説明

圧電デバイス

【課題】 圧電デバイスの小型化に寄与して且つ組立性を向上し、高機能化が可能な構造の圧電デバイスを提供する。
【解決手段】 パッケージ本体1は、矩形平板状のパッケージベース1aの上側に矩形環状のパッケージ上層1b、下側に矩形環状のパッケージ下層1cがそれぞれ積層され、各々凹部が形成されている。パッケージベース1aの上面の凹部底面に設けられたマウント電極3には導電性接着剤130によって圧電振動片40が実装され、この凹部上面には、シールリング5を介してパッケージ蓋体2が接合されて、パッケージ内部が気密を保って封止されている。パッケージベース1aの下面の凹部底面に設けられたマウント電極4a,4bには、基板65に電子部品50a〜50fが接合された回路モジュール60が実装されて、封止樹脂110によって樹脂封止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片及び電子部品をパッケージ内に内蔵した圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種情報・通信機器やOA機器、また、民生機器等の電子機器には、圧電振動片を備えた圧電デバイスが使用されている。特に最近は、モバイルコンピュータ等の携帯型情報機器や、携帯電話に代表される携帯型通信機器の分野で、装置の高機能化と共に小型化の進展が著しく、これに伴なって、圧電デバイスの高機能化及び小型化が図られている。圧電デバイスの高機能化においては、例えば圧電デバイスの一例としての水晶発振器には、水晶振動片のみならず、発振回路、周波数調整回路、温度補償回路等を備えていることが望まれている。
【0003】
このような小型化、及び高機能化のニーズに応える圧電デバイスとして、圧電振動片とその他の回路を構成する電子部品が同一パッケージ内に備えられた圧電デバイスが提案されている。例えば、特許文献1に示された圧電デバイスは、パッケージ本体内の内部支持台の電極パッド上に、水晶振動子(水晶振動片)が導電性接着剤を介して片持ち状態で支持固定されている。また、パッケージ本体の外底面には凹陥部(凹部)が設けられ、且つ、凹陥部の天井面には所定の間隔を隔てて対向配置された対向電極が形成されている。そして、該対向電極間には、電子部品としてのチップ型コンデンサが実装されていて、これらの水晶振動子及び電子部品は、パッケージ本体内部を貫通する導電パターンによって電気的に接続されていると共に、パッケージ本体外部に露出したパッケージ電極端子(ユーザ端子)に接続されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−145768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の圧電デバイスの構造では、パッケージ本体の凹陥部に電子部品を接合するときに、凹陥部を囲む側壁が阻害要因となって作業性が悪く、これは圧電デバイスの高機能化を図るうえで電子部品点数を増やすほどに顕著化する問題であった。例えば、導電性接着剤や半田ペーストを塗布する際に使用するディスペンサのニードル部や、電子部品を仮搭載する際に使用するチップマウンタのノズル、またはワイヤボンディングする際のワイヤボンダのキャピラリ等が、パッケージ本体の側壁に緩衝して作業性を悪化させる危険性があった。このため、パッケージ本体の凹底部の側壁寄りには電子部品を配置することができず、一定のデッドスペースを設けなければならないという制約が生じるため、特に、圧電デバイスの平面方向の小型化に不利となってしまうという問題があった。
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであって、その目的は、圧電デバイスの小型化に寄与して且つ組立性を向上させ、高機能化が可能な構造の圧電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、パッケージベースの両面にそれぞれ凹部が形成され、該凹部のそれぞれに複数の電極が設けられたパッケージ本体と、凹部の一方の凹部に配置された圧電振動片と、他方の凹部に配置された複数の電子部品が接合された基板と、圧電振動片が配置された一方の凹部内を気密に封止する蓋体と、を備え、圧電振動片及び基板が、それぞれ凹部に設けられた複数の電極に電気的に接続されていることを主旨とする。
【0007】
