説明

圧電積層部品

【課題】 振動の変位の発生力の低減を抑制しつつ全体の静電容量を低下させることができる圧電積層部品を提供する。
【解決手段】 複数の圧電体層2が積層され、圧電体層2間と一方主面Aと他方主面Bとに電極3が形成され、両端部に電極3に接続された端子電極4a,4bがそれぞれ形成されている圧電積層体5と、両面にそれぞれ圧電積層体5が一方主面A側で貼り付けられたシム材6とを含む圧電積層部品1であって、それぞれの圧電積層体5は、一方主面A側の圧電体層2aが、その他の圧電体層2bの2層分以上の厚みを有している圧電積層部品1である。振動の変位の発生力の低減を抑制しつつ、静電容量を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界を与えることによって振動する圧電積層部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電積層部品として、例えば特許文献1には、積層型圧電体の上下および層間の対向する電極同士を積層型圧電体の端部に配設した側面電極で導通接続し、積層型圧電体をシムの片面あるいは両面に貼り付ける構造の圧電型エキサイタにおいて、積層型圧電体の側面電極が位置する部位のシムの部材を除去した構成のものが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の圧電積層部品によれば、積層型圧電体の長手方向の側面電極による出っ張りを避ける構造であるから、接着層を介在させてシムと圧電体とを熱圧着により貼り付ける際の押圧が均一となり歪力が無いため、シムと圧電体との接着強度が増し、圧電体のクラックやひび割れを防止することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−329431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圧電体層は誘電体であるセラミック材料等を材料として使用するため、これらの圧電体層を挟んで対向する電極間に電位差が生じると、これら電極間に静電容量が発生する。特に、特許文献1に開示された構成の圧電積層部品においては、一定の、振動の変位の発生力を得るために、積層型圧電体層の上下および層間に電極を複数積層しなければならないので、全体としての静電容量が大きくなる。
【0006】
ここで、圧電積層部品の消費電力は、「消費電力∝(静電容量)×(圧電積層部品の駆動電圧)」で表されるので、静電容量が大きくなると、それに比例して消費電力が大きくなってしまうことが問題であった。
【0007】
一方、静電容量は、「静電容量=(誘電率)×(電極面積)/(電極間隔)」で表されるので、積層型圧電体層の上下および層間の電極同士の間隔を大きくしたり、それらの電極の面積を小さくしたりすることで静電容量を低減できることが分かっている。しかしながら、単に電極同士の間隔を大きくしたり、電極の面積を小さくしたりすると、静電容量を低減できる反面、圧電積層部品の振動の変位の発生力も大幅に低減されてしまう。従って、圧電積層部品の振動の変位の発生力の低減を抑制しつつ、いかに静電容量を低減させることができるかが課題であった。
【0008】
本発明は上記のような従来の技術における課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、振動の変位の発生力の低減を抑制しつつ、静電容量を低減させることができる圧電積層部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧電積層部品は、複数の圧電体層が積層され、該圧電体層間と一方主面と他方主面とに電極が形成され、両端部に前記電極に接続された端子電極がそれぞれ形成されている圧電積層体と、両面にそれぞれ前記圧電積層体が前記一方主面側で貼り付けられたシム材とを含む圧電積層部品であって、それぞれの前記圧電積層体は、前記一方主面側の前
記圧電体層が、その他の前記圧電体層2層分以上の厚みを有していることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の圧電積層部品は、上記構成において、前記圧電積層体の前記一方主面側の前記圧電体層中に、前記端子電極に電気的に接続されていない非接続電極が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の圧電積層部品は、上記構成において、前記非接続電極は、前記圧電積層体の前記両端部の端面に露出していないことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の圧電積層部品は、上記構成において、前記非接続電極の端部が前記圧電積層体の前記両端部の端面のいずれか一方に露出しており、前記端子電極は、前記非接続電極の前記端部とは接続せず、前記非接続電極よりも前記圧電積層体の前記他方主面側に配置された前記電極と接続するように、前記圧電積層体の前記両端部にそれぞれ部分的に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の圧電積層部品は、上記各構成において、前記圧電積層体の前記一方主面側の前記圧電体層に替えて絶縁セラミック層を積層してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の圧電積層部品によれば、シム材に一方主面側で貼り付けられたそれぞれの圧電積層体は、一方主面側の圧電体層がその他の圧電体層2層分以上の厚みを有していることから、従来の構成の圧電積層部品と比較して、一方主面側の圧電体層を挟んで対向する2つの電極間の間隔が大きくなる。よって、一方主面側の圧電体層で生じる静電容量を低下させることができるので、圧電積層部品全体の静電容量を低下させることができる。
