説明

地中レーダ画像処理法

【課題】
地中レーダ等の近距離レーダの画像を処理する方法において、現在使われている処理法は、多大な計算時間を要する、また、特に複数の対象物が近接して存在する場合に虚像を生じるという欠点がある。本発明はこれら2つの課題を解決することを目的とする。
【解決手段】
対象物モデルから参照パターンを求め、参照パターンの自己相関、参照パターンと受信データとの相互相関を求める。相互相関から対象物探査用データと対象物評価用データを作成し、対象物探査用データの極値を自己相関と対象物評価用データに基づいて評価する。評価の結果、その極値値が対象物の可能性があると判定されると、対象物探査用データのその極値の位置から自己相関を減算し、新たな探査を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
管路等の人工物を地中レーダなどにより探査した場合の画像を処理して測定現場で目的の人工物を容易に判定できる効率的な処理法を提供する。
【背景技術】
【0002】
地中レーダ等の近距離レーダの画像を処理する方法に関する。特に、人工物など周囲との境界が明確な対象からの反射信号を特定して対象の判定を容易にする方法に関する。本方法は地中レーダだけでなく、対象物の像を得るのに開口合成的な手法を必要とする音波探査および地震探査にも適用可能である。
【0003】
【特許文献1】特開2004−198195号公報
【特許文献2】特開2001−033564号公報
【特許文献3】特開2002−107449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、管路等の人工物を地中レーダなどにより探査した場合の画像を処理して測定現場で目的の人工物を容易に判定できる効率的な処理法を提供するものであり、特に、地中レーダ等の近距離レーダの画像を処理する方法に関するものである。特に、人工物など周囲との境界が明確な対象からの反射信号を特定して対象の判定を容易にする方法に関する。本方法は地中レーダだけでなく、対象物の像を得るのに開口合成的な手法を必要とする音波探査および地震探査にも適用可能である。
【0005】
地中レーダは指向性が低いため対象からの反射を分離するための処理が必要である。現在このために使用されている手法は凡そ以下のように分類される。
・マイグレーション
開口合成的な方法であり、まず調査対象の空間に格子点を設定する。1個の測定点(受信データを得た点)に注目すると、同測定点に設置した送信アンテナから各格子点に達し、さらに格子点で反射した波が受信アンテナに達するのに要する遅延時間を計算し、当該測定点での受信データ中の前記遅延時間に相当する受信データを格子点に割り当てていく。そのために、複数の対象物の反射が重なり合っている場合には対象物の真の位置で無い場所に虚像を生じる欠点がある。
計算方法には上述のように実際に遅延時間を計算する方法(ディフラクションスタックマイグレーション)とFFTを用いる方法がある。前者は格子点ごとに同格子点から見たときにアンテナの指向性の範囲にある測定点について上記の計算処理を行なう必要があるために多大な量の計算を必要とする。そのために、調査結果を現場で処理するような用途には適していない。一方、後者はFFTを用いることができるため計算処理に要する時間は少ないが、虚像を発生しやすいという欠点がある。さらに、既定の処理を行なう必要があり、そのため人工的な対象物に特有な条件を課すことができないなど処理に融通性がないために、人工的な対象物に特化した処理には適していない。
・トモグラフィ
計算量が極めて多大であるために、現場での処理にはまったく適していない。
【0006】
以上のように、現在使われている処理法は、多大な計算時間を要する、また、特に複数の対象物が近接して存在する場合に虚像を生じるという欠点がある。本発明はこれら2つの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
地中レーダでは、通常受信アンテナおよび送信アンテナの少なくとも一方を測定対象領域上の地表面で移動しながら送信アンテナから電磁波が発射された時刻に同期して受信アンテナで信号を受信する。地震波探査では受波器および送波器のいずれか一方を移動して測定する方法が多く行なわれるが、地中レーダでは送信アンテナと受信アンテナを対にして同時に移動しながら測定する場合が大部分である。
図1は送信アンテナを固定とし、受信アンテナのみを移動させて測定する場合を示している。図2は図1に示される受信アンテナのみを移動した場合の受信信号の様子を示す図である。送信アンテナから発射されたレーダ波は対象物により反射され受信アンテナに到達する。レーダ波が送信アンテナから発射されてから受信アンテナで受信されるまでに要する時間は、送信アンテナと対象物の距離と対象物と受信アンテナの距離の和に比例する。従って、受信信号の時間遅れは受信アンテナが対象物に接近に従って小さくなり、また、遠ざかる従って大きくなり、図2に示される様子となる。
【0008】
図3は送信アンテナと受信アンテナを測定装置に設置し、両アンテナを一体で移動して測定する方法を示す図であり、図4は図3に示される両アンテナを一体で移動した場合の受信信号の様子を示す図である。送信アンテナから地中に発射されたレーダ波は所定の角度、例えば45度の角度で広がって地中を進行し対象物で反射される。受信アンテナで受信される反射波の遅れ時間はアンテナと対象物の距離の2倍に比例した時間となる。受信信号の様子は図4に示されるように、測定装置が対象物に接近する従って小さくなり、最接近点を過ぎると遅延時間は次第に大きくなる。対象物がレーダ波の広がり角度の外に位置すると反射は観測されなくなる。
