説明

圧電発振器

【課題】収容器に形成された配線に起因する寄生容量を低減する圧電発振器を提供する。
【解決手段】励振電極31を備えた水晶振動片30とボンディングパッド41a〜41fを備えたICチップ40とが、配線を有するセラミックパッケージ10に収容され、平面視において水晶振動片30とICチップ40とが重ならない位置に配置された水晶発振器1であって、セラミックパッケージ10内に水晶振動片30の励振電極31と接続される配線の一部であるマウント電極16,17を備え、マウント電極16,17に水晶振動片30がマウントされ、かつマウント電極16,17とICチップ40における水晶振動片接続用のボンディングパッド41a,41bとが、配線の一部を跨いで金属ワイヤ50にて接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線間に生ずる寄生容量を低減させる圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、通信機器、OA機器などの電子機器に水晶発振器などの圧電発振器が使用されている。
圧電発振器は、配線パターンを設けたセラミックパッケージなどの収容器に、水晶振動片などの圧電振動片と、IC(集積回路)チップなどの回路素子とを収容し、蓋体にて収容器内を気密に封止している(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平6−48216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の圧電発振器において、セラミックパッケージはセラミックシートが積層されその間に配線パターンが形成されている。セラミックシートは絶縁材料であり、配線は金属材料のため、上下の配線が交差する部分では、絶縁材料を挟んで金属板が配置された構成となる。このため、配線の間に静電容量(寄生容量)が形成されることになり、圧電発振器として配線パターンに起因する寄生容量が増加するという問題がある。
特に、圧電振動片と回路素子間での寄生容量が大きくなると、圧電振動片の安定した発振を阻害するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる圧電発振器は、励振電極を備えた圧電振動片とボンディングパッドを備えた回路素子とが、配線パターンを有する収容器に収容され、平面視において前記圧電振動片と前記回路素子とが重ならない位置に配置された圧電発振器であって、前記収容器内に前記圧電振動片の前記励振電極と接続されるマウント電極を備え、前記マウント電極は前記配線パターンの一部であり、前記マウント電極に前記圧電振動片がマウントされ、前記マウント電極と前記回路素子における圧電振動片接続用の前記ボンディングパッドとが、前記配線パターンの一部の配線を跨いで金属ワイヤにて接続されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、マウント電極と回路素子における圧電振動片接続用のボンディングパッドとが、収容器に形成された配線パターンの一部を跨いで、金属ワイヤにて接続されている。このように、空中で配線パターンを跨いで接続されるため、配線が交差することで生ずる寄生容量を低減することができる。
また、圧電振動片と回路素子間を金属ワイヤで接続するため、この間の寄生容量を低減でき、圧電振動片の安定した発振を確保する圧電発振器を提供できる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる圧電発振器において、前記金属ワイヤが跨ぐ前記配線パターンの前記配線が、電源に接続される配線を含むことが望ましい。
【0009】
この構成によれば、電源に接続する配線(電源ライン)を空中で跨いでいることから、電源ラインからのノイズの影響を受けることなく圧電振動片と回路素子間を接続することができ、安定した圧電振動片の発振を確保できる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる圧電発振器において、前記収容器の前記マウント電極および接続電極が前記回路素子の固定された面より前記回路素子が存在する側に間隔を隔てて位置することが望ましい。
【0011】
この構成によれば、回路素子のボンディングパッドとマウント電極との接続において、ワイヤボンダーによるワイヤボンディング接続を容易にすることができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる圧電発振器において、前記圧電振動片が水晶振動片であることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、寄生容量を低減し安定した発振を確保できる水晶発振器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。以下の実施形態では圧電発振器として水晶発振器を例にとり説明する。
(実施形態)
【0015】
図1は水晶発振器の構成を示し、図1(a)は概略平面図、図1(b)は同図(a)のA−A断線に沿う概略断面図である。なお、図1(a)は蓋体を省略して内部構成が分かるように示している。
水晶発振器1は、セラミックパッケージ10と、水晶振動片30と、ICチップ40と、蓋体55とを備えている。
【0016】
セラミックパッケージ10は、セラミックシート10a,10b,10cを積層して凹部を形成し、その上方に固着されたシームリング10dから構成されている。
セラミックパッケージ10内には、配線パターンが形成され、その一部として接続電極12,13,14,15とマウント電極16,17が設けられている。
【0017】
