説明

地形データ補正装置及び地形データ補正方法

【課題】航空レーザ測量や空中写真測量で得られた3次元地形データについて、高さが既知であって、グラウンドのようにある程度広がりを持つ平坦な場所を調整用基準点として用いていた。このため、領域全体が正しい高さの値をもつように、補正を行うことができていなかった。
【解決手段】領域内にわたる経路上で正しい座標値を計測した基準線を導入し、領域内各点において地形データと間近の基準線の高さを比較して、その差の重み付き平均を補正量とすることで地形データの高さの値を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、航空レーザ測量あるいは空中写真測量によって得られた3次元の地形データの補正を行う地形データ補正装置及び地形データ補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地表面の凹凸を表す3次元の地形データを得る方法として、航空レーザ測量や空中写真測量などがある。航空レーザ測量では、航空機またはヘリコプタであるプラットフォームに搭載したGPS(Global Positioning System)とIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)によって航空機の位置と姿勢とを検出する。また、下方に照射したレーザパルスの反射到達時間によって照射方向の地表までの距離を算出、照射方向に観測距離だけ離れた点を地表の点としてデータ化する。さらに、空中写真測量では、GPSとIMU、あるいは地上に設置された対空標識によって写真撮影時における航空機搭載のカメラの位置姿勢を定め、2枚以上の空中写真に写像された同一地点の像を対応付けて、空中三角測量によって位置を計測することで点データとする。これらの点データは、一般に、観測誤差を有する。このため、得られた地形データを地上の既知データと比較することによって点検し、座標値の補正を行わねばならない。
【0003】
従来、このようにして得た地形データの高さの補正に関しては、高さが既知であって、グラウンドのようにある程度広がりを持つ平坦な場所を調整用基準点として用いる。地形データの中から、その調整用基準点内を測量した点を抽出し、それらの高さ値と調整用基準点の高さとの差の平均値を求め、それを高さの補正値とする。すべての地形データに対し、この高さの補正値を一律に差し引くことで補正を行っている(例えば非特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】国土交通省国土地理院「航空レーザ測量による数値標高モデル(DEM)作成マニュアル(案)」,国土地理院技術資料A・1−No.310,2005年7月発行(13頁〜16頁、第5節、第6節)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような地形データ補正装置にあっては、調整用基準点での高さの差をもって一律に全体の補正を行っている。その結果、地形データ中の調整用基準点に対応する点の座標値は正しい値に補正されるものの、調整用基準点以外の地点においては正しく補正されるとは限らないという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、限られた点のみならず、各点がより正確な高度をもつ地形データを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の地形データ補正装置は、地表上の点を3次元座標値で構成した地形データおよび基準線データを記憶する記憶手段と、近接する地形データの点と基準線データ上の点とを検索する検索手段と、検索手段で検索される地形データの点と基準線上の点との高度差を求める高度差算出手段と、高度差を用いて補正量を算出する補正量算出手段と、補正量を用いて地形データの点の高度を補正する補正手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
また、この発明の地形データ補正装置は、航空レーザ測量によって測定した地表上の点の3次元座標値、3次元座標値を求めるのに用いたプラットフォームの位置と姿勢とを含むプラットフォーム測定データおよび航空レーザ測量のレーザスキャナのスキャン角度と距離計測値とを含むレーザスキャナ計測データから構成される地形データ並びに基準線データを記憶する記憶手段と、地形データの点に対し近接する基準線データ上の点を検索する検索手段と、地形データの点と検索された基準線上の点との高度差を求める高度差算出手段と、高度差からプラットフォーム測定データのバイアスを算出する測定値バイアス算出手段と、プラットフォーム測定データのバイアス分を除いた値に地形データを補正する補正手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
さらに、この発明の地形データ補正方法は、地表上の点を3次元座標値で構成した地形データおよび基準線データを記憶する記憶工程と、近接する地形データの点と基準線データ上の点とを検索する検索工程と、検索工程で検索される地形データの点と基準線上の点との高度差を求める高度差算出工程と、高度差を用いて補正量を算出する補正量算出工程と、補正量を用いて地形データの点の高度を補正する補正工程とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の地形データ補正装置は、地表上の点を3次元座標値で構成した地形データおよび基準線データを記憶する記憶手段と、近接する地形データの点と基準線データ上の点とを検索する検索手段と、検索手段で検索される地形データの点と基準線上の点との高度差を求める高度差算出手段と、高度差を用いて補正量を算出する補正量算出手段と、補正量を用いて地形データの点の高度を補正する補正手段とを備えたので、各点がより正確な高度をもつ地形データを得ることができる。
【0011】
また、この発明の地形データ補正装置は、航空レーザ測量によって測定した地表上の点の3次元座標値、3次元座標値を求めるのに用いたプラットフォームの位置と姿勢とを含むプラットフォーム測定データおよび航空レーザ測量のレーザスキャナのスキャン角度と距離計測値とを含むレーザスキャナ計測データから構成される地形データ並びに基準線データを記憶する記憶手段と、地形データの点に対し近接する基準線データ上の点を検索する検索手段と、地形データの点と検索された基準線上の点との高度差を求める高度差算出手段と、高度差からプラットフォーム測定データのバイアスを算出する測定値バイアス算出手段と、プラットフォーム測定データのバイアス分を除いた値に地形データを補正する補正手段とを備えたので、高度のみならず、座標値の水平方向成分も補正することができる。
【0012】
さらに、この発明の地形データ補正方法は、地表上の点を3次元座標値で構成した地形データおよび基準線データを記憶する記憶工程と、近接する地形データの点と基準線データ上の点とを検索する検索工程と、検索工程で検索される地形データの点と基準線上の点との高度差を求める高度差算出工程と、高度差を用いて補正量を算出する補正量算出工程と、補正量を用いて地形データの点の高度を補正する補正工程とを備えたので、各点がより正確な高度をもつ地形データを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による地形データ補正装置を示すブロック図である。地形データ1(図示せず)と基準線データ2(図示せず)とが記憶手段である記憶装置3に格納される。地形データ1の各点に対して最も近い位置にある基準線データ2上の点4(図示せず)が検索手段である検索装置5で検索される。高度差算出手段である高度差算出装置6で地形データ1の各点と検索された基準線2上の点4の高さとの差である高度差を算出する。その結果を用いて補正量算出手段である補正量算出装置7にて高さ(高度)の補正量を決定する。補正手段である補正装置8にて地形データの高さ(高度)の値の補正を補正する。
