説明

地中位置計測方法及びシステム

【課題】複数の地中位置において同時に対地三次元座標を計測できる地中位置計測方法及びシステムを提供する。
【解決手段】地上又は地中の既知三次元座標の複数の基準位置Rから、自己相関が強く相互相関が弱い識別符号列Pで変調された周期性基準信号frを、所定搬送周波数fcの回転磁界3に乗せて地中2へ発信する。地中2の計測位置Qに三以上の受信コイル素子群21が所定相互関係で取り付けられた磁界計測装置20を所定姿勢Sで配置し、回転磁界3により各コイル素子21に誘起される信号fqを計測する。各コイル素子21の計測信号fqと各識別符号列Pとの相関に基づき計測位置Qにおける各基準信号frの位相τを検知し、各基準信号frの位相τのコイル素子相互間位相差Δτとコイル素子群21の所定相互関係及び姿勢Sとから、各基準位置Rの向きθRを検出する。各基準位置Rの既知三次元座標と向きθRとから、計測位置Qの対地三次元座標を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地中位置計測方法及びシステムに関し、とくに電磁誘導の原理を利用して地中の対地三次元座標を計測する方法及びシステムに関する。
本発明は、土木・建築の分野において、地中の計画位置に構造物を構築する場合の位置計測に利用可能である。また、電力・通信分野において地中ケーブル等を計画位置に敷設する場合、及びガス・上下水道分野において地中管渠を計画位置に敷設する場合等にも利用可能である。
【背景技術】
【0002】
シールド掘削機による地下トンネル工事、通信ケーブルや上下水管渠等の地中敷設工事、地下構造物構築の際の土質調査、地震等による構造物の地中基礎部の状況調査等において、地球座標系における地中の精確な絶対位置(以下、対地三次元座標ということがある)の測量が求められる。従来、地中の対地三次元座標を測量する方法として、例えば特許文献1が開示するように、角速度センサ及び加速度センサを収納したセンサプローブを通信ケーブル等に接続して地下埋設配管内で移動させ、両センサの出力と通信ケーブルの送出量とからセンサプローブの移動方向及び移動距離を計算し、センサプローブの移動軌跡を求めて埋設配管の地中三次元座標を計測する方法が知られている。また特許文献2が開示するように、シールド掘削機の発信立坑に設置した光源からの光を中継手段(反射鏡等)により地下トンネルに沿って切羽まで到達させ、光波測量の原理により切羽のシールド掘削機の地中位置を計測する方法も知られている。
【0003】
しかし、特許文献1のように角速度及び加速度センサを用いる方法は、積分誤差やドリフト等により計測誤差が累積しやすいので、埋設配管が長い場合(センサプローブの移動距離が大きい場合)は精確な測量が難しくなる。また特許文献2のように光波測量による方法も、隣接する中継手段を直線的見通し可能であるように配置する必要があるので、曲線部において中継手段の配置が複雑となり、やはり地下トンネルが長くなると精確な測量が難しくなる。
【0004】
他方、特許文献3及び4が開示するように、電磁誘導の原理を利用して地下埋設物や掘削機の位置や変位を計測する方法がある。例えば特許文献3では、地下埋設配管又はシールド掘削機等に探知磁界発生装置(ソレノイドコイル)を垂直姿勢で挿入又は搭載し、その上方の地表面上で磁界測定器を移動させながら磁界発生装置の発生磁界の垂直成分が最小となる地点を測定し、その垂直成分が最小となる地点を結ぶ円の中心位置と直径とから、地中の磁界発生装置の水平位置と深さとを測定している。この方法によれば、埋設配管やトンネルの長さに拘わらず、測量対象の地中位置へ磁界発生装置を移動させることにより、その地中位置の対地三次元座標の精確な測量が可能となる。ただし特許文献3、4の方法は、地上で磁界測定器を移動させる必要があるので、磁界測定器を移動させることができない場合、例えば地上に構造物等の障害物があるような場合の地中位置の測量には適用できない問題点がある。
【0005】
これに対し特許文献5及び6は、電磁誘導を利用しつつ、磁界測定器を移動させずに地中の磁界発生装置の位置を検出する方法を提案している。特許文献6による地中の位置検出方法を、図11を参照して本発明の理解に必要な限度において説明する。同図(A)に示すように、地下埋設配管51へ挿入する移動台車52上に、中心点が共通であり且つ相互に直交する第1送信コイル56及び第2送信コイル57を搭載し、各送信コイル56、57を信号線58、59経由で信号供給装置60に接続する。同図(B)に示すように信号供給装置60は、信号発生器60aの発生する例えば200kHzの搬送波を、スペクトル拡散変調器60cにより拡散符号発生器60bの符号系列でスペクトル拡散変調したのち、AM変調器10dにより例えば400Hzの正弦波でAM変調し、cos変調した交流電流を第1送信コイル56に印加すると共に、sin変調した交流電流を第2送信コイル57に印加する。90度位相の異なる交流電流(二相交流)を直交する送信コイル56、57へ印加することにより、送信コイル56、57から円形の回転磁界を発生させる。
【0006】
