説明

地下水の汚染物質を監視するための方法およびシステム

【課題】地下水の汚染物質を監視するための方法およびシステムを提供すること。
【解決手段】地下水の汚染物質を監視するための方法およびシステムについて記載する。地下水テーブルの上方のステージに地下水がポンプ供給され、そこで地下水の少なくとも一部が蒸発する。空胴リングダウン分光計を使用して蒸気がサンプルされ、汚染物質の測定蒸気濃度が液体汚染物質濃度に変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に地下水の汚染物質の監視に関し、より詳細には、低レベルの地下水の汚染を現場で監視することができるセンサの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水の汚染は、ガソリン、オイル、道路塩および化学物質などの人造産出物が地下水に混入することによって生じる。汚染物質と呼ばれるこれらの人造産出物の主な汚染源の中には、貯蔵タンク、腐敗システム、有害廃棄物用地、埋め立ごみ処理地および道路塩ならびに化学物質の広範囲にわたる使用がある。汚染物質が、地下水を使用している人、あるいは潜在的に地下水を使用している人の健康および安全に影響を及ぼす場合、人が安全に使用することができると見なされるレベルまで地下水の水質を改善するために、汚染の原因になっている資産の所有者および/または団体に対する政府による様々な統制が必要である。
【0003】
米国環境保護局(EPA)は、地下水中に存在する化学物質に対する最大汚染物質レベル(MCL)を定めている。州の機関は、EPAのMCLを採用することができ、あるいはもっと厳格な浄化規格(MCLの厳格さに優るとも劣らない浄化規格)を要求することができる。多くの化学物質のMCLは、パートパーミリオン(ppm)またはパートパービリオン(ppb)のレンジである。たとえば、ガソリン中に存在する、知られている発癌物質であるベンゼンのEPA MCLは5ppbである。したがって地下水監視システムは、すべて、微細レベルで汚染物質を検出することができなければならない。
【0004】
地下水は、通常、水質改善計画の設計に先立って、現場を浄化している間、周期的に監視され、浄化が完了した後、その地下水が機関の浄化レベルに合致していることが検証される。たとえば、地下水は、季節による影響を監視し、汚染プルームのサイズを評価し、かつ、実施されるあらゆる水質改善計画の効果を測定するために、多年にわたって年に4回監視することができる。
【0005】
地下水の監視には、プルーム特性を測定するために、現場およびその周辺の様々な場所に地下水監視井戸を設置する必要がある。たとえば、汚染物質の濃度が最も高いと思われる場所、たとえば化学物質が撒き散らされた場所などに1つまたは複数の井戸を設置することができる。また、汚染プルームの縁と思われる場所に複数の井戸を設けることも可能である。プルームの縁の位置は、汚染物質の種類、土壌の特性、地表から地下水までの深さ、および表面の輪郭や人造構造(ユーティリティコリドールなど)によって影響される地下水流の方向によって様々である。また、プルームの特性、たとえばプルームが拡大しているのか、あるいは縮小しているのかどうかなどを評価するために、プルームの中心の井戸とプルームの縁の井戸との間に追加井戸を設けることも可能である。
【0006】
地下水監視井戸から試料を採取するために、最初に井戸をパージして、井戸ケーシングおよび周囲のフィルタパック内の停滞水を除去し、収集された水試料が井戸の近傍の実際の地下水を確実に代表するように補助することができる。たとえば、共通の規格は、3つないし5つの井戸体積をパージすることであり、あるいは試料を採取する前に一度井戸が乾くまで井戸体積をパージすることである。非パージ方式を使用することも可能である。
【0007】
収集された地下水試料は、通常、分析のために研究所に送られる。研究所は、分析すべき汚染物質の種類に基づいて試験を実行する。たとえば、揮発性有機化合物(VOC)は、通常、ガスクロマトグラフィおよび質量分析法プロトコルを使用して測定される。この試験は、場合によっては著しくコストがかかり、とりわけ、多くの監視井戸が現場に存在し、かつ、水質改善計画のために年4回の監視を必要とする場合、著しくコストがかかる。さらに、ガスクロマトグラフィおよび質量分析法機器は、一般に大型で、かつ、複雑であり、したがって現場での試験には適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、低レベルの地下水汚染を現場で監視する方法およびシステムを提供すれば有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
自然位(in−situ)での地下水監視のための方法およびシステムについて記載する。この方法は、地下水テーブルの上方に配置された容器に地下水を移動させるステップと、容器内の地下水の少なくとも一部を蒸発させるステップと、蒸気中の少なくとも1つの化学物質の濃度を測定するステップとを含む。
