ここで、各Rは水素及び炭化水素基から独立に選択され、1つ又は2つの窒素原子は随意にR’と単一又は二重置換され、各R’は独立に選択された炭化水素基である。スルホノヒドラジドの例としては、例えばメタンスルフォノヒドラジド、ベンゼンスルフォノヒドラジド、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフォノヒドラジド及びp−トルエンスルフォノヒドラジドを含むことができる。
【0025】
他のヒドラジン化合物としては、例えばアミノグアニジン、チオセミカルバジド、メチルヒドラジンカルビミドチオレート及びチオカルボヒドラジドを含むことができる。
【0026】
1種、2種、3種又はそれ以上の還元剤を使用することができる。2種以上の還元剤を使用する実施の形態では、各還元剤を任意の適切な重量比、例えば約99(第1還元剤):1(第2還元剤)から1(第1還元剤):99(第2還元剤)で存在させることができる。
【0027】
使用する還元剤の量は、例えば金属化合物の1モル当たり約0.1から約10モル当量、金属の1モル当たり約0.25から約4モル当量、又は金属の1モル当たり約0.5から約2モル当量を含む。
【0028】
ここでは、任意の適切な安定剤を選択することができ、安定剤は金属ナノ粒子が液体内で凝集するのを最小化又は阻止する機能及び/又は液体内の金属粒子の溶解性又は分散性を与える又は向上させる随意の機能を有する。加えて、安定剤は「熱的に除去可能」であり、これはここでは加熱のような所定の状態の下で金属ナノ粒子表面から解離することを意味する。
【0029】
いくつかの実施の形態では、本発明の方法は、約80℃から約140℃のアニール温度を有する低温製造可能な金属ナノ粒子を提供し、別の特定の実施の形態では約130℃のアニール温度、更に別の特定の実施の形態では約120℃のアニール温度、及び更に別の特定の実施の形態では約110℃のアニール温度を有する低温製造可能な金属ナノ粒子を提供する。理論で制約されることは望まないが、本発明の方法は低温アニール能力をもたらすと信じられる。従来の安定剤より短い炭素鎖長、例えば約6から約14の炭素原子を有する安定剤は低温アニールに貢献する。例えば、特定の実施の形態では、約12炭素原子の炭素鎖長を有する安定剤が選択される。特定の実施の形態では、安定剤は約6から約14の炭素原子を含むヒドロカルビルアミンを含む。
【0030】
いくつかの実施の形態では、安定剤は有機安定剤とすることができる。「有機安定剤」の「有機」は炭素原子の存在を意味するが、有機安定剤は、窒素、酸素、硫黄、珪素、ハロゲン等の一以上の非金属へテロ原子を含むことができる。模範的な有機安定剤は、チオール及びその誘導体、アミン及びその誘導体、カルボン酸及びそのカルボキシレート誘導体、ポリエチレングリコール、及び他の有機界面活性剤を含む。いくつかの実施の形態では、有機安定剤は、例えば、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、及びドデカンチオール等のチオール;例えばエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘンプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、及びドデシルアミン等のアミン;例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、及び1,4−ブタンジチオール等のジチオール;例えばエチレンジアミン、1,3−ジアミンプロパン、1,4−ジアミンブタン等のジアミン;チオール及びジチオールの混合物;及びアミン及びジアミンの混合物から成る群から選択することができる。銀含有ナノ粒子を安定化することができるピリジン誘導体(例えばドデシルピリジン)及び/又はオルガノホスフィンを選択することもできる。
【0031】
いくつかの実施の形態では、有機安定剤は、オルガノアミン、例えばブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ヘキサデシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、プロピルブチルアミン、エチルブチルアミン、エチルペンチルアミン、プロピルペンチルアミン、ブチルペンチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン及びその混合物とする。
【0032】