【0009】
前記問題を解決するための本発明の方法の概要は以下の通りである。
(1) 送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方を移動しながら反射信号を取得する。受信信号を受信する測定点間の間隔を一定にして測定を行なうか、一定でない場合は補間により一定間隔の受信データを用意する。
(2) 地中レーダの送・受信応答から点状の孤立物体群からの反射信号(参照パターン)を推定する。
(3) 参照パターンの自己相関を求める。
(4) 参照パターンと受信データとの相互相関を求める。
(5) 相互相関に由来する対象物探査用データと相互相関に由来する対象物評価用データを用意する。
(6) 対象物探査用データの極値を求める。
(7) 第1の評価関数の値を最大とする極値を選択する。あるいは、同極値の近傍に含まれる極値群を選ぶ。
(8) 選択した極値あるいは極値群のメンバーに対象物があると仮定し、自己相関の最大値が同極値の位置における対象物評価用データの値と等しくなるように振幅を調整して対象物評価用データから差し引く。
(9) 差し引き前後のmpデータに対する第2の評価関数の値が所定の条件を満足した場合に、同極値に対象物があったものとみなして、自己相関の最大値が同極値の位置における対象物探査用データの値と等しくなるように振幅を調整して対象物探査用データから差し引いたものを新たに対象物探査用データとして
(6) 以降を繰り返す。値が条件を満足しなかった場合は当該極値あるいは極値群のメンバーを除外して(7) 以降を繰り返す。
(10) 第1の評価関数値が所定の条件を満足する極値が得られなかった場合、あるいは第2の評価関数値が所定の条件を満足した場合に処理を終了する。
(11) 参照パターンはアンテナからの距離によって変化するが、変化は急激ではない。そこで、距離を所定の区間に分割し、同一区間内では同じ参照パターンを用いる。
【発明の効果】
【0010】
(1) 処理速度が速い。
(2) 強度が高い反射信号のみを処理することによりさらに処理速度が向上する。
(3) 対象物の位置と符号を含む反射強度の特定ができる。このために、連続物体の同定など高度な処理を行なうことが容易になる。
(4) 複数の対象物が近接して存在する場合、これらの対象物の相対的な位置関係が事前に分かっていれば、対象物群として特定することができる。
(5) 処理結果が簡明であり、測定結果の解釈が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
受信データ
説明を簡単にするために、また、通常の地中レーダによる測定を考慮して、送信機XT(送信アンテナ)と受信機XR(受信アンテナ)を所定の相互位置関係に保持しながら移動して、等間隔の測定点で受信信号を受信するものとする。測定点の間隔が一定でない場合は補間により一定間隔の受信データを用意すればよい。ここで、送信機XTとは測定対象領域に電磁波、地震波等のセンシングを行なう信号を送出する手段を指す。また、受信機XRとは電磁波、地震波等センシングを行なう信号を検知する手段を指す。
【0012】
説明のために座標を定義する。信号が送出される方向をz軸、送信機XT、受信機XRが移動する方向をy軸、これら2軸に直交して右手系をなす方向をx軸とする。
z = 0 の面に沿って送信機XT、受信機XRを移動して測定を行なう場合を例にとって説明する。送信機XT、受信機XRを移動する面が平坦である限りこの仮定により一般性を失うことは無い。説明の都合上以後この面をセンシング面と呼ぶことにする。
測定点はセンシング面上の矩形内に格子状に並んでいるものとする。もし矩形内に実際には測定を行なっていない点がある場合は周囲の測定点のデータで補間あるいは補外を行なう。また、矩形周辺部で実際に測定を行なっていない測定点がある場合には当該測定点の受信データを全て0として良い。
【0013】
以下の説明は、アンテナを面的に移動してx軸方向、y軸方向、z軸方向(時間軸方向)の3次元のデータを取得するものとして説明を行なっているが、アンテナを線上で移動して2次元のデータを取得する場合も、x軸あるいはy軸方向のデータ数を1とすれば全く同様に扱うことができる。また、送信アンテナのみを移動する場合、受信アンテナのみを移動する場合も参照パターンの計算方法に変更を加えるだけで全く同様に扱うことができる。送信アンテナと受信アンテナを個別に移動する場合は、送信アンテナの位置を表す座標(最大2次元)と受信アンテナの位置を表す座標(最大2次元)とz軸(時間軸)を合わせた最大5次元の空間で相関処理を行なうことで同様な処理が可能になる。あるいは、一方のアンテナを固定したと考えて、移動する側のアンテナの位置を座標にとれば以下の処理が適用可能であるから、固定した側のアンテナの位置をパラメータとして、パラメータごとに相関処理を行い、パラメータ空間を含めて極値、最大値の探索を行なえばよい。
【0014】
測定点は、x座標方向にNx個、y座標方向にNy個の合計Nxy個とする。測定点の位置PMをx座標方向およびy座標方向に番号付けして
【数1】