【0014】
図2は地形データ1の内容を示す説明図であり、図3は基準線データ2の内容を示す説明図である。図4から図8は、地形データ補正装置の動作を説明する説明図である。なお、図において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することである。また、明細書全文に表れている構成要素の形容は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。
【0015】
地形データ1は、少なくとも地表上の点の三次元座標値を備えている。例えば、地形データ1は航空レーザ測量によって測量される。航空機9からレーザ10を照射し、その反射到達時間によって地形データ1までの距離を計測し、航空機9の位置からの変位として加算して地形データ1とする。レーザ照射方向のスキャンと航空機9の進行に伴い、レーザ10はスキャン線11上の点に照射され、そのスキャン幅の飛行コース12内の地形データが取得される。地形データ1は、真の位置16から高さの補正量だけ異なった座標値で測量されている。
【0016】
基準線データ2は、例えばGPSを積載した車両13により、道路14上を移動しながら測位された路面の座標値で構成される点列であり、基準線15を構成する。ここでいう道路14は、車両が走行できる経路であればよく、公道には限らない。このように、基準線データ2は、地上でGPSを用いて連続的に測量した点データであり、少なくとも三次元座標値を持つものである。
【0017】
以下、xy平面を水平面に、z軸を高さ方向に座標系をとって説明する。この座標系は、例えば測量で用いられる平面直角座標系であってもよい。また、適宜設定した原点Oからx軸を東方向に、y軸を北方向にとり、z軸を標高値とした右手系の座標系としてもよい。以下では、右手系の座標系で説明する。
【0018】
地形データ1は、図2に示すように3次元座標値Pi(xi,yi,zi)の点群として構成されている。なお、点の個数をNとし、添え字iは1からNまでとなる。基準線データ2は図3に示すように3次元座標値Qj(Xj,Yj,Zj)の点群として与えられる。点の個数をMとし、添え字jは1からMまでとなる。基準線15は、連続する2を順に線分で結んで、C:QjQj+1,j=1..M−1として構成される。
【0019】
地形データ1は、レーザスキャナを用いる航空レーザ測量、あるいは、空中写真を用いる空中三角測量によって計測された座標値である。地表面を表すDSM(Digital Surface Model:数値地表モデル)、あるいは、地面のみを抽出したDEM(Digital Elevation Model:数値標高モデル)、DTM(Digital Terrain Model:数値地形モデル)と呼ばれるものである。航空レーサ測量については、例えば、「航空レーザ測量ハンドブック」、財団法人日本測量調査技術協会、2004年1月発行、に記されている。空中写真測量については、例えば、大嶋太市著「測量学応用編」2章、共立出版株式会社、1997年8月25日発行、に記されている。
【0020】
基準線データ2は、例えば、FKP(Flaechen Korrektur Parameter:面補正パラメータ)方式のネットワーク型RTK−GPS(Real Time Kinematic−GPS:実時間キネマティックGPS)によって計測された座標値で、GPSを搭載した車両によって道路上1秒ごとに測量された路面の座標値の列とする。FKP方式においては、正確な測量データを得ることができ、これを真値として扱う。また、車両が広域を移動する場合も測量可能である。このように、道路上、密に正確な座標値が得られることになる。FKP方式については、例えば、浪江宏宗,西川啓一,笹野耕治,田中隆,長谷川博幸、樊春明,久保信明著「テレビ放送波を面補正パラメータ(FKP)伝送に利用したネットワークRTK−GPS測位システムの開発および実験的研究」測量、Vol.54,No.8,pp14−17,社団法人日本測量協会,2004年発行に記されている。さらに、IMUを用いてFKP方式で得られた座標間を補間して密にデータ化してもよい。図4に地形データ1と基準線データ2の取得について、図5に地形データ1を得ている飛行コース12と基準線15の位置関係を示す。
【0021】
本発明では、従来の調整用基準点に代えて、基準線データ2を用いて地形データ1の補正を行う。基本的な考え方は、図6に示すように、地形データ1の各点Piに対し、最も近い基準線データの点4を検索してその高さの差(高度差)を求め、それらを用いて領域全体の高さ(高度)の補正量を算出するものである。従来の調整用基準点を用いた場合には、その平坦な領域内の限られた点の高さの誤差について平均をとって補正量とすることになる。
【0022】
これに対して、本発明では、線として基準が設けられるため、一部領域に偏重することなく、各点で適切に高さを補正することができる。図7に、補正量の算出に利用した地形データ1の配置の一例を、模式的に示す。このように、基準線15に沿って広く分布することになる。
【0023】
基準線データ2の取得は、FKP方式により、車両13に積載した機材にて道路14を走行しながら行う。調整用基準点を用いる場合も機材を運搬して測量を行う訳であるから、基準線15を得るために新たに必要となる手間は、車両13による走行距離が増加する程度となる。
【0024】
本発明による補正動作を図9のフローチャートを用いて説明する。ステップST1では、検索装置5により、記憶装置3に格納された地形データ1の各点Piに対し、対応する基準線15内の1点をそれぞれ検索する。これは、地形データ1の点Pi(xi,yi,zi)に対し、xy平面上で最も近接する基準線15上の点4とする。これをSiとすると、Siは距離PiQを最小にするQ∈{Qj(Xj,Yj,Zj)}、あるいは、Q∈Cである。具体的には、地形データ1の点に対し近接する基準線データ2上の点を検索する検索装置5によってなされる。
【0025】
ステップST2では、地形データ1の点Piと検索された基準線15上の点4Siとの高さの差Δziを設定する。これは、Si(X’i,Y’i,Z’i)として、Δzi=zi−Z’iである。Pi、Si、Δziの位置関係については図6に示している。具体的には、高度差算出装置6によって、地形データ1の点と検索された基準線15上の点との高度差を求めることになる。
【0026】
ステップST3からは、補正量算出装置7にて補正量fの算出を行う。ステップST3では、以下で地形データPiの重みwiを設定するため、変数iを1に初期化する。
【0027】
ステップST4では、PiSiの距離riが、所定の値R以内かどうかを判定する。Rは、例えば1mというように、道路14のレーン幅の1/2以下となるような値を設定する。これは、距離riが大きくなると、Piが歩道や家屋など路面と異なる高さの点である可能性が高くなり、高さの補正値を正しく算出できなくなることによる。R以内であれば、ステップST5に、そうでなければ、ステップST7に進む。
【0028】
ステップST5では、|Δzi|が所定の値H、例えば1m以内かどうかを判定する。超える場合には、地形データPiが走行中の車の屋根や側溝など路面と異なる高さの点を測量したものである可能性があり、高さの補正値を正しく算出できなくなることによる。なお、Hは道路14の傾きを勘案してriによって決まるようにしてもよい。例えば、道路14の最大の傾きを10°とするなら、H=ri×tan10°とする。H以内であれば、ステップST6に、そうでなければ、ステップST7に進む。
【0029】
ステップST6では、補正量を算出する際の重みwiを設定する。これは、例えば次式である式(1)とおける。
【0030】
【数1】