【0015】
また、シム材に貼り付けられて固定されていることにより圧電積層部品全体の振動の変位の発生力にあまり寄与しない部分の圧電体層が厚くなっているので、圧電体層を厚くしたことによる振動の変位の発生力の低減を抑制することができる。
【0016】
その結果、振動の変位の発生力の低減を抑制できると同時に、全体の静電容量を低下させることができる圧電積層部品を提供することができる。
【0017】
また、本発明の圧電積層部品によれば、圧電積層体の一方主面側の圧電体層中に、端子電極に電気的に接続されていない非接続電極が形成されているときには、一方主面側の圧電体層およびその他の圧電体層のそれぞれにおける、積層方向における電極同士の間隔の違いによって生じる、両圧電体層同士の熱収縮率の差を小さくすることができる。その結果、一方主面側の圧電体層中に全く電極が存在しない場合と比較して、焼結時の圧電積層体における、両圧電体層の熱収縮の差に起因する、圧電積層体の反りを低減することが可能となる。
【0018】
また、本発明の圧電積層部品によれば、非接続電極が圧電積層体の両端部の端面に露出していないときには、圧電積層体の両端部にそれぞれ端子電極を形成する際に、例えば、ディップ法等を採用して両端部のそれぞれの全域に一様に端子電極となる導電性ペーストを塗布した場合でも、端子電極および非接続電極の間を電気的に非接続とすることができる。従って、端子電極を容易に形成することができるので、圧電積層部品の作製の効率を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の圧電積層部品によれば、非接続電極の端部が圧電積層体の両端部の端面
のいずれか一方に露出しており、端子電極が、非接続電極の端部とは接続せず、非接続電極よりも圧電積層体の他方主面側に配置された電極と接続するように、圧電積層体の両端部にそれぞれ部分的に形成されているときには、圧電積層部品の作製時に、圧電体層および電極を交互に積層する際に、一方主面側の圧電体層およびその他の圧電体層のそれぞれにおいて、電極および非接続電極の構成を、端部が圧電積層体の両端部の端面のいずれか一方に露出する、という構成に一様に揃えることが可能となる。従って、一方主面側の圧電体層およびその他の圧電体層のそれぞれにおいて電極の形成の仕方を変化させる必要がないため、圧電積層部品の作製の効率を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の圧電積層部品によれば、圧電積層体の一方主面側の圧電体層に替えて絶縁セラミック層を積層してなるときには、圧電積層体の一方主面に形成された電極と圧電積層体の層間に形成された電極との絶縁を確保することができるため、信頼性の高い圧電積層部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本発明の圧電積層部品の実施の形態の例を示す側面図であり、(b)は本発明の圧電積層部品の実施の形態の例を示す上面図である。
【図2】図1(b)に示す圧電積層部品の実施の形態の一例のX−X線における断面図である。
【図3】縦軸が圧電積層部品の振動の変位の発生力を示し、横軸が入力した信号の周波数を示すグラフである。
【図4】縦軸が圧電積層部品の振動の変位の発生力を示し、横軸が入力した信号の周波数を示すグラフである。
【図5】縦軸が圧電積層部品の振動の変位の発生力を示し、横軸が入力した信号の周波数を示すグラフである。
【図6】図1(b)に示す圧電積層部品の実施の形態の他の例のX−X線における断面図である。
【図7】図1(b)に示す圧電積層部品の実施の形態の他の例のX−X線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の圧電部品の実施の形態の例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。外観斜視図である。
【0023】
図1(a)は本発明の圧電積層部品の実施の形態の一例を示す側面図であり、図1(b)は本発明の圧電積層部品の実施の形態の例を示す上面図である。また、図2は、図1(b)に示す圧電積層部品の実施の形態の一例のX−X線における断面図である。
【0024】
図1および図2に示す例の圧電積層部品1は、複数の圧電体層2が積層され、圧電体層2間と一方主面Aと他方主面Bとに電極3が形成され、両端部に電極3に接続された端子電極4a,4bがそれぞれ形成されている圧電積層体5と、両面にそれぞれ圧電積層体5が一方主面A側で貼り付けられたシム材6とを含む圧電積層部品1であって、それぞれの圧電積層体5は、一方主面A側の圧電体層2aが、その他の圧電体層2bの2層分以上の厚みを有している。
【0025】
なお、圧電積層体5の両方の主面のうち、図1および図2に示すように、シム材6側のAが一方主面であり、その反対側のBが他方主面である。また、複数の圧電体層2のうち、最もシム材6側の2aが一方主面A側の圧電体層であり、2bがその他の圧電体層である。
【0026】
なお、以下の説明において、圧電積層体5の端部とは、圧電積層体5のうち端子電極4a,4bが形成されている部分とその近傍とを含む部分を示すものである。
【0027】
また、以下の説明において、圧電積層体5の端面とは、圧電積層体5の端部のうち、電極3の圧電積層体からの露出部と端子電極4a,4bとの接続部を含む面のことを示すものである。つまり、直方体形状である圧電積層体5の全6面のうち、圧電積層体5の厚み方向の辺および幅方向の辺で囲まれた面のことを示すものである。
