説明

地盤調査データ、調査位置及び調査時刻を証明する方法

【課題】地盤調査データが確実に調査時刻において調査地で測定されたものであることを確実に証明する。
【解決手段】GPS衛星2からの測位情報を通信端末1に取得するI工程と、通信端末の認証IDと測位情報をデータ認証局6に送信して、時刻情報を付した証明コード17の発行を求め、データ認証局から発行された証明コードを通信端末に取得するII工程と、地盤調査データ18を取得し、地盤調査データに該発行された証明コードを組み込み暗号化したデータ情報13を、データ認証局に送信してサーバに原本として保存するIII工程と、利用者8がデータ情報を証明コードと共に利用者側パソコン81にダウンロードして利用するIV工程と、被証明者9が証明コードと被証明データ情報を統合した情報をデータ認証局に送信し、データ認証局側において、送信されてきた情報と原本を比較対比して、送信されてきた情報の改ざんの有無を判定するV工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、証明コードで証明される測位時刻に確実に地盤調査データが存在していたことを証明する存在証明とその存在証明が改ざんされていないことの完全性証明ができる地盤調査データ、調査位置及び調査時刻を証明する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅地盤調査分野においては、実際の施工が行なわれる前工程として、地盤強度などの地盤調査を行なう。地盤強度を調べる方法としては、荷重による貫入と回転貫入を併用した原位置試験であるスウェーデン式サウンディング試験方法がある。この地盤強度試験方法は、工程が多く、重労働であるため、JIS規定で定められている作業と異なる作業を故意に行なうケースも存在する。更に、この地盤調査は、現在、第3者の立ち会いを必要としていないため、更に調査結果の信憑性に問題を生じている。
【0003】
一方、従来の地盤強度試験における作業者の重労働を軽減するために、フルオート地盤調査機を使用し、地盤強度の測定結果を移動通信端末機に受け渡し、電子データとして自社内システムに転送後、地盤調査報告書を作成する方法も行なわれている。しかしながら、このような移動通信端末を利用した方法においても、データの改ざんの余地は否定できず、依然として、地盤調査データが確実に調査地で測定されたものであるか、あるいは地盤調査データが実際に測定されたデータであるかの根拠は希薄なものであるという問題は残されたままであった。
【0004】
なお、特開平2003−261928号公報には、土工事用移動作業機械に搭載されたGPS測量装置及び移動体側データ通信装置と、管理側データ通信装置が接続された管理側コンピュータと、該管理側コンピュータに接続されたデータサーバーを利用した土工事における施工データ管理システムが開示されている。また、特開平2002−333483号公報には、通信ネットワークを利用することにより調査現場から離れた遠隔地にて表面波の伝播速度の測定結果を確認し、またその測定における測定条件の変更の指示を遠隔的に行なうことによって、専門知識を有する技術者が調査現場に出向くことなく、地盤調査を行なうことを可能にする地盤調査システムが開示されている。
【0005】
しかしながら、特開平2003−261928号公報の土工事における施工データ管理システムはブルドーザによる撒き出し作業と振動ローラによる締固め作業との作業連携を確保することによって両者の作業を効率よく行なうものであり、また、特開平2002−333483号公報の地盤調査システムは、地盤調査を効率的に行う方法であり、いずれも地盤調査データの信憑性を証明するものではない。
【特許文献1】特開平2003−261928号公報