水晶振動片30はATカット水晶振動片が用いられ、その両主面には励振電極31が形成されている。水晶振動片30はマウント電極16,17上に銀ペーストなどの導電性接着剤35にてマウントされ、励振電極31とマウント電極16,17との電気的な接続がなされている。
【0018】
ICチップ40は、複数のボンディングパッド41a,41b,41c,41d,41e,41fを備え、内部に発振回路、電圧制御回路、温度補償回路などを含んでいる。
ボンディングパッド41a,41bは水晶振動片に接続される水晶振動片接続用パッドである。また、ボンディングパッド41cは正電源に接続される正電源接続用パッド、ボンディングパッド41dは発振を制御する制御用信号が入力される制御用パッド、ボンディングパッド41eは出力信号を出力する出力用パッド、ボンディングパッド41fは負電源に接続される負電源接続パッドである。
そして、ICチップ40はセラミックパッケージ10の底部21にエポキシ系またはポリイミド系などの接着剤36を用いて固定されている。
【0019】
ボンディングパッド41a,41b,41c,41d,41e,41fは金線などの金属ワイヤ50にて、セラミックパッケージ10の接続電極12,13,14,15およびマウント電極16,17に接続されている。接続電極12,13,14,15およびマウント電極16,17は、ICチップ40の固定された底部21より上方の位置に構成されている。
マウント電極16,17とボンディングパッド41a,41bとの金属ワイヤ50での接続は、図1(a)に示すように平面視で配線24,25を跨いで接続されている。
【0020】
そして、セラミックパッケージ10の上方に設けられたコバールなどの金属で形成されたシームリング10dとコバール、42アロイなどの金属で形成された蓋体55とをシーム溶接してセラミックパッケージ10内を気密に封止している。
【0021】
次に、セラミックパッケージの構成について詳細に説明する。
前述のように、セラミックパッケージ10はセラミックシート10a,10b、10cが積層されて形成されている。これらのセラミックシートにおいて、セラミックシート10a,10bに配線パターンが形成されている。
図2(a)はセラミックシート10aの配線パターンを説明する概略平面図であり、図2(b)はセラミックシート10bの配線パターンを説明する概略平面図である。そして、図3はセラミックパッケージ10の構成を示す概略平面図である。
【0022】
セラミックパッケージのベースとなるセラミックシート10aは、図2(a)に示すように、一方の面に配線22,23,24,25が形成され、四隅のキャスタレーションを経由して、他方の面(裏面)へ引き出されている。そして、他方の面の四隅には、それぞれの配線22,23,24,25に対応する外部接続端子26a,26b,26c,26dが形成されている。なお、セラミックシート10aの一方の面はセラミックパッケージ10内にICチップ40を搭載する底部21を構成している。
【0023】
セラミックシート10bは、図2(b)に示すように、中央部に開口穴11が形成されたフレーム状に構成されている。
セラミックシート10bの一方の面における長手方向の面には、接続電極12,13,14,15およびマウント電極16,17が形成されている。
接続電極12,13,14,15の一部には、それぞれ導電ビア12a,13a,14a,15aが形成され、セラミックシート10bの一方の面から他方の面(裏面)に配線が引き出されるように構成されている。他方の面に引き出された配線は、セラミックシート10aの各配線の配線接続部22a,23a,24a,25aにそれぞれ接続される位置に形成されている。
【0024】
また、マウント電極16,17はセラミックシート10bの外周に引き出されて、その側面にサイド端子18,19が形成されている。
セラミックシート10c(図示せず)は中央部が開口されたフレーム状のシートであり、配線パターンは形成されていない。
このように、セラミックシート10a,10b、10cが積層された場合に、導電ビア12a,13a,14a,15aで上下のセラミックシートを接続する部分以外は、上下の配線が交差する部分がないように設計されている。
【0025】
そして、セラミックシート10a,10b、10cを積層して焼成し、さらにシームリング10dをロウ付けすることで、図3に示すようなセラミックパッケージ10が得られる。
なお、配線パターンは高融点金属のモリブデン(Mo)またはタングステン(W)にて形成され、表面に露出する配線パターンにはニッケル(Ni)および金(Au)のメッキが施されている。
【0026】
このように、セラミックパッケージ10の接続電極14は、配線24を経由して外部接続端子26aに接続され、接続電極15は配線25を経由して外部接続端子26bに接続されている。さらに、接続電極12は、配線22を経由して外部接続端子26cに接続され、接続電極13は配線23を経由して外部接続端子26dに接続されている。
外部接続端子26a,26b,26c,26dの配列は規格により統一され、外部接続端子26aはVcc端子、外部接続端子26bはVc端子、外部接続端子26cはOUT端子、外部接続端子26dはGND端子となっている。このことから、配線24は電源ラインとして配設されている。そして、このような端子としての機能を持つように、セラミックパッケージ10に収容されるICチップ40の各ボンディングパッド41a〜41fとの接続がなされる。
また、サイド端子18,19は水晶振動片などの特性検査に使用される検査用端子である。
【0027】
上記の水晶発振器1は以下のような手順で製造される(図1参照)。
まず、セラミックパッケージ10のマウント電極16,17に水晶振動片30を導電性接着剤35にてマウントする。そして、サイド端子18,19を用いて水晶振動片30の特性検査をする。