とする。ここで、zSはセンシング面のz座標であり、一定であるとする。また、上付き添え字Tは転置を表す。一般にx座標軸方向にj番目、y座標軸方向にk番目の測定点の座標を
【数2】

と表すことにする。また、測定点の位置ベクトルの組PM
【数3】

と表すことにする。
【0015】
送信アンテナと受信アンテナは相互の位置関係を保って移動するから、それぞれの基準点から位置をdT、dRとすると、測定点の位置ベクトルの組PMを用いて送信アンテナの位置ベクトルの組PTと受信アンテナの位置ベクトルの組PR
【数4a】

【数4b】

と表すことができる。
【0016】
受信信号の長さはMであり、等間隔tsでサンプリングされているものとする。簡単のために送信アンテナから信号が送出された時刻を0とする。すると、受信信号を受信する受信時刻の組TMは信号を発射した時刻を始点とする相対値であり、
【数5】

となる。
【0017】
測定点pMj,kおける受信信号Sj,k
【数6】

と表す。全受信データの組Sは
【数7】

または
【数8】

と表すことができる。
【0018】
画像空間
測定対象領域内の対象物の位置および性状の推定値を表示するために画像空間を定義する。画像空間は測定対象領域内に設けられた矩形格子点から構成される。x座標軸方向のj番目の格子点のx座標yIjおよびy座標軸方向のk番目の格子点のy座標yIkは受信データを取得した測定点のx座標、y座標である。つまり、
【数9a】

【数9b】

z座標は、信号受信時刻tMの間に信号が往復する距離である。したがって、z軸方向のm番目の格子点のz座標zImは、時刻tMmを用いると
【数9c】

となる。ここで、csignalは信号の伝搬速度である。
【0019】
画像空間は上記の座標で与えられる格子点の位置であってもかまわない。つまり、測定対象領域の一部であっても良いし、例えば、x座標軸方向に1個置きにとるなど一部を間引いたものでもかまわない。間引き方は任意であるが、それぞれの軸方向で等間隔であることが計算処理上は望ましい。測定点の間隔あるいは信号受信時刻の間隔よりも細かくすることも可能であるが、この場合、これらの格子点に対応する測定データを補間により作成する必要がある。
【0020】
送・受信応答
参照パターンの推定に用いる送・受信応答はいくつかの手段で求めることができる。
(1)受信機に向けて送信機から信号を発射して受信機で信号を受信し、送・受信応答とする。
(2)送信機および受信機を反射体に向けて送信機から信号を発射して受信機で信号を受信し、送・受信応答とする。
(3)受信データの一部、例えばセンシング面で反射した信号を受信したもの、送信機から受信機への直達信号、孤立物体からの反射信号などを取り出して送・受信応答とする。
などの方法を用いることできる。
送・受信応答sRは受信データと同じ時間間隔tsのMR個のサンプル値からなり、
【数10】

と表す。
【0021】
参照パターン
位置q(xq,yq,zq)にある点状対象物Qからの反射信号を求める。送信機XTの位置をpT、受信機XRの位置をpRとすると、送信機XTを発射した信号が点状対象物Qに達し、さらに対象物Qで反射して受信機XRに達するのに要する時間TDelay(pT,pR,q)は
【数11】

で与えられる。ここで||v||はベクトルvのノルムを表す。
【0022】
送信機と受信機のx軸およびy軸方向の指向角(半値半幅)をそれぞれθx, θyとする。センシング面のz座標は0であるから、z座標zqでのx軸およびy軸方向の信号の広がりは
【数12】

である。したがって、参照パターンの大きさの目安は、x軸およびy軸方向でそれぞれ
【数13a】

【数13b】

である。ここで、DxTargetはx座標軸方向の対象物の広がり、DyTargetはy座標軸方向の対象物の広がりである。
【0023】
z軸方向の大きさの目安LPzは信号の最短遅延時間と最長遅延時間の差から
【数13c】

受信データの時間軸上では
【数13d】

である。
【0024】
参照パターンの大きさはz座標の値に依存して変えても良いが、対象物が存在すると想定される最大の深さにおける大きさとしても良い。
対象物がNQの孤立点Q1,…,QNQから構成されているとする。n番目の孤立点の位置qnはqn(xqn,yqn,zqn)であるとする。ただし、位置qnは孤立点を集合的に捉えて1個の対象物とみなしたときの基準点からの相対座標である。基準点は対象物内外の任意の位置におくことができる。これとは無関係に参照パターンの大きさは最もセンシング面に近い孤立点のz座標を基準に決めればよい。
【0025】
この対象物の基準点の座標q0をq0(xq0,yq0,zq0)とする。以下の説明では簡単のためにまた、計算処理上望ましいことから対象物の基準点のx座標とy座標は、それぞれ孤立点のx座標の最大値と最小値の中央とy座標の最大値と最小値の中央にあり、z座標は孤立点のz座標の最小値にあるとする。
このとき、参照パターンのx座標とy座標の範囲は
【数14】

である。この範囲に含まれる測定点の個数をNP個とする。m目の測定点の座標をPMm、この測定点での送信機と受信機の座標をそれぞれpTm、pRmとする。m番目の測定点で、この対象物からの反射信号を測定すると、受信信号sPM
【数15】

【0026】
ただし、roundは四捨五入を意味する。また、sR(nm)は送・受信応答sRをnms遅延させたものである。また、

は媒質による信号の吸収損失および広がり損失を含む損失である。本発明は反射信号の形状をもとに対象物の探査を行なうので、必ずしも損失を考慮する必要は無い。反射信号の形状の凡そが反映されていれば探査を行なうことができる。このために、地中レーダ、ソナなどで多用されるSTC(受信の遅延時間に応じて受信感度を変える方法)が行なわれていても対象物の探査が可能である。
【0027】
参照パターンPRefは(15)式の信号を(14)式の範囲に含まれる全ての測定点について求めたものである。
【数16】