【特許文献2】特開平2002−333483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、地盤調査データが確実に測位時刻において調査地で測定されたものであること、地盤調査データが実際に測定されたデータであることを確実に証明できる地盤調査データ、調査位置及び調査時刻を証明する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、地盤調査現場で調査を行なった地盤調査データ、当該地盤調査データを取得した調査位置及び調査時刻を証明する方法であって、当該調査位置を特定するGPS衛星からの測位情報を携帯情報通信端末に取得するI工程と、携帯情報通信端末に付与された認証IDと該測位情報をデータ認証局に送信して、該認証ID、該測位情報及び時刻情報から算出される証明コード(第1ハッシュ値)の発行を求め、該データ認証局から発行された証明コードを携帯情報通信端末に取得するII工程と、地盤調査機から地盤調査データを取得し、該地盤調査データに該発行された証明コードを組み込み暗号化したデータ情報を該データ認証局に送信して、該データ認証局のパソコン又はパソコンに接続されたサーバに原本として保存するIII工程と、利用者が利用者側パソコンのブラウザを起動してデータ認証局に接続し、該データ情報を該証明コードと共に利用者側パソコンにダウンロードして利用するIV工程と、該証明コードを組み込んだ被証明データと原本を比較対比して、被証明データの被証明データの位置又は時間の証明あるいは被証明データの改ざんの有無の判定を行なうV工程を備えることを特徴とする地盤調査データ、調査位置及び調査時刻を証明する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、データ認証局によって発行された証明コードを地盤調査データに組み込むことにより、地盤調査データが確実に調査地で測定したことを証明することができ、更に調査した時刻も証明でき、データに対する信頼性が向上する。また、第3者であるデータ認証局のタイムスタンプ機能により、調査時刻が組み込まれた日時に確実に地盤調査データが存在していたことを証明する存在証明とその存在証明が改ざんされていないことの完全性証明ができる。各工程のすべてが電子データで受け渡すため、証明に費やす時刻が秒単位であり、データの根拠性を迅速に証明できる。証明データの原本は、データ認証局で保管するため、データ損失のリスクを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次ぎに本発明の実施の形態における地盤調査データ、調査位置及び調査時刻を証明する方法(以下、単に「地盤調査データ等を証明する方法」と言う。)を図1及び図2を参照して説明する。図1は本例の地盤調査データ等を証明する方法を説明するための模式図、図2はII工程である証明コード発行方法を説明するための模式図である。以下、本例の地盤調査データ等を証明する方法を工程毎に説明する。本明細書において、「データ」あるいは通信されるコード、暗号化はすべて電子データである。
【0010】
(I工程)
先ず、調査位置を特定するGPS衛星2からの測位情報を携帯情報通信端末1に取得する。これにより、調査位置が簡単且つ客観的に特定される。GPS測量装置は、地盤調査機4に内蔵されたもの、携帯情報通信端末1に内蔵されたもの又は別途のGPS測量装置のいずれも使用することができる。地盤調査機4内蔵のもの又は別途のGPS測量装置を使用する場合、取得した位置データは例えば携帯情報通信端末1に手動入力するか、あるいは地盤調査機4やGPS測量装置に無線通信機能があれば、無線通信により携帯情報通信端末1に取り込めばよい。GPS衛星2からの測位情報は調査位置の経度と緯度である。
【0011】
携帯情報通信端末1は、例えばスマートホンと称されるものであり、データの入力及び保存、並びにカメラで撮影した画像データの保存ができ、これらのデータをデータ認証局のパソコンまたはパソコンに接続されたサーバに送信できる通信機器である。携帯情報通信端末1には、GPS受信機能、インターネット接続機能、ファイル転送機能、データ合成機能、ハッシュ生成機能を備えるものが好ましい。
【0012】
(II工程)
II工程は、証明コード発行工程である。図2に示すように、II工程においては、先ずデータ携帯情報通信端末1に付与された認証IDと測位情報を第3者機関であるデータ認証局6、具体的にはデータ認証局6のコード発行サーバ61に送信して(符号52)、該認証ID、該測位情報及び時刻情報から算出される証明コード(第1ハッシュ値)の発行を求める。認証IDと測位情報を送信することで、調査位置での情報データの位置証明と時刻証明を求めたい主体が特定される。認証IDは、通常、当該証明方法を利用するため、データ認証局と契約する際、携帯情報通信端末1に付与されるものであり、携帯情報通信端末1固有のIDである。
【0013】
