説明

垂直共振器面発光レーザのための回折性パワーモニタ

【課題】本発明は、回折部品を用いてビームの一部を分離し、モニタ用ビームを形成し、モニタ用ビームのパワーを検出する、垂直共振器面発光レーザのための回折性パワーモニタを提供するものである。
【解決手段】本発明に係るパワーモニタは、発光デバイスからの光ビームが入射される第1の表面、およびこれに対向する第2の表面を有する基板と、基板の第1の表面上に配設された第1の光学部品であって、発光デバイスから入射された光ビームの一部を分離するとともに、別の一部を集光する第1の光学部品と、分離された光ビームの一部を受光して、発光デバイスからの光ビームの強度をモニタする検出部とを備えたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光デバイスのパワーをモニタすることに関し、とりわけ、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を使用する際の回折性パワーモニタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、VCSELなどのような発光デバイスは、一定の出力値で維持するための、パワー制御に関する何らかの手段が必要である。一般に、動作時における発光デバイスの出力値を測定し、この測定値を用いて、発光デバイスに供給するパワーを制御することにより、上述の制御を行う。
【0003】
発光レーザとして端面発光レーザが用いられた場合、端面発光レーザは2つの出力端面部から光を出力するので、こうした制御は容易である。
【0004】
これに対して、VCSELは、通常、1つの表面からのみ光を発する。したがって、VCSELの所望する用途で用いられる出力と同じ出力を、なんとかしてモニタする必要がある。VCSELは、端面発光レーザと比べると、はるかに安価で、表面で発光するので、他の光学部品と集積しやすい。これにより、VCSELを用いることは極めて好ましい。
【0005】
VCSELの出力をモニタするために、これまで、出力ビームの一部を分離して、モニタビームとして用いるようにする方法が試みられていた。これらの具体例として、米国特許第5,757,836号や第5,774,486号がある。しかし、このようにビームを分離することは、ビームの一部を暗くし、波面や写像、ひいては光の結合(カップリング)に悪影響を与える。さらに、レーザ発振モードが変化した場合など、強度配分が変化すると、モニタされたパワーはVCSELの全体的出力パワーを表示しないように変化する可能性がある。
【0006】
さらに、ビームを分離するときに、ビーム検出時に必要なパワーレベルを維持するために、VCSELの出力を増やす必要が生じるかもしれない。これまでのように、ビームを散乱させて、モニタ用ビームを形成する方法は、ビームの方向を変えることを基にしており、モニタ検出器に対して最適の信号を供給していなかった。さらに、これまでのようにビームを散乱させた場合、ビーム全体をモニタすることを保証するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,757,836号明細書
【特許文献2】米国特許第5,774,486号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、関連技術に関して説明した、1つまたはそれ以上の問題点(不具合や欠点)を克服するためになされたものである。
【0009】
これら、およびその他の目的は、実使用に即した光ビームに亙って、モニタすることにより実現される。このようなモニタは、回折部品を用いてビームの一部を分離し、モニタ用ビームを形成し、モニタ用ビームのパワーを検出することにより実現することができる。
【0010】
これら、およびその他の本発明に係る目的は、以下の詳細な説明を見れば容易に理解されるだろう。しかし、詳細な説明および特別の具体例は、本発明の好適な実施形態を示すものであるが、説明のためだけのものである。というのも、当業者がこの詳細な説明を読めば、本発明の精神および範疇に入るさまざまな変更例および変形例が明白となるからである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る垂直共振器面発光レーザのための回折性パワーモニタは、発光デバイスからの光ビームが入射される第1の表面、およびこれに対向する第2の表面を有する基板と、基板の第1の表面上に配設された第1の光学部品であって、発光デバイスから入射された光ビームの一部を分離するとともに、別の一部を集光する第1の光学部品と、分離された光ビームの一部を受光して、発光デバイスからの光ビームの強度をモニタする検出部とを備えたことを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の側面図であって、これはモニタ用ビームを形成するための反射回折部品を採用している。
【図2】本発明の別の実施形態の側面図であって、これはモニタ用ビームを形成するための集光伝播回折部品を採用している。