この構成によれば、まず、パッケージ本体の凹部内に搭載する複数の電子部品を、一旦基板上に実装してから、この基板をパッケージ本体の凹部内に搭載した。これにより、従来のパッケージ本体の凹底部分に電子部品を直接搭載する方式の場合に、パッケージ本体の側壁部分が障害物となって困難であった側壁部分近傍への各種電子部品の配置が可能となる。また、圧電振動片と各種電子部品を搭載した基板を縦配置していることにより、特に平面方向の実装面積を小さくすることができる。この結果、電子部品及び圧電振動片を省スペースにてパッケージ本体の内部に搭載することができるので、高機能を付与した圧電デバイスを、特に平面方向の小型化を図りながら提供することが可能となる。
さらに、圧電振動片と電子部品が接合された基板が、それぞれパッケージベースで隔てられた別個の凹部内に搭載されていることから、圧電振動片に、電子部品と基板の接合工程や基板をパッケージ本体に搭載する工程で生ずるフラックス汚染や半田等の導電物の飛散等の影響が及び難いという効果を奏する。
また、各種電子部品を搭載した基板の回路配線設計により、電子部品搭載基板の汎用性を持たせることも可能であるため、別機種の圧電デバイスに用いることも可能となり、圧電デバイス製造の低コスト化や、新規圧電デバイスの量産化における納期短縮等に寄与することが可能となる。
【0008】
本発明では、基板が、電子部品の接合面をパッケージベースの反対側に向けて電極に接合されている構成としてもよい。
【0009】
この構成によれば、パッケージ内に、圧電振動片と、各種電子部品を搭載した基板とが、パッケージベースにより隔てられて縦配置にて搭載される本発明の構造において、パッケージ本体の両面に形成した凹底部のそれぞれに電極を設け、各々に圧電振動片と電子部品を搭載した基板を接合すればよい。この結果、パッケージ本体の構造を単純化できるという効果を奏する。
【0010】
本発明では、基板が、電子部品の接合面をパッケージベース側に向けて電極に接合されている構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、電子部品を搭載する基板は片面配線基板であればよく、圧電振動片と、各種電子部品を搭載した基板とが、パッケージベースを介して縦配置にて搭載される小型で高機能を付与した圧電デバイスを、低コストにて製造することが可能となる。
【0012】
本発明では、基板に接合された電子部品が樹脂封止されていることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、基板に接合されている複数の電子部品が封止樹脂によって封止されて、パッケージ本体の凹底部に搭載されている。これにより、例えば、基板に電子部品を半田により接合する際に発生する半田ボールや半田屑などの導電性を有した異物が、電気的な短絡等の原因となる危険性を回避することができる。また、基板や電子部品、及び半田接合に使用されるフラックス等の残留物等が移動若しくは気化するなどして、回路の腐蝕等の悪影響を及ぼす危険性を回避すること等が可能となる。従って、高信頼性を有する圧電デバイスを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る圧電デバイスの第1の実施形態について図面に従って説明する。
【0015】
図1(a)は、本発明の圧電デバイスの第1の実施形態の構造を示す構造図であって、同図(a)は正面図、同図(b)は同図(a)中のA−A断面図、同図(c)は底面図である。なお、図1(a)では、パッケージ内部の構造を説明する便宜上、上部を覆っているパッケージ蓋体は図示を省略している。
【0016】
圧電デバイス10は、パッケージベース1aの両面に凹部がそれぞれ形成されたパッケージ本体1を備え、パッケージベース1aの一方の面(上面)の上端に、金属薄板のパッケージ蓋体2が接合されたパッケージ構造を有している。パッケージベース1aの上面側のパッケージ内(凹部)の底面にはマウント電極3a,3bが備えられ、このマウント電極3a,3bには、水晶からなる圧電振動片40が実装されている。そして、圧電振動片40が実装されたパッケージ本体1の上面には、シールリング5を介してパッケージ蓋体2が接合され、パッケージ内部の気密を保って封止されている。一方、パッケージベース1aの他方の面(下面)の凹部内にはマウント電極4a,4bが備えられている。このマウント電極4a,4bには、複数対のパターン電極62a〜62lを有する基板65に、電子部品50a〜50fがそれぞれ接合されて電気回路が構成されている回路モジュール60が実装されている。回路モジュール60が実装されたパッケージベース1aの下面の凹部には封止樹脂110が充填され、回路モジュール60が樹脂封止されている。
【0017】