【0028】
圧電体層2は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT),チタン酸鉛(PT),ニオブ酸ナトリウム・カリウム(Na1−xNbO),ビスマス層状化合物(例:MBiTi15、M:2価のアルカリ土類金属元素)等を基材とする圧電セラミックス、または水晶,タンタル酸リチウム等の圧電単結晶からなる。
【0029】
なお、小型化および実装性という観点からは、圧電体層2は、長さが15〜35mm、幅が3.0〜5.5mm、厚みが20〜40μmのシート状とすることが好ましい。
【0030】
圧電体層2の比誘電率は3000〜4000程度である。
【0031】
圧電積層体5は、複数の圧電体層2が積層され、圧電体層2間と一方主面Aと他方主面Bとに電極3が形成され、両端部に電極3に接続された端子電極4a,4bがそれぞれ形成されているものである。
【0032】
そして、図2に示すように、それぞれの圧電積層体5は、一方主面A側の圧電体層2aが、その他の圧電体層2bの2層分以上の厚みを有している。具体的には、一方主面A側の圧電体層2aの厚みが60μm程度であって、その他の圧電体層2bの厚みが30μm程度であることが好ましい。
【0033】
なお、全ての圧電体層2の厚みは20〜60μm程度である。
【0034】
以下に、圧電積層体5の作製方法を説明する。
【0035】
圧電体層2が例えばセラミック材料から成る場合は、原料粉末にバインダを加えてプレスする方法、あるいは原料粉末を水や分散剤とともにボールミルを用いて混合した後に乾燥させ、バインダ,溶剤および可塑剤等を加えてドクターブレード法等によってシート状とする。これに、電極3となる例えば銀ペースト等を印刷することによって、セラミック材料のシート上に銀ペースト等を塗布する。このような銀ペースト等が印刷されたセラミック材料のシートを10〜15層程度積層して積層体とする。
【0036】
次に、この積層体を切断して個片とした後、1000〜1100℃のピーク温度で約24時間焼成する。この焼成体の両端面に端子電極4a,4bを形成し、圧電体層2間,一方主面Aおよび他方主面Bの電極3との電気的な接続を確保する。
【0037】
この両端面に端子電極4a,4bが形成された焼成体に、常温にて厚み方向に3kV/mm程度の電界をかけて分極処理を施すことによって、所望の圧電特性を有した圧電積層体5が得られる。
【0038】
また、圧電体層2が圧電単結晶材料からなる場合は、圧電体層2となる圧電単結晶材料のインゴット(母材)を所定の結晶方向となるように切断することによって、所望の圧電特性を有した圧電体層2が得られる。
【0039】
なお、上述の圧電積層体5の作製方法においては、銀ペースト等が印刷されたセラミック材料のシートを10〜15層程度積層して積層体としていたが、一方主面A側の圧電体層2aを形成する際は、その厚みをその他の圧電体層2bよりも厚くするために、以下のようにして作製する。
【0040】
例えば、その他の圧電体層2bとなるセラミック材料のシートと同様のものを複数積層して、これを焼結することによって圧電体層2aとしてもよい。また、焼結前のセラミック材料のシートの時点で既にその他の圧電体層2bとなるセラミック材料のシートよりも厚みが大きいものを使用して圧電体層2aを形成してもよい。
【0041】
圧電積層体5の電極3は、圧電積層体5の圧電体層2間と一方主面Aと他方主面Bとに形成されており、圧電積層体5の両端部の端子電極4a,4bにそれぞれ接続されているものである。なお、電極3同士は圧電体層2を挟んで互いに対向して形成されている。
【0042】
また、電極3は、導電性の観点からは金,銀,銅またはアルミニウム等の金属膜からなることが好ましい。
【0043】
この電極3は、例えば、金,銀または銅等の金属フィラーを含有し、低温ガラスをバインダとする導電性ペーストを、所定の温度で焼き付けて形成する。この場合の電極3の厚みは、圧電積層体5の一方主面Aおよび他方主面Bに形成された電極3は3〜5μm程度の範囲とし、圧電体層2間に形成された電極3は1〜2μm程度の範囲とすることが好ましい。
【0044】
電極3は、マイグレーションによる電極3同士の短絡を防止するという、また、電極3と外部の電子部品との間の絶縁を確保するという観点から、電極3の長さ方向における両側部は、圧電積層体5の側面から露出しないように形成することが好ましい。具体的には、電極3の長さ方向の両側部は、圧電積層体5の側面から、圧電積層体5の内部へ後退した領域にのみ形成されている、ということである。
【0045】
電極3の寸法は、例えば、圧電体層2の寸法が、長さが30mm、幅が5mm、厚みが30μmのシート形状である場合は、圧電体層2の長さ方向の寸法が29.5mmであり、圧電体層2の幅方向の寸法が4.5mmであり、厚みが1μmである。
【0046】
圧電積層体5の端子電極4a,4bは、圧電積層体5の両端部のそれぞれに形成されたものである。なお、図1に示すように、それぞれの端子電極4a,4bは、圧電積層体5の両端部において、圧電積層体5の端面に形成されているものである。また、これらの端子電極4a,4bは、圧電積層体5の両端部における一方主面A,他方主面Bおよび両側面にかけて形成されていてもよいものである。
【0047】
これら端子電極4a,4bは、銀粉末とバインダ樹脂とからなるペーストを磁器素体に膜厚10〜50μmで印刷し、所定の温度条件、例えば600℃〜700℃の温度で焼き付けて形成する。