【0028】
参照パターンPRefは適当な方法で規格化する。例えば、全エネルギーが所定の値、例えば1であるか、絶対値の最大値が所定の値、例えば1であるか、絶対値の和が所定の値、例えば1であるように規格化する。
ここで、測定点がx軸方向、y軸方向で等間隔であるから、格子点に対象物が存在すると仮定する限り(孤立点ではない)、参照パターンPRefは対象物のx座標、y座標に依存しない。
送信アンテナあるいは受信アンテナの一方のみを移動する場合は、式(4a)あるいは式(4b)の代わりに固定したアンテナの座標を用いる必要がある。そのため、参照パターンの計算方法は同じであるが、参照パターンPRefは対象物のx座標、y座標に依存する。
【0029】
自己相関
参照パターンPRefの自己相関を求める。自己相関の計算にはFFTを用いると効率的である。FFTは周期性を仮定するので、FFTにより相関を計算する場合は、参照パターンに値0のデータを付け加えて拡張し、周期性の影響が出ないようにする。また、各軸方向のデータの個数が2の累乗になるように拡張して処理を高速化することができる。自己相関から拡張部分に相当する部分を除去する。あるいは自己相関が最大となる点を中心に参照パターンと同程度の大きさに切り詰める。
自己相関は適当な方法で規格化する。例えば、全エネルギーが所定の値、例えば1であるか、絶対値の最大値が所定の値、例えば1であるか、絶対値の和が所定の値、例えば1であるように規格化する。
【0030】
自己相関RPP
【数17】

と表す。ここで、Nppx、Nppy、Nppzはそれぞれ自己相関のx軸、y軸、z軸方向の大きさである。rjklは自己相関のx軸方向にj番目、y軸方向にk番目、z軸方向にl番目の成分である。
【0031】
参照パターンPRefの最低1要素が重なる範囲で相関を計算すると、
【数18】

であり、自己相関の最大値はである。式(16)の自己相関は、参照パターンPRefの最低1要素が重なる範囲で計算した相関の最大要素

を含む部分または全体である。この自己相関の最大値のx軸方向、y軸方向、z軸方向のインデックスをそれぞれJMAX、KMAX、LMAXとする。
【0032】
相互相関
受信データと参照パターンの相互相関を求める。相互相関の計算にはFFTを用いることができる。自己相関と同様な拡張を行い周期性の影響を除去する。
参照パターンはz座標に依存するが、z座標が異なるごとに参照パターンを計算し直すことは効率が悪い。そこで、探査対象領域のz座標を適当な区間に分割して、同じ区間内では同じ参照パターンを用いる方法をとることができる。参照パターンは、例えば区間の中心のz座標を用いて計算する。区間の幅が狭ければ区間内のどのz座標を用いても大きな差は無い。
【0033】
z座標を区間に分割した場合、受信データを区間ごとに分割して、区間ごとに相互相関を計算する。したがって、区間ごとに受信データのz軸方向への拡張を行い、区間ごとに拡張部分を除去する。つまり、全て値が0の要素を選択した区間のz軸方向の前後に付け加える。
相互相関CPM
【数19】

とすると、cjklは相互相関のx軸方向にj番目、y軸方向にk番目、z軸方向にl番目の成分である。
ただし、
【数20】

ただし、上式の受信データ

には実際に存在しないインデックスが現れるが、実在するインデックスの範囲のみで和をとるものとする。また、JREF、KREF、LREFは、受信データ中の反射信号の振幅が最大になるインデックスと相互相関の対応する極値のインデックスが等しくなるようにするためのオフセットである。通常は、自己相関が最大値をとるインデックスにすればよいが、違ってもかまわない。
【0034】
相互相関は参照パターンとの類似度ばかりでなく、受信データ中の信号の振幅を反映している。参照パターンとの類似度のみを評価するためには類似度のみが顕になるよな処理が必要である。そこで、相互相関のx軸方向にj番目、y軸方向にk番目、z軸方向にl番目の成分cjklに関して、同成分に対応する受信データ中の点を中心として参照パターンと同じ大きさの範囲内の受信データの2乗和の平方根あるいは絶対値の和によってcjklを割った量である類似度FPMを求める。
【数21】

jklは類似度のx軸方向にj番目、y軸方向にk番目、z軸方向にl番目の成分であり、
【数22】

【0035】
対象物探査用データ
対象物探査用データGPMは、類似度FPMと相互相関CPMの重み付け和である。
【数23】

ここで、wGは重みである。重みwGが大きいと受信データの振幅がより大きく反映される。重みwGが0であると、参照パターンとの類似度が強く反映される。
【0036】
対象物探査用データGPMによる対象物の探査は、同データ中の絶対値が大きな極値から優先して処理していくことにより行なう。この規準にしたがって選択した極値をそのまま評価対象極値とする場合(周辺の極値を選択してその中から評価値が最大のものを選ぶ手順を踏まない)、上記の重み付け和を対象物探査用データGPMとすることにより、類似度と受信データの振幅を適当な重みで同時に評価して、着目極値あるいは着目極値群を選択することができる。
【0037】
対象物評価用データ
対象物評価用データHPMは、類似度FPMと相互相関CPMの重み付け和である。
【数24】

