説明

圧電部品及びその製造方法

【課題】耐モールド圧力性に優れ、かつ低背化された圧電部品を提供する。
【解決手段】圧電基板2と、その主面2aに形成された素子3と素子配線部と端子電極6とを有し、配線部上面に形成された絶縁膜と、その上面に形成された電極の配線部に接続された再配線層と、再配線層上面の素子3を除く全面を被う無機材料からなる緩衝層と、緩衝層上面に形成された感光性樹脂フィルムからなる外囲壁層4と、その上面に形成されたマイカフィラーを添加した感光性樹脂フィルムからなる第1天井層5aと、その上面に搭載された絶縁性材料からなる網状部材8と、網状部材8の上面を被って形成された第2天井層5bと、第1及び第2天井層5a,5b、外囲壁層4、網状部材8を貫通して形成された貫通電極7からなり、外囲壁層4と第1天井層5aと基板2の主面2aの間に素子3を収容する中空部Cを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯電話機等の移動通信機器に使用される、SAWデュプレクサ、SAWフィルタに用いられる弾性表面波(SAW)デバイス及び圧電薄膜フィルタ等の圧電部品に関し、とくにウェハレベルで圧電素子をチップサイズにパッケージング、かつ、中空部を構成する天井層に網状部材を封入するとともに、マイカフィラーを添加した感光性樹脂フィルムを用い中空部の耐モールド圧力性を向上させた圧電部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機に搭載される圧電部品(SAWデバイス)では、圧電効果により電極が振動する空間を確保する必要があり、従来、SAWデバイスの小型化を図るため、SAW素子チップを金(Au)バンプあるいは半田バンプを用いて、配線基板にフリップチップ・ボンディング(フェースダウン・ボンディング)し、樹脂等でSAW素子チップ全体を封止して、SAWデバイスの小型パッケージ・デバイスを構成している。
【0003】
さらに、SAWデバイスの小型化・低背化を図るため、櫛歯電極部の周囲に所定の中空部を形成し、この中空部を保持したまま、櫛歯電極側の集合圧電基板(ウェハ)全体を樹脂で封止し、外部接続電極を形成した後、ダイシングにより個々のSAWデバイスに分割してなる超小型化されたチップサイズ・パッケージSAWデバイスが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されているSAWデバイスでは、櫛歯電極が形成されているSAWチップ(圧電基板)の上面に感光性樹脂からなる空隙(中空部)形成層(外囲壁)を形成し、この空隙形成層の上に封止層(天井部)を積層して封止し、櫛歯電極の周囲に空隙(中空部)を形成している。
【0005】
また、特許文献2に記載されているSAWデバイスでは、櫛歯電極が形成されているSAWチップ(圧電基板)に対面して貫通電極を有するカバーを金属接合部を介して接合して封止し、SAWチップとカバーの間に櫛歯電極を収容する中空部を形成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−108993号公報
【特許文献2】特開2006−197554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この種の圧電部品を客先においてトランスファーモールド等で実装用基板等に実装してモジュールする際に、通常、5MPaから15MPaの圧力が付与されるため、特許文献1に記載されているSAWデバイスの空隙(中空部)形成層及び封止層を有機材料のみで構成した場合には、天井部を構成する封止樹脂層を厚くするか、あるいは硬い材料で構成しなければ、トランスファーモールド等で樹脂封止する際、櫛歯電極を収容する中空部が潰れてしまい、櫛歯電極の電気的特性を損なってしまうおそれがあった。しかし、封止樹脂層を厚くすること、及び硬い材料で封止樹脂層を構成して耐モールド圧力性を、この種の樹脂封止に用いられている感光性樹脂材料のみで、実現することは極めて困難であった。
【0008】
