説明

圧電発振器および電子機器

【課題】 容易に作製することができる、薄型および平面サイズが小型の圧電発振器および電子機器を提供する。
【解決手段】 圧電発振器10は、圧電振動子20と、この圧電振動子20を発振させる回路を備えたICチップ40とを有し、前記圧電振動子20の一方の面における各角部に段差部52を備えた実装電極部50を接合し、前記ICチップ40と前記段差部52を電気的に接続して、前記実装電極部50の下面に設けられた実装面58を露出させつつ前記圧電振動子20、前記ICチップ40および前記実装電極部50を封止体で被った構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電発振器および電子機器に係り、特に圧電振動子とこの圧電振動子を発振させる回路を備えたICチップの周囲を封止体で被った圧電発振器および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電発振器には、圧電振動片を実装した圧電振動子と、この圧電振動子を発振させる回路をリードで接続し、これらの周囲を樹脂で封止した構成のものや、セラミックパッケージに設けられた凹陥部に圧電振動片とこの圧電振動片を発振させる回路を実装し、凹陥部を蓋体で封止した構成のものがある。そして圧電振動子と回路をリードで接続し、これらを樹脂で封止した圧電発振器の具体的な構成は、次のようになっている。
【0003】
すなわち圧電発振器は、圧電振動片を内部に実装した圧電振動子の裏面に、この圧電振動子を発振させる回路を内蔵したICチップを設けるともに、圧電振動子の外部端子と重なる位置にリード部を絶縁固定し、圧電振動子とICチップ、およびリード部とICチップをワイヤで接続した構成である。そして圧電発振器は、圧電振動子、ICチップおよびリード部におけるインナーリード部等を被覆するように樹脂モールドし、この樹脂モールドから突出したリード部を折り曲げ形成した構成である(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また圧電発振器には、上側リードフレームと下側リードフレームで構成される積層リードフレームを圧電振動子の下部に配設して、下側リードフレームにICを実装した構成のものがある(例えば、特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開2004−297770号公報
【特許文献2】特開2005−33755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年は、圧電発振器が搭載される電子機器が小型化されているのに伴い、圧電発振器に対しても薄型化および平面サイズの小型化が要求されている。このため圧電発振器に対しては、コンマ数ミリメートルでも薄型化および平面サイズを小型化したいという要求がある。しかしながら圧電発振器を構成する各部品、例えばパッケージやリード、ICチップ等には、各部品の最低限の強度を確保するために限界となる厚さがあり、また部品の機能を確保するために限界となるサイズがあるので、容易に薄型化および平面サイズの小型化ができなくなっている。
そして圧電振動子やICチップ等の周囲を樹脂で封止した構成の圧電発振器では、リードを折り曲げ加工したり、積層フレームを用いたりしてICチップを実装する厚みを得ているので、薄型化を行い難い構成となっていた。
【0006】
またセラミックパッケージに圧電振動片やICチップを実装した圧電発振器では、パッケージの凹陥部に圧電振動片およびICチップを実装した後に、凹陥部を気密封止しているので、不良品を実装してしまう虞がある。すなわち、例えば圧電振動片は、気密封止されていないと空気抵抗等の影響により発振させることができないので、気密封止する前段階では、圧電振動片が良品か不良品かを検査することができず、不良品をパッケージに実装してしまう虞がある。
【0007】
そして不良品の圧電振動片と、良品のICチップをパッケージの凹陥部に実装し、この凹陥部を気密封止した後の検査において圧電発振器が不良品と判定された場合、この圧電発振器は廃棄されてしまう。このため良品のICチップも廃棄してしまうので、圧電発振器のコストが高くなる問題点がある。
本発明は、容易に作製することができる、薄型および平面サイズが小型の圧電発振器および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る圧電発振器は、圧電振動子と、前記圧電振動子を発振させる回路を備えたICチップとを有し、前記圧電振動子の一方の面における各角部に段差部を備えた実装電極部を接合し、前記ICチップと前記段差部を電気的に接続して、前記実装電極部の下面に設けられた実装面を露出させつつ前記圧電振動子、前記ICチップおよび前記実装電極部を封止体で被った、ことを特徴としている。この場合、前記段差部は、ハーフエッチングまたはプレス加工によって形成されたことを特徴としている。
【0009】