他方、図11(A)に示すように地上の観測地点に磁気検出コイルとして、両端部に第1受信コイル66及び第2受信コイル67が巻回された回転式変位棒64を平行移動可能に配置し、各受信コイル66、67を信号線68、69経由で信号測定器70、71に接続する。すなわち、一対の受信コイル66、67を同一中心軸線上に配置し、両者の磁気検出面66a、67aを相互に平行とする。信号測定器70、71は、各受信コイル66、67で計測した磁界強度の計測信号を入力し、信号供給装置60からの基準信号(搬送波の周波数)で同期検波すると共にスペクトル拡散変調の符号系列で復調し、送信コイル56、57と受信コイル66、67との相対位置及び信号波の位相に応じた受信レベル(例えば400Hzの正弦波信号)を信号表示器74に出力する。
【0007】
図11において、受信コイル66、67の受信レベルは送信コイル56、57との相対位置関係を位相差として表し、両者の位相が一致した場合は受信コイル66、67の中心軸線方向が送信コイル56、57の中心位置を示し、両者の位相が一致していない場合は位相が一致するように変位棒64を回転又は平行移動する。受信コイル66、67の受信レベルの位相が一致するような中心軸線方向から地下埋設配管1の方向を求めることにより、地下埋設管1の対地三次元座標を検出する。この地中の位置検出方法によれば、地上で磁気検出コイルを移動させる必要がなくなり、構造物等の下方の地中位置の測量も可能である。
【0008】
【特許文献1】特開平8−178653号公報
【特許文献2】特開2001−021356号公報
【特許文献3】特開昭57−133373号公報
【特許文献4】特開昭59−153112号公報
【特許文献5】特開平9−014958号公報
【特許文献6】特開平9−325003号公報
【特許文献8】米国特許第5337002号明細書
【特許文献9】米国特許第6250402号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献5及び6の位置検出方法は、複数の地中位置を同時に測量できない問題点がある。例えばシールドトンネル工事において、2台のシールド掘削機を異なる向きから同一の地中位置に向けて掘進させてトンネルを接合する場合に、接合位置近傍で2台のシールド掘進機の地中位置を同時に測量することが求められる。また、構造物の基礎部下方に構造物を構築するアンダーピニング工事等においても、複数の地中位置の同時測量が必要とされる。図11の位置検出方法では、地中に複数の送信コイル56、57を設けて回転磁界を発生させると、地上の観測地点でそれらの送信コイル66、67の合成磁場が受信されることとなるが、受信コイル66、67の合成磁場の位相を一致させたとしても送信コイル56、57の地中位置を検出することは困難である。複数の地中位置を同時に測量できる技術の開発が求められている。
【0010】
また、特許文献5及び6の位置検出方法は、地中位置の対地三次元座標を地上の観測地点で計測するものであり、例えば地中のシールド掘削機等の運転に計測結果を反映するためには電気ケーブル等の信号伝送手段を介して地上の計測結果を地中のシールド掘削機へ伝送しなければならず、地中を移動するシールド掘削機において自己の対地三次元座標を直接把握できない問題点もある。地上では移動体が任意地点に移動しながら自己の対地三次元座標を直接計測できる全地球測位システム(Global Positioning System:以下、GPSという)が開発されており、地中においても同様に、地中の任意地点に移動しながらその対地三次元座標を直接計測できる技術の開発が望まれている。
【0011】
そこで本発明の目的は、複数の地中位置において同時に対地三次元座標を計測できる地中位置計測方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、対地三次元座標が既知の複数の基準位置から地中に向けて電磁波信号を送信し、それらの電磁波信号を地中の計測位置で受信して自己の対地三次元座標を計測することにより、地中位置を測量することに注目した。ただしこの場合は、上述したように、地中の計測位置において各基準位置からの合成電磁場の信号が受信されるので、合成信号を各基準位置の信号に分離する必要がある。信号の分離方法として、地上放送電波のように、各基準位置からの発信電磁波信号の搬送周波数を相違させて多チャンネル化し、地中の計測位置において基準位置毎に同期検波して信号を分離することが考えられる。しかし、地上に比して地中における伝播特性の良好な周波数帯は極めて狭いため、同期回路の分離特性(バンドパス特性)を考慮すると、周波数による多チャンネル化では十分なチャンネル数を確保することが難しい。本発明者は、各基準位置からの信号を符号化して分離する方法が地中位置の測量に有効であるとの知見を得、その知見に基づく研究開発の結果、本発明の完成に至った。
【0013】