また、特許文献2に記載されているSAWデバイスでは、貫通電極を設ける貫通孔のカバーへの形成、及びSAWチップ(圧電基板)とカバー(基板)の接合・貼り合せのために別途電極が必要であるとともに、基板同志の貼り合せの際に基板にそりが発生するおそれがあり、また、同一素材(圧電基板)からなる基板(ウェハ)を貼り合せることで、圧電部品の製造コストが高くなるおそれがあった。さらに、圧電部品の低背化を実現するためには、基板(ウェハ)の薄片化が不可欠であるが、その実現化は、極めて困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明は、櫛歯電極を封止する中空部を形成する天井層に絶縁性材料からなる網状部材を封入して、さらに、天井層を構成する感光性樹脂にマイカフィラーを添加して、耐モールド圧力性に優れ、かつ、低背化を実現した圧電部品を低コストで製造する。
【0010】
そのために、本発明の圧電部品は、圧電基板と、該圧電基板の主面に形成された圧電素子と、前記圧電基板の主面に形成された圧電素子に接続された配線部と、該配線部に接続された電極とを有し、前記配線部上面に形成された保護膜と、さらに該絶縁層の上面に形成された前記電極と異なる電極の配線部に接続された再配線層と、さらに該再配線層上面の、前記圧電素子、端子電極部を除く、全面を覆う無機材料あるいは有機材料からなる緩衝層と、該緩衝層上面に形成された感光性樹脂からなる外囲壁層と、該外囲壁層の上面に形成された感光性樹脂からなる第1天井層と、該第1天井層の上面に搭載された絶縁性材料からなる網状部材と、前記第1天井層、前記第2天井層及び前記外囲壁層ならびに前記網状部材を貫通して形成された貫通電極と、からなり、前記外囲壁層と前記第1天井層と前記圧電基板の主面との間に前記圧電素子を収容する中空部を形成してなる。
【0011】
また、本発明では、前記外囲壁層を弾性率、好ましくは3GPa以下の感光性樹脂でフォトリソグラフィーにより形成し、さらに前記第1天井層及び前記第2天井層の両方あるいはいずれか一方を感光性樹脂にマイカフィラーを10重量%〜45重量%添加した感光性樹脂フィルムにより形成する。
【0012】
さらに、本発明では、前記外囲壁層を弾性率、好ましくは3GPa以下の感光性樹脂でフォトリソグラフィーにより形成し、さらに前記第1天井層及び前記第2天井層の両方あるいはいずれか一方を感光性樹脂にマイカからなるフィラーを10重量%〜45重量%添加し、かつ、弾性率が5GPa以上の感光性樹脂フィルムにより形成する。
【0013】
またさらに、本発明では、前記外囲壁層を感光性樹脂でフォトリソグラフィーにより形成し、さらに前記第1天井層を形成し、その上面を前記網状部材で被い、さらに前記網状部材の上面を被うマイカフィラーを含む弾性率が5GPa以上の感光性樹脂フィルムからなる前記第2天井層を形成する。
【0014】
また、本発明では、前記網状部材が、石英ガラス、炭素繊維等の無機材料または有機材料から形成され、かつ、前記天井層内に封止されている。
【0015】
本発明の網状部材の繊維の格子サイズは、貫通電極の直径よりも大きくてもあるいは小さくてもよい。また、貫通電極の直径よりも格子サイズが小さい場合には、網目状の格子の一部がメッキ等により形成された貫通電極内を貫通してもよい。
【0016】
また、網状部材を第1天井層と第2天井層の間に封入し、貫通電極形成のために樹脂層をフォトリソグラフィーにより除去した後、レーザー光(YAG、CO2、エキシマレーザー等)、あるいは前記感光性樹脂をマスクに用いてウェットまたはドライエッチングにより網状部材を除去してもよい。
【0017】
さらに、本発明の電極構造は、他の外囲壁部、第1天井層、網状部材及び第2天井層の形状を変更することにより、はんだボール等の他の電極を用いてもよい。
【発明の効果】
【0018】
耐モールド圧力性に優れ、かつ、低背化された圧電部品を、部品の厚みを大にすることなく、かつ、電極形成工程を阻害することなく、低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)は、本発明の圧電部品の実施例に係るSAWデバイスの縦断面図、図1(b)は、図1(a)に示すB矢視方向から見た圧電基板の主面の櫛歯電極を模式的に示した平面図、図1(c)は、図1(a)に示すA矢視部の拡大部分図である。