【0048】
シム材6は、両主面にそれぞれ圧電積層体5が一方主面A側で貼り付けられた板状の部材である。このシム材6の材料は、例えば42アロイ等のニッケル合金あるいはその他の金属である。
【0049】
圧電積層体5とシム材6との貼り付けの詳細な構成と両者間の給電路とを、図2を参照して以下に説明する。
【0050】
圧電積層体5の一方主面Aの全体に、この一方主面Aに形成された電極3を覆うようにして、エポキシ系樹脂またはアクリル系樹脂等からなる絶縁性接着剤8が塗布され、この絶縁性接着剤8を介して圧電積層体5がシム材6の両主面にそれぞれ貼り付けられている。圧電積層体5の絶縁性接着剤8を介してのシム材6の主面への貼り付けは、例えば常温で約2分間加圧することによって行なわれる。そして、圧電積層体5の一方の端部の端子電極4aとシム材6の主面とは、銀パラジウム等の導電性ペーストからなる導電性樹脂9によって電気的に接続されている。これに対して、圧電積層体5の他方の端部の端子電極4bとシム材6の主面とは、両者の間に前述した絶縁性樹脂8が介在することから、電気的に絶縁性が保たれている。従って、シム材6と端子電極4bとの間に所定の電圧を印加した場合に、異なる電位同士が短絡しない。
【0051】
なお、以上で説明した構成では、導電性樹脂9によって圧電積層体5の一方の端部の端子電極4aとシム材6との電気的接続を確保している例を図2に示したが、両者が電気的に接続していれば、予め圧電積層体5の一方主面Aに絶縁性樹脂層を形成しておき、絶縁性樹脂層が形成された圧電積層体5の一方主面Aとシム材6の主面との接着にも前述した導電性樹脂9を用いるようにしてもよい。つまり、導電性樹脂9が、圧電積層体5の一方主面Aとシム材6との接着だけでなく、導電性樹脂9の一端部によって端子電極4aとシム材6との電気的接続の役割も兼ねているという構成としてもよい。この構成によれば、圧電積層体5およびシム材6の接着と、端子電極4aおよびシム材6の電気的接続とを同時に行なうことができるので、作製にかかるコストを低減でき、また作製にかかる時間を短縮することができる。
【0052】
なお、圧電積層体5の他方の端部に形成された端子電極4bが、圧電積層体5の端面から一方主面Aにかけて形成されている場合であっても、前述した絶縁性接着剤8が端子電極4bの一方主面Aに延在している部分を覆うように形成されていれば、端子電極4bとシム材6との絶縁性は確保できる。
【0053】
また、シム材6の寸法は、例えば長さが20〜40mm、幅が3.5〜5.5mm、厚みが0.2〜0.35mmの短冊形状であることが好ましい。
【0054】
なお、以下に、両主面にそれぞれ圧電積層体5が一方主面A側で貼り付けられたシム材6を含む圧電積層部品1の動作について説明する。
【0055】
図1に示す例の圧電積層部品1において、シム材6の上側の圧電積層体5および下側の圧電積層体5は、両端子電極4a,4bに所定の周期の変動電圧が印加されると、圧電効果によってそれぞれ圧電積層体5の長手方向において伸縮を交互に繰り返す。
【0056】
本例の圧電積層部品1の両圧電積層体5は、伸縮の位相を互いに逆に設定しておく。これにより、シム材6の上下の主面においては、一方主面Aを伸ばすとともに他方主面Bを縮める力と、他方主面Bを伸ばすとともに一方主面Aを縮める力とが常時、交互に加わっていることとなるので、シム材6の一方を固定端とした場合には、圧電積層部品1全体はシム材6の他方を自由端として積層方向(上下方向)に振動する。この振動の力の大きさを、振動の変位の発生力と呼ぶ。
【0057】
この振動の変位の発生力は、圧電積層体5の伸縮の大きさおよび圧電積層体5の質量等に依存する。
【0058】
従来の例のように、圧電積層体の上下および層間(一方主面側も含む)に、端子電極と接続された電極が複数形成された圧電積層部品では、一定の、振動の変位の発生力は確保できる反面、全体としての静電容量が大きくなり、消費電力が増大するという問題点があ
った。そこで、振動の変位の発生力の低減を抑制しつつ、全体としての静電容量を低減させることが課題であった。
【0059】
これに対して、本発明の圧電積層部品1によれば、それぞれの圧電積層体5は、一方主面A側の圧電体層2aが、その他の圧電体層2bの2層分以上の厚みを有しているので、従来の構成の圧電積層部品と比較して、一方主面A側の圧電体層2aを挟んで対向する2つの電極3間の間隔が大きくなる。よって、一方主面A側の圧電体層2aで生じる静電容量を低下させることができるので、圧電積層部品1全体の静電容量を低下させることができる。
【0060】
また、シム材6に貼り付けられて固定されていることにより圧電積層部品1全体の振動の変位の発生力にあまり寄与しない部分の圧電体層が厚くなっているので、圧電体層を厚くしたことによる振動の変位の発生力の低減を抑制することができる。
【0061】
その結果、振動の変位の発生力の低減を抑制できると同時に、全体の静電容量を低下させることができる圧電積層部品1を提供することができる。
【0062】
また、例えば携帯型電子機器において本発明の圧電積層部品1を使用した場合には、振動の変位の発生力の低減を抑制しつつ、この携帯型電子機器の電子回路の全体の静電容量を低下させることができるため、携帯型電子機器の消費電力を低減させることができる。従って、携帯型電子機器のバッテリーを長持ちさせやすくすることができる。
【0063】
以下に、本発明の圧電積層部品1による、振動の変位の発生力の低減を抑制しつつ全体の静電容量を低下させることができるという効果について、実験データによる裏付けを示す。
【0064】