パッケージ本体1について詳述すると、アルミナ等のセラミック材料で形成されたパッケージ本体1は、矩形平板状のパッケージベース1aと、パッケージベース1aの上面側に積層された矩形環状のパッケージ上層1bと、パッケージベース1aの下面側に積層された矩形環状のパッケージ下層1cとで構成されている。
パッケージ上層1bによって形成された凹部の底面となるパッケージベース1aの上面には、圧電振動片40を接合するための一対の対向電極であるマウント電極3a,3bが設けられている。マウント電極3a,3bは、後述するように圧電振動片40の一端部に接合され、圧電振動片40の他端部をパッケージベース1aの上面から浮かせて片持ち支持させるようにするために、所定の厚みを有して形成されている。なお、圧電振動片40を片持ち支持するために、パッケージベース1aとパッケージ上層1bの間に、パッケージ上層1bよりも開口部の面積が小さな矩形環状のパッケージ層を積層させて、その増設したパッケージ層の上面の棚部にマウント電極を形成する構成としてもよい。
一方、パッケージ下層1cによって形成された凹部の底面となるパッケージベース1aの下面には、回路モジュール60を接合するためのマウント電極4a,4bが設けられている。マウント電極4a,4bと、上記したマウント電極3a,3bとは、パッケージ本体1のパッケージベース1a、パッケージ上層1b、パッケージ下層1cに設けられた図示しない内部配線によって一部導通がとられ、ひとつの回路が構成されている。また、該内部配線の一部は、パッケージ下層1cに形成された図示しないスルーホールに接続されていて、該スルーホールは、パッケージ下層1cの底部に形成された図示しない外部接続端子(ユーザ端子)と電気的に接続されている。
【0018】
回路モジュール60は、ガラスエポキシ樹脂などからなる絶縁性を有する基材61の両面に、フォトリソグラフィー等の方法により電極及び配線パターンが形成された基板65を備えている。詳述すると、基材61の上面側(メインパターン形成面61a)には、複数対の対向電極であるパターン電極62a〜62lが形成されている。本実施形態の回路モジュール60においては、パターン電極62aと62b,62cと62d,62eと62f,62gと62h,62iと62j,62kと62l、が、それぞれ対向電極として対をなしている。このように複数の電極対をなしたパターン電極62a〜62lには、それぞれの電極対に対応する電子部品50a〜50fが、図示しない半田により接続されている。電子部品50a〜50fには、例えば、回路に流れる電流値の制御に供するチップ抵抗、回路の電圧の安定化に供するチップコンデンサ、圧電振動片40の動作の温度補正に供するチップサーミスタ、等がある。一方、基板65の他方の面(裏面61b)には、外部接続端子63a,63bが形成されている。外部接続端子63a,63bは、基材61に形成された図示しないスルーホールによって、メインパターン形成面61a上の図示しない配線パターンと導通している。そして、回路モジュール60は、外部接続端子63a,63bと、それぞれに対応するパッケージベース1aの下面に形成されたマウント電極3a,3bとが、図示しない半田によって接合されることによって固定されている。
上記のように、回路モジュール60が接合されたパッケージベース1aの下側の凹部には封止樹脂110が充填され、樹脂封止されている。
【0019】
圧電振動片40は、水晶からなる矩形の薄板の表裏各面に形成された図示しない励振電極と、該励振電極から引き出された図示しない一対の接続電極とを有している。圧電振動片40は、パッケージベース1aの上面に設けられたマウント電極3a,3b上に、それぞれ対応する接続電極を位置決めして導電性接着剤130によって接合され、略水平に片持ち支持されている。
なお、圧電振動片40の一対の接続電極と、それぞれに対応するパッケージ本体1のマウント電極4a,4bとの接続方法は、導電性接着剤を用いる方法に限らず、半田付けやその他の接合方法を用いてもよい。
圧電振動片40が接合されたパッケージ上層1bの上面には、シールリング5を介してパッケージ蓋体2が接合され、パッケージ本体1の内部は、真空あるいは窒素等の不活性ガスが充填されていて、パッケージ内部が気密を保って封止されている。
【0020】
次に、上記の圧電デバイス10を製造する方法について、図面に従って説明する。
図2は、本実施形態の圧電デバイス10の製造工程のフローチャート図である。
【0021】
