説明

均質化装置

【課題】流体を均質化でき且つ処理量を向上できる均質化装置を提供すること。
【解決手段】均質化装置10は、深さ方向に向かって縮径する凹部23と、この凹部23の底部24に連通された導出路25とを有する臼体20と、凹部23と略対称な形状を有し、僅少な隙間Cをあけて凹部23に嵌合された嵌合体30とを備える。供給口43から供給された複数成分の流体は、隙間Cを通って導出路25から導出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数成分の流体を均質化する均質化装置に関し、より詳しくは複数成分を反応させるマイクロリアクタ、液体中の粒状物を破砕する破砕装置に関する。また、本発明は、複数成分が均質化された組成物又は複数成分の反応産物の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反応過程の安定化や液体中の粒状物(ダマ)の低減のため、複数成分の流体を均質化させる技術が研究されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10(A)は従来例に係るマイクロリアクタ900の全体斜視図であり、図10(B)はその中央における縦断面図である。マイクロリアクタ900は第1供給路911及び第2供給路913を備え、これら第1供給路911及び第2供給路913の各々から流体の第1成分及び第2成分が供給される。これら第1成分及び第2成分は合流点915にて合流した後、細管917を通って外部へ導出される。細管917を通過する過程で、第1成分及び第2成分は強制的に混じりあうことになるため、導出される流体は均質化されたものとなる。
【0004】
図11は、別の従来例に係る均質化装置950の全体斜視図である。均質化装置950は臼体960を備え、この臼体960は円柱状の凹部961を有する。均質化装置950は円柱状の嵌合体970を更に備え、この嵌合体970は僅少な隙間965をあけて凹部961に嵌合されている。また、嵌合体970は図示しない駆動源に接続されており、この駆動源によって軸方向に超音波振動する。
【0005】
更に、臼体960には導入口967及び導出口969が形成されている。これら導入口967及び導出口969は凹部961を挟んで配置され、凹部961を外部に連通させる。
【0006】
導入口967から導入された流体は、隙間965を通って導出口969から導出される間、嵌合体970の振動に応じて超音波振動する。これにより、流体中の複数成分が強力に混じりあい、均質化された流体が導出口969から外部に導出されることになる。
【特許文献1】特開2007−14936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に示されるマイクロリアクタ900では、複数成分を均質化するためには細管917を狭めざるを得ず、細管917を通過できる流量が制限される。このため、流体の均質化及び処理量の向上という相反する問題が残されている。
【0008】
また、均質化装置950でも、複数成分を均質化するためには、通過する流体が充分に超音波振動するよう隙間965を狭める必要がある。しかし、隙間965が狭まると、隙間965を通過できる流量が制限され、処理量が低下することになる。
【0009】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、流体を均質化でき且つ処理量を向上できる均質化装置、及び複数成分が均質化された組成物又は複数成分の反応産物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、深さ方向に向かって縮径する凹部と、この凹部に嵌合される嵌合体とで流体が通る隙間を形成することによって、流体を均質化でき且つ処理量を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0011】
(1) 深さ方向に向かって縮径する凹部と、この凹部の底部を外部に連通する導出路とを有する臼体と、
前記凹部と略対称な表面形状を有し、僅少な隙間をあけて前記凹部に嵌合された嵌合体と、を備える均質化装置であって、
供給された複数成分の流体は、前記隙間を通って前記導出路から導出される均質化装置。
【0012】
(1)の発明によれば、複数成分の流体が僅少な隙間を通る過程で強制的に混じりあうため、導出される流体は均質化されたものとなる。また、流体の通路が微細な管路である従来のマイクロリアクタと異なり、隙間が嵌合体の周囲に形成される。このため、流体の流通量が大きく、処理量を向上できる。
【0013】
しかも、凹部を深さ方向に向かって縮径させたので、隙間も凹部の深さ方向に向かうにつれて徐々に狭まる。よって、流体が導出路に接近するにつれて、流体に適度な圧力が徐々に付加される。これにより、複数成分が穏和且つ充分に混じりあわされ、流体を均質化できる。