これは、以下の理由による。Si近傍で道路14が平坦であるならば、高さの差Δziは求める補正量のみとなるはずで、riによらない。しかしながら、実際には道路14にはわずかな傾斜がある。このため、図8に示すように、傾斜に起因しPiとSiとの距離riに比例した差eiが発生し、この分もΔziに含まれる。道路14路面の傾斜方向はPiのSiに対する相対位置に無関係であるから、eiの期待値は0である。一方、分散はriの2乗に比例して大きくなる。つまり、riが大きいほど、Δziは、分散がその2乗に比例したeiを加算していることになる。これを考慮し、重みwiは、例えば上記のように、距離riの2乗に反比例するように設定する。eiの期待値は0であるから、下記ステップST10の補正量の算出で行っているように、多くの点で高さの差Δziの平均をとることで、eiの影響は除去できる。なお、分母が0にならないように、riがd以下の場合、riに代えてdを用いてwiを算出する。dは、例えば、10cmというように設定する。
【0031】
また、他の方式によって重み付けてもよく、道路14を平坦とみなし、wiはすべて1として動作させてもよい。この場合も、多くの点でΔziの平均をとることで、eiの影響は除去できる。
【0032】
ステップST7では、Piを補正量の算出に用いないようにするため、例えば、重みを0に、wi=0とする。
ステップST8では、iに1加算する。
【0033】
ステップST9では、iがN以下かどうかを判定する。そうであれば、ステップST4に戻り、そうでなければステップST10に進む。ステップST3からこのステップST9までで、重みwiを設定する。
【0034】
ステップST10では、補正量算出装置7において補正量fを算出する。これは、以下の式(2)のように決定する。
【0035】
【数2】

これは、wiによるΔziの重み付き平均になる。上記のとおり、道路14の傾斜の影響によりriが小さいほど、つまり、Piが基準線Cに近いほど、Δziが望ましい補正量である可能性が高い。これを考慮し、Piが基準線Cに近いほど、補正後にSiの高さに一致するような補正量を求めるものである。
【0036】
ステップST11では、補正装置8において、地形データ1のすべての点Piに対し補正量fによる補正を行い、結果を記憶装置3に格納する。補正は以下のように、行う。
zi←zi−f
以上のように、広く取得された正確な基準線データ2を用いて地形データ1を補正するように動作する。この結果、一部の調整用基準点に偏らない、正確な補正量を算出することができる。
【0037】
なお、上記実施の形態1では、地形データ1に対して一律に補正量fを計算して補正するようにしたが、地形データ1の領域をメッシュ状に分割し、各メッシュごとに補正量を算出して補正するように構成してもよい。
【0038】
また、例えば河川防災において河岸や堤防などの対象領域の補正精度を向上させるため、対象領域を包含する領域を設定し、その内部において補正量を算出し補正するように構成してもよい。
【0039】
また、ステップST2では、各Piに最も近い基準線Cの点Siを検索し、両者の高さの差をΔziとしたが、Piからある所定の範囲、例えば、1m以内にある基準線上の点すべてについて、補正量を算出したのと同様にPiと基準線上の点との距離で定まる重みをつけて、Piとそれぞれの点との高さの差の重み付き平均をとって、これをΔziとして動作させてもよい。このとき、ステップST6で設定するwiは、例えば、Piと計算に用いた基準線上の点との平均距離によって決定する。
【0040】
このように、地形データ1をまんべんなく用いて補正量を算出するため、一部の調整用基準点の誤差に偏らない補正量が得られ、地形データ1を全体的に正しく補正することができる。このため、例えば河岸や堤防などの対象領域について、正しく補正された地形データ1を得ることができる。
【0041】
また、上記ステップST1では地形データ1のすべての点Piに対してSiを求め、さらに、ステップST2で高さの差Δziを設定したが、距離riがRより大きくなる場合は重みwiが0になって補正量の算出に影響しないため、あらかじめ基準線15からR以内にある地形データ1を検索し、検索された地形データ1に対してのみ処理を実行するように構成してもよい。これにより、処理時間を短縮することができる。
【0042】
さらに、上記実施の形態においては、地形データ1の各点Piに対してSiを検索するように構成したが、基準線データ2の各点Qjに対して近接するPiを検索するように構成してもよい。この場合、検索装置5でQjに対して近接するPiを検索し、高度差算出装置6で検索されたPiとQjとの高さの差を求め、補正量算出装置7はそれら高さの差の重み付き平均によって補正量を算出する。このように、上記実施の形態と同様の処理によって補正を行うことができる。
【0043】
また、上記実施の形態においては、算出した補正量fによって地形データ1の高さを補正するように構成したが、補正量fを地形データ1の品質を表す値として出力するように構成してもよい。この値によって地形データ1の精度や信頼度を判定あるいは評価することができる。
【0044】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2による地形データ補正装置を示すブロック図は、図1に示す本発明の実施の形態1による地形データ補正装置を示すブロック図と同一である。図10は本発明の実施の形態2による地形データ補正装置の動作を示す説明図である。図11は本発明の実施の形態2による地形データ補正装置の動作を示すフローチャートである。
【0045】
本発明の実施の形態2による地形データ補正装置においては、地形データの点Piごとの高さの差fiに対応する補正量を求める。このfiは、図10に示すように、Piを中心とする参照領域17Tiの内部にある地形データの点18Pkについて、その高さの差Δziの重み付き平均によって推定する。参照領域Tiは、例えば、半径100mの円とする。なお、図10でPkについては、wk≠0である点のみ、すなわち、補正量の計算に影響する点のみを模式的に表している。
【0046】
地形データ1においては、航空レーザ測量により得る場合は、順次地形データを計測していくため、その間、航空機9搭載のGPSやIMUの観測誤差の変化によって、地形データの高さの誤差が地域によって異なる傾向を持つことが考えられる。また、空中写真測量による場合も、地域により測量に用いた写真やその枚数が決まるため、地域特有の誤差を有することになる。このような場合、Piごとにその近傍地域のデータから補正量を求めることで、正確な地形データを得ることができる。
【0047】
図11のフローチャートに示す本発明の実施の形態2による地形データ補正装置の動作は、図9のフローチャートに示す本発明の実施の形態1の動作と同様であるが、ステップST21以降の補正量算出装置7と補正装置8の動作が異なる。
【0048】
ステップST20は、実施の形態1の動作を示すフローチャートのステップST3からステップST9までの動作を行うもので、ひとつのステップとして記述したものである。
ステップST21では、補正量算出のため、変数iを1に初期化する。
ステップST22では、Ti内の地形データPkを検索する。検索されたPkの番号の集合をAiとおく。Ai={k|Pk∈Ti}である。
【0049】
ステップST23では、検索されたPkについての、ステップST20にて算出された重みをwkの和wが0かどうかを次式で示す式(3)で判定する。
【0050】
【数3】