【0010】
地下水を移動させるステップは、地下水を容器にポンプ供給するステップおよび/または容器への地下水の垂直方向の輸送を使用するステップを含むことができる。地下水の少なくとも一部を蒸発させるステップは、地下水を蒸発させるために周囲温度を使用するステップ、地下水を加熱するステップおよび/または静電噴霧注入を使用するステップを含むことができる。蒸気中の少なくとも1つの化学物質の濃度を測定するステップは、既知の波長における吸収を測定して蒸気中の化学物質濃度を測定するために吸収分光学を使用するステップを含むことができる。
【0011】
この方法は、蒸気中の少なくとも1つの化学物質の測定濃度を地下水中の化学物質の濃度に変換するステップをさらに含むことができる。ヘンリーの法則を使用して、蒸気中の少なくとも1つの化学物質の測定濃度を地下水中の化学物質の濃度に変換することができる。
【0012】
自然位での地下水監視のためのシステムは、地下水累層の上方に配置された排水ますと、地下水累層中の地下水を排水ますへ移動させるポンプと、排水ますの上方に配置された光共振器であって、排水ますの中の地下水からの蒸気と光共振器を通って移動する光ビームが相互作用する光共振器と、蒸気中の化学物質の濃度を検出するセンサとを備えている。
【0013】
排水ますは、ポンプから地下水を受け取るための入口、および地下水の少なくとも一部を地下水累層に戻すためのドレンを備えることができる。光共振器は、空胴リングダウン分光計共振器であってもよい。
【0014】
光ビームは、同調可能レーザによって生成することができる。同調可能レーザは、蒸気中の少なくとも1つの化学物質を検出するように設計されたスペクトルレンジを有することができる。
【0015】
センサは、フォトダイオードを備えることができる。フォトダイオードは、光ビームが光共振器を通って移動する際の光パルス遅延時間を測定する。センサは、蒸気中の化学物質の検出濃度を地下水中の化学物質の濃度に変換することができる。
【0016】
このシステムは、さらに、排水ますの中の地下水を蒸発させる加熱器および/または排水ますから光共振器へ蒸気を案内する蒸気容器を備えることができる。
これらならびに他の態様および利点は、適宜、添付の図面を参照して行う以下の詳細な説明を読むことにより、当業者には明らかになるであろう。また、この概要は単なる例示的なものにすぎず、特許請求される本発明の範囲の制限を意図したものではないことを理解されたい。
【0017】
以下、現時点における好ましい実施形態について、添付の図面に関連して説明する。図において、同様の参照数表示は、すべての図を通して同様の構成要素を表している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、地下水を監視するための方法100の流れ図である。ブロック102で、地下水監視井戸に配置されたステージに地下水がポンプ供給される。ステージは、地下水累層(すなわち地下水テーブル)の上方に位置し、かつ、地表面より下に位置するように監視井戸の中に配置することができる。別法としては、地表面より上にステージを配置することも可能である。地下水は、地下水累層中の水であり、地下水監視井戸を介してアクセスすることができる。ステージは、排水ますまたは他のタイプの容器などの地下水保持手段を備えている。
【0019】
地下水は、地下水をポンプ供給するための様々な方法のうちの1つを使用してステージにポンプ供給される。地面より下方の地下水の深さに基づいてポンプ供給方法を選択することができる。たとえば、深い井戸に適用する場合は、水中に浸すことができるポンプを使用することができ、一方、浅い井戸に適用する場合は、圧力ポンプまたは真空ポンプを使用することができる。別法としては、容器を介した垂直方向の輸送を使用して、地下水をステージへ移動させることも可能である。ポンプ供給された地下水の少なくとも一部は、ステージの地下水保持手段の中に保持される。
【0020】
ブロック104で、ポンプ供給された地下水がステージで蒸発する。地下水は、たとえば周囲環境温度を使用して蒸発させることができる。追加または別法として、ポンプ供給された地下水の少なくとも一部をステージ上の薄い膜の中に置き、かつ、地下水を蒸発させるための加熱器を膜の中に使用することによって地下水を蒸発させることも可能である。静電噴霧注入(ESI)などの他の加熱方法の使用または他の地下水蒸発技法の使用を始めとする、地下水を蒸発させるための他の手段を使用することも可能である。
【0021】
地下水の蒸気は、ステージの上方へ上昇する。一実施例では、蒸気は、井戸の頂部の地面より上に配置されたセンサまで、地下水監視井戸の頂部または地下水監視井戸の上方へ上昇する。別法としては、ステージの上方の井戸内にセンサを配置することも可能である。マニホルドを使用して蒸気をステージからセンサへ導くことができる。
【0022】