他の有機安定剤の例としては、例えば、チオール及びその誘導体、−OC(=S)SH(キサントゲン酸)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン及び他の有機界面活性剤がある。有機安定剤は、チオール、例えば、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、及びドデカンチオール;ジチオール、例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、及び1,4−ブタンジチオールまたはチオール及びジチオールの混合物から成る群から選択することができる。有機安定剤は、キサントゲン酸、例えば、O−メチルキサンテート、O−エチルキサンテート、O−プロピルキサントゲン酸、O−ブチルキサントゲン酸、O−ペンチルキサントゲン酸、O−ヘキシルキサントゲン酸、O−ヘプチルキサントゲン酸、O−オクチルキサントゲン酸、O−ノニルキサントゲン酸、O−デシルキサントゲン酸、O−ウンデシルキサントゲン酸、O−ドデシルキサントゲン酸から成る群から選択することもできる。また、金属ナノ粒子を安定化させることができるピリジン誘導体(例えば、ドデシルピリジン)及び/またはオルガノホスフィンを含有する有機安定剤も潜在的な安定剤として使用することができる。
【0033】
さらなる有機安定剤の例としては、米国特許出願公開第2009/0148600A1号明細書に記載されるカルボン酸−オルガノアミン錯体安定化金属ナノ粒子、米国特許出願公開第2007/0099357号明細書に記載されるカルボン酸安定剤金属ナノ粒子、及び米国特許出願公開第2009/0181183A1号明細書に記載される熱的に除去可能な安定剤及びUV分解可能な安定剤が挙げられる
【0034】
1、2、3種またはそれ以上の安定剤を使用できる。2種以上の安定剤を使用する実施の形態では、各安定剤は、例えば、約99(第1安定剤):1(第2安定剤)〜約1(第1安定剤):99(第2安定剤)の任意の適切な重量比またはモル比で存在できる。安定剤の合計量は任意の適切な量、例えば金属化合物の1モルにつき1,2,10,25又はそれ以上のモル当量にすることができる。
【0035】
いくつかの実施の形態では、還元の前に、金属化合物及び安定剤を混ぜ合わせ、約35℃〜約70℃、約40℃〜約60℃及び約50℃〜約60℃の温度に加熱して金属化合物と安定剤を溶解させる。しかし、安定剤は還元剤の添加まで金属ナノ粒子への結合を形成しない。
【0036】
いくつかの実施形態では、銀含有ナノ粒子は安定剤と化学結合を形成することができる。本明細書中で提供される安定剤の化学名は、銀含有ナノ粒子と何らかの化学結合を形成する前のものである。安定剤の性質は、化学結合の形成に伴って変化する可能性があるが、便宜上、化学結合を形成する前の化学名を使用することに留意されたい。銀含有ナノ粒子と安定剤との間の引力は、化学結合、物理的付着又はその組み合わせとし得る。化学結合は、例えば、共有結合、水素結合、配位錯結合、またはイオン結合、あるいは異なる化学結合の混合の形態を取り得る。物理的付着は、ファンデルワールス力または双極子−双極子相互作用、あるいは異なる物理的付着の混合の形態を取り得る。
【0037】
安定剤が銀含有ナノ粒子の表面を被覆する程度は、例えば安定剤が銀含有ナノ粒子を安定化する能力に応じて、例えば部分被覆から完全被覆まで変化し得る。もちろん、個々の銀含有ナノ粒子の間でも安定剤の被覆率は変化する。
【0038】
金属ナノ粒子に付着する安定剤の重量パーセンテージは、ナノ粒子組成物の総重量に基づいて、例えば約5重量パーセント〜約80重量パーセント、約10重量パーセント〜約60重量パーセント、約15重量パーセント〜約50重量パーセントとし得る。
【0039】
金属化合物に対する安定剤のモル比は任意のモル比にし得る。実施の形態では、金属化合物に対する安定剤のモル比(安定剤:銀塩)は約3対1、4対1又は5対1以上にする。他の実施の形態では、金属ナノ粒子表面に安定剤を有する金属ナノ粒子は反応混合物から隔離することができる。
【0040】
いくつかの実施の形態では、金属化合物は反応混合物内において安定剤の存在下で還元剤により反応又は還元される。反応混合物は金属化合物、安定剤及び還元剤からなる。
【0041】
いくつかの実施の形態では、反応混合物は実質的にいかなる無溶媒も含まず、トルエン等の溶媒を用いる従来のプロセスと比較して増大した安定化を有する、短鎖有機アミン安定化銀ナノ粒子の生成を可能にする。例えば、トルエン等の溶媒で生成されたドデシルアミン安定化銀ナノ粒子は数日で劣化される。しかし、本発明の方法で生成されたドデシルアミン安定化銀ナノ粒子は約数ヶ月又は数年間安定に維持される。従って、本発明の方法は低いアニール温度のナノ粒子の生成を可能にする。