なお、データを得るために行なった実験においては、図1に示す圧電積層部品1を作製した。
【0065】
まず、実験例1においては、圧電積層体5における一方主面A側の圧電体層2aの厚みがその他の圧電体層2bの厚みの2倍である構成の圧電積層部品1を作製して実験を行なった。
【0066】
圧電積層体5の寸法は、長さが19mm、幅が3.5mm、厚みが0.434mmの直方体形状とした。一方主面A側の圧電体層2aの寸法は、長さを19mm、幅を3.5mm、厚みを60μ
mとした。その他の圧電体層2bの寸法は、長さを19mm、幅を3.5mm、厚みを30μm
とした。その他の圧電体層2bは12層積層されているものとした。これにより、圧電積層体5中には12層の電極3が形成された。圧電積層体5の一方主面Aおよび他方主面Bには、1層ずつ電極3を形成した。これら電極3の寸法は、圧電体層2の長さ方向の寸法が18.5mmであり、圧電体層2の幅方向の寸法が3mmであり、厚みが1μmであるものとした。
【0067】
なお、端子電極4a,4bの厚みは20μmとし、ニッケル合金からなるシム材6の寸法は、長さが25mm、幅が4mm、厚みが0.2mmの短冊形状とした。
【0068】
また、圧電体層2にはチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用い、その比誘電率は3500であった。
【0069】
次に、比較例1として、圧電積層体の一方主面側の圧電体層の厚みが、その他の圧電体層の厚みと同じである圧電積層部品を作製した。この圧電積層部品の圧電積層体は、圧電
体層が13層積層されており、圧電積層体中には電極が12層積層されているものとした。なお、圧電積層体の厚みは0.404mmとした。それ以外の構成および寸法等は、本発明の圧
電積層部品1の実験例1と同様のものとした。
【0070】
これら本発明の実験例1の圧電積層部品1および比較例1の圧電積層部品の静電容量の値および振動の変位の発生力の値を、それぞれ以下のようにして測定した。
【0071】
静電容量の値の測定に当たっては、LCRメーター(國洋電機工業株式会社製、製品名:KC−594B)を使用した。なお、信号周波数は1kHzで測定した。測定の結果、実
験例1の圧電積層部品1の静電容量の値は720pFであった。これに対して、比較例1の
圧電積層部品の静電容量の値は780pFであった。
【0072】
また、振動の変位の発生力の測定に当たっては、ブロックドフォース法によって、振動測定器(Bruel & Kjaer社製、製品名:Type 2636)を採用した。なお、周波数が100Hz
〜10kHzであり、電圧が1Vであるサイン波の入力信号を使用して測定を行なった。
【0073】
この測定の結果を図3にグラフで示す。図3は、縦軸が圧電積層部品の振動の変位の発生力(単位:dBN)を示し、横軸が入力した信号の周波数(単位:Hz)を示すグラフである。また、実線は実験例1の圧電積層部品1の測定結果を示しており、破線は比較例1の圧電積層部品の測定結果を示しており、一点鎖線は圧電積層部品に印加した信号の周波数が750Hzである点を示している。
【0074】
ここで、それぞれの圧電積層部品に入力した信号の周波数が750Hzであった場合の振
動の変位の発生力を比較し検討した。なお、実験例1の圧電積層部品1と比較例1の圧電積層部品とについて750Hzの周波数の信号を入力した場合の振動の変位の発生力を比較
した理由は、それぞれの圧電積層部品が主に約750Hz付近の高周波信号が入力される携
帯型電子機器で使用されることを目的として作製されたものだからである。
【0075】
図3に示す結果より、これら両測定結果において、周波数750Hzにおける実験例1の
圧電積層部品1の振動の変位の発生力は−20.1dBNであり、周波数750Hzにおける比
較例1の圧電積層部品の振動の変位の発生力は−21.1dBNであった。
【0076】
従って、実験例1の圧電積層部品1は、比較例1の圧電積層部品と比較して、振動の変位の発生力は誤差範囲の程度しか変化していないが、静電容量の値は7.7%低減させるこ
とができた。
【0077】
よって、本発明の圧電積層部品1によれば、振動の変位の発生力の低減を抑制しつつ、静電容量の値を大幅に低減させることができることが分かった。
【0078】
次に、本発明の実験例2として、一方主面A側の圧電体層2aの厚みが、その他の圧電体層2bの厚みの3倍である構成の圧電積層部品1を作製して実験を行なった。
【0079】
すなわち、一方主面A側の圧電体層2aの厚みを90μmとし、その他の圧電体層2bの厚みを30μmとした。また、その他の圧電体層2bは11層積層されているものとした。これにより、圧電積層体5中には11層の電極3が形成された。なお、圧電積層体の厚みは0.433mmとした。それ以外の構成および寸法等は、前述の圧電体層2aの厚みが圧電体層
2bの厚みの2倍である構成の実験例1の圧電積層部品1と同様のものとして、実験例2の圧電積層部品1を作製した。
【0080】
次に、比較例2として、圧電積層体の一方主面側の圧電体層の厚みが、その他の圧電体
層の厚みと同じである圧電積層部品を作製した。この圧電積層部品の圧電積層体は、圧電体層が12層積層されており、圧電積層体中には電極が11層積層されているものとした。なお、圧電積層体の厚みは0.373mmとした。それ以外の構成および寸法等は、本発明の圧
電積層部品1の実験例2と同様のものとした。
【0081】
これら実験例2の圧電積層部品1および比較例2の圧電積層部品の静電容量の値および振動の変位の発生力の値を、それぞれ前述したのと同じ測定方法で測定した。
【0082】
