説明

圧電発振器

【課題】周波数ドリフト特性が良い圧電発振器を提供する。
【解決手段】基板部と、基板部の一方の主面に第1の枠部が設けられて、第1の凹部空間が形成され、基板部の他方の主面に第2の枠部が設けられて、第2の凹部空間が形成された容器体と、第1の凹部空間内に露出した基板部の一方の主面に設けられた2個一対の圧電振動素子搭載パッドに搭載され、励振用電極が設けられている圧電振動素子と、第2の凹部空間内に露出した基板部の他方の主面に設けられた集積回路素子搭載パッドに搭載されている集積回路素子と、第1の凹部空間を気密封止する蓋体と、を備え、集積回路素子搭載パッドの内の1つである電源電圧パッドと接続されているビア導体と、ビア導体と接続されている第1の電極膜が、第2の凹部空間内の第2の枠部に設けられていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子機器には、電子部品として圧電発振器が用いられている。
図8は、従来の圧電発振器を示す断面図である。図9(a)は、従来の圧電発振器を構成する容器体の基板部の一方の主面を示す透視平面図であり、図9(b)は、従来の圧電発振器を構成する容器体の基板部の内層面を示す透視平面図であり、図9(c)は、従来の圧電発振器を構成する容器体の基板部の他方の主面を示す透視平面図である。
図8〜図9に示すように、従来の圧電発振器200は、その例として容器体201、圧電振動素子207、集積回路素子208、蓋体209とから主に構成されている。
容器体201は、基板部201aと2つの枠部201b、201cで構成されている。
この容器体201は、基板部201aの一方の主面に枠部201bが設けられて第1の凹部空間202が形成され、基板部201aの他方主面に枠部201cが設けられて第2の凹部空間204が形成される。
その第1の凹部空間202内に露出する基板部201aの一方の主面には、図9(a)に示すように、一対の圧電振動素子搭載パッド203a、203bが設けられている。
また、第2の凹部空間204内に露出する基板部201aの他方の主面には、図9(c)に示すように、集積回路素子搭載パッド205が設けられている。
また、基板部201aは、積層構造となっており、図9(b)に示すように、基板部201aの内層には、第1の配線パターン212aや第2の配線パターン212b等が設けられている。
この圧電振動素子搭載パッド203a、203b上には、導電性接着剤206を介して電気的に接続される一対の励振用電極を表裏主面に有した圧電振動素子207が搭載されている。この圧電振動素子207を囲繞する容器体201の枠部201bの頂面には金属製の蓋体209を被せられ、接合されている。これにより第1の凹部空間202が気密封止されている。
また、集積回路素子搭載パッド205上に半田等の導電性接合材を介して集積回路素子208が電気的、機械的に接合されている。この状態を搭載という。
【0003】
また、集積回路素子208は、可変容量素子に周囲温度に応じた制御電圧を印加して温度変化による発振回路の発振周波数の変動を補償するため、3次関数発生回路及び記憶素子部により温度補償回路部が設けられており、3次関数発生回路には、温度センサが接続されている。この温度センサは、検出した温度と、温度センサに印加させる電圧値とに基づいて生成される温度データ信号(電圧値)が3次関数発生回路に出力される構成となっている。このような圧電発振器200が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3406845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の圧電発振器200においては、集積回路素子208で発生した熱により、集積回路素子208に内蔵されている温度センサが感知する温度と、実際の圧電振動素子207の周囲の温度が異なることがある。これらにより、従来の圧電発振器200は、誤った温度データ信号(電圧値)により補正されるため、圧電発振器に電圧を印加した時点での発振周波数と、電圧を印加してから一定時間が経過した時点での発振周波数との周波数変動差を示している周波数ドリフト特性が悪くなるといった課題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、周波数ドリフト特性が良い圧電発振器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧電発振器は、基板部と、基板部の一方の主面に第1の枠部が設けられて、第1の凹部空間が形成され、基板部の他方の主面に第2の枠部が設けられて、第2の凹部空間が形成された容器体と、第1の凹部空間内に露出した基板部の一方の主面に設けられた2個一対の圧電振動素子搭載パッドに搭載され、励振用電極が設けられている圧電振動素子と、第2の凹部空間内に露出した基板部の他方の主面に設けられた集積回路素子搭載パッドに搭載されている集積回路素子と、第1の凹部空間を気密封止する蓋体と、を備え、集積回路素子搭載パッドの内の1つである電源電圧パッドと接続されているビア導体と、ビア導体と接続されている第1の電極膜が、第2の凹部空間内の第2の枠部に設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
また、第2の枠部の主面にビア導体及び第1の電極膜と接続されている第2の電極膜が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
また、第2の枠部の主面に露出するビア導体及び第2の電極膜を覆う保護膜を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圧電発振器によれば、前記集積回路素子搭載パッドの内の1つである電源電圧パッドと接続されているビア導体と接続されている第1の電極膜を設けることによって、電源電圧が電源電圧パッドに印加されることで発生する熱を第1の電極膜を介して空気中に放熱することができる。放熱することで集積回路素子の温度が下がり、その下がった温度で、集積回路素子と圧電振動素子の温度が近い値になる。これにより、集積回路素子に内蔵されている温度センサが感知する温度と、実際の圧電振動素子の周囲の温度が同じ値に近づくことになる。よって、正しい温度データ信号(電圧値)により補正されるため圧電発振器の周波数ドリフト特性を良くすることが可能となる。
【0011】
また、第2の枠部の主面にビア導体及び第1の電極膜と接続されている第2の電極膜が設けられていることによって、集積回路素子で発生した熱を第2の電極膜を介して空気中に、さらに放熱することができる。
【0012】
第2の枠部の主面に露出するビア導体及び第2の電極膜を覆う保護膜を備えていることによって、ビア導体と外部接続用電極端子との間、第2の電極膜と外部接続用電極端子との間に導電性の異物が付着することがなくなるため、短絡を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。尚、圧電振動素子に水晶を用いた場合について説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器を示す分解斜視図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器を示す集積回路素子搭載側から見た斜視図である。図4(a)は、本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器を構成する容器体の基板部の一方の主面を示す透視平面図であり、図4(b)は、本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器を構成する容器体の基板部の内層面を示す透視平面図であり、図4(c)は、本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器を構成する容器体の基板部の他方の主面を示す透視平面図であり、(d)は、本発明の第1
の実施形態に係る圧電発振器を構成する容器体の他方主面を示す平面図である。また、図示した寸法も一部誇張して示している。
【0015】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器100は、容器体110と圧電振動素子120と蓋体130と集積回路素子140で主に構成されている。この圧電発振器100は、前記容器体110に形成されている第1の凹部空間111内に圧電振動素子120が搭載され、第2の凹部空間114内には、集積回路素子140が搭載されている。その第1の凹部空間111が蓋体130により気密封止された構造となっている。
【0016】
圧電振動素子120は、図1及び図2に示すように、水晶素板121に励振用電極122を被着形成したものであり、外部からの交番電圧が励振用電極122を介して水晶素板121に印加されると、所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
水晶素板121は、人工水晶体から所定のカットアングルで切断し外形加工を施された概略平板状で平面形状が例えば四角形となっている。
励振用電極122は、前記水晶素板121の表裏両主面に金属を所定のパターンで被着・形成したものである。
このような圧電振動素子120は、その両主面に被着されている励振用電極122から延出する引き出し電極と第1の凹部空間111内底面に形成されている圧電振動素子搭載パッド113とを、導電性接着剤150を介して電気的且つ機械的に接続することによって第1の凹部空間111に搭載される。このときの引き出し電極が設けられた一辺とは反対側の自由端となる端辺を圧電振動素子120の先端部123とする。
【0017】
集積回路素子140は、図1〜図3に示すように、回路形成面に前記圧電振動素子120からの発振出力を生成する発振回路等が設けられており、この発振回路で生成された出力信号は外部接続用電極端子119を介して圧電発振器100の外へ出力され、例えば、クロック信号等の基準信号として利用される。
また、集積回路素子140には、可変容量素子に周囲温度に応じた制御電圧を印加して温度変化による発振回路の発振周波数の変動を補償するため、3次関数発生回路及び記憶素子部により温度補償回路部が設けられており、3次関数発生回路には、温度センサが接続されている。
この温度センサは、検出した温度と、温度センサに印加させる電圧値とに基づいて生成される温度データ信号(電圧値)が3次関数発生回路に出力される構成となっている。
集積回路素子140は、容器体110の第2の凹部空間114内に露出した基板部110aに形成された集積回路素子搭載パッド115に半田等の導電性接合材を介して搭載されている。
【0018】
図1〜図3に示すように、容器体110は、基板部110aと、第1の枠部110b、第2の枠部110cとで主に構成されている。
この容器体110は、基板部110aの一方の主面に第1の枠部110bが設けられて、第1の凹部空間111が形成されている。また、容器体110の他方の主面に第2の枠部110cが設けられて、第2の凹部空間114が形成されている。
尚、この容器体110を構成する基板部110a及び第2の枠部110cは、例えば、アルミナセラミックス、ガラス−セラミック等のセラミック材料を複数積層することよって形成されている。また、基板部110aは、セラミック材が積層した構造となっている。
第1の枠部110bは、例えば、シールリングを用いる。この場合、第1の枠部110bは、42アロイやコバール等の金属から成り、中心が打ち抜かれた枠状になっている。
また、第1の枠部110bは、基板部110aの一方の主面の外周を囲繞するように設けられた封止用導体膜112上にロウ付けなどにより接続される。
第1の凹部空間111内で露出した基板部110aの一方の主面には、2個一対の圧電振動素子搭載パッド113a、113bが設けられている。
また、図1〜図3に示すように容器体110は、基板部110aの他方の主面と第2の枠部110cによって第2の凹部空間114が形成されている。
図4(b)に示すように、基板部110aの内層には、配線パターン117(117a、117b)等が設けられている。
図4(c)及び図4(d)に示すように、第2の凹部空間114内で露出した基板部110aの他方の主面には、複数の集積回路素子搭載パッド115と2個一対の圧電振動素子測定用パッド116a、116bが形成されている。
集積回路素子搭載パッド115の1つには、外部接続用電極端子119の電源電圧端子(図示せず)と接続されている電源電圧パッド115aがあり、その電源電圧パッド115aとビア導体118cが接続されている。つまり、電源電圧パッド115aには、電源電圧が印加されることになる。
図3及び図4(d)に示すように、第2の枠部110cの主面には、ビア導体118cと、外部接続用電極端子119が設けられている。つまり、基板部110aの集積回路素子搭載パッド115が設けられている主面と平行となる第2の枠部110cの主面の4隅には、外部接続用電極端子119が設けられ、外部接続用電極端子119の間にはビア導体118cの端部が露出するように設けられている。
【0019】
図4(a)〜図4(d)に示すように、一方の圧電振動素子搭載パッド113aは、1つの基板部側ビア導体118aで、容器体110の基板部110aの内層に形成されている配線パターン117aと接続されている。また、図4(a)〜図4(d)に示すように、前記配線パターン117aは、基板部側ビア導体118bで他方の圧電振動素子測定用パッド116bと接続されている。これにより、前記一方の圧電振動素子搭載パッド113aは、前記他方の圧電振動素子測定用パッド116bと接続されることになる。
他方の圧電振動素子搭載パッド113bは、1つの基板部側ビア導体118aで、前記容器体110の基板部110aの内層に設けられている配線パターン117bと接続されている。
また、前記配線パターン117bは、基板部側ビア導体118bで、一方の圧電振動素子測定用パッド116aと接続されている。これにより、前記他方の圧電振動素子搭載パッド113bは、前記一方の圧電振動素子測定用パッド116aと接続されることになる。
集積回路素子搭載パッド115と外部接続用電極端子119は、前記容器体110の第2の凹部空間114内の基板部110aに形成された部分を有する配線パターン(図示せず)と第2の枠部110cの内部に形成されたビア導体(図示せず)により接続されている。
【0020】
図3及び図4(d)に示すように、第1の電極膜D1は、第2の枠部110cの第2の凹部空間114内に露出するように設けられている。具体的には、第2の枠部110cの厚さ方向に、例えば、U字型の溝を設けておき、この溝の中に、例えば、タングステン等の導体を形成することでビア導体118cを設ける。このビア導体118cと接続するように、第1の電極膜D1が形成されている。
第1の電極膜D1は、第2の枠部110cの主面から、基板部110aの主面までの長さで設けられている。基板部110aの主面とは、集積回路素子搭載パッド115が設けられている基板部110aの他方の主面のことである。
第1の電極膜D1は、第2の枠部110cの集積回路素子150と対向する面に露出するように設けられている。
【0021】
2個一対の圧電振動素子測定用パッド116a、116bは、容器体110の第2の凹部空間114内の露出した基板部110aに設けられている。
前記圧電振動素子測定用パッド116a、116bは、容器体110の第1の凹部空間111に搭載されている圧電振動素子120の発振周波数やクリスタルインピーダンス等の特性を測定するために用いられる。
【0022】
図4(b)に示すように、配線パターン117aは、容器体110の第1の凹部空間111の開口側から見て、容器体110の中央付近に引き出され、基板部側ビア導体118bを介して、他方の圧電振動素子測定用パッド116bと接続されている。
また、図4(b)に示すように、配線パターン117bは、容器体10の第1の凹部空間111の開口側から見て、容器体110の中央付近に向かって引き出され、基板部側ビア導体118bを介して、一方の圧電振動素子測定用パッド116aと接続されている。
【0023】
蓋体130は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)やFe−Ni−Co合金(コバール)などからなる。このような蓋体130は、第1の凹部空間111を、窒素ガスや真空などで気密的に封止される。具体的には、蓋体130は、所定雰囲気で、容器体110のシールリング110b上に載置され、シールリング110bの表面の金属と蓋体130の金属の一部とが溶接されるように所定電流を印加してシーム溶接を行うことにより、シールリング110bに接合される。
【0024】
前記導電性接着剤150は、シリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニッケル鉄(NiFe)、のうちのいずれかまたはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。
【0025】
尚、前記容器体110は、アルミナセラミックスから成る場合、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得たセラミックグリーンシートの表面に、封止用導体膜112、圧電振動素子搭載パッド113、集積回路素子搭載パッド115、外部接続用電極端子119等となる導体ペーストを、また、セラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿設しておいた貫通孔内にビア導体となる導体ペーストを従来周知のスクリーン印刷によって塗布するとともに、これを複数枚積層してプレス成形した後、高温で焼成することにより製作される。
【0026】
本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器によれば、集積回路素子搭載パッド115の内の1つである電源電圧パッド115aと接続されているビア導体118cと接続されている第1の電極膜D1を設けることによって、電源電圧が電源電圧パッド115aに印加されることで発生する熱を第1の電極膜D1を介して空気中に放熱する。放熱することで集積回路素子140の温度が下がり、その下がった温度で、集積回路素子140と圧電振動素子120の温度が近い値になる。そのため、集積回路素子140に内蔵されている温度センサが感知する温度と、実際の圧電振動素子120の周囲の温度が同じ値に近づくことになる。よって、正しい温度データ信号(電圧値)により補正されるため圧電発振器100の周波数ドリフト特性を良くすることが可能となる。
周波数ドリフト特性が良いとは、圧電発振器100に電圧を印加した時点の発振周波数と電圧を印加してから一定時間が経過した時点の発振周波数の変動差が少ないということである。例えば、横軸を経過時間、縦軸を周波数変動差とした場合に、周波数変動差が0に近付くほど、周波数ドリフト特性が良好ということである。
【0027】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器は、第2の枠部の主面に前記ビア導体及び前記第1の電極膜と接続されている第2の電極膜が形成されている点で第1の実施形態と異なる。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器を示す集積回路素子搭載側から見た斜視図である。
【0028】
図5に示すように、第1の電極膜Dは、第2の枠部110cの第2の凹部空間114内に露出するように設けられている。具体的には、第2の枠部110cの厚さ方向に、例えば、U字型の溝を設けておき、この溝の中に、例えば、タングステン等の導体を形成することでビア導体118cを設ける。このビア導体118cと接続するように、第1の電極膜D1が形成されている。
第2の凹部空間114内に形成されている第1の電極膜D1は、第2の枠部110cの主面から、基板部110aの主面までの長さで設けられている。基板部110aの主面とは、集積回路素子搭載パッド115が設けられている基板部110aの他方の主面のことである。
第1の電極膜D1は、第2の枠部110cの集積回路素子150と対向する面に露出するように設けられている。
第2の電極膜D2は、第2の枠部の主面110cに設けられ、ビア導体118c及び第1の電極膜D1と接続されている。つまり、第2の枠部110cの主面に形成されている第2の電極膜D2は、外部接続用電極端子119の間に設けられている。
【0029】
本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器によれば、第2の枠部110cの主面にビア導体118c及び第1の電極膜D1と接続されている第2の電極膜D2が設けられていることによって、第1の実施形態よりもさらに熱を空気中に放熱することができる。よって、正しい温度データ信号(電圧値)により補正されるため圧電発振器100の周波数ドリフト特性をさらに良くすることが可能となる。
【0030】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る圧電発振器は、第2の枠部の主面に露出した前記ビア導体の端部に保護膜を備えている点で第1の実施形態と異なる。
図6は、本発明の第3の実施形態に係る圧電発振器を示す集積回路素子搭載側から見た斜視図である。
【0031】
図6に示すように、容器体110は、基板部110aと、第1の枠部110b、第2の枠部110cとで主に構成されている。
この容器体110は、基板部110aの一方の主面に第1の枠部110bが設けられて、第1の凹部空間111が形成されている。また、容器体110の他方の主面に第2の枠部110cが設けられて、第2の凹部空間114が形成されている。
図6に示すように、第2の枠部110cの主面には、外部接続用電極端子119とビア導体118cが設けられている。つまり、基板部110aの集積回路素子搭載パッド115が設けられている主面と平行となる第2の枠部110cの主面の4隅には、外部接続用電極端子119が設けられ、外部接続用電極端子119の間にはビア導体118cの端部が露出するように設けられている。
図6に示すように、ビア導体118cは、第2の枠部110cに設けられている。具体的には、第2の枠部110cの厚さ方向に、例えば、U字型の溝を設けておき、この溝の中に、例えば、タングステン等の導体を形成することでビア導体118cを設ける。第2の枠部110cの主面から、基板部110aの主面までの長さで設けられている。
このビア導体118cの端部を被覆するように、保護膜Rが第2の枠部110cの主面に形成されている。この保護膜Rは、例えば、アルミナセラミックス等を従来周知のスクリーン印刷を用いて形成される。
【0032】
本発明の第3の実施形態に係る圧電発振器によれば、第2の枠部110cの主面に露出するビア導体118cを覆う保護膜Rを備えていることによって、ビア導体118と外部接続用電極端子の間に導電性の異物が付着することがなくなるため、短絡を防止することが可能となる。
【0033】
(実施例)
本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器と従来の圧電発振器についての実施例を以下に示す。
図7は、本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器と従来の圧電発振器の周波数ドリフト特性を示す図である。
実施例として、図1〜図4に示す本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器100の構造に従って、前記第2の枠部110cの主面と、第2の凹部空間114内の第2の枠部110cの側面に前記集積回路素子搭載パッド115と接続されているビア導体118cを露出して設けた。
【0034】
また、比較例として、図8及び図9に示す従来の圧電発振器200の構造に従って設けた。
【0035】
尚、今回作製した本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器100と従来の圧電発振器200の基準発振周波数fは、27.456MHzとした。
【0036】
まず、本発明の圧電発振器100と従来の圧電発振器200の発振周波数を測定した。
測定方法は、まず、本発明の圧電発振器100と従来の圧電発振器200の電源を印加してから0.15秒後に測定し、0.15秒後から0.1秒ステップで発振周波数fsを測定する。この時、0.15秒後に測定した発振周波数f、0.15秒後以降の発振周波数fsを計算式(1)に代入し、周波数変動差(df/f)を算出した。
df/f=(fs−f)/f・・・(1)
このときの周波数変動差(df/f)を周波数ドリフト値として算出した。
【0037】
この結果として、図7示すように、本発明の圧電発振器100では、算出した周波数ドリフト値の最大値が13.96ppbであった。また、図6に示すように、従来の圧電発振器200では、算出した周波数ドリフト値の最大値は、21.19ppbであった。
これにより、本発明の圧電発振器100の方が、周波数変動差が0に近いため、周波数ドリフト特性が良くなることがわかる。つまり、本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器100の第2の凹部空間114内の第2の枠部110cに設けられ、集積回路素子搭載パッド115の内の1つ電源電圧パッド115aと接続されているビア導体118cと、前記ビア導体118cと接続される第1の電極膜D1を設けることによって、周波数ドリフト特性が良くなることがわかる。
【0038】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、前記した本実施形態では、圧電振動素子120を構成する圧電素材として水晶を用いた場合を説明したが、他の圧電素材として、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムまたは、圧電セラミックスを圧電素材として用いた圧電振動素子でも構わない。
また、保護膜Rは、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂によって形成しても構わない。
また、ビア導体118cの溝の形状をU字状としたが、V字状で形成しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器を示す分解斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器を示す集積回路素子搭載側から見た斜視図である。
【図4】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器を構成する容器体の基板部の一方の主面を示す透視平面図であり、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器を構成する容器体の基板部の内層面を示す透視平面図であり、(c)は、本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器を構成する容器体の基板部の他方の主面を示す透視平面図であり、(d)は、本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器を構成する容器体の他方主面を示す平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器を示す集積回路素子搭載側から見た斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器を示す集積回路素子搭載側から見た斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器と従来の圧電発振器の周波数ドリフト特性を示す図である。
【図8】従来における圧電発振器を示す断面図である。
【図9】(a)は、従来の圧電発振器を構成する容器体の基板部の一方の主面を示す透視平面図であり、(b)は、従来の圧電発振器を構成する容器体の基板部の内層面を示す透視平面図であり、(c)は、従来の圧電発振器を構成する容器体の基板部の他方の主面を示す透視平面図である。
【符号の説明】
【0040】
110・・・容器体
110a・・・基板部
110b・・・第1の枠部(シールリング)
110c・・・第2の枠部
111・・・第1の凹部空間
112・・・封止用導体膜
113a、113b・・・圧電振動素子搭載パッド
114・・・第2の凹部空間
115・・・集積回路素子搭載パッド
116a、116b・・・圧電振動素子測定用パッド
117(117a、117b)・・・配線パターン
118a、118b・・・基板部側ビア導体
118c・・・ビア導体
119・・・外部接続用電極端子
D1・・・第1の電極膜
D2・・・第2の電極膜
R・・・保護膜
120・・・圧電振動素子
121・・・水晶素板
122・・・励振用電極
123・・・先端部
130・・・蓋体
140・・・集積回路素子
150・・・導電性接着剤
100・・・圧電発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部と、前記基板部の一方の主面に第1の枠部が設けられて、第1の凹部空間が形成され、前記基板部の他方の主面に第2の枠部が設けられて、第2の凹部空間が形成された容器体と、
前記第1の凹部空間内に露出した基板部の一方の主面に設けられた2個一対の圧電振動素子搭載パッドに搭載され、励振用電極が設けられている圧電振動素子と、
前記第2の凹部空間内に露出した基板部の他方の主面に設けられた集積回路素子搭載パッドに搭載されている集積回路素子と、
前記第1の凹部空間を気密封止する蓋体と、を備え、
前記集積回路素子搭載パッドの内の1つである電源電圧パッドと接続されているビア導体と、
前記ビア導体と接続されている第1の電極膜が、前記第2の凹部空間内の前記第2の枠部に設けられていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記第2の枠部の主面に前記ビア導体及び前記第1の電極膜と接続されている第2の電極膜が設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧電発振器。
【請求項3】
前記第2の枠部の主面に露出する前記ビア導体及び前記第2の電極膜を覆う保護膜を備えていることを特徴とする請求項1及び請求項2記載の圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−109882(P2010−109882A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281819(P2008−281819)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】