地下遮水壁の構築方法
【課題】隣り合う遮水シートの施工間隔があいた場合でも遮水シート同士を継手させることを目的とする。
【解決手段】地盤Gに第一溝2Aを造成する工程と、ロール状の第一遮水シート3Cを展開させて第一溝2A内に第一遮水シート3Cを張設する工程と、第一遮水シート3Cの第一終点側ジョイント冶具5にダミー継手部材を連結させる工程と、第一溝2A内の流動体の固化後、第一溝2A内の流動体内からダミー継手部材を引き抜く工程と、地盤Gに第二溝2Bを造成する工程と、ダミー継手部材が引き抜かれることで第一溝2A内で固化した流動体内に形成された孔内に継手部材6を挿入して第一終点側ジョイント冶具5に継手部材6を連結する工程と、継手部材6に第二遮水シート3Aの第一始点側ジョイント冶具5を連結する工程と、ロール状の第二遮水シート3Aを展開させて第二溝2B内に第二遮水シート3Aを張設する工程と、を備える。
【解決手段】地盤Gに第一溝2Aを造成する工程と、ロール状の第一遮水シート3Cを展開させて第一溝2A内に第一遮水シート3Cを張設する工程と、第一遮水シート3Cの第一終点側ジョイント冶具5にダミー継手部材を連結させる工程と、第一溝2A内の流動体の固化後、第一溝2A内の流動体内からダミー継手部材を引き抜く工程と、地盤Gに第二溝2Bを造成する工程と、ダミー継手部材が引き抜かれることで第一溝2A内で固化した流動体内に形成された孔内に継手部材6を挿入して第一終点側ジョイント冶具5に継手部材6を連結する工程と、継手部材6に第二遮水シート3Aの第一始点側ジョイント冶具5を連結する工程と、ロール状の第二遮水シート3Aを展開させて第二溝2B内に第二遮水シート3Aを張設する工程と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水シートからなる地下遮水壁の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば産業廃棄物の最終処分場などでは、汚染物の流出を防止するために地下遮水壁で最終処分場を囲み、外部と仕切る必要がある。地下遮水壁としては、簡単且つ高い水密性を確保できる高密度ポリエチレン製の遮水シートを使用したものがあり、この遮水シートからなる地下遮水壁は、地盤に造成されたソイルセメント等からなる溝内に遮水シートが埋設された構成からなり、透水性の高い地盤や地耐力の低い地盤の場合に採用されることが多い。
【0003】
上記した地下遮水壁の構築方法としては、まず、地盤に、流動体で満たされた溝を造成する。次に、ロール状に巻かれた遮水シートを上記した溝の中に挿入し、このロール状の遮水シートを溝の中で展開させて張設する。なお、この遮水シートの一端には雄形のシートジョイナー(継手部)が付設されており、他端には雌形のシートジョイナー(継手部)が付設されている。次いで、新たなロール状の遮水シートを溝の中に挿入するとともに、先行して設置された遮水シートと新たな遮水シートとを継手する。詳しく説明すると、遮水シートの展開始点側の端部には雌形のシートジョイナーが、展開終点側の端部には雄形のシートジョイナーがそれぞれ付設されている。そして、先行して設置された遮水シートの雄形のシートジョイナーに新たな遮水シートの雌形のシートジョイナーを嵌合させながら新たなロール状の遮水シートを挿入する。次いで、先行の遮水シートと同様に新たな遮水シートを溝内で展開させて張設する。以上の工程を繰り返すことで、互いに継手された複数の遮水シートが溝の中に設置される(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−283474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の地下遮水壁の構築方法では、先行の遮水シートを施工した後、しばらく期間或いは時間をおいてから新たな遮水シートを施工する場合、先に施工した溝内の流動体が固化していると、遮水シートの継手ができず、遮水シートの不連続箇所が生じるという問題がある。例えば、複数日に亘って中断されていた工事を再開する場合、溝内の流動体が固化している可能性が高く、既に施工した遮水シートに対して継手できないという問題が生じる。また、溝内の流動体の固化性が高い場合には、前日或いは前の週に施工した溝内の流動体が固化して継手できない場合がある。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、隣り合う遮水シートの施工間隔があいた場合でも遮水シート同士を継手させることができ、隣り合う遮水シートを連続的に設けることができる地下遮水壁の構築方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る地下遮水壁の構築方法は、遮水シートからなる地下遮水壁の構築方法において、地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第一溝を造成する工程と、ロール状に巻かれた第一遮水シートを展開させて前記第一溝内に前記第一遮水シートを張設する工程と、前記第一遮水シートの展開終点側の端部に設けられた第一終点側ジョイント冶具にダミー継手部材を連結させ、該ダミー継手部材を前記第一溝内に設置する工程と、前記第一溝内の流動体の固化後、該第一溝内から前記ダミー継手部材を引き抜く工程と、前記地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第二溝を、前記第一溝のうち前記ダミー継手部材が配置されていた部分に接続させて造成する工程と、前記ダミー継手部材が引き抜かれることで前記第一溝内の固化した流動体に形成された孔内に継手部材を挿入して前記第一終点側ジョイント冶具に前記継手部材を連結する工程と、該継手部材に、第二遮水シートの展開始点側の端部に設けられた第一始点側ジョイント冶具を連結する工程と、ロール状に巻かれた前記第二遮水シートを展開させて前記第二溝内に前記第二遮水シートを張設する工程と、を備えることを特徴としている。
【0007】
このような特徴により、地下遮水壁を途中まで構築したところで一旦中断し、その後、地下遮水壁の構築を再開する際に、先に施工した第一溝内の流動体が固化していても、先に施工した第一遮水シートと後に施工する第二遮水シートとが継手部材を介して繋ぎ合わせられる。
【0008】
また、本発明に係る地下遮水壁の構築方法は、遮水シートからなる地下遮水壁の構築方法において、地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第三溝を造成する工程と、前記第三溝内にダミー継手部材を設置する工程と、第三遮水シートの展開始点側の端部に設けられた第二始点側ジョイント冶具を前記ダミー継手部材に連結させる工程と、ロール状に巻かれた前記第三遮水シートを展開させて前記第三溝内に前記第三遮水シートを張設する工程と、前記第三溝内の流動体の固化後、該第三溝内から前記ダミー継手部材を引き抜く工程と、前記地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第四溝を、前記第三溝のうち前記ダミー継手部材が配置されていた部分に接続させて造成する工程と、前記ダミー継手部材が引き抜かれることで前記第三溝内の固化した流動体に形成された孔内に継手部材を挿入して前記第二始点側ジョイント冶具に前記継手部材を連結させる工程と、ロール状に巻かれた第四遮水シートを展開させて前記第四溝内に前記第四遮水シートを張設する工程と、該第四遮水シートの展開終点側の端部に設けられた第二終点側ジョイント冶具を前記継手部材に連結する工程と、を備えることを特徴としている。
【0009】
このような特徴により、地下遮水壁を連続的に形成していき、最終的に一周させて平面的に環状に構築する場合において、地下遮水壁の始点側の端部と終点側の端部とを接続させて閉合させる際に、最初に施工した第三溝内の流動体が固化していても、一枚目の遮水シート(第三遮水シート)と最後の遮水シート(第四遮水シート)とが継手部材を介して繋ぎ合わせられる。
【0010】
また、本発明に係る地下遮水壁の構築方法は、前記継手部材のうち、前記遮水シートの始点側又は終点側のジョイント冶具に係合されるジョイント部の表面に、水膨張性シールが被覆されていることが好ましい。
【0011】
これにより、継手部材を施工した後、継手部材のジョイント部の表面に設けられた水膨張性シールが水分に接触して膨張して遮水シートのジョイント冶具に密着される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る地下遮水壁の構築方法によれば、隣り合う遮水シートの施工間隔があいた場合でも、これらの遮水シート同士を継手させることができ、隣り合う遮水シートを連続的に設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る地下遮水壁の構築方法の実施の形態について、図面に基いて説明する。なお、後述する「第一溝2A」が本発明の「第一溝」及び「第三溝」に相当し、後述する「第二溝2B」が本発明の「第二溝」及び「第四溝」に相当する。