図1の実施例及び図2の流れ図を参照するに、本発明の地中位置計測方法は、地上又は地中の対地三次元座標が既知の複数の基準位置R1、R2、R3から基準位置R1、R2、R3毎に自己相関が強く相互相関が弱いデジタル基準位置識別符号列P1、P2、P3で変調された周期性基準信号fr1、fr2、fr3を所定搬送周波数fcの回転磁界3に乗せて地中2へ発信し、各回転磁界3が到達する地中2の計測位置Qに三以上の受信コイル素子群211、212、213が所定相互関係Q1、Q2、Q3で取り付けられた磁界計測装置20を所定姿勢Sで配置して回転磁界3により各コイル素子211、212、213に誘起される信号fq1、fq2、fq3を計測し、各コイル素子211、212、213の計測信号fq1、fq2、fq3と各識別符号列P1、P2、P3との相関に基づき計測位置Qにおける各基準信号fr1、fr2、fr3の位相τ1、τ2、τ3を検知し、各基準信号fr1、fr2、fr3の位相τ1、τ2、τ3のコイル素子相互間位相差Δτ1-2、Δτ1-3、Δτ2-3とコイル素子群211、212、213の所定相互関係Q1、Q2、Q3及び姿勢Sとにより計測位置Qから見た各基準位置R1、R2、R3の向きθR1、θR2、θR3を検出し、各基準位置R1、R2、R3の既知三次元座標と計測位置Qから見た各基準位置R1、R2、R3の向きθR1、θR2、θR3とから計測位置Qの対地三次元座標を算出してなるものである。
【0014】
また図1の実施例を参照するに、本発明の地中位置計測システムは、地上又は地中の対地三次元座標が既知の複数の基準位置R1、R2、R3に設置され且つ基準位置R1、R2、R3毎に自己相関が強く相互相関が弱いデジタル基準位置識別符号列P1、P2、P3で変調された周期性基準信号fr1、fr2、fr3を所定搬送周波数fcの回転磁界3に乗せて地中2へ発信する信号発信装置101、102、103、各回転磁界3が到達する地中2の計測位置Qに所定姿勢Sで配置され且つ所定相互関係Q1、Q2、Q3で取り付けられた三以上の受信コイル素子群211、212、213で回転磁界3により誘起される信号fq1、fq2、fq3を計測する磁界計測装置20、基準位置R1、R2、R3毎の三次元座標及び識別符号列P1、P2、P3とコイル素子群211、212、213の所定相互関係Q1、Q2、Q3及び姿勢Sとを記憶する記憶手段31、各コイル素子211、212、213の計測信号fq1、fq2、fq3を入力して各識別符号列P1、P2、P3との相関に基づき計測位置Qにおける各基準信号fr1、fr2、fr3の位相τ1、τ2、τ3を検知する位相検知手段321、322、323、各基準信号fr1、fr2、fr3の位相τ1、τ2、τ3のコイル素子相互間位相差Δτ1-2、Δτ1-3、Δτ2-3とコイル素子群211、212、213の所定相互関係Q1、Q2、Q3及び姿勢Sとにより計測位置Qから見た各基準位置R1、R2、R3の向きθR1、θR2、θR3を検出する向き検出手段331、332、333、並びに向き検出手段331、332、333による各基準位置R1、R2、R3の向きθR1、θR2、θR3と各基準位置R1、R2、R3の三次元座標とから計測位置Qの対地三次元座標を算出する座標算出手段34を備えてなるものである。
【0015】
好ましくは、磁界計測装置20の配置姿勢Sを計測する姿勢計測装置26を設け、その姿勢計測装置26の計測姿勢Sから向き検出手段331、332、333により各基準位置R1、R2、R3の向きθR1、θR2、θR3を検出する。更に好ましくは、三以上の受信コイル素子群211、212、213を、磁界計測装置20上の同一直線上とならない三以上の所定位置に取り付ける。信号発信装置101、102、103が発信する回転磁界3の所定搬送周波数fcは、地中での減衰が小さい周波数とすることが望ましく、例えば200kHz以下とし、更に望ましくは10kHz程度とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の地中位置計測方法及びシステムは、対地三次元座標が既知の複数の基準位置からそれぞれ基準位置識別符号列で変調された周期性基準信号を回転磁界に乗せて地中へ発信し、地中の計測位置に設けた三以上の受信コイル素子群で前記回転磁界により誘起される信号を計測し、各コイル素子の計測信号と各識別符号列との相関に基づき計測位置における各基準信号の位相を検知し、コイル素子相互間における各基準信号の位相差により計測位置から見た各基準位置の向きを検出し、各基準位置の既知三次元座標と各基準位置の向きとから計測位置の対地三次元座標を算出するので、次の顕著な効果を奏する。
【0017】
(イ)複数の基準信号が合成された計測信号から各基準信号の位相を検知できるので、地中の複数の計測位置で同時に対地三次元座標の測量が可能となる。
(ロ)また、三以上の受信コイル素子群を地中の任意の計測位置へ移動させることにより、その対地三次元座標を直接計測できる。
(ハ)各基準位置は、計測位置に回転磁界が到達する範囲内であれば計測位置の直上でなくても足りるため、地上に構造物等の障害物がある場合の地中位置の測量にも適用可能である。
(ニ)地上に多数の基準位置を適当に配置し、地中の計測対象範囲内の任意位置で少なくとも三つの基準信号を受信可能とすることにより、地上におけるGPSと同様の測位システムを地中で実現できる。
(ホ)地中を移動しながらその位置を測量するシールド工事や水平ボーリング工事、構造物下方における複数の地中位置の同時測量を必要とするアンダーピニング工事等への有効利用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明による地中位置計測システムのブロック図を示す。同図に示す地中位置計測システムは、対地三次元座標が既知の複数の基準位置Rにそれぞれ設置する信号発信装置10と、地中2の計測位置Qに配置する磁界計測装置20及び位置計測装置30とを有する。各信号発信装置10によりそれぞれ異なる基準位置識別符号列Pで変調された周期性基準信号frを回転磁界3に乗せて地中2へ発信し、磁界計測装置20により計測位置Qにおいて回転磁界3が誘起する信号fqを計測し、位置計測装置30により計測信号fqと各基準位置Rの既知三次元座標とから計測位置Qの対地三次元座標を算出する。図示例では各基準位置Rを地上に設けているが、基準位置Rは例えばボーリング坑内のような地中に設けてもよい。好ましくは、図示例のように三以上の基準位置Rを設け、三以上の基準位置Rの既知三次元座標に基づき計測位置Qの対地三次元座標を算出する。