【0014】
(2) 前記臼体及び/又は前記嵌合体を、前記凹部の深さ方向に超音波振動させる振動手段を更に備える(1)記載の均質化装置。
【0015】
(2)の発明によれば、供給された流体は隙間を通る際に超音波振動し、流体中の複数成分が強力に混じりあう。そして、均質化された流体が導出路から外部へと導出される。
【0016】
ここで、凹部を深さ方向に向かって縮径させ、嵌合体を凹部と略対称な形状としたので、隙間はその全体が深さ方向、つまり臼体及び/又は嵌合体が超音波振動する方向に対して角度をなす。このため、隙間を通る流体は超音波振動し、均質化される。
また、隙間は嵌合体の全周囲に形成され、流体の流れ方向に対する断面積が大きい。このため、隙間を通過する流体量が上昇し、処理量を向上できる。
【0017】
これに対して、例えば前述の均質化装置950では、嵌合体970の側壁と凹部961との隙間が凹部961の深さ方向と平行である。このため、嵌合体970の側壁と凹部961との隙間に流体を通したと仮定しても、その流体は超音波振動せず、均質化されない。
【0018】
(3) 前記臼体及び前記嵌合体の間に介在するフィルタを更に備える(1)又は(2)記載の均質化装置。
【0019】
(3)の発明によれば、臼体及び嵌合体の間にフィルタを介在させたので、流体中に粒状物が混在していた場合でも、この粒状物はフィルタで濾別される。これにより、粒状物が導出路から外部へと導出されるのが抑制されるので、流体をより均質化できる。
【0020】
(4) 前記臼体及び前記嵌合体を、前記凹部の深さ方向を軸として相対的に回転させる回転手段を更に備える(1)から(3)いずれか記載の均質化装置。
【0021】
(4)の発明によれば、回転手段を更に設けたので、臼体及び嵌合体は超音波振動するとともに、相対的に回転運動する。これにより、隙間を通る流体が複雑に運動するため、流体をより均質化できる。
【0022】
なお、「相対的に回転」する限りにおいて、臼体及び嵌合体のいずれが回転し、もしくは双方が回転してもよい。
【0023】
(5) 前記嵌合体の周囲には、前記凹部の底部に向かって整列する微細な糸状体が配置されている(1)から(4)いずれか記載の均質化装置。
【0024】
(5)の発明によれば、微細な糸状体同士の間隙、又は糸状体及び嵌合体もしくは臼体の間隙は、前述した隙間よりも更に狭小化されたものとなる。ここで、糸状体を凹部の底部に向かって整列したので、供給された流体は多数の狭小な間隙を通過し、強制的に均質化が促進される。よって、流体をより均質化できる。
【0025】
(6) 前記糸状体は、前記凹部の浅部側に位置する基端と、前記凹部の底部側に位置する先端とを有し、前記基端の近傍で束ねて結ばれている(5)記載の均質化装置。
【0026】
糸状体は微細であるため、個々の嵌合体に固定することが困難である。嵌合体から脱落した糸状体は、導出口から流体と混在して導出されることが懸念される。また、糸状体の基端が嵌合体から離れて自在に揺動すると、流体の供給部に基端が接触し、汚染を誘発するおそれがある。
【0027】
そこで(6)の発明によれば、糸状体を束ねて結んだので、糸状体は微細な糸状体の群として一体化される。一体化された糸状体は嵌合体に容易に固定されるので、嵌合体からの脱落を抑制できる。
また、糸状体の基端近傍で束ねたので、嵌合体から基端が離れて揺動する範囲が限定される。これにより、汚染の発生を抑制できる。
【0028】
(7) 前記糸状体は、カーボンナノチューブである(5)又は(6)記載の均質化装置。
【0029】
(7)の発明によれば、糸状体としてカーボンナノチューブを採用したので、間隙が極めて狭小となり、流体をナノレベルで制御できる。また、カーボンナノチューブは安定であるため、種々の流体の均質化に利用でき、汎用性が高い。
【0030】
(8) 複数成分が均質化された組成物又は複数成分の反応産物の製造方法であって、
深さ方向に向かって縮径する凹部と、この凹部と略対称な表面形状を有し前記凹部に嵌合された嵌合体との僅少な隙間に、前記凹部の浅さ方向から複数成分の流体を通す手順を有する製造方法。
【0031】
(9) 前記隙間を流れる流体に超音波振動を付加する手順を更に有する(8)記載の製造方法。
【0032】
(10) 前記凹部及び前記嵌合体の間に介在するフィルタに流体を通過させる手順を更に有する(8)又は(9)記載の製造方法。
【0033】
(11) 前記臼体及び前記嵌合体を前記凹部の深さ方向を軸として相対的に回転させる手順を更に有する(8)から(10)いずれか記載の製造方法。
【0034】
(12) 前記嵌合体の周囲に配置され前記凹部の底部に向かって整列する微細な糸状体によって形成される間隙に流体を通過させる手順を更に有する(8)から(11)いずれか記載の製造方法。