【0014】
まず、地盤G内に構築される地下遮水壁1の構成について図1に基いて説明する。図1は地下遮水壁1を表す平面図であり、特に遮水シート3の継手箇所を表している。
【0015】
図1に示すように、地下遮水壁1は、地盤Gに鉛直に造成された溝2と、溝2内に鉛直に埋設されているとともに隣り合うもの同士互いに繋ぎ合わせられた複数の遮水シート3とから構成されている。なお、この地下遮水壁1は、複数日に亘って構築されるものであり、図1における左側の第一区間Aを施工した次の日に図1における右側の第二区間Bが施工される。
【0016】
溝2は、地盤Gを攪拌するとともに水やベントナイト、セメント、フライアッシュ等の添加材を混合させることで地盤G中に形成されるものである。この溝2は、攪拌当初には流動性を有する流動体で満たされているが、上記した添加材としては、セメント等の固化材が含まれているので、溝2内の流動体は、時間の経過とともに地盤攪拌体が流動性を失って固化される。なお、地下水が高い地盤の場合は、水やベントナイト等を加えずに攪拌するだけで流動性を有することがあり、この場合は水等を加えないこともある。また、地下水が低い地盤の場合は、セメント等の固化材を加えなくても、脱水によって流動性を失い固化状態となることもあり、この場合は固化材を加えないこともある。
【0017】
遮水シート3は、例えばフレキシブルポリマーアロイ製のシート等であり、高い水密性を有するとともに、弾力性を有する柔らかな材質のものからなり、さらに、設置する際に破損しない程度の強度及び厚さを有するものである。複数の遮水シート3のうち、1日のうちで最初に施工する遮水シート3Aとその後に施工する中間の遮水シート3Bとは、その展開始点側(図1における左側)の側端部に断面C形の筒状の雌型ジョイント冶具5が設けられ、展開終点側(図1における右側)の側端部に丸管状の雄型ジョイント冶具4が付設されている。一方、1日のうちで最後に施工する遮水シート3Cは、その両側の側端部に断面C形の筒状の雌型ジョイント冶具5がそれぞれ設けられている。
【0018】
雄型ジョイント冶具4は、例えば2.5インチ径の鋼管からなり、雄型ジョイント冶具4の長さ寸法は、少なくとも遮水シート3の縦寸法(高さ寸法)よりも長く、雄型ジョイント冶具4の上下端は遮水シート3の上下端からそれぞれ突出している。雄型ジョイント冶具4は、円筒形状に折り返された遮水シート3の側端部の中に挿装されて取り付けられており、遮水シート3側端部によって雄型ジョイント冶具4外周面が覆われるように包み込まれている。なお、雄型ジョイント冶具4と遮水シート3側端部との付設は、雄型ジョイント冶具4の外周面に軸方向に延在するようにプレートを溶接等で取付け、そのプレートに遮水シートを接着等で取付けるようにしてもよい。
【0019】
雌型ジョイント冶具5は、雄型ジョイント冶具4の径よりも大きい内径のものであり、例えば5.0インチ径の鋼管からなる。雌型ジョイント冶具5の長さ寸法は、遮水シート3の縦寸法と同じ、或いは遮水シート3の縦寸法より長くなっている。また、雌型ジョイント冶具5には、軸方向に延在するスリット5aが全長に亘って形成されている。スリット5aの幅寸法は、雄型ジョイント冶具4の外径よりも狭く、雌型ジョイント冶具5内に緩挿された雄型ジョイント冶具4に水平方向の力が作用しても、スリット5aで引っ掛かり、雌型ジョイント冶具5内から抜け出ることがない構成となっている。また、雌型ジョイント冶具5は、断面形状C形の筒状に折り返された遮水シート3の側端部の中に挿装されており、遮水シート3側端部によって雌型ジョイント冶具5の外周面および内周面がそれぞれ覆われるように包み込まれている。なお、雌型ジョイント冶具5と遮水シート3の他方の側端部との取付けは、雌型ジョイント冶具5のスリット5aとは反対側の外周面に軸方向に延在するようにプレートを溶接等で取付け、そのプレートに遮水シートを接着等で取付けるようにしてもよい。
【0020】
上記した最初の遮水シート3Aと中間の遮水シート3B、隣り合う中間の遮水シート3B同士、及び、中間の遮水シート3Bと最後の遮水シート3Cとは、雄型ジョイント冶具4を雌型ジョイント冶具5内に緩挿させることでそれぞれ継手されている。
一方、上記した最後の遮水シート3Bと当該遮水シート3Bの施工日の次の日の最初に施工する遮水シート3Aとは、継手部材6を介して継手されている。
【0021】
継手部材6は、溝2の高さ方向に沿って延設された平板状の鋼板からなり、その両側の側端部には、上記した雄型ジョイント冶具4と同様の構成からなる丸管状の雄型ジョイント部6a,6bがそれぞれ設けられている。この継手部材6は、上記した第一区間Aと第二区間Bとの境界を跨ぐように配設されており、第一区間A側の雄型ジョイント部6aは、上記した最後の遮水シート3Bの展開終点側の雌型ジョイント冶具5内に緩挿されて当該雌型ジョイント冶具5に連結されるとともに、第二区間B側の雄型ジョイント部6bは、上記した最初の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5内に緩挿されて当該雌型ジョイント冶具5に連結されている。
【0022】
また、上記したジョイント部6a,6bの表面には、水膨張性シール7が被覆されている。水膨張性シール7は、ジョイント部6a,6bの表面に塗布される液体或いは粘性体のシール材である。なお、水膨張性シール7としては、ジョイント部6a,6bの表面に貼着されるシート状のものを用いることも可能であり、水膨張性を有する種々の防止材を使用することが可能である。また、ジョイント部6a,6bだけでなく、両側のジョイント部6a,6b間の平板部分6cの表面にも水膨張性シール7が被覆されていてもよい。
【0023】
なお、雄型ジョイント冶具4の中に、溝2の底面に突き刺して立設させた固定アンカーを挿入させ、雄型ジョイント冶具4を所定位置に固定してもよい。また、遮水シート3で覆われた雄型ジョイント冶具4の外周面と遮水シート3で覆われた雌型ジョイント冶具5の内周面との間の空隙に、例えばモルタル等からなる充填材を充填してもよい。
【0024】
次に、上記した構成からなる地下遮水壁1を構築する施工手順について図2〜図11に基いて説明する。図2は地下遮水壁1の施工状況を表した全体斜視図であり、図3〜図11は地下遮水壁1を構築する際の各工程を表した平面図である。
なお、本実施の形態は、図2に示すように、対象地域Xの外周に地下遮水壁1を全周に亘って構築する場合であって、地下遮水壁1を第一区間Aと第二区間Bに分けて施工する場合を例に説明する。
【0025】
[準備工程]
まず、図2に示すように、地下遮水壁1を構築する工事を行うための準備を行う。具体的に説明すると、地下遮水壁1を構築するための重機10,11や図示せぬ設備機器を現場に搬入して組み立てるとともに、施工ヤードの造成を行う。重機10,11として、例えば、溝2を造成するためのトレンチャー式地盤改良機等の攪拌混合機10や、溝2内に遮水シート3を設置するためのシート展開装置11、残土処理や整地等を行うための図示せぬバックホウ等を準備する。また、設備機器として、流動体で満たされた溝2を造成する際に添加する添加材を調合する図示せぬプラントや、流動体で満たされた溝2を造成する際に用いる水を貯留する図示せぬタンクや、図示せぬ発電機等を準備する。また、施工ヤードの造成としては、上記した重機10,11や設備機器が据置・走行する範囲の整地を行って鉄板等を敷設する。
【0026】
続いて、以下の手順で、第一区間Aの地下遮水壁1Aを構築する。第一区間Aの地下遮水壁1Aは施工間隔(期間或いは時間)をあけずに施工する。
【0027】
[攪拌混合工程]
まず、図3に示すように、地盤Gに、その日施工する分(第一区間A)の溝2(第一溝2A)を造成する。具体的に説明すると、図2に示す攪拌混合機10を用いて、施工開始地点Sから施工中断地点Dまで対象地域Xの外周に沿って所定深さ・所定の幅で連続的に攪拌していく。このとき、前述した添加材を混合させながら攪拌を行い、攪拌した部分を流動体状にする。これにより、流動体で満たされた第一溝2Aが造成される。
【0028】
[ダミー継手部材設置工程]
次に、施工開始地点Sにおける第一溝2Aの造成が完了した後、図4に示すように、第一溝2A内に第一ダミー継手部材8を設置する。第一ダミー継手部材8は、継手部材6に合わせて形成された部材であり、具体的に説明すると、継手部材6のうち一方の雄型ジョイント部6aが無い形状になっている。つまり、第一ダミー継手部材8は、平板状の鋼板の一方の側端部に丸管状の雄型ジョイント部8aが設けられた構成からなる。この第一ダミー継手部材8は、第一溝2A内のうちの施工開始地点S側の端部に、第一溝2Aの高さ方向に延在させて配置しており、その下端を第一溝2Aの底面に突き刺したりその上端を保持したりして定位置に固定させる。また、この第一ダミー継手部材8は、その雄型ジョイント部8aを第一溝2Aの始点側端面の反対側(図4における右側)に向けて配置する。