和wが0であればステップST25に進み、0でなければステップST24に進む。つまり、Piに対して検索されたPkについて、すべてwk=0となる場合には、ステップST24における補正量fiの算出を行わない。
【0051】
ステップST24では、補正量算出装置7においてPiの補正量fiを算出する。このfiは、Ti内の地形データの点における高さの差の重み付き平均として、以下の式(4)のように計算する。
【0052】
【数4】

ステップST25では、変数iに1加算する。
ステップST26は、iがN以下かどうかを判定する。そうであればステップST22に戻り、そうでなければステップST27に進む。
ステップST27では、補間のため、変数iを1に初期化する。
ステップST28では、ステップST24により、Piの補正値が得られているかどうかを判定する。そうであればステップST31に進み、そうでなければステップST29に進む。
【0053】
ステップST29では、ステップST23でw=0となった点について、例えば、最も近く、補正量が得られている地形データ1の点を検索する。これがn番目の点Pnであったとする。
ステップST30では、補正量算出装置7により、例えば、Pnの補正量によりfiを、fi=fnとする。
ステップST31では、iに1加算する。
【0054】
ステップST32では、iがN以下かどうかを判定する。そうであればステップST28に戻り、そうでなければステップST33に進む。
ステップST33では、補正装置8において、すべての地形データPiに対しfiによる補正を行う。これは以下のように行う。
【0055】
zi←zi−fi
以上の動作により、各Piは補正量fiにより補正される。
【0056】
なお、上記実施例ではwkによる重み付き平均により補正量を求めたが、さらにPiとPkとの距離によって重みをつけてもよい。例えば、以下のように式(5)とすることができる。
【0057】
【数5】

