説明

圧電マイクロブロア

【課題】吐出口の位置を筐体の中心部から変更することができる圧電マイクロブロアを提供する。
【解決手段】ブロア筐体1と圧電素子21を有するダイヤフラム20との間にブロア室5を形成し、圧電素子に電圧を印加してダイヤフラムを屈曲振動させることにより、ブロア室から空気を吐出する圧電マイクロブロアである。ブロア室は楕円形に形成され、楕円形の一方の焦点F1にダイヤフラムの最大変位点が位置するようにし、楕円形の他方の焦点F2の位置に開口部41を形成する。ダイヤフラムにより発生した圧力波がブロア室の内周壁で反射し、開口部より排出される際に周囲の空気を巻き込んで空気流として吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気のような流体を輸送するのに適した圧電マイクロブロアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型の電子機器では小型化と部品の高密度実装化に伴って、電子機器内部で発生する熱の放熱対策が課題になっている。このような電子機器の熱を効率よく放出する手段として、圧電マイクロブロアが知られている。圧電マイクロブロアは、圧電素子への電圧印加により屈曲変形するダイヤフラムを用いたポンプの一種であり、構造が簡単で、薄型に構成でき、かつ低消費電力であるという利点がある。
【0003】
特許文献1には、ステンレス鋼製ディスク上に取り付けられた圧電ディスクを有する超音波駆動体と、超音波駆動体を取り付けた第1のステンレス鋼膜体と、超音波駆動体から所定の間隔を隔てて超音波駆動体と略平行に取り付けられた第2のステンレス鋼膜体とを備えたガス流発生器が開示されている。圧電ディスクに電圧を印加することにより、超音波駆動体が屈曲変位し、第2のステンレス鋼膜体の中心部分に形成された孔から空気流が放出される。
【0004】
前記ガス流発生器の場合、超音波駆動体を高周波で駆動すると、第2ステンレス鋼膜体の中心部分に形成された孔の周囲の空気を吸い込み、あるいは巻き込みながら、空気を孔の直交方向に吐出し、慣性噴射(ジェット)を発生させることができる。しかし、この構造では、超音波駆動体の中心部と対向する第2のステンレス鋼膜体に孔を設けないと、空気を放出できない。つまり、配置上の制約などでガス流発生器の中心部に孔を形成できない場合には、使用できないという問題があった。
【0005】
また、前述のガス流発生器の構造では、吐出した流れは筐体と垂直方向となる。このガス流発生器を小型低背機器に適用しようとした場合、いくらガス流発生器を低背化しても、流体の流れのための垂直方向の空間が必要になってしまう。流れを横方向にしようとすれば、ガス流発生器を縦向きにするか、又は一旦垂直方向に排出した流れを別途経路を設けて横方向に変える必要があり、結局は高さが必要になってしまうため、低背機器には不向きであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−522896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、吐出口の位置を筐体の中心部から変更することが可能な圧電マイクロブロアを提供することを目的とする。他の目的は、横方向への空気の吹き出しを可能にできる圧電マイクロブロアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、ブロア筐体と圧電素子を有するダイヤフラムとの間にブロア室を形成し、前記圧電素子に電圧を印加してダイヤフラムを屈曲振動させることにより、ブロア室から空気を吐出する圧電マイクロブロアにおいて、前記ブロア室は楕円形に形成され、前記ブロア室の楕円形の一方の焦点に前記ダイヤフラムの最大変位点が位置するように前記ダイヤフラムが配置され、前記ブロア室の楕円形の他方の焦点の位置に開口部が形成されていることを特徴とする、圧電マイクロブロアを提供する。
【0009】
