説明

地図画像生成装置および地図画像生成方法

【課題】演算の負荷の増大を抑制しつつ、広範囲についての垂直状況表示を可能とすることができる地図画像生成装置および地図画像生成方法を提供する。
【解決手段】地図画像生成装置1は、地形高度を領域ごとに示す標高データベースを格納する格納手段11と、自機位置を取得する位置取得手段12と、位置取得手段12により取得された自機位置からの距離に応じた分解能のデータを格納手段11の標高データベースから取得し、飛行予測範囲の地形高度を生成する生成手段13と、生成手段13により生成された地形高度を地図画像としてモニタ2に表示する表示手段14とを備える。横軸に自機からの距離を、縦軸に地形高度を、それぞれ配したグラフィック表示により、飛行予測範囲の地形高度を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用の垂直状況表示のための地図画像生成装置および地図画像生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
VSD(Vertical Situation Display;垂直状況表示装置)は自機位置を基点として、飛行航路上の地形の断面を表示する装置であり、とくに、低高度の飛行時に安全性を確認するために使用される。地形の計算にはメモリに格納されている標高データベースを使用する。標高データベースは地域をメッシュ状に分割した各領域の標高値の集合である。例えば、メッシュ距離として25m〜250m程度が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−181059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飛行航路の範囲は自機を基点として、ある角度を持った扇形の範囲となるので、VSDに表示すべき地形高度はこの扇形の範囲についての標高値に基づいてリアルタイムに算出される。この場合、自機から距離Lの点の地形高度として、この扇型の範囲において自機から距離Lだけ離れた円弧上にある領域の標高値のうちの最大値が選択される。
【0005】
しかし、地形高度の表示範囲を拡大するために扇形の角度(中心角度)を大きくとると、演算の対象となる標高値のデータ数が増加して演算負荷を増大させる。また、自機からの距離が大きくなるほど円弧が長くなって標高値の候補数が増加するため、表示範囲の距離の拡大は演算負荷を急激に増大させる。このように、地形高度の表示範囲を拡大させることは、演算負荷の増大を招くという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、演算の負荷の増大を抑制しつつ、広範囲の垂直状況表示を可能とすることができる地図画像生成装置および地図画像生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の地図画像生成装置は、航空機用の垂直状況表示のための地図画像生成装置において、地形高度を小面積の領域ごとに示す高分解能データ、および前記地形高度をより大面積の領域ごとに示す低分解能データを、それぞれ格納する格納手段と、自機位置を取得する位置取得手段と、前記位置取得手段により取得された前記自機位置の近くの領域については前記格納手段に格納された前記高分解能データに基づき、前記自機位置からより離れた領域については前記格納手段に格納された前記低分解能データに基づき、それぞれ飛行予測範囲の地形高度を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された地形高度を地図画像として表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
この地図画像生成装置によれば、自機位置の近くの領域については高分解能データに基づき、自機位置からより離れた領域については低分解能データに基づき、それぞれ飛行予測範囲の地形高度を生成するので、地形高度のための演算の負荷の増大を抑制しつつ、広範囲についての垂直状況表示を可能とすることができる。
【0008】
前記飛行予測範囲は、前記自機位置を起点として前記自機位置から離れるに従って幅が拡大する形状とされていてもよい。
【0009】
前記高分解能データおよび前記低分解能データは、対応する前記領域内における最大高度を示してもよい。
【0010】
前記表示手段は、前記地形高度と、前記自機位置からの距離との関係をグラフィック表示してもよい。
【0011】
前記生成手段は、前記地形高度として、当該距離に対応する前記領域の地形高度のうち、最大高度を用いてもよい。
【0012】
本発明の地図画像生成方法は、航空機用の垂直状況表示のための地図画像生成方法において、地形高度を小面積の領域ごとに示す高分解能データ、および前記地形高度をより大面積の領域ごとに示す低分解能データを、それぞれ格納するステップと、自機位置を取得するステップと、前記位置を取得するステップにより取得された前記自機位置の近くの領域については前記格納するステップにより格納された前記高分解能データに基づき、前記自機位置からより離れた領域については前記格納するステップにより格納された前記低分解能データに基づき、それぞれ飛行予測範囲の地形高度を生成するステップと、前記生成するステップにより生成された地形高度を地図画像として表示するステップと、を備えることを特徴とする。
この地図画像生成方法によれば、自機位置の近くの領域については高分解能データに基づき、自機位置からより離れた領域については低分解能データに基づき、それぞれ飛行予測範囲の地形高度を生成するので、地形高度のための演算の負荷の増大を抑制しつつ、広範囲についての垂直状況表示を可能とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の地図画像生成装置によれば、自機位置の近くの領域については高分解能データに基づき、自機位置からより離れた領域については低分解能データに基づき、それぞれ飛行予測範囲の地形高度を生成するので、地形高度のための演算の負荷の増大を抑制しつつ、広範囲についての垂直状況表示を可能とすることができる。