【0042】
いくつかの特定の実施の形態では、いかなる溶媒の総量も、反応混合物の総重量に基づいて、約40重量パーセント未満、又は約20重量パーセント未満、又は約5重量パーセント未満にする。一つの特定の実施の形態では反応混合物はいかなる溶媒も含まない(即ち、溶媒の重量パーセントはゼロである)。
【0043】
安定化金属ナノ粒子を形成するための(安定剤の存在下での)金属化合物と還元剤との反応は、例えば約−50℃〜約80℃、又は約−25℃〜約80℃、又は約0℃〜約70℃、又は約20℃〜約70℃、又は約35℃〜約65℃等の任意の適切な温度で実行される。次に、安定化金属ナノ粒子を、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はその混合物等の任意の適切な有機液体溶媒内で沈殿させ、次いで任意の適切な安定化金属ナノ粒子収集技術、例えばろ過、遠心分離及び/又は傾斜法により収集することができる。
【0044】
本明細書は、更に、ポリマー結合剤、液体及び表面に安定剤を有する複数の金属ナノ粒子を含む液体組成物であって、前記金属ナノ粒子は、金属化合物、実質的に無溶媒の還元剤及び安定剤を含む反応混合物内における安定剤の存在下での金属化合物と還元剤との反応の生成物である液体組成物を記載する。
【0045】
この組成物は、堆積時に金属ナノ粒子の基板への付着を増大し、更に約15マイクロメートルまでの厚さを有する高導電性膜を基板上に堆積することを可能にするポリマー結合剤を含有する。ポリマー結合剤を組成物に含有させることは、堆積された導電性構造部に対する機械的特性、例えば耐掻き傷性、柔軟性及び耐亀裂性なども改善する。ポリマー結合剤のガラス遷移温度は堆積される組成物に対する加熱温度より低いため、任意のポリマー結合剤を組成物に含有させることができる。
【0046】
ポリマー結合剤の例としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等の有機ポリマー膜形成結合剤、例えばポリカーボネート類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリウレタン類、ポリスチレン類、ポリアリルエーテル類、ポリアリルスルホン類、ポリブタジン類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリエチレン類、ポリプロピレン類、ポリイミド類、ポリメチルペンテン類、ポリフェニレンサルファイド類、ポリビニルアセテート類、ポリシロキサン類、ポリアクリレート類、ポリビニルアセテート類、ポリアミド類、アミノ樹脂、フェニレンオキサイド樹脂、テレフタル酸樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェノル酸樹脂、ポリエステル−アクリロニトリルコポリマー類、ポリビニルクロライド類、ビニルクロライド−ビニルアセテートコポリマー類、アクリレートコポリマー類、アルキド樹脂、セルロース系フィルムフォーマ類、ポリ(アミドイミド)類、スチレンブタジンコポリマー類、ビニリデンクロライド−ビニルクロライドコポリマー類、ビニルアセテート−ビニリデンクロライドコポリマー類、スチレン−アルキド樹脂類、ポリビニルカルバゾール類等が挙げられる。これらのポリマーは、ブロック、ランダム又は交互共重合体とすることもできる。
【0047】
安定化金属ナノ粒子及びポリマー結合剤を分散又は溶解して液体組成物を形成するために使用し得る液体は有機液体又は水を含む。模範的な有機液体としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、メシチレン、トリメチルベンゼン等の炭化水素溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テルピネオール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、シアノベンゼン、M,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル;及びそれらの組み合わせが挙げられる。有機液体の他の例としては、パラフィン溶媒、例えばエクソンモービル社により商品名ISOPARで製造されているn−パラフィン液、イソパラフィン液及びシクロパラフィン液が挙げられる。1〜3種又はそれ以上の液体を使用することができる。2種以上の液体を使用するいくつかの実施の形態では、各液体は任意の適切な体積比又はモル比にすることができ、例えば、第1液体と第2液体の比は約99:1〜約1:99の比にすることができる。
