説明

圧電モーターの制御方法及び圧電モーター

【課題】回転体の慣性力が大きいときにも、所望の停止位置を正確に確保できる圧電モーターの駆動制御方法、及び圧電モーターを提供する。
【解決手段】圧電素子1aにより発生した振動を用いて回転体2の表面を摺動して回転させる圧電モーター1の制御方法にかかわる。回転体2を回転させる回転工程と、回転体2を摺動する周波数を下げて停止させる停止工程と、を有し、停止工程では、周波数を下げて最大トルクとなる周波数で圧電素子1aの駆動を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電モーターの制御方法及び圧電モーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載されているように、圧電モーターは、圧電モーターの振動を検出する振動検出手段と駆動信号を制御する速度調整手段とを備えていた。そして、駆動信号が圧電モーターのほぼ共振周波数になるようにしていた。このとき、駆動信号と振動検出信号との間に位相差(位相差制御駆動)を設けるように駆動信号のパルス幅またはパルス振幅を制御する方法が知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−328698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の圧電モーターの制御方法では、回転体のイナーシャがある場合、急激な停止動作が出来ず、回転体の所望の停止位置が確保できないという課題があった。従って、回転体の慣性力が大きいときにも回転体を所望の位置で正確に停止できる方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる圧電モーターの制御方法は、圧電素子により発生した振動を用いて回転体の表面を摺動して回転させる圧電モーターの制御方法であって、前記回転体を回転させる回転工程と、前記回転体を摺動する周波数を下げて停止させる停止工程と、を有し、前記停止工程では、周波数を下げて最大トルクとなる周波数で前記圧電素子の駆動を停止することを特徴とする。
【0007】
本適用例によれば、圧電素子により発生した振動を用いて回転体の表面を摺動して圧電モーター回転させている。回転体を回転させる回転工程と回転体を停止させる停止工程とを有している。停止工程では周波数を下げて最大トルクとなる周波数で圧電素子の駆動を停止させている。周波数とトルクの関係は、周波数が高いとトルクが低く、周波数が低くなるにつれトルクが上がっていき、圧電素子の共振周波数にて最もトルクが高くなる。そして、共振周波数より低い周波数の場所でトルクが下がる。よって、共振周波数にて駆動するときに一番トルクが出る駆動状態になるが、共振周波数より少しでも低い側に周波数がはずれると回転不能になる。そこで、回転工程では共振周波数より高い周波数で圧電モーターは駆動されている。
【0008】
停止工程では高トルクを出す状態にする為に、周波数を下げている。これにより、周波数が下がる過程で圧電モーターが本来持っている最大トルクが出る状態を必ず作り出せる。従って、最大トルク発生した状態で回転体を停止させることが出来るので、回転体の慣性力が大きいときにも位置精度良く停止できる。その結果、回転体の慣性力が大きいときにも回転体を所望の位置で正確に停止させることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に記載の圧電モーターの制御方法は、前記回転工程と前記停止工程との間に、切替判断工程を有し、前記切替判断工程は、前記回転体が回転する角度を検出し、前記回転体が停止する場所より前記角度だけ手前の場所にて前記回転工程から前記停止工程に切り替える切り替え判断を行うことが好ましい。
【0010】
本適用例によれば、回転工程と停止工程との間に切替判断工程が行われている。切替判断工程では停止工程の間に回転体が回転する角度を検出している。そして、停止工程の間に回転体が回転する角度だけ手前の角度の場所にて回転工程から停止工程に切り替える判断を行っている。これにより、最大トルクを発生させる場所と予定停止位置とを一致させることができる。従って、回転体を所望の位置で正確に停止させることができる。
【0011】