この実装電極部は、ICチップとワイヤの高さよりも少しでも厚い1枚のリードフレームで形成されているので、圧電発振器を薄型化することができる。また段差部は、ハーフエッチングまたはプレス加工を用いて、実装電極部を垂直方向に沿って切り欠いて形成されるので、平面サイズを小さくすることができる。したがって圧電発振器の平面サイズを小型化することができる。さらに段差部は、ハーフエッチングまたはプレス加工により形成されるので、容易に形成することができる。さらにまた、既に完成品となっている圧電振動子とICチップとを組み合わせて圧電発振器を形成しているので、圧電振動子やICチップ、実装電極部を接合する前に圧電振動子やICチップの動作等を検査して不良品を取り除いておけば、良品のみを組み合わせて圧電発振器を製造できる。したがって不良品を用いることによる無駄がなくなり、圧電発振器のコストを低くできる。
【0010】
また本発明に係る圧電発振器は、圧電振動子と、前記圧電振動子を発振させる回路を備えたICチップと、上側の段差面と下側の段差面を垂直方向に沿う面によって接続され、前記ICチップと電気的に接続される段差部を備えるともに、下面に実装面を備え、前記圧電振動子の一方の面に上面が固着される実装電極部と、前記実装面を露出させつつ前記圧電振動子、前記ICチップおよび前記実装電極部を被う封止体と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
この実装電極部は、ICチップとワイヤの高さよりも少しでも厚い1枚のリードフレームで形成されているので、圧電発振器を薄型化することができる。また段差部は、上側の段差面と下方の段差面を垂直方向に沿う面により接続して形成されるので、平面方向のサイズを小さくすることができる。したがって圧電発振器の平面サイズを小型化することができる。さらに段差部は、ハーフエッチングまたはプレス加工により形成されるので、容易に形成することができる。さらにまた、既に完成品となっている圧電振動子とICチップとを組み合わせて圧電発振器を形成しているので、圧電振動子やICチップ、実装電極部を接合する前に圧電振動子やICチップの動作等を検査して不良品を取り除いておけば、良品のみを組み合わせて圧電発振器を製造できる。したがって不良品を用いることによる無駄がなくなり、圧電発振器のコストを低くできる。
【0012】
この場合、前記ICチップは前記圧電振動子の一方の面に固着されて、前記ICチップと前記圧電振動子とにワイヤが接合され、前記段差部は前記実装電極部の上部に設けられて、前記段差部における前記圧電振動子に対して反対側の面と前記ICチップとにワイヤが接合された、ことを特徴としている。圧電振動子とICチップが直に固着されているので、圧電発振器を薄型化することができる。
【0013】
また前記段差部は前記実装電極部の上面と下面の間に設けられ、前記実装電極部の隙間に前記ICチップが固着されたダイパッドが配設され、前記段差部と前記ICチップとにワイヤが接合された、ことを特徴としている。実装電極部の上面から段差部の上面までの高さは、ICチップの高さとワイヤの高さを足したものよりも少しでも高ければよいので、圧電発振器を薄型化することができる。また段差部の下面も切り欠かれているので、実装電極部と封止体の接合面積が大きくなり、実装電極部が封止体から抜け落ちるのを防止できる。
【0014】
また前記実装電極部の間に書き込み端子を設け、前記ICチップと導通したワイヤが接合される段差部を前記書き込み端子の先端部に設けたことを特徴としている。これにより圧電発振器を形成した後でも、書き込み端子を介してICチップにデータを書き込むことができるので、所望の特性の圧電発振器を得ることができる。
【0015】
また前記実装電極部に、切り欠き部を設けたことを特徴としている。この切り欠き部により、実装電極部と封止体との接合面積を増やすことができるので、実装電極部が封止体から抜け落ちるのを防止できる。また圧電振動子の一方の面に固着されるICチップの平面サイズに応じて切り欠き部を設けることにより、平面サイズの大きなICチップも圧電振動子の一方の面に固着できる。
【0016】
また前記実装電極部は、リードフレームにより形成されることを特徴としている。これにより圧電発振器は、ハーフエッチングまたはプレス加工によって段差部を形成したリードフレームを用いているので、容易に且つ安価に製造されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る圧電発振器および電子機器の最良の実施形態について説明する。まず第1の実施形態について説明する。図1は第1の実施形態に係る圧電発振器の説明図である。ここで図1(A)は圧電発振器の概略平面図であり、図1(B)は同図(C)のA−A線における概略断面図であり、図1(C)は概略底面図である。なお図1(A)および図1(C)では封止体の記載を省略している。図2は圧電振動子の概略断面図である。
【0018】
