説明

地図データ更新方法、地図データ更新システム、地図情報サーバ及び車載装置

【課題】車載装置が保有する地図データを更新するデータの発生確認とその入手依頼とを車外から行なえるようにし、その依頼により車載装置の地図データを自動更新する。
【解決手段】地図情報サーバ(2)より利用者の携帯端末(4)に対して予め登録された監視地域内の地図に更新データが発生した旨とその更新項目を通報する。利用者の指示を受けて携帯端末より更新項目を指定して更新地図データの送信を依頼する。依頼を受けた地図情報サーバは利用者の車載装置(3)に対して指定された更新項目の更新地図データを送信する。更新地図データを受けとった車載装置は自己の保有する地図データが使用中か否かをチェックし、使用中でない場合には直ちに、使用中であった場合には使用終了を待って地図データの更新を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置が保有する地図データの更新を地図情報センターからの更新データの配信により行なう技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の現在位置を地図上に表示したり、目的地までの最適走行経路を探索して運転者を案内したりするカーナビゲーション装置が普及してきている。このような車両の現在位置表示や経路探索、経路案内を行なうために、カーナビゲーション装置は区分分けした詳細な電子地図データを保有している。この地図データは、GPS受信機等を使用して検出した自車位置を中心とする所定範囲の地図を描画するための描画用地図データ、目的地までの最適走行経路を探索するための道路データ、各種施設の所在地を地図上に示すマークやそれら施設を紹介するための施設データ等で構成されている。
【0003】
こうした地図データは、DVD(Digital Versatile Disc)やHDD(Hard Disc Drive)等の記憶媒体、記録装置により入手される他、最近では通信回線を介して地図情報センターに設置された地図情報サーバからHDDにダウンロードする方法でも入手される。
【0004】
しかし、実際の道路網、施設等は絶えず変化しているものであり、例えば道路網は道路の新規開通、閉鎖(廃止)等により変化する。従って、一旦、入手した地図データもそのような最新の道路事情、施設事情等を反映させるために頻繁に更新を行なう必要がある。それを怠ると新規開通の近道があるにも関わらず従来通りの遠回り経路が案内されたり、閉鎖された施設が案内されたりするといった不都合を生ずる。
【0005】
このような地図データの更新は、地図データをCD(Compact Disc)やDVDに記憶させたまま利用する装置では、通常、それらの記憶媒体を交換する方法で実施される。これに対して、地図データをHDDに記憶させて利用する装置では、更新を必要とする区分の地図データを通信回線を介して地図情報センターから取得して更新する方式が採られることが多い。
【0006】
このような通信回線を利用する地図更新技術として例えば特許文献1には、カーナビゲーション装置が地図情報センターから更新地図データを定期的に受信して更新する技術が開示されている。また、特許文献2には、地図データの最新バージョン情報を所定のタイミングで地図情報センターから受けとり、ナビゲーション装置内にある地図データのバージョンと比較して新しいバージョンの地図データのみを地図情報センターから送信してもらう技術が開示されている。
【0007】
しかし、これらの地図データ更新方法では地図データの更新の際に利用者がカーナビゲーション装置からの複雑な操作を要求されたり、また更新データのダウンロードには時間がかかるため搭乗時に最新の地図データを直ぐには使用できないといった利便性面での問題がある。また、更新地図データの存在をカーナビゲーション装置でしか確認できないため速報性でも問題もある。
【特許文献1】特開平08−95488号公報
【特許文献2】特開2004−108834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その課題は更新地図データの発生の確認とその入手依頼とを車外から行なうことができ、その依頼により車載装置に更新地図データを送信させて自動的に更新を行なわせる利便性、速報性に優れた地図データ配信方法、地図データ配信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、車載装置(3)が保有する地図データの更新を地図情報サーバ(2)からの更新データの配信により行なう地図データ更新方法であって、地図情報サーバより利用者の携帯端末(4)に対して予め登録された監視地域の地図に更新データが発生した旨とその更新項目を通報する第1の段階と、利用者の指示を受けて携帯端末が更新項目を指定して更新地図データの送信を依頼する第2の段階と、依頼を受けた地図情報サーバが利用者の車載装置に対して指定された更新項目の更新地図データを送信する第3の段階と、更新地図データを受けとった車載装置が自己の保有する地図データが使用中か否かをチェックし、使用中でない場合には直ちに、使用中であった場合には使用終了を待って地図データの更新を行なう第4の段階と、を含むことを特徴とする地図データの更新方法である。