本発明ではブロア室の形状を楕円形とし、ダイヤフラム変位が大きくなる部分を一方の焦点に配置し、他方の焦点に開口部を設けてある。楕円形の場合、一方の焦点からブロア室の内周壁で反射して他方の焦点に至る経路長が一定であるから、ダイヤフラムによって一方の焦点で発生した圧力波のエネルギーは、ブロア室の内周壁で反射した後、他方の焦点に集中する。そして、圧力波が開口部より排出される際に、周囲の空気を巻き込んで空気流として吐出することができる。そのため、寸法上の制約などによりブロアの中央部以外の場所から吐出動作を行ないたい場合でも、その開口部を配置したい場所にあわせて楕円形状と寸法を設計することで、特性改善や吐出位置の変更を達成できる。
【0010】
さらに、従来のマイクロブロアでは、変位が最大になるダイヤフラム中心部に対向する位置に開口部を設け、圧力変動を利用して吐出動作を行なっていたため、流体の吐出方向はブロア筐体と垂直方向(縦吹き)になる。しかし、横方向に吐出しようとして、圧力変動が最大になるダイヤフラム中央部と対向する位置に横吹きの開口部を設けようとすると、通路や壁などを配置する必要があり、ダイヤフラム変位の妨げになり、発生する圧力を十分に生かす事ができない。そこで、楕円形ブロア室の一方の焦点にダイヤフラム変位が大きくなる部分を配置し、他方の焦点に横吹き用の開口部を形成する。楕円形のブロア室の場合、一方の焦点で発生した圧力波が反射して他方の焦点に集まるので、そこに横吹き用開口部を設ければ、変位の妨げにならず、発生圧力を十分生かして横吹きが可能になる。
【0011】
例えば、楕円の一方の焦点にダイヤフラム変位の大きい部分を配置し、それによって発生しブロア室端で反射した圧力波の位相と合うように調整された別のダイヤフラムを他方の焦点に配置すれば、互いのダイヤフラムの振動が強めあうので、どちらか一方の焦点に対向する位置に開口部を設ければ、公知の構成に比べてより良好な特性が得られる。
【0012】
焦点間の直接距離と楕円形ブロア室端部で反射して他方の焦点まで達する距離との差を適切に選ぶ事で、直接波と反射波の位相を合わせて強めあうことができ、良好な特性が得られる。具体的には、ブロア室を内周壁で閉空間に囲んで反射させる場合には、焦点間の直接距離と、一方の焦点から楕円形ブロア室の内周壁で反射して他方の焦点まで達する距離との差を、駆動周波数での波長λの整数倍(nλ)に合わせるのがよい。また、ブロア室の側壁を無くして側面を大気開放して反射させる場合には、焦点間の直接距離と、一方の焦点から楕円形ブロア室端で反射して他方の焦点まで達する距離との差を、駆動周波数での波長λの1/2と駆動周波数での波長λの整数倍との和(λ/2+nλ)に合わせると、直接波と反射波の位相が合って強めあうようにできる。
【0013】
ダイヤフラムとの間でブロア室を形成するブロア筐体の第1壁部と、ブロア室の楕円形の他方の焦点に対応する第1壁部の部位に形成され、ブロア室の内部と外部とを連通させる第1開口部と、第1壁部を間にしてブロア室と反対側に、第1壁部と間隔をあけて設けられた第2壁部と、第1開口部と対向する第2壁部の部位に形成された第2開口部と、第1壁部と第2壁部との間に形成され、外側端部が外部に連通され、内側端部が第1開口部及び第2開口部に接続された流入通路とを備える構造とするのがよい。この場合には、周囲の環境に影響されずに流入通路から空気を吸込み、第2開口部から空気流を吐出することができる。
【0014】
前述のように、流入通路を形成した場合、ダイヤフラムの振動に伴い、第1壁部が共振するように、第1壁部の固有振動数を設定するのがよい。この場合には、ダイヤフラムの振動に伴って第1壁部が共振することで、空気の吐出流量が格段に増加する。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、ブロア室を楕円形とし、ダイヤフラム変位が大きくなる部分を一方の焦点に配置し、他方の焦点に開口部を設けたので、その開口部をブロアの中央部に対してオフセットさせることができる。そのため、寸法上の制約などによりブロアの中央部以外の場所から吐出動作を行ないたい場合に、その場所にあわせて楕円形状と寸法を設計することで、これが可能になる。特に、本発明によれば、開口部の位置を横向きに配置することができ、横方向への空気の吹き出しを容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る圧電マイクロブロアの第1実施形態の断面図及び平面図である。