図1に示される圧電発振器10は、圧電振動子20を有しており、この圧電振動子20の一方の面に集積回路(IC)チップ40を配設するとともに、この一方の面における各角部に段差部52を備えた実装電極部50を接合し、ICチップ40と段差部52を電気的に接続した構成である。
【0019】
具体的には、次のような構成になっている。すなわち図2に示される圧電振動子20はパッケージベース22を備えており、この裏面に外部端子24が設けられている。この外部端子24は、ICチップ40および実装電極部50と重ならない位置、すなわちパッケージベース22の角部および中央部を除いた位置に設けられている。またパッケージベース22は、内部に凹陥部26が設けられており、この底面に接続電極28が設けられている。この接続電極28は、外部端子24と電気的に接続している。また接続電極28には、導電性接着剤30を用いて圧電振動片32が接合されている。圧電振動片32は、ATカット等の圧電振動片や音叉型圧電振動片、弾性表面波素子片等であればよい。そしてパッケージベース22の上部に、凹陥部26を気密封止する蓋体34が接合されている。
【0020】
このような圧電振動子20の裏面には、図1に示されるように圧電振動子20を発振させる回路を備えたICチップ40が固着されている。より具体的には、ICチップ40は、パッド42が設けられた能動面を圧電振動子20と反対側に向けて圧電振動子20の中央部に固着されている。そしてICチップ40は、圧電振動子20から出力される周波数の安定度を高めるために温度補償を行う回路や、圧電振動子20から出力される周波数を設定電圧に応じて制御する回路を備えることもできる。
【0021】
実装電極部50は、リードフレームから形成されており、下面が実装基板(不図示)に接合されるときの実装面58になっている。そして実装電極部50の上面の一部分が圧電振動子20の角部に固着されている。すなわち図1(A),(C)に示されるように、実装電極部50は圧電発振器10の各角部に設けられており、圧電振動子20は圧電発振器10の中央部に設けられている。また実装電極部50における下側の一部に、ハーフエッチングやプレス加工により形成された段差部52が設けられている。
【0022】
より具体的には、実装電極部50は、図1(C)に示されるように、圧電発振器10の中央部側に段差部52が設けられている。この段差部52には、ICチップ40に近い側に切り欠き部54が設けられている。このように実装電極部50は、図1(B)に示されるように、段差部52が設けられることによって、その一部が側面視L字型に形成されている。この段差部52には、ICチップ40と電気的に接続されるためのワイヤ56が接合される。なお実装電極部50の高さは、ICチップ40とワイヤ56を合わせた高さよりも高くなっている。
そして圧電振動子20、ICチップ40および実装電極部50の周囲は、実装電極部50の実装面58を露出させつつ樹脂等の封止体14によって被われている。
【0023】
次に、圧電発振器10の製造方法について説明する。まず圧電発振器10の実装電極部50はリードフレームから形成されており、実装電極部50の所定位置をハーフエッチングまたはプレス加工して、他の部分よりも薄い段差部52を形成する。また圧電振動子20は、導電性接着剤30を用いて圧電振動片32がパッケージベース22に実装された後、パッケージベース22上に蓋体34が接合されて圧電振動片32が真空または不活性ガスで気密封止される。この後、圧電振動子20は、正常に動くか否か等の検査が行われてもよい。
【0024】
そしてリードフレーム上に圧電振動子20を固着する。このとき、非導電性の接着剤を用いてリードフレームと圧電振動子20を接合すれば、接着剤が接合箇所から流れ出した場合でも、実装電極部50同士の短絡や、実装電極部50と外部端子24の短絡を防止できる。この後、圧電振動子20の裏面にICチップ40を固着する。この圧電振動子20とICチップ40の接合には、例えば銀ペーストを用いればよい。なおICチップ40を圧電振動子20に固着する前に、ICチップ40が正常に動作するか否か検査してもよい。
【0025】
この後、ICチップ40の能動面に設けられたパッド42と実装電極部50の段差部52とにワイヤボンディングを施して、これらをワイヤ56により導通する。そして実装電極部50の実装面58となる部分を除いて、圧電振動子20、ICチップ40、実装電極部50およびワイヤ56等の周囲を封止体14で被う。この封止体14は、例えば樹脂等で形成されていればよい。そして最後に、封止体14から突出した部分のリードフレームを切断して、圧電発振器10を形成する。
【0026】
このような圧電発振器10において、実装電極部50は、ICチップ40とワイヤ56の高さよりも厚い1枚のリードフレームで形成されているので、従来技術のようにリードフレームを積層させて厚みを稼ぐ必要がなく、圧電発振器10を薄型化することができる。そして実装電極部50において段差部52が設けられてない部分はICチップ40とワイヤ56の高さよりも少しでも厚ければよく、また段差部52の高さはICチップ40の高さ程度であればよいので、十分な強度を確保できる。さらに実装電極部50等の周囲は封止体14により被われているので、圧電発振器10は十分な強度を得ることができる。さらにまた圧電発振器10は、ハーフエッチング等によって段差部52を形成したリードフレームを用いているので、容易に且つ安価に製造することができる。