【0029】
[遮水シート挿入・継手工程]
次に、図5に示すように、第一溝2A内に一枚目の遮水シート3A(本発明の第三遮水シートに相当する。)を第一溝2A内に挿入するとともに、一枚目の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5A(本発明の第二始点側ジョイント冶具に相当する。)を第一ダミー継手部材8に連結させる。詳しく説明すると、まず、一枚目の遮水シート3Aを雄型ジョイント冶具4にロール状に巻きつけておく。そして、このロール状の一枚目の遮水シート3Aを図2に示すシート展開装置11によって第一溝2A内に略鉛直に真直ぐ挿入する。このとき、一枚目の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5Aを第一ダミー継手部材8の雄型ジョイント部8aに嵌めつつ、ロール状の一枚目の遮水シート3Aを下降させる。これにより、一枚目の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5A内に第一ダミー継手部材8の雄型ジョイント部8aが緩挿されて係合され、一枚目の遮水シート3Aの始点側端部が固定される。
【0030】
[遮水シート展開工程]
次に、図5に示すように、上記したロール状の一枚目の遮水シート3Aを展開させて第一溝2A内に一枚目の遮水シート3Aを張設する。詳しく説明すると、図2に示すシート展開装置11によって、遮水シート3Aのロール部分を軸回転させながら第一溝2Aに沿ってスライドさせ、ロール状の遮水シート3Aを第一溝2A内で展開させる。
【0031】
[遮水シート挿入・継手工程/遮水シート展開工程]
次に、上述した1枚目の遮水シート3Aと同様の手順で、図6に示すように、2枚目以降の遮水シート3Bを挿入・継手して展開させる。このとき、2枚目以降の遮水シート3Bを第一溝2A内に挿入する際、先に施工したn枚目(nは自然数)の遮水シート3B(3A)の雄型ジョイント冶具4に、次に施工するn+1枚目の遮水シート3B(3C)の雌型ジョイント冶具5を嵌めつつ、n+1枚目の遮水シート3B(3C)を下降させる。
【0032】
[ダミー継手部材設置工程]
次に、図7に示すように、第一区間Aにおける最終の遮水シート3C(本発明の第一遮水シートに相当する。)の展開終点側の雌型ジョイント冶具5B(本発明の第一終点側ジョイント冶具に相当する。)に第二ダミー継手部材9を連結させ、第一溝2A内に第二ダミー継手部材9を設置する。この第二ダミー継手部材9は、上記した第一ダミー継手部材8と同様の構成からなるものである。この第二ダミー継手部材9は、その雄型ジョイント部9aを最終の遮水シート3Cの展開終点側の雌型ジョイント冶具5B内に挿入させつつ、第一溝2A内に下降させる。これにより、最終の遮水シート3Cの展開終点側の雌型ジョイント冶具5B内に第二ダミー継手部材9の雄型ジョイント部9aが緩挿されて係合される。なお、第二ダミー継手部材9は、第一溝2A内のうちの終点地点(施工中断地点D)側の端部に、第一溝2Aの高さ方向に延在させて配置され、また、その雄型ジョイント部9aを第一溝2Aの終点側端面の反対側(図7における左側)に向けて配置される。また、第二ダミー継手部材9は、その下端を第一溝2Aの底面に突き刺したりその上端を保持したりして定位置に固定させる。これにより、最終の遮水シート3Cの終点側端部が固定される。
【0033】
以上のように第一区間Aの地下遮水壁1Aが構築されたところで、作業を一旦終了する。
そして、残りの第二区間Bの地下遮水壁1Bは、後日、以下の手順で施工する。なお、第二区間Bの地下遮水壁1Bは、第一区間Aの地下遮水壁1Aと同様に施工間隔(期間或いは時間)をあけずに施工する。
【0034】
[ダミー継手部材撤去工程]
まず、図8に示すように、第一溝2A内で固化した流動体内から上記した第二ダミー継手部材9を引き抜いて撤去する。具体的に説明すると、第二ダミー継手部材9の上端を重機(図2に示す攪拌混合機10やシート展開装置11、図示せぬバックホウ等)で鉛直上方に引き上げる。これにより、第一溝2A内の固化した流動体の終点側端部に、第一溝2Aの高さ方向に延在する孔20が形成される。この孔20は、平面視において、第一区間Aにおける最終の遮水シート3Cの展開終点側の雌型ジョイント冶具5Bの内側に円形に形成され、さらに、その円形部分から第一溝2Aの終点側端面に向けて細長い長方形の部分が延びた形状になっている。
【0035】
[攪拌混合工程]
次に、図9に示すように、地盤Gに、その日施工する分(第二区間B)の溝2(第二溝2B)を上記した第一溝2Aの終点側端部(第二ダミー継手部材9が配置されていた部分)に接続させて造成する。具体的に説明すると、上述した第一溝2Aと同様にして、施工中断地点Dから施工終了地点E(施工開始地点Sと同じ。)まで対象地域Xの外周に沿って第二溝2Bを造成する。このとき、第一区間Aにおける最終の遮水シート3Cの展開終点側の雌型ジョイント冶具5Bに出来る限り近づけた位置から攪拌混合を開始する。
【0036】
[継手部材設置工程]
次に、施工中断地点Dにおける第二溝2Bの造成が完了した後、図10に示すように、第二ダミー継手部材9が引き抜かれることで、第一溝2A内で固化した流動体に形成された孔20内に継手部材6を挿入し、第一区間Aにおける最終の遮水シート3Cの展開終点側の雌型ジョイント冶具5Bに継手部材6を連結する。具体的に説明すると、継手部材6の一方側の部分を上記した孔20の中に挿入し、継手部材6の一方側の雄型ジョイント部6aを上記雌型ジョイント冶具5B内に緩挿させる。このとき、継手部材6の他方側の部分は、流動性のある第二溝2B内の流動体の始点側端部内に埋設される。
【0037】
[遮水シート挿入・継手工程/遮水シート展開工程]
次に、上述した第一区間Aにおける1枚目の遮水シート3Aと同様の手順で、図11に示すように、第二区間Bにおける1枚目の遮水シート3A(本発明の第二遮水シートに相当する。)を挿入・継手して展開させる。このとき、第二区間Bにおける1枚目の遮水シート3Aを第二溝2B内に挿入する際、継手部材6の他方側の雄型ジョイント部6bに、1枚目の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5C(本発明の第一始点側ジョイント冶具に相当する。)を嵌めつつ、1枚目の遮水シート3Aを下降させる。
続いて、上述した第一区間Aにおける2枚目以降の遮水シート3Bと同様の手順で、第二区間Bにおける2枚目以降の遮水シート3Bを挿入・継手して展開させる。
【0038】
[ダミー継手部材撤去工程]
一方、施工終了地点Eにおける第二溝2Bの造成を行う前に、図8に示すように、上述した第二ダミー継手部材9と同様の手順で、第一溝2A内で固化した流動体内から上記した第一ダミー継手部材8を引き抜いて撤去する。これにより、第一溝2A内の固化した流動体の始点側端部に、上記した第二ダミー継手部材9による孔20と同様の孔21が形成される。つまり、この孔21は、平面視において、1枚目の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5Aの内側に円形に形成され、さらに、その円形部分から第一溝2Aの始点側端面に向けて細長い長方形の部分が延びた形状になっている。
【0039】
[攪拌混合工程]
次に、図9に示すように、第二溝2Bの終点側端部(施工終了地点Eの部分)を上記した第一溝2Aの始点側端部(第一ダミー継手部材8が配置されていた部分)に接続させて造成する。このとき、1枚目の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5Aに出来る限り近づけた位置まで攪拌混合を行う。
【0040】
[継手部材設置工程]
次に、図10に示すように、第一ダミー継手部材8が引き抜かれることで、第一溝2A内で固化した流動体に形成された孔21内に継手部材6を挿入し、1枚目の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5Aに継手部材6を連結する。具体的に説明すると、継手部材6の一方側の部分を上記した孔21の中に挿入し、継手部材6の一方側の雄型ジョイント部6aを上記雌型ジョイント冶具5A内に緩挿させる。このとき、継手部材6の他方側の部分は、流動性のある第二溝2B内の流動体の終点側端部内に埋設される。
【0041】
[遮水シート挿入・継手工程/遮水シート展開工程]
次に、図11に示すように、第二区間Bにおける最終の遮水シート3C(本発明における第四遮水シートに相当する。)を、上記した第二区間Bにおける中間の遮水シート3Bと同様の手順で挿入・継手して展開させる。
【0042】
[遮水シート閉合工程]