データ認証局6は、当該証明方法を利用する地盤調査会社、工務店あるいは施主などとは異なる第3者機関であって、証明コード発行サーバを有する証明能力のあるサービス機関であれば、特に制限されないが、例えば三菱電機社提供の位置時刻証明情報提供サービス、コードコム社のコード発行サービスが挙げられる。
【0014】
携帯情報通信端末1からデータ認証局6への証明コード発行要求は、認証IDと測位データを暗号化することで行なわれる(符号71)。これにより、認証ID及び測位データの秘密性が保たれる。暗号化は例えばSSLによる暗号化又はハッシュ値による暗号化が挙げられる。SSLはSecure Socket Layerの略であり、インターネット上で情報を暗号化して送信するプロトコルである。SSLによる暗号化方法は、利用者がSSLを利用できるサーバとデータをやり取りする公知の方法で行えばよい。すなわち、インターネットエクスプローラーやネットスケープなどのSSLに対応したウェブブラウザを利用して、SSLで保護されたサイトに接続する。次いで通信相手の認証が行なわれ、通信データが自動的に暗号化されるという方法である。
【0015】
データ認証局6では、接続認証を行い、データを受信すると共に、暗号化された情報の暗号を解除して(復号化)、証明コード発行サーバ61にデータを保管する(符号72)。保管するデータは、「発行順番号」、「認証ID(端末ID)」、「受信時間」、「測位時間(GPS時間)」、「測位データ」である(符号73)。
【0016】
次ぎに、データ認証局6では、証明コードの作成を行なう。証明コードは、発行要求者から提示された認証ID及び測位情報と、データ認証局6が得る時刻情報との統合情報から算出されるハッシュ値(第1ハッシュ値)である。時刻情報は、標準時と標準時対応公開情報を組み込んだ情報である。インターネット上で得られる標準時のみの情報では、完全な時刻証明を行なうことはできず、これに標準時対応公開情報を組み合わせることで、時刻の証明の完全を期すことができる。
【0017】
標準時は、日本標準時間、協定世界時、国際原子時、地域標準時が挙げられ、例えば独立行政法人情報通信機構(NICT)がインターネットに提供している日本標準時刻を用いることができる。また、時刻対応公開情報は、例えば気象庁から提供されている気象情報などの時系列物理現象、協定世界時または国際原子時が挙げられる。気象情報は指紋認証と同様に時刻毎に雲の形状が異なることを利用したものである。図2における時刻情報は、NICTがインターネットに提供している日本標準時刻(符号74)と気象庁が提供している自然現象の電子情報(符号75)を組み合わせたものである。
【0018】
データ認証局6は、認証ID、測位情報及び時刻情報との統合情報からハッシュ値を計算し、これを証明コードとして生成する(図2中、「生成情報暗号化」で示す。)。ハッシュ値とは、ハッシュと呼ばれるアルゴリズムを用いて生成された小さな固定長データを言う。すなわち、基のデータ(ビット列)をハッシュ関数という特別な関数を使って計算すると、決まった長さのビット列になる。それがハッシュ値である。ハッシュアルゴリズムは不可逆な一方向関数であるため、ハッシュ値とハッシュ関数が分かっていても、基のデータを再現することはできない。また、同じハッシュ値となる2つ以上の異なるデータを作成することは極めて困難である。従って、例えば通信回線を通じて電子データを送受信する際に、経路の両端でデータのハッシュ値を求めて両者を比較すれば、データが通信途中で改ざんされていないか調べることができ、例えばデータ認証局の原本データと利用者が有する被証明データのそれぞれのハッシュ値を求めて両者を比較すれば、被証明データが原本コピー後に改ざんされていないか調べることができる。1方向関数による生成であるため、ハッシュ値を変更しないまま元データを改ざんすることはできないためである。証明コードは例えばハッシュ関数で12桁の英数字に数値化したものが使用できる。
【0019】