【図2】感光性樹脂フィルムが樹脂のみの場合(曲線A)、ガラスクロス(網状部材)のみを搭載した場合(曲線B)、マイカフィラーを感光性樹脂フィルムに充填した場合(曲線C)及びマイカフィラーを感光性樹脂フィルムに充填するとともにガラスクロスを搭載した場合(曲線D)の所定の温度範囲(常温、モールド温度、ガラス転移温度及びリフロー温度にわたる)におけるそれぞれの弾性率を示したグラフである。
【図3】本発明の圧電部品の製造方法の実施例の概略工程図である。
【図4】本発明の圧電部品の製造方法の実施例の詳細な工程図(工程(1)から工程(12))である。
【図5】本発明の圧電部品の製造方法の実施例の詳細な工程図(工程(13)から工程(28))である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の圧電部品及びその製造方法の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例】
【0021】
圧電部品(SAWデバイス)
図1は、本発明の圧電部品の実施例であるSAWデバイスの縦断面図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の圧電部品の実施例のSAWデバイス1は、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、水晶等の圧電性基板、または、基板上に形成した圧電機能を有する基板、もしくはこれらの圧電性基板にセラミックまたは結晶性材料(例えば、サファイア)等を貼り合せた圧電基板2と、この圧電基板2の主面2aに形成された櫛歯電極3(圧電素子)と、この櫛歯電極3の上に空隙(中空部)Cを形成する外囲壁4と、この外囲壁4の上面にラミネートされる天井部5と、圧電基板2の主面2a上に形成された端子電極6と、これらの端子電極6上に電解メッキにより天井部5及び外囲壁4を貫いて形成された円柱状の貫通電極7とからなる。そして、必要に応じてこれらの貫通電極7の下端部には半田ボール電極9が固着され、それらの周りにフラックスが供給されて、実装基板P(プリント基板)の外部配線電極(図示なし)に半田ボール電極9がそれぞれ接続される。ここで、貫通電極7の下端部に半田ボール電極9を固着させる理由は、貫通電極7間のピッチが、例えば、200μ程度に狭くなると実装基板Pへの接続作業が極めて困難となるので、半導体素子のモジュール化のために客先でプリント基板に実装作業をする際、予め貫通電極7の下端部に直径が150μ程度の半田ボールを固着させて、半田ボール電極9を構成するようにする。なお、客先で貫通電極7を直接半田ペーストを用いて実装基板Pへ接続できる場合は、半田ボール電極9を固着させなくてもよい。ここで、外囲壁4天井部5と圧電基板2の主面2aとの間に、中空部Cを成する。
【0023】
また、櫛歯電極3は、配線電極の素子配線3a及び端子電極6を介して、貫通電極7及び半田ボール電極9に電気的に接続されている。ここで、櫛歯電極3と配線電極が圧電素子を構成する。また、圧電素子として、弾性表面波(SAW)素子のほかに、FBAR、MEMSで製造した素子に適用可能である。
【0024】
さらに、配線電極等の素子配線は、Al、Cu、Au、Cr、Ru、Ni、Ti、W、V、Ta、Mo、Ag、In、Suのうちのいずれかを主成分とする材料、または、これらの材料と酸素、窒素、けい素との化合物からなり、また、これらの材料の合金または金属間化合物これらを多層に積層した配線から構成されている。また、素子配線が、圧電基板の主面に複数個形成され、かつ、すべての素子配線が同一電位になるように配線されている。
【0025】