【0019】
図示例の各信号発信装置10は、回転磁界3を発生するように配置された複数の送信コイル11、12と、その配置に応じた位相差の交流電流を各送信コイル11、12に供給する交流電流供給装置13とを有する。図示例では、図11の場合と同様に、中心点が共通であり且つ相互に直交する相等しい第1送信コイル11及び第2送信コイル12を用い、交流電流供給装置13から二相交流電流を供給することにより、各送信コイル11、12から交流電流と同じ速度(後述する周期性信号fsの角速度=2πf)で回転する円形の回転磁界3を発生させる。ただし、本発明で用いる信号発信装置10は回転磁界3を発生させるものであれば足り、その構成は図示例に限定されない。
【0020】
図示例の交流電流供給装置13は、周期性信号fsを発生する発生器14と、供給装置13毎に自己相関が強く相互相関が弱いデジタル基準位置識別符号列Pを発生する発生器15と、所定搬送周波数fcの搬送波信号を発生する発生器(発振器)16と、変調器17及び18とを有する。周期性信号fsの一例は、例えば図3(A)に示すように周波数400Hz程度の正弦波信号である。またデジタル基準位置識別符号列Pの一例は、図4に示すように、M系列(Maximum length sequence)等のnビット(図示例では7ビット)のPN(Pseudo Noise;擬似ランダム)符号列である。PN符号列は疑似雑音とも呼ばれ、平衡性、連なり性、相関性の三つのランダム性を満足する符号列である。図4(A)は、基準位置R1の識別符号列発生器15が発生する7ビットの識別符号列P1{-1、1、1、1、-1、-1、1}を示し、同図(B)は、基準位置R2の識別符号列発生器15が発生する7ビットの識別符号列P2{1、-1、1、1、1、-1、-1}を示す。
【0021】
例えば基準位置R1の交流電流供給装置13は、変調器17により、周期T0の正弦波信号である周期性信号fsの絶対値(図3(B)参照)を、その半周期T0/2のビット長の識別符号列P1(図4(A)参照)で変調し、送信コイル11に送る周期性基準信号fr1((1)式参照)と、送信コイル12に送る周期性基準信号fr'1((2)式参照)とを生成する。周期性基準信号fr1の波形を図5(A)に示す。更に、変調器18によって各周期性基準信号fr1、fr'1を搬送周波数fcの搬送波に乗せ、二相交流電流として基準位置R1の各送信コイル11、12に供給する。
【0022】
【数1】

【0023】
同様に基準位置R2の交流電流供給装置13は、変調器17により図5(B)に示すような周期性基準信号fr2、fr'2を生成し、変調器18により搬送周波数fcの二相交流電流として基準位置R2の送信コイル11、12に供給する。また基準位置R3の交流電流供給装置13も、変調器17により周期性基準信号fr3、fr'3を生成し、変調器18により搬送周波数fcの二相交流電流として基準位置R3の送信コイル11、12に供給する。基準位置R1、R2、R3毎に自己相関が強く相互相関が弱いデジタル基準位置識別符号列P1、P2、P3によって送信コイル11、12に供給する交流波形を符号化することにより、各基準位置R1、R2、R3の送信コイル11、12の発生する回転磁界3が合成された場合でも、識別符号列P1、P2、P3との相関に基づき、合成された回転磁界3の波形から各基準位置R1、R2、R3の基準信号fr1、fr2、fr3を分離することが可能となる。
【0024】
各基準位置R1、R2、R3の基準信号fr1、fr2、fr3の周波数fsは、全ての基準位置R1、R2、R3において同一でもとくに問題はなく、適当に選択することができる。他方、基準信号fr1、fr2、fr3を乗せる搬送波の周波数fcは、地中において回転磁界3の減衰を小さくするため、できるだけ低周波帯とし、且つ、地中(自然界)に存在する磁気雑音に対して十分なS/N比が得られる周波数とすることが望ましい。例えば搬送波の周波数fcを200kHz以下とし、望ましくは100kHz以下、更に望ましくは10kHz程度とする。
【0025】
地中2の計測位置Qに配置する図示例の磁界計測装置20は、所定相互関係Q1、Q2、Q3で取り付けられた三以上の受信コイル素子群211、212、213と、各受信コイル素子211、212、213により計測された磁界強度を復調して計測信号fq1、fq2、fq3を取り出す復調器231、232、233とを有する。図示例の復調器231、232、233は、交流電流供給装置13の搬送周波数fcと同じ周波数の信号発生器(発振器)を内蔵している。好ましくは、各受信コイル素子211、212、213を、図8を参照して後述するように、磁界計測装置20上の同一直線上とならない所定位置Q1、Q2、Q3に取り付ける。ただし、受信コイル素子21の数が四以上である場合は、受信コイル素子21が同一直線上に取り付けられていてもよい。磁界計測装置20は、所定の姿勢(例えば、鉛直向き又は水平向き)Sで計測位置Qに配置するか、又はその配置姿勢Sを後述する姿勢計測装置26で計測する。
