説明

均一性に優れたプリプレグの製造方法

【課題】シート状の強化繊維材料とこれに含浸せしめられた熱可塑性樹脂とからなる、均一性に優れたプリプレグを提供するための、生産性の高い製造方法を提供すること。
【解決手段】シート状の強化繊維材料に熱可塑性樹脂を含浸させてプリプレグを製造するに当たり、熱可塑性樹脂粉末を、水、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭素類から選ばれた1種若しくは2種以上の溶媒又は混合溶媒に分散させたサスペンジョンに、シート状の強化繊維材料を浸漬させて樹脂粉末を含むサスペンジョンをこの強化繊維材料に付着せしめ、次いでこの強化繊維材料を、熱ロールに接触させる方式で、溶媒又は混合溶媒の含量が10重量%以下になるまで加熱・乾燥し、その後、この乾燥された強化繊維材料を170〜390℃に加熱して樹脂粉末を溶融させ、シート状の強化繊維材料と熱可塑性樹脂を一体化させることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の強化繊維材料とこれに含浸せしめられた熱可塑性樹脂とから、均一性に優れたプリプレグを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維材料は、各種のマトリックス樹脂と複合化され、得られる強化繊維複合材料は種々の分野・用途に広く利用されるようになってきた。そして、高度の機械的特性や耐熱性等を要求される航空・宇宙分野や、一般産業分野では、従来、マトリックス樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が使用されてきた。しかし、特に航空・宇宙分野では、これらのマトリックス樹脂は、脆く、耐衝撃性に劣るという欠点を有するため、その改善が求められてきた。また、熱硬化性樹脂の場合、これをプリプリグとしたとき、樹脂のライフ等によるプリプレグの保存管理上の問題点や、成形時間が長く生産性が低い等の問題もあった。
【0003】
これに対して、熱可塑性樹脂プリプレグの場合は、複合材料としたときの耐衝撃性が優れ、プリプレグの保存管理が容易で、かつ成形時間が短く、成形コスト低減の可能性もある。熱可塑性樹脂プリプレグの製造法としては、従来、例えば、フイルム状の樹脂を加熱溶融して強化繊維材料に含浸させる方法(溶融含浸法)、粉末状の樹脂を流動床法や懸濁法によって強化繊維材料に塗布・融着させる方法(パウダー法)、樹脂を溶液化し、強化繊維材料に含浸後溶媒を除去する方法(溶液含浸法)が知られている。しかしながら、溶融含浸法は、樹脂の溶融粘度が高いため繊維材料の内部にまで均一に樹脂を含浸させるのが困難であり、パウダー法では、樹脂の付着量を調整するのが難しく、溶液含浸法では、使用できる樹脂や溶媒の種類が制限されるという問題点・欠点があった。
【0004】
従来技術を改良したプリプレグの製造方法として、熱可塑性樹脂の粉末をアルコール等の有機溶媒又は有機溶媒と水との混合溶媒に分散させてサスペンジョンとし、かかるサスペンジョンに炭素繊維のストランド又はシートを浸漬し、樹脂粉末をストランド又はシートに付着させた後加熱して、樹脂を溶融させて熱可塑性樹脂と炭素繊維のストランド又はシートを一体化させる方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法によると、樹脂が比較的均一に含浸したプリプレグ(含浸樹脂量のバラツキ値が4.2〜5.0)が得られること、更にサスペンジョンに通電処理を行う方法を組合わせると、バラツキ値が2.8〜3.8のものも得られたことが例示されている。しかしながら、最近の特に航空・宇宙分野の材料としては、より一層均一性等に優れたプリプレグが求められるようになっており、しかもその製造法も出来るだけシンプルなものである必要がある。
【特許文献1】特公平4−12894号公報
【0005】
本発明者も、シート状の強化繊維材料に熱可塑性樹脂を含浸させてプリプレグを製造するに当たり、熱可塑性樹脂粉末を、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭素類から選ばれた1種若しくは2種以上の有機溶媒又はかかる有機溶媒と水との混合溶媒に分散させたサスペンジョンを用いて、特定の加工条件を採用することにより、均一性と表面平滑性に優れたプリプレグを製造する方法を提案した(特許文献2〜3参照)。しかしながら、かかる提案の方法では、得られたプリプレグの性能は優れたものであるが、生産性が必ずしも高くないという問題があった。
【特許文献2】特開2005−238596号公報