既に説明したように、反射物体の候補である着目極値あるいは着目極値群を選択する場合に、テンプレートとの類似度を優先すべき場合と反射強度の寄与も考慮すべき場合がありうる。本発明では、物体推定の確度を向上させるために、このようにして選択した極値をそのまま反射物体であるとはしていない。さらに別の
観点から評価を行い反射物体であるかどうかを判定している。具体的には、テンプレートの自己相関を着目極値の周辺差し引き、どの程度効率良く差し引きが行われたかを評価している。したがって、これらの極値が反射物体からの反射によるものであるかを評価する規準を着目極値あるいは着目極値群を選択する基準と同じにすることが適当とは限らない。そこで、前記差し引き処理を行なう対象物評価用データHPMを対象物探査用データGPMと異なるものにできる手段を与えている。
例えば、着目極値あるいは着目極値群の選択は類似度を優先し、評価は差し引きの効率を優先して、相互相関CPMに大きなウエイトを置くといったことが可能になる。
【0038】
対象物探査用データGPMの極値
対象物探査用データGPMの極値を求める。極値は極大値と極小値を含む。極値の符号は対象物の性状(電磁波であれば周囲の媒質に対する相対的なインピーダンス)を反映する。一般に対象物探査用データGPMの極値は極めて多数存在する。そこで、所定の条件を満足する極値のみを選択する。所定の条件の例として、極値の絶対値が所定の値以上であることとすることができる。所定の値の選択には、対象物探査用データGPMの振幅の実効値を基準とすることができる。
【0039】
選択した極値を
【数25a】

とする。ただし、NSUPは選択された極値の個数である。m番目の極値のx軸、y軸、z軸方向のインデックスを
【数25b】

とする。
【0040】
着目極値および着目極値群の選択
対象物探査用データGPMの極値の中で、絶対値が最大のものを着目極値SSelect(0)として選択する。着目極値SSelectのインデックスをx軸、y軸、z軸方向でそれぞれJSEL(0)、KSEL(0)、LSEL(0)とする。また、処理方法に応じて、同着目極値の所定の近傍内にある極値から構成される着目極値群SSelect:{SSelect(0),SSelect(1), …,SSelect(NSEL-1)}を選択する(着目極値を含む)。着目極値SSelect(0)と同様に着目極値群SSelectのm番目のメンバーのインデックスをJSEL(j)、KSEL(j)、LSEL(j)とする。
着目極値群に含まれる極値を同時に評価することにより、送・受信応答の持つ周期性のために生じる複数の極値の中からもっとも確からしい極値を選択することができる。
【0041】
着目極値および着目極値群のメンバーの評価
着目極値SSelect(0)と同様に着目極値群SSelectのメンバーについて対象物らしさを評価する。評価する極値を評価対象極値STestと呼ぶことにして、x軸方向、y軸方向、z軸方向のインデックスをそれぞれJTEST、KTEST、LTESTとする。する。自己相関RPPの最大値の位置での振幅が評価対象極値STestの位置JTEST、KTEST、LTESTでの対象物評価用データの振幅vTESTと同じになるようにした減算用データRPP(S)を用意する。
【数26】

ただし、

は自己相関の最大値、JMAX、KMAX、LMAXはそれぞれ自己相関が最大となるx軸方向、y軸方向、z軸方向のインデックスである。
【0042】
対象物評価用データHPMの中でのJTEST、KTEST、LTEST番目の要素が自己相関の中でのJMAX、KMAX、LMAX番目の要素と一致し、かつ自己相関と同じ大きさの対象物評価用データHPMの範囲HPM(S)を選ぶ。
【数27】

ただし、上式のhJKLには実際に存在しないインデックスが現れるが、実在するインデックスの範囲のデータのみを用いる。この場合、減算用データRPP(S)についてもhJKLが実在する範囲のみを用いることにする。
【0043】
両者の差DPM(S)
【数28】

である。ただし、hJKLが実在する範囲のみで減算を実行するものとする。
評価値の第1の例は、差をとる部分について差をとる前後のデータの差を
【数29】

である。ここで、
【数30a】

あるいは
【数30b】

などとする。この評価値E(1)は、評価対象極値STestが推定した参照パターンとの類似度を主に反映する。
【0044】
第2の評価値はE(2)は、
【数31】

で、HPM(S)およびDPM(S)式(30a)または式(30b)で与えられる。この評価値E(2)は、参照パターンとの類似度と評価対象極値STestの有意度、つまり反射信号の大きさを反映する。
第3の評価値E(3)は、評価対象である対象物探査用データGPMの極値の値の絶対値
【数32】

である。
第4の評価値はこれらのE(1)とE(2)とE(3)の重み付け和である。
【数33】

着目極値群SSelectのメンバーについて評価を行なう場合は、上記の例のような評価値が最大のメンバーをまず選択する。このようにして選択したメンバーを対象物候補極値SCandと呼ぶことにする。着目極値のみが選択されている場合も同着目極値を対象物候補極値SCandと呼ぶことにする。対象物候補極値SCandのインデックスをx軸、y軸、z軸方向でそれぞれJCAND、KCAND、LCANDとする。
【0045】
対象物候補極値SCandを対象物とみなすか否かの対象物判定条件の例としては、評価値が所定の正値以上である場合に対象物とみなすことである。
なお、着目極値、着目極値群のメンバー、対象物候補極値に関する評価において計算した自己相関を同自己相関を計算した深さとともに記録しておき、着目極値、着目極値群のメンバー、対象物候補極値の深さが記録されている自己相関の深さとの差が所定の範囲内である場合には、記録されている自己相関を用いることにより、計算効率を高めることができる。
【0046】
着目極値および着目極値群のメンバーの評価結果の処理
着目極値および着目極値群のメンバーの評価の結果、対象物候補極値が対象物判定条件を満足しなかった場合、式(25)の極値の中から着目極値あるいは着目極値群の全てのメンバーを削除して前記「着目極値および着目極値群の選択」以降の処理を繰り返す。
【0047】
対象物候補極値が対象物判定条件を満足した場合、自己相関RPPの最大値の位置での振幅が評価対象極値SCandの位置JCAND、KCAND、LCANDでの対象物探査用データの振幅VCANDと同じになるようにした対象物除去用データRPP(R)を用意する。
【数34】