とくに、本発明の圧電部品の実施例のSAWデバイス1では、客先での当該SAWデバイスの実装用基板へのトランスファーモールド(樹脂封止)時にSAWデバイスに付与される高圧(例えば、5MPaから15MPa)に十分耐え、かつ、中空部が潰されてしまい櫛歯電極3の電気的特性が損なわれるのを防止するため、天井部5内に絶縁材料からなる網状部材8が封止されている。
【0026】
すなわち、この網状部材8は、引っ張り強度の大きい石英ガラス、炭素繊維、アラミド繊維(例えば、非導電性炭素繊維:ケブラー(KEVLER;デュポン社登録商標)等の無機材料、あるいは有機材料から形成され、天井部5の第1層目5aを外囲壁4の上面に感光性樹脂フィルムをラミネート(積層)した後、この感光性樹脂フィルムの上面に網状材料8(例えば、所定のメッシュ(格子サイズ)を有するガラスクロス)を搭載し、この網状材料8の上に、天井部5の第2層目5bを同じく感光性樹脂フィルムをラミネートして形成する。ここで、網状材料8に形成されている網目(格子)寸法(メッシュ)の大きさを、端子電極6に電解メッキにより育成される貫通電極7の直径よりも大きくして、貫通電極7が網状材料8の網目を下方から貫いて形成されるようにしてもよい
【0027】
ここで、天井部5をマイカフィラーを添加した感光性樹脂フィルムで形成した場合には、十分な弾性率が得られるので、網状部材8を搭載する必要がなくなり、天井部5を一層構造にすることができる。
【0028】
ここで、本発明の圧電部品の積層構成について詳述すると、図1(c)に示すように、まず、圧電基板の主面に形成された圧電素子(配線電極を含む)上に絶縁層(保護膜)が形成され、この絶縁層の上に別の電極の配線部に接続するようにした再配線層を形成し、さらに、この再配線層の上面に、圧電素子を除く全面を覆うよう、無機材料からなる緩衝層を形成し、この緩衝層上に感光性樹脂フィルムからなる外囲壁層を形成し、さらに、この外囲壁層上に天井部第1層目を感光性樹脂(フィルム)で形成して圧電素子を収容する中空部Cを形成し、この天井部第1層目上に絶縁性材料からなる網状部材を搭載し、さらに、この網状部材の上面に天井部第2層目を感光性樹脂フィルムをラミネートして形成する。なお、外囲壁層の底面と圧電基板の主面との間に保護層を介在させてもよい。
【0029】
また、圧電素子(配線部)上に絶縁層を形成する際、圧電素子上に絶縁材料を下地として形成し、この下地の上面に有機材料からなる絶縁膜を形成してもよい。さらに、圧電素子(配線部)の上面に有機材料からなる絶縁膜を形成し、さらに、この絶縁膜の上面に厚さが2000オングストローム以上の無機材料からなる絶縁膜を形成してもよい。ここで、この絶縁膜を構成する前記無機材料を、電気信号と表面波間の電気機械相互交換を効率的に行うため、誘電率が3.5以下の感光性材料で形成する。一般に、前記無機材料としてSiO2を用いるが、ポリイミド、SOG、BCB等の材料でもよい(ここで、BCBに関連してダウケミカル社の商標CYCLOTENがある)
【0030】
また、中空部Cを形成する天井層及び外囲壁層の外表面に感光性ポリイミド等の有機材料、またはSiO2を含む石英ガラス等からなる絶縁材料、もしくは金属酸化膜等の絶縁材料からなる膜を形成してもよい。これにより外囲壁層の圧電基板への密着度が向上し、また応力集中の緩和がなされる。
【0031】
また、本発明者のモールド耐圧評価によると、石英ガラス等無機系繊維材料から構成した網状部材8によっても、5GPa程度の弾性率が、また、石英ガラス等の添加量、すなわち、石英ガラス繊維を多く添加すれば、通常の2倍程度の弾性率を確保でき、また、感光性硬化剤の変更(ガラス転移温度の上昇)により、モールド時の温度(150℃程度)での感光性樹脂フィルムの弾性率を向上させることができる(図2参照)
【0032】
しかし、天井部5内に搭載する網状部材8の量が多くなると天井部5の成形が困難になるとともに、網状部材8がない天井部5部分では、モールド耐圧性が十分でないため、中空部Cが潰れてしまうおそれがある。
【0033】