ステップS1では、基板65に各電子部品50a〜50fをSMT(Surface Mount Technology)によって実装し、回路モジュール60を製造する。回路モジュール60の製造は、まず、基板65のパターン電極62a〜62lに、スクリーン印刷法によって半田ペーストを所定量塗布する。次に、対をなすパターン電極62aと62b,62cと62d,62eと62f,62gと62h,62iと62j,62kと62lの、それぞれに対応する電子部品50a〜50fを、チップマウンタ等を用いて所定位置に位置決めする仮搭載を行なう。次に、各電子部品50a〜50fが仮搭載された基板65を、リフロー炉等によって半田溶融温度等を考慮した温度プロファイルにて加熱することにより、半田を溶融させて電子部品50a〜50fを接合させる。そして、有機溶剤等からなる洗浄液によって回路モジュール60を洗浄し、半田ペーストに含有されたフラックスや、半田リフローによって発生する半田ボール等を除去する(ステップS2)。
【0022】
ステップS3では、回路モジュール60の検査を行なう。検査は、外観検査、電気特性検査などの方法により、各電子部品50a〜50fが適正に接合されているか否かを判定する。電子部品の接合不良が発見された場合には(ステップS4でNo)、当該箇所の修正を行ない(ステップS14)、ステップS2の回路モジュール洗浄工程に再投入される。なお、ステップS4で発見された不良箇所が修正不可能な状態となった場合には、不良品として分別される。
【0023】
回路モジュール60の検査にて、電子部品50a〜50fが適正に接合されていると判定された場合(ステップS4でYes)には、ステップS5に進んで、パッケージ本体1に回路モジュール60を搭載する。まず、パッケージベース1aの下面側のマウント電極4a,4bに、ディスペンサ等によって半田ペーストを所定量塗布し、次に、回路モジュール60の外部接続端子63a,63bを、それぞれ対応するパッケージベース1aのマウント電極4a,4b上に位置決めして仮搭載する。次に、リフロー炉等によりパッケージ本体1を加熱して半田接合をおこない、パッケージ本体1への回路モジュール60の搭載が完了する。そして、有機溶剤等からなる洗浄液によって、回路モジュール60が搭載されたパッケージ本体を洗浄し、フラックス等の汚染物質や付着物等を除去する(ステップS6)。
【0024】
次に、ステップS7では、回路モジュール60が搭載されたパッケージベース1aの下面側の凹部に、ディスペンサ等によって液状の封止樹脂110を注入して樹脂封止する。このとき、パッケージ本体1を所定温度に加温して、パッケージベース1aの下面側がパッケージ下層1cで囲まれた凹部内と回路モジュールを、封止樹脂のガラス転移点付近の温度になるようにすると、液状の封止樹脂110の充填性が向上して気泡やボイドが発生し難くなるので好ましい。そして、パッケージ本体1を加温しながら所定時間放置するなどして、液状の封止樹脂110に内包された気泡等を除去した後、所定温度の乾燥炉等に入れて所定時間加熱し、液状の封止樹脂110を固化させて樹脂封止を完了する。
【0025】
ステップS8では、パッケージ内に圧電振動片40を搭載する。まず、パッケージベース1aの上面側に形成されたマウント電極3a,3b上に所定量の導電性接着剤130を塗布し、圧電振動片40の接続電極を、それぞれ対応するマウント電極3a,3bに位置決めして、略水平になるように仮搭載する。次に、導電性接着剤130を接合部に十分に補充してから、乾燥炉等にて熱雰囲気に所定時間曝すなどして導電性接着剤130を乾燥させ、圧電振動片40を固定し、且つ電気的に接続させて搭載を完了させる。
【0026】
ステップS9では、純水等により、圧電振動片40の付着物の除去を目的とする洗浄を行なう。次に、パッケージ本体1を介して回路モジュール60と電気的に接続された圧電振動片40の周波数を、所望の値に調整する周波数調整をおこなう(ステップS10)。
【0027】
ステップS11では、圧電振動片40及び回路モジュール60が搭載されたパッケージ本体1を、所定温度の乾燥炉に所定時間入れて乾燥させるベーキングを行なう。続いて、ステップS12では、パッケージ本体1の内部を真空にするか、窒素等の不活性ガスを充填させながら、パッケージ本体1の上面に、シールリング5を介して金属製のパッケージ蓋体2を接合し、パッケージ本体1の内部の気密が保たれるように封止して圧電デバイス10を得る。
【0028】
ステップS13では、圧電デバイス10の電気的特性が所定の範囲内にあるか否かを確認する電気特性検査を行い、圧電デバイス10の一連の製造工程を終了する。
【0029】
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
【0030】
(1)上記実施形態では、圧電振動片40とともに圧電デバイス10を構成する複数の電子部品50a〜50fを、まず、基板65に接合させて回路モジュール60を得た。そして、圧電振動片40の接続電極を、それぞれ対応するパッケージベース1aの上面側に形成したマウント電極4a,4bに接合し、回路モジュール60を、パッケージベース1aの下面側に形成されたマウント電極3a,3bに接合する構成とした。