【0027】
図3は段差部を形成する工程の違いによって平面サイズが異なることを説明する断面図である。ここで図3(A)は折り曲げ加工して段差部を形成したリードフレームの断面図であり、図3(B)はハーフエッチングにより段差部を形成したリードフレームの断面図である。図3(A)に示されるリードフレーム60は、曲げ加工して段差部を形成しているので、リードフレーム60の一部に斜めに折れ曲がる部分が設けられてしまう。すなわち上側の段差面62と下側の段差面64は、斜め方向の面66により接続されている。これに対し図3(B)に示されるように、本実施形態に係る実装電極部50は、ハーフエッチング等により段差部52を形成しているので、上側の段差面68と下側の段差面70(実装面58)を垂直方向に沿う面72により接続することができる。これにより本実施形態では、実装電極部50の平面サイズを小型にすることができるとともに、段差部52を容易に形成できる。よって圧電発振器10は、平面サイズを小型化することができる。
【0028】
また圧電発振器10の製造時において、圧電振動子20やICチップ40、実装電極部50を接合する前に圧電振動子20やICチップ40の動作等を検査して不良品を取り除いておけば、良品のみを組み合わせて圧電発振器10を製造できるので、不良品を用いることによる無駄がなくなりコストを低くできる。
【0029】
また圧電発振器10は、実装電極部50の実装面58を露出させて、圧電振動子20やICチップ40、ワイヤ56、実装電極部50を封止体14で被っているので、圧電発振器10の全体を絶縁することができ、ワイヤ56が切断される等の故障や、内部にゴミが入るのを防止することができる。
【0030】
なお上述した圧電発振器10には、書き込み端子を設けることもできる。図4は書き込み端子を設けた圧電発振器の概略底面図である。なお図4では封止体の記載を省略している。書き込み端子80は、周波数調整用等のデータをICチップ40に書き込むときに用いられる。この書き込み端子80は、リードフレームから形成されており、ハーフエッチングやプレス加工により形成された段差部82が先端部に設けられている。そして書き込み端子80は、図4(A)に示されるように、圧電発振器10の短辺における実装電極部50の間に配設され、また図4(B)に示されるように、圧電発振器10の長辺における実装電極部50の間に配設される。また書き込み端子80は、圧電発振器10の短辺における実装電極部50の間と、長辺における実装電極部50の間のいずれにも配設されることもできる。さらに書き込み端子80は、図4(B)に示されるように、実装電極部50の間に複数配設されることもできる。なお書き込み端子80が配設される位置は、ICチップ40の能動面に設けられたパッド42の位置や、圧電振動子20に設けられた外部端子24の位置を考慮して適宜決定されればよい。
【0031】
このような書き込み端子80は、まず圧電振動子20やICチップ40等を封止体14で被った後に、この封止体14から突出させて切断される。この後、封止体14から突出している書き込み端子80にプローブ等を接触させて、データをICチップ40に書き込んだ後、突出している書き込み端子80を封止体14の表面に沿って切断すればよい。これにより圧電発振器10は、所望の特性を得ることができる。
【0032】
また圧電発振器10の実装電極部50は、次のような構成であってもよい。図5は第1の実施形態における実装電極部の説明図である。ここで図5(A)は実装電極部の第1の変形例に係る平面図であり、図5(B)は実装電極部の第2の変形例に係る断面図である。図1に示される実装電極部50では、ICチップ40の平面サイズが大きいものであっても、切り欠き部84が設けられているので圧電振動子20の裏面にICチップ40を搭載することができる。しかしICチップ40の平面サイズが圧電振動子20に比べてより小さいものであれば、図5(A)に示されるように切り欠き部84を実装電極部50に設けなくてもよい。これにより、実装電極部50と封止体14の接触面積が増えるので接合強度を増やすことができ、封止体14から実装電極部50が抜けるのを防止できる。
【0033】
また実装電極部50と封止体14の接合面積を増やすためには、例えば図5(B)に示されるように、段差部52においてワイヤ56が接合される面に切り欠き部84を設ければよい。これにより実装電極部50と封止体14の接触面積が増えるので接合強度を増やすことができ、封止体14から実装電極部50が抜けるのを防止できる。なお切り欠き部84が設けられる位置は、図5(B)に示される位置に限定されることはない。