次いで、データ認証局6は、生成した証明コード関連情報の保管を行なう(符号76)と共に、証明コードを携帯情報通信端末1に送信し、格納する(符号78)。証明コード関連情報とは、「発行順番号」、「認証ID(端末ID)」、「受信時間」、「測位時間(GPS時間)」、「測位データ」及び「証明コード」である(符号77)。証明コード関連情報の保管を行なうことにより、証明コードの照会を受けた際、回答することができる。また、証明コードを携帯情報通信端末1に送信した後は、「発行ログ」、「発行順番号」、「端末ID」、「発行日時」の発行関連情報を保存しておく(符号79)。これにより、どの端末にどのコードを送付したかを知ることができる。上記方法により、利用者(証明コード発行要求者)は、携帯情報通信端末1に調査位置証明及び測位時刻を証明した証明コードを取得することができる。これにより携帯情報通信端末1の所有者、すなわち、地盤調査会社が、この証明コードを利用することが可能となる。証明コードは第3者による時刻証明、すなわちタイムスタンプトークンの機能を有する。
【0020】
(III工程)
先ず、地盤調査機4から地盤調査データを取得する(図1中、IIIa及びIIIb)。地盤調査データは、調査現場画像データ3と地盤データ18を言う。調査現場画像データは、携帯情報通信端末1に内蔵のカメラを使用して撮影した調査現場画像である。これにより調査現場の状況が確認できる。地盤調査18は、地盤調査機4を使用して得られた地盤強度などのデータである。地盤調査機4としては、例えばスウェーデン式サウンディング試験方法を実施できる手動機械又はフルオート機械を言う。
【0021】
地盤調査データを携帯情報通信端末1に取得する方法(図1中、IIIb)としては、地盤調査機4で得られたデータを携帯情報通信端末1に手動で入力する方法、小型汎用拡張カード(CFカード)への書き込み読み取りを行なうカードの抜き差しによる方法又は地盤調査機から得られた地盤調査データを無線により携帯情報通信端末へ送信する無線送信方法のいずれであってもよい。
【0022】
カード利用方法としては、調査データをCFカードに書き込む機能を有する地盤調査機を使用する方法である。当該方法としては、先ず、携帯情報通信端末にCFカードを挿入しデータ認証局からの証明コードを込みこみ、次に証明コードが組み込まれたCFカードを携帯情報通信端末から取り外して、地盤調査機に差し込み地盤調査データをCFカードに書き込み、次いで、該CFカードを該地盤調査機から抜いて携帯情報通信端末に差し込みデータ認証局からの証明コードを組み込む方法が挙げられる。
【0023】
また、無線送信方法は、公知の通信ツールであるブルーツース(blue tooth)を利用した通信方法を使用することができる。無線送信方法は、地盤調査機で得られた地盤データをSSL暗号化した情報として携帯情報通信端末に送信するため、データを改ざんする余地がない点で好ましい。
【0024】
次いで、地盤調査データに該発行された証明コードを組み込み暗号化したデータ情報を該データ認証局に送信する。携帯情報通信端末1に取得した地盤調査データに発行された証明コードを組み込む方法としては、例えば、携帯情報通信端末1に取得した画像データ及び地盤強度データのそれぞれに発行された証明コードを組み込む方法、携帯情報通信端末1に先ず第1証明コードを取得し、その後地盤調査機4で地盤調査データを取得し次いで携帯情報通信端末1に取り込み、その後、第2証明コードを取得して地盤調査データを前後の時間で取得した2つの証明データでサンドイッチ化する方法などが挙げられる。サンドイッチ化する方法であれば、地盤調査データを取得した時刻を正確に知ることができる。
【0025】
「組み込み」とは、調査現場画像データ3に証明コード17を、地盤調査データ18に証明コード17をそれぞれ関連付けて付与し、更に証明コードを付された調査現場画像データ3と証明コードを付された地盤調査データ18を関連付けて統合されたデータ情報13とすることを意味し、例えば、調査現場画像データ3の電子情報の両末端部のマーカーに証明コードを配置する公知の方法あるいは地盤調査データファイル名を証明コードとする方法などが挙げられる。地盤調査データに証明コードを組み込むことで、電子データ情報の位置証明や時刻証明ができる状態を確立できる。具体的には、測位情報が「いつ」の時点で存在し、それ以降改ざんされずに証拠性を保っていることを第三者的に証明することができる。
【0026】