測定の結果、実験例2の圧電積層部品1の静電容量の値は660pFであった。これに対
して、比較例2の圧電積層部品の静電容量の値は780pFであった。
【0083】
また、振動の変位の発生力の測定結果を図4にグラフで示す。図4は、縦軸が圧電積層部品の振動の変位の発生力を示し、横軸が入力した信号の周波数を示す図3と同様のグラフである。実線は実験例2の圧電積層部品1の測定結果を示しており、破線は比較例2の圧電積層部品の測定結果を示しており、一点鎖線は圧電積層部品に印加した信号の周波数が750Hzである点を示している。
【0084】
これら両測定結果において、周波数750Hzにおける振動の変位の発生力を比較すると
、実験例2の圧電積層部品1の振動の変位の発生力は−20.6dBNであり、比較例2の圧電積層部品の振動の変位の発生力は−21.1dBNであった。
【0085】
従って、実験例2の圧電積層部品1は、比較例2の圧電積層部品と比較して、振動の変位の発生力は誤差範囲の程度しか変化していないが、静電容量の値は15.4%低減させることができた。
【0086】
よって、本発明の圧電積層部品1によれば、振動の変位の発生力の低減を抑制しつつ、静電容量の値を大幅に低減させることができることが分かった。
【0087】
次に、本発明の実験例3として、一方主面A側の圧電体層2aの厚みが、その他の圧電体層2bの厚みの4倍である構成の圧電積層部品1を作製して実験を行なった。
【0088】
すなわち、一方主面A側の圧電体層2aの厚みを120μmとし、その他の圧電体層2b
の厚みを30μmとした。また、その他の圧電体層2bは10層積層されているものとした。これにより、圧電積層体5中には10層の電極3が形成された。なお、圧電積層体の厚みは0.432mmとした。それ以外の構成および寸法等は、前述の圧電体層2aの厚みが圧電体
層2bの厚みの2倍である構成の実験例1の圧電積層部品1と同様のものとして、実験例3の圧電積層部品1を作製した。
【0089】
次に、比較例3として、圧電積層体の一方主面側の圧電体層の厚みが、その他の圧電体層の厚みと同じである圧電積層部品を作製した。この圧電積層部品の圧電積層体は、圧電体層が11層積層されており、圧電積層体中には電極が10層積層されているものとした。なお、圧電積層体の厚みは0.342mmとした。それ以外の構成および寸法等は、本発明の圧
電積層部品1の実験例3と同様のものとした。
【0090】
これら実験例3の圧電積層部品1および比較例3の圧電積層部品の静電容量の値および振動の変位の発生力の値を、それぞれ前述したのと同じ測定方法で測定した。
【0091】
測定の結果、実験例3の圧電積層部品1の静電容量の値は600pFであった。これに対
して、比較例3の圧電積層部品の静電容量の値は780pFであった。
【0092】
また、振動の変位の発生力の測定結果を図5にグラフで示す。図5は、縦軸が圧電積層部品の振動の変位の発生力を示し、横軸が入力した信号の周波数を示す図3と同様のグラフである。実線は実験例3の圧電積層部品1の測定結果を示しており、破線は比較例3の圧電積層部品の測定結果を示しており、一点鎖線は圧電積層部品に印加した信号の周波数が750Hzである点を示している。
【0093】
これら両測定結果において、周波数750Hzにおける振動の変位の発生力を比較すると
、実験例3の圧電積層部品1の振動の変位の発生力は−21.6dBNであり、比較例3の圧電積層部品の振動の変位の発生力は−21.1dBNであった。
【0094】
従って、実験例3の圧電積層部品1は、比較例3の圧電積層部品と比較して、振動の変位の発生力は誤差範囲の程度しか変化していないが、静電容量の値は23.1%低減させることができた。
【0095】
よって、本発明の圧電積層部品1によれば、振動の変位の発生力の低減を抑制しつつ、静電容量の値を大幅に低減させることができることが分かった。
【0096】
本発明の圧電積層部品1によれば、圧電積層体5の一方主面A側の圧電体層2a中に、端子電極4a,4bに電気的に接続されていない非接続電極7が形成されているときには、一方主面A側の圧電体層2aおよびその他の圧電体層2bのそれぞれにおける、積層方向における電極3同士の間隔の違いによって生じる両圧電体層2a,2b同士の熱収縮率の差を小さくすることができる。その結果、一方主面A側の圧電体層2a中に全く電極が存在しない場合と比較して、焼結時の圧電積層体5における、両圧電体層2a,2bの熱収縮の差に起因する圧電積層体5の反りを低減することが可能となる。
【0097】
非接続電極7の材料は、電極3と同じように、金,銀,銅またはアルミニウム等の金属膜からなることが好ましい。非接続電極7の材料を電極3の材料と同じにすることによって、非接続電極7を含む一方主面A側の圧電体層2aの熱収縮率が電極3を含むその他の圧電体層2bの熱収縮率の値に近づき、両圧電体層2a,2bの熱収縮率の差を小さくすることができるので好ましい。
【0098】
非接続電極7の厚みは例えば1μm程度である。この厚みは、電極3と同じ厚みに設定することが、両圧電体層2a,2bの熱収縮率の差を小さくすることができる点で好ましい。
【0099】
また、非接続電極7の端部と圧電積層体5の両端部の端面との間隔は0.5〜0.6mm程度であることが、非接続電極7と端子電極4a,4bとの絶縁を確実に確保する点で好ましい。
【0100】
また、圧電積層体5の一方の端面との間隔が他方の端面との間隔よりも小さい構成の非接続電極7と、圧電積層体5の一方の端面との間隔が他方の端面との間隔よりも大きい構成の非接続電極7とを交互に一方主面A側の圧電体層2a中に形成した場合は、両圧電体層2a,2bの熱収縮率の差を小さくすることができる点で好ましい。