【特許文献3】特開2005−239843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、シート状の強化繊維材料とこれに含浸せしめられた熱可塑性樹脂とからなる、ボイドが少なくかつ厚みのバラツキも少ない均一性に優れたプリプレグを提供するための、生産性の高い製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シート状の強化繊維材料に熱可塑性樹脂を含浸させてプリプレグを製造するに当たり、熱可塑性樹脂粉末を、水、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭素類から選ばれた1種若しくは2種以上の溶媒又は混合溶媒に分散させたサスペンジョンに、シート状の強化繊維材料を浸漬させて樹脂粉末を含むサスペンジョンをこの強化繊維材料に付着せしめ、次いで該強化繊維材料を、熱ロールに接触させる方式で、溶媒又は混合溶媒の含量が10重量%以下、好ましくは5重量%以下なるまで加熱・乾燥し、その後、該乾燥された強化繊維材料を170〜390℃に加熱して樹脂粉末を溶融させ、シート状の強化繊維材料と熱可塑性樹脂を一体化させることを特徴とする均一性に優れたプリプレグの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シート状の強化繊維材料に熱可塑性樹脂を含浸させてなるプリプレグを、生産効率良く製造することができる。そして、得られたプリプレグは、これを用いて色々な用途の強化繊維複合材料に成形でき、プリプレグの均一性が高いが故に、得られた複合材料の機械的特性や耐熱性等の物性が非常に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、熱可塑性樹脂粉末を、水、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭素類から選ばれた1種若しくは2種以上の溶媒又は混合溶媒に分散させたサスペンジョンに、シート状の強化繊維材料を浸漬させて樹脂粉末を含むサスペンジョンをこの強化繊維材料に付着せしめるものである。
【0010】
本発明において、シート状の強化繊維材料とは、繊維材料を一方向にシート状に引き揃えたもの、これらを例えば直交に積層したもの、繊維材料を織物や編物や不織布等の布帛に成形したもの、編組等のストランド状のものを全て含む。強化繊維材料としては、無機繊維、有機繊維、金属繊維又はそれらの混合からなる繊維材料がある。具体的には、無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維を挙げることが出来る。有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維が挙げられる。好ましいのは、炭素繊維とアラミド繊維である。
【0011】
本発明において用いられる熱可塑性樹脂は、特に制限されないが、融点又はガラス転移温度が、150℃以上の結晶性又は非晶性の熱可塑性樹脂が好ましい。好ましい樹脂の具体例は、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族又は脂肪族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミドである。これらの樹脂は、2種以上併用しても良い。航空機用のプリプレグのためには、特にポリエーテルイミド(PEI)又はポリイミド(PI)が好ましい。
【0012】
本発明において樹脂粉末は、強化繊維材料への良好な付着(繊維間あるいは繊維表面に樹脂粉末が保持された状態)を考慮すると、樹脂粉末の粒子径は50μm以下で、取扱性の点からは1μmを下回らないのが良く、平均粒子径が5〜20μmの範囲のものが好ましい。上記の範囲の粒度分布を持っている熱可塑性樹脂粉末は、後述の分散媒に分散させたとき、その分散性(サスペンジョン浴内の樹脂粉末のバラツキ)が安定しており、長時間生産においても、繊維材料に樹脂粉末を安定的に付着できるという特徴がある。
【0013】
本発明においては、シート状の強化繊維材料をスペンジョンに浸漬させて、樹脂粉末をこの強化繊維材料に付着せしめ、次いで該強化繊維材料を、熱ロールに接触させる方式で、溶媒又は混合溶媒の含量が10重量%(強化繊維材料と溶媒又は混合溶媒の全体の重量を基準として)以下、好ましくは5重量%以下なるまで加熱・乾燥し、その後、該乾燥された強化繊維材料を170〜390℃に加熱して樹脂粉末を溶融させ、シート状の強化繊維材料と熱可塑性樹脂を一体化させるものである。
【0014】