【図2】図1に示す圧電マイクロブロアの作動原理を説明する図である。
【図3】本発明に係る圧電マイクロブロアの第2実施形態の断面図及び平面図である。
【図4】本発明に係る圧電マイクロブロアの第3実施形態の断面図及び平面図である。
【図5】本発明に係る圧電マイクロブロアの第4実施形態の断面図及び平面図である。
【図6】本発明に係る圧電マイクロブロアの第5実施形態の断面図及び平面図である。
【図7】本発明に係る圧電マイクロブロアの第6実施形態の断面図及び平面図である。
【図8】本発明に係る圧電マイクロブロアの第7実施形態の断面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
図1は本発明にかかる圧電マイクロブロアの第1実施形態を示す。本実施形態の圧電マイクロブロアAは、下側から底板10、ダイヤフラム20、枠板30、天板40の順に積層固定したものである。ダイヤフラム20の外周部は、枠体30と底板10との間で接着固定され、ダイヤフラム20、枠板30、天板40の間にブロア室5が形成されている。ダイヤフラム20を含む部品10,30,40はブロア筐体1を構成しており、金属板や硬質樹脂板のような剛性のある平板材料で形成されている。ダイヤフラム20はばね弾性を持つ金属薄板で構成されている。底板10には円形の窓穴11が形成されており、この窓穴11で囲まれたダイヤフラム20の円形部分20aの裏面(ブロア室と逆側の面)に、圧電素子21が貼り付けられている。圧電素子21に所定周波数の電圧を印加することにより、窓穴11で囲まれたダイヤフラム20の部分20aが厚み方向に屈曲振動することができる。ダイヤフラム20の振動モードは任意であるが、一次共振モードが最も変位が大きいので、望ましい。なお、天板40としてばね弾性を持つ薄肉金属板を使用し、ダイヤフラム20の振動に伴って天板40が共振できるように、天板40の固有振動数を設定してもよい。
【0018】
ブロア室5を構成する枠板30の内周壁31の形状は、図1の(b)に示すように楕円形状とされている。そして、ダイヤフラム20の部分20aの最大変位点が楕円の一方の焦点F1になるように、圧電素子21及び底板10の窓穴11が配置されている。具体的には、楕円の一方の焦点F1と底板10の円形の窓穴11の中心(圧電素子21の中心)とが一致している。ダイヤフラム20と対向する天板40であって、楕円の他方の焦点F2と対応する位置には、ブロア室5と外部とを連通させる開口部41が形成されている。
【0019】
本発明の原理を図2を参照して説明する。図2に示すように、横軸をx、縦軸をyとすると、楕円形は次式で表される。
2/a2+y2/b2=1
ここで、長軸の長さは2aであり、単軸の長さは2bである。焦点F1及びF2の座標は次式の通りである。
焦点F1の座標(√(a2−b2),0)
焦点F2の座標(−√(a2−b2),0)
楕円上の任意の点をPとすると、PF1+PF2の合計長さは常に2a(一定値)となる。なお、焦点F1〜F2の距離は、2√(a2−b2)である。
【0020】
圧電素子21を駆動すると、ダイヤフラム20の円形部分20aの中心部が最大変位点(焦点F1)になる。その最大変位点付近で発生した圧力波wは、図1の(b)の矢印で示すように、放射方向に発散し、ブロア室5の内周壁31で反射した後、他方の焦点F2に集中する。この時、焦点F1〜点P〜焦点F2の経路長が一定(=2a)であるから、焦点F2に到達した各圧力波wの位相は同じになる。そのため、焦点F2に集中した圧力波wは互いに強め合い、焦点F2に設けられた開口部41から大きな圧力波が吐出される。その圧力波によって周囲の空気が巻き込まれ、空気流Qとして上方へ吐出される。
【0021】
もし、焦点F1〜F2間の直線距離(2√(a2−b2))と、焦点F1〜点P〜焦点F2の経路長(=2a)との差を、次式のように圧電素子21の駆動周波数での波長λの整数倍(nλ)に合わせた場合には、焦点F1からF2への直接波w1と、焦点F1からブロア室内周壁で反射して焦点F2へ到達した反射波wとが強め合い、一層大きな圧力波を開口部41から吐出できる。そのため、開口部41から吐出される空気流Qの流量も増大する。
2a−2√(a2−b2)=nλ (n=1,2...)