【0010】
このように更新地図データが発生した旨が携帯端末に通知されれば、利用者は車両に搭乗していなくてもそのことを知ることができ速報性が改善される。また、携帯端末から更新地図データの送信依頼を発することができるので利便性が向上する。また、地図データの使用中に更新を行なうと表示中地図との整合性がとれず利用者を混乱させるが、本方法では使用中でない時に更新を行なうのでそのような混乱を回避できる。また、使用中でない時に更新を行なっておけば、利用者は必要となった際に即座に最新の地図データを使用することができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の地図データ更新方法において、前記第4の段階における地図データが使用中の場合であっても、地図データの更新対象部分が使用中でない場合には直ちに更新を行なうことを特徴とする。
【0012】
車両が保有する地図データは多数の区分地図データに分けて保管されており、通常は区分地図データ単位で読み出して使用される。従って、地図データが使用中であったとしても、使用中の地図データはその中の一部の区分地図データでしかない場合が多い。車載装置は受けとった更新地図データからどの部分の地図データが更新対象であるかが判断できるので、その部分の地図データが使用中であるか否かを判断し使用中でなければ更新を実行しても差し支えない。本発明ではこのように地図データが使用中であっても影響がない対象部分については直ちに更新を行なうので、更新された最新の地図データを速やかに利用できる利点がある。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、車載装置が保有する地図データの更新を行なう地図データ更新システムであって、地図情報サーバ(2)と、これに通信ネットワークを介して接続した車載装置(3)と携帯端末(4)とを備えて構成され、前記地図情報サーバは、更新地図データを収納した更新地図データベースと、利用者が登録した監視地域と利用者情報とを収納した利用者データベースと、前記監視地域の地図に更新データが発生したことを検出して利用者の携帯端末に更新地図データが発生した旨とその更新項目を通報する更新案内通報手段と、利用者の携帯端末からの更新項目を指定した更新地図データの送信依頼を受けて利用者の車載装置に対して要求された更新項目の更新地図データを送信する更新データ送信手段と、を備え、前記携帯端末は、前記地図情報サーバから通報を受けた内容を利用者に知らせる利用者通報手段と、利用者による更新項目を指定した更新地図データの入手要求を受けて、該要求内容を前記地図情報サーバに通報する更新データ要求通報手段と、を備え、前記車載装置は、前記地図情報サーバから送信された更新地図データを受けとる更新データ受信手段と、自己が保有する地図データを使用中か否かをチェックし、使用中でない場合には直ちに、使用中であった場合には使用終了を待って、更新データ受信手段が受けとった更新地図データにより地図データの更新を行なう地図データ更新手段と、を備えることを特徴とする地図データ更新システムである。
【0014】
このような構成の地図データの更新システムは、請求項1に記載の発明と同様の効果を奏する。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の地図データ更新システムにおいて、前記車載装置(4)の地図データ更新手段は、保有する地図データが使用中の場合であっても、受けとった更新地図データによる更新対象部分が使用中でない場合には直ちに更新を行なうことを特徴とする。
【0016】
このような構成の地図データの更新システムは、請求項2に記載の発明と同様の効果を奏する。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、車載装置(3)に対して更新地図データの配信を行なう地図情報サーバ(2)であって、更新地図データを収納した更新地図データベースと、利用者が登録した監視地域と利用者情報とを収納した利用者データベースと、前記監視地域の地図に更新データが発生したことを検出し通信ネットワークを介して接続した利用者の携帯端末(4)に更新地図データが発生した旨とその更新項目を通報する更新案内通報手段と、利用者の携帯端末からの更新項目を指定した更新地図データの送信依頼を受けて利用者の車載装置(3)に対して要求された更新項目の更新地図データを送信する更新データ送信手段と、を備えることを特徴とする地図情報サーバである。
【0018】
このように更新地図データが発生した旨が携帯端末に通知されれば、利用者は車両に搭乗していなくてもそのことを知ることができ速報性が改善される。また、携帯端末から更新地図データの送信依頼を発することができるので利用者の利便性が向上する効果がある。