【0031】
この構成によれば、従来の、パッケージ本体1の凹底部分に電子部品50a〜50fを直接搭載する方式の場合に、パッケージ本体1の側壁部分が障害物となって困難であった側壁部分近傍への各種電子部品の配置が可能となる。また、圧電振動片40と回路モジュール60が、平面視で重なり合う位置関係にあるので、圧電デバイス10の、特に平面方向の実装面積を小さくすることができる。この結果、電子部品50a〜50f及び圧電振動片40を省スペースにてパッケージ本体1の内部に搭載することができるので、高機能を付与した圧電デバイス10の、特に平面方向の小型化を図ることが可能となる。
また、回路モジュール60は、基板65の回路配線設計によって汎用性を持たせることも可能であるため、別機種の圧電デバイスに用いることも可能となり、圧電デバイス製造の低コスト化や、新規圧電デバイスの量産化における納期短縮等に寄与することが可能となる。
さらに、圧電振動片40と回路モジュール60が、それぞれパッケージ本体1のパッケージベース1aで隔てられた別個の凹部内に搭載されていることから、回路モジュール60の実装工程で生ずるフラックス汚染や半田等の導電物の飛散等の影響が、圧電振動片40に及び難いという効果を奏する。また、必要に応じて、パッケージ本体1に圧電振動片40を搭載した状態で、回路モジュール60の交換や半田修正等をすることも可能である。
【0032】
(2)上記実施形態では、基板65に各電子部品50a〜50fを接合する方法として、SMTによる半田実装方式を採用した。
この結果、例えば、多数個取りの基板を用いて、半田ペーストの塗布にはスクリーン印刷法が適用できること等により、効率的かつ高品質な電子部品実装が可能となる。また、回路モジュール60は、各電子部品50a〜50fが半田により接合されているので、検査工程にて半田付け不良が発見された場合には、当該箇所を修正して良品とすることもできる。従って、圧電デバイス10の効率的な製造と低コスト化に寄与することが可能となる。
【0033】
(3)上記実施形態では、基板65に各電子部品50a〜50fを実装した回路モジュール60を、洗浄液でフラックス洗浄してから、パッケージ本体1に搭載する構成とした。この結果、従来のパッケージ本体1の凹底部分に各電子部品50a〜50fを実装する場合に、該凹底部分にフラックス残渣が発生し易いという問題が解消でき、高い洗浄性を確保できるので、フラックス残渣による基板65の回路配線のマイグレーション等を抑制することが可能となる。従って、高信頼性を有する圧電デバイス10を得ることが可能となる。
【0034】
(4)上記実施形態では、パッケージベース1aの下面側にパッケージ下層1cを積層することによって形成された凹部の底面に実装された回路モジュール60が、封止樹脂110によって封止されている。これにより、例えば基板65に各電子部品50a〜50fをSMTにより実装する際に発生する半田ボールや半田屑などの導電性を有した異物が、回路モジュール洗浄工程(図4のステップS22)で除去しきれずに残留した場合等に、該導電性を有する異物が、電気的な短絡等の悪影響を及ぼす危険を回避することができる。また、基板65や各電子部品50a〜50f、及びSMTにより実装した際のフラックス等の残留物等のアウトガスが発生して圧電振動片40に付着すること等により、振動特性等に悪影響を及ぼす等の不具合を回避することが可能となる。従って、振動特性に優れ、高信頼性を有する圧電デバイス10を提供することが可能となる。
【0035】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、複数の電子部品50a〜50fが実装された回路モジュール60をパッケージ本体1に搭載してから封止樹脂110により樹脂封止する構成の圧電デバイス10について説明したが、これに限定されない。回路モジュールに実装された複数の電子部品及び基板との接合部分を樹脂封止してから、パッケージ本体1に搭載する構成としてもよい。
【0036】
図3(a)は、樹脂封止された回路モジュールが搭載された圧電デバイスの構造を説明するための底面図、同図(b)は、その圧電デバイスの図3(a)中のA´−A´断面図、図4は、本第2の実施形態の圧電デバイス20の製造工程を示すフローチャート図である。なお、本第2の実施形態の圧電デバイス20の構成のうち、上述した第1の実施形態と同様の構成については同一符号を用いて説明し、同一の構成については説明を省略する。