本発明においては、溶媒又は混合溶媒の含量が10重量%以下になるまで加熱・乾燥させる方法・手段として、熱ロールに接触させる方式を採用したところに特徴がある。溶媒を含浸してウエット状態のシート状の強化繊維材料を乾燥させる方法・手段としては、通常、熱風乾燥機、遠赤外線乾燥機、電熱乾燥機等が用いられる。しかしながら、かかる通常の方法・手段では、溶媒の含量を10重量%以下にするのは困難であり、乾燥工程の生産性の低い(乾燥速度が遅い)という問題がある。また、遠赤外線乾燥機では温度のコントロールが難しく、熱風乾燥機では粉末が舞い上がりという問題もある。
【0015】
これに対し、本発明のごとく熱ロールに接触させる方式を用いると、粉末の飛散が避けられ、乾燥速度・効率も高く、容易に溶媒又は混合溶媒の含量を10重量%以下にすることができ、その結果、次の樹脂粉末の溶融工程で樹脂が加水分解・劣化することも避けられるという特徴がある。熱ロールの加熱手段は、電熱又は蒸気による加熱等のいずれでも良い。また、熱ロールの個数や配置の仕方等は、必要に応じて任意に設定できるが、1〜10m/minの乾燥速度で溶媒又は混合溶媒の含量が10重量%以下となるように設定するのが好ましい。
【0016】
乾燥後、乾燥された強化繊維材料を170〜390℃、好ましくは200〜300℃に加熱して樹脂粉末を溶融させ、シート状の強化繊維材料と熱可塑性樹脂を一体化させるが、その後、引き続いて上下一対の加熱・加圧ローラーを用いてローラー圧力3〜10Kg/cm(計算線圧)、ローラー温度(Tg+15)〜(Tg+100)℃に加熱して樹脂を含浸させ、シート状の強化繊維材料と熱可塑性樹脂との一体化を十分に行うのが好ましい。
【0017】
本発明の製造法の一例を、図1を参照しながら説明する。図1において、シート状の強化繊維材料1を、熱可塑性樹脂粉末を分散媒に分散させたサスペンジョン浴2にガイドローラー3を介して導入する。強化繊維材料1がサスペンジョン浴2を通過する間に、樹脂粉末は強化繊維材料1に付着せしめられる。次いで、サスペンジョン浴2から取出された強化繊維材料1は、乾燥機4に導入され分散媒を除去することによって乾燥される。次いで、強化繊維材料1は加熱ゾーン5で樹脂を溶融する程度に加熱され、同時に、上下一対の加熱・加圧ローラー6に導かれ、ローラー圧力3〜10Kg/cm(計算線圧)、ローラー温度(Tg+15)〜(Tg+100)℃で加熱加圧される。かかる操作で強化繊維材料1に付着した樹脂粉末は溶融し、繊維材料表面及び繊維間に含浸せしめられる。次いで強化繊維材料は引取りローラー7を経て巻取りローラー8に巻き取られる。
【0018】
本発明においては、乾燥機4で、強化繊維材料は、熱ロールに接触させる方式で、溶媒又は混合溶媒の含量が10重量%以下になるまで加熱・乾燥され。熱ロールは、図1に示したような配置のもの以外に、例えば、図2又は図3に示したような数と配置のものでも良い。加熱・乾燥の温度は、熱可塑性樹脂が分解又は反応しない温度下で乾燥される。一般的には、80〜200℃で1〜20分間で十分である。乾燥速度は1〜10m/minが適当である。
【0019】
本発明において用いられる熱可塑性樹脂を分散させるための分散媒は、水、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭素類から選ばれた1種若しくは2種以上の溶媒又は混合溶媒である。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルセルソルブ等が、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が、ハロゲン化炭化水素類としては、塩化メチレン、ジクロロエタン等が挙げられる。中でも好ましいのは、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトンあるいはそれらと水との混合溶媒、又は水である。かかる分散媒は、シート状の強化繊維材料を浸漬させたとき繊維材料を適度に開繊させるという作用もあるので、サスペンジョン中の樹脂粉末が繊維材料に均一に付着するのに効果的である。
【0020】
熱可塑性樹脂とそれを分散させるための分散媒(溶媒)との組合わせは、樹脂が溶媒に溶解するものであってはならず、樹脂が溶媒に膨潤するかあるいは溶解しないものである必要がある。
【0021】
サスペンジョン中の熱可塑性樹脂の濃度((熱可塑性樹脂重量/分散媒重量+熱可塑性樹脂重量)×100)は、1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは5〜15重量%である。本発明において、プリプレグ中の熱可塑性樹脂の含有率は10〜70重量%が適当であり、好ましくは20〜50重量%のものである。
【0022】