【0019】
また、請求項6に記載の発明は、地図データを備えた車載装置(3)であって、通信ネットワークを介して接続した地図情報サーバ(2)から送信された更新地図データを受けとる更新データ受信手段と、自己が保有する地図データが使用中か否かをチェックして使用中でない場合には直ちに、使用中であった場合には使用終了を待って更新データ受信手段が受けとった更新地図データにより地図データの更新を行なう地図データ更新手段と、を備えることを特徴とする車載装置である。
【0020】
地図データが使用中である時に更新を行なうと表示中地図との整合性がとれず、利用者を混乱させる事態を生ずる。使用中でない時に更新を行なうことによりそのような事態を回避できる。また、使用中でない時に更新を行なっておけば、利用者は必要となった際に即座に最新の地図データを使用することができる。
【0021】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車載装置において、前記更新データ受信手段は、更新地図データを受けとった際に前記地図データ更新手段が電源供給を受けていないために動作できない状態にあった場合には、該地図データ更新手段への電源供給を行なって動作可能状態にした後に受けとった更新地図データを渡すことを特徴とする。
【0022】
地図データ更新手段が電源供給を受けていないため動作できない状態にある場合には、地図データの更新を行なうことができない。このような場合に電源供給を行なってから更新地図データを渡し更新を実行させておけば、利用者は車両に搭載した直後から更新された最新の地図データを利用できる。
【0023】
また、請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載の車載装置において、前記地図データ更新手段は保有する地図データが使用中の場合であっても、受けとった更新地図データによる更新対象部分が使用中でない場合には直ちに更新を行なうことを特徴とする。
【0024】
更新対象部分の地図データが使用されていなければ、更新を実行しても差し支えない。従って、本発明のように車載装置を構成することで、利用者にとっては更新された最新の地図データを速やかに利用可能となる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る地図データ更新システムの一実施形態を図面を参照して詳しく説明する。その中で併せて地図データ更新方法についても説明する。図1は、本実施形態の地図データ更新システムの全体構成をブロック図で示したものである。地図データ更新システム1は、地図情報サーバ2、車載装置3、携帯端末4とを備えて構成される。車載装置3と携帯端末4は通常、複数設けられるが図1では例として一式のみを示している。
【0026】
地図情報サーバ2、車載装置3、携帯端末4は汎用の通信ネットワーク5を介して情報交換可能に接続されている。通信ネットワーク5としては、例えばインターネット、携帯電話網等を使用することができる。
【0027】
地図情報サーバ2は、車載装置3に対してそれらが保有する地図データを更新するための更新地図データを配信することを目的とするコンピュータ装置である。地図情報サーバ2は、コンピュータ本体21、磁気ディスク記憶装置(以下、HDDという。)22を備える。コンピュータ本体21は図示しない入力装置、出力装置、通信装置をも備え、通信装置を介して通信ネットワーク5に接続されている。
【0028】
磁気ディスク記憶装置22には、更新地図データベース、利用者データベース、それにコンピュータ本体21を動作させるプログラムが格納されている。更新地図データベースは更新地図データを格納しておくデータベースで、新たな更新地図データが発生するとそのデータがそれを特定する情報と共に図示しない入力装置からコンピュータ本体21を経由して追加格納される。
【0029】
利用者データベースは、地図情報サーバ2より更新地図データの配信を受ける利用者の情報を格納しておくデータベースである。格納される利用者情報には、利用者のID(インデックス)、車載装置3のID、車載装置3の通信アドレス、携帯端末4の通信アドレス(例えば、メールアドレス)が含まれる他に利用者により指定された監視地域が含まれる。この監視地域とは、その地域を含む地図に更新データが発生した場合にはその旨の通知を希望するとの趣旨で利用者が予め登録した地域をいう。
【0030】
利用者は、監視地域を地域名、道路名、道路種別等で登録する。地図データは、多数の小区域の区分地図データに分割して記憶され、区分地図データ単位で利用や更新が行なわれる。従って地図情報サーバ2内では、利用者が登録した地域、道路等がどの区分地図データに属するかを予め判断して、その区分地図データを特定するIDを利用者毎に利用者データベースに格納しておく。
【0031】