III工程において、データ情報13をデータ認証局6に送信する前において、携帯情報通信端末1に取得した地盤調査データ18と測位情報15を、タイムスタンプ局(不図示)によって前記II工程におけるデータ認証局6の調査時刻とは異なる証明方法で得られた調査時刻をスタンプされた電子情報として再度、携帯情報通信端末1に得ることもできる。データ認証局6の調査時刻とは異なる証明方法で得られた調査時刻とは、例えばデータ認証局6の調査時刻が、日本標準時間に気象情報を組み込んで得られる時刻情報であれば、日本標準時間に協定世界時または国際原子時を組み込んで得られる時刻情報を言う。タイムスタンプは地盤調査データ及び測位情報のそれぞれに付与される。これにより、地盤調査データ3、18、測位情報15及び調査時刻16の電子情報はタイムスタンプ局とデータ認証局6(共に第3者機関)の別々の証明により、二重のロックがかけられ、改ざんの余地はほとんど解消される。これにより、調査時刻の信憑性を更に高いものとすることができる。タイムスタンプ局に送信する地盤調査データ18と測位情報は、データ認証局6で発行された証明データが組み込まれた後であっても、組み込まれる前であってもよい。
【0027】
このようなタイムスタンプ機能による電子データの存在証明は、公知の方法で行うことができる。タイムスタンプ局は、財団法人日本データ通信協会が認定した会社を利用することができ、例えばアマノタイムビジネス社、日本電子公証機構社、三菱電機社提供の位置時刻証明情報提供サービスなどが挙げられる。
【0028】
タイムスタンプ機能の一例を説明する。すなわち、先ず、利用者が地盤調査データ及び測位情報の電子情報のハッシュ値を計算し、当該ハッシュ値をタイプスタンプ局に送信してタイムスタンプ生成(タイムスタンプトークン)を要求する。タイプスタンプ局は、当該ハッシュ値と時刻情報を統合したタイムスタンプトークンを作成する。
【0029】
時刻情報は、標準時対応公開情報が異なるものである以外は、前述したデータ認証局が証明コードを発行する際の使用する時刻情報と同様のものであり、標準時に標準時対応公開情報を組み合わせた情報である。タイムスタンプトークンはタイプスタンプ局の秘密鍵で署名されたものであり、これを利用者に対してタイムスタンプトークン返信を行なう。利用者は携帯情報通信端末に秘密鍵付きのタイムスタンプトークンを得る。
【0030】
タイムスタンプトークンの検証は次ぎのように行なう。利用者は地盤調査データ及び測位情報の電子情報のハッシュ値を再計算してハッシュ値Cを得る。次ぎにタイムスタンプトークンを公開鍵で複号してハッシュ値Dを知る。ハッシュ値Cとハッシュ値Dを比較対比して、その値が一致していれば、タイムスタンプ時刻にそのデータが存在し、改ざんされていないと判断され、不一致であれば、改ざんがありと判断される。
【0031】
次に、証明コードが組み込まれた地盤データを暗号化したデータ情報13としてデータ認証局6に送信する(図1中、IIIc)。暗号化は、SSL化による暗号であっても、ハッシュ値による暗号であってもよい。データ情報13の暗号化により、情報内容の秘密が保たれる。この暗号化されたデータ情報は、データ認証局6に送信して、データ認証局6のパソコン又はパソコンに接続されたアーカイブサーバ62に原本として保存される。パソコン又はパソコンに接続されたアーカイブサーバ62は、本証明方法を実施するに十分なCPU機能などを有するものである。データ認証局6はデータ情報をアーカイブサーバ62に保管し、利用者が地盤調査データの位置証明、時刻証明を求める際の比較用原本情報として利用されるものである。
【0032】
(IV工程)
利用者8が利用者側パソコン81のブラウザを起動してデータ認証局6に接続できる認証サイト画面を表示させた後、ユーザーID、パスワード及び証明コードを入力し、次いでデータ情報13を証明コード17と共に利用者側パソコン81にダウンロードして利用する工程である(図1中、符号57)。利用者8としては、地盤調査会社、工務店及び施主など、当該地盤に建物を建築する関係者である。利用者8は証明コードが手元にあれば、誰でも手元のパソコンからデータ情報13を利用、閲覧することができる。
【0033】
データ情報13のコピー11の利用の一例を示す。利用者8は、ダウンロードした証明コード付き地盤調査データを使用し、電子ファイル形式もしくは紙媒体形式における地盤調査報告書を作成する。なお、利用者8は電子ファイル形式もしくは紙媒体形式における地盤調査報告書に証明コード17をデータとして書込もしくは記載し、利用者の販売先に納品する。販売先においては、地盤調査報告書を参考にして、地盤改良工事などの計画を行なうと共に、地盤改良工事などを行なう前に、V工程の如く、証明コード17を利用して地盤調査報告書の信憑性を確認することができる。
【0034】
(V工程)