【0048】
液体組成物の成分は任意の適切な量で存在することができる。模範的な量としては、金属ナノ粒子及び安定剤が、ナノ粒子組成物の総重量に基づいて、約0.3%〜90%、又は約1%〜約70%の量で存在することを含む。ポリマー結合剤は、液体組成物の総重量に基づいて、約1%〜25%、約2%〜約20%、約2%〜10%、又は約5%〜約10%の量で存在することができる。液体組成物の残りの量は液体組成物の他の成分、例えば液体である。
【0049】
いくつかの実施の形態では、液体組成物に存在する安定剤は金属ナノ粒子の生成用の反応混合物から生じたものであり、安定剤は金属ナノ粒子の形成のために後から加えられない。他のいくつかの実施の形態では、金属ナノ粒子の形成に続いて同じ又は他の安定剤を、液体組成物の総重量に基づいて、約0.3%〜70%のような任意の適切な量で加えることができる。
【0050】
本明細書において、安定性とは金属ナノ粒子の液体組成物の沈殿又は凝集がないもしくは最低である期間を言う。ここでは、金属ナノ粒子の液体組成物は、約0℃〜約60℃の温度で、3時間以上、又約3時間〜約1月、約1月〜約3月、約1日〜約6月、又は約1週間〜1年超の安定性を有する。いくつかの実施の形態では、ここに記載する金属ナノ粒子の液体組成物は、約3時間〜約1日、約1日〜約1週間、約1日〜1月、約1日〜約6月、又は約1日〜1年超の安定性を有する。一実施の形態では、金属ナノ粒子の液体組成物は約25℃の温度で約2月以上の安定性を有する。別の実施の形態では、金属ナノ粒子の液体組成物は約25℃の温度で約3月以上の安定性を有する。別の実施の形態では、金属ナノ粒子の液体組成物は、その組成物が約60℃以下で保管されるとき、約7日以上の安定性を有する。
【0051】
金属ナノ粒子が銀である場合、銀ナノ粒子の液体組成物は、例えば約1日以上、又は3日〜約1週間、約5日〜約1月、約1週間〜約6月、又は約1週間〜1年超の安定性(即ち、銀含有ナノ粒子の沈殿又は凝集が最低である期間)を有する。
【0052】
液体組成物から導電性金属素子の上に導電性構造部を製造することは、基板上の他のオプション層の形成前又は後の任意の適切な時点で任意の適切な液体体積技術を用いて基板上に組成物を堆積することによって実行することができる。従って、組成物の基板上への液体堆積は基板の上又は薄膜トランジスタの半導体層及び/又は絶縁層等の層状材料が既に形成されている基板の上で生起させることができる。
【0053】
「液体堆積技術」という語句は、例えば液体コーティング又はプリント技術などの液体プロセスを用いる組成物の堆積を言い、この場合には液体は金属ナノ粒子及びポリマー結合剤の均一もしくは不均一分散体である。金属ナノ粒子(液体の形で存在する場合)は基板上に堆積するときインクと言うことができる。更に、液体組成物は基板上に任意の適切なパターンに堆積することができる。
【0054】
液体コーティングプロセスの例としては、例えばスピンコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、ディップコーティング等が挙げられる。プリント技術の例としては、例えばリソグラフィ又はオフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、テンシル印刷、インクジェット印刷、スタンピング(例えばミクロ接触印刷)等が挙げられる。いくつかの実施の形態では、液体組成物の液体堆積は、約5ナノメートル〜約1000マイクロメートル、約10ナノメートル〜約500マイクロメートル、約50ナノメートル〜約100マイクロメートル、約1マイクロメートル〜約50マイクロメートル、又は約5マイクロメートル〜約30マイクロメートルの範囲の厚さを有する組成物の層を堆積する。この段階での堆積液体組成物は相当の導電性を示すかもしれないし、示さないかもしれない。
【0055】
金属ナノ粒子は、例えば約10秒〜約1000秒の間、約50秒〜約500秒の間又は約100秒〜約150秒の間、例えば100回転/分(rpm)〜5000回転rpm、約500rpm〜約3000rpm又は約500rpm〜約2000rpmの速度で、金属ナノ粒子組成物から基板上にスピンコーティングすることができる。
【0056】