携帯端末4は、制御回路41、通信装置42、操作スイッチ群43、表示装置44、音声出力装置45を備えて構成される。通信装置42は、通信ネットワーク5を介して地図情報サーバと情報交換を行なうためのものである。携帯端末4の具体例としては、例えば携帯電話がある。
【0032】
車載装置3は、常時、地図データを保有して使用する装置である。本実施形態では、車載装置3の例としてカーナビゲーション装置を取りあげて説明する。車載装置3は、主制御装置6と補助制御装置7の2つの制御装置により構成される。主制御装置6は、カーナビゲーション機能を備える部分で、制御回路61、GPS受信機62、操作スイッチ群63、表示装置64、音声出力装置65、HDD39、バッテリー66を備えて構成される。
【0033】
GPS受信機62は自車の位置を検出するために取り付けられているもので、複数のGPS用人工衛星からの信号を受信して自車の現在位置を算出し制御回路61に知らせる。操作スイッチ群63は、制御回路61にコマンドやデータを入力のためのもので、例えばカラー液晶ディスプレイ上に形成されたタッチスイッチ、リモコンスイッチ、音声入力装置等で構成される。表示装置64は、道路地図、車両の現在位置、地図情報サーバ2より受けとった更新案内等を表示するためのもので、例えばカラー液晶ディスプレイで構成される。音声出力装置65は、制御回路61からの出力情報を人工音声に変えて利用者に伝えるために使用される。
【0034】
制御回路61は、主制御装置6の動作全般を制御する機能を有するものでマイクロコンピュータを主体に構成されている。内部にはCPU、RAM、ROM、それらを接続するバス、I/Oインターフェース等を備える。HDD39内には、地図データを収納する地図データベース、カーナビゲーション機能を発揮させるためのマップマッチング処理、経路探索、経路案内などを行なうプログラム、及び後述する地図データ更新のためのプログラムが格納されている。車載装置3としてカーナビゲーション装置を取りあげているので、主制御装置6にはこの他に車速センサ、車体方位センサ、距離センサ等が必要により取り付けられる。
【0035】
補助制御装置7は、通信装置72と補助制御回路71とを備える。補助制御装置7は、制御回路61と地図情報サーバ2との間の情報交換を仲介する。補助制御回路71は、通信装置72と制御回路61との間で情報交換を仲介すると共に、後述するように地図データ更新に際して補助的な役割を果たす。
【0036】
バッテリー66は車載装置3内の各回路に直流電源を供給するもので、補助制御装置7内の回路には常時、電源が供給される。主制御装置6内の回路にはスイッチSW1を介して電源が供給される。スイッチSW1は補助制御回路71により開閉が制御される。補助制御回路71には、主制御装置6の動作開始/停止を指令するスタート信号STが外部より入力されている。
【0037】
次に、このような構成の下で車載装置3が保有する地図データの更新を行なう制御の流れをフロー図を参照しながら説明する。図2、図3は、地図情報サーバ2のコンピュータ本体21、携帯端末4の制御回路41、車載装置3の制御回路61と補助制御回路71が行なう制御フロー、及びそれらの相互関係を示したものである。
【0038】
更新処理は、地図情報サーバ2のコンピュータ本体21が更新地図データが発生したことを検知することから始まる(ステップS1)。先に説明したように地図情報サーバ2は更新地図データベースを備えており、新たな更新地図データはそれを特定する情報と共に読み込まれて更新地図データベースに格納される。新たな更新地図データが格納されたことから更新地図データの発生を検知できるので、それを検出したならばステップS2に移る。
【0039】
ステップS2では、発生した更新地図データについての更新案内を通知する利用者を利用者データベースから抽出する。地図情報サーバ2が備える利用者データベースには、先に説明したように利用者が登録した監視地域が記憶され、その監視地域が属する区分地図データのIDが利用者毎に記憶されている。従って、発生した更新地図データに含まれる1ないし複数の区分地図データのIDを検索キーワードとして、そのIDが監視地域として登録されている利用者を検索することで更新案内を送るべき利用者を抽出することができる。
【0040】
利用者データベースには各利用者の携帯端末4の通信用アドレス(電子メールアドレス、携帯電話番号等)が記憶されているので、その通信用アドレス宛に更新案内を送信する。更新案内には、登録された監視地域内の地図に更新データが発生した旨と、更新地域名、更新道路名、更新区分地図データ名、更新情報量、更新費用等を含める。
【0041】
携帯端末4側では、送られてきた更新案内を受けとり(ステップT1)、表示装置44に表示して知らせる(ステップT2)。この際、音声出力装置45を併用してもよい。
利用者は表示された更新案内を見て、更新された地図データを取得するか否かを判断する(ステップT3)。ステップT3の枠外の指差し印は利用者の判断、操作であることを意味する。