分母が0になるのを避けるため、PiPkに下限λminを設けている。λminは、例えば、10cmというように設定する。
【0058】
このように、地形データ1の各点Piに対して、Piおよびその参照領域17内に入る地形データ1の点18の高さの差Δziを用いて補正量を算出するため、地形データ1の高さの誤差が地域によって異なる傾向を示すような場合でも、地形データ1を全体的に正しく補正することができる。
【0059】
補正量算出手段は、地形データの点ごとに決まる参照領域内にある地形データの点を用いて補正量を算出したので、地形データの高さの誤差が場所によって異なる値を持つような場合にも、その地点に適した補正量が得られ、地形データを正しく補正することができる。地形データの点ごとに、その点の位置によって決まる参照領域内にある地形データの点と基準線上の点との高さの差の平均によって補正量を算出するようにしたからである。
【0060】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3による地形データ補正装置を示すブロック図は、図1に示す本発明の実施の形態1による地形データ補正装置を示すブロック図と同一である。図12から図15は本発明の実施の形態3による地形データ補正装置の動作を示す説明図である。図16は本発明の実施の形態3による地形データ補正装置の動作を示すフローチャートである。
【0061】
本発明の実施の形態3による地形データ補正装置においては、実施の形態2による地形データ補正装置と同様に、地形データ1の点Piごとに補正量fiを決定する。ただし、実施の形態3では、このfiを、Piを中心に前後σ時間に計測された地形データPkについて、その高さの差Δzkの重み付き平均により決定する。
【0062】
航空レーザ測量においては、飛行しながら順次1点ずつ座標値を計測していくことになる。これは、通常、図12に示すように、短冊状の飛行コース12に対応した飛行ルート19を往復しつつ、そのスキャン線11にそってデータを蓄積していくことになる。その間、航空機9に搭載のGPSやIMUでは、GPS衛星の配置の変化や大気状態の変化、あるいは、IMUのドリフトにより、観測誤差が変化していく。このとき、地形データ1に必要な補正量が計測時刻とともに変化していくことになる。隣り合うコースで得られたデータは、距離が近くとも計測時刻が大きく異なり、必要な補正量も異なる可能性が高い。そこで、地形データ1の空間的な距離よりも計測時刻を優先して、それが近いデータを用いて各点での補正量を算出する。計測時刻が近いデータは、高さの計測誤差について一定のオフセットをもつものとみなし、高さの差の重みつきの平均をとることで、そのオフセット分である補正量を得る。
【0063】
地形データ1は図13のように格納されている。tiはi番目の地形データ1の計測時刻である。なお、地形データ1がデータ計測順の配列として格納されているならば、iをtiと読み替えることで、図2のような形で保持されている地形データ1に対しても実行することができる。このとき、もちろん、σはiのスケールに対応する値に変換して用いる。
【0064】
図16のフローチャートに示す本発明の実施の形態3による地形データ補正装置の動作は、図11のフローチャートに示す本発明の実施の形態2の動作と同様であるが、ステップST41からステップST44に示した補正量算出装置7による補正値fiの算出方法が異なる。
【0065】
ステップST41では、Piに対し、計測時刻tがti−σ≦t≦ti+σである地形データPkを検索する。検索されたPkの番号の集合をAiとおく。Ai={k|ti−σ≦tk≦ti+σ}である。図14に示すように、検索されるPkは、Piから飛行コース12、スキャン線11上の実線で示した範囲Ωi20内の点28となる。なお、この図でPkについては、wk≠0である点のみ、すなわち、補正量の計算に影響する点のみを模式的に表している。σは、例えば10秒というように設定する。また、航空機9に搭載のGPSの観測間隔程度、例えば1秒としてもよい。
【0066】
ステップST42では、補正量算出装置7においてPiの補正量fiを算出する。このfiは、計測時刻tが、ti−σ≦t≦ti+σである地形データPkの高さの差Δzkの重み付き平均として以下のように、式(6)で計算することができる。
【0067】
【数6】

ステップST43では、補正量が求まっていない点Piに関し、計測時刻がtn,tm,tn<ti<tmで、補正値fn、fmが得られおり、他にtn<t<tmで補正値が得られている点がない点Pn,Pmを検索する。
ステップST44では、点Piについて補正量の補間を行う。これは、例えば、図15に示すように、以下に示す式(7)のようにして、線形補間により求めることができる。
【0068】
【数7】

ステップST33の動作により、各Piは補正量fiにより補正される。なお、上記実施例ではΔziのriによる重み付き平均により補正量を求めたが、さらにt−tiによって重みをつけてもよい。例えば、ガウス関数による重みをつけて、以下に示す式(8)のようにして、補正量を算出することができる。
【0069】
【数8】

このように、地形データ1の各点Piに対して、Piおよびその前後に計測された点28の高さの差Δziを用いて補正量を算出するため、地形データ測量時の航空機搭載のGPSやIMUの観測誤差の経時変化によって、地形データ1の高さの誤差がデータ計測時刻によって異なる傾向を示すような場合でも、地形データ1を全体的に正しく補正することができる。
【0070】
地形データは、各点の計測時刻または計測順序を示すデータを有し、補正量算出手段は、地形データの点ごとに計測時刻または計測順序を示すデータが時間的に近接する地形データの点を用いて補正量を算出したので、地形データの計測における計測機器の誤差の経時変化によって、地形データの高さの誤差が計測時刻によって異なる値を持つような場合にも、その計測時刻に適した補正量が得られ、地形データを正しく補正することができる。
【0071】
実施の形態4.
図17は本発明の実施の形態4による地形データ補正装置を示すブロック図である。関数設定手段である関数設定装置21により、地形データの点Piにおける高さの差Δziから高さ変位関数の数値を設定し、補正量算出手段である平滑化装置22によって高さ誤差関数を平滑化し、補正量関数を得る。図18は本発明の実施の形態4による地形データ補正装置の動作を示す説明図である。高さ変位関数23は高さの差である点24を補間したもので、これを平滑化して補正量関数25としている。図19は本発明の実施の形態4による地形データ補正装置の動作を示すフローチャートである。
【0072】
本発明の実施の形態4による地形データ補正装置においては、実施の形態3による地形データ補正装置と同様に、地形データ1の計測時刻に従って補正量を決定する。ただし、実施の形態4では、高さの差Δziを連続に補間して計測時刻tの高さ変位関数g(t)とし、このg(t)に平滑化フィルターをかけることによって、連続的な補正量関数f(t)とする。
【0073】
関数g(t)は、時系列の地形データ1における時間的な高さの誤差の変化を表している。ただし、上述のとおり、Δziは必要な補正量に加え、測量地点のずれriによる高さの差eiも含まれる。必要な補正量fiは時間的に徐々に変動していく。一方、eiはPiごとにランダムに変動する。したがって、g(t)の低周波成分のみを抽出することによって、必要な補正量fiを求めることができる。これは、g(t)にローパスフィルターなどの平滑化フィルターをかけることで行う。
【0074】
図19に示す本発明の実施の形態4による地形データ補正装置の動作は、ステップST1とステップST2が、図9のフローチャートに示す本発明の実施の形態1の動作と同一である。
【0075】
ステップST51からは、関数設定装置21にてg(t)に値を設定する。
ステップST51では、変数iを1に初期化する。
ステップST52では、ステップST4と同様、PiSiの距離riが、所定の値R以内かどうかを判定する。R以内であれば、ステップST53に、そうでなければ、ステップST55に進む。
ステップST53では、ステップST5と同様、|Δzi|が所定の値H、例えば1m以内かどうかを判定する。H以内であれば、ステップST54に、そうでなければ、ステップST55に進む。
ステップST54では、関数設定装置21によりg(ti)をΔziと設定する。
【0076】
ステップST55では、iに1加算する。
ステップST56では、iがN以下かどうかを判定する。そうであれば、ステップST52に戻り、そうでなければステップST57に進む。
ステップST57では、関数g(t)を補間する。g(ta)、g(tb)、で関数値が設定され、ta<t<tbで未設定の場合には、次式で示す式(9)とおける。
【0077】
【数9】