導電性構造部が堆積される基板は任意の適切な基板、例えばシリコン、ガラス板、プラスチックフィルム、シート、布又は紙とすることができる。構造的に可撓性のデバイス用としては、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドのシートなどのようなプラスチック基板を用いることができる。基板の厚さは、約10マイクロメートルから10ミリメートルを超えるものとすることができ、模範的な厚さは、特に可撓性プラスチック基板の場合には約50マイクロメートルから約2ミリメートルであり、ガラス又はシリコンのような剛性基板の場合には約0.4ミリメートルから約10ミリメートルである。
【0057】
堆積された組成物は、金属ナノ粒子を導電性素子として使用するのに適した導電性構造部を形成するように誘導又は「アニール」するために、例えば約140℃以下の温度、例えば約80℃〜約140℃、約80℃〜約130℃、約80℃〜約120℃、又は約80℃〜110℃の温度で加熱する。この加熱温度は、予め堆積された層又は基板(単層基板であろうと多層基板であろうと)の特性に不利な変化を生じない温度である。更に、上記の低い加熱温度は130℃以下のアニール温度を有する低コストのプラスチック基板の使用を可能にする。
【0058】
この加熱は、例えば1分から約10時間、約5分から約5時間、約10分から約3時間の範囲の時間に亘り実行できる。この加熱は、空気中で、不活性雰囲気中、例えば窒素又はアルゴン下で、又は還元雰囲気中、例えば1容量%から約20容量%の水素を含む窒素下で実行できる。この加熱は、標準気圧下で、又は例えば約1000mbarから約0.01mbarの減圧下で実行することもできる。
【0059】
本明細書で使用される「加熱」という用語は、(1)金属ナノ粒子をアニールする、及び/又は、(2)随意の安定剤を金属ナノ粒子から除去するのに十分なエネルギーを加熱された材料又は基板に与えることができる、あらゆる技術を包含する。加熱技術の例としては、熱的加熱(例えば、ホットプレート、オーブン、及びバーナ)、赤外(「IR」)放射、レーザビーム、マイクロ波放射、又はUV放射、又はそれらの組合せを含むことができる。
【0060】
加熱は多くの効果を生じる。加熱の前に、堆積された金属ナノ粒子の層は電気的に絶縁性もしくは極めて低い導電率であるが、加熱の結果、アニールされた金属ナノ粒子からなる導電性の層になり、導電率が増大する。いくつかの実施の形態では、アニールされた金属ナノ粒子は合体した又は部分的に合体した金属ナノ粒子になり得る。いくつかの実施の形態では、アニールされた金属ナノ粒子が合体なしで導電性の層を形成するのに十分な粒子同士の接触を達成するようにし得る。
【0061】
いくつかの実施の形態では、加熱後に得られる導電性層は、例えば約5ナノメートルから約5マイクロメートル、約10ナノメートルから約500マイクロメートル、約100ナノメートルから約200マイクロメートル、約1マイクロメートルから約100マイクロメートル、又は約5マイクロメートルから約25マイクロメートル、又は約10マイクロメートルから約20マイクロメートルの範囲の厚さを有する。
【0062】
堆積された液体組成物を加熱することによって生成される金属素子の導電率は、例えば約100ジーメンス/センチメートル(S/cm)以上、1000S/cm以上、2000S/cm以上、5000S/cm以上、又は10000S/cm以上である。
【0063】
得られる導電性素子は、電子デバイスの導電性電極、導電性パッド、導電性トレース、導電性トラック等として使用することができる。「電子デバイス」とは、薄膜トランジスタ、有機発光ダイオード、無線周波数識別タグ、光電池等のマクロ、ミクロ及びナノ電子デバイス及び導電性素子又は要素を必要とする他の電子デバイスを言う。
【0064】
いくつかの実施の形態では、液体組成物は薄膜トランジスタ(TFT)のソース及びドレイン電極等の導電性要素を製造するのに使用できる(米国特許第7,270,694号明細書及び同第7,494,608号明細書参照;各特許明細書は、TFT構成の記載について、参照することによりここに組み込まれる)。
【0065】
以下の実施例は本発明の種々の実施の形態を更に明らかにする。特に断らない限り、部及びパーセンテージは重量による。
【0066】
実施例1