【0034】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態に係る圧電発振器の変形例について説明するので、第1の実施形態に係る圧電発振器と同様の構成部分に同番号を付し、その説明を省略または簡略する。図6は第2の実施形態に係る圧電発振器の説明図である。ここで図6(A)は圧電発振器の概略断面図であり、図6(B)は圧電発振器に対応する部分におけるリードフレームの概略平面図である。
【0035】
圧電発振器90は、各角部に配設された実装電極部50と、平面方向における中央部に配設されたダイパッド92を備えている。そして圧電発振器90は、ICチップ40がダイパッド92上に固着されるとともに、実装電極部50の上面に圧電振動子20が固着されている。
【0036】
具体的には、次のような構成になっている。実装電極部50およびダイパッド92は、リードフレームから形成されている。この実装電極部50には、圧電発振器90の中央部に最も近い高さ方向の辺における上部および下部が切りかかれて、段差部52が設けられている。この段差部52は、ワイヤ56が接合されるものであり、ハーフエッチングまたはプレス加工によって形成される。そして実装電極部50の上面から段差部52の上面までの高さは、ICチップ40の高さと、このICチップ40に施されるワイヤ56の高さを足したものよりも高くなっている。また実装電極部50の下面は、実装基板(不図示)と接合する実装面58になっている。
【0037】
ダイパッド92は、段差部52に隣接しつつ、実装電極部50と接触することなく圧電発振器90の中央部に設けられている。すなわちダイパッド92は、実装電極部50の隙間に設けられている。このダイパッド92の上に、能動面を上側に向けてICチップ40が固着されている。そして能動面に設けられたパッド42と段差部52にワイヤ56が接合されて、ICチップ40と段差部52が導通している。
【0038】
このような実装電極部50の上面に圧電振動子20が固着されている。より具体的には、圧電振動子20は、圧電発振器90における平面方向の中央部に配設されており、外部端子24と実装電極部50が接合している。そして実装電極部50の実装面58を除いて、圧電振動子20やICチップ40、ワイヤ56、実装電極部50の周囲が封止体14によって被われている。
【0039】
次に、圧電発振器90の製造方法について説明する。まず圧電発振器90の所定位置にハーフエッチング等を行って段差部52を形成する。そしてICチップ40は、能動面を上側に向けてダイパッド92の上面に固着される。この後、ICチップ40の能動面に設けられたパッド42と段差部52にワイヤボンディングを施して、ICチップ40と段差部52を導通させる。なおICチップ40をダイパッド92に接合する前に、ICチップ40が正常に動作するか否か等の検査を行ってもよい。
【0040】
そして実装電極部50上に圧電振動子20を固着する。このとき圧電振動子20の裏面に設けられた外部端子24と、実装電極部50の上面とが接合している。なお圧電振動子20を実装電極部50に接合する前に圧電振動子20が正常に動作する否か等の検査を行ってもよい。この後、実装電極部50の実装面58となる部分を除いて、圧電振動子20、ICチップ40、実装電極部50およびワイヤ56等の周囲を封止体14で被う。そして最後に、封止体14から露出している部分のリードフレームを切断して、圧電発振器90を形成する。
【0041】
このような圧電発振器90では、第1の実施形態に係る圧電発振器と同様の効果を奏することができる。すなわち、圧電発振器90を薄型化および平面サイズの小型化ができ、且つ容易に作製することができる。なお上述した圧電発振器90は、第1の実施形態で説明した書き込み端子を備えることもできる。
【0042】
また圧電発振器90の実装電極部50は、次のような構成であってもよい。図7は第2の実施形態における実装電極部の説明図である。ここで図7(A)はこの変形例に係る圧電発振器の概略断面図であり、図7(B)〜(E)は実装電極部の変形例を示す概略断面図である。図7(A)に示される圧電発振器90は、実装電極部50の下側が切りかかれていない構成である。このように、実装電極部50の下面が切りかかれていなければ、実装面58を大きくすることができ、圧電発振器90と実装基板との接合面積を大きくすることができる。したがって圧電発振器90と前記実装基板との接合強度を向上できる。
【0043】
また実装電極部50と封止体14との接合面積を増やすためには、図7(B)〜(E)に示されるような切り欠き部84を設けてもよい。すなわち図7(B),(D)に示されるように、実装電極部50において段差部52が設けられた部分よりも上側で、且つ封止体14と接触する面に切り欠き部84を設けることができる。また図7(C),(E)に示されるように、段差部52においてワイヤ56が接合される面に切り欠き部84を設けてもよい。これにより実装電極部50と封止体14の接触面積が増えるので接合強度を増やすことができ、封止体14から実装電極部50が抜けるのを防止できる。なお切り欠き部84が設けられる位置は、図7(B)〜(E)に示される位置に限定されることはない。