[適用例3]本適用例にかかる圧電モーターは、圧電素子により発生した振動を用いて回転体の表面を摺動して回転させる圧電モーターであって、前記圧電素子が振動する周波数を制御する制御部を有し、前記回転体の回転を停止するとき、前記制御部は前記圧電素子の周波数を下げて最大トルクとなる周波数で前記圧電素子の振動を停止することを特徴とする。
【0012】
本適用例によれば、圧電モーターは圧電素子により発生した振動を用いて回転体の表面を摺動して回転させている。圧電モーターは制御部を有しており、制御部は圧電素子が振動する周波数を制御する。回転体の回転を停止するとき、制御部は圧電素子の周波数を下げて最大トルクとなる周波数で圧電素子の振動を停止している。
【0013】
制御部が周波数を下げる過程で圧電モーターが本来持っている最大トルクが出る状態を必ず作り出せる。そして、回転体が最大トルクとなる状態で制御部は回転体を停止させることができる。従って、圧電モーターは回転体の慣性力が大きいときにも位置精度良く停止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は、圧電アクチュエーターの構成を示す模式上面図、(b)は、圧電アクチュエーターの構成を示す模式側断面図。
【図2】圧電モーターの制御部を示すブロック図。
【図3】駆動信号と振動検出信号の位相差と圧電モーターのトルクとの関係を示すグラフ。
【図4】制御切替時の駆動トルクの推移を示すグラフ。
【図5】制御切替時の駆動トルクの推移を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0016】
(実施形態1)
図1(a)は、圧電アクチュエーターの構成を示す模式上面図であり、図1(b)は、圧電アクチュエーターの構成を示す模式側断面図である。
まず、実施形態1にかかる圧電アクチュエーター100の概略構成について説明する。
【0017】
図1に示すように、圧電アクチュエーター100は板状の本体25を備え、本体25には圧電モーター1、回転体2、保持部材3、付勢ばね4が設置されている。そして、圧電モーター1は、振動部材1bと、振動部材1bの両面にそれぞれ接着された圧電素子1aとを具備している。
【0018】
1枚の圧電素子1aは、圧電体層、と振動部材1b側に設けられた第1電極と、圧電体層の第1電極とは反対側に設けられた第2電極と、を有する。圧電体層は電気機械変換作用を示す圧電材料であれば良く、特に限定されない。本実施形態では例えば一般式ABO3で示されるペロブスカイト構造を有する金属酸化物を採用している。第1電極は、圧電体層の振動部材1b側に連続して設けられて、圧電素子1aの共通電極となっている。
【0019】
第2電極は、圧電体層の第1電極とは反対側に設けられており、溝部によって互いに電気的に隔離されて面内方向で複数に分割されている。第2電極を分割する溝部は、圧電素子1aの幅方向(短手方向)をほぼ3等分し、その3つの電極のうち短手方向両側の電極を長手方向でほぼ2等分するように形成されている。さらに、第2電極は、短手方向中央部に設けられた縦振動用電極部5と、この縦振動用電極部5の短手方向両側に、縦振動用電極部5を挟んで対角となるように配置され対を成す2組の第1屈曲振動用電極部6及び第2屈曲振動用電極部7との合計5つに分割されている。
【0020】
ここで、圧電素子1aでは縦振動用電極部5が設けられた領域が、圧電素子1aの長手方向の縦振動を励起する縦振動励起領域となっている。これに対して、縦振動励起領域の短手方向両側の第1屈曲振動用電極部6及び第2屈曲振動用電極部7が設けられた領域が、それぞれ圧電素子1aの短手方向に屈曲振動を励起する屈曲振動励起領域となっている。この為、第2電極は、分割されて各領域を個別に駆動する為の個別電極として機能する。
【0021】
このような圧電素子1aは、第1電極側が振動部材1bに接合されている。ここで振動部材1bは、金属や樹脂等の剛性のある部材で形成された板状部材からなる。本実施形態では、例えば、振動部材1bは導電性を有するステンレス鋼で形成されている。そして、2つの圧電素子1aの第1電極同士は、振動部材1bを介して電気的に導通される。
【0022】
また、振動部材1bは、長手方向の一端部側に圧電素子1aよりも突出するように延設された当接部1dが設けられている。また、振動部材1bの圧電素子1aの長手方向中央部には、圧電素子1aの短手方向両側に向かって延設された一対の腕部1cを有する。この腕部1cには、厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられており、貫通孔を挿通させたねじを介して保持部材3に固定される。すなわち、圧電モーター1は保持部材3に対して腕部1cを基点として縦振動及び屈曲振動が可能となるように保持される。
【0023】
一方、圧電モーター1の図中左側の本体25には棒状の軸2aが立設されている。そして、軸2aを中心として回転自在となる回転体2が本体25に設けられている。そして、当接部1dが楕円軌道を描くように圧電モーター1を駆動して、当接部1dを回転体2に当接させる。これにより、圧電モーター1は、圧電素子1aにより発生した振動を用いて回転体2の表面を摺動して回転させる。
【0024】
本体25には一対のスライド部25aが設置されている。スライド部25aは圧電モーター1の長手方向に延在して配置されている。そして、保持部材3はスライド部25aに沿って移動可能となっている。つまり、保持部材3は、圧電アクチュエーター100の本体25に対してスライド移動可能に支持されている。
【0025】
保持部材3の図中右側には付勢ばね4が設置されている。そして、付勢ばね4は保持部材3を回転体2に向けて加勢する。これにより、当接部1dが回転体2を押圧するようになっている。
【0026】
ここで、圧電アクチュエーター100の制御系について、図2を参照して説明する。図2は、圧電モーターの制御部を示すブロック図である。
【0027】
図2に示すように、駆動信号を生成する制御部9は、圧電モーター1の振動電圧を検出する振動検出部10と、所定の周波数の駆動信号を生成する周波数発生部11と、ドライバー12とを具備する。ドライバー12は駆動信号に基き圧電モーター1を駆動する電力を供給する装置である。例えば、圧電素子1aにおいて、第2電極の5分割されている領域の中で、縦振動用電極部5と第1屈曲振動用電極部6と(斜線部)に駆動信号が入力される場合の圧電モーター1の動きを説明する。
【0028】
圧電素子1a中の縦振動用電極部5に駆動信号が入力されると、圧電素子1aの縦振動励起領域が縦方向(長手方向)に伸張・圧縮して、圧電モーター1は長手方向に縦振動する。また、圧電素子1aの第1屈曲振動用電極部6に駆動信号が入力されると、圧電素子1aの屈曲振動励起領域が伸張・圧縮して、圧電モーター1は屈曲振動する。
【0029】
そして、上記のように縦振動と屈曲振動が同時に発生すると、圧電モーター1は楕円振動し、回転体2は図中矢印の方向(反時計回り)に回転する。逆に、縦振動用電極部5と第2屈曲振動用電極部7とに駆動信号が入力される場合は、圧電モーター1の楕円振動の傾きが変わり、回転体2は時計回りに回転させることができる。
【0030】
次に、通常の回転工程の制御について説明する。縦振動用電極部5と第1屈曲振動用電極部6と(斜線部)に駆動信号が入力される場合、駆動で使用している第1屈曲振動用電極部6と反対側の第2屈曲振動用電極部7とを圧電素子1aの振動を検出する非駆動電極として使用する。回転体2に近接して回転検出部8が設置され、回転体2の回転速度及び回転する角度は、回転検出部8によって検出される。
【0031】
駆動信号を入力した状態で回転する回転体2の速度の制御は次のように制御される。まず、非駆動電極から得られた振動検出信号が振動検出部10に入力される。振動検出部10に入力された信号は周波数発生部11に送られる。また、周波数発生部11にはドライバーから圧電素子1aに送られている駆動信号の周波数が常にモニターされている。更に、周波数発生部11は、回転体2の速度を検知している回転検出部8からの速度検知信号をモニターしている。そこで、周波数発生部11は、回転検知信号が所望の回転速度になるように、振動検出信号周波数と駆動周波数との位相差を演算し、最適な位相差になるように駆動周波数を決定し、ドライバー12にフィードバックする。その結果、最適な位相差になる駆動周波数を受け取ったドライバー12は、その駆動周波数の駆動電圧を縦振動用電極部5と第1屈曲振動用電極部6に印加することで、回転体2の速度は所望の速度に保たれる。
【0032】