シート状の強化繊維材料を浸漬させるときのサスペンジョンの温度は、樹脂の分散状態が良好に保たれる限り特に制限はなく、また、用いられる熱可塑性樹脂や分散媒の種類、濃度によって異なるが、通常は5〜50℃、好ましくは5〜30℃、さらに好ましくは15〜30℃である。浸漬時間は、熱可塑性樹脂の付着量にも依存するが、通常は5〜180秒間で十分である。
【0023】
本発明においては、樹脂粉末の付着の均一性をより上げるために、シート状の強化繊維材料の浸漬時に、繊維材料とサスペンジョン浴との間で直流電流による通電処理を行っても良い。例えば、繊維材料が接触する浴外の電極ローラーを陽極とし、サスペンジョン浴中に陰極を設け、浴中にある繊維材料の単位表面積当たり、電流密度が0.001〜5A/mとなるように通電すれば良い。
【0024】
次いで、乾燥された強化繊維材料は加熱ゾーン4で樹脂が溶融する程度に加熱される。加熱は、170〜390℃に加熱されたローラー間、又はスリット間を通すか、あるいはかかる温度の雰囲気中を通すことによって行うことができる。かかる処理によって付着した樹脂が溶融する。
【0025】
本発明においては、次いで強化繊維材料を、上下一対の加熱ローラーを用いてローラー圧力3〜10Kg/cm(計算線圧)、好ましくは5〜10Kg/cmで、ローラー温度(Tg+15)〜(Tg+100)℃、好ましくは(Tg+20)〜(Tg+80)℃で加熱して樹脂を含浸させ、シート状の強化繊維材料と熱可塑性樹脂を一体化させてプリプレグが製造される。かかる処理によってプリプレグの均一化と表面の平滑化が図られる。
【0026】
本発明において、シート状の強化繊維材料と熱可塑性樹脂の接着力をより高めるためには、シート状の強化繊維材料に繊維の集束剤、油剤、糊剤等が付着している場合には、事前にこれらを除去しておく方が望ましい。また、必要な場合には、事前に繊維材料の開繊処理や、電解や薬品による表面処理を行っておいても良い。
【実施例】
【0027】
以下、具体的な実施例により本発明を説明する。各実施例及び比較例において、得られたプリプレグの均一性の評価は、シート状の強化繊維材料への樹脂の含浸性の良否を示すボイド率、また、顕微鏡による断面観察で相対的に評価し、十分に平滑(◎)、かなり平滑(○)、平滑性に劣る(×)で示した。ボイド率は硫酸分解法により測定した。
【0028】
[実施例1]
ポリイミド樹脂(三井化学製PIXA−M)粉末(粒度分布、10%:8μm、50%:12μm、90%:17μm)をアセトンに分散させ、7%濃度のサスペンジョンを調整した。サスペンジョン浴に炭素繊維A(東邦テナックス社製IM600、単繊維直径5.0μm、12,000本)を平行に80本引き揃え、CF目付を145g/mに調整したシートを30〜60秒間浸漬し、樹脂の付着量が35±3重量%になるように調整した。引き続いて、シートを150℃で図1に示した熱ロールに1分間接触させることによって加熱・乾燥させた。この工程で、溶媒の含量は3.0重量%であった。次いで、表面温度が380〜390℃のローラーに通し樹脂を溶融する程度に加熱した。次いで、表面温度が250℃の上下一対のローラー間を5kgf/cmの圧力で通し、樹脂を炭素繊維材料に十分に含浸させることにより、一体化した強化炭素繊維のプリプレグを得た。得られたプリプレグのボイド率及び内部樹脂含浸性は表1に示した通りであった。
【0029】
[比較例1]
熱ロール無し以外は実施例1と同じ条件でプリプレグを得た。得られたプリプレグのボイド率及び内部樹脂含浸性は表1に示した通りであった。
【0030】
[実施例2]
熱可塑性樹脂としてPPS(ポリフェニレンサルファイド、大日本インキ製)の粉末(平均粒子径:10μm)を用い、これをアセトンに分散させ、7%濃度のサスペンジョンを調整した。サスペンジョン浴に、実施例1の炭素繊維Aと同じシート状の強化繊維材料を30〜60秒間浸漬し、樹脂の付着量が35±3重量%になるように調整した。引き続いて、シートを150℃で図1に示した熱ロールに1分間接触させることによって加熱・乾燥させた。この工程で、溶媒の含量は3.5重量%であった。次いで、表面温度が330〜350℃のローラーに通し樹脂を溶融する程度に加熱した。次いで、表面温度が130℃の上下一対のローラー間を5kgf/cmの圧力で通し、樹脂を炭素繊維材料に完全に含浸させることにより、一体化した強化炭素繊維のプリプレグを得た。得られたプリプレグのボイド率及び内部樹脂含浸性は表1に示した通りであった。
【0031】
[比較例2]
熱ロール無し以外は実施例2と同じ条件でプリプレグを得た。得られたプリプレグのボイド率及び内部樹脂含浸性は表1に示した通りであった。
【0032】