図3において、圧電デバイス20は、パッケージベース1aの上面側の凹底部に圧電振動片40が実装され、その上面には、シールリング5を介してパッケージ蓋体2が接合されている。パッケージベース1aの下面側の凹部内に備えられたマウント電極4a,4bには、基板65に接合された電子部品50a〜50fが封止樹脂120で樹脂封止された樹脂封止型回路モジュール70が接合されている。
【0037】
樹脂封止型回路モジュール70は、基板65のメインパターン形成面61aに形成された複数の対をなすパターン電極62a〜62lに、それぞれに対応する電子部品50a〜50fが半田接合により接合されている。また、メインパターン形成面61aにおいて、各電子部品50a〜50f及びその接合部は、封止樹脂120によって樹脂封止されている。一方、基板65の裏面側には外部接続端子63a,63bが形成され、メインパターン形成面61aの配線パターンと図示しない導通性を有したスルーホールによって導通している。そして、樹脂封止型回路モジュール70は、パッケージ本体1のパッケージベース1aの下面に形成されたマウント電極4a,4bと、それぞれに対応する外部接続端子63a,63bとが位置決めされ、図示しない半田によって接合され、固定されている。
【0038】
次に、上記の圧電デバイス20を製造する方法について、図面に従って説明する。
図4は、本実施形態の圧電デバイス20の製造工程のフローチャート図である。
ステップS21では、基板65に、各電子部品50a〜50fをSMTにより実装して回路モジュールを製造する。
ステップS22では、有機溶剤等からなる洗浄液によって回路モジュールを洗浄する。
【0039】
ステップS23では、回路モジュールを、キャビティが形成された上下の樹脂封止金型で挟み込み、封止樹脂120をキャビティに注入して充填させるトランスファモールド法によって樹脂封止し、樹脂封止型回路モジュール70を得る。このとき、封止樹脂120の塗布厚みは、樹脂封止型回路モジュール70をパッケージ本体1に接合したときに、封止樹脂120の上面(図中では下側になる面)が、パッケージ下層1cよりも外側に出ないように制御する。なお、樹脂封止方法はトランスファモールド法に限らず、例えばディスペンサで封止樹脂を吐出させて塗布するポッティング法等、他の樹脂封止方法を用いてもよい。
【0040】
ステップS24では、樹脂封止型回路モジュール70の検査を行なう。検査は、封止樹脂の未充填等の外観的な良否を判定する外観検査と、回路モジュールの電気特性の良否を判定する電気特性検査方法があり、このうち少なくとも一方を行なう。検査にて不良と判定された場合には(ステップS25でNo)、不良品として分別される(ステップS34)。
【0041】
樹脂封止型回路モジュール70の検査にて良品と判定された場合(ステップS25でYes)には、ステップS26に進んで、パッケージ本体1のパッケージベース1a上面のマウント電極3a,3bに、それぞれ対応する樹脂封止型回路モジュール70の外部接続端子63a,63bを位置合わせして半田接合することにより、樹脂封止型回路モジュール70が搭載される。次に、有機溶剤等からなる洗浄液によって洗浄し、フラックス等を除去する(ステップS27)。
【0042】
ステップS28では、パッケージ本体1のパッケージベース1aの上面側に形成されたマウント電極3a,3bに導電性接着剤130を所定量塗布し、マウント電極3a,3bと、それぞれ対応する圧電振動片40の接続電極とを位置合わせして、圧電振動片40を略水平に保って片持ち支持にて仮搭載する。そして、導電性接着剤130を固化させることにより、圧電振動片40は電気的に接続されながら搭載される。
【0043】
ステップS29では、純水等により圧電振動片40の洗浄を行ない、次に、圧電振動片40の周波数調整をおこなう(ステップS30)。
続いて、ステップS31では、圧電振動片40及び樹脂封止型回路モジュール70が搭載されたパッケージ本体1を、所定温度の乾燥炉に所定時間入れてベーキングを行なう。
【0044】
ステップS32では、パッケージ本体1の上面に、シールリング5を介してパッケージ蓋体2を接合し、パッケージ内部を真空にするか、窒素等の不活性ガスを充填して気密封止し圧電デバイス20を得る。そして、圧電デバイス20の電気特性検査を行い(ステップS33)、一連の製造工程を終了する。
【0045】
この構成によれば、基板65に各電子部品50a〜50fを実装した回路モジュールにトランスファモールド法等によって樹脂封止するため、上記第1の実施形態のようにパッケージ本体1の凹部内に封止樹脂110を注入する方法よりも、封止樹脂の充填性を確保し易い。また、圧電デバイス20を組立てから行なう電特検査や外観検査にて樹脂封止型回路モジュール70の不良が発見された場合に、半田修正や回路モジュールの交換をすることが可能となる。