【図3】本発明のパワーモニタを採用したシステムの側面図である。
【図4】本発明の実施形態の側面図であって、発光デバイスを収容する缶容器を用いている。
【図5】本発明の実施形態の側面図であって、発光デバイスを収容する缶容器を用いている。
【図6】発光デバイスのアレイに関連した本発明のパワーモニタの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特別な応用例における例示的な実施形態を参照しながら、本発明について以下説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるべきではない。当業者ならば、ここに開示される内容を見て、本発明の範囲に含まれる別の変形例、用途、および実施形態を実現することができ、他の技術分野においても、本発明は、過度な実験を行うことなく、極めて有用なものである。
【0014】
図1(A)は、ビーム全体のパワーをモニタするための装置を示す。例えば、VCSELまたは発光ダイオードのような発光デバイス10は、所望する用途で用いられるように光ビーム15を発する。光ビーム15は、回折部品20上に照射し、この回折部品20は、基板30の第1表面25上に配置されていることが好ましい。回折部品20は、好適には、薄い(shallow)回折性の構造体であって、すなわち、2π以下の位相深度(phase depth)を有し、この深度は、発光デバイス10が有する波長と、回折性部品の所望する効率により決まる。薄い回折性構造体を用いると、1次オーダ、つまりモニタ用ビームとして回折する光の量が少なくなる。択一的には、ステップの高さの幅(width of the step heights)を、互いに異なるように変化させることにより、同一の効果が得られる。
【0015】
零次オーダ、または回折されないオーダのビームのほとんどが、回折部品20を通過し、実使用ビーム(application beam)40を形成するが、一般に、反射オーダを含む他のオーダのビームも少しの割合で回折部品20を通過する。いくつかの実施形態においては、50%未満の光が、より高次のビームとして偏向し、モニタ用ビームを形成する場合もある。反射オーダの光は、光ビーム全体から伝播して、モニタ用ビーム45を形成する。モニタすべき反射オーダ(一般に、1次オーダである)が有する角度は分かるので、適当に配置されたモニタ50(例えば、光受光器)がモニタ用ビーム45のパワーを測定し、そして測定されたパワーを用いて、広く知られた方法で発光デバイス10の動作を制御する。回折部品の反対側にある表面上に別の光学部品37が設けてある。この光学部品37は、コリメートしたり、集光したり、そして・またはファイバに光を結合したりするような光学機能を実現するための回折性、屈折性またはハイブリッドの光学部品である。
【0016】
説明するための例として、光15が830nmの波長を有し、溶融シリカ上に形成された8段階にブレーズ(blaze)をつけた格子を有する回折部品は、全体的な構造の深さが約2300Åとなるように設計される。光の約90%が零次オーダとして透過して実使用ビーム40を形成し、約2%の光が1次反射オーダとして反射してモニタ用ビーム45を形成し、約1.4%の光が1次透過オーダとして透過して、残りの光が高次のオーダとして除々に弱くなりながら透過するように、この深さを選択する。
【0017】
図1(A)および図1(B)の両方において、回折部品20は、モニタ用ビームを検出器50上に焦点を集める。回折格子を用いて光を単に散乱させるのではなく、モニタ用ビームの焦点を合わせることにより、光がVCSELの方に反射して逆戻りするのを防止する。さらに、モニタ用ビームの焦点を合わせることにより、検出器をより小さくすることができる。一般に、本発明で用いられる光学部品は、例えば、コリメート、焦点合わせ、などの機能を有することが好ましい。特に、回折光学部品がモニタ用ビームを反射して、モニタ用ビームに対して別の光学的機能を有するように、他の表面を利用することはない。こうした、回折部品は、コンピュータを用いて形成されたホログラムであることが好ましい。
【0018】
図1(B)に示すように、これに加えて、または択一的に、この実使用ビーム40に対して、少なくとも1つの別の光学的機能を与える透過型の回折光学部品に、反射型の回折光学部品20を組み込んで、複合型の回折光学部品22が形成される。図1(B)から分かるように、実使用ビーム40は、基板30の第1表面25を通過した後、収束する。これは、透過型屈折部品を形成するための透過型ホログラムと、反射型屈折部品の反射型ホログラムを複合化することにより実現することができる。
【0019】
透過型ホログラムに関して、位相深度(φ)を得るために必要な物理的なステップ高さdは、次式で表される。
[数1]
d=λ×φ/{2π×(n−1)}
ここで、nは屈折率である。
【0020】
反射型ホログラムに関して、位相深度(φ)を得るために必要な物理的なステップ高さdは、次式で表される。
[数2]