続いて、セラミックパッケージ10の底部21にICチップ40を接着剤36にて固着する。そして、ICチップ40の各ボンディングパッド41と接続電極12,13,14,15およびマウント電極16,17を金属ワイヤ50にて接続する。
その後、蓋体55とセラミックパッケージ10のシームリング10dとをシーム溶接して、セラミックパッケージ10内を気密に封止する。このようにして、水晶発振器1が製造される。
【0028】
以上、本実施形態の水晶発振器1は、マウント電極16,17とICチップ40における水晶振動片接続用のボンディングパッド41a,41bとが、セラミックパッケージ10に形成された配線24,25を跨いで、金属ワイヤ50にて接続されている。この金属ワイヤ50にて接続した配線は、セラミックパッケージ10内に配設した場合には他の配線とセラミックシートの上下で交差することになり寄生容量の増加となる。本実施形態では空中で配線24,25を跨いで接続されることから、配線が交差することで生ずる寄生容量を低減することができる。
また、水晶振動片30とICチップ40間を金属ワイヤ50で接続するため、この間の寄生容量を低減でき、水晶振動片30の安定した発振を確保する水晶発振器1を提供できる。
特に水晶発振器1が電圧制御水晶発振器(VCXO)の場合、負荷容量を変化させて発振周波数を制御するようになっているが、周波数可変範囲を広くするためには容量比γを小さくする必要がある。容量比γを小さくするには寄生容量を小さくすることで達成できる。このことから、本実施形態によれば配線に起因する寄生容量を低減できることから、周波数可変範囲を広く確保する電圧制御水晶発振器を得ることができる。
【0029】
さらに、電源に接続する配線24(電源ライン)を空中で跨いでいることから、電源ラインからのノイズの影響を受けることなく水晶振動片30とICチップ40間を接続することができ、安定した水晶振動片30の発振を確保できる。
また、セラミックパッケージ10のマウント電極16,17および接続電極12,13,14,15がICチップ40の固定された面より上方に間隔を隔てて位置していることから、ICチップ40のボンディングパッド41a〜41fとの接続において、ワイヤボンダーによるワイヤボンディング接続を容易にすることができる。
また、セラミックシート10a上に形成された配線25および配線24と、水晶振動片30の励振電極31との間に、真空や収容器内に充填されている気体と比較して誘電率が高いセラミックシートが存在しない。これにより、配線25および配線24と、励振電極31との間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0030】
なお、上記実施形態では水晶振動片を用いた水晶発振器を提示したが、SAW共振子素子を用いたSAW発振器、振動ジャイロ素子を用いた振動ジャイロセンサにも上記実施形態を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態の水晶発振器の構成を示し、(a)は概略平面図、(b)は(a)のA−A断線に沿う概略断面図。
【図2】セラミックパッケージにおけるセラミックシートの配線パターンを示す概略平面図。
【図3】セラミックパッケージの構成を示す概略平面図。
【符号の説明】
【0032】
1…水晶発振器、10…収容器としてのセラミックパッケージ、10a,10b,10c…セラミックシート、10d…シームリング、11…開口穴、12,13,14,15…接続電極、12a,13a,14a,15a…導電ビア、16,17…マウント電極、18,19…サイド端子、21…底部、22,23,24,25…配線、22a,23a,24a,25a…配線接続部、26a,26b,26c,26d…外部接続端子、30…圧電振動片としての水晶振動片、31…励振電極、35…導電性接着剤、36…接着剤、40…回路素子としてのICチップ、41a,41b…水晶振動片接続用のボンディングパッド、41c…正電源用のボンディングパッド、41d…制御用のボンディングパッド、41e…出力用のボンディングパッド、41f…負電源用のボンディングパッド、50…金属ワイヤ、55…蓋体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励振電極を備えた圧電振動片とボンディングパッドを備えた回路素子とが、配線パターンを有する収容器に収容され、平面視において前記圧電振動片と前記回路素子とが重ならない位置に配置された圧電発振器であって、
前記収容器内に前記圧電振動片の前記励振電極と接続されるマウント電極を備え、前記マウント電極は前記配線パターンの一部であり、
前記マウント電極に前記圧電振動片がマウントされ、前記マウント電極と前記回路素子における圧電振動片接続用の前記ボンディングパッドとが、前記配線パターンの一部の配線を跨いで金属ワイヤにて接続されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電発振器において、
前記金属ワイヤが跨ぐ前記配線パターンの前記配線が、電源に接続される配線を含むことを特徴とする圧電発振器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電発振器において、
前記収容器の前記マウント電極および接続電極が前記回路素子の固定された面より前記回路素子が存在する側に間隔を隔てて位置することを特徴とする圧電発振器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の圧電発振器において、
前記圧電振動片が水晶振動片であることを特徴とする圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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