次に、駆動周波数と、位相差と、トルクとの関係ついて説明する。図3は、駆動信号と振動検出信号の位相差と圧電モーターのトルクとの関係を示すグラフである。図3において、位相差推移線26は駆動周波数駆動の変化に対する駆動信号と振動検出信号の位相差の推移を示す線である。そして、トルク推移線27は駆動周波数駆動の変化に対する圧電モーターのトルクの推移を示す線である。位相差推移線26が示すように、駆動周波数が高い側から低い側に変化するに従って、駆動信号と振動検出信号の位相差は下がっていく。具体的には、駆動信号から見て振動検出信号は遅れていく方向(マイナス方向)に変化していく。また、トルク推移線27が示すように、圧電モーター1が発生させるトルクは、駆動周波数が高い側から低い側に変化するに従って、上がっていく。
【0033】
更に、駆動周波数を下げていくと、圧電モーター1に固有の特性である共振点(本実施例の場合は270KHz)から外れ、圧電モーター1の楕円軌跡が最適な形状を描くことが出来なくなる。つまり、制御部としては、270KHz以下の領域に入ると、圧電モーター1の動きを制御できない領域となり、結果的に回転体2の速度、停止位置は制御不可能になる。
【0034】
また、振動検出信号は、それ自体にノイズ等によるばらつきが発生する為、位相差を共振点付近で動かすようにした場合、270KHz以下に変化してしまい、制御不可能領域に陥ってしまう。このことから、通常の回転工程で使用する周波数領域は、制御不可能になる領域から離れた領域に設定され、共振点より高い周波数の領域に設定する。
【0035】
次に、通常回転工程から停止位置に相当する第1停止時間14に停止させる停止工程とその時のトルク変動について説明する。図4は、制御切替時の駆動トルクの推移を示すグラフである。
【0036】
図4において、横軸は時間の経過を示し、回転工程期間15、制御切替時間17、第1スイープ制御工程期間16、第1停止時間14の順に推移する。縦軸はトルクと駆動周波数とを示す。トルク推移線13は時間の経過に対するトルクの推移を示し、駆動周波数推移線18は時間の経過に対する駆動周波数の推移を示している。
【0037】
回転工程期間15では、前述のように、最適な位相差を保つように決められた駆動周波数(本実施形態では276KHz)に周波数発生部11が制御する。これにより、回転体2が所望の回転速度で回転している状態となっている。
【0038】
次に、停止工程に行われるスイープ制御について説明する。スイープ制御とは駆動周波数を高い側から低い側にある時間内で変化させることを言う。停止工程は回転体2を摺動する周波数を下げて停止させる工程である。停止工程を行う前に第1停止時間14と第1スイープ制御工程期間16に要する時間を設定する。そして、第1停止時間14と第1スイープ制御工程期間16とから制御切替時間17を設定する。制御切替時間17は回転工程期間15から第1スイープ制御工程期間16に切り替える時間を示す。回転工程期間15から第1スイープ制御工程期間16に切り替わる制御切替時間17がきたら、200μsecの間で駆動周波数を276KHzから270KHzまで徐々に線形に落として停止させている。その時、図3に示すトルク推移線27に示すように駆動周波数を下げることによりトルクが上がることから、第1スイープ制御工程期間16の中で図4に示すトルク推移線13は上がっていくことになる。
【0039】
また、回転検出部8は回転体2の回転角度と回転速度とを検出する。そして、回転検出部8は回転体2の回転角度が目標とする停止角度に到達するまでに回転する角度を算出する。次に、回転検出部8は、回転体2が停止角度に到達するまでに回転する角度から、回転体2が第1スイープ制御工程期間16にて回転する角度を引き算する。この演算により制御切替時間17に至るまでに回転工程期間15にて回転体2が回転する角度が算出される。そして、この回転工程期間15にて回転する角度を回転速度にて割り算をおこなうことにより制御切替時間17を算出する。そして、回転検出部8は算出した制御切替時間17の情報を周波数発生部11に出力する。周波数発生部11は、回転検出部8から制御切替時間17の情報を受け取り、ドライバー12に対して、スイープ制御に対応した駆動周波数の制御信号を送る。そして、第1停止時間14になったと同時に駆動周波数推移線18が270KHzとなるように制御部9は圧電モーター1を制御する。これにより、第1停止時間14においてトルク推移線13が最大となる。つまり、第1スイープ制御工程期間16では、周波数を下げて最大トルクとなる周波数で圧電素子1aの駆動を停止する。