【0042】
取得を希望しない場合には、操作スイッチ群43を操作して取得しない旨を入力する。この場合には、更新地図データを入手しない旨が地図情報サーバ2に回答として送信される(ステップT4)。取得を希望する場合には、取得する地図データの区分地図データID、地域名、道路名等による更新項目と更新地図データの送信を依頼する旨を操作スイッチ群43を操作して入力する。この場合には、携帯端末4は入力された更新項目と更新地図データの送信を依頼する旨の内容を地図情報サーバ2に回答として送信する(ステップT5)。
【0043】
地図情報サーバ2側では、携帯端末4から送られた送信情報を受けとり(ステップS4)、更新地図データの送信を要求されているか否かを判断する(ステップS5)。要求されていなければ何もせずにステップS1に戻る。要求されている場合にはステップS6に移り、要求された更新項目の更新地図データを更新地図データベースから抽出する。続く図3のステップS7では、抽出した更新地図データを利用者の車載装置3に対して送信する。利用者の車載装置3の通信アドレスは利用者データベースから読み出す。
【0044】
利用者の車載装置3の補助制御装置7は、常時、電源が供給されているので送信された更新地図データを受信して記憶する(ステップA1)。次に補助制御装置7は、主制御装置6に電源が供給されているか否か、即ち、主制御装置6が動作状態にあるか否かをチェックする(ステップA2)。主制御装置6の電源のON/OFFは、補助制御装置7に外部から入力されているスタート信号STに従って補助制御装置7がスイッチSW1をON/OFFして制御している。従って、補助制御装置7は主制御装置6の電源のON/OFF状態を内部で把握しているので、更新地図データの受信を終えた時に主制御装置6の電源がON状態にあるか否かを判定できる。
【0045】
ON状態でなければステップA3にてスイッチSW1をONして電源を供給し、ステップA4に移る。既にON状態となっている場合には、直ちにステップA4移る。ステップA4では、ステップA1で受信した更新地図データを主制御装置6に渡す。
車載装置3の主制御装置6は、更新地図データを受けとって内部のメモリに記憶する(ステップB1)。続くステップB2においては、主制御装置6はHDD39内の地図データベースに格納されている地図データが使用中であるか否かをチェックする。
【0046】
ステップA3において主制御装置6の電源がONされた直後であれば、主制御装置6内の他のプログラムはまだ起動されていない。従って、その場合には地図データは使用されていないと判定できる。また、ステップA2において主制御装置6の電源が既にONと判定された場合、即ち、主制御装置6が動作状態にあると判定された場合においても、地図データが使用されている場合と使用されていない場合とがある。主制御装置6内では、多数のプログラムがマルチタスクで実行される。そして、各種プログラムの中には地図データを使用するプログラムと使用しないプログラムとが存在する。例えば、ナビゲーションと関係のない技術計算プログラム、会計処理のプログラム等が地図データを使用することは通常はない。従って、地図データを使用するプログラムのIDを予め登録して記憶しておき、それらのプログラムが起動状態にあるか否かをチェックすれば、地図データが使用中であるか否かを判定することができる。
【0047】
地図データを使用するプログラムが起動されている場合には地図データが使用されている可能性があるので、その場合には再びステップB2に戻って同じチェックを繰り返し、使用が終了するまで待つ。使用中の可能性がなくなったならばステップB3に移り、受けとった更新地図データでもって地図データベースに格納されている地図データの更新を実行する。
【0048】
なお、ステップB2における地図データが使用中か否かの判定は、前述した説明では地図データを使用する可能性のあるプログラムが起動中であるか否かにより行なった。しかし、地図データを使用する可能性のあるプログラムが起動中であっても、受けとった更新地図データによる更新対象部分の地図データは使用中でない場合があり得る。
【0049】
例えば、ナビゲーションの経路案内機能により大阪から東京までの経路案内が地図データを参照して実行されていたとしても、その場合には九州や北海道の地図が参照されることは考えられない。使用される地図データは、決定している案内経路を含む区分地図データとそれに隣接する区分地図データのみと考えられる。このような場合には、使用されなる可能性のない地域の地図データについてはそのプログラムが起動中であったとしても、地図データの更新を実行しても差し支えない。従って、このような場合も地図データが使用中でないとステップB2において判定するようにしてもよい。そのようにした場合、ステップB2における「地図データ」は、地図データベースに記憶されている全体地図データを指すのではなく、更新対象である部分の地図データを意味することになる。