d=λ×φ/(2×2π)
【0021】
位相深度2πを得るたるめには、透過型ホログラムのエッチング深度は、λ/(n−1)で、反射型ホログラムのエッチング深度は、λ/2となる。こうして、材料の屈折率に依存するが、同じ位相深度を得るために、反射型ホログラムは、透過型ホログラムよりも、はるかに薄くすることができる。これら2つのホログラムを組み合わせると、反射型ホログラムと透過型ホログラムに関する透過機能が相乗し、つまり、位相機能(phase function)が統合される。しかし、2種類のホログラムの位相値は、上述の方程式で、それぞれ表される。例えば、屈折率(n)が1.5で、透過型ホログラムの位相深度が2πであるとき、ステップ高さdは2λで、反射型ホログラムのステップ高さλ/2の4倍である。16段階あるステップ高さを用いると、透過型ホログラムを表現すると、反射型ホログラムに関して、4つの最も薄い段階が、0、π/2、π、3π/2が対応する。
【0022】
十分低い屈折率を有する材料に対して位相機能が付加された場合、反射型ホログラムの機能は、透過型ホログラム機能に対するほんの少しの変調にしかすぎない。というのも、反射型ホログラムの深度は、はるかに薄いため、他を弱める1つの機能に関して、あまり大きな効果がないためである。実際、複数の段階を用いると、透過型ホログラムの要請するより薄い段階(レベル)は、屈折型ホログラムの要請する多くの段階に相当する。当然に、必要であれば、一方または両方のホログラムは、2πを超える位相深度を含む段階を有することができる。
【0023】
図2は、モニタ用ビームを形成するために、透過型ホログラムを採用した実施形態を示す。発光デバイス10は、同様に、光ビームを出力して、第1表面25と第2表面35を有する基板30に入射する。この第1表面25上にある回折部品35は、光60の一部を側面側に偏向させる。図2から分かるように、回折性光学部品55は、同様に、モニタ用ビームをコリメートする。この追加の光学的機能は、単に、2つの透過機能を一体にして付加することにより実現することができる。このようにコリメートすることにより、モニタ用ビームがもはや拡散すことがないので、確実に、より多くの光が検出器50に伝播し、しかもVCSELとより広い間隔をあけることができる。
【0024】
例えば、第2表面において金属パッチなどを用いた場合など、偏向角度が十分に急勾配であったとき、つまり第2表面において臨界角度を超えるとき、偏向した光60は第2表面で完全に内側へ反射する。反射ビーム60は、第1表面に戻り、ここで別の透過型ホログラム72に入射し、検出器50の上にモニタ用ビーム75の焦点を合わせる。
【0025】
同様に、第2表面は、実使用ビーム40に対して、他の光学的機能を付加するための光学部品を設けてもよい。図2に示す例において、基板30の第2表面35上にある別の光学部品37により、実使用ビーム40が集光し、これが光ファイバ78内に結合(カップリング)する。
【0026】
追加的な透過型ホログラム72は、偏向された光を検出器上に焦点を合わせるためのものであるが、偏向された光が検出器上に集光するように、回折部品55が設計されている場合は、この追加的な透過型ホログラム72を省略することができる。このように設計しておけば、光が屈折度数を有する別の透過型ホログラム72を通過する間に、さらに光が損失することはない。さらに、図2で示すように、角度が適正であるか、または反射部65が基板の第1表面上に設けてあるとき、偏向された光は何度も反射する。こうしておくと、検出器の配置場所について、柔軟性が増える。さらに、反射型の回折部品に関連して上述したように、透過型の回折部品とともに、追加的光学部品を基板30の第1または第2表面の一方の上に設けて、実使用ビーム40に対して別の光学的機能を与えることができる。
【0027】
例えば、図3(A)および図3(B)で、一体化されたシステム全体を示す。図3(A)で示すように、発光デバイスがガラス基板に直接に固定されているとき、図2に示すような構成を有することが好ましい。図3(B)は、発光デバイスが第2基板80に固定される。この第2基板は、スペーサブロック85を介して、第1基板とは距離をおいている。その結果、いずれかのパワーモニタを用いるために十分な空間を設けることができる。これらいずれかの構成に関して、ウエハ段階で集積することもできる。
【0028】
択一的な基板の使用に関して、反射型の回折部品は、プラスチック製またはガラス製のキャップ(cap)90内に収容されている。このキャップは、図4で示すように、発光デバイスを収容するカン(can)95であってもよい。キャップは、発光デバイスを保護するための密閉可能なシールを形成することができる。キャップ85は、注入成型法を含む数多くの手法で製造することができる。
【0029】