【0026】
計測位置Qにおける磁界強度は、各基準位置R1、R2、R3からの回転磁界3が地中伝播による時間遅れ及び振幅減衰を伴って合成されたものであり、電磁誘導によって各受信コイル素子211、212、213に発生する計測信号fq1、fq2、fq3の波形は、各基準位置R1、R2、R3の基準信号fr1、fr2、fr3が位相差及び振幅差を伴って混信した状態の波形となる。図6(A)及び(B)は、図5(A)の周期性基準信号fr1と同図(B)の周期性基準信号fr2とが計測位置Qにおいて位相差=414度、振幅比(fr2/fr1)=0.8で合成されているときに、受信コイル素子211で計測される計測信号fq1の波形、及び受信コイル素子212で計測される計測信号fq2の波形をそれぞれ示す。受信コイル素子213で計測される計測信号fq3も、位相及び振幅が若干相違するものの、ほぼ同様の波形となるはずである。
【0027】
磁界計測装置20の出力する計測信号fq1、fq2、fq3を位置計測装置30に入力し、位置計測装置30において計測位置Qの対地三次元座標を算出する。図示例の位置計測装置30は、記憶手段31と、位相検知手段32と、向き検出手段33と、座標算出手段34とを有する。記憶手段31には、基準位置R1、R2、R3毎の三次元座標及び識別符号列P1、P2、P3と、磁界計測装置20のコイル素子211、212、213の所定相互関係Q1、Q2、Q3と、磁界計測装置20の配置姿勢Sとを記憶する。位置計測装置30の一例はコンピュータであり、位相検知手段32、向き検出手段33及び座標算出手段34の一例はコンピュータの内蔵プログラムである。
【0028】
図2は、図1のシステムを用いた地中位置計測方法の流れ図の一例を示す。以下、同流れ図を参照して、本発明による計測位置Qの対地三次元座標の計測手順、及び位置計測装置30の位相検知手段32、向き検出手段33及び座標算出手段34による処理を説明する。先ずステップS101において、測量すべき地中2の計測位置Qに各信号発信装置10の回転磁界3が到達するように、信号発信装置10を設置すべき複数の基準位置Rを地上又は地中に設定する(図10も参照)。また、各基準位置Rの対地三次元座標を、例えばGPS等により測量して位置計測装置30の記憶手段31に記憶する。設定した各基準位置Rにそれぞれ信号発信装置10を設置し、ステップS102において各基準位置Rから、それぞれ異なる基準位置識別符号列Pで変調された周期性基準信号frを回転磁界3に乗せて地中2へ発信する。ステップS103において、地中2の計測位置Qに磁界計測装置20を所定姿勢Sで配置し、ステップS105において、磁界計測装置20の各受信コイル素子211、212、213で回転磁界3により誘起される計測信号fq1、fq2、fq3を計測して位置計測装置30に入力する。
【0029】
図2のステップS106は、位置計測装置30の位相検知手段32による処理を示す。図示例の位置計測装置30は三つの位相検知手段321、322、323を有し、各位相検知手段321、322、323にそれぞれ受信コイル素子211、212、213の計測信号fq1、fq2、fq3を入力して位相τをずらしながら各識別符号列P1、P2、P3との相関値Mを求め、識別符号列P1、P2、P3との相関値Mが最大となる位相τ1、τ2、τ3を、それぞれ計測位置Qにおける各基準信号fr1、fr2、fr3の位相τ1、τ2、τ3として検知する。計測信号fqj(j=1、2、3)と識別符号列Pi(i=1、2、3)との相関値Mは、例えば(10)式のように定義できる。ただし、計測信号fqjと識別符号列Piとの相関値Mの算出方法は(10)式に限定されるものではない。
【0030】
【数2】

【0031】
例えば図示例の位相検知手段321において、図7(A)に示すように、受信コイル素子211の計測信号fq1(図6(A)参照)の位相τ=0〜1260度の部分と、記憶手段31に記憶した識別符号列P1(図4(A)参照)との積を、識別符号列P1の周期T(図4(A)では1260度)にわたり積分して相関値M(τ)を求める。次に、図7(B)に示すように周期Tの範囲内で位相τをずらしながら相関値M(τ)を求めるサイクルを繰り返し、相関値M(τ)が最大となる位相τmaxを受信コイル211における基準信号fr1の位相τ1として検知する。図7の実施例では、相関値M(τ)が同図(A)の位相において同図(B)の位相より大きくなっており、このサイクルの繰り返しにより、例えば受信コイル211における基準信号fr1の位相τ1=0を検知する。
【0032】
同様に図示例の位相検知手段322において、図7(C)に示すように、受信コイル素子212の計測信号fq2(図6(B)参照)と識別符号列P1との積を識別符号列P1の周期Tにわたり積分して相関値M(τ)を求めるサイクルを、周期Tの範囲内で両者の位相τをずらしながら繰り返すことにより、相関値M(τ)が最大となる位相τmaxとして受信コイル212における基準信号fr1の位相τ2を検知する。図示例では、例えば受信コイル212における基準信号fr1の位相τ2=45度を検知する。更に位相検知手段323において、受信コイル素子213の計測信号fq3と識別符号列P1との積を識別符号列P1の周期Tにわたり積分して相関値M(τ)を求めるサイクルを繰り返し、同様にして受信コイル213における基準信号fr1の位相τ3を検知する。位相検知手段321、322、323により、計測位置Qの各受信コイル素子211、212、213における基準信号fr1の位相τ1、τ2、τ3を全て求めることができる。