【0050】
ステップB2における判定をこのように変えるには、地図データを使用するプログラムが起動されている場合にそのプログラムにより使用中の区分地図データ、使用される可能性の高い区分地図データ、使用する可能性の殆どない区分地図データを区別して知る必要がある。そのためには、例えばそのプログラムがその区別を地図データベースに書き込むようにすればよい。そのようにしておけば、地図データベースに書き込まれたその区別をチェックすることにより、更新対象地域の区分地図データが使用中か否かを判定することができる。使用する可能性のない殆どない区分地図データとして書き込まれていれば、その区分地図データはプログラムが起動中であっても更新することができる。
【0051】
図4は、図3に示したフロー部分の中の地図情報サーバ2と補助制御装置7との間の更新地図データの受け渡し方の変形実施形態を示したものである。図3のフローではステップS7とステップA1の部分で地図情報サーバ2から補助制御装置7へ更新地図データを一括して送信していた。これに対して図4のフローにおけるステップS7では、車載装置3に送る更新地図データがある旨のみを補助制御装置7に知らせる。
【0052】
補助制御装置7側ではその情報を受けとり(ステップA1)、ステップA2、A3により主制御装置6を動作中にした後、地図情報サーバ2に対して更新地図データの送信を依頼する(ステップA3a)。地図情報サーバ2はその依頼を受けて(ステップS8)から更新地図データを補助制御装置7に送信する(ステップS9)。補助制御装置7はそれを受けとり(ステップA3b)、主制御装置6に送信する(ステップA4)。このように補助制御装置7が受けとるデータを直ちに主制御装置6に送信できる状態になってから地図情報サーバ2より更新地図データを受けとれようにすれば、受けとったデータから順次主制御装置6に送ることができる。従って、このようにすれば更新地図データのデータ量が大きい場合でも補助制御回路71のバッファメモリの容量は少なくて済む利点がある。
【0053】
このように本実施形態の地図データ更新システム1では、地図情報サーバ2より更新地図データが発生した旨を利用者の携帯端末4に通報し、携帯端末4を使用した依頼を受けて利用者の車載装置3に更新地図データの送信を行なう。従って、利用者は車両に搭乗していなくても更新地図データの発生を直ちに知ることができ速報性が向上する。また、携帯端末4から更新地図データの送信依頼を発することができるので利便性も向上する。また、更新地図データが車載装置3に受信されると、地図データが使用中であるか否かがチェックされて使用中でない場合には直ぐさま更新が実行される。従って、利用者は車両に搭乗していなかった場合には搭乗した直後から、搭乗していた場合には更新終了時点から直ぐに更新された最新の地図データを使用することができる効果を奏する。
【0054】
なお、特許請求の範囲に記載した次の手段は、上記の実施形態では次のような構成要素により構成されている。更新案内通報手段は、地図情報サーバ2のコンピュータ本体21と利用者データベース、及び更新案内を作成して送信するプログラムにより構成される。更新データ送信手段は、地図情報サーバ2のコンピュータ本体21と更新地図データベース、利用者データベース、及び更新地図データを送信するプログラムにより構成される。利用者通報手段は、携帯端末4の制御回路41、通信装置42、表示装置44、音声出力装置45、及びそれらを制御して更新案内を受信して利用者に知らせるプログラムにより構成される。更新データ要求通報手段は、携帯端末4の制御回路41、通信装置42、操作スイッチ群43、及びそれらを制御して利用者が指示した更新要求を地図情報サーバ2に伝えるプログラムにより構成される。更新データ受信手段は、車載装置3の補助制御装置7により構成される。地図データ更新手段は、車載装置3の制御回路61、HDD39に格納された地図データベース、及び地図更新のためのプログラムにより構成される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る地図データ更新システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】車載装置の保有する地図データの更新を行なう制御フロー図である。
【図3】図2の制御フロー図の続きフローである。
【図4】図3の制御フローの変形実施形態である。
【符号の説明】
【0056】
図面中、1は地図データ更新システム、2は地図情報サーバ、3は車載装置、4は携帯端末、5は通信ネットワーク、6は主制御装置、7は補助制御装置、21はコンピュータ本体を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載装置(3)が保有する地図データの更新を地図情報サーバ(2)からの更新データの配信により行なう地図データ更新方法であって、