【0040】
以上述べたように、本実施形態1にかかる圧電モーターの駆動制御方法によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態によれば、第1停止時間14の前に駆動周波数推移線18を下げる第1スイープ制御工程期間16を入れている。これにより、駆動周波数が下がる過程で圧電モーター1が本来持っている最大トルクが出る状態を必ず作り出せる。そして、最大トルク発生した状態で回転体2を停止させることができる。従って、回転体2の慣性力が大きいときにも位置精度良く停止できる。従って、回転体2の慣性力が大きいときにも停止位置を確保できる圧電モーター1の駆動制御方法を提供することができる。
【0041】
(実施形態2)
次に、本発明を具体化した圧電モーターの駆動制御方法の一実施形態について図5の制御切替時の駆動トルクの推移を示すグラフを用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、切替判断工程が行われる点にある。尚、実施形態1と同じ点については説明を省略する。
【0042】
図5において、横軸は時間の経過を示し、回転工程期間15、制御切替時間17、第1スイープ制御工程期間16、第1停止時間14、の順に推移する。縦軸はトルクと駆動周波数とを示す。トルク推移線13は時間の経過に対するトルクの推移を示し、駆動周波数推移線18は時間の経過に対する駆動周波数の推移を示している。
【0043】
制御切替時間17は、回転体2の予定停止位置に相当する第1停止時間14をさかのぼって決められた時間になる。回転中の回転検出部8の検出信号が常にカウントされることにより、回転体2の回転角度は、常に検出され且つ記憶されている。そして、予定停止位置までに回転検出部8が出力する信号の数、つまり回転体2の回転角度は常時モニターされあらかじめ分かった状態となっている。
【0044】
よって、第1スイープ制御工程期間16の時間が、例えば、200μsecと決まっているとき、制御切替時間17は、第1停止時間14からマイナス200μsecの時間に相当する回転検出部8のパルスカウントを演算して決定される。つまり、制御切替時間17は第1停止時間14から第1スイープ制御工程期間16の時間を減算した時刻となっている。
【0045】
つまり、切替判断工程では第1スイープ制御工程期間16の間に回転体2が回転する角度である第1角度を演算する。そして、回転体2が停止する場所より第1角度だけ手前の場所にて回転工程期間15から第1スイープ制御工程期間16に切り替える。
【0046】
第1スイープ制御工程期間16では、周波数発生部11は、回転検出部8から制御切替時間17の情報を受け取り、スイープ制御に対応した駆動周波数の信号をドライバー12に出力する。そして、駆動周波数推移線18は、第1停止時間14になったと同時に270KHzとなり、トルク推移線13も最大となる。
【0047】
以上述べたように、本実施形態2にかかる圧電モーターの駆動制御方法によれば、実施形態1での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態によれば、第1角度だけ手前の場所にて制御部9は回転工程期間15から第1スイープ制御工程期間16に切り替えている。これにより、最大トルクを発生させる場所と予定停止位置が一致させることが出来る。従って、回転体2の予定停止位置に精度良く停止できる。
【0048】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良等を加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0049】
(変形例1)
前記実施形態1では、回転工程期間15から第1スイープ制御工程期間16に切り替わる制御切替時間17がきたら、200μsecの間で駆動周波数推移線18を276KHzから270KHzまで徐々に、線形に、落として停止させたが、この手順に限定するものではない。以下、圧電モーターの駆動制御方法について説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