【0048】
対象物除去用データRPP(R)の最大値の位置JMAX、KMAX、LMAXが対象物探査用データGPMの評価対象極値SCandの位置JCAND、KCAND、LCANDと一致するようにインデックスを調整し、対象物探査用データGPMから対象物除去用データRPP(R)を差し引き、改めて対象物探査用データGPMとして7.9項以降の処理を繰り返す。
【0049】
つまり、新しい対象物探査用データGPMを以下のように作る。
【数35】

ここで、hJKLは存在しない場合がある。この場合、hJKLは存在が存在する範囲でのみ減算を行なうものとする。
【0050】
あるいは、対象物評価用データHPMが相互相関CPMである場合には、評価対象極値SCand(位置JCAND、KCAND、LCANDでの極値)の評価結果を反映する方法として、式(28)で表される処理を行なった後の対象物評価用データHPMを類似度FPMを求めたのと同じ方法で規格化したものを、式(23)における類似度FPMの代わりに用いて、式(23)で計算したものを新しい対象物評価用データHPMとすることもできる。
【0051】
なお、着目極値、着目極値群のメンバー、対象物候補極値に関する評価において計算した自己相関を同自己相関を計算した深さとともに記録しておき、着目極値、着目極値群のメンバー、対象物候補極値の深さが記録されている自己相関の深さとの差が所定の範囲内である場合には、記録されている自己相関を用いることにより、計算効率を高めることができる。
【0052】
対象物探査の終了判定
対象物探査の終了判定は、実際には前記「着目極値および着目極値群のメンバーの評価結果の処理」の前に行なう。
(1) 式(25)で表される、所定の条件を満足する極値を選択できなくなった場合、あるいは処理済の極値を削除していったために式(25)で表される極値のリストが空になった場合
(2) 対象物評価用データHPMのノルム
【数36a】

または
【数36b】

とし、対象物の探査を行なう前の対象物評価用データHPMのノルムをNSearch(0)とする。つまり、NSearch(0)はNSearchの初期値である。このとき、
【数37】

が所定の値以下である場合。
ただし、DPM(S)の計算を式(30a)を用いた場合は式(36a)を用いる。また、DPM(S)の計算を式(30b)を用いた場合は式(36b)を用いる。
この判定条件は、差し引きによる減少が当初の画像のノルムに比べて十分小さく、もはや物体であると判定するには有意でないということを意味する。
(3) 対象物探査用データGPMのノルム
【数38a】

または
【数38b】

とし、対象物の探査を行なう前の対象物探査用データGPMのノルムをNSearch(0)とする。つまり、NSearch(0)はNSearchの初期値である。
このとき、
【数39】