【0035】
(8)から(12)いずれか記載の製造方法は、(1)から(5)いずれか記載の均質化装置を製造方法として展開したものである。よって、(8)から(12)記載の発明によれば、(1)から(5)の発明と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、供給された流体は隙間を通る際に超音波振動し、流体中の複数成分が強力に混じりあう。そして、均質化された流体が導出路から外部へと導出される。
ここで、凹部を深さ方向に向かって縮径させ、嵌合体を凹部と略対称な形状としたので、隙間はその全体が深さ方向、つまり臼体及び/又は嵌合体が超音波振動する方向に対して角度をなす。このため、隙間を通る流体は超音波振動し、均質化される。
また、隙間は嵌合体の全周囲に形成され、流体の流れ方向に対する断面積が大きい。このため、隙間を通過する流体量が上昇し、処理量を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態以外の各実施形態の説明において、第1実施形態と共通するものについては、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る均質化装置10の、凹部23の深さ方向に沿った断面図である。図2は図1のII−II線断面図である。
【0039】
図1に示されるように、均質化装置10は、臼体20と、嵌合体30と、供給部40と、を備える。各構成要素について、以下詳細に説明する。
【0040】
〔臼体〕
臼体20は臼体本体部21を有し、この臼体本体部21には凹部23が設けられている。この凹部23は深さ方向に向かって縮径し、本実施形態では逆円錐状である。また、凹部23の底部24には導出路25が設けられており、この導出路25は臼体本体部21を貫通し、底部24及び外部を連通する。
【0041】
〔嵌合体〕
嵌合体30は、凹部23と略対称な形状、つまり円錐形状を有し、僅少な隙間Cをあけて凹部23に嵌合されている(図2参照)。また、嵌合体30の基部には棒状体33が延設されており、この棒状体33には後述の超音波振動子53が接触している。
【0042】
嵌合体30は、軸方向AX、つまり凹部23の深さ方向に対して角度Θをなす。このため、嵌合体30及び凹部23の隙間Cも、凹部23の深さ方向に角度をなすことになる。
【0043】
ここで角度Θは、大きすぎると嵌合体30を大型化せざるを得ない一方、小さすぎると深さ方向つまり超音波振動の方向となす角度が浅く、流体が充分に超音波振動しないおそれがある。このため、Θは15°〜75°が好ましく、通常約30°であってよい。
【0044】
〔供給部〕
供給部40は、複数成分の流体を供給する。具体的には、供給部40は流体不透過性の被覆部41を有し、この被覆部41は凹部23の周囲にて臼体本体部21に接合されるとともに、棒状体33の側面に接合されている。また、被覆部41には供給口43が設けられ、この供給口43を通って流体が供給される。流体が通過する経路は、導出路25及び供給口43を除いて外部から遮断されるので、外部からの汚染が抑制される。
【0045】
〔振動部〕
本実施形態では、均質化装置10が振動手段としての振動部50を更に備える。この振動部50は発振器51を有し、この発振器51には超音波振動子53が電気的に接続されている。発振器51から高周波数の電流が超音波振動子53に供給されると、超音波振動子53が超音波振動する。ここで超音波振動子53はその振動方向が凹部23の深さ方向と一致するように、本実施形態では棒状体33の頂部に接触している。このため、深さ方向に沿った超音波振動子53の超音波振動は棒状体33を介して嵌合体30へと伝導され、嵌合体30が深さ方向に超音波振動する。
【0046】
また、振動部50は、フレーム55を介して臼体20に固着されているため、振動部50から伝導された振動で超音波振動する嵌合体30は、臼体20との隙間Cを通る流体を振動させることができる。
【0047】
なお、本実施形態に係る均質化装置10に供給する流体としては、特に限定されず、複数成分の流体であればよい。また、複数成分を同時に供給してもよいし、個別に供給してもよい。
【0048】
[動作]
以上の均質化装置10の動作を説明する。
【0049】
まず、複数成分の流体を、供給口43から被覆部41の内部空間へと供給する。この流体は隙間Cに順次流れこむ。底部24側に接近するにつれ隙間Cが徐々に狭くなるため、隙間Cを流れる流体に圧力が付加される。これにより、流体中の複数成分がゆっくりと交じりあうことになる。
【0050】
ここで、発振器51を起動すると、超音波振動子53が超音波振動を発生し、この振動が棒状体33を介して嵌合体30へと伝導し、嵌合体30は超音波振動する。すると、Cを通る流体が激しく振動し、複数成分が強力に混じりあう。やがて、底部24まで到達した流体は導出路25へと流れ込み、導出路25から外部へと導出される。