そこで、本発明では、石英ガラス等からなる網状部材8に加えて、天井部5を形成する感光性樹脂材料にマイカ(雲母)からなるフィラー〔粒子径平均 20〜50um (1〜100um)、アスペクト比(短片と長片との比) 平均 50〜100〕を感光性樹脂材料の10〜45重量%添加して、形成時にマイカフィラーを感光性樹脂フィルムの面に対して同一方向に向くよう高配向して感光性樹脂フィルムを形成する。とくに、マイカフィラーは、例えば、アスペクト比が90と大きく、薄くて強度が大で、かつ、低価格(SiO2等からなるフィラーよりも低廉)で得られる。
【0034】
このマイカフィラーの感光性樹脂フィルムへの添加により、石英ガラス等からなる網状部材8で得られる、室温で5GPa程度の弾性率が、12GPa程度まで向上されることが、本発明者により実証されている(図2参照)。
【0035】
ここで、天井部5を構成する第1天井層5a及び第2天井層5bの両方を、また、いずれか一方を、上述したマイカフィラーを添加した感光性樹脂フィルムで形成してもよい。
【0036】
また、感光性樹脂の硬化剤を変更すること(Tgが上がる様に材料の組成を変える、硬化材はその一つの例であり、この場合、樹脂のTgが高くなる様に、主材、硬化材、その他添加材料を変える。)により、感光性樹脂の組成を変更し、自体の弾性率を高めることができる。また、モールドされる温度以上にカ゛ラス転移温度を上昇させることは、モールド耐圧を高める上で好適であり、例えば、成分変更により、2GPaから2.8GPaまで高弾性化したり、ガラス転移温度(Tg)が、例えば178℃から194℃に上昇できる(図2参照)。さらに、マイカフィラーや、網状の補強材料を加えることにより、従来困難であった高強度の感光性材料を実現することが出来、結果として、高温・高圧下で高い強度が要求される、トンスファーモールドなどの工程での耐圧強度が向上した。
【0037】
圧電部品の製造方法
次に、本発明の圧電部品の製造方法を、その実施例であるSAWデバイスの製造方法なついて、図3から図5に基づいて説明する。
【0038】
まず、図3と図4に示すように、LiTaO3、LiNbO3、水晶等からなる集合圧電基板(ウェハ)を準備し、工程(1)で、集合圧電基板の主面に(切断後に個片を形成する個々(例えば、7000個)の圧電部品(SAWデバイス)となる圧電基板)それぞれ対応する櫛歯電極(IDT)及びこれに接続される配線電極を、Al等からなる金属を主成分とする導電膜をスパッタリングまたは蒸着などの技術を用いて、所定の厚み(例えば、2000〜4000オングストローム)で成膜し、フォトリソグラフィーにより不要な金属膜及び残存するレジストを除去して、櫛歯電極及び配線電極(以下、「圧電素子」という)を形成する(1層目)。
【0039】
次いで、工程(2)で、圧電素子の表面に、SiO2等の無機材料あるいは有機材料からなる保護膜を形成する(2層目)。圧電素子の上面にSiO2等からなる保護膜を形成する際には、まず、SiO2膜を圧電素子上に形成し、その後、圧電基板全体に感光性樹脂からなるレジストを塗布し、フォトリソグラフィー、CF4ガス等によるドライエッチングによりSiO2膜を形成する。
【0040】
ここで、本発明の圧電部品の製造方法の実施例では、感光性レジストを予め形成した圧電素子の上面に塗布し、フォトリソグラフィーを用いてパターン形成し、その後、SiO2等の無機材料をスパッタリングしてSiO2膜を圧電素子の表面に形成する。さらに、溶媒を用いたリフトオフによりレジストを除去し、圧電素子上面の必要な部位にのみSiO2保護膜を残存させることも可能である。
【0041】
さらに、工程(3)〜(5)で絶縁層(3層目)を形成するために、絶縁層を圧電基板全面に塗布し、露光(UV照射)、現像等のフォトリソグラフィー、ドライエッチングを行って絶縁層(3層目)を形成する。
【0042】
次いで、工程(6)〜(8)で、この絶縁層(3層目)の上面に、リフトオフ用フォトレジストを塗布し、露光(UV照射)、現像等のフォトリソグラフィーを行った後、再配線層を形成する。
【0043】
さらに、工程(,9´)で、再配線層上にCr/Cuを蒸着し、リフトオフ用レジストをリフトオフして不要な部分を除去し、圧電素子の配線電極と別の電極に電気的に接続される再配線層とする。