【0033】
位相検知手段321、322、323では、基準信号fr1の位相τ1、τ2、τ3だけでなく、基準信号fr2の位相τ1、τ2、τ3、及び基準信号fr3の位相τ1、τ2、τ3も同様に検知できる。すなわち、位相検知手段321、322、323において、受信コイル素子211、212、213の計測信号fq1、fq2、fq3と識別符号列P2(図4(B)参照)との相関値M(τ)が最大となる位相τmaxを求めることにより計測位置Qにおける基準信号fr2の位相τ1、τ2、τ3を検知し、計測信号fq1、fq2、fq3と識別符号列P3との相関値M(τ)が最大となる位相τmaxを求めることにより計測位置Qにおける基準信号fr3の位相τ1、τ2、τ3を検知すればよい。
【0034】
図2のステップS107は、位置計測装置30の向き検出手段33による処理を示す。図示例の位置計測装置30は三つの向き検出手段331、332、333を有し、各向き検出手段331、332、333において各基準信号fr1、fr2、fr3の位相τ1、τ2、τ3のコイル素子相互間の位相差Δτ1-2、Δτ1-3、Δτ2-3を求め、その位相差Δτ1-2、Δτ1-3、Δτ2-3とコイル素子211、212、213の所定相互関係Q1、Q2、Q3及び配置姿勢Sとから、各基準位置R1、R2、R3の向きθR1、θR2、θR3を検出する。
【0035】
例えば図示例の向き検出手段331は、位相検知手段321、322、323から計測位置Qにおける基準信号fr1の位相τ1、τ2、τ3を全て入力し、基準信号fr1のコイル素子211、212相互間の位相差Δτ1-2、コイル素子211、213相互間の位相差Δτ1-3、及びコイル素子212、213相互間の位相差Δτ2-3を求める。基準信号fr1は基準位置R1を中心として周期性信号fsの角速度=2πfで回転しているので、図8に示すように基準信号fr1のコイル素子211、212相互間の位相差Δτ1-2は、コイル素子211、212の位置Q1、Q2を結ぶ線分を弦とし基準位置R1を頂点とする円周角に相当する。すなわち基準位置R1は、コイル素子211、212の位置Q1、Q2を含み且つ円周角=Δτ1-2の球面C1(図7(A)及び(B)の実施例では円周角=45度の球面C1)上にあるはずである。また基準位置R1は、コイル素子211、213の位置Q1、Q3を含み且つ円周角=Δτ1-3の球面C2上にあり、コイル素子212、213の位置Q2、Q3を含み且つ円周角=Δτ2-3の球面C3上にもあるはずである。従って、記憶手段31に記憶された各コイル素子群211、212、213の磁界計測装置20上の所定位置Q1、Q2、Q3、及び磁界計測装置20の所定姿勢Sを用い、図8に示すように各コイル素子相互間の位相差Δτ1-2、Δτ1-3、Δτ2-3から球面C1、C2、C3の交点R1の座標を求めることにより、向き検出手段331において計測位置Qから見た基準位置R1の向きθR1を検出することができる。
【0036】
同様に図示例の向き検出手段332において、基準信号fr2の位相τ1、τ2、τ3からコイル素子相互間の位相差Δτ1-2、Δτ1-3、Δτ2-3を求め、図8のように 球面C1、C2、C3の交点R2を求めることにより、計測位置Qから見た基準位置R2の向きθR2を検出できる。更に向き検出手段333において、基準信号fr3の位相τ1、τ2、τ3からコイル素子相互間の位相差Δτ1-2、Δτ1-3、Δτ2-3を求め、図8のように球面C1、C2、C3の交点R3を求めることにより、計測位置Qから見た基準位置R3の向きθR3を検出できる。
【0037】
なお図8において符号Fは球面C1、C2の交線を表し、球面C1、C2、C3の交点R1が交線Fと球面C3との交差点として求まることを示す。また図8は、磁界計測装置20上の同一直線上とならない三所定位置Q1、Q2、Q3に受信コイル素子211、212、213を取り付けた例を示すが、受信コイル素子21の数が四以上である場合は、受信コイル素子21を同一直線上に取り付けた場合であっても、四以上のコイル素子相互間の位相差Δτから各基準位置Rの向きθRを検出することが可能である。
【0038】
図2のステップS108は、位置計測装置30の座標算出手段34による処理を示す。図示例の座標算出手段34は、向き検出手段331、332、333から各基準位置R1、R2、R3の向きθR1、θR2、θR3を入力し、記憶手段31に記憶された各基準位置R1、R2、R3の既知三次元座標から三角測量の原理によって、計測位置Qの対地三次元座標を算出する。図9は、三以上の基準位置Rの既知三次元座標に基づき、計測位置Qの対地三次元座標を算出する方法を示す。同図に示すように、計測位置Qの対地三次元座標は、基準位置R1、R2及び向きベクトルθR1、θR2を含む平面H1-2、基準位置R1、R3及び向きベクトルθR1、θR3を含む平面H1-3、及び基準位置R2、R3及び向きベクトルθR2、θR3を含む平面H2-3の交点として算出することができる。同図の符号Lは平面H1-2、H1-3の交線を表し、計測位置Qの対地三次元座標が交線Lと平面H2-3との交差点として求まることを示す。ただし、少なくとも二点の基準位置R1、R2の向きθR1、θR2が検出できれば、三角形Q、R1、R2の各頂点における角度が決まるので、その基準位置R1、R2の既知三次元座標から三角測量の原理によって計測位置Qの対地三次元座標を算出することが可能である。算出した計測位置Qの対地三次元座標は、例えば位置計測装置30の出力装置(表示装置)39に出力して確認する。