ブロック106で蒸気中の汚染物質が測定される。センサを使用して蒸気中の汚染物質レベル(すなわち化学物質濃度)を測定することができる。たとえばセンサは、既知の波長における吸収を測定して蒸気中の汚染物質レベルを測定するために吸収分光学を使用することができる。蒸気汚染物質レベルが測定されると、これらのレベルを地下水汚染物質レベルに変換することができる。したがって、地下水汚染物質レベルを現場で測定することができる。
【0023】
図2は、地下水を監視するためのシステム200のブロック図である。システム200は、排水ます202、蒸気容器204および光共振器206を備えている。この実施例では、排水ます202は、地下水監視井戸218内の地下水テーブルの上方で、かつ、地表面より下方に配置されている。しかしながら、他の実施形態では、地面より上に排水ます202を配置することができる。
【0024】
蒸気容器204は、排水ます202から光共振器206へ蒸気を案内している。光共振器206は、排水ます202の上方の監視井戸218内または監視井戸218の上方に配置されている。表面の状態に応じて、光共振器206を監視井戸218内に配置するか、あるいは監視井戸218の上方に配置するかどうかを決定することができる。たとえば、監視井戸218が駐車場に配置されている場合、交通による地下水監視システム200の損傷を防止するために、監視井戸218の中に光共振器206を配置することができる。
【0025】
排水ます202は、入口208を介して地下水を受け取ることができる。過剰の地下水は排水ます202から排水され、ドレン210を介して地下水累層に戻される。ドレン210は、溢れた地下水を排水ます202から流出させ、かつ、著しい蒸気の漏れを防止することができる逆止め弁を備えることができる。図1を参照して説明したように、ポンプを使用して、入口208を介して地下水を排水ます202の中へポンプ供給することができる。排水ます202の中へポンプ供給された地下水の一部を蒸発させ、残りの地下水をドレン210を介して排水ます202から流出させて地下水累層に戻すことができる。
【0026】
排水ます202の中に残っている地下水の少なくとも一部は蒸発する。この地下水は、周囲環境温度を使用して蒸発させることができる。詳細には、暖かい地域では、また、それ以外の地域では暖かい季節の間は、排水ます202の中の地下水を蒸発させるために必要な熱を提供するためには、場合によっては周囲温度で十分である。たとえば、地下水汚染物質を多くのガス種に対するEPAの検出要件に合致するレベルまで蒸発させるためには、場合によっては30℃の温度で十分である。
【0027】
別法としては、薄い膜の上に取り付けられた薄膜抵抗加熱器などの加熱器を使用して地下水を加熱することも可能である。排水ます202の中の地下水を加熱することにより、システム200は、より速やかに平衡し、より高い蒸気濃度の汚染物質を提供することができる。また、排水ます202の中の地下水は、マイクロノズルに電圧を印加することによって生じる地下水の静電噴霧注入(ESI)を使用して蒸発させることも可能である。
【0028】
蒸気容器204は、地下水の蒸気を排水ます202から光共振器206へ案内する円筒状の管であってもよい。蒸気容器204の中にウィックマニホルド216を配置することができる。地下水の蒸気は、循環する蒸気が排水ます202の中の地下水を通過してウィックマニホルド216に流れると生成される。地下水の蒸気を循環させることにより、ウィックマニホルド216から光共振器206を通して引き出される一様な濃度の蒸気を提供することができる。気相中の重要な化学物質の濃度は、通常、水−蒸気界面の温度で決まる。
【0029】
地下水監視システム200は、ファン212を備えることも可能である。ファン212は、光共振器206の上方に配置することができ、システム200全体にわたる一様な蒸気濃度を保証するために、地下水の蒸気を循環させることができる。蒸発冷却の可能性があるため、ファン212は、蒸気中の化学物質の濃度を取得する前に、一定の期間(すなわち「整定時間」)の間、停止させることができる。
【0030】
地下水監視システム200は、ふた214を備えることも可能である。ふた214は、光共振器206を覆って、光共振器206のブロックと共にハウジングを形成することができる。ふた214は銅から構成することができ、熱を吸収するように設計された熱伝導体を備えている。
【0031】
光共振器206は、空胴リングダウン分光計(CRDS)共振器であっても、あるいはリングレーザジャイロスコープのために使用される共振器などの他のタイプの共振器であってもよい。既知の赤外波長における蒸気吸収には、ガスの識別ならびにガスの濃度測定を可能にする固有の「特徴」情報が含まれている。CRDS共振器は、共振空胴に捕獲される光のマイクロ秒滞留時間(減衰時間)を測定する。光共振器206の実施例の1つについて、図3を参照してさらに説明する。
【0032】