最後に、図11に示すように、第二区間Bにおける最終の遮水シート3Cの雌型ジョイント冶具5D(本発明の第二終点側ジョイント冶具に相当する。)を施工終了地点E(施工開始地点Sと同じ。)の継手部材6に連結する。具体的に説明すると、上記した継手部材6の他方側の雄型ジョイント部6bに最終の遮水シート3Cの雌型ジョイント冶具5Dを嵌め込む。これにより、隣り合うもの同士互いに繋ぎ合わされた複数の遮水シート3が閉合される。
以上により、対象地域Xを囲う地下遮水壁1の構築が完了する。
【0043】
上述した地下遮水壁1の構築方法によれば、第一区間Aと第二区間Bとの施工間隔があいた場合でも、第一区間Aにおける最終の遮水シート3Cと第二区間Bにおける1枚目の遮水シート3Aとが継手されるので、複数の遮水シート3を連続的に設けることができる。これにより、施工中断地点Dにおける遮水シート3C,3A間の繋ぎ目からの漏水を防止することができ、地下遮水壁1の止水性を向上させることができる。
【0044】
また、上記した地下遮水壁1の構築方法によれば、対象地域Xの外周に地下遮水壁1を全周に亘って構築する場合に、最後に施工する遮水シート3Cの展開終点側端部を最初に施工した遮水シート3Aの展開始点側端部に継手させることができ、複数の遮水シート3を閉合させることができる。これにより、閉合箇所(施工開始地点S、施工終了地点E)における遮水シート3C,3A間の繋ぎ目からの漏水を防止することができ、地下遮水壁1の止水性を向上させることができる。
【0045】
さらに、上記した地下遮水壁1の構築方法によれば、継手部材6の雄型ジョイント部6a,6bの表面に水膨張性シール7が被覆されているので、継手部材6を施工した後、水膨張性シール7が水分に接触して膨張して遮水シート3A,3Cの雌型ジョイント冶具5A〜5Dの内周面に密着される。これにより、継手部材6の雄型ジョイント部6a,6bと遮水シート3A,3Cの雌型ジョイント冶具5A〜5Dとの嵌合箇所からの漏水を防止することができる。
【0046】
以上、本発明に係る地下遮水壁の構築方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、遮水シート3A,3Bの展開始点側の端部に雌型ジョイント冶具5が設けられ、展開終点側の端部に雄型ジョイント冶具4が設けられているが、本発明は、遮水シート3A,3Bの展開始点側の端部に雄型ジョイント冶具4が設けられ、展開終点側の端部に雌型ジョイント冶具5が設けられていてもよい。
【0047】
また、上記した実施の形態では、最終の遮水シート3Cの展開終点側の端部に雌型ジョイント冶具5が設けられ、継手部材6及びダミー継手部材8,9の端部に雄型ジョイント部6a,6b,8a,9aが設けられているが、本発明は、最終の遮水シート3Cの展開終点側の端部に雄型ジョイント冶具4が設けられ、継手部材6及びダミー継手部材8,9の端部に雌型のジョイント部が設けられていてもよい。
【0048】
また、上記した実施の形態では、雄型ジョイント冶具4及び雄型ジョイント部6a,6b,8a,9aが丸管状のものであり、雌型ジョイント冶具5が断面C形の筒状のものであるが、本発明は、ジョイント冶具やジョイント部の形状は適宜変更可能である。
【0049】
また、上記した実施の形態では、地盤Gを連続的に攪拌するとともに液状の添加材又は粉体状の添加材及び水を混合することにより、流動体で満たされた溝2を造成しているが、本発明は、溝2を造成する方法は適宜変更可能である。例えば、地盤に溝2を形成し、その溝2内に崩壊防止のための泥水やソイルセメント(安定液)を流し込んで、流動体で満たされた溝2を造成してもよい。
【0050】
また、上記した実施の形態では、ロール状に巻かれた遮水シート3を溝2内に挿入し、この遮水シート3のロール部分を軸回転させながらスライドさせることにより、遮水シート3を展開させ、溝2内に遮水シート3を張設しているが、本発明は、ロール状の遮水シート3を展開させて溝2内に張設する方法は適宜変更可能である。例えば、遮水シートのロール部分を軸回転可能に保持するとともに遮水シートの外側の端部を引っ張ることにより、遮水シートを展開させる方法であってもよく、或いは、ロール状の遮水シートを溝の外に保持し、遮水シートを順次溝内に送り出すことにより、遮水シートを展開させる方法であってもよい。
【0051】
また、上記した実施の形態では、継手部材6の雄型ジョイント部6a,6bの表面に水膨張性シール7が被覆されているが、本発明は、上記した水膨張性シール7を省略した構成にすることも可能である。
【0052】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の構成を表した平面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した全体斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図6】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図7】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図8】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図9】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図10】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図11】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 地下遮水壁
2A 第一溝(第三溝)
2B 第二溝(第四溝)
3 遮水シート
3A 1枚目の遮水シート(第二遮水シート、第三遮水シート)
3C 最終の遮水シート(第一遮水シート、第四遮水シート)
5A 雌型ジョイント冶具(第二始点側ジョイント冶具)
5B 雌型ジョイント冶具(第一終点側ジョイント冶具)
5C 雌型ジョイント冶具(第一始点側ジョイント冶具)
5D 雌型ジョイント冶具(第二終点側ジョイント冶具)
6 継手部材
6a、6b 雄型ジョイント部(ジョイント部)
7 水膨張性シール
8 第一ダミー継手部材(ダミー継手部材)
9 第二ダミー継手部材(ダミー継手部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水シートからなる地下遮水壁の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば産業廃棄物の最終処分場などでは、汚染物の流出を防止するために地下遮水壁で最終処分場を囲み、外部と仕切る必要がある。地下遮水壁としては、簡単且つ高い水密性を確保できる高密度ポリエチレン製の遮水シートを使用したものがあり、この遮水シートからなる地下遮水壁は、地盤に造成されたソイルセメント等からなる溝内に遮水シートが埋設された構成からなり、透水性の高い地盤や地耐力の低い地盤の場合に採用されることが多い。
【0003】
上記した地下遮水壁の構築方法としては、まず、地盤に、流動体で満たされた溝を造成する。次に、ロール状に巻かれた遮水シートを上記した溝の中に挿入し、このロール状の遮水シートを溝の中で展開させて張設する。なお、この遮水シートの一端には雄形のシートジョイナー(継手部)が付設されており、他端には雌形のシートジョイナー(継手部)が付設されている。次いで、新たなロール状の遮水シートを溝の中に挿入するとともに、先行して設置された遮水シートと新たな遮水シートとを継手する。詳しく説明すると、遮水シートの展開始点側の端部には雌形のシートジョイナーが、展開終点側の端部には雄形のシートジョイナーがそれぞれ付設されている。そして、先行して設置された遮水シートの雄形のシートジョイナーに新たな遮水シートの雌形のシートジョイナーを嵌合させながら新たなロール状の遮水シートを挿入する。次いで、先行の遮水シートと同様に新たな遮水シートを溝内で展開させて張設する。以上の工程を繰り返すことで、互いに継手された複数の遮水シートが溝の中に設置される(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−283474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の地下遮水壁の構築方法では、先行の遮水シートを施工した後、しばらく期間或いは時間をおいてから新たな遮水シートを施工する場合、先に施工した溝内の流動体が固化していると、遮水シートの継手ができず、遮水シートの不連続箇所が生じるという問題がある。例えば、複数日に亘って中断されていた工事を再開する場合、溝内の流動体が固化している可能性が高く、既に施工した遮水シートに対して継手できないという問題が生じる。また、溝内の流動体の固化性が高い場合には、前日或いは前の週に施工した溝内の流動体が固化して継手できない場合がある。