【0046】
本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、以下の変形例を実施することもできる。
【0047】
(変形例1) 上記第1及び第2の実施形態では、回路モジュール60及び樹脂封止型回路モジュール70に用いる基板65に両面配線基板を使用した。そして、メインパターン形成面61aに形成された複数対のパターン電極62a〜62lに、それぞれ対応する電子部品50a〜50fを実装し、基板65の裏面61bに形成された外部接続端子63a,63bによって回路モジュール60または樹脂封止型回路モジュール70がパッケージ本体1に実装される構造の圧電デバイス10,20について説明したが、これに限定されない。基板には片面配線基板を用いて、パターン電極と外部接続端子を同一面に設ける構成としてもよい。
【0048】
図5は、回路モジュールが電子部品搭載面に設けた外部接続端子により、パッケージ内に搭載された圧電デバイスの構造を説明するため断面図である。
圧電デバイス30は、パッケージベース101aに対して、上側に第一の凹部を有し、下側にひとつの段差が形成された凹部を有するパッケージ本体101を備えている。パッケージ本体101の上側の第一の凹部には圧電振動片40が実装され、第一の凹部の上端に、シールリング5を介してパッケージ蓋体102が接合されたパッケージ構造を有し、パッケージ内は気密に封止されている。また、パッケージ本体101の下側の第二の凹部に形成された段差の上面の棚部には、回路モジュール80が実装されている。そして、第二の凹部は封止樹脂110で樹脂封止されている。
【0049】
パッケージ本体101は、矩形平板状のパッケージベース101aの上面に矩形環状のパッケージ上層101bが積層されて凹部が形成され、この凹部の底面には圧電振動片40を接合するためのマウント電極103が設けられている。また、パッケージベース101aの下面には、矩形環状のパッケージ第一下層101cと、パッケージ第一下層101cよりも開口部の面積が小さく形成された矩形環状のパッケージ第二下層101dが積層され、パッケージ第一下層101cの上面(図5では下向きの面)には平面視で矩形環状の棚部が形成されている。パッケージ第一下層101cの上面の棚部には回路モジュール80を接合するためのマウント電極104a,104bが設けられている。
【0050】
圧電振動片40は、図示しない励振電極から引き出された図示しない一対の接続電極を、それぞれ対応するパッケージ第一下層101cの上面の棚部に設けられたマウント電極103上に位置決めされ、導電性接着剤130によって接合されている。これにより、圧電振動片40は、回路モジュール80の上方に位置しながら、略水平に片持ち支持されている。そして、パッケージ本体101の上側の凹部を形成しているパッケージ上層101bの上面には、シールリング5を介してパッケージ蓋体102が接合され、圧電振動片40が接合されたパッケージ内部は気密を保って封止されている。
【0051】
回路モジュール80は、絶縁性を有する基材81の片面(パターン形成面81a)に、電子部品50a〜50f(50a〜50cのみ図示)を接合するための複数の対をなすパターン電極82a〜82l(82a,82b,82cのみ図示)と、回路モジュール80をパッケージ本体101に接合するための外部接続端子83a,83bとが形成された、基板85を備えている。複数対のパターン電極82a〜82lには、それぞれの電極対に対応する電子部品50a〜50fが、図示しない半田により接続されている。回路モジュール80は、外部接続端子83a,83bと、それぞれに対応するパッケージ本体101のパッケージ下層1c上面の棚部のマウント電極104a,104bとが、図示しない半田によって接合されることにより、パッケージ本体101に固定されている。すなわち、回路モジュール80は、パッケージ本体101の下側の凹部において電子部品50a〜50fの搭載面を凹底部に向け、各電子部品50a〜50fの厚みを該凹部に逃がすように搭載されている。そして、回路モジュール80が接合されたパッケージ本体101の下側の凹部には封止樹脂110が充填され、樹脂封止されている。
【0052】
この構成によれば、回路モジュール80に用いる基板85は片面配線基板であればよいので、パッケージ本体101に圧電振動片40と回路モジュール80とが搭載された小型で高機能を付与した圧電デバイス30を、低コストにて製造することが可能となる。
【0053】
(変形例2) 上記変形例1では、片面配線基板である基板85を用いた回路モジュール80をパッケージ本体101に搭載してから、この搭載部分である凹部を樹脂封止する構成の圧電デバイス30について説明したが、これに限定されない。回路モジュール80の電子部品搭載部を樹脂封止して樹脂封止型回路モジュールとし、この樹脂封止型回路モジュールをパッケージ本体101に搭載する構成としてもよい。
【0054】
この構成によれば、片面配線基板を用いた回路モジュールを備えた圧電デバイスにおいて、電子部品搭載部分を回路モジュール形態にて樹脂封止することができるので、パッケージ本体の凹部内に封止樹脂注入する方法よりも封止樹脂の充填性を確保し易く、また、圧電デバイスを組立てた後からも回路モジュールの電子部品搭載部の半田修正や、回路モジュールの交換をすることができる。従って、圧電デバイスの高信頼性の確保と、製造コストの低減が可能となる。
【0055】
(変形例3) 上記第1及び第2の実施形態では、パッケージ本体1(101)に設けられたマウント電極4a(104a),4b(104b)に、回路モジュール60(30)または樹脂封止型回路モジュール70を接続する際に、半田によって接合する方法を示したが、これに限定されない。例えば、導電性接着材を用いて回路モジュール60(80)または樹脂封止型回路モジュール70を接合する等、半田接合以外の接合方法を用いる構成としてもよい。
この構成によれば、半田ペーストを使用しないので、回路モジュール60(80)または樹脂封止型回路モジュール70を搭載した後にフラックス洗浄をする必要がなくなり、製造工程を簡略化することが可能となる。
【0056】
(変形例4) 上記第1及び第2の実施形態では、基板65(85)に各電子部品50a〜50fを、SMTによって半田接合する構成としたが、これに限らない。導電性接着剤を用いたり、ACF(Anisotropic Conductive Film)等の電気的接合材料を使って接合するなどの、他の接合方式を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)は、本発明の圧電デバイスの第1の実施形態の構造を説明する正面図。(b)は、図1(a)のA−A線断面図。(c)は、底面図。
【図2】本発明の圧電デバイスの第1の実施形態の製造工程のフローチャート図。
【図3】本発明の圧電デバイスの第2の実施形態の構造を説明する正面図。(b)は、図3(a)のA´−A´線断面図。
【図4】本発明の圧電デバイスの第2の形態の製造工程のフローチャート図。
【図5】本発明の圧電デバイスの変形例の構造を説明する正面図。
【符号の説明】
【0058】
1,101…パッケージ本体、1a,101a…パッケージベース、2,102…蓋体としてのパッケージ蓋体、3a,3b,103…圧電振動片が接合される電極であるマウント電極、4a,4b,104a,104b…基板が接合される電極であるマウント電極、10,20,30…圧電デバイス、62a〜62l,82a〜82l…基板の電極であるパターン電極、65,85…基板、50a〜50f…電子部品、110,120…基板に接合された電子部品を樹脂封止するのに用いる封止樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージベースの両面にそれぞれ凹部が形成され、該凹部のそれぞれに複数の電極が設けられたパッケージ本体と、
前記凹部の一方の凹部に配置された圧電振動片と、
前記凹部の他方の凹部に配置された複数の電子部品が接合された基板と、
前記圧電振動片が配置された前記一方の凹部内を気密に封止する蓋体と、を備え、
前記圧電振動片及び前記基板が、それぞれ前記凹部に設けられた前記複数の電極に電気的に接続されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電デバイスにおいて、
前記基板が、前記電子部品の接合面を前記パッケージベースの反対側に向けて前記電極に接合されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の圧電デバイスにおいて、
前記基板が、前記電子部品の接合面を前記パッケージベース側に向けて前記電極に接合されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧電デバイスにおいて、
前記基板に接合された電子部品が樹脂封止されていることを特徴とする圧電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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