【0044】
またさらに、工程(10)〜(12)で、再配線層上面に感光性レジストを塗布し、露光(UV照射)、現像前ベーク、現像等のフォトリソグラフィーを行った後、現像後の後硬化を行い、圧電素子を被う厚さ100〜500オングストロームの無機材料からなる緩衝層を形成する。
【0045】
さらに、圧電基板の主面に形成された配線電極をドライエッチングにより露出させた後、Cu/AlまたはCr/Cu等の金属材料によりメッキ用電極を圧電基板の主面上に形成する。
【0046】
次いで、工程(13)〜(15)で、前出工程(10)〜(12)で形成した無機材料からなる緩衝層の上面から圧電基板の主面上に感光性樹脂フィルムを加熱ローラを用いて加熱・押圧してラミネート(積層)して、露光(UV照射)、現像、後硬化等のフォトリソグラフィーにより所定の形状を有する外囲壁層を形成する。
【0047】
工程(16)〜(18)では、先に形成した外囲壁層の上面にラミネートされる天井部(1層目)をマイカフィラーを添加した感光性樹脂フィルム(厚み:15〜30μm)を加熱ローラにより加熱・押圧して、ラミネートし、露光(UV照射)、現像、後硬化等のフォトリソグラフィーにより形成する。天井部(1層目)には、この際、圧電基板に形成した端子電極に対応した面に貫通電極用の貫通孔(スルーホール)7aが、例えば4個形成される。
【0048】
次いで、工程(19)で、この天井部(1層目)の上面に網状部材を搭載する。
【0049】
この網状部材は、前述したように、耐圧強度の大な石英ガラス、炭素繊維(非導電性炭素繊維)等からなり、とくに、厚みが20μm、繊維の糸の径が10〜20μm、網目(格子)サイズ(メッシュ)が30〜100μmのガラスクロスが好適である。
【0050】
さらに、工程(20)〜(22)で、天井部(1層目)の上面に搭載した網状部材の上面に、マイカフィラーを添加した感光性樹脂フィルムを加熱ローラにより加熱・押圧して貼り合せて、封入し、露光(UV照射)、現像・後硬化等のフォトリソグラフィーにより、天井部(2層目)を形成する。ここで、天井部(1層目)と同様に、天井部(2層目)の所定部位に貫通電極用の貫通孔7aが形成される。
【0051】
さらに、工程(2)で、先に形成したCu電極(メッキ用電極)をZincate処理した後、Cu/Ni/Au電解メッキにより、先に天井部5に形成した4個の貫通孔7aに貫通電極7を形成する。この貫通電極(ポスト電極)7は、貫通孔7aの軸線方向に沿って伸びるようにして育成・形成される。ここで、先に天井部5内に封入した網状部材8の格子サイズ(メッシュ)が、メッキによる貫通電極7の形成を妨げないので(メッキ液が網目を通るので)、電極の大きさと、網目の格子サイズは特に問題にならない。網状部材の格子サイズが問題になる時は、(i)レーザーでトリミング、(ii)感光性材料(第1及び第2天井部)をマスクにして、(a)ウェットエッチング、(b)ドライエッチングにより除去することも可能である。
【0052】
網状部材の網目部分は、メッキ溶液により貫通電極7が形成されるのを何ら阻害せず、また、貫通電極7は、何ら障害もなく網状部材8の網目を貫いて貫通電極中に埋め込まれるようにして育成される。また、天井層を構成する感光性樹脂フィルムにマイカフィラーを添加したので、天井部5の強度(弾性率)が大巾に高まるとともに、圧電部品(SAWデバイス)の低背化が可能となる。
【0053】
次いで、工程(24)で、貫通電極7の下端部に直径が150μ程度の半田ボールを溶着して、半田ボール電極9を形成する。
【0054】
工程(25)で捺印を行い、最後に、工程(26)で、完成した集合圧電基板(ウェハ)をダイシングソー等により、ダイシングにして個片(例えば、7000個)に切断し、個々の圧電部品(SAWデバイス)を製造する。
【0055】
そして、特性検査〔工程(27)〕とテーピング〔工程(28)〕を経て出荷する。
【符号の説明】
【0056】
1 圧電部品(SAWデバイス)
2 圧電基板(ウェハ)
3 櫛歯電極
4 外囲壁
5 天井部
5a 天井部第1層