【0101】
なお、非接続電極7の端部は、端子電極4a,4bの形成領域を調整して端子電極4a,4bとの間を空ける、あるいは圧電積層体5の端面に被着した絶縁性樹脂層を介在させるなどの構成によって端子電極4a,4bとの絶縁が確保できていれば、圧電積層体5の両端部あるいは片方の端部の端面に露出していてもよい。
【0102】
ここで、図6を参照して、非接続電極7が形成された圧電積層体5を含む圧電積層部品
1の具体例を説明する。図6は、図1(b)に示す圧電積層部品1の実施の形態の他の例のX−X線における断面図である。
【0103】
本例の圧電積層部品1においては、非接続電極7が圧電積層体5の両端部の端面に露出していない。このときには、圧電積層体5の両端部にそれぞれ端子電極4a,4bを形成する際に、例えば、ディップ法等を採用して両端部のそれぞれの全域に一様に端子電極4a,4bとなる導電性ペーストを塗布した場合でも、端子電極4a,4bおよび非接続電極7の間を電気的に非接続とすることができる。従って、端子電極4a,4bを容易に形成することができるので、圧電積層部品1の作製の効率を向上させることができる。
【0104】
次に、図7を参照して、非接続電極7が形成された圧電積層部品1の他の例を説明する。図7は、図1(b)に示す圧電積層部品1の実施の形態の他の例のX−X線における断面図である。
【0105】
本例の圧電積層部品1によれば、非接続電極7の端部が圧電積層体5のいずれか一方の端部の端面に露出しており、端子電極4a,4bは、非接続電極7の端部とは接続せず、非接続電極7よりも圧電積層体5の他方主面B側に配置された電極3と接続するように、圧電積層体5の両端部にそれぞれ部分的に形成されている。このような構成としたときには、圧電積層部品1の作製時に圧電体層2および電極3を交互に積層する際に、一方主面A側の圧電体層2aおよびその他の圧電体層2bのそれぞれにおいて、電極3および非接続電極7の構成を、端部が圧電積層体5のいずれか一方の端部の端面に露出するという構成に一様に揃えることが可能となる。従って、一方主面A側の圧電体層2aおよびその他の圧電体層2bのそれぞれにおいて、電極3および非接続電極7の形成の仕方を変化させる必要がないため、圧電積層部品1の作製の効率を向上させることができる。
【0106】
また、本発明の圧電積層部品1によれば、圧電積層体5の一方主面A側の圧電体層2aに替えて絶縁セラミック層2aを積層してなるときには、圧電積層体5の一方主面Aに形成された電極3と圧電積層体5の圧電体層2間に形成された電極3との絶縁を十分に確保することができるため、信頼性の高い圧電積層部品1を提供することができる。
【0107】
この絶縁セラミック層2aの材料としては、その他の圧電体層2bとともに焼成して圧電積層体5を形成することができるものとして、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT),チタン酸鉛(PT),ニオブ酸ナトリウム・カリウム(Na1−xNbO),ビスマス層状化合物(例:MBiTi15、M:2価のアルカリ土類金属元素)等の圧電セラミックからなるものであって、分極されていないものを用いればよい。
【0108】
このような分極されていない圧電体からなる絶縁セラミック層2aを圧電積層体5の一方主面A側に形成するには、例えば、圧電積層体5を分極する際に、圧電積層体5の一方主面Aに電極3を形成しておかない方法を採用することができる。そして、分極が終わった後に圧電積層体5の一方主面Aに電極3を形成することによって、圧電積層体5の一方主面A側に、分極されていない圧電体からなる絶縁セラミック層2aを形成することができる。
【実施例1】
【0109】
本発明の圧電積層部品1の実施例1を以下に説明する。なお、この実施例1においては、図6に示す例の圧電積層部品1を構成する圧電積層体5を作製した。
【0110】
まず、チタン酸ジルコン酸鉛からなるセラミック材料の原料粉末を水および分散剤とともにボールミルを用いて混合した後に乾燥させ、バインダ,溶剤および可塑剤等を加えてドクターブレード法等によってシート状とした。
【0111】
次に、このセラミック材料のシートに電極3および非接続電極7となる銀ペーストを印刷で塗布した。
【0112】
次に、このような銀ペーストが塗布されたセラミック材料のシートを所定枚積層し、積層体とした。
【0113】
次に、この積層体を分割線に沿って切断して個片とした後、1100℃のピーク温度で24時間焼成した。
【0114】
次に、この焼成体の両端面に端子電極4a,4bを形成した。
【0115】
そして、両端面に端子電極4a,4bが形成された焼成体に、常温にて厚み方向に3kV/mm程度の電界をかけて分極処理を施すことによって、圧電積層体5を得た。
【0116】
なお、この圧電積層体5の寸法は、長さが19mm、幅が3.5mm、厚みが0.5mmの直方体形状とした。一方主面A側の圧電体層2aの寸法は、長さを19mm、幅を3.5mm、厚
みを60μmとした。また、その他の圧電体層2bの寸法は、長さを19mm、幅を3.5mm
、厚みを30μmとした。その他の圧電体層2bは12層積層されているものとした。これにより、圧電積層体5中には12層の電極3を形成した。圧電積層体5の一方主面Aおよび他方主面Bには、1層ずつ電極3を形成した。これら電極3の寸法は、圧電体層2の長さ方向の寸法が18.5mmであり、圧電体層2の幅方向の寸法が3mmであり、厚みが1μmであるものとした。そして、端子電極4a,4bの厚みは20μmとした。
【0117】