ステップST58では、平滑化装置22において、図18に示すように、g(t)を平滑化してf(t)を得る。平滑化について、例えば、間隔が前後σの平均値フィルターによる場合には、次式で示す式(10)とおける。
【0078】
【数10】

あるいは、スケールファクターをσとするガウスフィルターにより、次式で示す式(11)としてもよい。
【0079】
【数11】

ここで、σは、例えば、10秒というように設定する。デジタル計算機において、これらは、離散化して算出する。
ステップST59では、補正装置8において、f(t)により、Piの高さを、zi←zi−f(ti)と補正する。
【0080】
以上の動作により、各Piは正しい高さをもつように補正される。なお、g(t)、f(t)は時刻の関数としたが、地形データ1がデータ計測順に格納されている場合は、g(i)、f(i)のように、iの関数として表し、実行してもよい。この場合、データ計測時刻が得られていなくとも動作させることができる。このとき、σは、例えば、1000というように設定する。
【0081】
このように、Δziを補間してg(t)とし、これを平滑化して補正量関数f(t)を算出するため、基準線Cが密ではなく、Piの計測時刻の前後σで、wk≠0となるPkが存在しない場合でも、補間されたg(t)の値により補正量f(ti)を算出してPiの高さを補正するため、正しく補正された地形データを得ることができる。また、平滑化フィルターによって補正量を算出するため、既知のフィルター設計方法や既存のソフトウェアを利用して、効率よく処理プログラムを作成できる。
【0082】
計測時刻あるいは計測順序を含む地表上の点を3次元座標値として計測した地形データおよび基準線データを記憶する記憶手段と、地形データの点に対し近接する基準線データ上の点を検索する検索手段と、地形データの点と検索された基準線上の点との高度差を求める高度差算出手段と、計測時刻あるいは計測順序に対する高度差とする関数を設定する関数設定手段と、関数を平滑化することで補正量を算出する補正量算出手段と、補正量を用いて地形データの点の高度を補正する補正手段とを備えたので、基準線データが領域内で密に測量されていない場合でも、地形データを正しく補正することができる。
【0083】
実施の形態5.
図20は本発明の実施の形態5による地形データ補正装置を示すブロック図である。測定値バイアス算出手段であるバイアス算出装置26では、地形データ1の計測時の航空機9に搭載のGPSおよびIMUの測定値のバイアスを計算する。
【0084】
なお、本実施の形態の地形データ1は、特に、航空レーザ測量によって測定した地表上の点の3次元座標値、3次元座標値を求めるのに用いたプラットフォームの位置と姿勢とを含むプラットフォーム測定データおよび航空レーザ測量のレーザスキャナのスキャン角度と距離計測値とを含むレーザスキャナ計測データから構成されたものとなる。
【0085】
図21は本発明の実施の形態5による地形データ補正装置の地形データ1の内容を示す説明図、図22は本発明の実施の形態5による地形データ補正装置の動作を示す説明図である。航空レーザ測量において、スキャンの基準軸27を中心に起点位置28から航空機9の進行方向に垂直にレーザ光がスキャンされて照射される。図23は本発明の実施の形態5による地形データ補正装置の動作を示すフローチャートである。
【0086】
本発明の実施の形態5による地形データ補正装置においては、地形データPiの座標値に加え、航空レーザ測量において地形データPiを計測した時点での、航空機9搭載のGPSにより測定されたレーザ起点28の測位座標値(Ui,Vi,Wi)とIMUによって計測された航空機の姿勢(ωi,φi,κi)の観測データ、さらに、スキャン角度θiとレーザの測定距離Liが利用可能であるとする。この地形データは、図21に示す形で記憶装置に格納されている。
【0087】
本発明の実施の形態5による地形データ補正装置においては、高さの差Δziの値から測位座標値(Ui,Vi,Wi)と姿勢(ωi,φi,κi)の測定誤差であるバイアスを計算する。測定値からバイアス分を除くことによって、正しい測位座標値と姿勢が得られ、これらとスキャン角、測定距離から計算される正しい値にPiの3次元座標値(xi,yi,zi)を補正する。
【0088】
図22に示すように、GPSで観測される位置(Ui,Vi,Wi)から、姿勢が(ωi,φi,κi)で、基準軸に対してθiの角度で、距離Liにある地物にレーザパルスが照射されることになる。姿勢については、起点28を原点にとり航空機9の進行方向をx’軸、上方をz’軸とするローカル座標系の点(x’,y’,z’)を考えたとき、ここではxyz座標系との関係は、次式で示す式(12)のようにおけるとする。
【0089】
【数12】

なお、以下では簡単に、以下の式(13)のようにして記述する。
【0090】
【数13】

地形データPiのローカル座標系での座標値は、y’z’平面上、z’軸からθiの方向に距離Liの点と測定されるので、式(14)のようにおける。
【0091】
【数14】

GPSの観測座標値、姿勢の観測データがそれぞれ一定のバイアス(δU,δV,δW)、(δω,δφ,δκ)をもつとし、真の値をそれぞれ、式(15)とすれば、
【0092】
【数15】

式(16)となる。
【0093】
【数16】

よって、Piの座標値についても、その真の値を波線で示すと、式(17)となる。
【0094】
【数17】

ここで、δW,δω,δφ,δκは十分小さい。Piの誤差を(δxi,δyi,δzi)とすれば、式(18)となる。
【0095】
【数18】

よって、式(17)より、Piの誤差は式(19)となる。
【0096】
【数19】

これを展開すると、式(20)となる。
【0097】
【数20】

z座標値に関し、δziの近似値が高さの差Δziで与えられるとすれば、式(21)となる。
【0098】
【数21】

地形データPiにおいてバイアス値が一定と考え、δW,δω,δφ,δκを未知数として各Piについての式(21)を連立させ、最小二乗法によってδWと(δω,δφ,δκ)を算出する。特に、このとき、Piに関する式に重みwiの重みをつける。
【0099】
このようにして得たバイアス値δW,(δω,δφ,δκ)を用いて、この分を差し引いた測定値により、式(22)のように、Piの座標値を補正する。
【0100】
【数22】