が所定の値以下である。
この判定条件は、対象物探査用データが十分探査し尽くされ、有意なデータが残っていないことを意味する。
終了判定条件の例としては、以上の条件の(1)または(2)のいずれかを満足すること、(1)または(3)のいずれかを満足すること、(1)または(2)または(3)のいずれかを満足することを条件として用いることがある。
【0053】
終了判定条件の例としては、以上の条件の(1)または(2)のいずれかを満足すること、(1)または(3)のいずれかを満足すること、(1)または(2)または(3)のいずれかを満足することを条件として用いることがある。
【0054】
処理の流れ
図5Aは処理の流れ図を、図5Bは対象物のモデル、参照パターン、整形された受信データを模式的に表す図である。図中の実践の矢印は通常の処理の流れを意味する。また中抜きの矢印は必要に応じて実行される処理の流れを表す。
【0055】
101 対象物のモデル
孤立した地中埋蔵物から反射されたレーダ波の受信像のモデルである。式(10)で示されるデータであり、例えば、送信機から受信機に向けて発射されレーダ波を受信機で受信した受信から作成される。
102 測定条件
モデルの作成には、レーダ波の特性調査範囲内でのアンテナから距離等が考慮される。考慮される特性には、アンテナの指向角、媒質による信号の吸収損失等である。
103 参照パターン
モデルと測定条件を基に参照パターンを作成する。ステップ101で作成された対象物のモデルを、式(14)で示されるセンシング面(地表面)の範囲の各点で、式(13d)に示される遅延時間で補正して参照パターンを作成する(式(16))。また、作成された参照パターンは正規化される。
104 自己相関
ステップ103で作成された参照パターンの自己相関を計算する(式(17))。
105 受信データ
埋蔵物の探査により得られたデータである。
106 受信データの整形
センシング面内で測定を行っていない点が存在する時、周囲の観測データ(ステップ105の受信データ)からデータの補間あるいは補外を行う。非測定点のデータを「0」とすることも可能である。
107 相互相関
参照パターンと受信データの相互相関を計算する(式(19),式(20))。また、求められた相互相関を受信データの振幅で補正し、類似度を計算する(式(21),式(22))。
108 対象物探査データ
相互相関と類似度の重み付け和を計算し、対象物探査データとする(式(23))。
109 極値探査
対象物探査データの極値(極大値と極小値)から所定の条件に合致する極値、例えば、絶対値が所定値以上である極値を検出しリストアップする。
110 着目極値/着目極値群
ステップ109の極値探査により検出されリストアップされた極値の中から、絶対値が最大の極値を着目極値として選定する。その着目極値の近傍に存在する極値を着目極値群として選定する。
111 対象物評価データ
相互相関あるいは類似度を基に対象物評価データを作る(式(27))。
112 対象物候補極値
着目極値および着目極値群の1つを評価対象極値とする。ステップ104で得られた参照パターンの自己相関の最大振幅が、ステップ111で作成された対象物評価用データの評価対象極値の位置での振幅と一致するように自己相関の値を調整し、減算用データを作成する(式(26))。この減算用データを対象物評価用データから減算する(式(28))。
減算された結果を所定の評価方法に従って評価する(式(29)ないし式(33))。
上記の評価を着目極値および全ての着目極値群のメンバーに対して行う。
113 評価値条件を満足?
着目極値および着目極値群の全てのメンバーの中に評価が各評価方法に定められ条件を満足するものが存在するか否かを判断する。判定条件を満足する極値が存在していない場合は、今回処理した着目極値および着目極値群の全メンバーを探査リストから削除する。次のステップ117で全ての探査が終了したか否かを判定する。判定の結果、終了していないとされた時はステップ111に戻り、次の着目極値と着目極値群を選定する。
評価した評価対象極値が判定条件を満足している場合は、その評価対象極値の位置を対象物の位置として登録する。次に、ステップ114で全ての探査が終了したか否かを判定する。判定の結果、終了していないとされた時はステップ115に進み、対象物探査用データを更新してステップ108に進む。
115 新しい対象物探査データ
ステップ113の判定により、条件を満足する極値が存在した時は、参照パターンの自己相関の最大振幅が、対象物探査用データの上記条件を満足した極値の位置での振幅と同じとなるように自己相関の値を調整し、対象物除去用データを作成する(式(34))。この対象物除去用データを対象物探査用データの上記条件を満足した極値の位置から減算する(式(35))。減算されたデータを新たな対象物探査用データとして、ステップ109に進み極値の探査を実行する。この処理に合わせて、対象物評価用データも変更する。
114,116 探査終了判定
以下の条件の何れかを満たす時探査は終了したと判断する。
(1)極値探査を行ってもリストアップすべき極値が発見できなかった、あるいは、ステップ113の処理により、着目極値と着目極値群を探査リストから削除した結果リストが空となった。
(2)対象物評価用データの処理前データのノルムが所定の条件を満たした(式(37)あるいは式(39)の値が所定値以下となった)。
【産業上の利用可能性】
【0056】
従来の地中レーダに用いられている画像解析の方法では、多大な計算時間を要し、作業現場での処理は実質的に不可能であり、また、特に複数の対象物が近接して存在する場合に虚像を生じるという欠点があった。本発明は、参照パターンの自己相関、及び参照パターンと測定データの相互相関を用いることにより、処理速度が速く、連続物体の同定など高度な処理を行なうことが容易となる。この結果、測定結果の解釈が容易となり、測定データを作業現場で解析することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】受信アンテナのみを移動して測定する場合の測定方法
【図2】図1の測定した場合の受信信号の様子
【図3】送信/受信アンテナを一体で移動して測定する場合の測定方法
【図4】送信/受信アンテナを一体で移動して測定した場合の受信信号の様子
【図5A】本発明の処理フローを示す図
【図5B】対象物のモデル、参照パターン、整形された受信データを模式的に示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダなど対象物の位置および性状の少なくとも一方を獲得するために、信号の送信手段および受信手段の少なくとも一方を移動しながら送信信号を送出して対象からの反射信号を受信した受信データを処理する方法において、
送信機および受信機の少なくとも一方を移動しながら反射信号を取得し、受信信号を受信する測定点間の間隔を一定にして測定を行なうか、一定でない場合は補間などにより測定点の間隔が一定の受信データを用意し、
以下の手順により受信データを処理して対象物の位置および性状の少なくとも一方を推定する処理方法。
1.レーダの送・受信応答から点状の孤立物体群により構成された対象物による反射信号である参照パターンを推定し、
2.同参照パターンと受信データの相互相関および該参照パターンの自己相関を算出し、
3.同相互相関に所定の仕方1で重み付けした対象物探査用データを求め、
4.対象物探査用データあるいは相互相関である対象物評価用データを求め、
5.対象物探査用データの極値の値および位置を求め、
6.対象物探査用データの極値のうちで所定の条件1を満足する極値を選択し、