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、隣り合う遮水シートの施工間隔があいた場合でも遮水シート同士を継手させることができ、隣り合う遮水シートを連続的に設けることができる地下遮水壁の構築方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る地下遮水壁の構築方法は、遮水シートからなる地下遮水壁の構築方法において、地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第一溝を造成する工程と、ロール状に巻かれた第一遮水シートを展開させて前記第一溝内に前記第一遮水シートを張設する工程と、前記第一遮水シートの展開終点側の端部に設けられた第一終点側ジョイント冶具にダミー継手部材を連結させ、該ダミー継手部材を前記第一溝内に設置する工程と、前記第一溝内の流動体の固化後、該第一溝内から前記ダミー継手部材を引き抜く工程と、前記地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第二溝を、前記第一溝のうち前記ダミー継手部材が配置されていた部分に接続させて造成する工程と、前記ダミー継手部材が引き抜かれることで前記第一溝内の固化した流動体に形成された孔内に継手部材を挿入して前記第一終点側ジョイント冶具に前記継手部材を連結する工程と、該継手部材に、第二遮水シートの展開始点側の端部に設けられた第一始点側ジョイント冶具を連結する工程と、ロール状に巻かれた前記第二遮水シートを展開させて前記第二溝内に前記第二遮水シートを張設する工程と、を備えることを特徴としている。
【0007】
このような特徴により、地下遮水壁を途中まで構築したところで一旦中断し、その後、地下遮水壁の構築を再開する際に、先に施工した第一溝内の流動体が固化していても、先に施工した第一遮水シートと後に施工する第二遮水シートとが継手部材を介して繋ぎ合わせられる。
【0008】
また、本発明に係る地下遮水壁の構築方法は、遮水シートからなる地下遮水壁の構築方法において、地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第三溝を造成する工程と、前記第三溝内にダミー継手部材を設置する工程と、第三遮水シートの展開始点側の端部に設けられた第二始点側ジョイント冶具を前記ダミー継手部材に連結させる工程と、ロール状に巻かれた前記第三遮水シートを展開させて前記第三溝内に前記第三遮水シートを張設する工程と、前記第三溝内の流動体の固化後、該第三溝内から前記ダミー継手部材を引き抜く工程と、前記地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第四溝を、前記第三溝のうち前記ダミー継手部材が配置されていた部分に接続させて造成する工程と、前記ダミー継手部材が引き抜かれることで前記第三溝内の固化した流動体に形成された孔内に継手部材を挿入して前記第二始点側ジョイント冶具に前記継手部材を連結させる工程と、ロール状に巻かれた第四遮水シートを展開させて前記第四溝内に前記第四遮水シートを張設する工程と、該第四遮水シートの展開終点側の端部に設けられた第二終点側ジョイント冶具を前記継手部材に連結する工程と、を備えることを特徴としている。
【0009】
このような特徴により、地下遮水壁を連続的に形成していき、最終的に一周させて平面的に環状に構築する場合において、地下遮水壁の始点側の端部と終点側の端部とを接続させて閉合させる際に、最初に施工した第三溝内の流動体が固化していても、一枚目の遮水シート(第三遮水シート)と最後の遮水シート(第四遮水シート)とが継手部材を介して繋ぎ合わせられる。
【0010】
また、本発明に係る地下遮水壁の構築方法は、前記継手部材のうち、前記遮水シートの始点側又は終点側のジョイント冶具に係合されるジョイント部の表面に、水膨張性シールが被覆されていることが好ましい。
【0011】
これにより、継手部材を施工した後、継手部材のジョイント部の表面に設けられた水膨張性シールが水分に接触して膨張して遮水シートのジョイント冶具に密着される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る地下遮水壁の構築方法によれば、隣り合う遮水シートの施工間隔があいた場合でも、これらの遮水シート同士を継手させることができ、隣り合う遮水シートを連続的に設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る地下遮水壁の構築方法の実施の形態について、図面に基いて説明する。なお、後述する「第一溝2A」が本発明の「第一溝」及び「第三溝」に相当し、後述する「第二溝2B」が本発明の「第二溝」及び「第四溝」に相当する。
【0014】
まず、地盤G内に構築される地下遮水壁1の構成について図1に基いて説明する。図1は地下遮水壁1を表す平面図であり、特に遮水シート3の継手箇所を表している。
【0015】
図1に示すように、地下遮水壁1は、地盤Gに鉛直に造成された溝2と、溝2内に鉛直に埋設されているとともに隣り合うもの同士互いに繋ぎ合わせられた複数の遮水シート3とから構成されている。なお、この地下遮水壁1は、複数日に亘って構築されるものであり、図1における左側の第一区間Aを施工した次の日に図1における右側の第二区間Bが施工される。
【0016】
溝2は、地盤Gを攪拌するとともに水やベントナイト、セメント、フライアッシュ等の添加材を混合させることで地盤G中に形成されるものである。この溝2は、攪拌当初には流動性を有する流動体で満たされているが、上記した添加材としては、セメント等の固化材が含まれているので、溝2内の流動体は、時間の経過とともに地盤攪拌体が流動性を失って固化される。なお、地下水が高い地盤の場合は、水やベントナイト等を加えずに攪拌するだけで流動性を有することがあり、この場合は水等を加えないこともある。また、地下水が低い地盤の場合は、セメント等の固化材を加えなくても、脱水によって流動性を失い固化状態となることもあり、この場合は固化材を加えないこともある。
【0017】
遮水シート3は、例えばフレキシブルポリマーアロイ製のシート等であり、高い水密性を有するとともに、弾力性を有する柔らかな材質のものからなり、さらに、設置する際に破損しない程度の強度及び厚さを有するものである。複数の遮水シート3のうち、1日のうちで最初に施工する遮水シート3Aとその後に施工する中間の遮水シート3Bとは、その展開始点側(図1における左側)の側端部に断面C形の筒状の雌型ジョイント冶具5が設けられ、展開終点側(図1における右側)の側端部に丸管状の雄型ジョイント冶具4が付設されている。一方、1日のうちで最後に施工する遮水シート3Cは、その両側の側端部に断面C形の筒状の雌型ジョイント冶具5がそれぞれ設けられている。
【0018】
雄型ジョイント冶具4は、例えば2.5インチ径の鋼管からなり、雄型ジョイント冶具4の長さ寸法は、少なくとも遮水シート3の縦寸法(高さ寸法)よりも長く、雄型ジョイント冶具4の上下端は遮水シート3の上下端からそれぞれ突出している。雄型ジョイント冶具4は、円筒形状に折り返された遮水シート3の側端部の中に挿装されて取り付けられており、遮水シート3側端部によって雄型ジョイント冶具4外周面が覆われるように包み込まれている。なお、雄型ジョイント冶具4と遮水シート3側端部との付設は、雄型ジョイント冶具4の外周面に軸方向に延在するようにプレートを溶接等で取付け、そのプレートに遮水シートを接着等で取付けるようにしてもよい。
【0019】
雌型ジョイント冶具5は、雄型ジョイント冶具4の径よりも大きい内径のものであり、例えば5.0インチ径の鋼管からなる。雌型ジョイント冶具5の長さ寸法は、遮水シート3の縦寸法と同じ、或いは遮水シート3の縦寸法より長くなっている。また、雌型ジョイント冶具5には、軸方向に延在するスリット5aが全長に亘って形成されている。スリット5aの幅寸法は、雄型ジョイント冶具4の外径よりも狭く、雌型ジョイント冶具5内に緩挿された雄型ジョイント冶具4に水平方向の力が作用しても、スリット5aで引っ掛かり、雌型ジョイント冶具5内から抜け出ることがない構成となっている。また、雌型ジョイント冶具5は、断面形状C形の筒状に折り返された遮水シート3の側端部の中に挿装されており、遮水シート3側端部によって雌型ジョイント冶具5の外周面および内周面がそれぞれ覆われるように包み込まれている。なお、雌型ジョイント冶具5と遮水シート3の他方の側端部との取付けは、雌型ジョイント冶具5のスリット5aとは反対側の外周面に軸方向に延在するようにプレートを溶接等で取付け、そのプレートに遮水シートを接着等で取付けるようにしてもよい。
【0020】
上記した最初の遮水シート3Aと中間の遮水シート3B、隣り合う中間の遮水シート3B同士、及び、中間の遮水シート3Bと最後の遮水シート3Cとは、雄型ジョイント冶具4を雌型ジョイント冶具5内に緩挿させることでそれぞれ継手されている。