【0014】
本発明の地図画像生成方法によれば、自機位置の近くの領域については高分解能データに基づき、自機位置からより離れた領域については低分解能データに基づき、それぞれ飛行予測範囲の地形高度を生成するので、地形高度のための演算の負荷の増大を抑制しつつ、広範囲についての垂直状況表示を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の地図画像生成装置を示す図であり、(a)は、本実施形態の地図画像生成装置の構成を示すブロック図、(b)は、表示手段によるモニタの表示画面例を示す図。
【図2】格納手段にあらかじめ格納された標高データベースの構造を示す図であり、(a)は基本となる標高データベースの構造を示す図、(b)は、より分解能の低い標高データベースの構造を示す図、(c)は、さらに分解能の低い標高データベースの構造を示す図。
【図3】飛行予測範囲の地形高度を生成する際に生成手段により選択されるデータを示す図。
【図4】自機の進行方向についての自機から当該地点までのベクトル長を基準として標高値のデータベースを選択する例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による地図画像生成装置の一実施形態について説明する。
【0017】
図1(a)は、本実施形態の地図画像生成装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
図1(a)に示すように、本実施形態の地図画像生成装置1は、地形高度を領域ごとに示す標高データベースを格納する格納手段11と、GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)などにより自機位置を取得する位置取得手段12と、位置取得手段12により取得された自機位置からの距離に応じた分解能のデータを格納手段11の標高データベースから取得し、飛行予測範囲の地形高度を生成する生成手段13と、生成手段13により生成された地形高度を地図画像としてモニタ2に表示する表示手段14とを備える。
【0019】
図1(b)は、表示手段14によるモニタ2の表示画面例を示す図である。
【0020】
図1(b)の例では、横軸に自機からの距離を、縦軸に地形高度を、それぞれ配したグラフィック表示により、飛行予測範囲の地形高度を示している。
【0021】
図2は、格納手段11にあらかじめ格納された標高データベースの構造を示している。
【0022】
図2(a)は基本となる標高データベースの構造を示している。この標高データベースでは、メッシュ間隔Kの正方形領域について、それぞれの中心座標(x、y)=(n,m)の標高値An,m(例えば、当該領域における最大標高値)が格納されている。
【0023】
図2(b)は、より分解能の低い標高データベースの構造を示している。図2(b)では、メッシュ間隔2Kの正方形領域について、標高値Bn,mが格納されている。標高値Bn,mは、
【0024】
標高値Bn,m=Maximum(An,m,An+1,m,An,m+1,An+1,m+1
により定められる。ただし、Maximumは最大値を選択する関数とする。したがって、メッシュ間隔Kの隣り合った4つの正方形領域の中から最大の標高値が選択される。
【0025】
図2(c)は、さらに分解能の低い標高データベースの構造を示している。図2(c)では、メッシュ間隔4Kの正方形領域について、標高値Cn,mが格納されている。標高値Cn,mは、
【0026】
標高値Cn,m=Maximum(Bn,m,Bn+1,m,Bn,m+1,Bn+1,m+1
により定められる。したがって、メッシュ間隔2Kの隣り合った4つの正方形領域の中から最大の標高値が選択される。
【0027】
図3は、飛行予測範囲の地形高度を生成する際に生成手段13により選択されるデータを示す図である。図3において、斜線を付した領域が選択されたデータに対応している。また、説明の便宜のため、標高値の演算対象となる各領域を実際のデータよりも荒いメッシュとして描画している。
【0028】
生成手段13は、位置取得手段12により取得された自機位置3からの距離が短い領域から順に、標高値を得る演算を実行する。ここでは、各距離について、飛行予測範囲として設定された扇形の範囲31にある正方形領域の標高値のうちの最大値を、当該距離についての地形高度とする。すなわち、自機からの距離を半径とする扇形の範囲31内の円弧にかかる正方形領域の中で最大の標高値を示す領域の、当該標高値がその距離における地形高度となる。
【0029】
図3に示すように、生成手段13は、自機位置3から近い領域についてはメッシュ距離Kの標高値An,m(図2(a))を参照して地形高度を生成する。次に、自機位置3からより離れた領域についてはメッシュ距離2Kの標高値Bn,m(図2(b))を参照して地形高度を生成する。次に、さらに離れた領域についてはメッシュ距離4Kの標高値Cn,m(図2(c))を参照して地形高度を生成する。以上の手順を繰り返すことにより、モニタ2に、図1(b)に示すようなグラフがリアルタイムに表示される。
【0030】
このように自機からの距離が遠くなる程、メッシュ距離が大きくなり面積当たりの正方形領域数が減少するため、自機から離れた領域における地形高度の生成に必要な演算の負荷が軽減される。これにより、生成手段13を構成するCPU資源を有効に利用することが可能となる。すべての地形高度の演算を同一の高分解能の標高データベース(図2(a))に基づいて行う場合と比較して、同一演算量でより広範囲での地形高度の生成が可能となる。例えば、より広角での飛行航路について、あるいは、自機からより離れた領域までの地形高度を得ることが可能となる。