5b 天井部第2層
6 端子電極
7 貫通電極
8 網状部材
C 中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、該圧電基板の主面に形成された圧電素子と、前記圧電基板の主面に形成された素子配線部と、該配線部に接続された端子電極とを有し、前記配線部上面に形成された保護膜と、さらに該保護膜の上面に形成された前記電極と異なる電極の配線部に接続された再配線層と、さらに該再配線層上面の、前記圧電素子を除く、全面を被う無機材料からなる緩衝層と、該緩衝層上面に形成された感光性樹脂からなる外囲壁層と、該外囲壁層の上面に形成された感光性樹脂フィルムからなる第1天井層と、該第1天井層の上面に搭載された絶縁性材料からなる網状部材と、さらに該網状部材の上面を被って形成された感光性樹脂フィルムからなる第2天井層と、前記第1及び前記第2天井層、前記外囲壁層ならびに前記網状部材を貫通して形成された貫通電極と、からなり、前記外囲壁層と前記第1天井層と前記圧電基板の主面との間に前記圧電素子を収容する中空部を形成したことを特徴とする圧電部品。
【請求項2】
前記外囲壁層を感光性樹脂フィルムでフォトリソグラフィーにより形成し、さらに前記第1天井層及び前記第2天井層の両方あるいはいずれか一方を感光性樹脂にマイカからなるフィラーを10重量%〜45重量%添加した感光性樹脂フィルムにより形成したことを特徴とする請求項1に記載の圧電部品。
【請求項3】
前記外囲壁層を感光性樹脂フィルムでフォトリソグラフィーにより形成し、さらに前記第1天井層及び前記第2天井層の両方あるいはいずれか一方を感光性樹脂にマイカからなるフィラーを10重量%〜45重量%添加し、かつ、弾性率が5GPa以上の感光性樹脂フィルムにより形成したことを特徴とする請求項1に記載の圧電部品。
【請求項4】
前記外囲壁層を感光性樹脂フィルムでフォトリソグラフィーにより形成し、さらに感光性樹脂フィルムで前記第1天井層を形成し、さらに前記網状部材で被い、前記網状部材の上面を被ってマイカフィラーを含む弾性率が5GPa以上の感光性樹脂フィルムからなる前記第2天井層を形成したことを特徴とする請求項1に記載の圧電部品。
【請求項5】
前記網状部材が、石英ガラス、炭素繊維等の無機材料または有機材料から形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の圧電部品。
【請求項6】
前記網状部材が、前記天井層内に樹脂封止されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の圧電部品。
【請求項7】
前記網状部材の網目の寸法が、前記貫通電極の直径よりも大なることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の圧電部品。
【請求項8】
前記配線部の上面に形成された前記保護膜が、絶縁材料からなる下地膜と、該下地膜上面に形成された絶縁膜と、からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の圧電部品。
【請求項9】
前記配線部の上面に形成された前記保護層が、前記配線部の上面に形成された有機材料からなる絶縁膜と、さらに、該絶縁膜の上面に形成された厚さが2000オングストローム以上の無機材料と、からなる絶縁膜からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の圧電部品。
【請求項10】
前記無機材料からなる絶縁膜が、誘電率が3.5以下の感光性材料から形成されていることを特徴とする請求項9に記載の圧電部品。
【請求項11】
前記圧電素子が、弾性表面波素子、FBARまたはMEMSで製造した素子であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の圧電部品。
【請求項12】