【0039】
図2のステップS109において、他の地中計測位置Qの対地三次元座標を算出する必要があるか否かを判断し、必要な場合はステップS103へ戻り、次の計測位置Qに磁界計測装置20を配置して上述したステップS103〜S108を繰り返す。例えば、地中2の計測対象範囲内の任意位置Qで複数の基準信号frが受信可能となるように多数の基準位置Rを地上に配置しておけば(図10参照)、図2の流れ図により、計測対象範囲を移動しながら任意位置Qで自己の対地三次元座標を直接計測することが可能となり、地上におけるGPSと同様の測位システムを地中で実現することができる。また本発明によれば、地中の複数の計測位置Qで同時に対地三次元座標を測量することが可能である。
【0040】
こうして本発明の目的である「複数の地中位置において同時に対地三次元座標を計測できる地中位置計測方法及びシステム」を達成することができる。
【実施例1】
【0041】
図1の実施例では、磁界計測装置20の配置姿勢Sを計測する姿勢計測装置26を設け、図2のステップS104において姿勢計測装置26により磁界計測装置20の配置姿勢Sを計測し、その計測姿勢Sから各基準位置R1、R2、R3の向きθR1、θR2、θR3を検出している。図2のステップS107において向き検出手段331、332、333により各基準位置R1、R2、R3の向きθR1、θR2、θR3を検出するためには、コイル素子211、212、213の配置姿勢Sが必要である。本発明では磁界計測装置20を鉛直向き又は水平向きで配置すれば足りるが、磁気雑音に対して十分なS/N比が得られない場合や何らかの理由で姿勢がずれる場合もある。図示例の姿勢計測装置26は姿勢制御装置27を含み、位置計測装置30の姿勢制御手段37と姿勢制御装置27とによって例え十分なS/N比が得られる磁界計測装置20の向きを選択し、その磁界計測装置20の配置姿勢Sを位置計測装置30の姿勢計測手段36と姿勢計測装置26とにより計測して記憶手段31に記憶する。姿勢計測装置26及び姿勢制御装置27を設けることにより、本発明の地中位置計測システムの自動化が期待できる。
【実施例2】
【0042】
図10は、複数のシールド掘削機6を用いた地下トンネル工事に本発明を適用した実施例を示す。図示例では、地中2の掘削計画線9上の各計測位置Qで複数の基準信号frが受信可能となるように、掘削計画線9に沿って計画線9の両側に複数の基準位置R1〜R11を地上に設定し、各基準位置R1〜R11にそれぞれ信号発信装置101〜1011を設置している。本発明によれば、複数のシールド掘削機6を計画線9に沿って掘進させながらその先端部の地中位置Qの対地三次元座標を同時に測量することができ、図示例のように各シールド掘削機6を異なる向きから同一の地中位置に向けて掘進させてトンネルを接合する場合に有効に利用できる。また、地上に構造物5等がある場合でも、複数の基準信号frが到達する範囲内であれば、構造物下方の計測位置Qの測量に適用できる。従って、構造物下方における複数の地中位置の同時測量を必要とするアンダーピニング工事等への有効利用も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例の説明図である
【図2】本発明の地中位置計測方法の流れ図の一例である
【図3】識別符号列Pで変調前の周期性信号fsの一例の説明図である。
【図4】基準位置R毎の識別符号列Pの一例の説明図である。
【図5】識別符号列Pで変調後の周期性基準信号fr(搬送周波数fcによる変調前)の一例の説明図である。
【図6】コイル素子が出力する計測信号fqの一例の説明図である
【図7】計測信号fqから各基準信号frの位相を検出する方法の説明図である
【図8】各基準信号frのコイル素子相互間の位相差Δτにより計測位置Qから見た各基準位置Rの向きを検出する方法の説明図である
【図9】各基準位置Rの三次元座標と計測位置Qから見た各基準位置Rの向きとから計測位置Qの三次元座標を算出する方法の説明図である。
【図10】本発明の他の実施例の説明図である
【図11】従来の地中位置検出方法の一例の説明図である
【符号の説明】
【0044】
1…地表面 2…地中
3…回転磁界 5…構造物
6…シールド掘削機 7…水平ボーリング機
9…掘削計画線
10…信号発信装置 11…送信コイル
12…送信コイル 13…交流電流供給装置
14…周期性信号発生器 15…識別符号列発生器
16…搬送波信号発生器 17…変調器
18…変調器
20…磁界計測装置 21…受信コイル素子
22…支持体 23…復調器
26…姿勢計測装置 27…姿勢制御装置
30…位置計測装置 31…記憶手段
32…位相検知手段 33…向き検出手段
34…座標算出手段