図3は、CRDS共振器300のブロック図である。CRDS共振器300は、共振器206としてシステム200に使用することができる。CRDS共振器300は、光ビーム304がその中を移動するブロック302を備えている。光ビーム304が移動する経路は、ボア吸収領域と呼ぶことができる。ブロック302に入射する光ビーム304は、光源306を使用して生成される。ブロック302から射出する光ビーム304中の光は遅延時間光と呼ばれ、光検出器308によって検出される。光源306および/または光検出器308は、光ファイバを介してCRDS共振器300に結合されることが好ましい。
【0033】
ブロック302は、石英ガラス、BK7光学ガラス、または光ビーム304が減衰する際に100マイクロ秒の時間期間にわたる安定性を提供する他の適切な任意の材料から構成することができる。図3に示されているように、ブロック302は広々としており、地下水の蒸気とビーム304の間の相互作用をより容易にしている。別法としては、CRDS共振器300の長さに沿って開口を切り欠き、ボア吸収領域への地下水蒸気の流入を可能にすることができる。
【0034】
ブロック302は、3つ以上のミラー310を備えることができる。ミラー310は、99.98%(すなわち20ppm)のレンジの鏡面反射率を提供する光コーティングを有していることが好ましい。ミラー310は、ガス分子が強力な吸収を有する短波赤外領域(SWIRすなわち1.5〜2.0μmレンジ)で動作するように設計することができる。また、ミラー310は、中波赤外領域(MWIRすなわち3〜5μmレンジ)で動作するように設計することも可能である。
【0035】
通常、複数のミラー310のうちの1つまたは複数は湾曲しており、したがって光ビーム304は、CRDS共振器300内を往復する毎にリフォーカスされる。他のミラー310は、CRDS共振器300内に光を入射させる入力ミラーである。この入力ミラー310は、CRDS共振器300内への光ビーム304の共振結合を可能にするべく、圧電によって駆動することができる。また、この入力ミラー310は、光検出器308によって検出される遅延時間光がCRDS共振器300から射出するミラーでもある。
【0036】
これらのミラー310は、ブルースターの角度で配置された光窓の後側にミラー310を配置することによって蒸気および埃から保護されることが好ましく、本明細書においてはブルースター窓ミラー保護312として参照されている。低吸収の窓312は、ブルースターの角度ではCRDS共振器300の損失にほとんど寄与しない。
【0037】
地下水汚染物質は、周囲温度、加熱、ESI注入または地下水を蒸発させるための他の適切な任意の手段による排水ます202内での地下水の蒸発によってボア吸収領域に流入する。たとえば、液体−蒸気変換システムを使用することができる。液体−蒸気変換システムは、脱塩化に使用されるパーベーパレーション膜に類似した拡散膜を備えることができる。
【0038】
排水ます202は、ブロック302およびカバー214と熱接触させることができる。カバー214は、局所環境による周囲温度まで加熱される。カバー214に対するCRDS共振器300および排水ます202の位置のため、CRDS共振器300の方が排水ます202より周囲温度熱源の近くに配置されている。したがってCRDS共振器300の方が排水ます202の中の地下水より暖かくなり、そのため、分析すべき汚染物質の凝縮を妨害することがあり得る。
【0039】
光源306は、同調可能レーザ、より詳細には同調可能赤外レーザであってもよい。また、光源306は、量子カスケードレーザまたはSWIRレンジおよび/またはMWIRレンジで動作させることができる他の任意の光源であってもよい。光源306は、監視すべき汚染物質の数および種類に応じて、重要なスペクトルレンジをカバーするための1つまたは複数のレーザを備えることができる。たとえばスペクトルレンジが1.64と1.685の間の同調可能レーザを使用して、TCE、DCE、TCA、クロロホルムおよびベンゼンを検出することができる。他の例として、スペクトルレンジが1.62と1.65の間の同調可能レーザを使用してメタンを検出することができる。
【0040】
レーザ波長と共振器モードが共振している場合、光ビーム304は、好ましくはサブマイクロ秒の時間スケールでブロック302中に共振結合する。光ビーム304は、一度捕獲されると、光がミラー損失および/またはガス損失によって減衰するまで、通常はマイクロ秒の単位でCRDS共振器300を通過する。大よそ100マイクロ秒後に、共振器モードは、他の時間減衰測定の準備が整う。したがって、ほぼ1ミリ秒毎に1つの時間減衰測度を得ることができる。
【0041】
典型的な動作の場合、波長毎に100個の試料を採取し、平均化することができる。次に、光源306を他の波長に同調させ、全スペクトルが得られるまでプロセスを繰り返すことができる。別法としては、たとえばその特徴が良く知られているいくつかの汚染物質に対しては、必ずしも全スペクトルを得る必要はない。その代わりに、たとえば、オフピーク非吸収波長とオンピークガス吸収レベルの間の時間減衰の変化を測定することも可能である。