【0031】
なお、自機から離れた領域における地形高度の表示分解能は、自機の近傍に比べて低下するが、実用上問題を生じさせない。
【0032】
また、標高値Bn,mおよび標高値Cn,mのデータ容量は、それぞれ標高値An,mの1/4および1/16で済むため、格納手段11に要求されるメモリ容量の増大に対する影響は小さい。
【0033】
上記実施形態では、3段階の分解能での標高値のデータベースを用意しているが、分解能の数は任意に選択できる。また、分解能の倍率は2のn乗である必要はなく、任意の実数とすることができる。また、表示分解能や地図の縮尺などに応じて、標高値の分解能(メッシュ距離)を任意の値に定めることができる。
【0034】
また、上記実施形態では、標高値のデータベース(図2(a)〜図2(c))を選択する際の基準となる自機から地形高度を求める地点までの距離を、自機から当該地点までの直線距離としているが、当該基準となる距離を、自機の進行方向についての自機から当該地点までのベクトル長としてもよい。図4は、後者の方法で標高値のデータベース(図2(a)〜図2(c))を選択する例を示す図である。図4において、斜線を付した領域が選択されたデータに対応している。また、説明の便宜のため、標高値の演算対象となる各領域を実際のデータよりも荒いメッシュとして描画している。この場合、各距離について、飛行予測範囲として設定された扇形の範囲31にある正方形領域の標高値のうちの最大値を、当該距離についての地形高度とする。すなわち、扇形の範囲31内で、上記ベクトル長に対応する直線(例えば、図4における点線32)にかかる正方形領域の中で最大の標高値を示す領域の、当該標高値がその距離における地形高度となる。
【0035】
以上説明したように、本発明の地図画像生成装置によれば、自機位置の近くの領域については高分解能データに基づき、自機位置からより離れた領域については低分解能データに基づき、それぞれ飛行予測範囲の地形高度を生成するので、地形高度のための演算の負荷の増大を抑制しつつ、広範囲についての垂直状況表示を可能とすることができる。
【0036】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、航空機用の垂直状況表示のための地図画像生成装置および地図画像生成方法に対し、広く適用することができる。実機への適用に限られず、例えば、航空機シミュレータやゲーム機、ゲームソフトへの適用も可能である。
【符号の説明】
【0037】
11 格納手段
12 位置取得手段
13 生成手段
14 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用の垂直状況表示のための地図画像生成装置において、
地形高度を小面積の領域ごとに示す高分解能データ、および前記地形高度をより大面積の領域ごとに示す低分解能データを、それぞれ格納する格納手段と、
自機位置を取得する位置取得手段と、
前記位置取得手段により取得された前記自機位置の近くの領域については前記格納手段に格納された前記高分解能データに基づき、前記自機位置からより離れた領域については前記格納手段に格納された前記低分解能データに基づき、それぞれ飛行予測範囲の地形高度を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された地形高度を地図画像として表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする地図画像生成装置。
【請求項2】
前記飛行予測範囲は、前記自機位置を起点として前記自機位置から離れるに従って幅が拡大する形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の地図画像生成装置。
【請求項3】
前記高分解能データおよび前記低分解能データは、対応する前記領域内における最大高度を示すことを特徴とする請求項1または2に記載の地図画像形成装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記地形高度と、前記自機位置からの距離との関係をグラフィック表示することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の地図画像生成装置。
【請求項5】
前記生成手段は、前記地形高度として、当該距離に対応する前記領域の地形高度のうち、最大高度を用いることを特徴とする請求項4に記載の地図画像生成装置。
【請求項6】
航空機用の垂直状況表示のための地図画像生成方法において、
地形高度を小面積の領域ごとに示す高分解能データ、および前記地形高度をより大面積の領域ごとに示す低分解能データを、それぞれ格納するステップと、
自機位置を取得するステップと、
前記位置を取得するステップにより取得された前記自機位置の近くの領域については前記格納するステップにより格納された前記高分解能データに基づき、前記自機位置からより離れた領域については前記格納するステップにより格納された前記低分解能データに基づき、それぞれ飛行予測範囲の地形高度を生成するステップと、
前記生成するステップにより生成された地形高度を地図画像として表示するステップと、
を備えることを特徴とする地図画像生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−204419(P2010−204419A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50350(P2009−50350)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】