本発明の実施の形態5による地形データ補正装置の動作を、図23のフローチャートにて説明する。ステップST1、ステップST2、ステップST20の動作は、図9のフローチャートに示す本発明の実施の形態1の動作および図11のフローチャートに示す本発明の実施の形態2の動作と同様である。
【0101】
ステップST60では、バイアス算出装置26において、上記の方法により測定値のバイアスを求める。wiによる重みをつけた最小二乗法によってバイアス値δW,(δω,δφ,δκ)を得ることになる。
ステップST61では、補正装置8において、求めたバイアスに基づいて、式(22)に従って各Piの座標値を補正更新する。
以上の動作により、各Piは正しい座標値をもつように補正される。
【0102】
なお、ここでは高さのみならず、xとy座標値も補正するように説明したが、高さの値、つまり、z座標値のみを補正するように動作させてもよい。
【0103】
また、得られたバイアスを差し引いた測定値をもとに、Piの座標値を再計算するように構成したが、バイアスによる変位分を計算し、これをPiの座標値から差し引いて補正するように構成してもよい。つまり、式(23)のように補正する。
【0104】
【数23】

また、式(21)で与えられる変位分Δziを補正値fiとして計算し、補正前のPiの座標値からzi←zi−fiとして差し引くように動作させてもよい。
また、上記実施の形態2や実施の形態3のように、参照領域Tiやデータ範囲Ωiを設け、Piごとにバイアス値を求めて補正を行うように構成してもよい。
また、補正した測定値が収束するように、上記の処理を繰り返し実行するように構成してもよい。また、姿勢を示すパラメータのとり方は、上記の(ωi,φi,κi)に限らず、回転順序や回転軸が異なるパラメータの組として表現した場合にも同様に実行できる。
【0105】
このように、測定値のバイアスを計算し、それを基に地形データ1を補正するため、地形データの計測における航空機9の位置と姿勢の測定値がバイアスを有しているような場合に、バイアスの影響を除いた正しい座標値に地形データを補正することができる。また、高さのみならず、座標値の水平方向成分も補正することができる。
【0106】
よって、航空レーザ測量によって測定した地表上の点の3次元座標値、3次元座標値を求めるのに用いたプラットフォームの位置と姿勢とを含むプラットフォーム測定データおよび航空レーザ測量のレーザスキャナのスキャン角度と距離計測値とを含むレーザスキャナ計測データから構成される地形データ並びに基準線データを記憶する記憶手段と、地形データの点に対し近接する基準線データ上の点を検索する検索手段と、地形データの点と検索された基準線上の点との高度差を求める高度差算出手段と、高度差とプラットフォーム測定データとのバイアスを算出する測定値バイアス算出手段と、プラットフォーム測定データからバイアスを除いた値に地形データを補正する補正手段とを備えたので、高度のみならず、座標値の水平方向成分も補正することができる。また、地形データの計測におけるプラットフォームの位置と姿勢の測定値がバイアスを有しているような場合に、そのバイアス値を計算してその分を補正することで、バイアスの影響を除いた正しい座標値に地形データを補正することができる。
【0107】
以上、説明したように、地表上の点を3次元座標値で構成した地形データおよび基準線データを記憶する記憶手段と、地形データの点に対し近接する基準線データ上の点を検索する検索手段と、地形データの点と検索された基準線上の点との高度差を求める高度差算出手段と、高度差の平均を用いて補正量を算出する補正量算出手段と、補正量を用いて地形データの点の高度を補正する補正手段とを備えたので、一部の調整用基準点の誤差に偏らない補正量が得られ、地形データを全体的に正しく補正することができる。
【0108】
この発明によれば、道路上連続的に得られた基準線を用いて地形データを補正することにより、高さを点検する点を地形データの領域全般にわたって配置することができ、地形データの各点が正確な標高値をもつように補正できる、といった従来にない顕著な効果を奏するものである。
【0109】
また、補正量算出手段は、地形データの点ごとに決まる参照領域内にある地形データの点を用いて補正量を算出したので、地形データの高さの誤差が場所によって異なる値を持つような場合にも、その地点に適した補正量が得られ、地形データを正しく補正することができる。
【0110】
さらに、地形データは、各点の計測時刻または計測順序を示すデータを有し、補正量算出手段は、地形データの点ごとに計測時刻または計測順序を示すデータが時間的に近接する地形データの点を用いて補正量を算出したので、地形データの計測における計測機器の誤差の経時変化によって、地形データの高さの誤差が計測時刻によって異なる値を持つような場合にも、その計測時刻に適した補正量が得られ、地形データを正しく補正することができる。
【0111】
また、補正量算出手段が算出する補正量は、地形データの点と基準線上の点の高さの差に、地形データの点と基準線上の点との距離により、その距離が大きくなるほど小さい重みをつけた、重み付き平均を補正量とするので、基準線データが平坦ではない面(道路)上で測量されていても、正確な補正量が得られ、地形データを正しく補正することができる。補正量算出手段の補正量を検索手段で検索される地形データの点と基準線データ上の点との距離に応じた重み付き平均としたからである。
【0112】
さらに、補正量算出手段が算出する補正量は、地形データの点と基準線上の点の高さの差が所定の値以内になるものの平均により補正量を算出するので、基準線データと同一面(道路)上の地形データの点のみで補正値を算出するので、正確な補正量が得られて地形データを正しく補正することができる。補正量算出手段の補正量を高度差が所定の値内に収まっているものを用いて算出したからである。
【0113】
また、補正量算出手段が算出する補正量は、地形データの点と基準線上の点との距離が所定の値以内になるものの平均により補正量を算出するので、基準線データと同一面(道路)内の地形データの点のみで補正値を算出するので、正確な補正量が得られて地形データを正しく補正することができる。補正量算出手段の補正量を検索手段で検索される地形データの点と基準線データ上の点との距離が所定の値内に収まっているものを用いて算出したからである。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の実施の形態1による地形データ補正装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1による地形データ補正装置の地形データを示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1による地形データ補正装置の基準線データを示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1による地形データ補正装置の動作を説明する説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1による地形データ補正装置の動作を説明する説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1による地形データ補正装置の動作を説明する説明図である。