【0042】
光検出器308は、フォトダイオード、好ましくはナノ秒で応答することができるフォトダイオードを備えることができる。光検出器308は、光ビーム304がCRDS共振器300の周りを循環する際の光パルス減衰時間を測定する。この光パルス減衰時間を使用して、汚染物質の吸収が測定される。吸収線の位置および強度によって化学物質およびその濃度が一意に識別される。
【0043】
また、光検出器308は、蒸気中の汚染物質の測定濃度を地下水中の汚染物質の濃度に変換するように動作させることができるプロセッサまたはコントローラなどの処理デバイスを備えることができる。処理デバイスは、ヘンリーの法則などの知られている変換技法を使用した蒸気−地下水変換を実施するソフトウェアを実行することができる。この変換は、さらに、温度独立変数を使用して増補することができる。
【0044】
光検出器308によって測定された汚染のレベルは、ディスプレイに表示することができる。追加または別法として、測定された汚染レベルをオンサイト位置またはオフサイト位置へ無線で送信し、監視井戸218から離れた場所で結果をモニタすることも可能である。さらに、この無線リンクを使用して地下水監視システム200を制御することも可能である。
【0045】
地下水監視システム200は、現場の状態変化に応じて(たとえば汚染物質プルームの拡大または縮小に応じて)別の監視井戸へ移動させることができる可搬型計器であってもよく、それにより、たとえばシステム200を必要に応じて別の現場へ移動させることができる。地下水監視システム200を使用して、現在の地下水に典型的に見出される汚染物質を検出することができ、また、将来的に識別されることになる汚染物質を検出することができる。さらに、システム200は、常に変化し得るEPA MCLレベルに矛盾しない汚染物質レベルを検出することができる。有利には、地下水監視システム200は、約5分で1つの試料に対する結果を提供することができる。したがって、この地下水監視システム200によれば、汚染レベルの識別が促進され、研究所における試験の量が著しく減少し、延いてはサイトアセスメントが容易になり、また、総合コストが低減される。
【0046】
説明した実施形態は単なる例にすぎず、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではないことを理解されたい。特許請求の範囲は、記載の順序または構成要素に限定されるものとして解釈すべきではない(ただし、その趣旨で記載されている場合は除く)。したがって、添付の特許請求の範囲の範疇および精神に属するすべての実施形態およびそれらの均等物は、本発明として特許請求される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】一実施例による、地下水を監視するための方法の流れ図である。
【図2】一実施例による、地下水を監視するためのシステムのブロック図である。
【図3】一実施例による、図2に示すシステムに使用するための空胴リングダウン分光計(CRDS)共振器のブロック図である。
【符号の説明】
【0048】
100 地下水を監視するための方法
200 地下水監視システム
202 排水ます
204 蒸気容器
206 光共振器
208 排水ますの入口
210 排水ますのドレン
212 ファン
214 ふた(カバー)
216 ウィックマニホルド
218 地下水監視井戸
300 CRDS共振器
302 ブロック
304 光ビーム
306 光源
308 光検出器
310 ミラー
312 ブルースター窓ミラー保護

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然位での地下水監視のための方法であって、
地下水テーブルの上方に配置された容器に地下水を移動させるステップと、
前記容器内の前記地下水の少なくとも一部を蒸発させるステップと、
蒸気中の少なくとも1つの化学物質の濃度を測定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
蒸気中の少なくとも1つの化学物質の濃度を測定するステップが、既知の波長における吸収を測定して前記蒸気中の化学物質濃度を測定するために吸収分光学を使用するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
蒸気中の少なくとも1つの化学物質の前記測定濃度を前記地下水中の前記化学物質の濃度に変換するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−80105(P2009−80105A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−219740(P2008−219740)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】