【0022】
このように、ダイヤフラム20の最大変位点を一方の焦点F1の位置に設け、開口部41を他方の焦点F2の位置に設けることにより、ダイヤフラム20の最大変位点に対してオフセットした位置から空気流を発生させることができる。そのため、配置上の制約などでブロア筐体1の中心部に開口部を形成できない場合でも、本発明のマイクロブロアは適用できる。
【0023】
〔第2実施形態〕
図3は本発明にかかる圧電マイクロブロアの第2実施形態を示し、第1実施形態と同一箇所には同一符号を付して重複説明を省略する。本実施形態の圧電マイクロブロアBでは、底板10に2つの窓穴11,12が形成され、これらの窓穴11,12で囲まれたダイヤフラム20の2つの円形部分20a,20bが屈曲振動できるようになっている。ダイヤフラム20の各円形部分20a,20bの裏面には、それぞれ圧電素子21,22が固定されている。窓穴11,12の中心、つまり圧電素子21,22の中心は、楕円形のブロア室5の焦点F1,F2と一致するように配置されている。
【0024】
圧電素子21,22は、一方の焦点F1で発生し、ブロア室5の内周壁で反射した後、他方の焦点F2に到達した反射波の位相と、他方の焦点F2で発生した圧力波の位相とが合致するように駆動される。つまり、下記式のように、一方の焦点F1で発生し、焦点F1〜点P〜焦点F2の経路長(=2a)を経て他方の焦点F2に到達した圧力波と、他方の焦点F2で発生した圧力波とが同期するように駆動される。
2a=nλ (n=1,2...)
【0025】
そのため、両方の圧力波が強め合って圧力変動が大きくなり、開口部41から大きな圧力波が放出される。その結果、周囲の空気を強く巻き込み、大流量の空気流を発生させることができる。
【0026】
図3では、それぞれの焦点F1,F2に個別のダイヤフラム20a,20bを設けた構成としているが、ダイヤフラムの3次や5次などの高次モードを利用し、同一のダイヤフラムで変位が大きくなる別の点をそれぞれ焦点に配置するよう設計してもよい。また、図3ではダイヤフラムや圧電素子の寸法を同じにしているが、同じでなくてもよい。
【0027】
〔第3実施形態〕
図4は本発明にかかる圧電マイクロブロアの第3実施形態を示す。本実施形態の圧電マイクロブロアCでは、枠体30の他方の焦点F2の近傍位置に、一方の焦点F1に対して逆方向に向かって横向きに拡開した開口部32が形成されている。底板10、ダイヤフラム20及び天板40の焦点F2の近傍位置には、開口部32と同様にV字状の切欠部13、23、42が形成されている。開口部32の端部は切欠部13、23、42より焦点F2に近接している。
【0028】
この実施形態も第1実施形態と同様に、一方の焦点F1で発生した圧力波wがブロア室5の内周壁31で反射した後、他方の焦点F2に集中する。焦点F2に集中した圧力波wは、開口部32を通って横向きに吐出され、開口部32の上下に設けた切欠部13、23、42から空気を巻き込み、横向きの空気流Qを発生させることができる。この実施形態では、開口部32をダイヤフラム20の変位が大きくなる焦点位置(F1)に配置しなくてよいので、ダイヤフラム20の振動を阻害せず、焦点F2の圧力変動を利用して横吹き動作ができる。
【0029】
〔第4実施形態〕
図5は本発明にかかる圧電マイクロブロアの第4実施形態を示す。本実施形態の圧電マイクロブロアDは、第3実施形態のマイクロブロアCと比べて、枠体30の開口部32に対応する天板40の部位に空気吸入口43を形成した点が相違する。この場合も、矢印で示すように、一方の焦点F1で発生した圧力波wがブロア室5の内周壁31で反射した後、他方の焦点F2に集中し、焦点F2に集中した圧力波は開口部32から横向きに吐出される。その際、開口部32の上側に設けた空気吸入口43から空気を巻き込むので、横向きの空気流Qを発生させることができる。この実施形態も、第3実施形態と同様に、ダイヤフラム20の振動を阻害せず、焦点F2の圧力変動を利用して横吹き動作ができる。この実施形態は、底板10がケースや基板等に固定され、空気流入用の切欠部13を形成できない場合に好適である。
【0030】
〔第5実施形態〕