【図7】本発明の実施の形態1による地形データ補正装置の動作を説明する説明図である。
【図8】本発明の実施の形態1による地形データ補正装置の動作を説明する説明図である。
【図9】本発明の実施の形態1による地形データ補正装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態2による地形データ補正装置の動作を説明する説明図である。
【図11】本発明の実施の形態2による地形データ補正装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態3による地形データ補正装置の動作を説明する説明図である。
【図13】本発明の実施の形態3による地形データ補正装置の地形データを示す説明図である。
【図14】本発明の実施の形態3による地形データ補正装置の動作を説明する説明図である。
【図15】本発明の実施の形態3による地形データ補正装置の動作を説明する説明図である。
【図16】本発明の実施の形態3による地形データ補正装置の動作を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態4による地形データ補正装置を示すブロック図である。
【図18】本発明の実施の形態4による地形データ補正装置の動作を説明する説明図である。
【図19】本発明の実施の形態4による地形データ補正装置の動作を示すフローチャートである。
【図20】本発明の実施の形態5による地形データ補正装置を示すブロック図である。
【図21】本発明の実施の形態5による地形データ補正装置の地形データを示す説明図である。
【図22】本発明の実施の形態5による地形データ補正装置の動作を説明する説明図である。
【図23】本発明の実施の形態5による地形データ補正装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0115】
1 地形データ、2 基準線データ、3 記憶装置、5 検索装置、6 高度差算出装置、7 補正量算出装置、8 補正装置、9 航空機、 10 レーザ、11 スキャン線、12 飛行コース、13 車両、14 道路、15 基準線、16 真の位置、21 関数設定装置、22 平滑化装置、26 バイアス算出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表上の点を3次元座標値で構成した地形データおよび基準線データを記憶する記憶手段と、
近接する前記地形データの点と前記基準線データ上の点とを検索する検索手段と、
前記検索手段で検索される前記地形データの点と前記基準線上の点との高度差を求める高度差算出手段と、
前記高度差を用いて補正量を算出する補正量算出手段と、
前記補正量を用いて前記地形データの点の高度を補正する補正手段とを備えたことを特徴とする地形データ補正装置。
【請求項2】
補正量算出手段は、地形データの点ごとに決まる参照領域内にある前記地形データの点を用いて補正量を算出したことを特徴とする請求項1記載の地形データ補正装置。
【請求項3】
地形データは、各点の計測時刻または計測順序を示すデータを有し、
補正量算出手段は、地形データの点ごとに前記計測時刻または計測順序を示すデータが時間的に近接する前記地形データの点を用いて補正量を算出したことを特徴とする請求項1記載の地形データ補正装置。
【請求項4】
計測時刻あるいは計測順序を含む地表上の点を3次元座標値として計測した地形データおよび基準線データを記憶する記憶手段と、
前記地形データの点に対し近接する前記基準線データ上の点を検索する検索手段と、
前記地形データの点と検索された前記基準線上の点との高度差を求める高度差算出手段と、
前記計測時刻あるいは前記計測順序に対する前記高度差とする関数を設定する関数設定手段と、
前記関数を平滑化することで補正量を算出する補正量算出手段と、
前記補正量を用いて前記地形データの点の高度を補正する補正手段とを備えたことを特徴とする地形データ補正装置。
【請求項5】
航空レーザ測量によって測定した地表上の点の3次元座標値、前記3次元座標値を求めるのに用いたプラットフォームの位置と姿勢とを含むプラットフォーム測定データおよび前記航空レーザ測量のレーザスキャナのスキャン角度と距離計測値とを含むレーザスキャナ計測データから構成される地形データ並びに基準線データを記憶する記憶手段と、
前記地形データの点に対し近接する前記基準線データ上の点を検索する検索手段と、
前記地形データの点と検索された前記基準線上の点との高度差を求める高度差算出手段と、
前記高度差から前記プラットフォーム測定データのバイアスを算出する測定値バイアス算出手段と、
前記プラットフォーム測定データの前記バイアス分を除いた値に前記地形データを補正する補正手段とを備えたことを特徴とする地形データ補正装置。
【請求項6】
補正量算出手段の補正量は、検索手段で検索される地形データの点と基準線データ上の点との距離に応じた重み付き平均としたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の地形データ補正装置。
【請求項7】
補正量算出手段の補正量は、高度差が所定の値内に収まっているものを用いて算出したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の地形データ補正装置。
【請求項8】
補正量算出手段の補正量は、検索手段で検索される地形データの点と基準線データ上の点との距離が所定の値内に収まっているものを用いて算出したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の地形データ補正装置。
【請求項9】
基準線データは、地上でGPSを用いて連続的に測量した点データであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の地形データ補正装置。
【請求項10】
地表上の点を3次元座標値で構成した地形データおよび基準線データを記憶する記憶工程と、
近接する前記地形データの点と前記基準線データ上の点とを検索する検索工程と、
前記検索工程で検索される前記地形データの点と前記基準線上の点との高度差を求める高度差算出工程と、
前記高度差を用いて補正量を算出する補正量算出工程と、
前記補正量を用いて前記地形データの点の高度を補正する補正工程とを備えたことを特徴とする地形データ補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2007−298332(P2007−298332A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125205(P2006−125205)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】