図5は別の実施形態を示す。図示するように、VCSEL15からの光は、回折部品に照射し、この回折部品が、モニタ用ビームを形成するためにビームの一部を分離し、モニタ用ビームと実使用ビームの両方をコリメートする。このようにコリメートすることにより、検出器10の配置場所に対する自由度を増やすことができる。というのも、モニタ用ビームがもはや拡散しないからである。さらに、回折部品55を用いて、検出器50上にモニタ用ビームの焦点を合わせることができる。択一的には、回折型光学部品55に隣接する表面上に屈折型光学部品を設けて、焦点を合わせることができる。回折型光学部品と屈折型光学部品が互いに隣接して配置された場合、つまり、回折型光学部品が光を偏向する一方、フォーカス部品が光の焦点を合わせるように、光学部品を十分に近接させる場合、屈折光学部品とフォーカス部品の相対的オーダは問題とならない。好適には、図5で用いられる2つの基板が形成され、ウエハ段階で一体に接合され、ダイス切断されることにより、ここで示すモニタ用ビームおよび主要または実使用ビームに関する光学システムを形成することができる。
【0030】
図6は、VCSELアレイをモニタする構成を例示するものである。モニタ検出器は、VCSELの少なくとも1つに対して設けてある。少なくとも1つの検出器、一般には、対応する検出器アレイは、図面の平面上に配置されており、図5は、VCSEL10と対応する検出器50の平面図である。同様に、モニタ用ビームはコリメートされて、そして・または回折型光学部品により集光される。アレイ状の1つ以上のビームをモニタする場合、光がコリメートし、集光することは特に重要なことである。こうして、モニタ用ビームは互いに影響を与えないようにすることができる。
【0031】
基板を用いた別の択一例において、光をファイバに結合させたい場合、ファイバに接続されたロッド内において、モニタ用ビームを形成するために、回折型光学部品が用いられる。
【0032】
通常は、ビームの全体が利用されるが、たとえ、一部しか利用されない場合であっても、回折光学部品は、実際に用いられるビームの一部からモニタ用ビームを形成することができる。例えば、光をファイバに結合させたいとき、ファイバのコア領域に伝播するビームの一部だけがモニタされる。
【0033】
本発明の好適な実施形態が、上記のとおり説明されたが、ここで教示された基本的な発明概念に関する、当業者ならば明白な変形および・または変更であって、添付クレームおよびその均等物として定義された本発明の精神と範疇に入るものと理解されるべきである。
【符号の説明】
【0034】
10:発光デバイス、15:光ビーム、20:回折部品、25:第1表面、30:基板、35:回折部品、37:光学部品、40:実使用ビーム、45:モニタ用ビーム、50:モニタ、55:回折性光学部品、60:反射ビーム、72:透過型ホログラム、75:モニタ用ビーム、78:光ファイバ、80:第2基板、85:スペーサブロック、90:キャップ(cap)、95:カン(can)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光デバイスからの光ビームが入射される第1の表面、およびこれに対向する第2の表面を有する基板と、
基板の第1の表面上に配設された第1の光学部品であって、発光デバイスから入射された光ビームの一部を分離するとともに、別の一部を集光する第1の光学部品と、
分離された光ビームの一部を受光して、発光デバイスからの光ビームの強度をモニタする検出部とを備えたことを特徴とするパワーモニタ。
【請求項2】
第1の光学部品は、分離する光ビームの一部を反射して、検出部上に焦点を合わせることを特徴とする請求項1に記載のパワーモニタ。
【請求項3】
集光した光ビームの一部をさらに集光またはコリメートする、基板の第2の表面上に配設された第2の光学部品を有することを特徴とする請求項1または2に記載のパワーモニタ。
【請求項4】
分離された光ビームの一部を第1の表面に向かって反射する、基板の第2の表面上に配設された金属パッチを有することを特徴とする請求項1に記載のパワーモニタ。
【請求項5】
第1および2の光学部品が基板の第1および2の表面上に集積されていることを特徴とする請求項3のパワーモニタ。
【請求項6】
発光デバイスは、複数の垂直共振器面発光レーザ素子を含む垂直共振器面発光レーザアレイであって、
第1の光学部品および検出部は、少なくとも1つの垂直共振器面発光レーザ素子に対して配設されていることを特徴とする請求項1のパワーモニタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−9782(P2011−9782A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−225418(P2010−225418)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【分割の表示】特願2000−567979(P2000−567979)の分割
【原出願日】平成11年8月31日(1999.8.31)
【出願人】(399036475)ディジタル・オプティックス・コーポレイション (10)
【氏名又は名称原語表記】DIGITAL OPTICS CORPORATION
【Fターム(参考)】