36…姿勢計測手段 37…姿勢制御手段
39…出力装置(表示装置)
51…地下埋設配管 52…移動台車
53…車輪 54…制御装置
55、58、59、62、63、65…信号線
56…第1送信コイル 57…第2送信コイル
58、59…電力線 60…信号供給装置
60a…信号発生器 60b…拡散符号発生器
60c…スペクトル拡散変調器
60d…AM変調器
61…磁気検出装置 62…基台
63…支持板 64…変位棒
65…移動手段 66…第1受信コイル
67…第2受信コイル 70…第1信号測定器
71…第2信号測定器 74…信号表示器
74a…表示画面
fc…搬送周波数 fq…計測信号
fr…周期性基準信号 fs…周期性信号
A…交点 C…球面
F…交線 H…平面
L…交線 M…相関値
P…デジタル基準位置識別符号列
Q…計測位置
Qi…コイル相互関係(コイル取り付け位置)
R…基準位置
S…配置姿勢又は計測姿勢
θR…基準位置の向き
τ…位相 Δτ…位相差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上又は地中の対地三次元座標が既知の複数の基準位置から基準位置毎に自己相関が強く相互相関が弱いデジタル基準位置識別符号列で変調された周期性基準信号を所定搬送周波数の回転磁界に乗せて地中へ発信し、前記各回転磁界が到達する地中の計測位置に三以上の受信コイル素子群が所定相互関係で取り付けられた磁界計測装置を所定姿勢で配置して前記回転磁界により各コイル素子に誘起される信号を計測し、前記各コイル素子の計測信号と各識別符号列との相関に基づき計測位置における各基準信号の位相を検知し、前記各基準信号の位相のコイル素子相互間位相差とコイル素子群の所定相互関係及び姿勢とにより計測位置から見た各基準位置の向きを検出し、前記各基準位置の既知三次元座標と前記計測位置から見た各基準位置の向きとから計測位置の対地三次元座標を算出してなる地中位置計測方法。
【請求項2】
請求項1の計測方法において、前記三以上の受信コイル素子群を、前記磁界計測装置上の同一直線上とならない三以上の所定位置に取り付けてなる地中位置計測方法。
【請求項3】
請求項1又は2の計測方法において、前記デジタル基準位置識別符号列をnビットのPN(Pseudo Noise)符号列とし、前記周期性基準信号を周期T0の正弦波の絶対値をその半周期T0/2のビット長のPN符号列で変調したものとし、前記各コイル素子の計測信号の位相をずらしつつ当該計測信号と各PN符号列との積を当該PN符号列の周期Tにわたり積分し且つその積分値が最大となる計測信号の位相を各基準信号の位相として検知してなる地中位置計測方法。
【請求項4】
地上又は地中の対地三次元座標が既知の複数の基準位置に設置され且つ基準位置毎に自己相関が強く相互相関が弱いデジタル基準位置識別符号列で変調された周期性基準信号を所定搬送周波数の回転磁界に乗せて地中へ発信する信号発信装置、前記各回転磁界が到達する地中の計測位置に所定姿勢で配置され且つ所定相互関係で取り付けられた三以上の受信コイル素子群で前記回転磁界により誘起される信号を計測する磁界計測装置、前記基準位置毎の三次元座標及び識別符号列と前記コイル素子群の所定相互関係及び姿勢とを記憶する記憶手段、前記各コイル素子の計測信号を入力して各識別符号列との相関に基づき計測位置における各基準信号の位相を検知する位相検知手段、前記各基準信号の位相のコイル素子相互間位相差とコイル素子群の所定相互関係及び姿勢とにより計測位置から見た各基準位置の向きを検出する向き検出手段、並びに前記向き検出手段による各基準位置の向きと各基準位置の三次元座標とから計測位置の対地三次元座標を算出する座標算出手段を備えてなる地中位置計測システム。
【請求項5】
請求項4の計測システムにおいて、前記磁界計測装置の配置姿勢を計測する姿勢計測装置を設け、前記向き検出手段により姿勢計測装置の計測姿勢から各基準位置の向きを検出してなる地中位置計測システム。
【請求項6】
請求項4又は5の計測システムにおいて、前記三以上の受信コイル素子群を、前記磁界計測装置上の同一直線上とならない三以上の所定位置に取り付けてなる地中位置計測システム。
【請求項7】
請求項4から6の何れかの計測システムにおいて、前記デジタル基準位置識別符号列をnビットのPN(Pseudo Noise)符号列とし、前記周期性基準信号を周期T0の正弦波の絶対値をその半周期T0/2のビット長のPN符号列で変調したものとし、前記位相検知手段により、前記各コイル素子の計測信号の位相をずらしつつ当該計測信号と各PN符号列との積を当該PN符号列の周期Tにわたり積分し且つその積分値が最大となる計測信号の位相を各基準信号の位相として検知してなる地中位置計測システム。
【請求項8】
請求項4から7の何れかの計測システムにおいて、前記回転磁界の所定搬送周波数を地中での減衰が小さい周波数としてなる地中位置計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−145302(P2006−145302A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333794(P2004−333794)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】