なお、圧電積層体5の一方主面A側の圧電体層2a中に、端子電極4a,4bに電気的に接続されていない非接続電極7を1層形成した。この非接続電極7は、端部が圧電積層体5の両端部の端面に露出していないものとした。
【0118】
この製造過程において、圧電積層体5における一方主面A側の圧電体層2aに当たる部分の作製は、その他の圧電体層2bと同じ厚みのセラミック材料のシートの上に非接続電極7となる銀ペーストを塗布し、その上にその他の圧電体層2bと同じ厚みのセラミック材料のシートを積層することによって行なった。
【0119】
この非接続電極7の寸法は、圧電体層2の長さ方向の寸法を18mmとし、圧電体層2の幅方向の寸法を3mmとし、厚みを1μmとした。また、非接続電極7の両端部は、それぞれ圧電積層体5の両端部の端面とは0.5mmの間隙を有しているものとして、圧電積層
体5の両端部の端面に露出していないものとした。
【0120】
以上のようにして作製した圧電積層体5においては、歪みが生じておらず、反りのない圧電積層体5を得ることができた。
【0121】
この実施例1の結果から、圧電積層体5の一方主面A側の圧電体層2a中に、端子電極4a,4bに電気的に接続されていない非接続電極7が形成されているときには、焼結時の圧電積層体5における、両圧電体層2a,2bの熱収縮の差に起因する圧電積層体5の反りを低減することが可能となることが分かった。
【実施例2】
【0122】
本発明の圧電積層部品1の実施例2を以下に説明する。なお、この実施例2においては、図7に示す例の圧電積層部品1を構成する圧電積層体5を作製した。
【0123】
この実施例2の圧電積層部品1の構成において、実施例1と異なる部分を以下に説明する。また、以下に説明した構成以外は実施例1の構成と同様とした。
【0124】
この圧電積層体5においては、非接続電極7の一方の端部は圧電積層体5の一方の端部の端面に露出しており、端子電極4bは非接続電極7の露出している端部とは接続されず、非接続電極7よりも圧電積層体5の他方主面B側に配置された電極3と接続されるように、圧電積層体5の端部に部分的に形成されているものとした。
【0125】
また、端子電極4bの寸法は、圧電体層2の積層方向に0.4mmとし、圧電体層2の幅
方向に3.5mmとし、厚みを20μmとした。
【0126】
以上のようにして実施例1で説明したものと同様の製造方法で作製した圧電積層体5においては、実施例1と同様に歪みが生じておらず、反りのない圧電積層体5を得ることができた。
【0127】
この実施例2の結果から、非接続電極7の端部が圧電積層体5のいずれか一方の端部の端面に露出しており、端子電極4a,4bは、非接続電極7の露出している端部とは接続されず、非接続電極7よりも圧電積層体5の他方主面B側に配置された電極3と接続されるように圧電積層体5の両端部にそれぞれ部分的に形成されているときには、焼結時の圧電積層体5における、両圧電体層2a,2bの熱収縮の差に起因する圧電積層体5の反りを低減することが可能となることが分かった。また、電極3および非接続電極7の形成の仕方を変化させる必要がないため、圧電積層部品1の作製の効率を向上させることができることが分かった。
【符号の説明】
【0128】
1:圧電積層部品
2:圧電体層
2a:一方主面側の圧電体層(絶縁セラミック層)
2b:その他の圧電体層
3:電極
4a:(圧電積層体の一方の端部の)端子電極
4b:(圧電積層体の他方の端部の)端子電極
5:圧電積層体
6:シム材
7:非接続電極
A:一方主面
B:他方主面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電体層が積層され、該圧電体層間と一方主面と他方主面とに電極が形成され、両端部に前記電極に接続された端子電極がそれぞれ形成されている圧電積層体と、
両面にそれぞれ前記圧電積層体が前記一方主面側で貼り付けられたシム材とを含む圧電積層部品であって、
それぞれの前記圧電積層体は、前記一方主面側の前記圧電体層が、その他の前記圧電体層2層分以上の厚みを有していることを特徴とする圧電積層部品。
【請求項2】
前記圧電積層体の前記一方主面側の前記圧電体層中に、前記端子電極に電気的に接続されていない非接続電極が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電積層部品。
【請求項3】
前記非接続電極は、前記圧電積層体の前記両端部の端面に露出していないことを特徴とする請求項2に記載の圧電積層部品。
【請求項4】
前記非接続電極の端部が前記圧電積層体の前記両端部の端面のいずれか一方に露出しており、前記端子電極は、前記非接続電極の前記端部とは接続せず、前記非接続電極よりも前記圧電積層体の前記他方主面側に配置された前記電極と接続するように、前記圧電積層体の前記両端部にそれぞれ部分的に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の圧電積層部品。
【請求項5】
前記圧電積層体の前記一方主面側の前記圧電体層に替えて絶縁セラミック層を積層してなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の圧電積層部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−155126(P2011−155126A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15436(P2010−15436)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】