【0050】
図5に示すように、最初の回転体2の予定停止位置に相当する第1停止時間14から、更に回転体2を動かして、次の予定停止位置に相当する第2停止時間19、更に次の第3停止時間20が有った場合の、制御切り替え方法について説明する。
【0051】
第1停止時間14の直前では、ドライバー12は圧電モーター1を270KHzで動かしている。更に、次の第2停止時間19が存在する場合は、ドライバー12は駆動停止をせずに、一度、回転工程期間15で動かしていた276KHzまで駆動周波数推移線18を上げる。そして、同様に、第2スイープ制御工程期間21において、駆動周波数推移線18を276KHzから270KHzまで徐々に、線形に、落として停止させる。
【0052】
更に第3停止時間20の場合も同様に、ドライバー12は第2停止時間19で駆動停止せずに、第3スイープ制御工程期間22において、駆動周波数推移線18を276KHzから270KHzまで徐々に、線形に、落として停止させる。また、更に回転停止位置が増えた場合も、同様の繰り返しとなる。
【0053】
以上述べたように、変形例1にかかる圧電モーターの駆動制御方法によれば、実施形態1での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(1)本変形例によれば、第1停止時間14で停止した回転体2の停止位置を、回転検出部8の検出信号分解能以下の微小な範囲で調整したい場合、微小送り後の停止位置でも必ず最大トルクを保った状態で回転体2を停止させることが出来る。また、第1スイープ制御工程期間16、第2スイープ制御工程期間21、第3スイープ制御工程期間22の間は、圧電モーター1は駆動を停止しないので、微小送りでの位置調整時間は、1回1回停止させるより、大幅に時間削減が出来る。
【0054】
(2)本変形例によれば、各スイープ制御工程の切り替え時に、圧電素子1aの駆動信号の入力を第1屈曲振動用電極部6または第2屈曲振動用電極部7に切り替えるができる。これにより、回転体2の正逆転が切り替えられる為、停止位置をより正確に調整することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…圧電モーター、1a…圧電素子、2…回転体、9…制御部、15…回転工程としての回転工程期間、16…停止工程としての第1スイープ制御工程期間、17…切替判断工程としての制御切替時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子により発生した振動を用いて回転体の表面を摺動して回転させる圧電モーターの制御方法であって、
前記回転体を回転させる回転工程と、
前記回転体を摺動する周波数を下げて停止させる停止工程と、を有し、
前記停止工程では、周波数を下げて最大トルクとなる周波数で前記圧電素子の駆動を停止することを特徴とする圧電モーターの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電モーターの制御方法において、
前記回転工程と前記停止工程との間に、切替判断工程を有し、
前記切替判断工程は、前記回転体が回転する角度を検出し、前記回転体が停止する場所より前記角度だけ手前の場所にて前記回転工程から前記停止工程に切り替える切り替え判断を行うことを特徴とする圧電モーターの制御方法。
【請求項3】
圧電素子により発生した振動を用いて回転体の表面を摺動して回転させる圧電モーターであって、
前記圧電素子が振動する周波数を制御する制御部を有し、
前記回転体の回転を停止するとき、前記制御部は前記圧電素子の周波数を下げて最大トルクとなる周波数で前記圧電素子の振動を停止することを特徴とする圧電モーター。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−182925(P2012−182925A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44792(P2011−44792)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】