【0051】
このような均質化装置10は、例えば、複数成分を反応させるマイクロリアクタ、液体中の粒状物を破砕する破砕装置として使用できる。
【0052】
[作用効果]
本実施形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0053】
複数成分の流体が僅少な隙間Cを通る過程で強制的に混じりあうため、導出される流体は均質化されたものとなる。また、隙間Cが嵌合体30の周囲に形成されるため、流体の流通量が大きく、処理量を向上できる。
しかも、凹部23を逆円錐形状としたので、隙間Cも凹部23の深さ方向に向かうにつれて徐々に狭まる。よって、流体が導出路25に接近するにつれて、流体に適度な圧力が徐々に付加される。これにより、複数成分が穏和且つ充分に混じりあわされ、流体を均質化できる。
【0054】
凹部23を逆円錐形状とし、嵌合体30を凹部23と略対称な形状としたので、隙間Cはその全体が深さ方向、つまり嵌合体30が超音波振動する方向AXに対して角度Θをなす。このため、隙間Cを通る流体は超音波振動し、均質化される。
また、隙間Cは嵌合体30の全周囲に形成され、流体の流れ方向に対する断面積が大きい。このため、隙間Cを通過する流体量が上昇し、処理量を向上できる。
【0055】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態に係る均質化装置10Aの、凹部23の深さ方向に沿った断面図である。図4は、図3のフィルタ60が着脱する様子を示す図である。本実施形態は、フィルタ60が設けられている点において第1実施形態と異なる。
【0056】
即ち、均質化装置10Aは漏斗状のフィルタ60を更に備えており、この60は凹部23及び嵌合体30の間に介在している。フィルタ60の開口部には枠体61が取り付けられており、この枠体61は凹部23の上部に配置され、フィルタ60の姿勢を支持する。
【0057】
また、本実施形態では、フィルタ60は凹部23に着脱可能に嵌合されている。
【0058】
なお、本実施形態に係る均質化装置10Aは、振動部50を備えていても、備えていなくてもよい。
【0059】
[作用効果]
本実施形態によれば、前述した第1実施形態に加えて、以下の作用効果が得られる。
【0060】
臼体20及び嵌合体30の間にフィルタを介在させたので、流体中に粒状物が混在していた場合でも、この粒状物はフィルタで濾別される。これにより、粒状物が導出路から外部へと導出されるのが抑制されるので、流体をより均質化できる。
【0061】
フィルタ60を凹部23に着脱可能に嵌合したので、フィルタ60が消耗した場合には、フィルタ60のみを交換すればよい。よって、操業コストを低減できる。
【0062】
<第3実施形態>
図5は、本発明の第3実施形態に係る均質化装置10Bの、凹部23の深さ方向に沿った断面図である。本実施形態は、回転部70が更に設けられている点において第1実施形態と異なる。
【0063】
即ち、均質化装置10Bは、回転手段としての回転部70を更に備える。この回転部70はモータ71を有し、このモータ71は第1回転軸73を介して第1タイミングプーリ74に接続されている。これにより、モータ71が駆動すると、第1タイミングプーリ74が回転することになる。
【0064】
一方、棒状体33にはその中心軸方向に延びるように第2回転軸75が突設され、この第2回転軸75にはその突出方向と直交して第2タイミングプーリ76が固着されている。この第2タイミングプーリ76は、前述の第1タイミングプーリ74と弾性のタイミングベルト77を介して噛合されている。これにより、第1タイミングプーリ74が回転すると、その回転に同期して第2タイミングプーリ76が回転し、それに伴って棒状体33が回転することになる。
【0065】
第1タイミングプーリ74及び第2タイミングプーリ76には、径方向に突出する鍔部78,79がその両面にそれぞれ設けられている。タイミングベルト77は鍔部78,79の各々の間に挟まれるようにして、第1タイミングプーリ74及び第2タイミングプーリ76に噛合されている。これにより、タイミングベルト77が第1タイミングプーリ74及び第2タイミングプーリ76から脱落することを抑制できる。
【0066】
また、超音波振動子53は第2タイミングプーリ76の上面に接触している。これにより、超音波振動子53が発生する超音波振動は、第2タイミングプーリ76、第2回転軸75を介して棒状体33に伝導することになる。ここで、タイミングベルト77は弾性であるので、第2タイミングプーリ76の超音波振動を吸収し、第1タイミングプーリ74側に伝わりにくくする。
【0067】