証明コードを組み込んだ被証明データと原本を比較対比する方法としては、被証明データと原本をデータ認証局側が比較対比する方法と、利用者側が比較対比する方法がある。先ず、被証明データと原本をデータ認証局側が比較対比する方法を説明する。被証明者9が手元にある証明コードを組み込んだ地盤調査データ(被証明データ)、すなわち、地盤調査報告書12の信憑性をデータ認証局6に求める工程である。すなわち、被証明者9が被証明者側パソコン82のブラウザを起動してデータ認証局6に接続できる認証サイト画面を表示させた後、証明コードを入力し、データ認証局6に接続し、被証明データ12を送信する(図1中、符号58)。データ認証局側は、送信されてきた被証明データ12と原本13とを比較対比して、送信されてきた情報の改ざんの有無を判定する。
【0035】
被証明者9としては、通常例えば施主など納品先利用者であるが、これに限定されず、例えば地盤調査会社、工務店なども証明を受けることができる。被証明データ12は、例えば地盤調査会社や工務店から納品先利用者に送付された証明コードが付された地盤調査報告書であり、改ざんがなければ、データ認証局6のアーカイブサーバ62に保存される原本と一致するものである。
【0036】
送信されてきた被証明データ12と原本13との比較対比は該被証明データ12のハッシュ値Bと原本13のハッシュ値A(第2ハッシュ値)とを比較対比して、ハッシュ値Bとハッシュ値Aが一致していれば、該被証明データ12(証明コードと関連付けられた地盤調査データ)は、地盤調査報告書に示している緯度・経度、時刻に取得したデータであり、改ざんされていないと判断され、その結果が被証明者9に通知される(図1中、符号59)。一方、ハッシュ値Bとハッシュ値Aが不一致であれば、地盤調査報告書に示している緯度・経度、時刻に取得したデータではなく、改ざんが行なわれたものと判断され、その結果が被証明者9に通知される。
【0037】
被証明データと原本を利用者が比較対比する方法としては、例えばデータ認証局から提供される、ハッシュ値算出機能を備えたアプリケーションを利用者側PCに組み込み、これを利用する方法が挙げられる。すなわち、被証明者9が被証明者側パソコン82のブラウザを起動してデータ認証局6に接続できる認証サイト画面を表示させた後、ユーザーID、パスワード及び証明コードを入力し、データ認証局6に接続し、原本のコピーを受信する。次いで、手元にある被証明データと原本コピーとを比較対比して、手元にある被証明データの改ざんの有無を判定する。
【0038】
手元にある被証明データと原本コピーとの比較対比は、前記のデータ認証局6が行う比較対比と同様の方法が利用できる。すなわち、被証明データ12のハッシュ値Bと原本13のハッシュ値A(第2ハッシュ値)とを比較対比して、ハッシュ値Bとハッシュ値Aが一致していれば、該被証明データ12(証明コードと関連付けられた地盤調査データ)は、地盤調査報告書に示している緯度・経度、時刻に取得したデータであり、改ざんされていないと判断される。一方、ハッシュ値Bとハッシュ値Aが不一致であれば、地盤調査報告書に示している緯度・経度、時刻に取得したデータではなく、改ざんが行なわれたものと判断される。
【0039】
なお、被証明データと原本コピーとの比較対比は、ハッシュ値以外の公知の暗号化及び複合化方法で行ってもよい。また、ハッシュ値以外の公知の暗号化の他に、共通鍵暗号方式、公開鍵暗号化方式、地盤調査データに電子署名を付加する方法などが挙げられる。地盤調査データに電子署名を付加する方法としては、前述のタイムスタンプ機能で実施するような電子的に数値化した暗号化公開鍵を使用する公知の方法が挙げられる。
【0040】
V工程においては、位置の証明、時間の証明又は被証明データの改ざんの有無の判定のいずれか1つを行なえばよいが、通常、位置証明及び時間証明の両証明を行うか、あるいは被証明データの改ざんの有無の判定を行なうものであり、特に位置の証明、時間の証明及び被証明データの改ざんの有無の判定の3つを同時に行なうことが多い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の証明方法によれば、地盤調査データが確実に調査時刻において調査地で測定したことを証明することができ、データに対する信頼性が向上する。すなわち、調査時刻が組み込まれた日時に確実に測位位置での地盤調査データが存在していたことを証明する存在証明とその存在証明が改ざんされていないことの完全性証明ができる。このため、将来、調査地盤上に建てられる建物の建築信頼性が向上する。また、各工程のすべてが電子データで受け渡すため、証明に費やす時刻が秒単位であり、データの根拠性を迅速に証明できる。証明データの原本は、データ認証局で保管するため、データ損失のリスクを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本例の地盤調査データ等を証明する方法を説明するための模式図である。