前記素子配線が、Al、Cu、Au、Cr、Ru、Ni、Ti、W、V、Ta、Mo、Ag、In、Suのうちのいずれから主成分とする材料からまた、これらの材料と酸素、窒素、けい素との化合物、またはこれらの材料の合金、または、金属間化合物あるいはこれらを多層に積層した配線から構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の圧電部品。
【請求項13】
前記素子配線が、前記圧電基板の主面に複数個形成され、かつ、すべての前記素子配線が同一電位になるように配線されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の圧電部品。
【請求項14】
前記圧電基板が、LiTaO3、LiNbO3、水晶等の圧電性基板、または基板上に形成した圧電機能を有する基板あるいはこれらの圧電性基板にセラミックまたは結晶性材料を貼り合せて形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の圧電部品。
【請求項15】
前記天井層及び前記外囲壁層の外表面に、感光性ポリイミド等の有機材料、またはSiO2を含むガラス等からなる絶縁材料、もしくは金属酸化膜等の絶縁材料からなる膜を形成したことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の圧電部品。
【請求項16】
圧電基板と、該圧電基板の主面に形成された圧電素子と、前記圧電基板の主面に形成された素子配線部と、該配線部に接続された端子電極とを有し、前記配線部上面に形成された保護膜と、さらに該保護膜の上面に形成された前記電極と異なる電極の配線部に接続された再配線層と、さらに該再配線層上面の、前記圧電素子を除く、全面を被う無機材料からなる緩衝層と、該緩衝層上面に形成された感光性樹脂からなる外囲壁層と、該外囲壁層の上面に形成されたマイカフィラーを10〜45重量%添加した感光性樹脂フィルムからなる天井層と、前記天井層及び前記外囲壁層を貫通して形成された貫通電極と、からなり、前記外囲壁層と前記天井層と前記圧電基板の主面との間に前記圧電素子を収容する中空部を形成したことを特徴とする圧電部品。
【請求項17】
集合圧電基板と、該集合圧電基板の主面に形成された圧電素子と、前記集合圧電基板に形成された配線部と、
該配線部に接続され前記集合圧電基板に形成された貫通電極と、前記圧電素子の上面を囲むように設けた中空構造部とからなる圧電部品の製造方法において、
前記集合圧電基板の主面に形成された前記圧電素子を囲む外囲壁層を、感光性樹脂フィルムを前記集合圧電基板の主面にラミネートして形成する工程と、
該外囲壁層の上面にマイカフィラーを添加した感光性樹脂フィルムをラミネートして第1天井層を形成する工程と、
該第1天井層の上面に絶縁材料からなる網状部材を搭載する工程と、
搭載した該網状部材の上面にマイカフィラーを添加した感光性樹脂フィルムをラミネートして第2天井層を形成して前記網状部材を前記第1及び第2天井層の間に樹脂封止する工程と、
からなることを特徴とする圧電部品の製造方法。
【請求項18】
前記網状部材の網目の寸法を前記貫通電極の直径よりも大きく構成して、電解メッキにより前記貫通電極が育成される際、前記貫通電極が該網目を下方から貫いて形成されることを特徴とする請求項17に記載の圧電部品の製造方法。
【請求項19】
前記貫通電極が、電解メッキ、溶融はんだによる埋め込み、または導電性ペーストによる埋め込みにより形成されることを特徴とする請求項17に記載の圧電部品の製造方法。
【請求項20】
前記素子配線が、すべての配線が同一電位となるように配線されて、前記貫通電極を形成する際に、電解メッキにより形成されることを特徴とする請求項17に記載の圧電部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−147097(P2011−147097A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100903(P2010−100903)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】