なお、本実施形態に係る均質化装置10Bは、振動部50を備えていなくてもよい。
【0068】
[動作]
以上の均質化装置10Bの動作を説明する。
【0069】
まず、複数成分の流体を、供給口43から被覆部41の内部空間へと供給する。この流体は隙間Cに順次流れこむ。ここで、発振器51を起動すると、超音波振動子53が超音波振動を発生し、この振動が棒状体33を介して嵌合体30へと伝導し、嵌合体30は超音波振動する。すると、Cを通る流体が激しく振動し、複数成分が強力に混じりあう。更に、モータ71を稼動させると、棒状体33が回転する。すると、Cを通る流体はすり潰され、粒状物の破砕等が促進される。やがて、底部24まで到達した流体は導出路25へと流れ込み、導出路25から外部へと導出されることになる。
【0070】
[作用効果]
本実施形態によれば、前述した第1実施形態に加えて、以下の作用効果が得られる。
【0071】
回転部70を更に設けたので、臼体20及び嵌合体30は超音波振動するとともに、相対的に回転運動する。これにより、隙間Cを通る流体が複雑に運動するため、流体をより均質化できる。
【0072】
<第4実施形態>
図6は、本発明の第4実施形態に係る均質化装置10Cの断面図である。図7は、嵌合体30B及び棒状体33Bの拡大半断面図である。図8は図6のVIII−VIII線断面図である。本実施形態は、カーボンナノチューブ80が配置されるとともに、主供給路45及び分岐路47を有する点において第3実施形態と異なる。
【0073】
即ち、嵌合体30Bの周囲には微細な糸状体としてのカーボンナノチューブ80が多数配置され、これらカーボンナノチューブ80は底部24に向かって整列している。カーボンナノチューブ80の基端84は凹部23の浅部側に位置し、先端86は凹部23の底部24側に位置する。
【0074】
一方、棒状体33Bの側面には、その軸方向に直交して窪み85が設けられている。カーボンナノチューブ80は、その途中にて第1ワイヤ83で棒状体33Bに束ねて結び付けられ、第1ワイヤ83は窪み85に嵌め込まれる。これにより、第1ワイヤ83が移動することが抑制され、カーボンナノチューブ80が棒状体33Bに固定されることになる。
【0075】
カーボンナノチューブ80は第1ワイヤ83において折り返され、基端84の近傍にて第2ワイヤ81で束ねて結び付けられている。これにより、カーボンナノチューブ80は二重に結び付けられることになり、容易に脱落しなくなる。
【0076】
また、嵌合体30B及び棒状体33Bには、その中心軸に沿って主供給路45が設けられ、この主供給路45には第2の流体が供給される。主供給路45は幾重に分岐した分岐路47を有し、これら分岐路47は嵌合体30Bの外表面まで貫通する。これにより、主供給路45に供給された流体は分岐路47を通って隙間Cに放出される。
【0077】
図8に示されるように、分岐路47は嵌合体30Bの外表面に略等間隔で貫通されている。このため、回転部70を起動して嵌合体30Bが臼体20に対して相対的に回転すると、分岐路47から隙間Cへの第2の流体の放出が全方向に対してなされる。これにより、供給口43から供給される流体と、第2の流体との混じりあいが、過剰に偏ることなくなされる。
【0078】
図9は図6の部分拡大断面図である。図9に示されるように、隙間Cには多数のカーボンナノチューブ80が敷き詰められており、これら微細なカーボンナノチューブ80同士の間隙、又はカーボンナノチューブ80及び嵌合体30Bもしくは臼体20の間隙は、隙間Cよりも更に狭小化されたものである。
【0079】
このような均質化装置10Cは、極小の間隙を有するため、白金等の貴金属のナノチューブの製造に好ましく使用できる。即ち、貴金属のナノチューブを形成するための材料流体を供給口43及び主供給路45の各々から供給すると、これらの材料が隙間C内の間隙内で速やかに混じりあわされ、間隙の形状にあわせて整列する。これにより、貴金属がチューブ状に析出し、ナノチューブが形成される。
【0080】
[作用効果]
本実施形態によれば、前述した第1実施形態に加えて、以下の作用効果が得られる。
【0081】
カーボンナノチューブ80を凹部23の底部24に向かって整列したので、供給された流体は多数の狭小な間隙を通過し、強制的に均質化が促進される。よって、流体をより均質化できる。
【0082】
カーボンナノチューブ80を束ねて結んだので、カーボンナノチューブ80は微細なカーボンナノチューブ80の群として一体化される。一体化された糸状体は嵌合体30に容易に固定されるので、嵌合体30Bからの脱落を抑制できる。
また、カーボンナノチューブ80の基端84近傍で束ねたので、嵌合体30Bから基端84が離れて揺動する範囲が限定される。これにより、汚染の発生を抑制できる。
【0083】