20グラムの酢酸銀及び112グラムのドデシルアミンを1リットルの反応フラスコに加えた。この混合物を、ドデシルアミン及び酢酸銀が溶解するまで、約10〜0分間65度で加熱し、攪拌した。7.12グラムのフェニルヒドラジンをこの液体に強く攪拌しながら55℃で滴下して加えた。透明から暗褐色への液体の色の変化が銀ナノ粒子の形成を示す。混合物を更に1時間55℃で攪拌し、続いて40℃に冷ました。40℃に到達した後、480ミリリットルのメタノールを加え、得られた混合物を約10分間攪拌した。沈殿物をろ過し、メタノールで簡単に洗浄した。沈殿物を真空下において室温で夜通し乾燥させて、86,6重量パーセントの銀含量を有する14.4グラムの銀ナノ粒子を得た。
【0067】
実施例2
0.04グラムのポリスチレンを1.4グラムのトルエンに溶解した。ポリスチレンが完全に溶解した後、この溶液に2グラムの実施例1の銀ナノ粒子(58重量%)を加え、よく混ぜ合わせた。生成された組成物を2つのガラススライド上に異なる回転速度でスピンコートした。2つのガラススライド上にスピンコートされた膜を130度を超える温度で30分間加熱して、それぞれ1.4マイクロメートル及び3.2マイクロメートルの厚さを有する光沢のある鏡面状の膜を産出した。アニールした2つの膜の導電率は、通常の4プローブ技術を用いて測定したところ、それぞれ3.74×10S/cm(厚さ1.4マイクロメートル)及び2.31×10S/cm(3.2マイクロメートル)であった。銀ナノ粒子のコーティング溶液は室温で7日以上沈殿を生ずることなく安定であった。
【0068】
実施例3
0.08グラムのポリスチレンを1.4グラムのトルエンに溶解した。ポリスチレンが完全に溶解した後、この溶液に2グラムの実施例1の銀ナノ粒子(57重量%)を加えた。生成された組成物を2つのガラススライド上に異なる回転速度でスピンコートした。2つのガラススライド上にスピンコートされた膜を130度を超える温度で30分間加熱して、それぞれ7.2マイクロメートル及び15.3マイクロメートルの厚さを有する光沢のある鏡面状の膜を産出した。アニールした2つの膜の導電率は、通常の4プローブ技術を用いて測定したところ、それぞれ3.74×10S/cm(厚さ7.2マイクロメートル)及び1.14×10S/cm(15.3マイクロメートル)であった。銀ナノ粒子のコーティング溶液は室温で7日以上沈殿を生ずることなく安定であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に導電性構造部を形成する方法であって、該方法は、
金属化合物、還元剤及び安定剤を含む実質的に無溶媒の反応混合物内において前記安定剤の存在下で前記金属化合物を前記還元剤と反応させて、金属ナノ粒子表面に前記安定剤の分子を有する複数の金属ナノ粒子を形成する工程と、
前記金属ナノ粒子表面に前記安定剤の分子を有する前記複数の金属ナノ粒子を分離させる工程と、
ポリマー結合剤、液体及び前記金属ナノ粒子表面に前記安定剤の分子を有する前記複数の金属ナノ粒子を含む液体組成物を生成する工程と、
前記液体組成物を液体堆積により前記基板上に堆積して堆積された組成物を形成する工程と、
前記堆積された組成物を加熱して前記基板上に前記導電性構造部を形成する工程と、
を備える導電性構造部の形成方法。
【請求項2】
ポリマー結合剤、液体及び金属ナノ粒子表面に安定剤の分子を有する複数の金属ナノ粒子を含む液体組成物であって、前記金属ナノ粒子は、金属化合物、還元剤及び安定剤を含む実質的に無溶媒の反応混合物内における前記安定剤の存在下での前記金属化合物と前記還元剤との反応の生成物である、液体組成物。
【請求項3】
基板上に導電性構造部を形成する方法であって、該方法は、
金属化合物、還元剤及び安定剤を含む実質的に無溶媒の反応混合物内において前記安定剤の存在下で前記金属化合物を前記還元剤と反応させて、無溶媒の還元処理中に金属ナノ粒子表面に安定剤の分子を有する複数の金属ナノ粒子を形成する工程と、
前記金属ナノ粒子表面に前記安定剤の分子を有する前記複数の金属ナノ粒子を分離させる工程と、
ポリマー結合剤、液体及び前記金属ナノ粒子表面に前記安定剤の分子を有する前記複数の金属ナノ粒子を含む液体組成物を生成する工程と、
前記液体組成物を液体堆積により前記基板上に堆積して堆積された組成物を形成する工程と、
前記堆積された組成物を加熱して前記基板上に約1マイクロメートルから約100マイクロメートルの厚さを有する導電性構造部を形成する工程と、
を備える導電性構造部の形成方法。

【公開番号】特開2011−119259(P2011−119259A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268878(P2010−268878)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】