図6は本発明にかかる圧電マイクロブロアの第5実施形態を示す。本実施形態の圧電マイクロブロアEは、第4実施形態のマイクロブロアDと比べて、開口部32の下側に位置するダイヤフラム20と底板10とに、それぞれ空気吸入口24、14を形成した点が相違する。この場合は、圧力波が開口部32から横向きに吐出された際、開口部32の上下に設けられた空気吸入口43、24、14から空気を巻き込むので、横向きの大きな空気流Qを発生させることができる。
【0031】
〔第6実施形態〕
図7は本発明にかかる圧電マイクロブロアの第6実施形態を示し、第1実施形態と同一箇所には同一符号を付して重複説明を省略する。本実施形態の圧電マイクロブロアFは、第1実施形態のマイクロブロアAと比べて、第1天板40の上に所定の隙間を開けて第2天板50を固定し、外周端に第1天板40と第2天板50との隙間(流入通路51)へ空気を導入するための流入口52を形成した点が異なる。なお、第1天板40としてばね弾性を持つ薄肉金属板を使用し、ダイヤフラム20の振動に伴って第1天板40が共振できるように、第1天板40の固有振動数を設定してもよい。第2天板50には、第1天板40に形成された第1開口部41と対応する位置に第2開口部53が形成され、この第2開口部53を取り囲むようにノズル54が上向きに突設されている。
【0032】
ダイヤフラム20を駆動すると、上述と同様に、焦点F2に圧力波が集中し、その圧力波は第1天板40の第1開口部41と第2天板50の第2開口部53とを通過し、ノズル54から上方へと排出される。このとき、流入通路51から空気を巻き込むので、矢印で示すように円滑な空気流Qを発生させることができる。特に、ダイヤフラム20の振動に伴って第1天板40を共振させると、第2開口部53から吐出される空気流の流量が格段に増加する。
【0033】
〔第7実施形態〕
図8は本発明にかかる圧電マイクロブロアの第7実施形態を示す。本実施形態の圧電マイクロブロアGは、第2実施形態のマイクロブロアBと比べて、第1天板40の上に所定の流入通路51を開けて第2天板50を固定し、外周端に流入通路51へ空気を導入するための流入口52を形成してある点が異なる。この実施形態も、ダイヤフラム20の振動に伴って第1天板40が共振できるように、第1天板40の固有振動数を設定するのがよい。第2天板50には、第1天板40に形成された第1開口部41と対応する箇所に第2開口部53が形成され、この第2開口部53を取り囲むようにノズル54が上向きに突設されている。
【0034】
この実施形態では、圧電素子21の駆動により一方の焦点F1で発生し、ブロア室5の内周壁で反射した後、他方の焦点F2に到達した反射波の位相と、圧電素子22の駆動により他方の焦点F2で発生した圧力波の位相とが合致するように、圧電素子21,22が駆動されるので、両方の圧力波が強め合って圧力変動が大きくなる。そのため、第1開口部41から大きな圧力波が放出され、流入通路51から空気を巻き込むことで、ノズル54から大流量の空気流を吐出することができる。
【0035】
前記各実施形態では、円板状の圧電素子21,22を使用したが、特許文献1に示されるように円環状の圧電素子を使用してもよい。また、ダイヤフラムとして共通の金属板を使用したが、複数の圧電素子を用いる場合にはそれぞれ個別のダイヤフラムを使用してもよい。また、前記実施形態ではブロア本体を複数の板状部材を積層接着して構成したが、これに限るものではなく、ダイヤフラムを除く部品を樹脂又は金属で一体形成することも可能である。第6、第7実施形態において、流入通路51は一定厚みの空間である必要はなく、単数又は複数の通路であってもよい。
【0036】