【0044】
なお第1および第2の実施形態で説明した圧電発振器10,90は、例えばディジタル式携帯電話や、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、携帯情報端末等の、制御用のクロック信号を必要とする電子機器等に搭載される。ここで圧電発振器10,90がディジタル式携帯電話に搭載された場合、圧電発振器10,90は、例えば送受信信号の送信部および受信部を制御する中央演算装置(CPU)に接続される。そして圧電発振器10,90の出力周波数を前記CPUに内蔵された所定の分周回路等により、制御内容に適合したクロック信号として利用するようになっている。また圧電発振器10,90に温度補償回路を搭載して温度補償型圧電発振器とした場合、温度補償型圧電発振器は、例えば前記CPUの出力側に接続されるとともに、前記送信部および前記受信部に接続される。そして環境温度が変化して前記CPUからの基本クロックが変動しても、温度補償型圧電発振器により修正されて、前記送信部および前記受信部に与えられるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施形態に係る圧電発振器の説明図である。
【図2】第1の実施形態における圧電振動子の概略断面図である。
【図3】段差部を形成する工程の違いによって平面サイズが異なることを説明する断面図である。
【図4】書き込み端子を設けた圧電発振器の概略底面図である。
【図5】実装電極部の説明図である。
【図6】第2の実施形態に係る圧電発振器の説明図である。
【図7】第2の実施形態における実装電極部の説明図である。
【符号の説明】
【0046】
10………圧電発振器、14………封止体、20………圧電振動子、24………外部端子、40………ICチップ、50………実装電極部、52………段差部、58………実装面、80………書き込み端子、90………圧電発振器、92………ダイパッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と、前記圧電振動子を発振させる回路を備えたICチップとを有し、
前記圧電振動子の一方の面における各角部に段差部を備えた実装電極部を接合し、
前記ICチップと前記段差部を電気的に接続して、前記実装電極部の下面に設けられた実装面を露出させつつ前記圧電振動子、前記ICチップおよび前記実装電極部を封止体で被った、
ことを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記段差部は、ハーフエッチングまたはプレス加工によって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器。
【請求項3】
圧電振動子と、
前記圧電振動子を発振させる回路を備えたICチップと、
上側の段差面と下側の段差面が垂直方向に沿う面によって接続され、前記ICチップと電気的に接続される段差部を備えるともに、下面に実装面を備え、前記圧電振動子の一方の面に上面が固着される実装電極部と、
前記実装面を露出させつつ前記圧電振動子、前記ICチップおよび前記実装電極部を被う封止体と、
を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項4】
前記ICチップは前記圧電振動子の一方の面に固着されて、前記ICチップと前記圧電振動子とにワイヤが接合され、
前記段差部は前記実装電極部の上部に設けられて、前記段差部における前記圧電振動子に対して反対側の面と前記ICチップとにワイヤが接合された、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電発振器。
【請求項5】
前記段差部は前記実装電極部の上面と下面の間に設けられ、
前記実装電極部の隙間に前記ICチップが固着されたダイパッドが配設され、
前記段差部と前記ICチップとにワイヤが接合された、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電発振器。
【請求項6】
前記実装電極部の間に書き込み端子を設け、前記ICチップと導通したワイヤが接合される段差部を前記書き込み端子の先端部に設けたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の圧電発振器。
【請求項7】
前記実装電極部に、切り欠き部を設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の圧電発振器。
【請求項8】
前記実装電極部は、リードフレームにより形成されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の圧電発振器。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の圧電発振器を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate