説明

圧電発振回路

【課題】 高周波領域で少ない部品数で大きな負性抵抗が得られ、安定した発振を実現できる圧電発振回路を提供する。
【解決手段】 第1のトランジスタQ1のベースに水晶振動子X1が接続され、第1のトランジスタQ1のコレクタに第2のトランジスタQ2のエミッタを接続してカスケード接続を構成し、更に第2のトランジスタQ2のコレクタから第1のトランジスタQ1のエミッタにコンデンサC3又は抵抗R7を介して帰還接続し、第2のトランジスタQ2のコレクタには電源電圧Vccが負荷抵抗R6を介して印加される圧電発振回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発振回路に係り、特に、高周波領域で少ない部品数で大きな負性抵抗が得られ、安定した発振を可能にする圧電発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
圧電発振回路として、最も多く使用されるコルピッツ発振回路は、高速光通信などのクロック供給源の高周波発振回路として使用されている。
【0003】
[従来のコルピッツ発振回路:図9]
ここで、従来のコルピッツ発振回路について図9を参照しながら説明する。図9は、従来のコルピッツ発振回路の回路図である。
従来のコルピッツ発振回路は、図9に示すように、水晶振動子Xaと、トランジスタQaとを備え、水晶振動子Xaの一端がトランジスタQaのベースに接続され、その他端が接地されており、電源電圧端子VCCが抵抗Raを介してトランジスタQaのベースに、電源電圧端子VCCが抵抗Rcを介してトランジスタQaのコレクタに接続し、当該コレクタにはコンデンサCcを介して出力端子OUTPUTが設けられている。
【0004】
また、トランジスタQaのベースには、抵抗Rbの一端が接続され、他端が接地し、当該ベースに直列接続のコンデンサCaとコンデンサCbが接続され、コンデンサCbの他端が接地している。
また、トランジスタQaのエミッタには、コンデンサCaとコンデンサCbの間の点が接続され、当該エミッタには抵抗Reの一端が接続され、他端が接地されている。
【0005】
[図9の等価回路:図10]
図9の発振回路について図10を参照しながら説明する。図10は、図9の等価回路である。
図10に示すように、図9の発振回路は、トランジスタQaのベースに水晶振動子Xaの一端が接続され、その他端が接地され、また、ベースには直列接続のコンデンサCaとコンデンサCbが接続され、コンデンサCbの他端が接地している。
【0006】
そして、コンデンサCaとコンデンサCbとの間の点がトランジスタQaのエミッタに接続し、トランジスタQaのコレクタが抵抗Rcを介して接地される。
更に、コレクタとベースとの間には、容量Cbcが形成され、ベースとエミッタとの間には、容量Cbeが形成されている。
【0007】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2000−252749号公報「圧電発振器」(東洋通信機株式会社:特許文献1)、特開2003−60438号公報「圧電発振器」(東洋通信機株式会社:特許文献2)、特開2005−72828号公報「水晶発振回路」(東洋通信機株式会社:特許文献3)、特開2006−186949号公報「ピアース型発振回路」(日本電波工業株式会社:特許文献4)がある。
また、「負性抵抗増大回路を付加した100MHz〜数GHz帯コルピッツ発振回路の動作解析」H16 電気学会研究会資料 電子回路研究会 ECT-04-84(非特許文献1)がある。
【0008】
特許文献1には、圧電発振器において、圧電振動子と発振用トランジスタとを含むコルピッツ型発振器と、その出力を増幅する増幅手段と、その出力を整流する整流手段を備え、整流手段の出力を発振用トランジスタのベースに帰還することが示されている。
【0009】
特許文献2には、圧電発振器において、圧電振動子と、発振用トランジスタとを有し、発振用トランジスタのエミッタは抵抗と容量の並列接続回路を介して接地し、発振用トランジスタのコレクタとエミッタとの間に容量を挿入接続した構成が示されている。
【0010】
特許文献3には、水晶発振回路において、水晶振動子とシリコントランジスタで構成されるコルピッツ型水晶発振回路を構成し、トランジスタQ2によるコレクタ接地型増幅回路で増幅された発振信号をトランジスタQ2のエミッタからトランジスタQ1のコレクタに電流帰還させることが示されている。
【0011】
特許文献4には、ピアース型発振回路において、反転増幅回路の出力回路と入力回路の間に圧電素子を設け、当該反転増幅回路が、水晶振動子を通した入力を反転増幅するエミッタ接地のトランジスタと、そのトランジスタのコレクタと出力回路との間でカスケード接続され、そのコレクタから見て低入力インピーダンスで、出力回路から見て高出力インピーダンスとなるベース接地型のトランジスタで構成されることが示されている。
【0012】
非特許文献1では、コルピッツ発振回路の後段に設けた増幅回路の出力をコルピッツ発振回路のコレクタ又はベース端子に正相で帰還させることで、負性抵抗の増大を図ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−252749号公報
【特許文献2】特開2003−60438号公報
【特許文献3】特開2005−72828号公報
【特許文献4】特開2006−186949号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】「負性抵抗増大回路を付加した100MHz〜数GHz帯コルピッツ発振回路の動作解析」H16 電気学会研究会資料 電子回路研究会 ECT-04-84
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
近年、加工技術の進歩により水晶デバイス等の更なる高周波化が進んでいるが、上記従来のコルピッツ発振回路では、励振電流を低く抑えられる設計が可能である反面、高周波になる程、回路損失が大きくなり、安定動作が困難になるという問題点があった。
【0016】
具体的には、図9のコルピッツ発振回路において、入力インピーダンスは、負性抵抗とリアクタンスから成り、これらの特性を高周波でも得るようにするためには、コンデンサCa及びCbを小さくしなければならない。
一般に、コルピッツ発振回路は、高周波を発振させようとする時に、コンデンサCa,Cbを小さくする必要があるが、それにより回路損失を増大し、十分な負性抵抗が得られなくなる。
【0017】
また、図8に示す発振回路の等価回路では、高周波になるに従って負性抵抗が小さくなるため、コンデンサCa,Cbを小さくしたり、トランジスタQaのバイアスを調整してコレクタ電流Icを増やして高周波領域へ負性抵抗をシフトする必要がある。
【0018】
一方、コルピッツ発振回路は、その構成から、高周波になるとトランジスタ自身が持っている内部(寄生)容量だけで発振可能であるが、これは逆に言えば、高周波領域ではこれらの内部容量が発振周波数に大きく影響していることを示している。
【0019】
例えば、高周波になると、外部に取り付けたコンデンサCaがなくても、トランジスタQaが持っているベースとエミッタ間の容量Cbeによって負性抵抗が生成され、十分に発振が可能となる。
【0020】
他方、ベースとコレクタの間の容量Cbc、つまり、ミラー容量は、トランジスタの高周波特性を劣化させる要因であることは既知であるが、発振回路においても同様であり、負性抵抗を減少させる要因となる。
【0021】
また、従来の発振回路において、特許文献4及び非特許文献1に示すように、負性抵抗を増大させる回路等を付加する方法も検討されているが、部品点数が大幅に増え、回路規模が大きくなるという問題点があった。
【0022】
尚、特許文献2の図2,3,4にバッファアンプ用トランジスタのコレクタが発振用トランジスタのエミッタに容量7を介して接続している構成が示されているが、本願図7のCa,Cbに相当する容量で、発振動作を起こすために必要な構成であり、発振周波数を決定する役割を果たし、バッファアンプ用トランジスタの出力をフィードバックする役割は果たしていないものである。
【0023】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、高周波領域で少ない部品数で大きな負性抵抗が得られ、安定した発振を実現できる圧電発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、圧電発振回路において、水晶振動子と、第1のトランジスタと、第2のトランジスタとを備え、水晶振動子の一端が第1のトランジスタのベースに接続され、他端が接地され、第1のトランジスタのコレクタと第2のトランジスタのエミッタがカスケード接続され、第1のトランジスタのベースに一端が接続され、他端が接地される第1の抵抗を設け、当該ベースに第1のコンデンサと第2のコンデンサが直列に接続されて他端が接地され、第1のトランジスタのエミッタは第2の抵抗を介して接地され、第2のトランジスタのベースには第3のコンデンサと第3の抵抗が並列に接続して他端が接地され、第2のトランジスタのコレクタと第1のトランジスタのエミッタとが第4のコンデンサを介して帰還接続され、第1のトランジスタと第2のトランジスタを動作させるために各ベースにバイアス抵抗が接続され、第2のトランジスタのコレクタには負荷抵抗を介して電源電圧が印加されることを特徴とする。
【0025】
本発明は、上記圧電発振回路において、第2のトランジスタのコレクタと第1のトランジスタのエミッタとを帰還接続する途中に設けられた第4のコンデンサの代わりに、第4の抵抗を介して帰還接続されることを特徴とする。
【0026】
本発明は、上記圧電発振回路において、第1のコンデンサと第2のコンデンサとの間の点が第1のトランジスタのエミッタに接続し、第2のトランジスタのコレクタ出力に第5のコンデンサを介してバッファアンプを設けたことを特徴とする。
【0027】
本発明は、上記圧電発振回路において、第2のコンデンサの接地側の端子に直流阻止用の第6のコンデンサの一端が接続され、他端が接地され、第1のトランジスタのエミッタにはコイルを介して第2の抵抗が接続され、第2のコンデンサと第6のコンデンサの間の点がコイルと第2の抵抗との間の点に接続されていることを特徴とする。
【0028】
本発明は、上記圧電発振回路において、第1のトランジスタのコレクタに第5の抵抗を介して電源電圧が印加されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、水晶振動子と、第1のトランジスタと、第2のトランジスタとを備え、水晶振動子の一端が第1のトランジスタのベースに接続され、他端が接地され、第1のトランジスタのコレクタと第2のトランジスタのエミッタがカスケード接続され、第1のトランジスタのベースに一端が接続され、他端が接地される第1の抵抗を設け、当該ベースに第1のコンデンサと第2のコンデンサが直列に接続されて他端が接地され、第1のトランジスタのエミッタは第2の抵抗を介して接地され、第2のトランジスタのベースには第3のコンデンサと第3の抵抗が並列に接続して他端が接地され、第2のトランジスタのコレクタと第1のトランジスタのエミッタとが第4のコンデンサを介して帰還接続され、第1のトランジスタと第2のトランジスタを動作させるために各ベースにバイアス抵抗が接続され、第2のトランジスタのコレクタには負荷抵抗を介して電源電圧が印加される圧電発振回路としているので、高周波領域で少ない部品数で大きな負性抵抗が得られ、安定した発振を実現できる効果がある。
【0030】
本発明によれば、第2のトランジスタのコレクタと第1のトランジスタのエミッタとを帰還接続する途中に設けられた第4のコンデンサの代わりに、第4の抵抗を介して帰還接続される上記圧電発振回路としているので、帰還量を大きくでき、微妙な調整を可能にできる効果がある。
【0031】
本発明によれば、第2のコンデンサの接地側の端子に直流阻止用の第6のコンデンサの一端が接続され、他端が接地され、第1のトランジスタのエミッタにはコイルを介して第2の抵抗が接続され、第2のコンデンサと第6のコンデンサの間の点がコイルと第2の抵抗との間の点に接続されている上記圧電発振回路としているので、第2のコンデンサ、第6のコンデンサとコイルによって共振回路を備えることができ、発振周波数の調整を容易にできる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の圧電発振回路の回路図である。
【図2】第2の圧電発振回路の回路図である。
【図3】第3の圧電発振回路の回路図である。
【図4】負性抵抗特性を示す図である。
【図5】出力スペクトラムの観測結果を示す図である。
【図6】周波数可変特性を示す図である。
【図7】第4の圧電発振回路の回路図である。
【図8】第5の圧電発振回路の回路図である。
【図9】従来のコルピッツ発振回路の回路図である。
【図10】図9の等価回路である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る圧電発振回路は、第1のトランジスタのベースに水晶振動子が接続され、第1のトランジスタのコレクタに第2のトランジスタのエミッタを接続してカスケード接続を構成し、更に第2のトランジスタのコレクタから第1のトランジスタのエミッタへコンデンサ又は抵抗を介して帰還接続したものであり、高周波領域で少ない部品数で大きな負性抵抗が得られ、安定した発振を実現できるものである。
【0034】
尚、請求項における、第1の抵抗は図1では抵抗R3に、図2,3では抵抗R2に相当し、第1のコンデンサはコンデンサC1に相当し、第2のコンデンサはコンデンサC2に相当し、第2の抵抗は図1では抵抗R4に、図2,3では抵抗R3に相当し、第3のコンデンサはコンデンサC4に相当し、第3の抵抗は抵抗R5に相当し、第4のコンデンサはコンデンサC3に相当し、第4の抵抗は抵抗R7に相当し、第5のコンデンサはコンデンサC5に相当し、第6のコンデンサはコンデンサC6に相当し、第5の抵抗は抵抗R8に相当している。
【0035】
[第1の実施の形態:図1]
本発明の第1の実施の形態に係る圧電発振回路(第1の圧電発振回路)について図1を参照しながら説明する。図1は、第1の圧電発振回路の回路図である。
第1の圧電発振回路は、第1のトランジスタQ1のコレクタに第2のトランジスタQ2のエミッタを接続したカスケード接続を構成し、更に第2のトランジスタQ2のコレクタから第1のトランジスタQ1のエミッタへコンデンサC3を介して帰還接続している。
【0036】
水晶振動子(圧電振動子)X1の一端は、第1のトランジスタQ1のベースに接続され、水晶振動子X1の他端は、接地(GND接続)している。抵抗R1〜R5は、それぞれのトランジスタを動作させるための直流バイアス用の抵抗であり、抵抗R6は、負荷抵抗である。
【0037】
具体的には、電源電圧Vccが電源端子10から印加され、抵抗R1を介して第2のトランジスタQ2のベースに接続し、また、抵抗R6を介して第2のトランジスタのコレクタに接続している。
【0038】
抵抗R1と第2のトランジスタQ2のベースとの間の点が、抵抗R1を介して第1のトランジスタQ1のベースに接続し、当該ベースには抵抗R3を介して接地され、更に当該ベースには直列接続のコンデンサC1とコンデンサC2が接続され、コンデンサC2の他端が接地されている。
【0039】
第1のトランジスタQ1のエミッタには、抵抗R4を介して接地され、更に当該エミッタは、コンデンサC1とコンデンサC2との間の点に接続している。
また、第2のトランジスタQ2のベースには、コンデンサC4と抵抗R5が並列に接続され、それぞれの他端が接地されている。
また、第2のトランジスタQ2のコレクタには、コンデンサC5を介して出力端子(OUTPUT)20に接続している。
【0040】
上記課題で説明したように、高周波領域では、トランジスタの内部容量を用いて発振動作が可能である。
そこで、第1の圧電発振回路では、コルピッツ発振回路を構成する第1のトランジスタQ1と第2のトランジスタQ2をカスケード接続によってミラー容量を抑圧し、高周波領域での負性抵抗の減少を抑えるものである。
【0041】
更に、第2のトランジスタによって増幅された出力を発振回路(第1のトランジスタのベース)に帰還することで、負性抵抗を増大するものである。
また、トランジスタQ1,Q2をカスケード接続するため、部品点数を少なくし、小型化に寄与できる。
【0042】
[第2の圧電発振回路:図2]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る圧電発振回路(第2の圧電発振回路)について図2を参照しながら説明する。図2は、第2の圧電発振回路の回路図である。
第2の圧電発振回路は、図2に示すように、第1の圧電発振回路を利用した構成であり、第1のトランジスタQ1によりコルピッツ発振回路を形成し、電源電圧Vccが電源端子10に印加され、抵抗R1を介して第1のトランジスタQ1のベースに接続し、当該ベースには抵抗R2を介して接地されている。
この抵抗R1及び抵抗R2は、発振回路に直流バイアスを供給する。
尚、コンデンサC1〜C5は、第1の圧電発振回路と同様である。
【0043】
また、第1のトランジスタQ1のエミッタには、抵抗R3が接続され、他端が接地し、第2のトランジスタQ2のベースには、電源端子10が抵抗R4を介して接続し、更に、コンデンサC4と抵抗R5が並列に接続し、それぞれの他端が接地されている。
【0044】
また、第2のトランジスタQ2のコレクタには、電源電圧Vccが抵抗R6を介して接続し、当該コレクタと第1のトランジスタQ1のエミッタとがコンデンサC3を介して帰還接続し、更に当該コレクタは、コンデンサC5とバッファアンプ30を介して出力端子20に接続する。
【0045】
尚、コンデンサC3の代わりに抵抗R7を用いてもよい。
抵抗R7の場合、コンデンサC3に比べて、帰還量を大きくでき、微妙な調整が可能となる。
【0046】
ここで、コンデンサC4は、第2のトランジスタQ2のベースを接地するためのコンデンサであり、抵抗R6は、第2のトランジスタQ2の負荷抵抗である。即ち、抵抗R6は、発振回路の負荷抵抗である。
【0047】
第2の圧電発振回路では、第2のトランジスタQ2のコレクタ端子から発振出力を取り出し、その発振出力の一部をコンデンサC3を介して第1のトランジスタQ1のエミッタに帰還させている。
【0048】
更に、第2のトランジスタQ2のコレクタから出力された発振出力は、コンデンサC5を介して、次段のバッファアンプ30に入力され、発振モジュールとして必要な出力を得るための増幅を行う。
また、バッファアンプ30は、発振出力を供給する負荷の影響によって発振周波数が変動しないように備えたものである。
【0049】
[第3の圧電発振回路:図3]
次に、本発明の第3の実施の形態に係る圧電発振回路(第3の圧電発振回路)について図3を参照しながら説明する。図3は、第3の圧電発振回路の回路図である。
第3の圧電発振回路は、図3に示すように、図2において発振回路を構成するコンデンサC2に代えて、直流阻止用の大容量コンデンサC6、コンデンサC2、コイルL1によって構成されるタンク回路(共振回路)を備えるものである。
共振回路を備えることにより、発振周波数を容易に調整できる。
尚、図3においても、コンデンサC3の代わりに抵抗R7を用いてもよい。
【0050】
タンク回路を具体的に説明すると、第1のトランジスタQ1のベースにコンデンサC1、C2、C6が直列に接続され、コンデンサC6の他端が接地されている。
そして、第1のトランジスタQ1のエミッタには、コイルL1と抵抗R3が直列に接続され、抵抗R3の他端が接地されている。
更に、コンデンサC1とコンデンサC2との間の点が第1のトランジスタQ1のエミッタに接続し、コンデンサC2とコンデンサC3との間の点がコイルL1と抵抗R3の間の点に接続している。
【0051】
[負性抵抗特性:図4]
第1〜3の圧電回路を用いた負性抵抗特性について図4を参照しながら説明する。図4は、負性抵抗特性を示す図である。
図4において、第1〜3の圧電発振回路について、入力インピーダンスをシミュレーションにより計算処理して得られた負性抵抗の特性を示しており、縦軸が負性抵抗の値で、横軸が周波数の値である。
実際の回路では、プリント基板などによる寄生容量等の影響を受けるため、損失が増えることが予想されるが、622MHzで−143Ωと、ほぼ目標の値を実現している。
【0052】
[出力スペクトラム:図5]
次に、第2の圧電発振回路における出力スペクトラムの観測結果について図5を参照しながら説明する。図5は、出力スペクトラムの観測結果を示す図である。
第2の圧電発振回路を用いて電圧制御型水晶発振器(VCXO:Voltage Controlled Crystal Oscillator)を試作し、出力スペクトラムを観測したのが図5であり、縦軸が出力レベルであり、横軸が周波数fを示している。
622MHzを直接励振していることから、不要波が発生していないことを確認できる。出力レベルは、0dBm(負荷インピーダンス50Ω)である。
【0053】
[周波数可変特性:図6]
次に、周波数可変特性について図6を参照しながら説明する。図6は、周波数可変特性を示す図である。
第1〜3の圧電発振回路において、外部入力電圧に対する周波数可変幅を表したのが図6であり、縦軸が周波数偏差(ppm)で、横軸が外部入力電圧(入力制御電圧)である。
±150ppmの可変が得られていることを確認できる。
【0054】
[第4の圧電発振回路:図7]
次に、本発明の第4の実施の形態に係る圧電発振回路(第4の圧電発振回路)について図7を参照しながら説明する。図7は、第4の圧電発振回路の回路図である。
第4の圧電発振回路は、図7に示すように、図2において、第1のトランジスタQ1のコレクタに電源電圧Vccが抵抗R8を介して接続している。
この抵抗R8を追加することで、動作の更なる安定化を図ることができる。
尚、コンデンサC3の代わりに抵抗R7を用いてもよい。
【0055】
[第5の圧電発振回路:図8]
次に、本発明の第5の実施の形態に係る圧電発振回路(第5の圧電発振回路)について図8を参照しながら説明する。図8は、第5の圧電発振回路の回路図である。
第5の圧電発振回路は、図8に示すように、図3において、第1のトランジスタQ1のコレクタに電源電圧Vccが抵抗R8を介して接続している。
この抵抗R8を追加することで、動作の更なる安定化を図ることができる。
尚、コンデンサC3の代わりに抵抗R7を用いてもよい。
【0056】
[実施の形態の効果]
第1〜3の圧電発振回路によれば、第1のトランジスタQ1のコレクタと第2のトランジスタQ2のエミッタをカスケード接続し、第2のトランジスタQ2のコレクタと第1のトランジスタQ1のエミッタをコンデンサC3又は抵抗R7を介して帰還接続するようにしているので、高周波領域で少ない部品数で大きな負性抵抗が得られ、安定した発振を実現できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、高周波領域で少ない部品数で大きな負性抵抗が得られ、安定した発振を実現できる圧電発振回路に好適である。
【符号の説明】
【0058】
10…電源端子、 20…出力端子、 30…バッファアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電発振回路において、
水晶振動子と、第1のトランジスタと、第2のトランジスタとを備え、
前記水晶振動子の一端が前記第1のトランジスタのベースに接続され、他端が接地され、前記第1のトランジスタのコレクタと前記第2のトランジスタのエミッタがカスケード接続され、
前記第1のトランジスタのベースに一端が接続され、他端が接地される第1の抵抗を設け、当該ベースに第1のコンデンサと第2のコンデンサが直列に接続されて他端が接地され、前記第1のトランジスタのエミッタは第2の抵抗を介して接地され、
前記第2のトランジスタのベースには第3のコンデンサと第3の抵抗が並列に接続して他端が接地され、前記第2のトランジスタのコレクタと前記第1のトランジスタのエミッタとが第4のコンデンサを介して帰還接続され、
前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタを動作させるために各ベースにバイアス抵抗が接続され、
前記第2のトランジスタのコレクタには負荷抵抗を介して電源電圧が印加されることを特徴とする圧電発振回路。
【請求項2】
第2のトランジスタのコレクタと第1のトランジスタのエミッタとを帰還接続する途中に設けられた第4のコンデンサの代わりに、第4の抵抗を介して帰還接続されることを特徴とする請求項1記載の圧電発振回路。
【請求項3】
第1のコンデンサと第2のコンデンサとの間の点が前記第1のトランジスタのエミッタに接続し、第2のトランジスタのコレクタ出力に第5のコンデンサを介してバッファアンプを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の圧電発振回路。
【請求項4】
第2のコンデンサの接地側の端子に直流阻止用の第6のコンデンサの一端が接続され、他端が接地され、第1のトランジスタのエミッタにはコイルを介して第2の抵抗が接続され、前記第2のコンデンサと前記第6のコンデンサの間の点が前記コイルと前記第2の抵抗との間の点に接続されていることを特徴とする請求項3記載の圧電発振回路。
【請求項5】
第1のトランジスタのコレクタに第5の抵抗を介して電源電圧が印加されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の圧電発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−15268(P2011−15268A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158756(P2009−158756)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】