前記第1実施例では、ブロア室5を端反射させるように側壁31で閉空間に取り囲んだが、例えば図1におけるダイヤフラム20又は天板40の一方、又は両方を楕円形にし、枠板30に代えて複数個のスペーサを配置してダイヤフラム20と天板40との間にブロア室5を構成することで、ブロア室5の周囲を大気開放してもよい。第1実施例のように、ブロア室を側壁で囲って閉空間とした場合には、圧力波は側壁で固定端反射する。圧力波の場合、固定端反射では圧力拘束がないので自由に変化でき、正圧ならば正圧のまま反射し、位相はずれない。そのため、反射経路と焦点間経路との差が波長λの整数倍ならば、両方の波が同位相で強めあうことになる。一方、上述のようにブロア室側壁をなくして大気開放させると、ブロア室周端では開放端反射となる。この場合、圧力波は開放端では大気圧に拘束されて変化できないので、正圧は逆に負圧として位相がλ/2ずれて反射する。よって、反射経路と焦点間経路との差がλ/2+nλとなるように設定すると、両方の波が同位相で強めあうことになる。
【符号の説明】
【0037】
A〜G 圧電マイクロブロア
1 ブロア筐体
5 ブロア室
10 底板
11 窓穴
20 ダイヤフラム
21 圧電素子
30 枠板
31 内壁部
40 天板
41 開口部
F1,F2 焦点
w 圧力波
Q 空気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロア筐体と圧電素子を有するダイヤフラムとの間にブロア室を形成し、前記圧電素子に電圧を印加してダイヤフラムを屈曲振動させることにより、ブロア室から空気を吐出する圧電マイクロブロアにおいて、
前記ブロア室は楕円形に形成され、
前記ブロア室の楕円形の一方の焦点に前記ダイヤフラムの最大変位点が位置するように前記ダイヤフラムが配置され、
前記ブロア室の楕円形の他方の焦点の位置に開口部が形成されていることを特徴とする、圧電マイクロブロア。
【請求項2】
前記ブロア室の楕円形の他方の焦点に形成された開口部と対向する位置に、前記ダイヤフラムとは別のダイヤフラムが設けられ、当該別のダイヤフラムは、前記一方の焦点に配置したダイヤフラムで発生した圧力の反射波と位相が合うように駆動されることを特徴とする、請求項1に記載の圧電マイクロブロア。
【請求項3】
前記他方の焦点に、前記ダイヤフラムの振動方向と直交する方向に空気を吐出する横吹き式開口部を設けたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の圧電マイクロブロア。
【請求項4】
前記ブロア室を端反射させるように側壁で閉空間に取り囲み、焦点間の直接距離と、一方の焦点から楕円形ブロア室側壁で反射して他方の焦点まで達する距離との差を、駆動周波数での波長λの整数倍(nλ)に合わせた、請求項1ないし3の何れか1項に記載の圧電マイクロブロア。
【請求項5】
前記ブロア室の側壁を一部無くして側面を大気開放して反射させるようにし、焦点間の直接距離と、一方の焦点から楕円形ブロア室側壁で反射して他方の焦点まで達する距離との差を、駆動周波数での波長λの1/2と駆動周波数での波長λの整数倍との和(λ/2+nλ)に合わせた、請求項1ないし3の何れか1項に記載の圧電マイクロブロア。
【請求項6】
前記ダイヤフラムとの間でブロア室を形成するブロア筐体の第1壁部と、
前記ブロア室の楕円形の他方の焦点に対応する前記第1壁部の部位に形成され、
ブロア室の内部と外部とを連通させる第1開口部と、
前記第1壁部を間にしてブロア室と反対側に、第1壁部と間隔をあけて設けられた第2壁部と、
前記第1開口部と対向する前記第2壁部の部位に形成された第2開口部と、
前記第1壁部と第2壁部との間に形成され、外側端部が外部に連通され、内側端部が第1開口部及び第2開口部に接続された流入通路とを備えることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧電マイクロブロア。
【請求項7】
前記ダイヤフラムの振動に伴い、前記第1壁部が共振するように、前記第1壁部の固有振動数が設定されていることを特徴とする請求項6に記載の圧電マイクロブロア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−77677(P2012−77677A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223395(P2010−223395)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】