カーボンナノチューブ80を採用したので、間隙が極めて狭小となり、流体をナノレベルで制御できる。また、カーボンナノチューブ80は安定であるため、種々の流体の均質化に利用でき、汎用性が高い。
【0084】
<変形例>
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。例えば、第4実施形態では、カーボンナノチューブ80を棒状体33Bの側面で固定したが、これに限られず、嵌合体30Bの側面であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1実施形態に係る均質化装置の、凹部の深さ方向に沿った断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る均質化装置の、凹部の深さ方向に沿った断面図である。
【図4】図3のフィルタが着脱する様子を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る均質化装置の、凹部の深さ方向に沿った断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る均質化装置の断面図である。
【図7】図6の嵌合体の拡大半断面図である。
【図8】図6の部分拡大斜視図である
【図9】図6のVIII−VIII線断面図である
【図10】従来例に係るマイクロリアクタの全体斜視図である
【図11】別の従来例に係る均質化装置の全体斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
10,10A,10B,10C 均質化装置
20 臼体
23 凹部
24 底部
25 導出路
30、30B 嵌合体
40 供給部(供給手段)
50 振動部(振動手段)
60 フィルタ
70 回転部(回転手段)
80 カーボンナノチューブ(糸状体)
84 基端
86 先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
深さ方向に向かって縮径する凹部と、この凹部の底部を外部に連通する導出路とを有する臼体と、
前記凹部と略対称な表面形状を有し、僅少な隙間をあけて前記凹部に嵌合された嵌合体と、を備える均質化装置であって、
供給された複数成分の流体は、前記隙間を通って前記導出路から導出される均質化装置。
【請求項2】
前記臼体及び/又は前記嵌合体を、前記凹部の深さ方向に超音波振動させる振動手段を更に備える請求項1記載の均質化装置。
【請求項3】
前記臼体及び前記嵌合体の間に介在するフィルタを更に備える請求項1又は2記載の均質化装置。
【請求項4】
前記臼体及び前記嵌合体を、前記凹部の深さ方向を軸として相対的に回転させる回転手段を更に備える請求項1から3いずれか記載の均質化装置。
【請求項5】
前記嵌合体の周囲には、前記凹部の底部に向かって整列する微細な糸状体が配置されている請求項1から4いずれか記載の均質化装置。
【請求項6】
前記糸状体は、前記凹部の浅部側に位置する基端と、前記凹部の底部側に位置する先端とを有し、前記基端の近傍で束ねて結ばれている請求項5記載の均質化装置。
【請求項7】
前記糸状体は、カーボンナノチューブである請求項5又は6記載の均質化装置。
【請求項8】
複数成分が均質化された組成物又は複数成分の反応産物の製造方法であって、
深さ方向に向かって縮径する凹部と、この凹部と略対称な表面形状を有し前記凹部に嵌合された嵌合体との僅少な隙間に、前記凹部の浅さ方向から複数成分の流体を通す手順を有する製造方法。
【請求項9】
前記隙間を流れる流体に超音波振動を付加する手順を更に有する請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
前記凹部及び前記嵌合体の間に介在するフィルタに流体を通過させる手順を更に有する請求項8又は9記載の製造方法。
【請求項11】
前記凹部及び前記嵌合体を前記凹部の深さ方向を軸として相対的に回転させる手順を更に有する請求項8から10いずれか記載の製造方法。
【請求項12】
前記嵌合体の周囲に配置され前記凹部の底部に向かって整列する微細な糸状体によって形成される間隙に流体を通過させる手順を更に有する請求項8から11いずれか記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−18251(P2009−18251A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182665(P2007−182665)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000251211)冷化工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】