地図情報サーバより利用者の携帯端末(4)に対して予め登録された監視地域の地図に更新データが発生した旨とその更新項目を通報する第1の段階と、
利用者の指示を受けて携帯端末が更新項目を指定して更新地図データの送信を依頼する第2の段階と、
依頼を受けた地図情報サーバが利用者の車載装置に対して指定された更新項目の更新地図データを送信する第3の段階と、
更新地図データを受けとった車載装置が自己の保有する地図データが使用中か否かをチェックし、使用中でない場合には直ちに、使用中であった場合には使用終了を待って地図データの更新を行なう第4の段階と、を含むことを特徴とする地図データ更新方法。
【請求項2】
請求項1に記載の地図データ更新方法において、前記第4の段階における地図データが使用中の場合であっても、地図データの更新対象部分が使用中でない場合には直ちに更新を行なうことを特徴とする地図データ更新方法。
【請求項3】
車載装置が保有する地図データの更新を行なう地図データ更新システムであって、
地図情報サーバ(2)と、これに通信ネットワークを介して接続した車載装置(3)と携帯端末(4)とを備えて構成され、
前記地図情報サーバは、更新地図データを収納した更新地図データベースと、利用者が登録した監視地域と利用者情報とを収納した利用者データベースと、前記監視地域の地図に更新データが発生したことを検出して利用者の携帯端末に更新地図データが発生した旨とその更新項目を通報する更新案内通報手段と、利用者の携帯端末からの更新項目を指定した更新地図データの送信依頼を受けて利用者の車載装置に対して要求された更新項目の更新地図データを送信する更新データ送信手段と、を備え、
前記携帯端末は、前記地図情報サーバから通報を受けた内容を利用者に知らせる利用者通報手段と、利用者による更新項目を指定した更新地図データの入手要求を受けて、該要求内容を前記地図情報サーバに通報する更新データ要求通報手段と、を備え、
前記車載装置は、前記地図情報サーバから送信された更新地図データを受けとる更新データ受信手段と、自己が保有する地図データが使用中か否かをチェックし、使用中でない場合には直ちに、使用中であった場合には使用終了を待って、更新データ受信手段が受けとった更新地図データにより地図データの更新を行なう地図データ更新手段と、を備えることを特徴とする地図データ更新システム。
【請求項4】
請求項3に記載の地図データ更新システムにおいて、前記車載装置(4)の地図データ更新手段は、保有する地図データが使用中の場合であっても、受けとった更新地図データによる更新対象部分が使用中でない場合には直ちに更新を行なうことを特徴とする地図データ更新システム。
【請求項5】
車載装置(3)に対して更新地図データの配信を行なう地図情報サーバ(2)であって、更新地図データを収納した更新地図データベースと、利用者が登録した監視地域と利用者情報とを収納した利用者データベースと、前記監視地域の地図に更新データが発生したことを検出し通信ネットワークを介して接続した利用者の携帯端末(4)に更新地図データが発生した旨とその更新項目を通報する更新案内通報手段と、利用者の携帯端末からの更新項目を指定した更新地図データの送信依頼を受けて利用者の車載装置(3)に対して要求された更新項目の更新地図データを送信する更新データ送信手段と、を備えることを特徴とする地図情報サーバ。
【請求項6】
地図データを備えた車載装置(3)であって、通信ネットワークを介して接続した地図情報サーバ(2)から送信された更新地図データを受けとる更新データ受信手段と、自己が保有する地図データが使用中か否かをチェックして使用中でない場合には直ちに、使用中であった場合には使用終了を待って、更新データ受信手段が受けとった更新地図データにより地図データの更新を行なう地図データ更新手段と、を備えることを特徴とする車載装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車載装置において、前記更新データ受信手段は、更新地図データを受けとった際に前記地図データ更新手段が電源供給を受けていないために動作できない状態にあった場合には、該地図データ更新手段への電源供給を行なって動作可能状態にした後に受けとった更新地図データを渡すことを特徴とする車載装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の車載装置において、前記地図データ更新手段は保有する地図データが使用中の場合であっても、受けとった更新地図データによる更新対象部分が使用中でない場合には直ちに更新を行なうことを特徴とする車載装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−126457(P2006−126457A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314004(P2004−314004)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】