7.選択した対象物探査用データの極値の値の絶対値が最大になる極値である着目極値、あるいは同着目極値の所定の近傍に含まれる極値をメンバーとする着目極値群を求め、
8.着目極値あるいは着目極値群に含まれる極値に対して、該自己相関の最大値がそれぞれの極値の位置における対象物評価用データの値と同じになるように自己相関の振幅を調整し、それぞれ極値の位置を中心とする所定の範囲1で対象物評価用データから差し引き、
9.差し引き前の対象物評価用データと差し引き後の対象物評価用データを所定の仕方2で評価した評価値が所定の条件2を満足し、かつ評価値が最大の極値である対象物候補極値に対象物があるとみなし、該自己相関の最大値が対象物候補極値の位置における対象物探査用データの値と同じになるように自己相関の振幅を調整し、対象物候補極値の位置を中心とする所定の範囲1で対象物探査用データから差し引き、差し引き後の対象物探査用データに対して手順5以降を繰り返し、
10.差し引き前の対象物評価用データと差し引き後の対象物評価用データを所定の仕方2で評価した結果が着目極値あるいは着目極値群に含まれる全メンバーに対して所定の条件2を満足しないときには、着目極値あるいは着目極値群に含まれる全メンバーを除外した対象物探査用データの極値に対して、手順7以降を繰り返し、
11.対象物探査用データを所定の仕方3で評価した結果が所定の条件3を満足するか、所定の条件1を満足する極値がなくなるか、差し引き前の対象物探査用データと差し引き後の対象物探査用データを所定の仕方4で評価した結果が所定の条件4を満足した場合に処理を終了する。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、調査対象範囲をアンテナからの距離に応じて複数の区間に分け、着目区間の平均距離における該参照パターンを同着目区間内で用いる方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、参照パターンを矩形状とし、1辺の長さを調査範囲内のアンテナからの最大距離とアンテナの指向角から算出したビームの広がりと同辺方向の対象物の大きさにより決定し、残る1辺の長さを調査範囲内のアンテナからの最短距離にある点と前記ビームの広がりの範囲でアンテナを移動したときの最大および最小距離の差と同辺方向の対象物の大きさにより決定する方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって、調査対象範囲をアンテナからの距離に応じて複数の区間に分け、参照パターンを矩形状とし、1辺の長さを着目区間内のアンテナからの最大距離とアンテナの指向角から算出したビームの広がりと同辺方向の対象物の大きさにより決定し、残る1辺の長さを着目区間内のアンテナからの最短距離にある点と前記ビームの広がりの範囲でアンテナを移動したときの最大および最小距離の差と同辺方向の対象物の大きさにより決定する方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法であって、受信データ内の着目点を参照パターンの基準点と一致させたときの参照パターンと同じ範囲の受信データの2乗和の平方根により相互相関を除したものと相互相関の重み付け和を対象物探査用データとする方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法であって、条件1が相互相関値の絶対値が所定の値以上である方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法であって、自己相関の範囲を矩形とし、その最大値を含み、参照パターンと同程度の範囲に制限する方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法であって、所定の範囲1が、自己相関を所定の範囲に制限し、候補極値あるいは着目極値の位置と同自己相関の最大値の位置を一致させたときの自己相関の範囲とする方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法であって、所定の仕方2が、自己相関を差し引く範囲内の対象物評価用データについて差し引き前の2乗和の平方根から差し引き後の2乗和の平方根を減じた差を求め、差が正であり、自己相関の最大値が候補極値の値に一致するように振幅を調整したものの2乗和の平方根を計算し、同平方根で前記差を除したものと同差との重み付け和を評価値とする方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法であって、所定の仕方2が、自己相関を差し引く範囲内の対象物評価用データについて差し引き前の絶対値の和から差し引き後の絶対値の和を減じた差を求め、差が正であり、自己相関の最大値が候補極値の値に一致するように振幅を調整したものの絶対値の和を計算し、同和で前記差を除したものと同差との重み付け和を評価値とする方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法であって、条件2が、所定の仕方2で算出した評価値が所定の値以上で、かつ自己相関を差し引く範囲内の対象物評価用データについて差し引き前の2乗和の平方根から差し引き後の2乗和の平方根を減じた差が所定の値以上である方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法であって、条件2が、所定の仕方2で算出した評価値が所定の値以上で、かつ自己相関を差し引く範囲内の対象物評価用データについて差し引き前の絶対値の和から差し引き後の絶対値の和を減じた差が所定の値以上である方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法であって、所定の仕方3が、対象物探査用データの2乗和の平方根を求めることであり、所定の条件3が、所定のしきい値以下である方法。
【請求項14】
請求項1記載の方法であって、所定の仕方3が、対象物探査用データの絶対値の和を求めることであり、所定の条件3が、所定のしきい値以下である方法。
【請求項15】
請求項1記載の方法であって、所定の仕方4が、自己相関を差し引く範囲内の対象物探査用データについて差し引き前の2乗和の平方根から差し引き後の2乗和の平方根を減じた差を求めることであり、所定の条件4が所定のしきい値以下である方法。
【請求項16】
請求項1記載の方法であって、所定の仕方4が、自己相関を差し引く範囲内の対象物探査用データについて差し引き前の絶対値の和から差し引き後の絶対値の和を減じた差を求めることであり、所定の条件4が所定のしきい値以下である方法。
【請求項17】
請求項1記載の方法であって、着目極値、着目極値群のメンバー、対象物候補極値に関する評価において、対象物探査用データ、対象物評価用データから差し引く自己相関を、同自己相関を計算した深さとともに記録しておき、着目極値、着目極値群のメンバー、対象物候補極値の深さが記録されている自己相関の深さとの差が所定の範囲内である場合には、記録されている自己相関を用いる方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2006−98112(P2006−98112A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281864(P2004−281864)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】