【図2】II工程である証明コード発行方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1 携帯情報通信端末
2 GPS衛星
3 調査現場画像データ
4 地盤調査機
6 データ認証局
8 利用者
9 被証明者
11 データ情報のコピー
12 被証明データ
13 データ情報
15 測位情報
16 調査時刻
17 証明コード
18 地盤データ
61 コード発行サーバ
62 アーカイブサーバ
81 利用者側パソコン
82 被証明者側パソコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤調査現場で調査を行なった地盤調査データ、当該地盤調査データを取得した調査位置及び調査時刻を証明する方法であって、
当該調査位置を特定するGPS衛星からの測位情報を携帯情報通信端末に取得するI工程と、
携帯情報通信端末に付与された認証IDと該測位情報をデータ認証局に送信して、該認証ID、該測位情報及び時刻情報から算出される証明コード(第1ハッシュ値)の発行を求め、該データ認証局から発行された証明コードを携帯情報通信端末に取得するII工程と、
地盤調査機から地盤調査データを取得し、該地盤調査データに該発行された証明コードを組み込み暗号化したデータ情報を、該データ認証局に送信して、該データ認証局のパソコン又はパソコンに接続されたサーバに原本として保存するIII工程と、
利用者が利用者側パソコンのブラウザを起動してデータ認証局に接続し、該データ情報を該証明コードと共に利用者側パソコンにダウンロードして利用するIV工程と、
該証明コードを組み込んだ被証明データと原本を比較対比して、被証明データの位置又は時間の証明あるいは被証明データの改ざんの有無の判定を行なうV工程とを備えることを特徴とする地盤調査データ、調査位置及び調査時刻を証明する方法。
【請求項2】
前記地盤調査データは、調査現場画像データと地盤調査機から取得する地盤データであることを特徴とする請求項1記載の地盤調査データ、調査位置及び調査時刻を証明する方法。
【請求項3】
前記II工程における時刻情報が、標準時間と時間対応公開情報を組み込んだ情報であることを特徴とする請求項1又は2記載の地盤調査データ、調査位置及び調査時刻を証明する方法。
【請求項4】
前記III工程において、当該地盤調査データを携帯情報通信端末に取得する方法が、小型汎用拡張カード(CFカード)への書き込み読み取りを行なうカードの抜き差しによる方法又は地盤調査機から得られた地盤調査データを無線により携帯情報通信端末へ送信する無線送信方法であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の地盤調査データ、調査位置及び調査時刻を証明する方法。
【請求項5】
前記III工程のデータ情報をデータ認証局に送信する前において、携帯情報通信端末に取得した地盤調査データと測位情報を、タイムスタンプ局によって前記II工程におけるデータ認証局の調査時刻とは異なる証明方法で得られた調査時刻をスタンプされた電子情報として再度、携帯情報通信端末に得ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の地盤調査データ、調査位置及び調査時刻を証明する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−283235(P2008−283235A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123029(P2007−123029)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(705000293)サムシングホールディングス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】