表1の結果から、本発明の熱ローラによる乾燥の場合に限って、ボイド率と内部樹脂含浸性が十分に満足すべきものが得られていることがわかる。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の均一性と表面平滑性に優れたプリプレグは、目的に応じて、積層し、再度加熱、加圧して実質的に均一構造の複合材料に成形することが出来る。得られた複合材料は、優れた耐衝撃性等の機械的性質や優れた耐熱性等を有するので、航空・宇宙分野や一般産業分野に広く使用される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のプリプレグの製造工程の一例を示す概略図である。
【図2】本発明における乾燥機中での熱ロールの接触方式の一例を示す図である。
【図3】本発明における乾燥機中での熱ロールの接触方式の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 強化繊維材料
2 サスペンジョン浴
3 ガイドローラー
4 乾燥機
5 加熱ゾーン
6 一対の加熱・加圧ローラー
7 引取りローラー
8 巻取りローラー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の強化繊維材料に熱可塑性樹脂を含浸させてプリプレグを製造するに当たり、熱可塑性樹脂粉末を、水、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭素類から選ばれた1種若しくは2種以上の溶媒又は混合溶媒に分散させたサスペンジョンに、シート状の強化繊維材料を浸漬させて樹脂粉末を含むサスペンジョンをこの強化繊維材料に付着せしめ、次いで該強化繊維材料を、熱ロールに接触させる方式で、溶媒又は混合溶媒の含量が10重量%以下になるまで加熱・乾燥し、その後、該乾燥された強化繊維材料を170〜390℃に加熱して樹脂粉末を溶融させ、シート状の強化繊維材料と熱可塑性樹脂を一体化させることを特徴とする均一性に優れたプリプレグの製造方法。
【請求項2】
溶媒又は混合溶媒の含量が、5重量%以下になるまで加熱・乾燥させることを特徴とする請求項1記載の均一性に優れたプリプレグの製造方法。
【請求項3】
樹脂粉末が付着し加熱・乾燥された強化繊維材料を、170〜390℃に加熱して樹脂粉末を溶融させつつ、又は、溶融させた後引き続いて、上下一対の加熱・加圧ローラーを用いてローラー圧力3〜10Kg/cm、ローラー温度(Tg+15)〜(Tg+100)℃で加熱・加圧して、樹脂をシート状の強化繊維材料中に溶融・含浸させ一体化させることを特徴とする請求項1又は2記載の均一性に優れたプリプレグの製造方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂粉末の平均粒子径が、5〜20μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の均一性に優れたプリプレグの製造方法。
【請求項5】
サスペンジョン中の熱可塑性樹脂の濃度が、1〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の均一性に優れたプリプレグの製造方法。
【請求項6】
プリプレグ中の熱可塑性樹脂の含有率が、10〜70重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の均一性に優れたプリプレグの製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂の融点又はガラス転移温度が、150℃以上の結晶性又は非晶性の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の均一性に優れたプリプレグの製造方法。
【請求項8】
熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミドなる群から選ばれた1種若しくは2種以上の樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の均一性に優れたプリプレグの製造方法。












【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−44999(P2008−44999A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219964(P2006−219964)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000003090)東邦テナックス株式会社 (246)
【Fターム(参考)】