一方、上記した最後の遮水シート3Bと当該遮水シート3Bの施工日の次の日の最初に施工する遮水シート3Aとは、継手部材6を介して継手されている。
【0021】
継手部材6は、溝2の高さ方向に沿って延設された平板状の鋼板からなり、その両側の側端部には、上記した雄型ジョイント冶具4と同様の構成からなる丸管状の雄型ジョイント部6a,6bがそれぞれ設けられている。この継手部材6は、上記した第一区間Aと第二区間Bとの境界を跨ぐように配設されており、第一区間A側の雄型ジョイント部6aは、上記した最後の遮水シート3Bの展開終点側の雌型ジョイント冶具5内に緩挿されて当該雌型ジョイント冶具5に連結されるとともに、第二区間B側の雄型ジョイント部6bは、上記した最初の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5内に緩挿されて当該雌型ジョイント冶具5に連結されている。
【0022】
また、上記したジョイント部6a,6bの表面には、水膨張性シール7が被覆されている。水膨張性シール7は、ジョイント部6a,6bの表面に塗布される液体或いは粘性体のシール材である。なお、水膨張性シール7としては、ジョイント部6a,6bの表面に貼着されるシート状のものを用いることも可能であり、水膨張性を有する種々の防止材を使用することが可能である。また、ジョイント部6a,6bだけでなく、両側のジョイント部6a,6b間の平板部分6cの表面にも水膨張性シール7が被覆されていてもよい。
【0023】
なお、雄型ジョイント冶具4の中に、溝2の底面に突き刺して立設させた固定アンカーを挿入させ、雄型ジョイント冶具4を所定位置に固定してもよい。また、遮水シート3で覆われた雄型ジョイント冶具4の外周面と遮水シート3で覆われた雌型ジョイント冶具5の内周面との間の空隙に、例えばモルタル等からなる充填材を充填してもよい。
【0024】
次に、上記した構成からなる地下遮水壁1を構築する施工手順について図2〜図11に基いて説明する。図2は地下遮水壁1の施工状況を表した全体斜視図であり、図3〜図11は地下遮水壁1を構築する際の各工程を表した平面図である。
なお、本実施の形態は、図2に示すように、対象地域Xの外周に地下遮水壁1を全周に亘って構築する場合であって、地下遮水壁1を第一区間Aと第二区間Bに分けて施工する場合を例に説明する。
【0025】
[準備工程]
まず、図2に示すように、地下遮水壁1を構築する工事を行うための準備を行う。具体的に説明すると、地下遮水壁1を構築するための重機10,11や図示せぬ設備機器を現場に搬入して組み立てるとともに、施工ヤードの造成を行う。重機10,11として、例えば、溝2を造成するためのトレンチャー式地盤改良機等の攪拌混合機10や、溝2内に遮水シート3を設置するためのシート展開装置11、残土処理や整地等を行うための図示せぬバックホウ等を準備する。また、設備機器として、流動体で満たされた溝2を造成する際に添加する添加材を調合する図示せぬプラントや、流動体で満たされた溝2を造成する際に用いる水を貯留する図示せぬタンクや、図示せぬ発電機等を準備する。また、施工ヤードの造成としては、上記した重機10,11や設備機器が据置・走行する範囲の整地を行って鉄板等を敷設する。
【0026】
続いて、以下の手順で、第一区間Aの地下遮水壁1Aを構築する。第一区間Aの地下遮水壁1Aは施工間隔(期間或いは時間)をあけずに施工する。
【0027】
[攪拌混合工程]
まず、図3に示すように、地盤Gに、その日施工する分(第一区間A)の溝2(第一溝2A)を造成する。具体的に説明すると、図2に示す攪拌混合機10を用いて、施工開始地点Sから施工中断地点Dまで対象地域Xの外周に沿って所定深さ・所定の幅で連続的に攪拌していく。このとき、前述した添加材を混合させながら攪拌を行い、攪拌した部分を流動体状にする。これにより、流動体で満たされた第一溝2Aが造成される。
【0028】
[ダミー継手部材設置工程]
次に、施工開始地点Sにおける第一溝2Aの造成が完了した後、図4に示すように、第一溝2A内に第一ダミー継手部材8を設置する。第一ダミー継手部材8は、継手部材6に合わせて形成された部材であり、具体的に説明すると、継手部材6のうち一方の雄型ジョイント部6aが無い形状になっている。つまり、第一ダミー継手部材8は、平板状の鋼板の一方の側端部に丸管状の雄型ジョイント部8aが設けられた構成からなる。この第一ダミー継手部材8は、第一溝2A内のうちの施工開始地点S側の端部に、第一溝2Aの高さ方向に延在させて配置しており、その下端を第一溝2Aの底面に突き刺したりその上端を保持したりして定位置に固定させる。また、この第一ダミー継手部材8は、その雄型ジョイント部8aを第一溝2Aの始点側端面の反対側(図4における右側)に向けて配置する。
【0029】
[遮水シート挿入・継手工程]
次に、図5に示すように、第一溝2A内に一枚目の遮水シート3A(本発明の第三遮水シートに相当する。)を第一溝2A内に挿入するとともに、一枚目の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5A(本発明の第二始点側ジョイント冶具に相当する。)を第一ダミー継手部材8に連結させる。詳しく説明すると、まず、一枚目の遮水シート3Aを雄型ジョイント冶具4にロール状に巻きつけておく。そして、このロール状の一枚目の遮水シート3Aを図2に示すシート展開装置11によって第一溝2A内に略鉛直に真直ぐ挿入する。このとき、一枚目の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5Aを第一ダミー継手部材8の雄型ジョイント部8aに嵌めつつ、ロール状の一枚目の遮水シート3Aを下降させる。これにより、一枚目の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5A内に第一ダミー継手部材8の雄型ジョイント部8aが緩挿されて係合され、一枚目の遮水シート3Aの始点側端部が固定される。
【0030】
[遮水シート展開工程]
次に、図5に示すように、上記したロール状の一枚目の遮水シート3Aを展開させて第一溝2A内に一枚目の遮水シート3Aを張設する。詳しく説明すると、図2に示すシート展開装置11によって、遮水シート3Aのロール部分を軸回転させながら第一溝2Aに沿ってスライドさせ、ロール状の遮水シート3Aを第一溝2A内で展開させる。
【0031】
[遮水シート挿入・継手工程/遮水シート展開工程]
次に、上述した1枚目の遮水シート3Aと同様の手順で、図6に示すように、2枚目以降の遮水シート3Bを挿入・継手して展開させる。このとき、2枚目以降の遮水シート3Bを第一溝2A内に挿入する際、先に施工したn枚目(nは自然数)の遮水シート3B(3A)の雄型ジョイント冶具4に、次に施工するn+1枚目の遮水シート3B(3C)の雌型ジョイント冶具5を嵌めつつ、n+1枚目の遮水シート3B(3C)を下降させる。
【0032】
[ダミー継手部材設置工程]
次に、図7に示すように、第一区間Aにおける最終の遮水シート3C(本発明の第一遮水シートに相当する。)の展開終点側の雌型ジョイント冶具5B(本発明の第一終点側ジョイント冶具に相当する。)に第二ダミー継手部材9を連結させ、第一溝2A内に第二ダミー継手部材9を設置する。この第二ダミー継手部材9は、上記した第一ダミー継手部材8と同様の構成からなるものである。この第二ダミー継手部材9は、その雄型ジョイント部9aを最終の遮水シート3Cの展開終点側の雌型ジョイント冶具5B内に挿入させつつ、第一溝2A内に下降させる。これにより、最終の遮水シート3Cの展開終点側の雌型ジョイント冶具5B内に第二ダミー継手部材9の雄型ジョイント部9aが緩挿されて係合される。なお、第二ダミー継手部材9は、第一溝2A内のうちの終点地点(施工中断地点D)側の端部に、第一溝2Aの高さ方向に延在させて配置され、また、その雄型ジョイント部9aを第一溝2Aの終点側端面の反対側(図7における左側)に向けて配置される。また、第二ダミー継手部材9は、その下端を第一溝2Aの底面に突き刺したりその上端を保持したりして定位置に固定させる。これにより、最終の遮水シート3Cの終点側端部が固定される。
【0033】
以上のように第一区間Aの地下遮水壁1Aが構築されたところで、作業を一旦終了する。
そして、残りの第二区間Bの地下遮水壁1Bは、後日、以下の手順で施工する。なお、第二区間Bの地下遮水壁1Bは、第一区間Aの地下遮水壁1Aと同様に施工間隔(期間或いは時間)をあけずに施工する。
【0034】
[ダミー継手部材撤去工程]
まず、図8に示すように、第一溝2A内で固化した流動体内から上記した第二ダミー継手部材9を引き抜いて撤去する。具体的に説明すると、第二ダミー継手部材9の上端を重機(図2に示す攪拌混合機10やシート展開装置11、図示せぬバックホウ等)で鉛直上方に引き上げる。これにより、第一溝2A内の固化した流動体の終点側端部に、第一溝2Aの高さ方向に延在する孔20が形成される。この孔20は、平面視において、第一区間Aにおける最終の遮水シート3Cの展開終点側の雌型ジョイント冶具5Bの内側に円形に形成され、さらに、その円形部分から第一溝2Aの終点側端面に向けて細長い長方形の部分が延びた形状になっている。
【0035】
[攪拌混合工程]
次に、図9に示すように、地盤Gに、その日施工する分(第二区間B)の溝2(第二溝2B)を上記した第一溝2Aの終点側端部(第二ダミー継手部材9が配置されていた部分)に接続させて造成する。具体的に説明すると、上述した第一溝2Aと同様にして、施工中断地点Dから施工終了地点E(施工開始地点Sと同じ。)まで対象地域Xの外周に沿って第二溝2Bを造成する。このとき、第一区間Aにおける最終の遮水シート3Cの展開終点側の雌型ジョイント冶具5Bに出来る限り近づけた位置から攪拌混合を開始する。
【0036】
[継手部材設置工程]
次に、施工中断地点Dにおける第二溝2Bの造成が完了した後、図10に示すように、第二ダミー継手部材9が引き抜かれることで、第一溝2A内で固化した流動体に形成された孔20内に継手部材6を挿入し、第一区間Aにおける最終の遮水シート3Cの展開終点側の雌型ジョイント冶具5Bに継手部材6を連結する。具体的に説明すると、継手部材6の一方側の部分を上記した孔20の中に挿入し、継手部材6の一方側の雄型ジョイント部6aを上記雌型ジョイント冶具5B内に緩挿させる。このとき、継手部材6の他方側の部分は、流動性のある第二溝2B内の流動体の始点側端部内に埋設される。
【0037】
[遮水シート挿入・継手工程/遮水シート展開工程]
次に、上述した第一区間Aにおける1枚目の遮水シート3Aと同様の手順で、図11に示すように、第二区間Bにおける1枚目の遮水シート3A(本発明の第二遮水シートに相当する。)を挿入・継手して展開させる。このとき、第二区間Bにおける1枚目の遮水シート3Aを第二溝2B内に挿入する際、継手部材6の他方側の雄型ジョイント部6bに、1枚目の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5C(本発明の第一始点側ジョイント冶具に相当する。)を嵌めつつ、1枚目の遮水シート3Aを下降させる。
続いて、上述した第一区間Aにおける2枚目以降の遮水シート3Bと同様の手順で、第二区間Bにおける2枚目以降の遮水シート3Bを挿入・継手して展開させる。
【0038】
[ダミー継手部材撤去工程]
一方、施工終了地点Eにおける第二溝2Bの造成を行う前に、図8に示すように、上述した第二ダミー継手部材9と同様の手順で、第一溝2A内で固化した流動体内から上記した第一ダミー継手部材8を引き抜いて撤去する。これにより、第一溝2A内の固化した流動体の始点側端部に、上記した第二ダミー継手部材9による孔20と同様の孔21が形成される。つまり、この孔21は、平面視において、1枚目の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5Aの内側に円形に形成され、さらに、その円形部分から第一溝2Aの始点側端面に向けて細長い長方形の部分が延びた形状になっている。
【0039】
[攪拌混合工程]
次に、図9に示すように、第二溝2Bの終点側端部(施工終了地点Eの部分)を上記した第一溝2Aの始点側端部(第一ダミー継手部材8が配置されていた部分)に接続させて造成する。このとき、1枚目の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5Aに出来る限り近づけた位置まで攪拌混合を行う。
【0040】
[継手部材設置工程]
次に、図10に示すように、第一ダミー継手部材8が引き抜かれることで、第一溝2A内で固化した流動体に形成された孔21内に継手部材6を挿入し、1枚目の遮水シート3Aの雌型ジョイント冶具5Aに継手部材6を連結する。具体的に説明すると、継手部材6の一方側の部分を上記した孔21の中に挿入し、継手部材6の一方側の雄型ジョイント部6aを上記雌型ジョイント冶具5A内に緩挿させる。このとき、継手部材6の他方側の部分は、流動性のある第二溝2B内の流動体の終点側端部内に埋設される。
【0041】
[遮水シート挿入・継手工程/遮水シート展開工程]
次に、図11に示すように、第二区間Bにおける最終の遮水シート3C(本発明における第四遮水シートに相当する。)を、上記した第二区間Bにおける中間の遮水シート3Bと同様の手順で挿入・継手して展開させる。
【0042】
[遮水シート閉合工程]
最後に、図11に示すように、第二区間Bにおける最終の遮水シート3Cの雌型ジョイント冶具5D(本発明の第二終点側ジョイント冶具に相当する。)を施工終了地点E(施工開始地点Sと同じ。)の継手部材6に連結する。具体的に説明すると、上記した継手部材6の他方側の雄型ジョイント部6bに最終の遮水シート3Cの雌型ジョイント冶具5Dを嵌め込む。これにより、隣り合うもの同士互いに繋ぎ合わされた複数の遮水シート3が閉合される。
以上により、対象地域Xを囲う地下遮水壁1の構築が完了する。
【0043】
上述した地下遮水壁1の構築方法によれば、第一区間Aと第二区間Bとの施工間隔があいた場合でも、第一区間Aにおける最終の遮水シート3Cと第二区間Bにおける1枚目の遮水シート3Aとが継手されるので、複数の遮水シート3を連続的に設けることができる。これにより、施工中断地点Dにおける遮水シート3C,3A間の繋ぎ目からの漏水を防止することができ、地下遮水壁1の止水性を向上させることができる。
【0044】
また、上記した地下遮水壁1の構築方法によれば、対象地域Xの外周に地下遮水壁1を全周に亘って構築する場合に、最後に施工する遮水シート3Cの展開終点側端部を最初に施工した遮水シート3Aの展開始点側端部に継手させることができ、複数の遮水シート3を閉合させることができる。これにより、閉合箇所(施工開始地点S、施工終了地点E)における遮水シート3C,3A間の繋ぎ目からの漏水を防止することができ、地下遮水壁1の止水性を向上させることができる。
【0045】
さらに、上記した地下遮水壁1の構築方法によれば、継手部材6の雄型ジョイント部6a,6bの表面に水膨張性シール7が被覆されているので、継手部材6を施工した後、水膨張性シール7が水分に接触して膨張して遮水シート3A,3Cの雌型ジョイント冶具5A〜5Dの内周面に密着される。これにより、継手部材6の雄型ジョイント部6a,6bと遮水シート3A,3Cの雌型ジョイント冶具5A〜5Dとの嵌合箇所からの漏水を防止することができる。
【0046】
以上、本発明に係る地下遮水壁の構築方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、遮水シート3A,3Bの展開始点側の端部に雌型ジョイント冶具5が設けられ、展開終点側の端部に雄型ジョイント冶具4が設けられているが、本発明は、遮水シート3A,3Bの展開始点側の端部に雄型ジョイント冶具4が設けられ、展開終点側の端部に雌型ジョイント冶具5が設けられていてもよい。
【0047】
また、上記した実施の形態では、最終の遮水シート3Cの展開終点側の端部に雌型ジョイント冶具5が設けられ、継手部材6及びダミー継手部材8,9の端部に雄型ジョイント部6a,6b,8a,9aが設けられているが、本発明は、最終の遮水シート3Cの展開終点側の端部に雄型ジョイント冶具4が設けられ、継手部材6及びダミー継手部材8,9の端部に雌型のジョイント部が設けられていてもよい。
【0048】
また、上記した実施の形態では、雄型ジョイント冶具4及び雄型ジョイント部6a,6b,8a,9aが丸管状のものであり、雌型ジョイント冶具5が断面C形の筒状のものであるが、本発明は、ジョイント冶具やジョイント部の形状は適宜変更可能である。
【0049】
また、上記した実施の形態では、地盤Gを連続的に攪拌するとともに液状の添加材又は粉体状の添加材及び水を混合することにより、流動体で満たされた溝2を造成しているが、本発明は、溝2を造成する方法は適宜変更可能である。例えば、地盤に溝2を形成し、その溝2内に崩壊防止のための泥水やソイルセメント(安定液)を流し込んで、流動体で満たされた溝2を造成してもよい。
【0050】
また、上記した実施の形態では、ロール状に巻かれた遮水シート3を溝2内に挿入し、この遮水シート3のロール部分を軸回転させながらスライドさせることにより、遮水シート3を展開させ、溝2内に遮水シート3を張設しているが、本発明は、ロール状の遮水シート3を展開させて溝2内に張設する方法は適宜変更可能である。例えば、遮水シートのロール部分を軸回転可能に保持するとともに遮水シートの外側の端部を引っ張ることにより、遮水シートを展開させる方法であってもよく、或いは、ロール状の遮水シートを溝の外に保持し、遮水シートを順次溝内に送り出すことにより、遮水シートを展開させる方法であってもよい。
【0051】
また、上記した実施の形態では、継手部材6の雄型ジョイント部6a,6bの表面に水膨張性シール7が被覆されているが、本発明は、上記した水膨張性シール7を省略した構成にすることも可能である。
【0052】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の構成を表した平面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した全体斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図6】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図7】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図8】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図9】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図10】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【図11】本発明の実施の形態を説明するための地下遮水壁1の施工状況を表した地下遮水壁1の部分平面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 地下遮水壁
2A 第一溝(第三溝)
2B 第二溝(第四溝)
3 遮水シート
3A 1枚目の遮水シート(第二遮水シート、第三遮水シート)
3C 最終の遮水シート(第一遮水シート、第四遮水シート)
5A 雌型ジョイント冶具(第二始点側ジョイント冶具)
5B 雌型ジョイント冶具(第一終点側ジョイント冶具)
5C 雌型ジョイント冶具(第一始点側ジョイント冶具)
5D 雌型ジョイント冶具(第二終点側ジョイント冶具)
6 継手部材
6a、6b 雄型ジョイント部(ジョイント部)
7 水膨張性シール
8 第一ダミー継手部材(ダミー継手部材)
9 第二ダミー継手部材(ダミー継手部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮水シートからなる地下遮水壁の構築方法において、
地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第一溝を造成する工程と、
ロール状に巻かれた第一遮水シートを展開させて前記第一溝内に前記第一遮水シートを張設する工程と、
前記第一遮水シートの展開終点側の端部に設けられた第一終点側ジョイント冶具にダミー継手部材を連結させ、該ダミー継手部材を前記第一溝内に設置する工程と、
前記第一溝内の流動体の固化後、該第一溝内から前記ダミー継手部材を引き抜く工程と、
前記地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第二溝を、前記第一溝のうち前記ダミー継手部材が配置されていた部分に接続させて造成する工程と、
前記ダミー継手部材が引き抜かれることで前記第一溝内の固化した流動体に形成された孔内に継手部材を挿入して前記第一終点側ジョイント冶具に前記継手部材を連結する工程と、
該継手部材に、第二遮水シートの展開始点側の端部に設けられた第一始点側ジョイント冶具を連結する工程と、
ロール状に巻かれた前記第二遮水シートを展開させて前記第二溝内に前記第二遮水シートを張設する工程と、
を備えることを特徴とする地下遮水壁の構築方法。
【請求項2】
遮水シートからなる地下遮水壁の構築方法において、
地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第三溝を造成する工程と、
前記第三溝内にダミー継手部材を設置する工程と、
第三遮水シートの展開始点側の端部に設けられた第二始点側ジョイント冶具を前記ダミー継手部材に連結させる工程と、
ロール状に巻かれた前記第三遮水シートを展開させて前記第三溝内に前記第三遮水シートを張設する工程と、
前記第三溝内の流動体の固化後、該第三溝内から前記ダミー継手部材を引き抜く工程と、
前記地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第四溝を、前記第三溝のうち前記ダミー継手部材が配置されていた部分に接続させて造成する工程と、
前記ダミー継手部材が引き抜かれることで前記第三溝内の固化した流動体に形成された孔内に継手部材を挿入して前記第二始点側ジョイント冶具に前記継手部材を連結させる工程と、
ロール状に巻かれた第四遮水シートを展開させて前記第四溝内に前記第四遮水シートを張設する工程と、
該第四遮水シートの展開終点側の端部に設けられた第二終点側ジョイント冶具を前記継手部材に連結する工程と、
を備えることを特徴とする地下遮水壁の構築方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の地下遮水壁の構築方法において、
前記継手部材のうち、前記遮水シートの始点側又は終点側のジョイント冶具に係合されるジョイント部の表面に、水膨張性シールが被覆されていることを特徴とする地下遮水壁の構築方法。
【請求項1】
遮水シートからなる地下遮水壁の構築方法において、
地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第一溝を造成する工程と、
ロール状に巻かれた第一遮水シートを展開させて前記第一溝内に前記第一遮水シートを張設する工程と、
前記第一遮水シートの展開終点側の端部に設けられた第一終点側ジョイント冶具にダミー継手部材を連結させ、該ダミー継手部材を前記第一溝内に設置する工程と、
前記第一溝内の流動体の固化後、該第一溝内から前記ダミー継手部材を引き抜く工程と、
前記地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第二溝を、前記第一溝のうち前記ダミー継手部材が配置されていた部分に接続させて造成する工程と、
前記ダミー継手部材が引き抜かれることで前記第一溝内の固化した流動体に形成された孔内に継手部材を挿入して前記第一終点側ジョイント冶具に前記継手部材を連結する工程と、
該継手部材に、第二遮水シートの展開始点側の端部に設けられた第一始点側ジョイント冶具を連結する工程と、
ロール状に巻かれた前記第二遮水シートを展開させて前記第二溝内に前記第二遮水シートを張設する工程と、
を備えることを特徴とする地下遮水壁の構築方法。
【請求項2】
遮水シートからなる地下遮水壁の構築方法において、
地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第三溝を造成する工程と、
前記第三溝内にダミー継手部材を設置する工程と、
第三遮水シートの展開始点側の端部に設けられた第二始点側ジョイント冶具を前記ダミー継手部材に連結させる工程と、
ロール状に巻かれた前記第三遮水シートを展開させて前記第三溝内に前記第三遮水シートを張設する工程と、
前記第三溝内の流動体の固化後、該第三溝内から前記ダミー継手部材を引き抜く工程と、
前記地盤に、固化性を有する流動体で満たされた第四溝を、前記第三溝のうち前記ダミー継手部材が配置されていた部分に接続させて造成する工程と、
前記ダミー継手部材が引き抜かれることで前記第三溝内の固化した流動体に形成された孔内に継手部材を挿入して前記第二始点側ジョイント冶具に前記継手部材を連結させる工程と、
ロール状に巻かれた第四遮水シートを展開させて前記第四溝内に前記第四遮水シートを張設する工程と、
該第四遮水シートの展開終点側の端部に設けられた第二終点側ジョイント冶具を前記継手部材に連結する工程と、
を備えることを特徴とする地下遮水壁の構築方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の地下遮水壁の構築方法において、
前記継手部材のうち、前記遮水シートの始点側又は終点側のジョイント冶具に係合されるジョイント部の表面に、水膨張性シールが被覆されていることを特徴とする地下遮水壁の構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−74296(P2009−74296A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244386(P2007−244386)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000140694)株式会社加藤建設 (50)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000140694)株式会社加藤建設 (50)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】
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